本発明の微粒子とは、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個/0.5g以下であるところに特徴を有するものである。
上述のように、光学分野に用いられる微粒子に、粒径の好適範囲を逸脱する粗大な粒子が含まれるとフィルム表面に傷を生じたり、当該微粒子が視認され易くなる虞がある。特に、本発明者らの検討により、使用する微粒子の平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する微粒子が存在(増加)する際に、上記現象が顕著になることが確認されている。好ましくは、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が500個/0.5g以下であり、より好ましくは200個/0.5g以下であり、さらに好ましくは100個/0.5g以下、最も好ましくは50個/0.5g以下である。
さらに、粗大粒子量が上記範囲内であると共に、平均粒子径の2.5倍以上の粒子径を有する粗大粒子数が50個/0.5g以下であるものは、光学用途に用いた際に、粗大粒子に由来する不良が一層生じ難いものとなるため好ましい。より好ましくは30個/0.5g以下であり、さらに好ましくは10個/0.5g以下である。
また、本発明の微粒子は、平均粒子径の1/2以下の粒子径を有する微小粒子数が低減されたものであるのが好ましい。かかる微小な微粒子が多量に含まれていると、当該微粒子を光学用途(例えば各種画像表示装置の画像表示面に設けられる光拡散フィルム、反射防止防眩性フィルムなど)に用いた場合に、透明性や輝度を低下させる虞がある。したがって、平均粒子径の1/2以下の粒子径を有する微小粒子は10体積%以下であるのが好ましく、より好ましくは7体積%以下である。
なお、本発明の微粒子の平均粒子径は、特に限定されるわけではないが、0.1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは2〜20μmである。平均粒子径が上記範囲内である場合は、例えば、光学用途に用いた際に、優れた光拡散性や面発光性(輝度)を発揮させることができる等の有利な効果が得られる。平均粒子径が小さすぎる場合には、媒体となる樹脂への分散性が低下するおそれがあり、大きすぎる場合は、十分な光拡散効果が得られない虞がある。なお、粒度分布測定、平均粒子径、並びに、前記微小粒子の含有量は、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定し、体積基準で算出した。
本発明の微粒子の形状は、特に限定はされないが、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、偏状、まゆ状およびこんぺい糖状などが挙げられる。特に、光学用途に用いる場合(光学用樹脂組成物などに用いる場合)は、真球状かほぼ真球に近い形状であって、その短粒子径に対する長粒子径の比率が1.0〜1.2の範囲にあり、かつ、粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
上記本発明の微粒子は、所定の水分含量、真比重、嵩比重、および粒子径を有する粉体微粒子を乾式分級して得られるものである。
上記乾式分級に供される粉体粒子は、水分含量0.05〜2質量%である。含水量が多すぎる場合には、分級時に、かかる水分が結着剤として働いて粒子同士が凝集し、一方、含水量が少なすぎる場合には、静電気により粒子同士が凝集するため、いずれの場合にも分級精度が低くなり粗大粒子が増加する傾向がある。水分含量が上記範囲であれば、粒子が凝集し難いため、分級操作を円滑に進めることができる。また、真比重は1〜1.25g/ml、嵩比重は0.1〜1g/ml、平均粒子径は1〜50μmであるのが好ましい。粉体微粒子の真比重が小さ過ぎる場合には、粒子径の大小による遠心力や風力による抵抗に差が生じ難いために分級精度が低くなる場合がある。真比重が大きすぎる場合には、大きな設備と動力が必要となるため好ましくない。また、嵩比重が大きすぎる場合には、大きな設備と動力が必要となるため好ましくなく、一方、小さすぎる場合には粒子径の大小による差が生じ難いため、分級精度が低くなる場合がある。粒子径が小さすぎる場合には、粉体同士の凝集が強く、良好な分散状態が得られず分級精度が低下する場合があり、大きすぎる場合には大きな設備と動力が必要と成るため好ましくない。
湿式分級により、乾式分級に供される粉体粒子、および、湿式分級により得られる分散溶液における平均粒子径の2倍以上の粗大粒子の含有量を、0.5gあたり20万個以下とするのが好ましい。より好ましくは10万個/0.5g以下であり、さらに好ましくは5万個/0.5g以下である。乾式分級に供される粉体粒子、および、湿式分級により得られる分散溶液に含まれる特定サイズの粗大粒子数が上記範囲内であれば、乾式分級を行うことにより、高い収率および/又は高い分級処理速度で粗大粒子の含有量の少ない微粒子が得られ易いので好ましい。
したがって、水分含量、真比重、嵩比重および粒子径は上記範囲であるのが好ましく、より好ましくは、粉体微粒子の水分含量は0.1〜0.5質量%であるのが好ましく、真比重は1〜1.5g/mlであるのが好ましく、嵩比重は0.3〜0.8g/mlであるのが好ましく、平均粒子径は2〜20μmであるのが好ましい。
なお、上記「含水量」とは、カールフィッシャー水分計(例えば平沼産業株式会社製、水分測定装置)により測定される値である。上記「嵩密度」とは、粉体を一定容積の容器中に、一定状態で入れたときに容器内に入る粉末の量を単位体積当たりの質量で表したもので、上記嵩密度の値は、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)で測定されたものである。粉体微粒子の「真比重」とは、粉体微粒子を一定容積の容器中に充填し、さらに、試料の空隙を完全に液体で置換し、このとき要した液体の体積を容器の容積から減じた値と、容器内に充填した粉体微粒子の質量との関係から算出される値で、真比重測定機(例えば、株式会社セイシン企業製)により測定されたものである。上記粒子径の値は、前記精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)により測定される体積基準の値である。
上記粉体微粒子の乾式分級には、風力を利用した気流分級装置を用いるのが好ましい。気流分級装置とは、気流を利用して、微粒子(粉粒体層)を粒度(粉粒体の粒径、質量)に応じて分離する装置である(すなわち、粒子の持つ慣性と、気流から受ける抗力のバランスによって飛距離が定まり分級される)。通常、篩やフィルタのみを使用する分級装置では、回収される粒子の物性は、使用する篩の目開きやフィルタの濾過効率に依存するため、所望の物性、たとえば粒子径が特定の範囲に含まれる粒子のみを得るためには、複数の分級操作を行う必要がある。これに対して、気流分級装置を使用すれば、粗大な粒子と微小な粒子を同時に除去することができる。
上記気流分級装置の分級メカニズムは特に限定されない。したがって、気流のみを利用するもの、気流に推進力を与える回転ローターや、風を導くためのガイドベーンを備え、これらが複合的に作用して生じる気流を利用するもの、さらに、これらとその他の分級手段(篩やメッシュ)を組み合わせたものであっても良い。
具体的な気流分級装置としては、DXF型(日本ニューマチック工業社製)などの高精度気流分級装置;ターボクラシファイア(日清エンジニアリング社製)、クラッシール(セイシン社製)、ターボプレックス(登録商標、ホソカワミクロン社製)などの分級ローターを有する回転ローター式気流分級装置;エルボージェット(日鉄鉱業社製)などのコアンダ効果を利用した気流分級装置(エルボージェット型分級機);乾式篩ハイボルター(東洋ハイテック社製)、乾式篩ブロワーシフター(ユーグロップ社製)などの網の目開きを利用した気流分級装置が挙げられる。これらの中でも、高精度気流分級装置、回転ローター式気流分級装置およびコアンダ効果を利用した気流分級装置は、粗大な粒子を効率的に除去できるので好ましい。
上記高精度気流分級装置とは、ムービングパーツ(可動可能な部材)がなく、分散ゾーンおよび分級ゾーンへの流入エアーにより、高速旋回気流を発生させて、装置内に供給した粒子に遠心力を与えると共に、粒子に与えられた遠心力の抗力となるように吸引ブロワーにより分級ゾーンから空気を排気させ、この遠心力と抗力とのバランスにより粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。回転ローター式気流分級装置とは、回転自由な円筒(分級ローター)と、装置外部から装置内へ空気を取り込む吸気口を備え、上記ローターの高速回転により装置内に渦流を発生させて、装置内に供給した粒子に渦流による遠心力を与え、一方、吸気口からは、遠心力の抗力となるように空気を取り込み、この遠心力と抗力とのバランスにより、粒子から粗粉と微粉とを分級する装置である。コアンダ効果を利用した気流分級装置とは、噴流は、その一方の側にだけ壁面を置くと、この壁面に沿って流れるというコアンダ効果を利用するものであり、当該装置は、粒子を気流(フィードエアー)と共に装置内に噴出するエジェクター部と、分級室内にまで噴流(粒子を含む)を導くコアンダブロックと、粒子を性状(粗粉、細粉(目的物)、微粉など)に応じて隔離する分級エッジを任意の位置に備えている。上記エジェクター部から噴出された噴流(粒子を含む)は、コアンダブロックに沿って流れようとする。このとき粒子に働く慣性力と(微小粒子と粗大粒子とでは働く慣性力に差があり、粗大な粒子はより遠くへと飛行しようとする)、流体抵抗のバランスにより、粗大粒子と微小粒子が分級される。
上記気流式分級装置の中でも、コアンダー効果を利用した気流分級装置(エルボージェット型分級機)が好ましい。このエルボージェット型分級機を用いる場合には、分級精度を上げるために、フィードエアーを推奨エアー圧の最大値にまで上げることが好ましい。なお、通常、フィードエアーは、0.1〜10kgfで運転されるが、分級精度向上の観点からは1〜5kgfとすることが推奨される。一般に、フィードエアーを高めすぎると、粗大粒子の飛行距離が長くなり、正面の壁に当たって跳ね返った粗大粒子が細粉に混入する可能性が高い。しかしながら、本発明に係る微粒子は、後述するように湿式分級工程を経た後、乾式分級を経て得られるものであり、粗大粒子は上記湿式分級工程である程度除去されているため、跳ね返りによる粗大粒子の細粉への混入がない。したがって、フィードエアーを上げることにより分級精度を向上させることが出来る。
また、分級エッジとしてスリムエッジを用いることも、分級精度を向上させるためには好ましい。上述のように、分級エッジとは、性状に応じて粒子を隔離するために用いられるもので、その一端(粒子進入側)は薄く、他端に至るにしたがって厚くなるくさび型の形状を有している。また、その底断面(くさび型において厚みを有する一端)は略長方形であり、特定の幅を有している。なお、分級エッジの幅は、通常、粒子を含む噴流の流れる流路の幅に略等しく設計される。ここで、上記スリムエッジは、通常用いられる標準エッジに比べて、くさび型の斜面間の距離が短く(特に、底断面部分においては標準エッジの約半分)形成されている。スリムエッジは、通常、強く帯電した粒子を処理する場合、エッジの先端に粒子が堆積し、分級精度が低下してしまうのを防ぐために用いられている。スリムエッジを用いることで、分級精度が向上する理由は、上記スリムエッジの目的(粒子の堆積による分級精度の低下抑制)に加えて、気流の乱れが起こりにくいためと考えられる。
上記乾式分級に供される粉体微粒子は、固形分濃度0.5〜50質量%、B型粘度0.5〜20mPa・sの微粒子分散液を湿式分級した後、乾燥、粉砕して得られるものが好ましい。微粒子分散液の固形分濃度は0.5〜20質量%であるのが好ましく、B型粘度は0.5〜10mPa・sであるのが好ましい。
湿式分級装置に供給する微粒子分散溶液の固形分濃度が高い場合や粘度が高い場合には、分級に長時間要したり、メッシュへの負荷が増してメッシュの目開きが拡げられて大きくなり、分級精度が低下する虞がある。また、固形分濃度が0.5質量%より少ない場合も、分級に長時間要することとなる。
また、湿式分級に供する粒子は、平均粒子径の2倍の粒子径より大きな粗大粒子の含有量が少ないものであるのが好ましい。具体的には、平均粒子径の2倍の粒子径より大きな粗大粒子の含有量が、0.5gあたり100万個以下であるのが好ましい。より好ましくは50万個/0.5gであり、さらに好ましくは20万個/0.5g以下である。
上記微粒子分散液は、予め製造された微粒子を分散媒体(水、有機溶媒など)に分散させたものでもよく、微粒子が後述する有機重合体あるいは有機質無機質複合体材料からなる場合には、重合反応後の反応液をそのまま用いてもよい。また、湿式プロセスで得た微粒子分散液をそのまま用いてもよい。
上記微粒子分散液の湿式分級に使用可能な装置は、特に限定されないが、フィルタや篩を使用した濾過装置、遠心力、慣性力を利用した液体サイクロン装置などが挙げられる。具体的な湿式分級装置としては、カートリッジフィルター(例えば、ロキテクノ社製、日本ボール社製)、遠心力を利用して分級を行う液体サイクロン(例えば、ラサ工業社製、インダストリア社製)が挙げられる。
上記カートリッジフィルターは複数を組み合わせて用いてもよく、例えば、長寿命化によるランニングコストの低減を目的として、要求されるろ過精度を満たすファイナルフィルターと、ファイナルフィルターの延命に使用するプレフィルターとを組み合わせて用いてもよい。ただし、ファイナルフィルターの選定基準は、平均粒子径の2倍の粒子を50質量%以上除去できるタイプとするのが好ましい。たとえば、ロキテクノ社製のSLPタイプのカートリッジフィルターは、デプスフィルターの特徴である濾材の厚みと、プリーツフィルターの特徴である広いろか面積を有するため、ファイナルフィルターとして好ましい。プレフィルターの選定基準としては、平均粒子径の3倍以上の粒子を50質量%以上ろ過できるタイプとするのが望ましい。
上記液体サイクロン装置とは、液体を媒体とし、当該液体中に分散している粒子を遠心力により分級する装置である。例えば、円筒(あるいは円錐)部分を有する装置の場合、当該装置円筒部の接線方向から微粒子分散液を供給し、この微粒子分散液が旋回流として円筒部を下降する間に、粗大な粒子を遠心力の作用で半径方向に移動させて円筒の内壁に衝突させ、当該内壁に沿って装置下部へと落下させた後、装置下部から回収する。一方、微細な粒子は、中央付近に生じる上昇旋回流にのって装置上方へと移動するので、装置上部から微小な粒子を回収する。
湿式分級後の粒子は、乾燥し、粉砕するのが好ましい。乾燥、粉砕時の条件は、上述の粉体微粒子の物性(水分含量0.05〜2質量%、真比重1〜1.25g/ml、嵩比重0.1〜1g/ml、粒子径1〜50μm)を満足し得るものであれば良く特に限定はされない。
本発明の微粒子は、所定の物性を有する粉体微粒子を乾式分級して得られるものであるが、必要に応じて、その他の分級手段を組み合わせてもよく、特に、粉体微粒子の調整に上述の湿式分級工程を採用することは、粗大な粒子や微細な粒子の含有量を低レベルに低減させる観点からは推奨される。すなわち、本発明の微粒子を得るための好ましいプロセスとしては、所定物性を有する微粒子分散液を湿式分級し、湿式分級後の粒子を乾燥、粉砕した後、さらに乾式分級するプロセスが挙げられる。かかるプロセスを経ることで、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子が1000個以上/0.5g以下である本発明の微粒子を一層効率よく得ることができる。
次に、本発明に係る微粒子の構造および製造方法について説明する。
本発明に係る微粒子の形態は特に限定されず、有機重合体、無機質材料、有機質無機質複合材料のいずれからなるものであっても良い。上記有機重合体としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド等の線状重合体;ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独又は他の重合性モノマーと重合させて得られる網状重合体;アミノ化合物(例えば、ベンゾグアナミン、メラミンあるいは尿素など)とホルムアルデヒドの重縮合反応により得られるアミノ樹脂からなる有機重合体が挙げられる。
有機質無機質複合材料としては、(A)シリカ、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の無機質微粒子が、有機樹脂中に分散含有されてなる微粒子や、(B)(オルガノ)ポリシロキサン、ポリチタノキサンなどのメタロキサン鎖(「金属−酸素−金属」結合を含む分子鎖)と有機分子が分子レベルで複合してなる微粒子や、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシランの加水分解、縮合反応の進行によって得られるポリメチルシルセスキオキサンなどのシリコン系微粒子や、(C)加水分解性シリル基を有するシリコン化合物を原料とするポリシロキサンと重合性基(例えばビニル基、(メタ)アクリロイル基など)を有する重合性単量体などと反応させて得られる有機ポリマー骨格と、ポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合材料が挙げられる。
無機質材料としては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
上記例示の中でも、有機重合体または有機質無機質複合材料からなる微粒子は、微粒子の特性の設計が比較的自由に行え、また、シャープな粒子径分布を有する粒子が得られ易いので好ましい。さらに、有機重合体からなる微粒子の中では、アミノ樹脂からなる有機重合体、並びにシード重合法により得られる有機重合体粒子(重合性モノマー全量に対する架橋性モノマーの割合が20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上の粒子)が好ましく、有機質無機質複合材料から成る微粒子の中では特に(C)が好ましい。また、これらの粒子は、その合成過程で硬化または架橋されており、有機溶剤により溶解、膨潤し難い。したがって、後述する光拡散層、防眩層を形成する塗布用樹脂組成物に使用する場合、有機溶剤などと同時に使用しても、粒子が変質したり、粒子径の変化が生じ難いので、粗大粒子を上記範囲内に低減させた効果が十分に得られるため好ましい。
これらの粒子は、各粒子の合成時に得られる粒子懸濁液の状態で湿式分級工程に供するのが好ましい。すなわち平均粒子径の2倍以上の粗大粒子の含有量が少ない(例えば、100万個/0.5g未満)懸濁体が得られ易いからである。特に、以下に説明する好ましい製法で得られる有機質無機質複合材料からなる微粒子、アミノ樹脂からなる有機重合体微粒子が好ましい。
また、上記粒子は、粒子径の変動係数(体積基準で算出した粒度分布を基準とする)が20%以下であるのが好ましい。より好ましくは10%以下である。粒子径の変動係数の値は小さいほど、粒子径にバラツキが少ないことを示しており、上記範囲を満足する場合には、湿式分級、乾式分級工程後の微粒子に含まれる粗大粒子量を低減し易いので好ましい。なお、ここで、粒子径の変動係数とは、下記式より算出される値である。
ここで、σは粒子径の標準偏差、Xは平均粒子径を表す。
本発明では、平均粒子径と粒子径の標準偏差は、前記した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」)を使用して測定し、体積基準で算出した。
ここで、上記有機重合体からなる微粒子(アミノ樹脂)、および、有機質無機質複合材料からなる微粒子(上記(C))の、その構造および製造方法について説明する。
<アミノ樹脂架橋粒子の製造方法>
まず、上記有機重合体からなる微粒子であるアミノ樹脂(アミノ樹脂架橋粒子)の製造方法について説明する。
アミノ樹脂架橋粒子の製造方法としては、以下に説明する第1の製造方法および第2の製造方法が挙げられる。これら第1および第2の製造方法によれば、微粒子の合成段階において、粒子径の制御が可能であるので、粗大な粒子の生成をいくらか抑制できる。したがって、当該製造方法により得られたアミノ樹脂架橋粒子を、上述した本発明に係る微粒子を得るためのプロセスに付すことで、粒径の好適範囲を逸脱する粒子の含有量の低減がより容易に行えるため好ましい。まず、第1の製造方法について説明する。
−第1の製造方法−
アミノ樹脂架橋粒子の第1の製造方法(以下、単に「第1の製造方法」と称することがある。)は、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させることによりアミノ樹脂前駆体を得る樹脂化工程と、前記樹脂化工程で得られたアミノ樹脂前駆体を水系媒体中で乳化してアミノ樹脂前駆体の乳濁液を得る乳化工程と、前記乳化工程で得られた乳濁液に触媒を加えて乳化させたアミノ樹脂前駆体の硬化反応を行い、アミノ樹脂架橋粒子を得る硬化工程、を含む。
上記樹脂化工程は、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させて、初期縮合反応物であるアミノ樹脂前駆体を生成させる工程である。アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させる際の溶媒としては、水が用いられる。この樹脂化工程の具体的な実施方法としては、ホルムアルデヒドを水溶液(ホルマリン)の状態にしたものにアミノ系化合物を添加して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加して水中でホルムアルデヒドが発生するように調整した水溶液にアミノ系化合物を添加して反応させる方法等が好ましく挙げられる。なかでも、前者の方法は、ホルムアルデヒド水溶液の調整槽が必要なく、また、原料の入手が容易であるため、経済性の点でより好ましい。また、いずれの方法を採用する場合であっても、樹脂化工程は、公知の撹拌装置等による撹拌下で行うことが好ましい。
樹脂化工程において、出発原料として用いられるアミノ系化合物は、特に限定はされないが、例えば、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym.−トリアジン)、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミンおよびメラミン等が挙げられる。これらの中でも、トリアジン環を有するアミノ系化合物がより好ましい。特に、ベンゾグアナミンは、ベンゼン環と2個の反応基とを有することから、ベンゾグアナミンをアミノ系化合物として含む場合には、生成するアミノ樹脂架橋粒子は可撓性(硬度)、耐汚染性、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性に優れるため特に好ましい。上記アミノ系化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
使用するアミノ系化合物の全量中において、上述したアミノ系化合物(ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミンおよびメラミン)の占める割合は、合計で40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。上述のアミノ系化合物の含有量が40質量%以上である場合には、生成するアミノ樹脂架橋粒子が、耐熱性および耐溶剤性に優れたものとなる。
樹脂化工程において反応させるアミノ系化合物とホルムアルデヒドとのモル比(アミノ系化合物(モル)/ホルムアルデヒド(モル))は、1/3.5〜1/1.5であることが好ましく、1/3.5〜1/1.8であることがより好ましく、1/3.2〜1/2であることがさらにより好ましい。上記モル比が1/3.5未満であると、ホルムアルデヒドの未反応物が多くなるおそれがあり、1/1.5を超える場合は、アミノ系化合物の未反応物が多くなるおそれがある。
なお、樹脂化工程の仕込み時点におけるアミノ系化合物およびホルムアルデヒドの濃度は、反応に支障の無い限りにおいて、より高濃度であることが望ましい。具体的には、反応生成物であるアミノ樹脂前駆体を含む反応液の95〜98℃の温度範囲内での粘度を、2×10-2〜5.5×10-2Pa・s(20〜55cP)の範囲内に調節・制御できる濃度であることが好ましい。より好ましくは、後述する乳化工程において、乳濁液中のアミノ樹脂前駆体の濃度が30〜60質量%の範囲内となるように、反応液を乳化剤の水溶液に添加する若しくは反応液に乳化剤や乳化剤の水溶液を添加することができる濃度であればよい。
したがって、樹脂化工程において得られるアミノ樹脂前駆体を含む反応液の95〜98℃の温度範囲内での粘度は、2×10-2〜5.5×10-2Pa・s(20〜55cP)であることが好ましく、より好ましくは2.5×10-2〜5.5×10-2Pa・s(25〜55cP)、さらにより好ましくは3.0×10-2〜5.5×10-2Pa・s(30〜55cP)である。上記粘度の測定方法としては、反応の進行状態を即時的に(リアルタイムで)把握でき、且つ、該反応の終点を正確に見極められる、粘度測定機を用いる方法が最適である。このような粘度測定機としては、振動式粘度計(MIVIITSジャパン社製、製品名:MIVI6001)が使用できる。この粘度計は、常時振動している振動部を備えており、該振動部を反応液に浸漬させておくことで、該反応液の粘性が増加して振動部に負荷が掛かると、その負荷を粘度に即時的に換算して表示するようになっている。
アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを水中で(水系媒体中で)反応させることにより、いわゆる初期縮合物であるアミノ樹脂前駆体が得られる。反応温度は、反応の進行状態を即時的に把握でき、該反応の終点を正確に見極められるように、95〜98℃の温度範囲内とするのが望ましい。そして、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの反応は、反応液の粘度が2×10-2〜5.5×10-2Pa・sの範囲内となった時点で、該反応液を冷却する等の操作を行うことにより終了すればよい。これにより、アミノ樹脂前駆体を含む反応液が得られる。なお、反応時間は、特に限定されるものではない。
樹脂化工程で得られるアミノ樹脂前駆体は、該アミノ樹脂前駆体を構成するアミノ系化合物由来の構造単位とホルムアルデヒド由来の構造単位とのモル比(アミノ系化合物由来の構造単位(モル)/ホルムアルデヒド由来の構造単位(モル))が、1/3.5〜1/1.5であることが好ましく、1/3.5〜1/1.8であることがより好ましく、1/3.2〜1/2であることがさらに好ましい。上記モル比が上記範囲内であれば、粒度分布の狭い粒子を得ることができる。
アミノ樹脂前駆体は、通常、アセトンやジオキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒に対して可溶であるが、水に対して実質的に不溶である。
第1の製造方法では、上記アミノ樹脂前駆体を含む反応液を調製する樹脂化工程における反応液の粘度を低くすることにより、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒子径を小さくすることができる。しかしながら、反応液の粘度が2×10-2Pa・s未満である場合、或いは5.5×10-2Pa・sを超える場合には、最終的に粒子径がほぼ揃った(粒度分布が狭い)アミノ樹脂架橋粒子を得ることが困難な場合がある。すなわち、反応液の粘度が2×10-2Pa・s(20cP)未満であると、後述する乳化工程で得られる乳濁液の安定性が乏しくなる。このため、硬化工程においてアミノ樹脂前駆体を硬化させる際に、得られるアミノ樹脂架橋粒子が肥大化したり、粒子同士が凝集するおそれがあり、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径を制御することができず、粒度分布の広いアミノ樹脂架橋粒子となるおそれがある。また、乳濁液の安定性が乏しい場合には、製造する毎に(バッチ毎に)、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径(平均粒子径)が変化してしまい、製品にバラツキを生じるおそれもある。一方、反応液の粘度が5.5×10-2Pa・s(55cP)を超えると、後述する乳化工程で用いる高速撹拌機等にかかる負荷が大きすぎて、その剪断力が低下するため、反応液を充分に撹拌する(乳濁させる)ことができなくなるおそれがある。このため、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒子径を制御するのが困難になり、粒度分布の広いアミノ樹脂架橋粒子となる場合がある。よって、樹脂化工程において、予め反応液を上記粘度範囲に調整しておくのが好ましい。
乳化工程は、樹脂化工程により得られたアミノ樹脂前駆体を乳化してアミノ樹脂前駆体の乳濁液を調製する工程である。アミノ樹脂前駆体の乳化にあたっては、例えば、保護コロイドを構成し得る乳化剤を用いることが好ましく、特に、保護コロイドを構成し得る水溶性重合体からなる乳化剤を用いるのが好ましい。
上記乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、水溶性ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。これら乳化剤は、全量を水に溶解させて水溶液の状態で用いてもよいし、その一部を水溶液の状態で用い、残りをそのままの状態(例えば粉体状、顆粒状、液状など)で用いてもよい。上に例示した乳化剤のなかでも、乳濁液の安定性、触媒との相互作用等を考慮すると、ポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールは、完全ケン化物であってもよく、部分ケン化物であってもよい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではない。
乳化剤の使用量は、上記樹脂化工程で得られたアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。該使用量が上記範囲を外れると、乳濁液の安定性が乏しくなるおそれがある。また、アミノ樹脂前駆体に対する乳化剤の使用量が多い程、生成する粒子の粒子径は小さくなる傾向がある。
乳化工程では、例えば、乳化剤の水溶液に、アミノ樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が30〜60質量%の範囲内となるように上記樹脂化工程で得られた反応液を添加した後、50〜100℃の温度範囲内で乳濁させることが好ましい。より好ましくは60〜100℃、さらにより好ましくは70〜95℃である。乳化剤の水溶液の濃度は、特に限定されるものではなく、アミノ樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節できる濃度であればよい。アミノ樹脂前駆体の濃度が30質量%未満では、アミノ樹脂架橋粒子の生産性が低下するおそれがあり、60質量%を超えると、得られるアミノ樹脂架橋粒子が肥大化したり、粒子同士が凝集してしまうおそれがあり、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径の制御が困難になり、得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。
乳化工程においては、撹拌手段として、上記アミノ樹脂前駆体と乳化剤の水溶液とをより強力に撹拌できる装置(高せん断力を有する装置)を用いるのが好ましい。具体的な撹拌装置としては、例えば、いわゆる高速撹拌機、ホモミキサー、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、高速ディスパー、エバラマイルザー((株)荏原製作所製)、高圧ホモジナイザー((株)イズミフードマシナリ製)、スタティックミキサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)などが挙げられる。
乳化工程では、樹脂化工程で得られたアミノ樹脂前駆体が、所定の粒子径となるまで乳化を促進させることが好ましい。なお、所定の粒子径は、最終的に所望の粒子径のアミノ樹脂架橋粒子が得られるよう適宜設定すればよい。具体的には、容器や撹拌翼の種類、撹拌速度、撹拌時間、乳化温度などを適宜考慮することにより、乳化したアミノ樹脂前駆体の平均粒子径が0.1〜20μmとなるよう乳化を行うことが好ましく、より好ましくは0.5〜20μm、さらにより好ましくは1〜5μmである。このようにアミノ樹脂前駆体を上記粒子径範囲となるよう乳化させることによって、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径を所望の範囲に制御することができる。
第1の製造方法においては、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することをより確実に防止するために、必要に応じて、上記乳化工程後に得られた乳濁液に無機粒子を添加しておくことができる。無機粒子としては、具体的には、例えば、シリカ微粒子、ジルコニア微粒子、アルミニウム粉、アルミナゾル、セリエゾル等が好ましく挙げられ、なかでも、入手が容易であるといった点で、シリカ微粒子がより好ましい。無機粒子の比表面積は10〜400m2/gであることが好ましく、より好ましくは20〜350m2/g、さらにより好ましくは30〜300m2/gである。無機粒子の粒子径は0.2μm以下であることがより好ましく、より好ましくは0.1μm以下、さらにより好ましくは0.05μm以下である。比表面積や粒子径が上記範囲内であれば、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止するのに、より一層優れた効果を発揮することができる。
乳濁液に無機粒子を添加する方法は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、無機粒子をそのままの状態(粒子状)で添加する方法や、無機粒子を水に分散させた分散液の状態で添加する方法などが挙げられる。乳濁液に対する無機粒子の添加量は、乳濁液に含まれるアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜28質量部、さらにより好ましくは3〜25質量部である。1質量部未満であると、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを十分防止することができないおそれがあり、30質量部を超える場合は、無機粒子のみの凝集物が発生するおそれがある。また、無機粒子を添加する際の撹拌方法としては、前述の高せん断力を有する装置を用いる方法が無機粒子をアミノ樹脂粒子に強固に固着させるという点で好ましい。
硬化工程では、上記乳化工程で調整した乳濁液に触媒(詳しくは硬化触媒)を加え、乳化させたアミノ樹脂前駆体の硬化反応を行う(アミノ樹脂前駆体を乳濁状態で硬化させる)ことによりアミノ樹脂架橋粒子(詳しくは、アミノ樹脂架橋粒子の懸濁液)を生成させる。
上記触媒(硬化触媒)としては酸触媒が好適である。酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;これら鉱酸のアンモニウム塩;スルファミン酸;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類;フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸等の有機酸;が使用できる。上記例示の酸触媒のうち、硬化速度の点では鉱酸が好ましく、さらに、装置への腐食性、鉱酸使用時の安全性等の点では、硫酸がより好ましい。また、上記触媒として硫酸を用いる場合は、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸を用いる場合と比べて、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が変色し難く、また、耐溶剤性が高いため好ましい。これらの酸触媒は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記触媒の使用量は、上記乳化工程により得られる乳濁液中のアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4.5質量部、さらにより好ましくは0.5〜4.0質量部である。触媒の使用量が5質量部を超えると、乳濁状態が破壊され、粒子同士が凝集してしまうおそれがあり、0.1質量部未満であると、反応に長時間を要したり、硬化が不十分となるおそれがある。また、同様に、上記触媒の使用量は、原料化合物として用いたアミノ系化合物1モルに対して0.002モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.005モル以上、さらに好ましくは0.01〜0.1モルである。触媒の使用量がアミノ系化合物1モルに対して0.002モル未満であると、反応に長時間を要したり、硬化が不十分となるおそれがある。
硬化工程における硬化反応は、反応溶液(乳濁液)を、好ましくは15(常温)〜80℃、より好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは30〜60℃で、少なくとも1時間保持した後、常圧または加圧下で好ましくは60〜150℃、より好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは60〜100℃の範囲の温度で行うことが好ましい。硬化反応の反応温度が、60℃未満であると、硬化が十分に進行せず、得られるアミノ樹脂架橋粒子の耐溶剤性や耐熱性が低下するおそれがある。一方、反応温度が150℃を超える場合は、強固な加圧反応器が必要となり、経済的でない。硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。また、硬化反応の反応時間は、特に限定されない。
硬化工程は、撹拌下で行うことが好ましく、撹拌手段としては、公知の撹拌装置を用いればよい。硬化工程において、乳濁状態のアミノ樹脂前駆体を硬化させて得られるアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径を、0.1〜20μmとすることが好ましく、より好ましくは0.5〜20μm、さらにより好ましくは1〜5μmである。
第1の製造方法においては、アミノ樹脂前駆体の乳濁液やアミノ樹脂架橋粒子の懸濁液に、染料を水に溶解してなる水溶液を添加する着色工程を含むことができる。
第1の製造方法においては、上記硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行う中和工程を設けてもよい。中和工程は、上記硬化工程において、硬化触媒として硫酸等の酸触媒を用いた場合に行うことが好ましい。中和工程を行うことにより、上記酸触媒を取り除くこと(具体的には酸触媒を中和すること)ができ、例えば、後述する加熱工程などにおいて、アミノ樹脂架橋粒子を加熱した場合のアミノ樹脂架橋粒子の変色(例えば、黄色に変色)を抑制することができる。
中和工程でいう「中和」とは、アミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液のpHを5以上とすることであり、より好ましくはpHを5〜9にすることである。該懸濁液のpHが5未満である場合には、酸触媒が残っているので後述する加熱工程などにおいて、アミノ樹脂架橋粒子が変色する場合がある。上記中和により該懸濁液のpHを上記範囲内に調節することで、硬度が高く、耐溶剤性や耐熱性に優れ、かつ、変色のないアミノ樹脂架橋粒子が得られる。中和工程において用いることのできる中和剤としては、例えば、アルカリ性物質が好適である。該アルカリ性物質としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられるが、なかでも取り扱いが容易である点で、水酸化ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液が好適に用いられる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
第1の製造方法においては、硬化工程後あるいは中和工程後に得られるアミノ樹脂架橋粒子の懸濁液から、該アミノ樹脂架橋粒子を取り出す分離工程を設けてもよい。
アミノ樹脂架橋粒子を懸濁液から取り出す方法(分離方法)としては、濾別する方法や遠心分離機等の分離機を用いる方法が簡便な方法として挙げられるが、特に限定されるわけではなく、通常公知の分離方法はいずれも用いることができる。
なお、懸濁液から取り出した後のアミノ樹脂架橋粒子は、必要に応じて、水等で洗浄してもよい。
第1の製造方法においては、分離工程を経て取り出したアミノ樹脂架橋粒子を、130〜190℃の温度で加熱する加熱工程を行うことが好ましい。加熱工程を行うことによって、アミノ樹脂架橋粒子に付着している水分および残存しているフリーな(未反応の)ホルムアルデヒドを除去でき、かつ、アミノ樹脂架橋粒子内の縮合(架橋)をさらに促進させることができる。上記加熱温度が130℃より低い場合には、アミノ樹脂架橋粒子内の縮合(架橋)を十分に促進させることができず、アミノ樹脂架橋粒子の硬度、耐溶剤性および耐熱性を向上させることができないおそれがあり、190℃を越える場合は、得られるアミノ樹脂架橋粒子が変色するおそれがある。上述の中和工程を行った場合であっても、加熱温度が上記温度範囲外である場合の影響は同様である。得られるアミノ樹脂架橋粒子の諸特性(硬度、耐溶剤性、耐熱性、耐変色性)を向上させる観点からは、中和工程を行った上で、アミノ樹脂架橋粒子の加熱温度を上記範囲内とするのが好ましい。
加熱工程における加熱方法は、特に限定されるものではなく、通常公知の加熱方法を用いればよい。加熱工程は、例えば、アミノ樹脂架橋粒子の含水率が3質量%以下(より好ましくは2質量%以下)となった段階で終了すればよい。また、加熱時間は、特に限定はされない。
第1の製造方法で得られたアミノ樹脂架橋粒子は、これを前記乳化時における水系媒体から分離して乾燥、粉砕した後、得られた粉砕物を溶媒に分散させて懸濁液としたものを、湿式および乾式分級工程へと供給することもできる。また、硬化工程後の懸濁液(硬化工程後、中和工程を介して得られた懸濁液など、分離工程に供するまでの任意の懸濁液を含む)を湿式分級に供することも本発明法の好ましい態様である。湿式分級後の懸濁液を、上述した分離工程、必要に応じて行う加熱工程の後、乾燥、粉砕することで、水分含量0.05〜2質量%の粉体微粒子を得、これを乾式分級工程に供することが好ましい。
次に、アミノ樹脂架橋粒子の第2の製造方法について説明する。
−第2の製造方法−
アミノ樹脂架橋粒子の第2の製造方法(以下、単に「第2の製造方法」と称することがある。)とは、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させることによって得られたアミノ樹脂前駆体を、水系媒体中で界面活性剤と混合し、この混合液に触媒を添加することで前記アミノ樹脂前駆体を前記水系媒体中で粒子化し析出させた後、前記アミノ樹脂架橋粒子を前記水系媒体から分離して乾燥し、得られた乾燥物を粉砕する方法である。
第2の製造方法でも、第1の製造方法と同様、樹脂化工程を採用し、当該樹脂化工程においてアミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を生成させるが、第2の製造方法では、樹脂化工程により得られたアミノ樹脂前駆体を水系媒体中で界面活性剤と混合する混合工程を採用し、このアミノ樹脂前駆体と界面活性剤を含む混合液に触媒を加えてアミノ樹脂前駆体の硬化による粒子化および析出を行い、アミノ樹脂架橋粒子を得る硬化・粒子化工程を採用する点で、第1の製造方法とは異なる。
第2の製造方法では、水溶液状態においてアミノ樹脂前駆体の硬化を開始させることにより粒子径の小さいアミノ樹脂架橋粒子の調製が容易となる(例えば、平均粒子径が0.1〜50μm)。
なお、第2の製造方法で用いるアミノ系化合物としては、後述する水混和性の程度を満たすようにその種類および組成比を適宜設定することが好ましい。例えば、ホルマリンと反応して水溶性のアミノ樹脂前駆体を生成し得るアミノ系化合物を必須とすることがより好ましい。
また、樹脂化工程で得られるアミノ樹脂前駆体は水溶性であることが好ましい。第2の製造方法において用いる界面活性剤は、アミノ樹脂前駆体の水系媒体に水親和性を付与するために使用するものであり、当該界面活性剤には、第1の製造方法で用いる乳化剤は含まれない。
本発明において、上記水親和性は、15℃で、初期縮合物たるアミノ樹脂前駆体に水を滴下して白濁を生じるまでの水の滴下量の初期縮合物に対する質量%(以下、これを水混和度という。)で表され、その値が大きいほど、水親和性が高いことを意味する。なお、第2の製造方法において好適なアミノ樹脂前駆体の水混和度は100%以上である。水混和度が100%未満のアミノ樹脂前駆体では、界面活性剤を含んだ水性液中に、いかに分散させても、粒子径が比較的大きい不均一な懸濁液しか形成せず、最終的に得られる球状微粒子は均一な粒子径のものとはなりにくい(粒度分布が広い)。
混合工程においては、樹脂化工程により得られたアミノ樹脂前駆体を水系媒体中で撹拌等により界面活性剤と混合し、混合液を調製する。
上記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤など全ての界面活性剤が使用できるが、特にアニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤あるいはそれらの混合物が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェートなどの如きアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェートなどの如きアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などの如きアルキルスルホン酸塩;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの如き脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどの如きアルキルアリールスルホン酸塩;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが使用でき、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレートなどの脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪属アミン、アミドまたは酸との縮合生成物などが使用できる。
界面活性剤の使用量は、上記樹脂化工程で得られたアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満ではアミノ樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られないことがあり、また、10質量部を超えると、上記懸濁液に不必要な泡立ちが生じたり、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子の物性に悪影響を与えることがある。
混合工程では、例えば、界面活性剤の水溶液に、アミノ樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が3〜25質量%の範囲内となるように、上記樹脂化工程で得られた反応液を添加した後、混合することが好ましい。この場合、界面活性剤の水溶液の濃度は、特に限定されるものではなく、アミノ樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節できる濃度であればよい。上記アミノ樹脂前駆体の濃度が3質量%未満であると、アミノ樹脂架橋粒子の生産性が低下するおそれがあり、25質量%を超えると、得られるアミノ樹脂架橋粒子が肥大化したり、粒子同士が凝集したりしてしまうおそれがあり、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径を制御することができなくなるため、粒度分布の広いアミノ樹脂架橋粒子となるおそれがある。
混合工程における撹拌方法としては、一般的な撹拌方法を採用すればよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が好ましい。
第2の製造方法においては、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止するためには、必要に応じて、混合工程後に得られた混合液に無機粒子を添加しておいてもよい。無機粒子およびその添加方法等については、前述した第1の製造方法での説明が同様に適用できる。
硬化・粒子化工程においては、上記混合工程で調製した混合液に触媒(詳しくは硬化触媒)を加え、アミノ樹脂前駆体の硬化反応およびその粒子化を行いアミノ樹脂架橋粒子(詳しくは、アミノ樹脂架橋粒子の懸濁液)を生成させる。
上記触媒(硬化触媒)としては、酸触媒が好適である。酸触媒としては、第1の製造方法において例示したものと同様のものが好ましく用いられるが、第2製造方法においては、特に、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸は、前記初期縮合物たるアミノ樹脂前駆体の水性液中で、特異な界面活性能を発揮し、硬化樹脂の安定な懸濁液を生成する。具体的には、例えばデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記触媒の使用量は、上記混合工程により得られた混合液中のアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部、さらにより好ましくは1〜10質量部である。上記触媒の使用量が、上記範囲を下回る少量では、縮合硬化に長時間を要し、また、アミノ樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られず、最終的に凝集粗大化した粒子を多量に含む状態でしか得られないおそれがある。また、上記範囲を上回る多量では、生成した懸濁液中のアミノ樹脂架橋粒子中に、上記アルキルベンゼンスルホン酸等の触媒が必要以上に分配されることになり、その結果、アミノ樹脂架橋粒子が可塑化されて縮合硬化中に粒子間の凝集や融着が生じやすくなり、最終的に均一な粒子径を有するアミノ樹脂架橋粒子が得られないおそれがある。
また、同様に、上記触媒の使用量としては、原料化合物として用いたアミノ系化合物1モルに対して0.0005モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.002モル以上、さらに好ましくは0.005〜0.05モルである。触媒の使用量がアミノ系化合物1モルに対して0.0005モル未満であると、反応に長時間を要したり、硬化が不十分となるおそれがある。
硬化・粒子化工程における硬化反応および粒子化は、アミノ樹脂前駆体の混合液に上記触媒を加えて、撹拌下、0℃の低温から加圧下100℃以上の高温までの中の適切な温度で保持すればよい。上記触媒の添加方法には特に制限はなく、適宜選択できる。硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。また、硬化反応の反応時間は、特に限定されない。硬化反応は、一般には、90℃あるいはそれ以上の温度に昇温して一定時間保持することにより完結するが、必ずしも高温での硬化は必要なく、低温短時間であっても、得られる懸濁液中のアミノ樹脂架橋粒子がメタノールやアセトンで膨潤しなくなる程度まで硬化されていれば充分である。
硬化・粒子化工程は、通常公知の撹拌装置などによる撹拌下で行うことが好ましい。好ましいアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、第1の製造方法の硬化工程におけるアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径のそれと同様である。
第2の製造方法においては、上記硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行う中和工程を含むことができる。中和工程におけるpHの範囲や中和剤の種類等の詳細については、第1の製造方法での説明が同様に適用できる。
第2の製造方法においては、硬化・粒子化工程後あるいは中和工程後に得られるアミノ樹脂架橋粒子の懸濁液から、該アミノ樹脂架橋粒子を取り出す分離工程を設けてもよい。なお、第2の製造方法において、アミノ樹脂架橋粒子を懸濁液から分離して取り出すこととは、硬化によって得られたアミノ樹脂架橋粒子を混合工程における水系媒体から分離して取り出すことである。アミノ樹脂架橋粒子を懸濁液から取り出す方法(分離方法)については、第1の製造方法と同様の方法を適用できる。
第2の製造方法においては、分離工程を経て取り出したアミノ樹脂架橋粒子を、130〜190℃の温度で加熱する加熱工程を行うことが好ましい。加熱工程の条件としては、第1の製造方法の加熱工程と同様の条件が適用できる。
第2の製造方法で得られたアミノ樹脂架橋粒子は、これを前記混合工程時あるいは硬化・粒子化工程時の水系媒体から分離して乾燥、粉砕した後、得られた粉砕物を溶媒と混合して懸濁液とし、これを湿式分級、分離、乾燥した後、乾式分級するのが好ましい。上記硬化、粒子化工程後の懸濁液、または、中和工程/水洗工程を経た懸濁液を、湿式および乾式分級に供給することが好ましい。湿式分級後、粒子を分離し、必要に応じて加熱工程を介して乾燥、粉砕して、水分含量0.05〜2質量%の粉体微粒子とした後、乾式分級することが好ましい。
次に、有機質無機質複合材料からなる微粒子(上記(C))の、その構造および製造方法について説明する。上記有機質無機質複合材料の微粒子の重合方法に特に限定はなく、乳化重合、懸濁重合、シード重合、ゾルゲル重合などの公知の重合方法が適用できる。
上述のように、有機質無機質複合材料からなる微粒子(以下、複合体粒子という。)は、有機質部分としての有機ポリマー骨格と、無機質部分としてのポリシロキサン骨格とを含んでなる粒子である。該複合体粒子は、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子に、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態(化学結合タイプ)であるのが好ましい。具体的な形態としては、ポリシロキサン骨格中のケイ素原子と有機ポリマー骨格中の炭素原子とが結合していることにより、ポリシロキサン骨格と有機ポリマー骨格とが3次元的なネットワーク構造を構成している形態が好ましい。
上記有機ポリマー骨格は、側鎖を有するもの、分岐構造を有するもの、さらには架橋構造を有するものであってもよい。該骨格を形成する有機ポリマーの分子量、組成、構造および官能基の有無などは、特に限定はされない。上記有機ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンおよびポリオレフィン等のビニルポリマー、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリカーボネート、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ならびに、尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
有機ポリマー骨格の形態としては、複合体粒子の硬度を適度に制御できるという理由から、下記式(1):
で表される繰り返し単位により構成される主鎖を有するポリマー(いわゆるビニル系ポリマー)であることが好ましい。
ポリシロキサン骨格は、下記式(2):
で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、網目構造のネットワークを構成した化合物と定義される。ポリシロキサン骨格を構成するSiO2 の量は、複合体粒子の重量に対して0.1〜25質量%であるのが好ましく、より好ましくは1〜10質量である。ポリシロキサン骨格中のSiO2 の量が上記範囲であれば、複合体粒子の硬度の制御が容易となる。また、0.1質量%未満であると、粒子の柔軟性や弾力性が低下し、樹脂組成物に外部応力が加わった場合に粒子内部が破壊する等の不具合が生じるおそれがあり、上記範囲を超える場合は、粒子と樹脂との密着性が低下し、樹脂組成物中の粒子が脱落しやすくなるおそれがある。なお、ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量は、粒子を空気などの酸化性雰囲気中で800℃以上の温度で焼成した前後の質量を測定することにより求めた質量百分率である。
上記複合体粒子は、光電子分光法により求められる該粒子表面の炭素原子数とケイ素原子数との比(表面原子数比(C/Si))が1.0〜1.0×104であることが、樹脂に配合して用いる場合の該樹脂との密着性に優れる点で好ましい。上記表面原子数比(C/Si)が1.0未満であると、樹脂との密着性が低下するおそれがあり、1.0×104 を超える場合は、粒子の柔軟性や弾力性が低下し、樹脂組成物に外部応力が加わった場合に粒子内部が破壊する等の不具合が生じるおそれがある。
上記複合体粒子は、その硬度や破壊強度などといった機械的特性それぞれについて、ポリシロキサン骨格部分や有機ポリマー骨格部分の割合を適宜変化させることにより任意に調節することができる。
上記複合体粒子におけるポリシロキサン骨格は、加水分解性基を有するシリコン化合物の加水分解縮合反応により得られることが好ましい。
加水分解性を有するシリコン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(3):
R’mSiX4‐m(3)
(ここで、R’は置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基および不飽和脂肪族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基およびアシロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0から3までの整数である。)で表されるシリコン化合物およびその誘導体などが挙げられる。
上記一般式(3)で表されるシリコン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、m=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン;m=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;m=2のものとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルシランジオール等の2官能性シラン;m=3のものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノール等の1官能性シラン等が挙げられる。
これらの中でも、上記一般式(3)中、mが1の構造を有し、Xがメトキシ基またはエトキシ基であり、屈折率が1.30〜1.60であるシラン化合物は、光学用途に好適な屈折率の有機質無機質複合体粒子を得ることができるため好ましい。具体的には、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記一般式(3)で表されるシリコン化合物の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、Xの一部がカルボキシル基、β−ジカルボニル基等のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物や、上記シラン化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物等が挙げられる。
加水分解性を有するシリコン化合物は、1種のみ用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。上記一般式(3)において、m=3であるシラン化合物およびその誘導体のみを原料として使用する場合は、複合体粒子は得られない。
上記複合体粒子が、ポリシロキサン骨格が、有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接結合した有機ケイ素原子を分子内に有する形態の場合は、上記加水分解性を有するシリコン化合物としては、有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有するものを用いる必要があり、該反応基としては、例えば、ラジカル重合性基、エポキシ基、水酸基およびアミノ基などが挙げられる。
上記ラジカル重合性基を含有する有機基としては、例えば、下記一般式(4)、(5)および(6):
CH2=C(−Ra)−COORb− (4)
(ここで、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH2=C(−Rc)− (5)
(ここで、Rcは水素原子またはメチル基を表す。)
CH2=C(−Rd)−Re− (6)
(ここで、Rdは水素原子またはメチル基を表し、Reは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
で表されるラジカル重合性基などを挙げることができる。
上記一般式(4)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコン化合物としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記一般式(5)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。上記一般式(6)のラジカル重合性基含有有機基としては、例えば、1−アルケニル基もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基などが挙げられ、該有機基を有する上記一般式(3)のシリコン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン(p-スチリルトリメトキシシラン)、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
エポキシ基を含有する有機基を有するシリコン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。水酸基を含有する有機基を有するシリコン化合物としては、例えば、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
アミノ基を含有する有機基を有するシリコン化合物としては、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、上記複合体粒子に含まれる有機ポリマー骨格は、例えば、1)上記シリコン化合物が、加水分解性基とともに、ラジカル重合性基やエポキシ基等の有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有する場合には、1−1)シリコン化合物の加水分解縮合反応後に重合する方法や、1−2)シリコン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子に、ラジカル重合性モノマー、エポキシ基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマー等の重合性反応基を有する重合性モノマーを吸収させた後、重合させる方法によっても得られる。また、2)上記シリコン化合物が、ラジカル重合性基、エポキシ基、水酸基、アミノ基等の有機ポリマー骨格を形成し得る重合性反応基を含有する有機基を有しない場合には、シリコン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子(ポリシロキサン粒子からなるシード粒子、以下ポリシロキサン粒子とも言う)に、ラジカル重合性モノマー、エポキシ基を有するモノマー、水酸基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマー等の重合性反応基を有する重合性モノマーを吸収させた後、重合反応させることでも得られる。
前述のごとく、複合体粒子は、a)ポリシロキサン骨格が有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態(化学結合タイプ)であってもよいし、b)このような有機ケイ素原子を分子内に有していない形態(IPNタイプ)であってもよく、特に限定はされないが、例えば、上記1−1)のようにしてポリシロキサン骨格とともに有機ポリマー骨格を得た場合は、a)の形態を有する複合体粒子を得られ、上記2)のようにした場合は、b)の形態を有する複合体粒子が得られる。また、上記1−2)のようにしてポリシロキサン骨格とともに有機ポリマー骨格を得た場合は、上記a)とb)の形態を併せ持った形態を有する複合体粒子が得られる。
上記1−2)や2)の方法において、ポリシロキサン骨格を有する粒子に吸収させることのできるラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性ビニルモノマーを必須とするモノマー成分であることが好ましい。上記ラジカル重合性ビニルモノマーとしては、例えば、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であればその種類等は特に限定されず、所望する複合体粒子の物性に応じて適宜選択することができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
例えば、疎水性のラジカル重合性ビニルモノマーは、ポリシロキサン骨格を有する粒子に上記モノマー成分を吸収させる際に、上記モノマー成分を乳化分散させた安定なエマルションを生成させ得るので好ましい。また、ラジカル重合性ビニルモノマーとして、架橋性モノマーを用いてもよく、架橋性モノマーを使用すれば、得られる複合体粒子の機械的特性の調節が容易にでき、また、複合体微粒子の耐溶剤性を向上させることもできる。具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
上記複合体粒子を製造する方法としては、後述する加水分解、縮合工程と、重合工程とを含む製造方法が好ましく挙げられる。さらに必要に応じて、加水分解、縮合工程後、重合工程前に、重合性モノマーを吸収させる吸収工程を含めてもよい(上記1−2)および2)の場合)。なお、加水分解、縮合工程に用いるシリコン化合物が、ポリシロキサン骨格構造を構成し得る要素とともに有機ポリマー骨格を構成する要素を併せ持ったものでない場合は(上記2)の場合)、上記吸収工程を必須とし、この吸収工程に続く重合工程において有機ポリマー骨格が形成される。
上記加水分解、縮合工程は、前述したシリコン化合物を、水を含む溶媒中で加水分解して縮重合させる反応を行う工程である。該工程により、ポリシロキサン骨格を有する粒子(ポリシロキサン粒子)を得ることができる。加水分解と縮重合は、一括、分割、連続など、任意の方法を採用できる。加水分解し、縮重合させるにあたっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
上記水を含む溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などを挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解、縮合工程ではまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
加水分解および縮合は、原料となる上記シリコン化合物と、触媒や水および有機溶剤を含む溶媒を混合した後、温度0〜100℃、好ましくは0〜70℃で、30分〜100時間撹拌することにより行うことができる。また、所望の程度まで加水分解、縮合反応を行って粒子を製造した後、これをシード(種)粒子として、反応系にさらにシリコン化合物を添加して該シード粒子を成長させてもよい。
ポリシロキサン粒子は、その重量平均分子量が250〜10000であるのが好ましく、より好ましくは250〜5000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、吸収工程における重合性モノマーの吸収速度が高く、系内で、吸収されずに残存した重合性モノマーに由来する粗大粒子の発生が抑えられ、その結果、複合体粒子(乾式分級に供する)における平均粒子径2倍以上の粗大粒子含有量、または、微小粒子含有量が、低い複合体粒子が得られる。さらに、この複合体粒子を湿式分級、乾式分級工程に供することで、粗大粒子含有量が極めて低い粒子を高い収率で得られることになる。
吸収工程は、前述したように、用いるシリコン化合物に応じて必須工程にすべき場合と、任意工程にしてもよい場合とがある。上記吸収工程は、ポリシロキサン粒子の存在下に、重合性モノマーを存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に重合性モノマーを加えてもよいし、重合性モノマーを含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、重合性モノマーを加えるのが好ましく、さらには、加水分解、縮合工程で得られたポリシロキサン粒子を反応液(ポリシロキサン粒子分散液)から取り出すことなく、該反応液に重合性モノマーを加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。
なお、吸収工程においては、上記ポリシロキサン粒子の構造中に上記重合性モノマーを吸収させるが、重合性モノマーの吸収が速やかに進行するように、ポリシロキサン粒子および重合性モノマーそれぞれの濃度や、上記ポリシロキサンと重合性モノマーの混合比、混合の処理方法、手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法、手段などを設定し、その条件のもとで行うのが好ましい。 これら条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性モノマーの種類などによって、適宜その必要性を考慮すればよい。また、これら条件は1種のみ適用しても2種以上を合わせて適用してもよい。
上記吸収工程における、重合性モノマーの添加量は、ポリシロキサン粒子の原料として使用したシリコン化合物の質量に対して、質量で0.01倍〜100倍とするのが好ましい。より好ましくは0.5〜50倍であり、さらに好ましくは0.5〜30倍であり、特に好ましくは1〜15倍である。添加量が上記範囲に満たない場合は、ポリシロキサン粒子の重合性モノマーの吸収量が少なくなり、生成する複合体粒子の機械的特性が得られ難くなることがあり、上記範囲を超える場合は、添加した重合性モノマーをポリシロキサン粒子に完全に吸収させることが困難となる傾向があり、未吸収の重合性モノマーが残存するため後の重合段階において粒子間の凝集が生じたり、未吸収の重合性モノマーに由来する粗大粒子が発生しやすくなるおそれがある。
上記吸収工程において、重合性モノマーの添加のタイミングは特に限定されず、該重合性モノマーを一括で加えておいてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、重合性モノマーを加えるにあたっては、重合性モノマーのみで添加しても、重合性モノマーの溶液を添加してもよいが、重合性モノマーを予め乳化剤で乳化分散させた状態でポリシロキサン粒子に加えておくことが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
上記乳化剤は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素‐炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤は、ポリシロキサン粒子や、重合性モノマーを吸収したポリシロキサン粒子、重合体微粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
上記乳化剤の使用量は特に限定されるものではなく、具体的には、上記重合性モノマーの総質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜8質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。上記乳化剤の使用量が、0.01質量%未満の場合は、安定な重合性モノマーの乳化分散物が得られないことがあり、10質量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。上記乳化分散については通常、上記重合性モノマーを乳化剤とともにホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
また、重合性モノマーを乳化剤で乳化分散させる際には、重合性モノマーの質量に対して0.3〜10倍の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。上記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類などが挙げられる。
上記吸収工程は、0〜60℃の温度範囲で、5分〜720分間、攪拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や重合性モノマーの種類などによって、適宜設定すればよく、これらの条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
吸収工程において、モノマー成分がポリシロキサン粒子に吸収されたかどうかの判断については、例えば、モノマー成分を加える前および吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、モノマー成分の吸収により粒子径が大きくなっていることを確認することで容易に判断できる。
重合工程は、重合性反応基を重合反応させて、有機ポリマー骨格を有する粒子を得る工程である。具体的には、シリコン化合物として重合性反応基含有有機基を有するものを用いた場合は、該有機基の重合性反応基を重合させて有機ポリマー骨格を形成する工程であり、吸収工程を経た場合は、吸収させた重合性反応基を有する重合性モノマーを重合させて有機ポリマー骨格を形成する工程であるが、両方に該当する場合はどちらの反応によっても有機ポリマー骨格を形成する工程となり得る。
重合反応は、加水分解縮合工程や吸収工程の途中で行ってもよいし、いずれか又は両方の工程後に行ってもよく、特に限定はされないが、通常は、加水分解縮合工程後(吸収工程を行った場合は吸収工程後)に開始するようにする。
重合反応は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法など、いずれも採用可能である。上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、t‐ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス(2‐アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’‐アゾビス(4‐シアノペンタン酸)、2,2’‐アゾビス‐(2‐メチルブチロニトリル)、2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、上記重合性モノマーの総質量に対して、0.001質量%〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%未満の場合は、重合性モノマーの重合度が上がらない場合がある。上記ラジカル重合開始剤の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込む方法(ラジカル重合開始剤を重合性モノマーと共に乳化分散させておく態様、重合性モノマーが吸収された後にラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する方法、または、断続的にパルス添加する方法、あるいは、これらを組み合わせた手法など、従来公知の手法はいずれも採用することができる。
上記ラジカル重合する際の反応温度は40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃がより好ましい。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず重合体微粒子の機械的特性が得られ難くなる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。尚、上記ラジカル重合する際の反応時間は用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5〜600分が好ましく、10〜300分がより好ましい。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
本発明では、重合工程後、得られた重合体微粒子を含む調製液をそのまま、あるいは、有機溶剤を蒸留して水および/またはアルコールを含む分散媒に置換した後、上述の湿式分級工程に供給してもよく、また、生成した重合体微粒子を単離し、乾燥させた後、水および/または有機溶剤に分散させた後、湿式分級工程へと供給してもよい。
本発明の微粒子は、粗大粒子および微小粒子の含有量が低減され、粒度分布が狭いものであるため、光学用途、例えば、LCD等に用いる光拡散シートや導光板、あるいは、PDP、ELディスプレイおよびタッチパネル等に用いる光学用樹脂に含有させる光拡散剤やアンチブロッキング剤などの添加剤などとして有用である。もちろん、これらの光学用途以外の各種フィルム用のアンチブロッキング剤などとしても好適に用いられる。
本発明に係る樹脂組成物は、本発明の微粒子と透明バインダー樹脂とを含む樹脂組成物である。上述のように本発明の微粒子は、粗大粒子のみならず微小粒子の含有量も極低レベルに抑えられているため、光学用途に好適に用いられる。
上記樹脂組成物中の微粒子の含有量は、用途や所望の光学特性に応じて適宜決定すれば良いが、光学用途に用いる場合であれば、バインダー樹脂組成物100質量部に対して1質量部以上、300質量部以下とするのが好ましい。より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。微粒子の含有量が多すぎる場合は、光学用部材の強度が低下する虞があり、少なすぎる場合には、微粒子の添加により期待する効果(光拡散性など)が得られ難い場合がある。
本発明樹脂組成物に含まれる透明バインダー樹脂は、特に限定されず、当該分野においてバインダー樹脂として使用されるものはいずれも用いることができる。例えば、(I)本発明の樹脂組成物を用いて形成される部材が、本発明の樹脂組成物そのものを板状、シート状等の所望の形状に成形されるものである場合(すなわち、バインダー樹脂を板状、シート状成形体の基材樹脂とする場合)、透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、および、トリアセチルセルロース樹脂などが挙げられる。
また、(II)部材が、予め準備された板状やシート状などの基材表面に、本発明の樹脂組成物を積層(コーティング、ラミネートなど)等して一体化させてなるものである場合、透明バインダー樹脂としては、上記バインダー樹脂と同様のものが使用できるが、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂、およびポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、上記微粒子および透明バインダー樹脂以外にも、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、耐光性や耐UV性などの物性を高めるため、硬化剤、架橋剤、各種添加剤や安定剤および難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物から得られる成形体は、上記バインダー樹脂中に本発明の微粒子が分散、固定された成形体であるため、光拡散性や光透過性など優れた光学特性を具備するものである。したがって、本発明の樹脂組成物は、各種光学製品の構成部材の原料として好適に用いられる。なお、上述した本発明の微粒子に由来する優れた光拡散性や光透過性を有効に活用するという観点からは、各種画像表示装置の前面に設置して、外光や室内照明機器の映り込みを防止して画像の表示を鮮明にする反射防止防眩性フィルムや、画像表示装置内において、光源からの光を画像表示面に均一に拡散させる光拡散フィルムや光拡散板などの光学用部材に好適に用いられる。
上記光学用部材の形状は、フィルム状(シート状)や板状に限られず、柱体、錐体、球など、所望の形状に成形したものであってもよい。なお、優れた光拡散効果、防眩効果(光の正反射を抑制し、拡散することによる防眩効果)を確保する観点からは、光学用部材の表面に、上述の本発明の微粒子に由来する凹凸が形成されていることが好ましい。
例えば、上記光学用部材が、光拡散フィルムや、反射防止防眩フィルムのようなフィルム状(以下、「光学フィルム」という)の成形体である場合、その形態としては、面状部分を有し、透明バインダー樹脂により光拡散粒子が固定されてなる構成(光学機能層)を少なくとも一部に有している形態が挙げられる。例えば、(i)樹脂組成物を構成する透明バインダー樹脂そのものを板状やシート状などの基材樹脂とし、板状またはフィルム状に形成した形態(光拡散板など)、(ii)予め準備した板状やシート状の基材表面の一部または全体に、上記樹脂組成物からなる層を積層(コーティング、ラミネート)し、一体化した形態(光拡散フィルム、防眩性フィルムなどの表面凹凸フィルム、光拡散板など)、等が挙げられる。上記(i)、(ii)のいずれの形態の場合も、透明バインダー樹脂中に粒子が分散、固定されているため、優れた光学特性を発揮することができる。
なお、上記「面状部分を有する」とは、一般的には、光学部材の形状が板状、シート状あるいはフィルム状のように、一定の面積の広がりを持った実質的に平らな表面部分(表面に微細な凹凸が形成されている場合を含む)がその形状の主たる構成要素となっていることを言うが、本発明ではかかる態様には限られず、主たる構成要素ではなくても、その形状の少なくとも一部に実質的に平らな表面部分を有していればよい。
上記(i)の形態の光学部材を製造する方法としては、本発明の樹脂組成物を、公知の押出機により溶融混練しながら押し出してシート状、板状およびフィルム状に成形する方法が挙げられる。このとき、必要に応じて、耐光性や耐UV性などの物性を高めるため、上記樹脂組成物に各種添加剤や安定剤および難燃剤などの添加物を加えて成形してもよい。光学特性の均一な成形体を得るためには、上記樹脂組成物は、予め、透明バインダー樹脂中に本発明の微粒子を混合し、分散させておくことが好ましい。また同様に、上記添加物も樹脂組成物と混合しておいてもよい。
上記(ii)の形態の光学部材を得る方法としては、予め準備した基材表面に、本発明の樹脂組成物からなる層を積層する方法が挙げられる。積層方法は特に限定されず、塗布法や、キャスト方などが好ましく例示される。塗布法としては、上記樹脂組成物を含んでなる塗布用組成物を基材に塗布すればよい。本発明の樹脂組成物は、そのまま塗布用組成物として用いることもできるが、上記樹脂組成物を、水、または、有機溶剤(例えば、メタノール,エタノール,イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコール,プロピレングリコールなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、および、トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素など)に分散、溶解させて調製した塗布用組成物を用いるのが好ましい。基材は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムなど、従来公知の無色透明な樹脂フィルムが好ましく用いられる。具体的な塗布方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、およびスプレーコート法等の公知の積層方法が挙げられる。
塗布後、必要に応じて塗布膜中に含まれる溶媒を乾燥した後、塗布膜を固化させて樹脂組成物層を形成する。なお、耐熱性、耐候性を確保する観点からは、樹脂組成物からなる層は、この樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂を硬化あるいは架橋させることが好ましい。
上述した方法により形成された本発明の樹脂組成物(あるいは塗布用組成物)からなる層の膜厚は特に限定されないが、上記光拡散フィルムの場合、樹脂組成物からなる層(光拡散層)の膜厚は30μm以下、防眩性フィルムの場合、樹脂組成物からなる層(防眩層層)の膜厚は20μm以下、光拡散板の厚みは2000μm以下であるのが好ましい。従来、厚みが薄い場合には、十分な光拡散性や光透過性を発現させることが困難であったが、本発明の微粒子あるいは樹脂組成物を使用すれば、厚みが薄くても極めて優れた光拡散性および光透過性を発揮できる。なお、上記光拡散フィルムおよび防眩性フィルム膜厚の値は、基材上に積層された樹脂組成物を含む層(すなわち、光拡散層、防眩層)の厚みを表すもので、基材の厚みは含まれない。
本発明の微粒子は、粗大な粒子の含有量が極低レベルに抑えられており、また、粒度分布がシャープであることに加え、塗布用組成物中においても膨潤などの変質を起こし難い化学的に安定な微粒子であるので、上述のような光学部材(光拡散フィルム、防眩性フィルム、光拡散板など)に、均一で、微細な凹凸を形成できる。したがって、本発明の微粒子を用いて得られる光拡散フィルム、防眩性フィルムおよび光拡散板などの光学部材は、粗大粒子に由来する局所的な光り抜けや、外観状の不具合となる光学的異物が生じ難い。また、本発明の微粒子の平均粒子径の制御によって、光学特性の調整もできるので、光学用途に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、特に断らない限り、質量部を「部」、質量%を「%」と表すことがある。
微粒子の製造
製造例1(ポリシロキサン微粒子)
冷却装置、温度計および滴下口を備えた反応釜に、イオン交換水280部、25%アンモニア水5部およびメタノール120部の混合溶液を入れ、混合溶液の攪拌下、滴下口から、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部を投入して、温度30℃で2時間、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、ポリシロキサン微粒子の懸濁液を調整した。なお、このとき得られたポリシロキサン粒子の重量平均分子量は1800であった(用いたシリコン化合物の約7量体に相当)。
別途、上述のものとは異なる反応釜2で、スチレン400部、2,2’‐アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V‐65)3部、アニオン性界面活性剤(LA‐10、第一工業社製)1.5部およびイオン交換水400部をホモミキサーにより、室温下(25℃)で15分間乳化分散させ、エマルションを調整した(モノマー溶液)。
前記ポリシロキサン粒子の懸濁液の調製開始から2時間後(γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン添加から2時間後)、反応釜1の滴下口より上記エマルションを添加した。1時間攪拌を継続し、ポリシロキサン粒子がモノマー成分を吸収していることを確認した後、ここにイオン交換水3500部を添加し、窒素雰囲気下、反応溶液を65℃まで昇温させて、65±2℃で2時間保持し、ラジカル重合反応を行い、重合体粒子(有機質無機質複合体粒子)分散液を得た。分散液中に分散する重合体粒子の平均粒子径は10.1μm、分散液のB型粘度(B型粘度計、株式会社東京計器製)は3.8mPa・s、固形分濃度は10質量%であった。
製造例2〜7(ポリシロキサン粒子)
ポリシロキサン粒子原料、ラジカル重合性モノマー種、及び、使用量を表1のように変更した以外は、製造例1と同様にして、重合体粒子分散液を調整した。尚、ポリシロキサン粒子懸濁液、エマルションの調整に用いたイオン交換水、メタノール、界面活性剤の量は、各製造例の条件に応じて適宜調整した。
[重合体粒子の平均粒子径、粗大粒子量の測定]
上記製造例で得られた重合体粒子分散液を固液分離し、乾燥した重合体粒子0.5gをイオン交換水100gに分散させて重合体粒子分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(製品名「マルチサイザーII」、ベックマン・コールター株式会社製)を使用して、重合体粒子の粒子径の測定を行い、体積基準で平均粒子径を算出した。
なお、重合体粒子分散液中に含まれる粗大粒子(平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子)の量の測定は、以下のようにして行った。
乾燥させた重合体粒子0.5gをメタノール100gに分散させた重合体粒子分散溶液(粘度:3mPa・s、固形分濃度:0.5質量%)を調整し、平均粒子径の1.75〜2倍の目開きを有するメッシュ(ニッケル製、東京プロセスサービス株式会社製)と、濾過鐘にブフナーロートを備えた吸引濾過装置を使用して、減圧下で濾過を行った。 次いで、メッシュ上に残留した粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、「S-3500N」、日立製作所製、加速電圧:25kV)で観察し、目視で平均粒子径の2倍以上の粗大粒子の個数を数えた。尚、観察は、倍率200倍で、全視野を観察した。結果は、表1中、「>平均径×2」で示す。
また、平均粒子径2.5倍以上の粒子径を有する粗大粒子量の場合は、平均粒子径の2.25〜2.5倍の目開きを有するメッシュを用いたこと以外は、上述の手順と同様にして行った。結果は、表1中、「>平均径×2.5」で示す。
[SiO2含有量]
焼成炉装置中で、重合体粒子1gを800℃(大気雰囲気下)で焼成し、生成した灰分をSiO2として、使用した重合体粒子の質量に対するSiO2の割合を算出した。
[固形分濃度]
重合体粒子の固形分濃度は、重合体粒子分散溶液0.5gを、120℃×20分(真空中)で乾燥し、残留した固形分の質量の重合体粒子分散液の質量に対する割合を固形分濃度とした。
固形分濃度(%)=[残留した固形分質量/重合体粒子分散液質量]×100
[かさ比重]
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にて測定した。
[水分含量]
粉砕粒子0.5gを測定試料とし、カールフィッシャー水分計(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。
[重量平均分子量]
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、「HLC−8120GPC」、東ソー株式会社製)を使用して、以下の測定条件により測定した。尚、測定試料は、固形分濃度が0.8%となるように試料をテトラヒドロフラン(THF)により希釈して調整した。
カラム : TSKgelG5000HXL−TSKgel2000HXL(東ソー株式会社製)
カラム温度:25℃
溶離液 :THF
ポンプ :L6000(株式会社 日立製作所製)
流量 :1.0ml/min
検出 :R1 Model 504(GLサイエンス株式会社製)
試料濃度:0.8%
標準試料・校正曲線:標準ポリスチレン(TSK標準ポリスチレン、東ソー株式会社製)、Mw=500〜1000000までの13サンプルによる校正曲線を使用した。
実施例1
製造例1で得られた重合体粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級した(湿式分級工程)。次いで、湿式分級後の重合体粒子分散液を自然沈降により固液分離した。得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで洗浄した後、100℃で5時間真空乾燥することにより、粒子が凝集してなる乾燥物を得た。該乾燥物を粉砕することにより、粉砕粒子を得た(回収率99質量%)。
このとき得られた粉砕粒子は、かさ比重0.7g/cm3、粒子径10.1μm、水分含量0.5質量%以下であった。
得られた粉砕粒子を高精度気流分級機(「DFX5型」、日本ニューマチック工業株式会社製)に投入し、高速旋回気流および吸引ブロワーにより粉砕粒子に与えられる遠心力と抗力とのバランスを調節することにより分級し、供給した粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
実施例2
実施例1と同様の工程により、製造例2で得られた重合体粒子分散溶液から粉砕粒子を調整した(回収率99質量%)。このとき得られた粉砕粒子は、かさ比重0.7g/cm3、粒子径10.1μm、水分含量0.5質量%以下であった。
次いで、得られた粉砕粒子を回転ローター式分級装置(「ターボプレックス100ATP」、ホソカワミクロン株式会社製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給した粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
実施例3
実施例1と同様にして、製造例3で得られた重合体粒子分散液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径10.1μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
この粉砕粒子を、回転ローター式気流分級装置(「ターボクラシファイアTC-15」、日清エンジニアリング社製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
実施例4
実施例1と同様にして、製造例3で得られた重合体粒子分散液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径10.1μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99%)。
この粉砕粒子を、コアンダ式気流分級装置(「エルボージェットEJ-15」、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジを使用)に投入し、微粒子に与えられる慣性力と吸引ブロワーによる効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
実施例5
実施例1と同様の工程により、製造例4で得られた重合体粒子分散溶液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径3.7μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
次いで、得られた粉砕粒子を高精度気流分級機(「DFX5型」、日本ニューマチック工業株式会社製)に投入し、高速旋回気流および吸引ブロワーにより粉砕粒子に与えられる遠心力と抗力とのバランスを調節することにより分級し、供給した粉砕粒子に対する回収率88質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は87質量%であった。
実施例6
実施例1と同様の工程により、製造例5で得られた重合体粒子分散溶液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径25.2μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
次いで、得られた粉砕粒子を回転ローター式分級装置(「ターボプレックス100ATP」、ホソカワミクロン株式会社製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給した粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
実施例7
実施例1と同様の工程により、製造例6で得られた重合体粒子分散溶液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径4.2μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
この粉砕粒子を、回転ローター式気流分級装置(「ターボクラシファイアTC-15」、日清エンジニアリング社製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率86質量%で微粒子を得た(乾式分級工程)。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は85質量%であった。
実施例8
実施例1と同様の工程により、製造例7で得られた重合体粒子分散溶液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径12.5μm、水分含量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
この粉砕粒子を、コアンダ式気流分級装置(「エルボージェットEJ-15」、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジを使用)に投入し、微粒子に与えられる慣性力と吸引ブロワーによる効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率85質量%で微粒子を得た。尚、このときの重合体粒子分散液からの微粒子の回収率は84質量%であった。
比較例1
製造例1で得られた重合体粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級した(湿式分級工程)。次いで、湿式分級後の重合体粒子分散液を自然沈降により個液分離した。得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで洗浄した後、100℃で5時間真空乾燥することにより、粒子が凝集してなる乾燥物を得た。該乾燥物を粉砕することにより粉砕粒子を得た。
比較例2
製造例2で得られた重合体粒子分散液を、目開き20μmのステンレス鋼製金網で分級した後、さらに、カートリッジフィルター(日本ポール社製、商品名「ウルチプリーツ・プロファイルPUY1UY500」)で1パス処理した(湿式分級工程)。次いで、比較例1と同様手順で重合体粒子の分離、洗浄、乾燥を行い、得られた乾燥物を粉砕することにより粉砕粒子を得た。
比較例3
製造例5で得られた重合体粒子分散液を、目開き40μmのステンレス鋼製金網で分級した(湿式分級工程)。次いで、次いで、比較例1と同様手順で重合体粒子の分離、洗浄、乾燥を行い、得られた乾燥物を粉砕することにより粉砕粒子を得た。
実施例1〜8および比較例1〜3における分級処理の内容、得られた微粒子および粉体粒子関する評価結果を表2に示す。尚、各評価方法は、以下の通りである。
[微粒子の平均粒子径、粗大粒子量の測定]
上記実施例、比較例で得られた微粒子0.5gをメタノール100gに分散させて重合体粒子分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(製品名「マルチサイザーII」、ベックマン・コールター株式会社製)を使用して、粒子径の測定を行い、体積基準で平均粒子径を算出した。
粗大粒子1(平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粗大粒子)の量の測定は、次のようにして行った。上記平均粒子径測定と同様にして調整した微粒子分散溶液(粘度:3mPa・s、固形分濃度:0.5質量%)を、平均粒子径の1.75〜2倍の目開きを有するメッシュ(ニッケル製、東京プロセスサービス株式会社)と、濾過鐘にブフナーロートを備えた吸引濾過装置を使用して、減圧下で濾過を行った。
次いで、メッシュ上に残留した粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、「S-3500N」、日立製作所製、加速電圧:25kV)を使用して、200倍で全視野観察し、目視で平均粒子径の2倍以上の粗大粒子の個数(個/0.5g)を数えた。
なお、平均粒子径2.5倍以上の粒子径を有する粗大粒子量(粗大粒子2)の場合は、平均粒子径の2.25〜2.5倍の目開きを有するメッシュを用いたこと以外は、上述の手順と同様にして行った。
[微小粒子量の測定]
実施例および比較例で得られた微粒子0.5gをイオン交換水100gに分散させて微粒子分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(製品名「マルチサイザーII」、ベックマン・コールター株式会社製)を使用して、粒子径および平均粒子径の測定を行った(体積基準)。測定結果を基に、平均粒子径の小数点1桁を四捨五入して得られる数値の1/2以下の粒子径を有する微粒子の体積%を算出し、得られた値を微小粒子量とした。
表2中、「回転ローター式気流分級装置1」はホソカワミクロン株式会社製の「ターボプレックス100ATP」を用いたことを、「回転ローター式気流分級装置2」は日清エンジニアリング社製の「ターボクラシファイアTC-15」を用いたことを示す。また、「粗大粒子1」は、平均粒子径の2倍以上の粒子径を有する粒子の個数(個/0.5g)、「粗大粒子2」は、平均粒子径の2.5倍以上の粒子径を有する粒子の個数(個/0.5g)を意味し、「製品回収率」は、実施例および比較例で分級工程に供給した粒子の総質量に対して、分級工程を経て回収された微粒子の合計質量の割合を意味する。
製造例8(アミノ樹脂架橋粒子)
冷却ライン、温度計、および、滴下口を供えた反応釜に、メラミン75部、ベンゾグアナミン75部、濃度37%のホルマリン290部および濃度10%の炭酸ナトリウム水溶液1.16部を仕込み、アミノ樹脂前駆体形成用混合物を調整した。この混合物を撹拌しながら85℃に昇温した後、該温度で1.5時間保持し、初期縮合物を得た。別途、ノニオン系界面活性剤のエマルゲン(登録商標)430(花王株式会社、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)7.5部をイオン交換水2455部に溶解させて調製した界面活性剤溶液を50℃で保持し、撹拌下、ここに前記初期縮合物を投入し、アミノ樹脂前駆体の乳濁液を得た。この乳濁液に5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液90部を投入し、70〜90℃の温度で縮合、硬化させ、アミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液を得た。
製造例9,10(アミノ樹脂架橋粒子)
アミノ系化合物、ホルマリンの使用量を表3に示す量に変更したこと以外は製造例8と同様にして、アミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液を調製した。
製造例11(ポリスチレン粒子)
スチレン50部、エチレングリコールジメタクリレート50部、アゾ系重合開始剤(V−65、和光純薬工業社製)5部、t−ブチルハイドロキノン0.5部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5部およびイオン交換水100部を混合、撹拌して乳化させ、重合性単量体の水分散液を得た。
冷却ライン、温度計および滴下口を備えた反応釜に、粒子径1μmの単分散ポリスチレンラテックス(固形分濃度5%)40部をイオン交換水200部に添加し分散させ、このシード粒子の水分散体を65℃に昇温し、上記重合性単量体の水分散液の全量、およびポリビニルアルコールの2%水溶液200部を5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、85℃に昇温して、さらに3時間この温度に保ち、ポリスチレン粒子を含む懸濁液を得た。
製造例12(ポリスチレン粒子)
表4に示すように、ラジカル重合性モノマーの組み合わせを変更し、単分散ポリスチレンラテックス(粒子径:0.6μm(製造例12)、0.7μm(製造例13))の添加量を適宜調整した以外は、製造例11と同様にして、ポリスチレンラテックス微粒子分散溶液を調整した。
実施例9
製造例3で得られた重合体分散液を、カートリッジフィルターを複数組み合わせた構成(プレフィルター1:HC−75、プレフィルター2:HC−25、ファイナルフィルター:SLP300、いずれもロキテクノ社製)でろ過処理を行った(湿式分級工程)。
次に、分散液を自然沈降により固液分離し、得られたケーキをイオン交換水およびメタノールで洗浄した後、100℃で5時間真空乾燥することにより、粒子が凝集してなる乾燥物を得た。該乾燥物を粉砕することにより粒子を得た。
このとき得られた粉砕微粒子は、かさ比重0.7g/cm3、粒子径6.9μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率97質量%であった。
これをコアンダ式気流分級装置(エルボージェットEJ−15、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジ使用)に投入し、微粒子に与える慣性力と吸引ブロアーによる抗力のバランスを調節することにより分級し、供給した粉砕粒子に対する回収率89質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級工程)。
実施例10
実施例9と同様の工程により、製造例8で得られた重合体分散溶液から粉砕粒子を調整した(かさ比重0.6g/cm3、粒子径8.5μm、水分含有量1.0質量%以下、回収率96質量%)。
この粉砕粒子を、高精度気流分級機(DFX5型、日本ニューマチック工業株式会社製)に投入し、高速旋回気流により粉砕粒子に与えられる遠心力と吸引ブロアーによる抗力とのバランスを調節することにより分級し、供給した粉砕粒子に対する回収率85質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級工程)。
実施例11
実施例9と同様の工程により、製造例11で得られた重合体分散溶液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径4.0μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率97質量%)。
この粉砕粒子を、回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC−15、日清エンジニアリング製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率85質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級工程)。
実施例12
実施例1と同様の方法で、製造例10で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.6g/cm3、粒子径13.1μm、水分含有量1.0質量%以下、回収率99質量%)。
得られた粉砕微粒子をコアンダ式気流分級装置(エルボージェットEJ−15、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジ使用)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率85質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級工程)。
実施例13
実施例1と同様の方法で、製造例9で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.6g/cm3、粒子径2.0μm、水分含有量1.0質量%以下、回収率99質量%)。
得られた粉砕微粒子を高精度気流分級機(DFX5型、日本ニューマチック工業株式会社製)に投入し、高速旋回気流により粉砕粒子に与えられる遠心力と吸引ブロアーによる抗力とのバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率80質量%で分級した微粒子を得た。
実施例14
実施例1と同様の方法で、製造例12で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径6.5μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
得られた粉砕微粒子をコアンダ式気流分級装置(エルボージェットEJ−15、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジ使用)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率87質量%で分級した微粒子を得た。
実施例15
実施例1と同様の方法で、製造例13で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径9.3μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
得られた粉砕微粒子を回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC−15、日清エンジニアリング製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率83質量%で分級した微粒子を得た。
比較例4
実施例1と同様の方法で、製造例12で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径6.5μm、水分含有量0.5質量%以下、回収率99質量%)。
得られた粉砕微粒子をコアンダ式気流分級装置(エルボージェットEJ−15、日鉄鉱業株式会社製、フィードエアー:5kgf、スリムエッジ使用)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率75質量%で分級した微粒子を得た。
比較例5
湿式分級を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、製造例3で得られた重合体粒子分散液から粉砕微粒子を調製した(かさ比重0.7g/cm3、粒子径6.9μm、水分含有量0.5質量%以下)。
得られた粉砕微粒子を回転ローター式気流分級装置(ターボクラシファイアTC−15、日清エンジニアリング製)に投入し、分級ローターの回転速度と吸気口からの空気の供給により粉砕粒子に与えられる遠心力と効力のバランスを調節することにより分級を行い、供給粉砕粒子に対する回収率90質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級1回目)。その後、同様の乾式分級工程を繰返して、供給粉砕粒子に対する回収率90質量%で分級した微粒子を得た(乾式分級2回目)。
実施例9〜13および比較例4における分級処理の内容、得られた微粒子および粉体粒子に関する評価結果を表5に示す。尚、各評価方法は、上記の通りである。
なお、比較例5は、分級工程として乾式分級を2回繰返した例である。乾式分級を繰返しただけでは、粗大粒子が十分に除去されなかった。また、乾式分級を繰り返すことで、製品回収率が低下する傾向が見られ、乾式分級のみでは工業的な製品収率が得られ難いことが分かる。
実施例16 防眩フィルムの製造
実施例1,9,10および比較例4で得た各樹脂粒子3質量部とトルエン20質量部とを十分に撹拌混合した。当該混合液に、アクリル系電離放射線硬化樹脂40質量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカル社製、「イルガキュア(登録商標)907」)2質量部、メチルエチルケトン23質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル2質量部、およびレベリング剤(ビックケミー社製、BYK320)を加え、十分に撹拌して塗工液を調製した。
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製、「フジタック(登録商標)」)の片面に、当該塗工液をバーコータにより塗布した。得られた塗布膜を80℃のドライヤーで乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂成分を硬化させることにより防眩フィルムを製造した。
各防眩フィルムの裏面に黒色のフィルムを貼り合わせ、当該フィルムから2m離れた位置より10000cd/m2の蛍光灯を映し、その反射像のボケの程度を下記基準により評価した。結果を表6に示す。
○:蛍光灯の輪郭が判別できない。
×:蛍光灯の輪郭が明確に判別できる。
また、各防眩フィルムについて、写像測定器(スガ試験機株式会社製、ICB−IDD)と、0.5mm幅の光学櫛を用いて、JIS K7105に従って透過鮮明度(像鮮明度)を測定した。
さらに各防眩フィルムを、パーソナルコンピューターに接続した液晶モニター(15インチXGA、TFT−TN方式、正面輝度:350cd/m2、正面コントラスト:300対1、表面AG:なし)の表面に貼り合わせ、文字のボケ具合を下記の基準により評価した。結果を表6に示す。
○:文字の輪郭はまったくボケていない。
×:文字の輪郭がボケており、強い違和感が感じられる。
表6から分かるように、実施例1,9および10の粒子を用いて得られた防眩フィルムは、いずれも優れた防眩性、並びに視認性(文字ボケがない)を有するものであった。一方、平均粒子径の2倍を超える粗大粒子量の多い比較例4の粒子を用いて製造した防眩フィルムは、防眩性は有するものの、防眩フィルムに含まれる粗大粒子がレンズのように作用したり、当該粗大粒子に起因してフィルム表面に傷が生じ、その結果、文字が視認しづらくなったものと考えられる。