以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明に従う構造とされた保護カバーの1実施形態であるダストカバー10が、サスペンション機構のショックアブソーバ12に装着された状態で示されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、ダストカバー10の軸方向である図1中の上下方向を言う。
より詳細には、ダストカバー10は、図2〜図5に示されているように、全体として薄肉の略円筒形状を有しており、ゴム弾性体や合成樹脂等で形成されて弾性を有している。ダストカバー10を形成するゴム弾性体や合成樹脂は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、例えば熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(PP)にエチレン・プロピレンゴム(EPDM)を混合して分散化させたものが、耐候性や成形性等に優れることから採用されている。尤も、熱可塑性樹脂で形成する場合には、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂等といった各種の熱可塑性エラストマーが何れも採用され得る。また、ゴム弾性体で形成する場合には、合成ゴムと天然ゴムの何れを用いることも可能である。
また、ダストカバー10の軸方向上端部には、略円筒形状の上側取付部14が設けられていると共に、ダストカバー10の軸方向下端部には、略円筒形状の下側取付部18が設けられている。
また、ダストカバー10の軸方向中間部分には、蛇腹部24が設けられている。蛇腹部24は、外周側に向かって凸とされた山部26と、外周側に向かって凹とされた谷部28とを、それぞれ複数ずつ有しており、それら山部26と谷部28が交互に形成されている。
山部26は、外周側に向かって軸方向で次第に狭幅となる所定の断面形状で全周に亘って連続的に形成されている。更に、それら複数の山部26は、その頂部の外径寸法が相互に同じとされており、蛇腹部24の最大外径寸法が略一定とされている。
また、軸方向で隣り合う山部26の間にはそれぞれ谷部28が設けられており、各谷部28が外周側に向かって軸方向で次第に拡開するV字断面をもって全周に亘って連続的に形成されている。
さらに、谷部28は、大谷部30と中谷部32と小谷部34の各複数によって構成されている。大谷部30は、底部の内周面から山部26の頂部までの寸法(深さ寸法)が最も大きい、換言すれば底部の内外径寸法が最も小さい谷部であって、外周側に向かって軸方向で次第に拡開するV字断面を呈している。中谷部32は、底部の内外径寸法が大谷部30よりも大きくされた谷部であって、外周側に向かって軸方向で次第に拡開するV字断面を呈している。そして、大谷部30と中谷部32は、各複数が軸方向で交互に設けられている。
小谷部34は、底部の内外径寸法が中谷部32よりも更に大きくされた谷部であって、外周側に向かって軸方向で次第に拡開するV字断面を呈している。そして、大谷部30と中谷部32の間にそれぞれ小谷部34が位置するように順に設けられており、大谷部30と小谷部34の境界部分および中谷部32と小谷部34の境界部分にそれぞれ山部26が形成されている。換言すれば、軸方向に大谷部30、小谷部34、中谷部32、小谷部34の順で設けられて構成された組が、軸方向で繰り返し設けられることにより、谷部28が構成されている。
また、図4に示されているように、蛇腹部24において、山部26の頂部における厚さ寸法(D7 −D6 )が、大谷部30の底部における厚さ寸法(D1 −D0 )よりも、小さくされている(D7 −D6 <D1 −D0 )。本実施形態では、蛇腹部24が外周側に向かって次第に薄肉となっており、山部26の頂部が最も薄肉とされている。
また、大谷部30と中谷部32は、それらの底部が径方向で相互に外れて位置するように内外径寸法が設定されている。即ち、大谷部30の底部における外径寸法(D1 )に対して、中谷部32の底部における内径寸法(D2 )が大きく(D1 <D2 )されており、中谷部32の底部が大谷部30の底部よりも外周側に位置している。
さらに、中谷部32と小谷部34は、それらの底部が径方向で相互に外れて位置するように内外径寸法が設定されている。即ち、中谷部32の底部における外径寸法(D3 )に対して、小谷部34の底部における内径寸法(D4 )が大きく(D3 <D4 )されており、小谷部34の底部が中谷部32の底部よりも外周側に位置している。
また、本実施形態では、山部26の頂部における外径寸法(D7 )と中谷部32の底部における外径寸法(D3 )との差(D7 −D3 )が、山部26の頂部における外径寸法(D7 )と大谷部30の底部における内径寸法(D0 )との差(D7 −D0 )に対して、2/3倍以上(D7 −D3 ≧(D7 −D0 )*2/3)とされている。
さらに、本実施形態では、山部26の頂部における外径寸法(D7 )と小谷部34の底部における内径寸法(D4 )との差(D7 −D4 )が、山部26の頂部における外径寸法(D7 )と大谷部30の底部における内径寸法(D0 )との差(D7 −D0 )に対して、1/3倍以下(D7 −D4 ≦(D7 −D0 )*1/3)とされている。
特に本実施形態のダストカバー10では、小谷部34の底部における外径寸法(D5 )と中谷部32の底部における外径寸法(D3 )との差(D5 −D3 )が、中谷部32の底部における外径寸法(D3 )と大谷部30の底部における外径寸法(D1 )との差(D3 −D1 )に対して、2.5倍以上に設定されている。これにより、小谷部34の底部が、充分に薄肉とされた蛇腹部24の外周部分に配置されている。
なお、図4において、D0 は大谷部30の底部における内径寸法、D1 は大谷部30の底部における外径寸法、D2 は中谷部32の底部における内径寸法、D3 は中谷部32の底部における外径寸法、D4 は小谷部34の底部における内径寸法、D5 は小谷部34の底部における外径寸法、D6 は山部26の頂部における内径寸法、D7 は山部26の頂部における外径寸法を、それぞれ示す。
このような本実施形態に従う構造とされたダストカバー10は、図1に示されているように、自動車のサスペンション機構に装着される。より具体的には、ダストカバー10は、ショックアブソーバ12のシリンダ36の上端部とピストンロッド38の下部とを覆うように設けられている。そして、図示しない車両ボデーに取り付けられたアッパ側スプリング受部材40の下端部が上側取付部14に挿入されることにより、ダストカバー10の上端部が車両ボデーに取り付けられていると共に、シリンダ36が下側取付部18に挿入されることにより、ダストカバー10の下端部がシリンダ36に取り付けられている。
かくの如きダストカバー10のサスペンション機構への装着状態において、路面からの入力によってショックアブソーバ12が伸縮作動すると、ダストカバー10は、ショックアブソーバ12の伸縮作動に追従して伸縮変形する。即ち、ショックアブソーバ12の伸長状態では、ダストカバー10が図4に示された伸長状態とされると共に、ショックアブソーバ12の収縮状態では、ダストカバー10が図5に示された収縮状態とされて、軸方向寸法が小さくなる。
このようなダストカバー10の軸方向での伸縮は、蛇腹部24の弾性的な変形によって許容されている。即ち、各谷部30,32,34の開口部の軸方向寸法が大きくなるように蛇腹部24が変形することによりダストカバー10の伸長状態が実現されると共に、各谷部30,32,34の開口部の軸方向寸法が小さくなるように蛇腹部24が変形することによりダストカバー10の収縮状態が実現されている。
また、ダストカバー10では、大谷部30と中谷部32と小谷部34が設けられていることによって、伸長状態の軸方向寸法と収縮状態の軸方向寸法との差である伸縮ストロークが、大きく確保されている。
すなわち、伸長状態では、図6の(a)に示されているように、大谷部30と中谷部32の間に小谷部34が設けられていることによって、蛇腹部24の最大外径寸法を大きくすることなく、小谷部34の拡開寸法分だけ軸方向寸法が大きく確保されている。
一方、収縮状態では、図6の(b)に示されているように、軸方向で隣り合う大谷部30,30の間に中谷部32および小谷部34が設けられていることによって、最も厚肉となる大谷部30の底部が軸方向で離隔して位置している。これにより、収縮状態において、大谷部30の底部が軸方向で当接するように並んで配置されている場合に比して、内周部分における軸方向での寸法が小さくされている。
さらに、中谷部32の底部が大谷部30の底部よりも外周側に位置しており、軸方向で隣り合う中谷部32の底部と大谷部30の底部も、収縮状態において一直線上に並ぶことなくジグザグに配置される。これにより、中谷部32の底部と大谷部30の底部との軸方向での重なり合いによって、軸方向寸法が大きくなるのを防ぐことができる。しかも、蛇腹部24が外周側に行くに従って次第に薄肉となっていることから、中谷部32の底部が大谷部30の中間部分と軸方向で重なり合うように配置されることで、軸方向寸法がより抑えられている。
更にまた、中谷部32に比して底部の内外径寸法が大きい小谷部34が設けられており、図5に示された収縮状態において、小谷部34が大谷部30の外周端部と中谷部32の外周端部との間に包み込まれるように収容されることで、軸方向での寸法が抑えられている。特に、蛇腹部24が外周側に行くに従って次第に薄肉となっており、小谷部34とそれを包み込む大谷部30および中谷部32の外周端部が何れも薄肉とされていることによって、小谷部34が設けられた外周部分での軸方向寸法が低減されている。
本実施形態では、山部26の頂部における外径寸法と中谷部32の底部における外径寸法との差が、山部26の頂部における外径寸法と大谷部30の底部における内径寸法との差に対して、2/3倍以上とされている。これにより、中谷部32が大谷部30に比して小さくなり過ぎることなく充分な大きさで形成されていることから、収縮時に大谷部30だけでなく中谷部32の外周部分および中間部分も十分に撓み変形を生じて、小谷部34が大谷部30および中谷部32によって包み込まれるように収容される。その結果、ダストカバー10の収縮時の寸法が小さくされている。
さらに、本実施形態では、山部26の頂部における外径寸法と小谷部34の底部における内径寸法との差が、山部26の頂部における外径寸法と大谷部30の底部における内径寸法との差に対して、1/3倍以下とされている。これにより、小谷部34は、大谷部30および中谷部32の外周部分に配置されており、収縮時に充分に薄肉とされた大谷部30および中谷部32の外周部分の間に収容されて、軸方向寸法が抑えられるようになっている。
なお、山部26の頂部は略一定の外径寸法で設けられており、軸方向で重なり合って配置されているが、蛇腹部24において最も薄肉とされていることから、山部26の頂部同士が当接することによってダストカバー10の収縮時の軸方向寸法が大きくなることはない。
以上のように、ダストカバー10に設けられた蛇腹部24が、大谷部30と中谷部32と小谷部34とを備えていることにより、伸長状態での軸方向寸法が大径化を要することなく大きくされると共に、収縮状態での軸方向寸法が小さくされて、伸縮ストロークが大きく確保される。その結果、伸縮性に優れたダストカバー10が実現されて、上下の両端部がサスペンション機構に固定される構造においても、ショックアブソーバ12の伸縮作動に充分に追従し得るダストカバー10を、提供することができる。
また、大谷部30および中谷部32に比して径方向の深さ寸法を小さくされた小谷部34が設けられて、大谷部30と中谷部32の間に2つの山部26が設けられていることにより、蛇腹部24の径方向での強度が高められている。それ故、ダストカバー10のサスペンション機構への取付作業等において、山部26が径方向に凹む等といった蛇腹部24の意図しない変形が防止されて、ダストカバー10が所定の形状に保持される。
また、ダストカバー10の形成材料として、熱可塑性樹脂を含んだ材料が採用されていることにより、合成樹脂以外の材料(ゴム等)で形成される場合に比して、蛇腹部24を薄肉とすることができて、特に収縮時におけるダストカバー10の軸方向寸法を小さくすることができる。
なお、このような本実施形態に従う構造のダストカバー10は、例えば以下の如き工程を有するブロー成形法によって形成される。
先ず、図7の(a)に示されているように、ダストカバー10の外形に対応するキャビティ50の内面を備えた一対の成形用金型44a,44bを準備する。これにより、成形用金型の準備工程を完了する。なお、成形用金型44a,44bには、蛇腹部24の外周面形状(大谷部30、小谷部34、中谷部32、小谷部34の繰返し形状)に対応する凹凸面46が、キャビティ50の内周面の一部に設けられている。
次に、成形用金型44a,44bの間に、加熱によって軟化された筒状の形成材料であるパリソン48を配置する。これにより、パリソン形成工程を完了する。なお、ここでは、パリソン48が、前述のようにポリプロピレン(PP)にエチレン・プロピレンゴム(EPDM)を混合して分散化させた材料で形成されており、押出しや射出によって筒状に成形されて成形用金型44aと成形用金型44bの間に配置されている。更に、パリソン48の上側開口部には、後述するノズル58が挿入されている。
次に、成形用金型44aと成形用金型44bを接近させて、下端部においてパリソン48を押し潰すことにより、パリソン48を上端部だけが開口した袋状に成形する。これにより、成形用金型44a,44bの間に密閉されたキャビティ50が形成されて、キャビティ50内にパリソン48が配置される。
その後、外部に設けられた圧縮ガスの供給装置52からバルブ54および圧力調節装置56を介してノズル58に圧縮ガス(圧縮空気)を送り込むことにより、パリソン48の中空部分の圧力が高められる。このように圧縮ガスをパリソン48の中空部分に送り込むことにより、図7の(b)に示されているように、パリソン48を径方向に膨張するように変形させて、キャビティ50の内面に押し付ける。これにより、パリソン48をキャビティ50の内面に対応する形状に成形して、所定形状の成形品60を得る、成形工程を完了する。
このようなブロー成形によれば、略一定の厚さと直径で形成された筒状のパリソン48を圧縮ガスの圧力によって拡径変形させてキャビティ50の内面で規定される所定形状に成形することから、成形品60は外周側に行くほど薄肉となっている。なお、図7の(b)では、圧縮ガスの送入による圧力の作用方向が矢印で示されていると共に、成形品60の内周面の凹凸を示す線が見易さのために省略されている。
さらに、圧縮ガスの成形品60内周空間への送入をバルブ54によって停止した後、成形用金型44a,44bを冷却して、成形品60を冷却固化することで、成形品60を所定の形状で安定させる。以上により、冷却工程を完了する。なお、成形用金型44a,44bの冷却方法は特に限定されないが、空気による冷却の他、冷却水を用いた冷却等も採用され得る。
そして、図7の(c)に示されているように、成形用金型44a,44bを相互に分離させて、成形用金型44a,44b間のキャビティ50から冷却固化された成形品60を取り出す。最後に、取り出された成形品60の軸方向両端部を切断線A,Bにおいてカットして、仕上げ工程を完了することにより、本実施形態に係るダストカバー10を得る。
このように、ダストカバー10の製造方法としてブロー成形法を採用すれば、外周側に行くに従って次第に薄肉となる蛇腹部24を容易に実現することができて、軸方向での伸縮性に優れたダストカバー10を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、蛇腹部24を構成する山部26および谷部28の数は特に限定されるものではなく、蛇腹部24の長さもあくまでも例示である。
また、各谷部30,32,34の具体的な形状は、必ずしも実施形態のものと同一である必要はない。具体的には、前記実施形態では、小谷部34の底部の外径寸法(D5 )と中谷部32の底部の外径寸法(D3 )との差が、中谷部32の底部の外径寸法(D3 )と大谷部30の底部の外径寸法(D1 )との差に対して、2.5倍以上とされていたが、例えば、それらがほぼ等しくされて、大谷部30と中谷部32の深さの差が中谷部32と小谷部34の深さの差と略同じになるようにそれら谷部30,32,34が形成されていても良い。要するに、大谷部30、中谷部32、小谷部34の寸法や形状は、蛇腹部24に要求される伸縮性や伸縮ストローク等に応じて変更され得るものであって、特に限定されるものではない。
また、前記実施形態では、ダストカバー10の上端部が車両ボデーに固定されると共に、下端部が車輪側となるシリンダ36に固定されており、装着状態のダストカバー10が、ショックアブソーバ12の伸縮作動に伴って、伸長変形と収縮変形の両方を生ぜしめられるようになっていた。しかしながら、ダストカバー10は、軸方向の一端だけが装着対象部材に固定されて、装着対象部材の伸縮に伴って伸長変形と収縮変形の何れか一方だけが生ぜしめられるようになっていても良い。具体的には、例えば、ダストカバー10の上端部が車両ボデーに固定されると共に、下端部がシリンダ36に外挿されただけの自由端とされており、ショックアブソーバ12の伸長作動時にはダストカバー10に外力が作用しないと共に、ショックアブソーバ12の収縮作動時にはダストカバー10の下端部がシリンダ36に固定されたロア側スプリング受部材に押し上げられることで、ダストカバー10が収縮変形されるようになっていても良い。
また、前記実施形態に示されているように、外周側に向かって薄肉となる蛇腹部24を容易に得られることから、ダストカバー10の製造方法としては、ブロー成形法が好適であるが、製造方法は特に限定されるものではなく、例えば回転成形等によっても製造され得る。
また、前記実施形態では、サスペンション用のダストカバー10が例示されているが、自動車の他の部分に用いられる保護カバーにも、本発明は好適に適用され得る。更に、本発明の適用範囲は自動車用の保護カバーに限定されず、例えばロボットアームの関節部分等を保護するための保護カバー等も、本発明の適用範囲に含まれる。