JP5468782B2 - 癌治療と幹細胞調節のための方法 - Google Patents

癌治療と幹細胞調節のための方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5468782B2
JP5468782B2 JP2008557240A JP2008557240A JP5468782B2 JP 5468782 B2 JP5468782 B2 JP 5468782B2 JP 2008557240 A JP2008557240 A JP 2008557240A JP 2008557240 A JP2008557240 A JP 2008557240A JP 5468782 B2 JP5468782 B2 JP 5468782B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell
deazaneplanocin
prc2
tumor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008557240A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009528345A5 (ja
JP2009528345A (ja
Inventor
ユ、チアン
タン、ジン
ジン ヤン、シャオ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Agency for Science Technology and Research Singapore
Original Assignee
Agency for Science Technology and Research Singapore
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Agency for Science Technology and Research Singapore filed Critical Agency for Science Technology and Research Singapore
Publication of JP2009528345A publication Critical patent/JP2009528345A/ja
Publication of JP2009528345A5 publication Critical patent/JP2009528345A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5468782B2 publication Critical patent/JP5468782B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/495Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with two or more nitrogen atoms as the only ring heteroatoms, e.g. piperazine or tetrazines
    • A61K31/505Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim
    • A61K31/519Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim ortho- or peri-condensed with heterocyclic rings
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/495Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with two or more nitrogen atoms as the only ring heteroatoms, e.g. piperazine or tetrazines
    • A61K31/505Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim
    • A61K31/519Pyrimidines; Hydrogenated pyrimidines, e.g. trimethoprim ortho- or peri-condensed with heterocyclic rings
    • A61K31/52Purines, e.g. adenine
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • A61P35/02Antineoplastic agents specific for leukemia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00

Description

本発明は、腫瘍細胞でアポトーシスを誘導することにより癌の治療および予防を行う化合物と組成物を含む方法に関する。本発明はまた、幹細胞/前駆細胞(癌幹細胞を含む)の多分化能および自己複製能のうちの少なくとも一方を調節する方法、化合物および組成に関する。
本出願は2006年3月2日に出願された米国仮出願第60/778,532号の利益を主張し、その目的のために、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
癌は、世界的にも死亡の主な原因であり、先進諸国では死亡原因の第2位、例えば、オーストラリア、日本、韓国、シンガポールで、そして英国およびスペインでは男性の死亡原因の第1位である。癌を発症する人の数は、毎年増加している。
エビデンスの増加は、癌発症における後成的変化の重要な役割を示している。これらは、クロマチン修飾ならびにヒストンのメチル化や脱アセチル化等のDNAの過剰メチル化を伴う。(Feinberg,A.P.,et al.,Nature Reviews
Genetics(2005)7,21〜33参照)。腫瘍抑圧遺伝子の多くが、後成的機序によってサイレンシングされることがわかっている。遺伝子突然変異を抑制させる可能性を有する遺伝子と異なり、後成的にサイレンシングされた腫瘍抑圧遺伝子を再活性化させ、細胞をアポトーシスまたは老化に至らしめることができる。この特徴は、癌への治療的介入において理想的な標的となる後成的変異をもたらす。DNAメチル化の特異的抑制因子である5‐アザシチジンとそのデオキシ類似体、5−Asa−2’−デオキシシチジンが、DNA依存的なメチルトランスフェラーゼ(DNMT)活性を抑制し、腫瘍抑圧遺伝子のサイレンシングを逆転させ、血液学的悪性疾患の治療に有用であることが示されている。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤等のヒストンを修飾する酵素に干渉する薬剤について、臨床試験が進行中である。
DNAメチル化やヒストン修飾等の類似の後成的変化は、幹細胞の維持、増殖と分化に関与していると考えられる。生物の種々の組織の成熟細胞は、前駆細胞から生じ、広範な発生能と複製能を有している。末梢血は、例えば、内皮細胞か脈管平滑筋細胞に分化可能な前駆細胞を含有する。前駆細胞は、幹細胞から順次発生し、それは大半の細胞においても確認される。幹細胞は、心細胞、肝細胞、脳細胞等のあらゆる成熟機能細胞に分化することが可能で完全には分化していない細胞であり、無限の増殖能を保持している。DNAのメチル化と脱メチル化が、生殖細胞発生時、受精から胚盤胞形成期、哺乳類の初期発生時に、転写状態を調節することは、知られている(例えば、Santos,F.,and
Dean,W.,Reproduction(2004)127,643−651を確認)。
幹細胞の維持における後成的変化のエビデンスは、例えば、胚幹細胞培養の後期継代が、推定腫瘍抑圧遺伝子RASSF1のプロモータ領域のメチル化の差等、種々のクローン化DNAの変異を呈するという所見を示している。(Maitra et al.,Nature Genetics(2005)37,10,1099−1103)。前駆細胞の後成的破裂は、癌進行の主たる決定因子であることが、さらに示唆されている。(Feinberg,A.P.,et al.,2005、supra)。
今日、癌治療は外科手術を伴うか、または細胞の悪性細胞への形質転換と関連した機能的または遺伝的な変化に焦点を当てている。理想的な抗癌剤とは、非癌細胞に影響を与えず、急速に増殖する癌細胞を選択的に死滅させるかまたは少なくとも抑制させるものでなければならない。最近の手法には、選択した癌細胞型のマーカに導かれる抗体を用いた免疫療法(米国特許出願第2005/0244417号等)、癌細胞の特定の型の上で表される受容体に対する作動薬の投与(米国特許出願第2006/0147456号)、インターフェロン含有キトサン脂質粒子の投与(米国特許出願2005/0266093)、ならびに未知の機序によって前立腺癌細胞の特定の型に対して細胞毒性薬として作用する化合物の投与(米国特許出願第2005/0245559号)が含まれる。
癌細胞のDNAメチル化の異常なパターンは20年以上前から知られており、近年では、後成的癌治療のための研究も始まっている(概要については、例えば、Brown,R.and Strathdee, G.,Trends in Molecular Medicine(2002)8,4(補足.)、S43−S48、またはYoo,CB.and Jones,P.A.,Nature Reviews Drug Discovery(2006)5,1,37−50参照)。しかし、5‐アザシチジン(Vidaza(商標))とデシタビン(Dacogen(商標))の2種類のDNAメチル−トランスフェラーゼ阻害剤のみが上市に至っているにすぎないが、これらは骨髄異形成症候群(「前白血病」として知られる血液学的症状)の治療薬として承認されている。それゆえ、急速に増殖する癌細胞を選択的に死滅させ、癌または腫瘍疾患を治療または予防するために、新規の化合物や組成物の開発のための技術が、今もなお必要とされている。
幹細胞の調節に関して、容易に分化する胚幹細胞の能力が、実際に大きな課題となっている。多能性状態で胚幹細胞を維持するには、取扱時と培養時の分化を阻止しなければならない。この理由から、胚幹細胞は、旧来よりフィーダー細胞層上で、ウシ胎仔血清の存在下で(例えば、米国特許第5,843,780号および第6,090,622号参照)、または繊維芽細胞順化培地(CM)で培養される。しかし、綿密な管理条件下においてさえ、胚幹細胞は、in vitro生殖の間、自然発生的な分化を受ける場合がある。白血病抑制因子、マウス胚幹細胞の自己複製媒介因子が、マウス胚幹細胞の分化をも抑制することも判っているが、ヒト胚幹細胞の分化阻止において、フィーダー細胞の代わりに用いることはできない。このため、多分化能および/または胚幹細胞の自己複製能を維持する方法は、幹細胞療法の商業的な可能性を十分に理解する上で、大きな役割を果たすことになる。
幹細胞は、2層以上の胎生層の混合からなる組織を生成する種々の組織(多くは精巣や卵巣である)のテラトーマと呼ばれる癌腫でも発見される。そのような癌腫の悪性型は、テラトカルシノーマとも呼ばれている。ネズミのテラトカルシノーマにおける幹細胞の発生は、正常な胎児での発生イベントと平行して起こる。テラトカルシノーマの存在により、化学療法が腫瘍再発を阻止することができず、しばしば腫瘍塊の大半を除去することになる理由を説明することができる(Chambers,I.Smith,A,Oncogene(2004),23,7150−7160)。また、幹細胞は乳癌や脳癌等の固形腫瘍の癌細胞の発生源であることが示唆されている。白血病は、少数の異種由来の白血病幹細胞より発生することが判っている(Passegue,E.et al.,Proc.Natl.Acad.ScL USA(2003),100,11842−11849)。従って、そのような腫瘍で幹細胞の多分化能および/または自己複製を停止させる方法は、概してそのような癌腫の永続的除去の前提条件となる。
したがって、非癌細胞に影響を及ぼすことなく癌細胞を選択的に死滅させることができ
る方法ならびに化合物および組成物を提供することが、本発明の目的である。幹細胞または前駆細胞の多分化能および自己複製能のうちの少なくとも一方を調節する方法を提供することは、本発明の更なる目的である。
一態様において、本発明は腫瘍細胞でアポトーシスを誘導するか、または幹細胞または前駆細胞の多分化能および自己複製能のうちの少なくとも一方を調節するかの少なくともいずれかを行うための医薬の製造における化合物の使用に関する。化合物は、一般式(I)のものである。
Figure 0005468782
式(I)において、Aは、CまたはNである。R1、R4およびR5は、H、または、N、
O、SもしくはSiから選択される0〜3個のヘテロ原子を含む脂肪族、脂環族、芳香族、アリール脂肪族もしくはアリール脂環族のヒドロカルビル基から独立して選択される。R4とR5は、任意選択で結合し、脂肪族ヒドロカルビル架橋を定義する場合がある。R2
は、Hおよびハロゲン(F、CL、BRまたはI)から選択される。R3は、H、または
、N、O、S、SIおよびハロゲン(CL、F、BR、I)から選択される、1〜8個の主鎖炭素原子および0〜3個のヘテロ原子を含む、脂肪族もしくはアリール脂肪族のヒドロカルビル基である。いくつかの実施形態において、R2はFまたはClである。いくつ
かの実施形態において、また、R3(独立して、または、R2と同時に)は、FまたはClであり得る。
別の態様では、本発明は、アポトーシスを誘導する方法と、腫瘍細胞で幹細胞または前駆細胞の多分化能および自己複製能のうちの少なくとも一方を調節する方法とを提供する。方法は、個々の細胞に上記化合物を投与することを含む。
さらに別の態様では、本発明は、腫瘍細胞でアポトーシスを誘導するか、または幹細胞または前駆細胞の多分化能および自己複製能のうちの少なくとも一方を調節するかのすくなくともいずれかを行うための医薬組成物を提供する。医薬組成物は、上記化合物または薬学的に許容されるその塩を含む。医薬組成物は、担体または賦形薬を更に含む場合がある。
さらに別の態様では、本発明は細胞における遺伝子形質発現を調節するための方法を提供する。個々の細胞は、ポリコーム抑制複合体の成分を表す。該方法は、上記細胞に一般式(I)の化合物を投与することを含む(上記参照)。
本発明は、非限定的な例および添付の図面と関連して考慮されるとき、詳細な記述を参
照にすることにより、より良好に理解されるであろう。
本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、かつ幹細胞または前駆細胞の多分化性および自己複製特性のうちの少なくともいずれか一方を調節する方法を提供する。アポトーシスは、プログラムされた細胞死であり、通常、望ましくない細胞を除去する多細胞生物における機構である。アポトーシスを受けるまたは開始する細胞の能力が損なわれる場合、または無効になる場合、損傷された細胞が無条件で増殖し、腫瘍細胞へと発育することがある。アポトーシス細胞は特徴的な形態を示し、それによって、顕微鏡で識別することができる。
ヒトまたは動物の身体の細胞など、多くの細胞は、分化のプロセスにより生成される。細胞のこのプロセスは、多数のシグナリング・カスケードを含む。生物の様々な組織の成熟細胞は、広範な発育能および複製能力を有する前駆細胞から生じる。たとえば、抹消血は、内皮細胞または血管平滑筋細胞に分化することができる前駆細胞を含む。前駆細胞は幹細胞から生じ、幹細胞も、ほとんどの組織において特定されている。幹細胞は、心臓、肝臓、脳の細胞など、あらゆる成熟機能細胞に分化することができ、一方、無限に増殖する能力を保持する完全に未分化の細胞である。
Wnt、TGFβ、FGF、ノッチ、およびハリネズミのシグナリング経路のタンパク質など、幹細胞および分化特異性遺伝子を調節することが既知のいくつかの因子は、ポリコーム抑制複合体、たとえばポリコーム抑制複合体1またはポリコーム−抑制複合体2のタンパク質である(Bracken,A.P.et al.,Genes Dev.(2006)20,1123−1136)。
腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発することによって、本発明による方法が、癌を処理または予防する治療として使用され得る。いくつかの実施形態では、それぞれの腫瘍細胞は、たとえば、乳癌細胞であることが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれの腫瘍細胞が培養され得る。例示として、腫瘍細胞は、MCF−7、MB−468、SK−BR−3、およびT47Dなど、ヒト乳癌のカルシノーマ細胞系統の細胞であることが可能である。腫瘍細胞はまた、哺乳動物から得ることも可能である。他の実施形態では、腫瘍細胞系統は、たとえばラット、ウシ、ブタ、およびヒトなど、哺乳動物に含まれることが可能である。
胚幹細胞などの幹細胞は、神経成長因子およびレチノイン酸が存在する状態で、制御してたとえばニューロンに分化することができるが(Schuldiner et al.,(2001)Br.Res.913,201−205)、容易に分化するその能力は、主要な実際上の課題を提示した。胚幹細胞を多分化状態において維持するために、培養において操作して成長させている最中の分化は防止されなければならない。この理由で、胚幹細胞は、従来、フィーダー細胞の層の上にウシ胎仔血清が存在する状態で培養され(たとえば、米国特許第5843780号および第6090622号参照)、または繊維芽細胞調節媒体(CM)において培養される。それにもかかわらず、慎重に制御した状況下でも、胚幹細胞は、in vitro増殖中に自発的に分化することがある。マウス胚幹細胞の自己複製を介在する因子である白血病阻害因子(LIF)が、マウス胚幹細胞の分化を阻害することも判明しているが、ヒト胚幹細胞の分化の防止についてフィーダー細胞の役割に代わることはない。したがって、当業者は、幹細胞の多分化性および自己複製特性のうちの少なくとも一方を維持することを含めて調節する方法を有意義な改良として理解するであろう。
成人幹細胞は、胚幹細胞のように多分化性ではないが、自己複製することができ、かつ
より未成熟の多分化性胚幹細胞と比較して、その発育能力を柔軟にすることができることが示されている。例として、成人幹細胞は、その元の組織とは異なる細胞系統に分化することができる。
本発明の多分化性および/または自己複製特性を修正する方法は、任意の幹細胞、前駆細胞、奇形腫細胞、またはそれらから派生した任意の細胞に適している。通常、それぞれの細胞は、少なくとも1つのポリコーム抑制複合体の成分を発現することができる(以下も参照)。例示として、任意の多分化性ヒト胚幹細胞またはそれぞれの細胞系統が、それぞれの方法において使用され得る。そのような細胞の集団を得る手段は、当技術分野では十分に確立されている(たとえば、Thomson,J.A.et al.,[1998],Science 282,1145−1147、またはCowan,C.A.et al.,[2004],N.Engl.J.Med.350,1353−1356参照)。さらに、たとえば、71の独立したヒト胚幹細胞系統が存在することが知られており、GE01、GE09、BG01、BG02、TE06、またはWA09など、その11の細胞系統が、研究目的に利用可能である(たとえば、http://stemcells.nih.gov/research/registry/eligibilityCriteria.aspのNIH Human Embryonic Stem Cell
Registry参照)。成人幹細胞は、たとえば、誕生後に残された胎盤およびへその緒、または成人幹細胞がいわゆる「サテライト細胞」として関連付けられる筋線維から隔離され得る(Collins,C.A.et al.,[2005],Cell 122,289−301、またRando,T.A.,[2005],Nature Medicine 11,8,829−831参照)。
本明細書において使用される「幹細胞」という用語は、任意の幹細胞を指し、いわゆる癌幹細胞をも含む。多くのタイプの癌は、自己複製能および分化能によって特徴付けられるそのような癌幹細胞を含むことが判明している。広範な研究が、ほとんどの癌はクローンであり、腫瘍の成長を維持する能力を付与された単一の癌幹細胞の後代を表すことが可能であることを示す。Krivtsovら(Nature(2006)442,818−822)は、たとえば、前駆細胞に由来の白血病幹細胞が非常に豊富な細胞集団を精製し、遺伝子発現プロファイリングによってそれらを特徴付けた。Krivtsovらは、これらの細胞は、その前駆細胞に類似しているが、造血幹細胞では正常に発現する自己複製関連プログラムを発現することを報告している(同書)。
悪性腫瘍は、単一の癌幹細胞またはその小集団が、自己複製の正常な限界を逸脱し、それにより、腫瘍の進行および成長の一因となる異常に分化した癌細胞を生じる異常臓器と見なすことができる。そのような癌幹細胞を根絶することは、任意の成功している抗癌治療の決定的部分であり、かつなぜ従来の癌治療が、しばしば腫瘍の苦しみを軽減することにおいてのみ有効で、治療効果がないのかを説明すると考えられる。幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節することは、たとえば、癌幹細胞などの幹細胞の分化を誘発することを含むことが可能である。これは、たとえば、ヒストンメチル化を阻害することにより実施され得る(以下も参照)。幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するによって、本発明による方法が、たとえば、癌を処理または予防する治療となることが可能である。
幹細胞はまた、2つ以上の発生学的層の混合物からなる組織を生成する様々な組織(しばしば精巣および卵巣)のカルシノーマと呼ばれる奇形腫においても見られる。そのようなカルシノーマの悪性形態は、テラトカルシノーマとも呼ばれる。幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節することによって、本発明による方法は、相応して、たとえば、奇形腫を処理または予防する治療となることも可能である。幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節することは、たとえば、これらの多
分化性および/または自己複製特性を維持し、それにより、in vivoまたはin vitroの使用について好適であることがある具体的には「健康な」幹細胞において、幹細胞/前駆細胞の分化を阻害することも含むことが可能である。
方法が、前駆細胞、すなわち、成熟体細胞を生じる細胞について使用されることを意図する場合、任意の前駆細胞が、本発明のこの方法において使用され得る。適切な前駆細胞の例には、非限定的に、神経前駆細胞、内皮前駆細胞、赤血球前駆細胞、心臓前駆細胞、乏突起神経膠前駆細胞、網膜前駆細胞、または造血前駆細胞がある。前駆細胞を得る方法は、当技術分野では周知である。2つの例示として、巨大核細胞前駆細胞を得る方法が、米国特許出願2005年/0176142において開示されており、マウス肝臓前駆細胞系統を得る方法が、Li et al.,((2005)Stein Cell Express,doi:10.1634/stemcells.2005−0108)によって記載されている。
本発明による方法は、それぞれの腫瘍細胞またはそれぞれの幹細胞/前駆細胞に、以下の一般的な化学式(I)の化合物を投与することを含む。
Figure 0005468782
この一般的な化学式(I)において、Aは、CまたはNを表す。R1、R4、およびR5
、H、または独立に選択された脂肪族基、シクロ脂肪族基、芳香族基、アリール脂肪族基、およびアリールシクロ脂肪族ヒドロカルボニル基であってよく、N、O、P、S、Se、およびSiから選択された0〜6、いくつかの実施形態では0〜4、いくつかの実施形態では0〜3のヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態では、R4およびR5は、同一であってよい。いくつかの実施形態では、R4およびR5は、脂肪族ヒドロカルボニル架橋を定義するように連結され得る。それぞれのヒドロカルボニル架橋は、たとえば、1〜12、いくつかの実施形態では2〜10、およびいくつかの実施形態では2〜8の主鎖炭素原子を含み、N、O、P、S、Se、およびSiから選択された1〜5、いくつかの実施形態では1〜4、およびいくつかの実施形態では1〜3のヘテロ原子を含むことが可能である。R2は、H、またはF、Cl、Br、もしくはLなどのハロゲン原子であることが可能
である。いくつかの実施形態では、R2は、FまたはClである。R3は、H、または脂肪族基、シクロ脂肪族基、芳香族基、アリール脂肪族基、もしくはアリールシクロ脂肪族ヒドロカルボニル基であることが可能である。このヒドロカルボニル基は、1〜12、いくつかの実施形態では1〜8、いくつかの実施形態では1〜4の主鎖炭素原子、ならびにN、O、P、S、Se、Si、およびFまたはClなどのハロゲンから選択された0〜3または0〜2などの0〜4のヘテロ原子を含むことが可能である。
「脂肪族」という用語は、断りのない限り、飽和またはモノ不飽和またはポリ不飽和で
あってよい直鎖炭化水素鎖または分枝炭化水素鎖を意味する。不飽和脂肪族基は、1つまたは複数の2重結合および/または3重結合を含む。炭化水素鎖の分枝は、線形鎖ならびに非芳香族環式要素を含むことが可能である。炭化水素鎖は、断りのない限り任意の長さであってよく、任意の数の分枝を含むことが可能である。主鎖ならびに分枝は、N、O、S、Se、またはSiなど、ヘテロ原子をさらに含むことが可能である。
「脂環式」という用語は、断りのない限り、飽和またはモノ不飽和またはポリ不飽和であってよい非芳香族環式炭化水素成分を意味する。環式炭化水素成分は、非芳香族環式要素ならびに鎖要素で置換され得る。環式炭化水素成分の主鎖は、断りのない限り、任意の長さであってよく、かつ任意の数の非芳香族環式要素および鎖要素を含むことが可能である。環式炭化水素成分ならびに環式置換基および鎖置換基の両方とも、N、O、S、Se、またはSiなど、ヘテロ原子をさらに含むことが可能である。
「芳香族」という用語は、断りのない限り、単一環であってよく、または複数の融合環もしくは共有結合環を含んでもよい、共役2重結合の平面環式炭化水素成分を意味する。環式炭化水素成分の主鎖は、断りのない限り、任意の長さであってよく、かつ、たとえばN、O、およびSなど、任意の数のヘテロ原子を含むことが可能である。
「アリール脂肪族」という用語は、1つまたは複数のアリール基が1つもしくは複数の脂肪族基に結合される炭化水素、または1つまたは複数の脂肪族基上の置換基である炭化水素成分を意味する。したがって、「アリール脂肪族」という用語は、たとえば、2つ以上のアリール基が、メチレン基などの任意の長さの1つまたは複数の脂肪族鎖を介して結合される炭化水素成分を含む。
本明細書において使用される「脂肪族」、「脂環式」、「芳香族」、および「アリール脂肪族」という用語のそれぞれは、それぞれの成分の置換形態および非置換形態の両方を含むことを意図する。置換基は、任意の官能基であってよく、たとえば、非限定的に、アミノ、アミド、アジド、カルボニル、カルボキシル、シアノ、イソシアノ、ジチアン、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、オルガノメタル、オルガノボロン、セレノ、シリル、シラノ、スルホニル、チオ、チオシアノ、トリフルオロメチルスルホニル、p−トルエンスルホニル、ブロモベンゼンスルホニル、ニトロベンゼンスルホニル、およびメタンスルホニルである。
いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発するか、または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するかの少なくともいずれかを行うための、上記の化学式の化合物の使用に関する。それぞれの使用は、たとえばその目的が医薬の製造であってよい。
いくつかの適切な化合物が、図2に示されている。図示された化合物は、アデノシンの類似物(部分的に炭素環類似物)として扱うことができる。例として、一実施形態では、化合物は、3−デアザネプラノシンである(図2A参照)。他の例として、他の実施形態では、化合物は、ネプラノシンAである(図2K参照)。
これらの化合物は、単純疱疹I型ウィルスまたはエボラウイルスの阻害など、広範な抗ウィルス効果についてこれまで知られていた(Tseng,C.K.H.et al.,J.Med.Chem(1989),32,1442−1446;Glazer,R.I.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.(1986),135,2,688−694;De ClercQ,E.et al.,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(1989),33,8,1291−1297;米国特許出願4968690;欧州特許出願第05102
60号)。この効果は、酵素S−アデノシルホモシステイン合成酵素の阻害、ならびに宿主におけるインターフェロン生成の促進に起因していた(Glaser et al.,1986、supra;Bray,Met al.,Antiviral Research(2002),55,1,151−159)。それぞれの化合物は、抗ウィルス有効濃度では正常宿主細胞に対して毒性ではないことが、以前に報告されている(De ClercQ,E.,Clinical Microbiology Reviews(2001),14,2,382−397)。
したがって、本発明の方法は、医薬の製造に使用することを含めて、上記で定義された化合物を使用することを含む。一態様では、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、および/または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するために、上記で確定された化合物を使用することにも関する。これに関して、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、および/または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節するために、上記で確定された化合物を使用することにも関する。以上および以下の説明は、それぞれの使用および前記用途の化合物にも同様に適用されることを理解されたい。
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、後成的治療である。それぞれの方法は、たとえば、ヒストン3上のリシン27のメチル化など、ヒストンメチル化の阻害−真核クロマチンにおける中心的後成修正を含む。例示として、本発明による方法は、それぞれの腫瘍細胞において、幹細胞または前駆細胞、ポリコーム抑制複合体を枯渇させることを含むことが可能である。ポリコーム抑制複合体(PRC)タンパク質は、2つの主要な別々の複合体に分割することが知られている(たとえば、Cao and Zhang,2004参照)。第1複合体は、ショウジョウバエescおよびE(z)遺伝子の同族体を含み、ヒストンデアセチラーゼ活性を有する。第2PcG複合体(ショウジョウバエのdPRC−1、マウスのmPRC1、およびヒトのhPRC−H)は、ショウジョウバエPc、Psc、Ph、RING、およびScm遺伝子の同族体であり、SWI/Snf(「スイッチ/ショ糖非発酵」)クロマチンリモデリング機構に干渉し、転写の開始および追加の抑制活性の補充を遮断することによって、標的遺伝子の抑制を介在することができる。
本発明の方法は、たとえば、上述された第1複合体の範囲内に分類することができるポリコーム抑制複合体を枯渇させることを含むことが可能である。そのような複合体の例には、ポリコーム抑制複合体2、ポリコーム抑制複合体3、およびポリコーム抑制複合体4がある。例示として、ポリコーム抑制複合体2の成分は、たとえば、EZH2、SUZ12、EED、およびRbAp48を含む。他の例示として、ポリコーム抑制複合体3の成分は、EZH2、SUZ12、RbAp46/48、およびEEDの分子量がより小さい2つのアイソフォームを含む(Kuzmichev,A.et al.,Molecular Cell(2004),14,2,183−193)。他の例示として、ポリコーム抑制複合体4の成分は、とりわけ、EZH2およびSIRT1を含む(Kuzmichev,A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(2005),102,6,1859−1864)。
選択されたポリコーム抑制複合体の任意の成分は、本発明の方法において枯渇され得る。当業者なら、ポリコーム抑制複合体の成分のタンパク質レベルは、複合体の他の成分の存在に部分的に依存することを認識するであろう(図3E参照、またたとえばPasini,D.et al.,EMBO Journal(2004),23,4061−4071参照)。したがって、ポリコーム抑制複合体の1つの成分を枯渇させることにより、通常、それぞれのポリコーム抑制複合体の他の成分のレベルも低下する。例示として、SUZ12、EZH2、またはEEDのレベルを枯渇させることが可能である。
上述された主要なポリコーム−抑制複合体のいずれれも、胚幹細胞において遺伝子の大きなセットのプロモータ領域を共に占有することが判明しており(Boyer,L.A.et al.,Nature(2006)441,349−353)、標的遺伝子のほとんどは、様々な発育プロセスにおいて重要な役割を有する転写因子である。胚の発達中に細胞運命を決定するホメオドメイン包含因子など、多数のこれらの転写因子は、発育において本質的な役割を担う。
ポリコーム群遺伝子は、発育を制御する発現パターンをサイレンシングすることを含む維持に関わる1セットの調節タンパク質としてさらに知られている。ポリコーム群(PcG)複合体は、クロマチン構造を変化させ、それにより遺伝子転写に必要な因子へのDNAのアクセス性を変化させることによって、遺伝子の長期抑制の役割を担う(概述について、Sparmann,A.,&van Lohuizen,M.,Nature Reviews Cancer(2006)6,846−856参照)。ポリコーム群(PcG)複合体は、ヒストンテールの脱アセチル化など、後成的修飾により、およびATP依存クロマチンリモデリングを阻害することによって、作用する(Levine,S.S.,et al.,Trends Biochem Sci(2004)29,478−85;Lund,A.H.,and van Lohuizen,M.,Curr Opin Cell Biol(2004)16,239−46)。例として、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)は、後成的抑制の開始に関与することが知られているタンパク質複合体である。PRC2は、しばしば、ヒトの癌において過剰発現し、したがって、癌の後成的治療の有望な標的と見なされている。ポリコーム群タンパク質は、ショウジョウバエからヒトに高度に保存され、複数のポリコーム抑制複合体を形成する。ポリコーム抑制複合体の成分は、固有のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を含み、コア・ヒストンのメチル化により遺伝子抑制を維持する(Muller,J.,et al.Cell(2002)111,197−208;Cao,R.et al.Science(2002)298,1039−1043;Milne,T.A.,et al.Mol Cell(2002)10,1107−17;Nakamura,T.,et al.,Mol Cell(2002)10,1119−1128;Beisel,C.,et al.Nature(2002)419,857−62)
PcGタンパク質の中で、ポリコーム抑制複合体2は、あらかじめ幹細胞自己複製および癌に関連付けられている(Lee,T.I.et al.,Cell(2006)125,301−313;Holden,C.,Science(2006)312,349;Kamminga,L.M.et al.Blood(2006)107,2170−2179)。低活性のp16INK4Aを有するヒト***上皮細胞では(腫瘍形成の早期
事象)、たとえば、ポリコーム抑制複合体2の2つの成分の上方調節が観測された(Reynolds,PA et al.,J Biol Chem(2006)281,34,24790−24802)。ポリコーム抑制複合体2は、3つのコア成分を含む:EZH2(Zesteホモログのヒト・エンハンサ)、SUZ12(zeste12ホモログのサプレッサ)、およびEED(胚体外胚葉発育;たとえばLevine et al.,2004、前掲参照)。EZH2は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を有するPRC2の活性成分であり(たとえば、Vire’,E.,et al.,Nature(2006),439,16,871−874)、SUZ12およびEEDは、体細胞および幹細胞の両方においてこの活性のために必要である(Schoefiner,S.,et al.,EMBO Journal(2006)25,3110−3122)。EZH2は、ヒストンH3リシン−27(H3−K27)のメチル化に触媒作用を及ぼし、この酵素活性は、PRC2−介在遺伝子サイレンシングに必要である(Muller,J.et al.Cell(2002),111,197−208;Cao,R.et al.,Science(2002),298,1039−43;Milne,T.A.et al.,Molecular Cell(2002),10,1107−17,Be
isel,C.,et al.,Nature(2002),419,857−62;Chen,H.,et al.,J.Biol.Chem(2005),280,23,22437−22444)。遺伝子抑制を維持することが示唆されているポリコーム抑制複合体1は、リシン−27メチル化ヒストンH3を認識することができる。
ショウジョウバエでは、ポリコーム群タンパク質が、部位特異性DNA結合タンパク質との相互作用により、標的部位に補充される。哺乳動物における標的遺伝子への正確な補充機構は、現在知られていない。しかし、ヒストンメチル化が、ヌクレオソーム(クロマチンの基本繰返し単位)の特性を変化させ、他のタンパク質とのヌクレオソームの相互作用に影響を与えることが知られている。その結果、転写は抑制される。さらに、ヒストンメチル化は、クロマチン抑制においてDNAメチル化と共同して機能すると考えられており、後成的抑制に関連する他の機構である。
ヒストンメチル化とDNAメチル化の直接的な関連が指摘されている。一例として、ヒストンH3のメチル化リシン−27は、他のタンパク質を補充する固定点として作用する。さらに、EZH2は、DNAメチルトランスフェラーゼに結合し、これらの酵素と共にその標的遺伝子のプロモータに結合し(Vire’et al.2006、前掲)、それにより、標的遺伝子のプロモータをメチル化し、その後のこれらの遺伝子を抑制する。したがって、EZH2およびSUZ12の上方調節は、DNAメチルトランスフェラーゼの強化、多くの座のDNAメチル化、およびヒストンH3のリシン−27のメチル化と同時に起きることが判明した(Reynolds et al.,2006、前掲)。EZH2の枯渇に続いてであるが、EZH2およびDNAメチルトランスフェラーゼがプロモータに結合されている間ではなく、RNAポリメラーゼのプロモータへの結合が起こった(Vire’,et al,2006、前掲)。
ヒトEZH2、およびその関連するH3−リシン−27メチルトランスフェラーゼ活性は、癌に関連付けられ、かつ、前立腺癌および乳癌の後期において過剰発現することが判明しており(Saramdki,O.R.et al.,Genes,Chromosomes&Cancer(2006),45,639−645)、たとえば、EZH2の発現量およびタンパク質レベルは、1次未処理腫瘍より転移ホルモン不応性前立腺癌において高いことが判明した。EZH2に加えて、PRC2複合体の他の成分であるSUZ12も、結腸、胸、および肝臓の腫瘍を含む、いくつかのヒト腫瘍において上方調節されることも判明した(Kirmizis,A.,et al.,Molecular Cancer Therapeutics(2003)2,113−121;Kirmizis,A.,et al.,Genes&Development(2004)18,1592−1605)。
DNAメチル化自体は体細胞の生存に必須であるが、未分化状態で胚幹細胞を維持することについては重要な役割を果たさない。それにもかかわらず、胚幹細胞においてPRC1およびPRC2によって占有された遺伝子は、同様に、メチル化ヒストンH3リシン−27が増強されることが報告されている(Boyer et al.,2006、前掲)。さらに、このヒストンのメチル化リシンは、プローブにより、それぞれの遺伝子転写開始部位に密接に関連付けられた。Boyerらのデータは、胚幹細胞では、ポリコーム群タンパク質の結合が遺伝子を直接サイレンシングし、かつこれらの遺伝子の活性化が分化および多分化性の損失と相関されることを示唆する。
ポリコーム抑制複合体2成分EEDは、早期マウス胚細胞ならびに栄養膜の幹細胞および前駆細胞においてメス哺乳動物の不活性X染色体について増強することによって、未分化細胞におけるサイレンシングに寄与することが知られている。EEDがない場合、分化は、親X染色体の再活性化を誘発する(Kalantry,S.,et al.,Nat
ure Cell Biol.(2006),8,2,195−202)。EEDはまた、不活性X染色体についてPRC2複合体の形成、ならびに未分化および栄養膜幹細胞におけるヒストンH3のリシン−27のメチル化に必要であることも判明した(同書、およびSchoeftner et al.,2006、前掲)。2つのタンパク質Ezh2およびSuz12に関して、これらのタンパク質が失われることにより、内細胞塊における細胞増殖が顕著に失われ、かつ早期胚の致死となることが判明した。
転写因子Oct4およびNanogは、細胞の分化状況の全般的な制御ならびに多分化成細胞の正常な発育および/または多分化性細胞の状態の調節について重要であると特定されており(たとえばNichols,J.et al.(1998) Cell 95,379−391;およびMitsui et al(2003)Cell 113,631−642)、胚幹細胞における低レベルのヒストン3のリシン−27のメチル化に関連することが知られている(Boyer et al.,2006、前掲)。PRC2複合体タンパク質SUZ12は、Oct4によっても調節されるいくつかの遺伝子を調節することがさらに示されている(Squazzo,S.L.,et al.,Genome
Research(2006)16,890−900)。siRNAによってOct4をノックダウンすることにより、いくつかの標的プロモータからSUZ12が失われることになる(同書)。さらに、ヒト胚細胞では多分化性因子Oct4、Sox2、およびNanogに関連付けられた遺伝子と、識別されたPcG標的遺伝子との間の著しい相関が報告されている(Boyer et al.,2006、前掲、補足)。45の標的遺伝子が、Oct4、Sox2、Nanog、およびPcGタンパク質(同書)によって共に占有されることが判明した。これらの発見は、細胞分化の調節および幹細胞の多分化状態の維持へのprc2タンパク質の統合を示す。
本発明の方法により、ポリコーム抑制複合体2、ポリコーム抑制複合体3、またはポリコーム抑制複合体4の成分を枯渇させることにより、さらに、ヒストン3のリシン27は脱メチル化されることになる(H3−K27;図1A参照)。これらのポリコーム抑制複合体は、ヒストンH3のリシン27をin vivoでトリメチル化し、ヒストンH1のリシン26をin vitroでトリメチル化することが知られている。したがって、本発明による方法のいくつかの実施形態では、ヒストン3のリシン27のメチル化状況が決定され得る。これは、たとえば、ポリコーム抑制複合体の枯渇を確認するために望ましいことがある。
所望であれば、制御測定は、他の既知の手段によって、たとえば核酸分子によって、ポリコーム抑制複合体の成分を枯渇させることを含むことが可能である。それぞれの核酸分子は、たとえばアプタマーまたはSpiegelmer(登録商標)(WO 01/92655において記載)など、たとえば非コーディング核酸分子であってよい。非コード核酸分子は、nc−RNA分子であることも可能である(たとえば、天然nc−RNA分子に関する導入について、Costa,FF,Gene[2005],357,83−94参照)。nc−RNA分子の例には、非限定的に、アンチセンス−RNA分子、L−RNASpiegelmer(登録商標)、サイレンサ−RNA分子(2重らせんニューロン選択的サイレンサ要素(Neuron Restrictive Silencer Element))、ミクロRNA(miRNA)分子、ショート・ヘアピンRNA(shRNA)分子、低分子干渉RNA(si−RNA)分子、または反復配列関連低分子干渉RNA(rasiRNA)分子がある。
低分子干渉RNA、ショート・ヘアピン、およびミクロRNAの使用は、特定の遺伝子を「ノックダウン」するツールとなった。これは、転写後レベルにおいて生じ、かつmRNAの劣化を含むRNA干渉(RNAi)による、遺伝子の抑制または遺伝子の抑制を利用する。RNA干渉は、ゲノムを保護する細胞機構を表す。SiRNA分枝およびmiR
NA分子は、RNA誘発沈化黙複合体(RISC)と呼ばれるものを形成するために、siRNAを複数の酵素複合体と関連付けることによって、相補RNAの劣化を介在する。siRNAまたはmiRNAは、RISCの一部になり、後に開裂される相補RNA種を標的とする。siRNAは、対応する相補らせんに完全に対になった塩基であり、一方、miRNA2重鎖は、不完全に対になる。RISCの活性化により、それぞれの遺伝子の発現は失われる(簡潔な概述について、Zamore,PD,Haley,B Science[2005],309,1519−1524参照)。最も強い抑制が、2次構造を形成しない配列で生じることが観測された(Patzel,V.,et al.Nature Biotech.[2005]23,1440−1444)。したがって、当業者なら、通常、たとえばループを形成することが既知の配列を使用することを避ける。これは、選択された塩基を、標的配列とウォブル対を依然として形成することができる塩基に交換することによって行うことができる(Patzel,V et al.、前掲)。siRNA/miRNA技法は、たとえば、米国特許出願2005/0191618に開示されているように、HIV RNAの開裂など、寄生DNA配列のサイレンシングに適用されている。
それぞれのsiRNA/shRNA/miRNA分子は、たとえば、誘発プロモータまたは構成プロモータの制御下のベクターによって、対象細胞内(微生物および動物の一部である細胞を含む)で直接、合成または発現され得る。また、それぞれの細胞内に導入される、および/またはそれぞれの細胞に送達されることも可能である。siRNA、shRNA、またはmiRNA分子をin vivoで選択細胞に送達する1つの例示は、重鎖抗体断片(Fab)の融合タンパク質および核酸結合タンパク質プロタミンへの非共有結合である(Song,E.et al.,Nature Biotech.(2005),23,6,709−717)。siRNA分子を選択細胞にin vivoで送達する他の例示は、リポソームへのカプセル化である。Morrissey et al.(Nature Biotech.(2005),23,8,1002−1007)は、たとえば、ポリエチレングリコール−脂質接合体でコーティングされた、安定な核酸−脂質−粒子を使用して、静脈内投与についてリポソームを形成した。siRNAまたはmiRNAを送達するためにナノ粒子を適用することが望ましい場合、細胞特異性標的化に適切な手法が、Weisslederらによって記述されている(Nature Biotech.(2005),23,11,1418−1423)。しかし、siRNA、shRNA、またはmiRNA分子を選択された標的細胞に送達する他の例は、それぞれの核酸分子を含む細菌またはウィルスなどの生物学的ビヒクルを使用する。Xiangら(Nature Biotech.(2006),24,6,697−702)は、たとえば、プラスミド、とりわけおよびインベーシンの両方から転写された細菌大腸菌(E.coli)を投与することにより、哺乳類細胞への進入と、その後の該細胞内での遺伝子サイレンシングを可能にすることによって、この手法を使用した。
siRNA分子の例示が、図3Iおよび図3Jに示されている。
本発明による方法のいくつかの実施形態では、ポリコーム抑制複合体を枯渇させることにより、前記ポリコーム抑制複合体と腫瘍サプレッサ遺伝子との間において複合体が放出される。これらの実施形態のいくつかでは、腫瘍サプレッサ遺伝子は、それによって再活性化され、それぞれの細胞においてアポトーシスを生じる。本発明者は、FBX032がそれぞれの腫瘍遺伝子の例であることを発見した(たとえば、図6Bおよび6D〜6H参照)。FBX032は、プロテアソームにおけるタンパク質加水分解について特定のタンパク質を標的とすることが知られている(FBX032という名前の)ユビキチンリガーゼをコードする。FBX032は、筋肉の発達に重要な遺伝子であるとこれまで考えられてきた。FBX032の例には、非限定的に、UniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q969P5を有する355のアミノ酸のヒト・タンパク質、UniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q9CPU7を有する355のアミノ酸のマウ
ス・タンパク質、またUniProtKB/Swiss−Prot受入れ番号Q91Z62を有する350のアミノ酸のラット・タンパク質がある。それぞれの遺伝子の例示は、EMBLヌクレオチド配列データベース受入れ番号BCO24030、ならびにEMBL受入れ番号BC120963およびBC120964の配列のmRNAを転写するヒト遺伝子である。他の例として、ブタのFBX032遺伝子も、マッピングおよび配列された(Yu,J.,et al.Animal Genetics(2005)36,5,451−452)。
当業者なら、本発明の方法は、癌細胞においてアポトーシスを優先的に誘発させることを理解するであろう(たとえば、図3A参照)。通常、時間依存細胞死応答が腫瘍細胞において観測される。それぞれの腫瘍細胞は、たとえば、培養され得る。たとえば、MCF−7、MB−468、SK−Br−3、T47D、HCT116、RKO、またはSW480などの細胞系統の細胞であることが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれの腫瘍細胞は、哺乳動物から得られることが可能である。他の実施形態では、それぞれの腫瘍細胞は、哺乳動物に含まれることが可能である。腫瘍細胞は、たとえば乳癌細胞など、任意のタイプの腫瘍であることが可能である。
所望であれば、腫瘍細胞におけるアポトーシスの進行は、たとえば、ヨウ化プロポジウム染色またはフローサイトメトリー分析(図3A参照)、ミトコンドリア機能不全(JC−1染色)、またはカスパーゼ3活性化(たとえば図3Bおよび3D参照)によって監視され得る。これらの例から推測することができるように、本発明の方法は、一般に、ミトコンドリアの破壊およびカスパーゼの活性化を含むアポトーシス細胞死応答をトリガする。これらの例はまた、MCF10A細胞および正常1次結腸上皮CC33D細胞などの非癌性細胞が、あるとしてもごくわずかな細胞死応答を示すことも示す(図3Dも参照)。それぞれの細胞のアポトーシスを決定することに加えて、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、それぞれの細胞における細胞の生存度を決定することも含むことが可能である。それぞれの方法は、当技術分野において十分に確立されている。
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、腫瘍細胞、幹細胞、または前駆細胞など、それぞれの細胞を一般的な化学式(I)(上記参照)の所定の量の化合物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、一般的な化学式(I)の少なくとも2つの異なる所定の量の化合物が使用される。これらの実施形態のいくつかでは、少なくとも第1腫瘍細胞および第2腫瘍細胞が使用される。第1腫瘍細胞は、2つの所定の量の少ない方と接触され、第2腫瘍細胞は、2つの所定の量の多い方と接触される。それぞれの実施形態は、たとえば、スクリーニング検定、細胞毒試験、または投与/応答曲線の決定であってよい。
いくつかの実施形態では、第1腫瘍細胞および第2腫瘍細胞は、同じ患者から得られる。そのような方法は、たとえば、一般的な化学式(I)の化合物に対する患者または動物の個々の応答を予測する方法であってよい。単一ヌクレオチドの多形性および遺伝子発現における個々の相違により、通常、投与される化合物に応答する患者間に個々の相違が生じる。例として、FBX032遺伝子の単一ヌクレオチド多形性が検出された(Yu et al.,2005、前掲)。いくつかの実施形態では、本発明のそれぞれの方法は、化学式(I)の化合物に対する患者の応答に影響を与える遺伝子変異体を識別する方法とすることも可能である。通常、動物または患者に薬剤として加えられる化合物の効果は、多くのタンパク質によって決定され、それにより、非遺伝因子と結合された複数の遺伝子の複合遺伝的多形性が、化合物に対する応答を決定する。したがって、本発明のそれぞれの方法は、たとえば、悪影響を最小限に抑えて最大効率を保証するために患者の遺伝子型を決定する方法とすることも可能である。
上記で示されたように、本発明の1つの方法は、細胞における遺伝子発現を調節する方法である。方法は、一般的な化学式(I)の化合物をそれぞれの細胞に投与することを含む(上記参照)。任意の細胞が、本発明の方法において使用され得る。例示として、胚幹細胞または始原生殖細胞を含めて、幹細胞/前駆細胞が使用され得る。本発明の方法が内因性細胞成分に対するその作用のためにアポトーシス効果を示すことを回避するために、非癌細胞を使用することが望ましいことがある。正常組織に対してではなく、癌細胞に対する化学式(I)の化合物の選択的作用のために(以下およびたとえば図3F参照)、本発明は、一方では、正常細胞について特によく適している。
ポリコーム抑制複合体の成分を発現する細胞は、いかなるものを使用してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、機能的に活性の内因性ポリコーム抑制複合体を含む。いくつかの実施形態では、それぞれの細胞は、幹細胞または前駆細胞である。本発明の方法において使用され得る幹細胞の例には、非限定的に、胚幹細胞、栄養膜幹細胞、および胚外幹細胞がある。したがって、本発明の方法のいくつかの実施形態では、ヒトを源とする胚幹細胞、すなわちヒト胚幹細胞を使用することが可能である。他の実施形態では、細胞は前駆細胞である(上記参照)。他の実施形態では、細胞は癌細胞である(上記参照)。他の実施形態では、内因性ポリコーム抑制複合体は機能的に不活性である。これらの実施形態のいくつかでは、たとえばHEK、COS、CHO、CRE、MT4、DE(アヒルの胚)、QF(ウズラの線維肉腫)、NS0、BHK、Sf9、PC12、またはHigh5など、確立された真核細胞系統の任意の細胞が選択される。他の実施形態では、それぞれのポリコーム抑制複合体の成分をコードする1つまたは複数の外因性遺伝子が、組換え体技術によって、たとえばそれぞれの遺伝子を搬送するベクターによって導入される。
選択された細胞は、それぞれのポリコーム抑制複合体の標的遺伝子、または少なくともそのプロモータをさらに含む。それぞれの標的遺伝子の例はFBX032遺伝子である。いくつかの実施形態では、選択された標的遺伝子、またはその機能断片は、本発明の方法を実施するのに十分な量で内因的に発現する。他の実施形態では、選択された転写因子は、細胞のプロテオームからほぼまたは完全に欠如している。どちらの場合でも、それぞれの標的遺伝子、またはその機能的断片は、所望の標的遺伝子をコードする遺伝子を含む1つまたは複数の組換え体ベクターによって細胞内に導入される。通常であって、必ずしもではないが、それぞれの遺伝子は、活性プロモータ、または外部刺激によって好都合に活性化することができるプロモータの制御下にある。
それぞれの標的遺伝子のプロモータのコピーまたは完全標的遺伝子をさらに、すなわちそれぞれの細胞の内因性遺伝子の他に、対象細胞に含むことが望ましい場合、これは、同様に組換え体ベクターによって達成され得る(たとえば、Kawataba,K et al.、前掲)。また、プロモータの活性化を容易にするために(内因性の源または外因性の源であるかに関係なく)、それぞれのプロモータを含むベクターを細胞内に導入することも有利である可能性がある。さらに、たとえばタンパク質を得るために、標的遺伝子のプロモータを使用して外因性遺伝子を発現させることが望ましい可能性がある。この場合、通常、標的遺伝子のプロモータの制御下にある所望の外因性遺伝子を含むベクターが選択される。このために、任意の所望の遺伝子の配列が、それぞれのベクターに含まれることが可能である。当業者なら、それぞれに転写されたタンパク質が、本発明の方法において使用される細胞内において転写後修正をも受けることが望ましい場合、追加の酵素を共発現することが必要とされることがあることを認識するであろう。
標的遺伝子のプロモータの制御下において本発明の方法において使用され得る外因性遺伝子の例には、非限定的に、レポータ遺伝子、耐薬剤遺伝子、アポトーシス遺伝子(いわゆる「死」遺伝子)、またはそれぞれの細胞における所望の発現を有するあらゆる他の遺伝子がある。いくつかの実施形態では、それぞれの遺伝子は、対象タンパク質をコードす
ることも可能である。そのような場合、本発明の方法は、それぞれのタンパク質を発現させ、かつそれを得るために使用することが可能である。標的遺伝子のプロモータの制御下の遺伝子がアポトーシス遺伝子である場合、本発明は、たとえば、多分化性細胞を組織から排除するために使用することが可能である。
本明細書において記述された化合物、またはその薬学的に許容される塩は、それ自体として、または、組合せ治療の場合のように他の活性材料、または適切な担体もしくは希釈剤と混合され得る医薬組成物として、使用することができる。これに関して、本発明は、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発し、および/または幹細胞/前駆細胞の多分化性および/または自己複製特性を調節する医薬組成物にも関する。
それぞれの医薬組成物は、たとえば、タキソール(Taxol)(登録商標)などの細胞毒剤、ゲフィチニブ(Gefitinib)(Iressa(登録商標))または(グリベック)Gleevec(登録商標)などのチロシンキナーゼ阻害剤、インターロイキン−11もしくはインターフェロン−α−2bおよびインターロイキン−2などの(組換え体)成長因子、ラルチトレキセド(Raltitrexed)(登録商標)などのチミジレート合成酵素阻害剤、またはリツキマブ(Rituximab)(MabThera(登録商標))またはセツキマブ(Cetuximab)(Erbitux(登録商標))などの単一クローン抗体を含むことが可能である。上述された化合物は、たとえば、後成的治療において使用される化合物と組み合わせて適用することが可能であり(たとえば、概述についてPeedicayil,J.,Indian J Med Res(2006)123,17−24参照)、それぞれの医薬組成物は、そのような化合物を含有することが可能である。例示として、本発明による医薬組成物は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、DNA脱メチル化剤、および/またはヒストン−デアセチラーゼ阻害剤を含むことが可能である。
DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤の例には、非限定的に5−アザシチジン、デシタビン(5−アザ−2’−デオキシシチジン)、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン、およびゼブラリン(1−(β−d−リボフラノシル)−1,2−ジヒドロピリミジン−2−オン)がある。DNA脱メチル化剤の例には、非限定的に、ヒドララジン、プロカインアミド、プロカイン(−)−エピガロカテキン−3−没食子酸塩(EGCG)、サマプリン(psammaplin)A、オリゴデオキシヌクレオチドMB98、および2−(1,3−ジオキソ−1、3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−3−(1H−インドール−3−イル)プロピオン酸(MG98)がある。ヒストン−デアセチラーゼ阻害剤の例には、非限定的に、ブチレート、フェニルブチレート、バルプロ酸、m−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサ酸(CBHA)、オキサムフラチン、PDX−101、MS−275、デプシペプチド、ピロキミド、スクリプタイド、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチン(TSA)、NVP−LAQ824、LBH589、アピシジン、CHAP、トラポキシン、N−アセチルジナリン、およびMS−275がある。
本発明の成分を備える医薬組成物は、たとえば従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作成、研和、エマルジョン化、カプセル化、エントラッピング、または凍結乾燥のプロセスによって、それ自体が既知の方式で製造され得る。
したがって、本発明により使用される医薬組成物は、医薬として使用できる製剤へと活性化合物を加工するのを容易にする、賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方式で調合され得る。適切な調合物は、投与の選択経路に依存する。
それぞれの化合物または医薬組成物の例示的な投与経路には、経口、経皮、および腸管外の送達がある。適切な投与経路は、たとえば、デポー、経口、直腸、経粘膜、または腸管の投与;粘膜内、皮下、静脈内、髄内の注射、ならびにクモ膜下、直接心室内、腹膜内、鼻腔内、または眼内の注射を含む腸管外送達を含むことが可能である。たとえば、デポーまたは持続性調合物においてなど、化合物を充実性主要に直接注射することにより、化合物または医薬組成物を全身的ではなく、局所的に投与することも可能である。さらに、それぞれの化合物または医薬組成物は、ターゲット薬剤送達システムにおいて、たとえば腫瘍特性抗体でコーティングされたリポソームにおいて、使用され得る。そのようなリポソームは、たとえば、腫瘍を標的とし、腫瘍によって選択的に取り上げられることが可能である。
例示として、注射のために、本発明による化合物または医薬組成物は、水溶液、ハンクス液、リンガー液、または生理食塩水緩衝液などの好ましくは生理学的に親和性の緩衝液において、調合され得る。経粘膜投与では、通常、浸透される障壁に適切な浸透剤が、調合物において使用される。そのような浸透剤は、当技術分野において一般に既知である。
経口投与のために、それぞれの化合物または医薬組成物は、当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と活性組成物を組み合わせることによって容易に調合することができる。そのような担体により、処理される患者が経口摂取するように、本発明の化合物を、タブレット、ピル、糖剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スリラー、懸濁液などとして調合することが可能になる。
経口使用のための薬剤製剤を、固体の賦形剤を追加し、結果として得られる混合物を随意選択で粉砕し、所望であればタブレットまたは糖剤のコアを得るために適切な補助剤を追加した後、顆粒の混合物を処理することによって得ることができる。適切な賦形剤は、具体的には、乳糖、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;たとえばとうもろこしデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃがいもデンプン、ゼラチン、ゴム、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩など、崩壊剤が追加され得る。
経口的に使用することができる医薬組成物は、非限定的に、ゼラチンで作成された押込み嵌めカプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作成され柔軟封止カプセルを含むことができる。押込み嵌めカプセルは、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、ならびに随意選択で安定剤との混和物において活性組成物を含むことが可能である。柔軟カプセルでは、化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなど、適切な液体に溶解または懸濁させることが可能である。さらに、安定剤が追加され得る。経口投与されるすべての調合物は、そのような投与に適切な投与量にあるべきである。
頬投与では、それぞれの医薬組成物は、従来の方式で調合されたタブレットまたはトローチ剤の形態を取ることが可能である。
吸入による投与では、本発明により使用される医薬組成物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体など、適切な噴射剤を使用して、加圧パックまたはネブライザからエアロゾル噴霧提示の形態で送達されることが好都合なことがある。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計測量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または注入器において使用されるゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジが、化合物の粉末
混合物および乳糖またはデンプンなどの適切な粉末ベースを含んで調合され得る。
それぞれの医薬組成物が、注射による、たとえば大量注射または連続注入による腸管外投与のために調合され得る。注射される調合物は、追加された保存剤と共に、たとえばアンプルまたは複数投与容器において、単位投与量形態で提示され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取ることが可能であり、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの調合剤を含むことが可能である。
腸管外投与される薬剤調合物は、水溶性形態の活性混合物の水溶液を含む。さらに、活性組成物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として準備することが可能である。適切な親油性の溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームがある。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘性を増大させる物質を含むことが可能である。随意選択で、懸濁液は、高度に濃縮された溶液を準備することを可能にするように、化合物の溶解度を増大させる適切な安定剤または作用剤を含むことも可能である。
いくつかの実施形態では、上述された化合物などの活性成分は、使用前に、発熱物質のない滅菌水など、適切なビヒクルを有する構成の粉末形態にあることが可能である。
それぞれの医薬組成物は、座薬または持続性浣腸などの直腸組成物として調合されることも可能であり、たとえば、ココア・バターまたは他のグリセリドなどの従来の座薬ベースを含む。
前述された調合物の他に、化合物は、デポー製剤として調合されることも可能である。そのような長期作用調合物は、埋め込む(たとえば皮下または筋肉内に)ことによって、または筋肉内注射によって、投与され得る。したがって、たとえば、化合物は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(たとえば許容される油におけるエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂で、または低可溶性誘導体として、たとえば低可溶性の塩として、調合され得る。
本発明が容易に理解され、かつ実施されるように、ここで、以下の非限定的な例によって特定の実施形態について記述する。

実施例
細胞と薬剤処理
これらの実施例で用いられる細胞株は、米国菌培養収集所(バージニア州、マナッサス)から購入した。細胞は、DMEM(ドゥルベコ(ダルベッコ)変法イーグル培地)にグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加した10%ウシ胎児血清を補充して維持した。薬剤処理に供するため、細胞は薬剤処理の前日に播種した。細胞を、5μMの3−Deazaneplanocin Aまたは2ΜのM5−Asa−2’−デオキシシチジン(5−AzaC;Sigma)で72時間、100nMのトリコスタチンA(TSA;Sigma)で24時間処理した。5−AzaCとTSAとの併用では、細胞に、5−Azaを48時間添加し、その後TSAを24時間添加した。

siRNA
EZH2、SUZ12およびEEDメッセンジャーRNAを特異的な標的とするsiRNAオリゴヌクレオチドについては、先に説明している(Cao,R.,&Zhang,Y.,Moi Cell(2004)15,57−67;Bracken,A.P.,e
t al,EMBO J.(2006)22,5323−5335)。Brackenらは、SUZ 12を標的とするステムループRNAを生成する際に、2つのオリゴヌクレオチドを用いた。それらは、5’−GATCCCCGTCGCAACGGACCAGTTAATTCAAGAGATTAACTGGTCCGTTGCGA CTTTTTGGAAA−3’(配列番号1)、および5’−TCGATTTCCAAAAAGTCGCAACG GACCAGTTGATCTCTTGAATTAACTGGTCCGTTGCGACGGG−S’(配列番号2)であった。CAO および ZHANGは、EZH2にオリゴヌクレオチド5’−AAGACTCTGAATGCAGTTGCT−S’(配列番号3)を、そして、EEDにオリゴヌクレオチド5’−AAGCACTATGTTGGCCATGGA−3’(配列番号4)を用いた。選択されたPRC2標的と非標的対照のSmartpool siRNA二重鎖は、Dharmacon社(コロラド州、ラファイエット)から購入した。Sigma−Proligo社から購入したFBXO32 siRNAは、以下の配列を標的としている:5’−GTCACATCCTTTCCTGGAA−S ’(配列番号5)。細胞は、Lipofectamine 2000(in vitroゲン)を用いて、製造業者の使用説明書に従って、siRNA二重鎖を最終濃度50nMでトランスフェクトした。

ウエスタンブロット解析
細胞ペレットは、タンパク質すべてを放出させるために組織ホモジナイザーを用いて更に音波破砕する前に、まず、pH 7.6のTris−HC l 25mM、NaCL 150mM、1%ノニデット−P 40(NP−40)、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ナトリウムドデシル硫酸塩(SDS)の水溶液からなる放射標識免疫沈降(RIPA)用緩衝液で溶解した。等量のタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移した。ブロットは、以下に列挙抗体において調べた:EED(07−368)、SUZ12(07−379)、SUV39H1(07−550)、BMIL(05−637)、トリメチル化H3−K27(07−449)、トリメチル化H3−K9(07−442)およびAcetyl−Histone H3(06−599)、ブロットは、Upstate社から購入した。EZH2(AC22)およびHistone H3(3Hl)は、Cell Signaling社から購入した。DNAメチルトランスフェラーゼDNMTLおよびDNMT3Bに対する抗体は、Alexis Biochemicals社から購入した。

フローサイトメトリー解析
細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、70%エタノールで定着し、ヨウ化プロピジウム染色およびFACS分析に供するために処理した。カスパーゼ3活性アッセイおよびミトコンドリア膜電位を検出するため、細胞は、製造業者(BD Bioscience社)の使用説明書に従い、抗活性カスパーゼ3とJC−Iで、それぞれ、染色した。

マイクロアレイ解析と定量リアルタイムPCR
全RNAはTrizol(in vitroゲン)を用いて細胞株から分離し、RNA
Amplificationキット(Ambion社)を用いてcDNAに変換した。マイクロアレイハイブリッド形成法は、Illumina Gene Expression BeadChip(Illumina社)を用いて行い、データ解析をAgilent Technologies社のGeneSpringソフトウェアを用いて行った。正常な試料および初期***腫瘍の試料の遺伝子発現は、製造業者の使用説明書に従い、Affymetrix U 133A GeneChips(Affymetrix社、カリフォルニア州、サンタクララ)を用いて実施した。個々の配列からの遺伝子発現デー
タは、中央値によるセンタリングによって正規化し、平均リンケージ階層クラスタリングを、Cluster and Treeview社(http://rana.lbl.gov/EisenSoftware.htm)のソフトウェアを用いて行った。定量的リアルタイムPCRは、TaqManプローブ(Applied Biosystems社)を用いてPRISM 7900 配列検出器(Applied Biosystems社)で行った。試料は、18SのリボソームRNAのレベルに正規化した。

クロマチン免疫沈降解析(CHIP)
前述のように、ChIPアッセイを行った。MCF−7細胞は、3−デアザネプラノシン(5μM)を用いる場合と用いない場合とで、48時間処理した。MCF−7細胞は、6ウェルプレートに30%コンフルエントに播種し、3−デアザネプラノシン(5μM)を用いる場合と用いない場合とで、48時間処理した。細胞は、Ixリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1度洗浄し、その後、37℃で10分間、PBSにおいて1%ホルムアルデヒドを用いて処理し、続いて最終濃度が0.125Mになるまで5分間グリシンを添加した。細胞を、その後、氷上に擦り付けて、4℃で5分間1500rpmで遠心分離した。PBSで洗浄の後、細胞ペレットを***解緩衝液1 mlで再懸濁し、(pH 7.5
HEPES 10 mM、pH 8.0 EDTA 1 mM、NaCL 400 mM、10%グリセロール、0.5%NP−40、フェニルメチルスルホニルフッ化物 0.5 MM、およびプロテアーゼ阻害剤[ベンズアミジン 1 mM、ロイペプチン 3
mg/mL、のバシトラシン 0.1 mg/mL、マクログロブリン 1 mg/mL])続いて微量遠心機にて40℃で5分間、11,500rpmで遠心分離を行い、クロマチンと架橋結合していないタンパク質を除去した。得られたペレットをその後、***解緩衝液で再び再懸濁し、Heat Systems Ultrasonics社製W−220超音波処理器を用いて出力20%で計2分間(パルス:30秒ON/30秒OFF)超音波分解した。得られた溶液を、4℃で10分間、微量遠心機にて、4℃で10分間、最高速度で遠心分離し清澄化した。この時点で、溶液を5%取り出し、−20℃でクロマチンのインプット試料として保存した。クロマチン溶液は、Protein A/G Sepharose beads(Pharmacia社)の50%スラリー80μLで、2〜4時間事前に清澄化した。
2x10 MCF7細胞から事前に清澄化したクロマチンを、剪断したサケ***DNA(0.3 mg/mL)とBSA(1 mg/mL)で4°Cで一晩予備遮断して免疫沈降を行い、その後、抗SUZ12抗体(07−379、Upstate社)5μg、抗RNAポリメラーゼII(sc−899、Santa Cruz社)5μgと非特異的IgG(sc−2027、Santa Cruz社)5μgで培養した。免疫沈降は、4℃で一晩行った。免疫複合体は、溶離緩衝液(PH 8.0の50 mM Tris、1%SDS、pH 8.0のEDTA 10 mM)75μLを添加して、ビーズから溶出し、65℃で10分間加熱した。溶出は2回行い、溶出液をプールした。架橋結合は、その後、溶離緩衝液で希釈(1:4)した架橋結合した5%の全細胞抽出試料とともに、溶出液を65℃に一晩置いて反転させ、クロマチンのインプット試料を生成した。DNAを、その後、Qiagen QIAquick PCRを用いて精製し、Expand High Fidelity PCRシステム(Roche Biochemicals社)を用いてPCRを実施した。プライマーの最終濃縮は、0.5μMであった。クロマチンインプット試料約1%とChIP試料10%を、各反応のテンプレートとして用いた。反応混合液を、まず、94℃で5分間溶解し、その後94℃/30秒間、56℃/1分間、72℃/1分間を27サイクル行い、最後は72℃で7分間延長して溶解した。アンプリコンは、すべて150〜300 bpの範囲内である。試料は、臭化エチジウムを含む3%アガロースゲル上で溶解した。用いたプライマーの配列は以下の通りであった:TGFBI:フォワードプライマー 5’−ATGTCACTTGCCTCCACCCATC−3
’(配列番号6)およびリバースプライマー 5’−ACCTGCTCTGAGGCCTGAAAG−3’(配列番号7)。IGFBP3:フォワードプライマー5’−TTCA
CCCAAGGCTTCGTGCTG−3’(配列番号8)およびリバースプライマー5’−TCCGCGGGAGGAGAC TTTCC−3’(配列番号9)。KRT17:フォワードプライマー5’−AACCCATTTCCCCACCAGACAGG−3’(配列番号10)およびリバースプライマー5’−AAATCCTCGTGCTGAGTGCCG−3’(配列番号11)。FBXO32:フォワードプライマー5’−GCAGGTGGGCATTGTGGAGC−3’(配列番号12)およびリバースプライマー5’−TGATGTACCCAGGGCCAATGC−3’(配列番号13)。LAMB3:フォワードプライマー5’−GCAG GTGGGCATTGTGGAGC−3’(配列番号14)およびリバースプライマー5’−TCCAGATCGCCTGA AAGCTCC−3’(配列番号15)。ANXA8:フォワードプライマー5’−GAATGATGAAAATGGGCTGG GTG−3’(配列番号16)およびリバースプライマー5’−GAAATTCTTAGCTCCAGCCTGCG−3’(配列番号17)。TENS1:フォワードプライマー 5’−TGGCCTGGGAGCTTTCTTTACC−3’(配列番号18)およびリバースプライマー 5’−TCTGGGCCAACGTTGCTTTG−3’(配列番号19)。PLAU:フォワードプライマー 5’−GGA AGCACCAACAGTTTATGCCC−3’(配列番号20)およびリバースプライマー 5’−ATCAGAGGGGGA AAG GCAAGG−3’(配列番号22)。

PRC2タンパク質の枯渇および3−デアザネプラノシンA(DZNEP)によるH3−K27メチル化の抑制
ウエスタンブロット解析(図1A)で示すように、HCTL 16細胞またはMCF−7細胞を、3−デアザネプラノシン5ΜMで48時間および72時間処理した結果、PRC2の成分であるSUZ12、EZH2およびEEDのタンパク質レベルは劇的に低下した。したがって、リシン27(H3−K27)のヒストン3のトリメチル化は、3−デアザネプラノシンによって強く低下した。対照的に、リシン9(H3−K9)でのヒストンH3メチル化は、3−デアザネプラノシン処理の影響を受けなかった。この結果は、H3−K27がPRC2ヒストンメチルトランスフェラーゼの特異的基質であり、一方、H3−K9のメチル化は、SUV39HLメチルトランスフェラーゼによりしばしば媒介される、というこれまでの所見と一致している。したがって、Suv39hlのタンパク質レベルが、3−デアザネプラノシンに影響されていないことがわかった。加えて、3−デアザネプラノシン処理は、ヒストンアセチル化に影響を及ぼさず、5−AzaCやZebularine等のDNMT阻害剤によって枯渇することが知られているDNMT1またはDNMT3Bのタンパク質形質発現に変化を及ぼさなかった。逆転写(RT−PCR)でPCR法で測定されるPRC2タンパク質の各々のmRNA濃度は、しかしながら、3−デアザネプラノシン処理(図1B)後、変化せず、このことは、PRC2成分の減少がタンパク質レベルで起こり、転写抑制によらないことを示唆する。
PRC2タンパク質の安定度がプロテオソーム媒介性機序を通して調節されるとこれまで報告されている。このため、3−デアザネプラノシンによるPRC2タンパク質の枯渇がタンパク質分解から生じるかどうかを調べた。MCF−7細胞は、3つの個々のプロテオソーム阻害剤MG132、LLNLおよびMG115の存在下または非存在下で3−デアザネプラノシンで処理し、これらの処理が3−デアザネプラノシン誘導性のPRC2枯渇を救済するかどうかを調べた。図1Cで示すように、各プロテオソーム阻害剤を用いた処理は、3−デアザネプラノシンに応じた、EZH2およびSUZ 12のタンパク質レベルのダウンレギュレーションを阻止した。これらの結果は、3−デアザネプラノシンが、タンパク質分解の進行により、PRC2タンパク質を低下させることを証明した。

3−デアザネプラノシンは、癌細胞で選択的にアポトーシスを誘導する
3−デアザネプラノシンが、細胞死を誘導することが可能であるとわかった。5μMの3−デアザネプラノシンは、propodiumヨウ化物(PI)染色およびフローサイトメトリー(図3A)による判定では、48時間で25%の細胞死、そして72時間で45%の細胞死を誘導することが可能であることが確認された。5μMの3−デアザネプラノシンも、乳癌MB−468細胞、結腸直腸癌HCT116、RKO細胞およびSW480細胞を含む種々の他の癌細胞株で、明らかな細胞死を誘導した。
3−デアザネプラノシンが細胞死を誘導する機序を解明するため、フローサイトメトリーを用いて、3−デアザネプラノシン処理後の、MCF−7細胞およびHCTL 16細胞でミトコンドリア膜電位(ΔΨm)の低下について分析した(図3Bおよび3C)。3−デアザネプラノシンは、より低いΔΨMで細胞の割合の顕著な増加を誘導し、3−デアザネプラノシン処理後これらの細胞でミトコンドリア損傷が認められた。カスパーゼ9の開裂および3−デアザネプラノシン処理細胞のpoly(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)も、容易に検出可能であった(図3D)。これらの結果は、3−デアザネプラノシンがミトコンドリア機能障害およびカスパーゼ活性化を伴うアポトーシス細胞死反応を誘導することを示す。
3−デアザネプラノシンが癌細胞で選択的にアポトーシスを誘導するかどうか判定するため、MCF−7細胞と非癌胸部上皮MCFLOA細胞との間のアポトーシス誘導を、種々の期間において比較した。3−デアザネプラノシン処理はMCF−7細胞で結果として進行性かつ顕著なアポトーシスを誘導するが、MCF10A細胞では、3−デアザネプラノシン処理後96時間まで、顕著なアポトーシス誘導は認められなかった(図3F)。また、顕微鏡検査による評価では、MCF10A細胞等の正常な原発性大腸上皮CC33D細胞もまた、結腸直腸癌HCT116細胞と比較して、3−デアザネプラノシン処理に対して抵抗性であった(図3Gおよび3H)。従って、3−デアザネプラノシンは、癌細胞において選択的にアポトーシスを誘導した。
3−デアザネプラノシンに誘導されたアポトーシスがPRC2タンパク質の枯渇に起因しているかどうか判定するため、PRC2タンパク質(EZH2、EEDおよびSUZ 12)は、低分子干渉RNA(siRNA)オリゴヌクレオチドでMCF−7細胞を処理して、個々に直接ノックダウンし、それらのアポトーシス誘導能を調べた。siRNA処理したMCF−7細胞をウエスタンブロット解析し、ノックダウン効率を確認した(図3I)。特に、PRC2タンパク質各々のノックダウンは結果として、他の2つの成分のダウンレギュレーションをもたらし、結果は、PRC2成分のタンパク質レベルが、複合体の他の部分の存在に依存しているというこれまでの所見と一致していた。PRC2ノックダウンで予想される結果として、ヒストンH3−K27のトリメチル化は、著しく低下し、一方H3−K9のトリメチル化は変化しない。PARP開裂の誘導は、これらの条件下では明らかであり(図3I)、PRC2 siRNAで個々に処理した細胞は、顕著なアポトーシスを示した(図3J)。このように、3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスは、少なくとも一部には、PRC2複合体を枯渇させる能力により媒介され、関連のあるヒストンH3−K27のメチル化を抑制する。

PRC2の特定は、3−デアザネプラノシンにより乳癌において遺伝子およびその再活性を抑制した
PRC2は、その標的遺伝子の発現を抑制するために作用する。このため、3−デアザネプラノシンによりPRC2を枯渇させると、結果としてそれらの再発現が予想される。
3−デアザネプラノシン活性化されたPRC2標的を判定するには、PRC2により抑制される推定標的遺伝子を同定する必要があった。PRC2成分EZH2およびSUZ12が胸部腫瘍で過剰発現することが報告されているため、本実施例では乳癌細胞に着目する。(Kirmizis et al.,2003、前掲;Kirmizis et al.,2004、前掲)。siRNAは、MCF−7細胞において、PRC2(EZH2、SUZ 12およびEED)の3つのコア成分のノックダウンを個々に用いた。遺伝子発現の効果をIllumina Gene Expression BeadChipを用いて解析した。データ解析により、EZH2、EED、SUZのsiRNA処理後、それぞれ708個、684個、572個の遺伝子が2倍以上アップレギュレートしたことが明らかになった。図4Aは、少なくとも2つのsiRNA条件でアップレギュレートした450個の遺伝子とsiRNA試験の3件すべてでアップレギュレートした95個の遺伝子との重複を示す(2つおよび3つの条件の重複にて、p<0.0001)。全体として、3つのPRC2タンパク質のうち少なくとも1つが枯渇している場合、1402個の遺伝子の発現が増加した。その後の解析を包括すると、1402個の遺伝子すべてが、PRC2標的遺伝子となりうると考えられた。
さらに、アレイ解析を行い、3−デアザネプラノシンによりアップレギュレートされた遺伝子を同定した。MCF−7細胞を3−デアザネプラノシンで72時間処理した結果、750個の遺伝子が2倍以上アップレギュレートされた。3−デアザネプラノシンでアップレギュレーされたPRC2標的遺伝子を同定するため、3−デアザネプラノシンで誘導可能な750個の遺伝子を、1402個の候補PRC2標的遺伝子と比較した。140個の遺伝子(p<0.0001、図4B)の重複が同定された。これらの重複遺伝子は、3−デアザネプラノシンで発現が活性化できる候補PRC2標的遺伝子である。
3−デアザネプラノシンは、非癌MCFLOA細胞と比較して、MCF−7で選択的にアポトーシスを誘導したため、PRC2標的遺伝子が、癌細胞と非癌細胞との間では異なるように発現している可能性がある。特に乳癌細胞で抑制されるPRC2標的を同定するため、MCF−7細胞およびMCF10A細胞における推定140個のPRC2標的遺伝子の発現プロファイルは、遺伝子クラスタリング解析により比較した(図4C)。本解析により、MCF10A細胞と比較してMCF−7細胞で少なくとも2倍少なく発現した140個の遺伝子のうち47個のセットを同定したが、残りの推定PRC2標的遺伝子のいずれもが、2つの細胞型において同程度であるか、またはMCF−7細胞において、より高い発現を呈した(図4C、左パネル)。PRC2タンパク質の3−デアザネプラノシンでの処理またはsiRNAでのノックダウンは、結果としてMCF−7細胞において再発現をもたらした(図4C、右パネル)。遺伝子配列データの信頼性を検証するため、47−遺伝子セットから無作為に選択した10個の遺伝子の半定量RT−PCRを実施した(図4D)。どの場合も、候補遺伝子はMCF10A細胞で高度に発現したが、MCF−7細胞では、低い発現または検出不可能な発現もあった。PRC2タンパク質の3−デアザネプラノシン処理またはPCRタンパク質のsidNA枯渇は、結果としてMCF−7細胞において再発現をもたらした。
そのような厳密判定基準を用いることにより、PRC2標的遺伝子のコホートが、乳癌細胞で特に抑制されることが明らかとなった。遺伝子オントロジー(GO)解析により、TGFBIおよびIGFBP3で見られるように、これらの遺伝子では成長抑制またはアポトーシスにおける役割が顕著に高められていることが、わかった(図4E)。このため、これらの遺伝子は、乳癌でPRC2により後成的にサイレンシングまたは抑制される悪性の表現型に対する推定腫瘍抑制因子と考えられる。また、MCF−7細胞でPRC2により高度に抑制された遺伝子は、3−デアザネプラノシンにより選択的に再活性化される。これは、これら遺伝子が既に高度に発現し、更なる誘導を受けなかったMCF10A細胞とは正反対である(図4F)。このことは、3−デアザネプラノシン処理に反応してM
CF10A細胞の感受性が欠如することを説明し、3−デアザネプラノシンの癌選択性が、癌細胞におけるPRC2抑圧遺伝子の選択的再活性に依存することを意味している。
さらに、遺伝子発現解析は、28個の初期胸部腫瘍試料と9つの正常胸部組織からなるデータセット上で行った。47個の癌に特異的なPRC2抑圧遺伝子と、EZH2、SUZ 12およびEEDとが共に、解析に用いられた。監視されていないクラスター解析により、このAFFYMETRIX配列データセットに存在する34個の固有のプローブが明確に腫瘍と正常試料とを分離することがわかった(図4G)。17個の遺伝子(クラスターI)のサブセットは、正常な胸部組織と比較して胸部腫瘍で低次の発現を呈し、それは、予想通りで、EZH2およびSUZL2の高度の発現と相関していた。このデータは、PRC2標的遺伝子のこのサブセットが、初期のヒト乳癌で抑制されるPRC2標的遺伝子と臨床的に関連していることを示す。残りの遺伝子では、腫瘍組織か正常組織であるか(クラスターII)、または腫瘍においてさえ高度に発現するか(クラスターIII)を区別することはさらに困難であった。このため、これらの遺伝子は、初期の腫瘍のPRC2によって媒介される後成的変化を反映しない場合がある。
薬理学的解析、ゲノム解析および機能的解析により、推定臨床的に関連するPRC2標的のグループを、このようにして特定した。in vitro研究とin vivo研究の統合することで、原発性胸部腫瘍に関連する遺伝子とPRC2標的リストとの有意な対合が可能になった。例えば、PLAUおよびDUSP4 および10を、MCF−7細胞においてサイレンシングしたが、実際には、正常組織と比較して初期腫瘍試料で高度に発現することがわかった。これが癌細胞株と原発性乳癌細胞との基本的な相違を反映する場合があるにもかかわらず、これらの「一致しない」遺伝子(例えば、PLAUおよびDUSP4 および10)の発現が、マクロファージ、脈管細胞成分および間質細胞等、原発性腫瘍の非癌成分に起因するとも、同様に考えられる。この選択を通して、しかし本願発明者は、発現が、正常な胸部組織と比べて原発性胸部腫瘍で一貫してダウンレギュレートされる、臨床的に関連したPRC2標的のグループを特定した。多くのPRC2抑制された標的遺伝子(例えばTGFBI、IGFBP3およびPPPIR15A)が成長抑制またはアポトーシスで機能を有することが知られており、推定腫瘍抑圧遺伝子としてのそれらの潜在的役割を示唆している。これらの遺伝子の再発現は、3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスに、集合的に関与する場合がある。

PRC2およびRNAポリメラーゼIIによるPRC2標的プロモータ占有に関する3−デアザネプラノシンの効果

クロマチン免疫沈降(ChIP)を用いて、PRC2がその推定標的遺伝子プロモータと結合するかどうか、また、この結合が3−デアザネプラノシン処理により影響を受ける可能性があるか否かを判定した。さらに、RNA Pol IIとPRC2が排他的な方法で遺伝子プロモータと結合するので、RNAポリメラーゼII(RNA Pol II)の結合について解析した(Vire et al.,2006、前掲)。3−デアザネプラノシンによるPRC2の枯渇が、PRC2標的遺伝子プロモータへのRNA Pol
IIの補充を増強させると推論された。CpGアイランドを有する場合と有さない場合とで、1kb以内の転写開始点でPRC2結合部位の95%が以前に見つかったことから、8個の候補PRC2標的遺伝子のコアプロモーター領域中のChIP PCRプライマーをデザインした。(Lee et al.,2006、前掲)(図5A)。SUZ12およびRNA Pol II抗体を用いて行われるChIP解析により立証されるように、未処理のMCF−7細胞は、試験を行ったPRC2標的遺伝子プロモータに、SUZ 12の強い結合を示したが、バックグラウンドまたは最小の結合のみが非特異的IgGまたはRNA Pol IIの引き抜き試料で検出された(図5B)。3−デアザネプラノ
シンによる処理後、これらのプロモータと結合しているSUZ 12は顕著に減少したが、RNA POL IIの結合は増加した。3−デアザネプラノシンによるPRC2枯渇後のPRC2標的遺伝子の再発現と合わせて、これらの所見は、これらPRC2標的遺伝子プロモータと結合しているPRC2が転写抑制のために必要とされることを確認した。3−デアザネプラノシンによるPRC2タンパク質の破壊は、この結合を減少させ、結果としてRNA Pol IIのさらなる補充とPRC2標的遺伝子プロモータの活性化をもたらした。

3−デアザネプラノシンによりPRC2抑制された標的の再活性は、DNAメチル化を抑制した結果ではない

3−デアザネプラノシンがAdoHycヒドロラーゼ活性を抑制して、間接的に一般的なメチル化反応を抑制するため、PRC2標的遺伝子の3−デアザネプラノシン媒介性の再活性が、DNA低メチル化の結果と考えられる可能性がある。そのために、DNA脱メチル化剤である5−アザ−2’デオキシ−シチジン(5−AzaC)で、またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)と併用での、MCF−7細胞の処理により、PRC2標的遺伝子を活性化させることができるかどうかをテストした。アレイ解析は、5−AzaC単独またはTSAと併用のいずれかで処理したMCF−7細胞で行った。これまでに確認された140個のPRC2標的遺伝子の発現プロフィールを、3−デアザネプラノシンで処理したMCF−7細胞と比較した。図5C(I)は、上記の処理が3−デアザネプラノシン処理の場合に比べて、結果的にPRC2標的遺伝子を顕著に再活性させなかったことを示す。140個のPRC2標的遺伝子のうち、13個の遺伝子(約10%)のみが、5−AzaCおよびTSA(例えばANAX8やDLX2)を併用治療後、3倍以上の誘導を示した。このことは、PRC2標的のいくつかにおいて、3−デアザネプラノシンがDNA脱メチル化反応の結果としてPRC2標的遺伝子の発現を増強させる場合があることを示唆している。配列結果を、代表的なPRC2標的に行うリアルタイムRT−PCRを用いて更に確認した。TGFBI、KRT17およびFBX032等の遺伝子は、TSAの有無にかかわらず、3−デアザネプラノシンにのみ誘導され、5−AzaCには誘導されなかった(図5C、II)。ANXA8およびDLX2の発現は、しかし、3−デアザネプラノシンの場合と5−AzaCとTSAの併用の場合に活性化された(図5C、III)。3−デアザネプラノシンによるPRC2標的遺伝子の再活性は、一般のDNA低メチル化の結果ではなかったが、ANXA8やDLX2等の特定のPRC2標的遺伝子に関して例外がみられる場合がある。これらの遺伝子については、最近の研究で示唆されるように、PRC2は、それらのプロモータにDNMT(DNAメチルトランスフェラーゼ)を補充する場合があり、同等にそれらの発現を抑制する場合がある(Vire et al,2006、前掲)。

3−デアザネプラノシンへの細胞感受性と関連するPRC2標的遺伝子の同定

MCF−7細胞で見られる知見を評価するため、MB−468、SK−BR−3、MB−231、T47DおよびBT549を含む付加的な乳癌細胞株のスクリーニングを行った。時間経過的にアポトーシス反応を解析した結果、採取した乳癌細胞株の3−デアザネプラノシンに対する感受性が様々に変化することがわかった。MCF−7細胞と同様に、MB−468細胞、SK−BR−3細胞およびT47D細胞は、3−デアザネプラノシン誘導性の細胞死に非常に影響されやすかった。対照的に、MB−231細胞およびBT−549細胞は、MCFLOAと共に、3−デアザネプラノシン処理に、高い耐性を示した(図6A)。3−デアザネプラノシンに対する細胞感受性と関連するPRC2標的遺伝子を特定するため、アレイ解析を、3−デアザネプラノシン処理の前後に乳癌細胞株で行い
、47個のPRC2標的遺伝子の発現のプロファイルを特定した。いくつかのPRC2標的遺伝子が、感受性細胞株と抵抗性細胞株との間で差次的に発現し、それが3−デアザネプラノシンに対する明確な感受性を与える場合があることを説明した。遺伝子クラスタリング解析により、PRC2標的遺伝子(22個の遺伝子)のサブセットが、抵抗性細胞株に対して一貫して高レベルに発現するが(MCF10A、MB−231およびBT549)感受性細胞株(MCF−7、MB−468、SK−BR−3およびT47D)では、発現が低レベルであることが分かった(図6B)。この遺伝子群(4つの遺伝子)のうち:FBXO32、LAMB3、PLAUおよびPPP1R15Aが、4つの感受性細胞株すべてにおいて、同様に、3−デアザネプラノシンにより誘導され、別の遺伝子(TGFBI、IGFBP3、TNS3およびKRT17)では、4つの感受性細胞株のうち3つで誘導された。抵抗性細胞株(MCF10A、MB−231およびBT549)では、しかし、これらの遺伝子は、(BT549におけるLAMB3以外)すでに高度に発現しており、3−デアザネプラノシン処理の後、さらに顕著には誘導されなかった。リアルタイム解析と従来のRT−PCR解析の両方で、4つの遺伝子セットの配列データを確認した(図6Dおよび6E)。このことから、これらの遺伝子発現の抑制および3−デアザネプラノシンによる遺伝子誘導の程度は、3−デアザネプラノシンに対する細胞感受性と関連すると考えられた。しかし、特に、PRC2標的遺伝子の発現レベルは、PRC2タンパク質のレベルと必ずしも関係していなかった。たとえば、EZH2タンパク質を高度に発現すると考えられたMB−231細胞では、多くのPRC2標的が、必ずしも抑制されるというわけではなかった(図6E、下パネル)。これは、これらの細胞において、EZH2は、これらの遺伝子の後成的制御を確立し維持する上で機能的ではなく、DNMTおよびHDAC等の付加的因子を必要とする場合があることを示唆している。
3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスにおいて上記のPRC2標的遺伝子の機能的役割を判定するため、siRNAを用いて、3−デアザネプラノシン反応に関係する7つのPRC2標的遺伝子の誘導を阻止し、アポトーシス誘導における3−デアザネプラノシンの効果を評価した。FBXO32 siRNA処理だけが、3−デアザネプラノシンへのアポトーシス反応を低下させた。別の6つのPRC2標的遺伝子を標的としている残りのsiRNAオリゴヌクレオチドは、3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスを抑制しているとは考えられなかった(図6F)。siRNAの的外れな効果を排除するため、異なるFBXO32 siRNAをさらに用いた。FBXO32誘導の抑制が3−デアザネプラノシンによるアポトーシス誘導を有意に軽減させることが確認され(図6G)。類似の結果が、MB−468およびT47D細胞でも観察された(データ表示せず)。これらの試験は、特定されたPRC2標的遺伝子のうち、乳癌細胞において3−デアザネプラノシン誘導性アポトーシスを媒介する主たる作用因子として、FBXO32について確認する。このことから、乳癌細胞のFBXO32のサイレンシング状態および3−デアザネプラノシンによる再活性は、3−デアザネプラノシン反応の重要な決定因子であると考えられる。さらに、潜在的な腫瘍抑圧遺伝子としてのFBXO32の機能的役割は、コロニー形成に影響を及ぼすその能力によって、更に裏付けられた。図6Hは、MCF−7細胞のFBXO32の形質移入により、調節ベクターでトランスフェクトした細胞と比較して、形成されるコロニー数が大幅に低下したことを示す。
理論または上記の例に拘束されることなく、3−デアザネプラノシンは、AdoHcyヒドロラーゼ阻害剤として、AdoMet−AdoHcy代謝に干渉して、メチル化反応を低下させることができる(Glazer,RI,et al.,Biochem Biophys.Res.Commun.(1986),135,2,688−694)。DNMTを減少させる5−アザ−2’デオキシ−シチジンやゼブラリン等のDNA低メチル化剤とは異なり、この化合物はDNMT上で効果を有しないと考えられたが、PRC2タンパク質の効果的な枯渇とそれに関連するヒストン−H3K27のメチル化を誘導した。Suv39hlまたは関連のH3−K9メチル化に関して効果を有しなかったことから、
PRC2の上の3−デアザネプラノシンの効果は、選択的なものであると考えられた。3−デアザネプラノシン処理がmRNA濃度に影響を及ぼさなかったことから、3−デアザネプラノシン処理の後のPRC2タンパク質の枯渇は、転写抑制を通しては達成されない。一方、プロテオソーム阻害剤は、タンパク質発現を再開させることができるため、プロテオソームの分解を通して進行する。DNAに取り込んでDNMTを枯渇させ、置換DNAに酵素を閉じ込める5−AzaCやゼブラリンとは異なり(Cheng et al.,2004、前掲)、3−デアザネプラノシンはリン酸化されず、DNAには取り込まれない(glazer et al.,1986;Tseng et al.,1989)。このため、3−デアザネプラノシンが類似の機序を通してPRC2タンパク質を枯渇させることは、ほとんど考えられない。この複合体の完全性は、各成分の存在に依存し、1成分のノックダウンは、他のタンパク質のダウンレギュレーションをもたらすと報告されている。(Pasini,D.,et al.,EMBO Journal(2004)23,4061−4071)。3−デアザネプラノシンによりPRC2タンパク質のうちの3つすべてを効果的に枯渇させると、3−デアザネプラノシンは、主に1つの成分に影響を及ぼし、それが、結果として他の成分のダウンレギュレーションをもたらす可能性がある。あるいは、ヒストンH3−K27に対するSアデノシル−メチオニン取り込みを抑制することで、PRC2タンパク質のクロマチンへの結合を低減し、安定性に影響を及ぼすことが可能である。
3−デアザネプラノシンに対し感受性または抵抗性を示す乳癌細胞株を採集する遺伝子発現解析を通して、発明者は、3−デアザネプラノシンに対する細胞性応答にかかわる可能性が高いPRC2標的を規定することが可能である。遺伝子のこの小さいセットは代用マーカとして用いられ、将来PRC2を標的とした治療において、乳癌細胞で3−デアザネプラノシンの応答を予測し、乳癌患者のサブセットの選択を導く可能性がある。さらに、RNA干渉を用いた更に機能的解析は、F−ボックスタンパク質32をコードするFBXO32の再発現が、少なくとも部分的には3−デアザネプラノシンのアポトーシス応答に寄与するということを、明らかにしている。腫瘍抑圧遺伝子としてのその潜在的機能は、細胞発育およびコロニー形成を抑制するその能力により更に裏付けられた。重要なことに、FBXO32が、正常組織と関連して原発性胸部腫瘍により強く抑制されていることが確認される。このため、正常組織ではなくヒト乳癌細胞におけるPRC2による潜在的腫瘍抑圧遺伝子の一部の選択的な抑制およびPRC2標的因子による効果的な反転は、腫瘍細胞に対する腫瘍細胞の優先的死滅をもたらす新規の治療手法を示している。
PRC2がDNMTとの相互作用を通して直接DNAメチル化を制御すると最近報告された(Vire et al.,2006、前掲)。3−デアザネプラノシンがすべてのメチル化反応を抑制する場合があるにもかかわらず、PRC2抑制された遺伝子を活性化する能力が一般的に起こり得るDNAメチル化抑制と関連していないことがわかった。しかし、5’−AzaCおよびTSAで処理することで発現が増強され得るPRC2の小さい部分が、遺伝子(約10%)を標的とすることがわかった。このことは、PRC2が、これらの遺伝子のために、DNMTに発現を制御するように要求する場合があることを示唆している。そのために、3−デアザネプラノシンは、DNMTやHDAC阻害剤等のクロマチンリモデリング因子とは区別され、PRC2の調節や関連のヒストンメチル化により遺伝子発現を再活性化させることができるこれまでの最初の化合物と考えられている。今日まで、3−デアザネプラノシンは、抗ウィルス薬治療を意図して研究されたものであり(De Clercq,E.D.,et al.,Antimicrobial Agents&Chemotherapy(1989)33,8,1291−1297)、in vivoで軽微な毒性を有することが示されている。正確な機序にもかかわらず、本研究で最初に述べられている癌細胞における興味深いアポトーシス活性は、それが作用を及ぼす重要な癌経路と共に、抗癌治療の有望な薬剤候補となっている。また、新規の抗腫瘍化合物としての可能性に加え、3−デアザネプラノシンは、後成的研究に有効なツール
として用いることもできる。
この明細書の先に公表されている文書のリストまたは考察について、かかる文書が必ずしも技術水準の一部であるか、通常の一般的知識であるという認識として取り扱われる必要は無い。
本明細書中に例証的に説明された本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない1または複数の任意の要素や1または複数の限定がなくても、好適に実施することが可能である。したがって、例えば、用語「備える」、「含む」、「含有する」は、包括的に読むべきであり、限定的に読むべきものではない。さらに、本明細書中に使用される用語および表現は、説明のための用語として用いられたものであり、限定のためのものではない。また、該用語および表現を、図示および説明した特徴またはその一部のいかなる等価物を除外するために使用することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記した本発明の範囲内において種々の修飾が可能であると理解される。したがって、本発明が好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されてはいるが、開示された本明細書中に具体化された本発明の修飾および変更が当業者によってなされることも可能であり、そのような修飾および変更は本発明の範囲内であると考えられる。
本発明は、本明細書中に大まかに、かつ総称的に記述されている。一般的な開示の範囲内においてより狭く種および亜種に分類された各々についても、本発明の一部を形成するものである。このことは、除かれた内容が本明細書中に具体的に詳述されるかどうかに関わらず、任意の対象が属から除かれる条件付または消極的な限定付きの本発明の一般的な記述を含む。
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内にあり、また本発明の特徴または態様がマーカッシュ(Markush)グループの言葉で説明されている場合、本発明がマーカッシュ(Markush)グループの任意の個々の構成要素または下位群(サブグループ)の構成要素でも記載されることが当業者には理解される。
5μMの3−デアザネプラノシン(DZNep)で48時間および72時間処理した場合と、DZNep処理(対照)をしていない場合のHCT116(左側)およびMCF−7細胞(右側)のウエスタンブロット分析を示す図である。PRC2の成分SUZ12、EZH2、およびEEDのタンパク質レベルは、劇的に減少した。Suv39h1発現レベルおよびBlim1発現レベルに対する効果は観測されなかった。DNAメチル化を介在するDNAメチル−転移酵素DNMT1およびDNMT3bのレベルは、影響を受けなかった。しかし、ヒストン3のリシン27の(H3−K27)トリメチル化は、大きく減少し、一方、ヒストンH3のリシン9(H3−K9)のメチル化に対する効果は観測されなかった。 3−デアザネプラノシンで処理する前(−)および後(+)の逆転写(RT−PCR)によるPRC2タンパク質EZH2、SUZ12、およびEEDのmRNAレベルの分析を示す図である。HCT116細胞を(a)の場合のように処理し、対照として作用するRT−PCR分析GAPDHのために、RNA全体を隔離した。 プロテオソーム阻害剤が存在する状態でのEZH2およびSUZ12のタンパク質レベルに対する3−デアザネプラノシンの効果を示す図である。MCF−7細胞を3−デアザネプラノシンで18時間処理し、続いて、プロテオソーム阻害剤MG132(5μM)、LLNL(50μM)、MG115(20μM)、および(10μM)を追加することによって8時間処理した。EZH2およびSUZ12のウエスタンブロット分析のために、細胞を収集した。 腫瘍細胞においてアポトーシスを誘発するために使用され得る化合物の例示の構造を示す図である:A:3−デアザネプラノシンA、5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、Chemical Abstracts No.102052−95−9;B:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−(1−ヒドロキシエチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、Chemical Abstracts No.146424−81−9;C:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−(1,1−ジヒドロキシプロピル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.851071−63−1;D:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−[1−ヒドロキシ−2−プロペニル]−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.851071−61−9;E:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−4−フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.127828−67−5;F:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−(2−プロペニル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.851071−58−4;G:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−メチル−3−シクロ−ペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.224453−13−8;H:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.111005−71−1;I:5−(4−アミノ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)−4−クロロ−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.127828−64−2;J:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.88824−06−0;K:4−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3a,6a−ジヒドロ−2,2−ジメチル−4H−シクロペンタ−1、3−ジオキソール−6−メタノール、CAS−No.88824−08−2;L:N−[9−[5−(アセチルオキシ)−4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−1−イル]−9H−プリン−6−イル]−ベンズアミド、CAS−No.83844−33−1;M:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3−(メトキシ−メチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.138571−48−9;N:4−メチル−安息香酸[3−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−ヒドロキシ−5−[(4−メチルベンゾイル)オキシ]−1−シクロペンテン−1−イル]メチルエステル、CAS−No.142888−07−1;O:5−(6−アミノ−2−フルオロ−9H−プリン−9−イル)−3−(ヒドロキシメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.(塩酸塩)138660−07−8;P:5−(6−アミノ−8−クロロ−9H−プリン−9−イル)−4−クロロ−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.127828−72−2;Q:3−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4,5−ジヒドロキシ−1−シクロペンテン−1−カルボン酸、CAS−No.179929−29−4;R:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3−プロピル−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.851071−49−3;S:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3−(フルオロメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.303964−14−9;T:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−3−(フルオロメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.805245−51−6;U:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−4−フルオロ−3−(メルカプトメチル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.805245−54−9;V:5−(6−アミノ−9H−プリン−9−イル)−3−(1−ヒドロキシ−2−プロピニル)−3−シクロペンテン−1,2−ジオール、CAS−No.141794−36−7。 未処理の対照細胞(DMSO=ジメチルスルホキシド)と比較した、3−デアザネプラノシン(DZNep)に暴露された際の様々な癌細胞の細胞死の検出を示す図である。乳癌MCF−7細胞およびMB−468細胞、結腸直腸HCT116細胞、RKO細胞およびSW480細胞を5μMの3−デアザネプラノシンで48時間および72時間処理し、ヨウ化プロポジウム(propodium iodide)(PI)染色およびフローサイトメトリー分析によって、細胞死を検出した。3つの独立した実験の平均を示す。 染料5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチル−ヨウ化ベンズアミダゾロカルボシアニン(JC−1)で染色することによるHCT116細胞のミトコンドリア膜電位の検出を示す図である。細胞を3−デアザネプラノシン(DZNep)に暴露することにより、ミトコンドリア膜の電位は失われ(右側)、アポトーシスを示す。 HCT116細胞のアポトーシス(右側、図3Bのデータ)とMCF−7細胞のアポトーシス(左側)との比較を示す図である。 アポトーシス中に起きる、3−デアザネプラノシン(DZNep、右側)によるHCT116細胞のプロテアーゼカスパーゼ3の電位の活性化の検出を示す図である。 カスパーゼの活性化のウエスタンブロット分析を示す図である。MCF−7細胞およびHCT16細胞を5μMの3−デアザネプラノシン(DZNep)で48時間および72時間処理し、その後、細胞全体抽出物を分析した。カスパーゼおよびポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(「PARP」)の活性化を、3−デアザネプラノシンで処理した後に検出した。β−アクチン(「アクチン」)をローディング・コントロールとして使用した。 MCF−7細胞と非癌性胸上皮MCF10A細胞のアポトーシスを比較するFACS分析データのプロットを示す図である。細胞を5μMの3−デアザネプラノシン(DZNep、黒色の棒)で、図示された時間処理した。3−デアザネプラノシンで処理することにより、MCF−7細胞ではアポトーシスが進行して顕著であったが、MCF10A細胞では、明らかなアポトーシスは誘発されなかった。 乳癌MCF−7細胞および非癌性MCF−10A胸上皮細胞に対する3−デアザネプラノシン(DZNep)の効果の比較を示す図である。3−デアザネプラノシン−誘発細胞死は、MCF10A細胞ではごくわずかであったが、MCF−7細胞では著しい形態的変化が検出された。 CC33D1次結腸上皮細胞と比較した、結腸直腸HCT116細胞に対する3−デアザネプラノシンの効果の比較を示す図である。再び、3−デアザネプラノシンは、HCT116細胞において著しい形態的変化を誘発したが、CC33D細胞では、細胞死はほとんど観測されなかった。 形質移入の48時間後、低分子干渉RNA(siRNA)によるMCF−7細胞における個々のPRC2タンパク質EED、EZH2、およびSUZ12の枯渇のウエスタンブロット分析を示す図である。非特異性(NS)信号はすべてのサンプルに存在する。 PRC2タンパク質EED、EZH2、およびSUZ12の1つがsiRNAによって枯渇された(図3E参照)、MCF−7細胞のアポトーシスの検出を示す図である。PI染色およびFACS分析によって細胞死を測定した。各タンパク質それぞれのノックアウトに続いて、実質的なアポトーシス誘発を観測した。 乳癌において抑圧され、かつ3−デアザネプラノシンによって活性化されたPRC2標的を概略的に示す図である。タンパク質EZH2、SUZ12、およびEEDは、siRNAによって個々にノックダウンされた。イルミナ遺伝子発現BeadChipを使用して、≧2倍に上方調節された遺伝子を識別し、重なりについて検査した。 1402の遺伝子が上方調節されていることが判明し、その95の遺伝子は、すべての3つのsiRNA処理によって上方調節されていた。MCF−7細胞をDZNepで72時間処理することにより、少なくとも2倍に上方調節された750の遺伝子を識別することになり、その140の遺伝子が、候補PRC2標的遺伝子であることが判明した。 乳癌において特に表される候補PRC2標的を決定したために、MCF−7細胞およびMCF10A細胞におけるこれらの140の遺伝子の発現プロファイルを遺伝子クラスター分析によって分析した。45の遺伝子のクラスターが、MCF10A細胞と比較して、MCF−7細胞において少なくとも2分の1である発現で識別された。推定PRC2標的遺伝子の残りは、2つの細胞タイプの間で同様のレベルで発現し、またはMCF−7細胞においてより高いレベルでさえ発現した(左側のパネル)。PRC2タンパク質を3−デアザネプラノシン(DZNep)で処理する、またはsiRNAでノックダウンすることにより、MCF−7細胞において再発現した(右側のパネル)。 47の遺伝子セットからの10の無作為に選択された遺伝子の半定量RT−PCRは、各場合において、MCF−7細胞では検出されない候補遺伝子がMCF10Aでは高度に発現することを示した。PRC2タンパク質を3−デアザネプラノシン(DZNep)で処理する、またはsiRNAで枯渇させることにより、MCF−7細胞において再発現した。 遺伝子オントロジー(GO)分析は、TGFBIおよびIGFBP3など、これらの遺伝子の大多数が、成長阻害またはアポトーシスにおいて役割を果たすことを示した。これは、これらの47のPRC2標的遺伝子が高レベルですでに発現しており(上方のパネル)、かつさらには誘発されなかった(下方のパネル)MCF10A細胞とは極めて対照的である。 28件の1次乳癌サンプルと、47個の癌特異性PRC2抑制遺伝子を含んでいた9つの正常胸部組織とからなるデータセットに関する遺伝子発現分析は、PRC2標的のこのサブセットが、1次ヒト乳癌において抑制された臨床的に適切なものであることを示した。 このアフィメトリクス・アレイ・データ・セットに存在する34の固有の探針が、腫瘍サンプルと正常サンプルを明確に分離した。1次乳癌(T)および正常胸部組織(N)のPRC2標的遺伝子の階層的クラスター化を示す。I、II、およびIIIは、別個の発現パターンを示す遺伝子のサブセットを表す。17の遺伝子のサブセット(クラスタI)は、正常胸部組織と比較して乳癌において低い発現を示し、これは、予測されたように、より高いEZH2およびSUZ12の発現と相関していた。 8つの候補PRC2標的遺伝子の5’領域を概略的に示す図である。矢印は、転写開始部位を指す。垂直の棒は、CpG部位を示す。PCRによって分析された領域を、底部の黒い棒によって示す。ChIP PCRプライマーは、分析された遺伝子のコアプロモーター領域の上に配置されるように設計された。 クロマチン免疫沈降(ChIP)による、上位候補PRC2標的遺伝子プロモータへのPRC2結合の分析を示す図である。SUZ12およびRNA Pol II抗体を使用すると、未処理細胞は、選択された上位PRC2標的遺伝子プロモータへのSUZ12の強い結合を示し、一方、非特異性IgGまたはRNA Pol IIプルダウン・サンプルでは、背景結合または最小結合のみが検出された。3−デアザネプラノシンで処理する(+)ことにより、これらのプロモータへのSUZ12の結合は劇的に減少したが、RNA Pol IIの結合は増大した。非特異性IgGまたはRNA Pol IIプルダウン・サンプルでは、背景結合または最小結合のみが検出された。 PRC2標的遺伝子発現に対する3−デアザネプラノシン、5−アザシチジン、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤トリコスタチンAの影響を示す図である。I:3−デアザネプラノシン(DZNep)、5−アザシチジン(5−AzaC)、または5−アザシチジンとトリコスタチンA(AZA+TSA)の組合せで、MCF−7細胞を処理せず、または処理し、RNAを遺伝子発現分析のために隔離した。140のPRC2標的の平均発現レベルを示す。5−アザシチジン単独での処理、またはトリコスタチンAと組み合わせた処理は、3−デアザネプラノシン処理と比較して、全体的に、PRC2標的を著しく再活性化しなかった。II:PRC2標的TGFβI、KRTI7、およびFBXO32は、リアルタイムPCRによって測定され、18S rRNA発現を使用して正規化されたように、3−デアザネプラノシンによって活性化されたが、5−アザシチジン単独またはトリコスタチンAとの組合せでは活性化されなかった。III:しかしながら、PRC2標的ANXA8およびDLX2は、リアルタイムPCRによって測定され、18S rRNA発現を使用して正規化されたように、3−デアザネプラノシンおよび5−アザシチジン単独またはトリコスタチンAとの組合せの両方によって活性化された。これらのデータは、3−デアザネプラノシンによるPRC2標的遺伝子の再活性化は、一般的なDNAハイポメチル化に基づかないことを示す。これらのデータは、ANXA8およびDLX2などのあるPRC2標的遺伝子についてのみ、そのようなハイポメチル化が起きることが可能であることをさらに示す。これらの遺伝子について、PRC2は、最近の研究(Vire’,E.,et al.,Nature(2006),439,16,871−874)によって示唆されたように、DNAメチルトランスフェラーゼをプロモータに補充し、プロモータの発現を調節して抑制することが可能である。 5μMの3−デアザネプラノシンのアポトーシス効果について乳癌細胞系統MCF−7、MB−468、SK−BR−3、MB−231、T47D、およびBT549の120時間にわたる分析を示す図である。FACS分析によって細胞死を測定した。提示されたデータは、3つの独立した実験の平均である。MCF−7細胞、MB−468、SK−BR−3、およびT47D細胞は、3−デアザネプラノシンに対して高度に感受性であったが、MB−231、BT549は、MCF10Aと共に、3−デアザネプラノシンでの処理によって影響を受けなかった、または3−デアザネプラノシンでの処理に対して高度に耐性であった。 3−デアザネプラノシンで処理する前および後のこれらの乳癌細胞系統(MCF−7、MB−468、SK−BR−3、およびT47D感受性/MCF10A、MB−231、BT549耐性)においてのアレイ分析の結果を示す図である。45のPRC2標的の遺伝子クラスター化を分析することにより、PRC2標的(22の遺伝子)のサブセットが、耐性細胞系統において一貫して高レベルで発現したが(MCF10A、MB−231、およびBT549)、図示された乳癌細胞系統の発現感受性細胞系統(MCF−7、MB−468、SK−BR−3、およびT47D)では、より低レベルで発現したことが明らかになった。太字で表された遺伝子は、感受性細胞系統に対して耐性細胞系統において高度に発現している。 少なくとも3つの細胞系統において3−デアザネプラノシンによって上方制御された遺伝子を示す図である。図6Bにおいて分析された遺伝子の中で、4つの遺伝子FBXO32、LAMB3、PLAU、およびPPP1R15Aが、4つのすべての感受性細胞系統においてDZNepによって共通して誘発されることが判明した。4つの追加の遺伝子(TGFBI、IGFBP3、TNS3、およびKRT17)は、4つの感受性細胞系統のうち3つにおいて誘発された。これらの遺伝子は、耐性細胞系統(MCF10A、MB−231、およびBT549)においてすでに高度に発現しており(BT549のLAMB3を除く)、3−デアザネプラノシンで処理した後、さらに顕著には誘発されなかった。 定量的RT−PCRによる、3−デアザネプラノシン(DZNep)に暴露する前および後のMCF−7、MB−468、SK−BR−3 T47D、MB−231、BT549細胞における有効PRC2標的の発現レベルの分析を示す図である。乳癌細胞系統MCF−7、MB−468、SK−BR−3、T47Dでは、遺伝子FBXO32、LAMB3、PLAU、PPPIR15Aの発現は、3−デアザネプラノシンによって活性化された。 従来のRT−PCRによる有効PRC2標的FBXO32、LAMB3、PLAU、およびPPP1r15pの発現レベルの分析を示す図である(上方)。細胞をCの場合のように処理した。同様に、FBX032、LAMB3、PLAU、PPP1R15Aの発現は抑制されたが、感受性乳癌細胞系統(MCF−7、MB−468、SK−BR−3、T47D)では、3−デアザネプラノシン(DZNep)によって再活性化された。EZH2およびSUZ12タンパク質レベルをウエスタン・ブロッティングによって決定した(下方)。図からわかるように、MB−231細胞は、より高レベルのEZH2タンパク質を発現したようであるが、多くのPRC2標的(上方)は、それにもかかわらず抑制されなかった。したがって、PRC2標的の発現レベルは、PRC2タンパク質のそれぞれのレベルによって常に反映されるとは限らず、DNAメチル−転移酵素およびヒストンデアセチラーゼなどの追加の因子を含むことを示す。 非標的siRNA制御(NC)と比較した、3−デアザネプラノシンによるアポトーシス誘発に対するsiRNAによるMCF−7細胞におけるPRC2標的の枯渇の影響を示す図である。図示されたsiRNAのそれぞれをMCF−7細胞に24時間形質移入し、続いて5μMの3−デアザネプラノシンで72時間処理した。FACS分析によってアポトーシスを測定した。FBXO32siRNAのみが、3−デアザネプラノシンに対するアポトーシス応答を低下させることができた。 異なるFBXO32siRNAを使用するFBXO32(図6F参照)の効果の分析を示す図である。FBXO32siRNA処理は、非標的siRNA制御(NC)と比較して、MCF−7細胞において3−デアザネプラノシン(DZNep)誘発アポトーシスを阻害した。3つの独立した実験の結果を示す。結果は、FBXO32誘発を阻害することにより、3−デアザネプラノシンによるアポトーシス誘発が著しく減衰することを確認した。 FBXO32がコロニー形成影響を与える能力を示す図である。MCF−7細胞にプラスミドコードFBXO32または空(から)のベクターを形質移入した。細胞を選択し、クローン遺伝子サバイバルについて3重に検定した。FBXO32を形質移入することにより、制御ベクターが形質移入された細胞と比較して、形成されるコロニーの数が大きく減少した。これらのデータは、潜在的な腫瘍サプレッサとしてFBXO32の機能的な役割を支持する。

Claims (11)

  1. 乳癌細胞である腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することにより癌を治療または予防するための医薬の製造における、一般式(I)の化合物の使用方法であって、
    Figure 0005468782
    式中、Aは、Cであり、
    ,R ,R およびR は、Hであり
    CH OHである、方法。
  2. 乳癌細胞である腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することにより癌を治療または予防するための医薬組成物であって、
    (a)請求項1で規定される化合物またはその薬学的に許容される塩と、
    (b)担体または賦形薬とを含む医薬組成物。
  3. DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、DNA脱メチル化剤およびヒストン−デアセチラーゼ阻害剤のうちの少なくとも一つを更に含み、
    前記DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、5‐アザシチジン、デシタビン(5−
    アザ−2’−デオキシシチジン)、5−フルオロ−2’−デオキシシチジン、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン、およびゼブラリンから選択され、
    前記DNA脱メチル化剤は、ヒドララジン、プロカインアミド、プロカイン、(−)−エピガロカテキン−3−ガラート(EGCG)、サマプリンA、オリゴデオキシヌクレオチドMB98、および2−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)−3−(lH−インドール−3−イル)プロピオン酸(MG98)から選択され、
    前記ヒストン−デアセチラーゼ阻害剤は、酪酸塩、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、m−カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサム酸(CBHA)、オキサムフラチン、PDX−101、MS−275、デプシペプチド、ピロキサミド、スクリプタイド、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、トリコスタチン(TSA)、NVP−LAQ824、LBH589、アピシジン、CHAP、トラポキシン、N−アセチルジナリンおよびMS−275から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
  4. 培養される腫瘍細胞におけるヒストンメチル化を阻害することにより前記腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、
    前記方法は、所定量の一般式(I)の化合物を前記腫瘍細胞に接触させることを含み、
    Figure 0005468782
    式中、
    Aは、Cであり、
    ,R ,R およびR は、Hであり、
    CH OHであり
    前記腫瘍細胞は、乳癌細胞である方法。
  5. ヒストンメチル化の前記阻害が、それぞれの細胞でポリコーム抑制複合体を枯渇させることを含む、請求項に記載の方法。
  6. 前記ポリコーム抑制複合体を枯渇させることにより、前記ポリコーム抑制複合体と腫瘍抑圧遺伝子FBX032との間において複合体が放出され、これにより前記腫瘍抑圧遺伝子FBX032が再活性化されることによってそれぞれの細胞においてアポトーシスが生じる、請求項に記載の方法。
  7. 前記腫瘍細胞が哺乳類から得られる、請求項のいずれか1項に記載の方法。
  8. 一般式(I)の化合物の少なくとも2つの異なる所定量、および少なくとも第1および第2の腫瘍細胞を含み、第1の腫瘍細胞が2つの所定の量の低い方で接触し、第2の腫瘍細胞が2つの所定の量の高い方で接触する、請求項に記載の方法。
  9. 前記第1および第2の腫瘍細胞が同じ患者から得られる、請求項に記載の方法。
  10. 前記腫瘍細胞でアポトーシスを判定することを更に含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記方法が患者の一般式(I)の化合物に対する反応を個々に予測する方法である、請求項10のいずれか1項に記載の方法。
JP2008557240A 2006-03-02 2006-11-15 癌治療と幹細胞調節のための方法 Expired - Fee Related JP5468782B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US77853206P 2006-03-02 2006-03-02
US60/778,532 2006-03-02
PCT/SG2006/000350 WO2007100304A1 (en) 2006-03-02 2006-11-15 Methods for cancer therapy and stem cell modulation

Related Child Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013015684A Division JP2013121974A (ja) 2006-03-02 2013-01-30 癌治療と幹細胞調節のための方法
JP2013213366A Division JP5902138B2 (ja) 2006-03-02 2013-10-11 癌治療と幹細胞調節のための方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2009528345A JP2009528345A (ja) 2009-08-06
JP2009528345A5 JP2009528345A5 (ja) 2010-01-07
JP5468782B2 true JP5468782B2 (ja) 2014-04-09

Family

ID=38459334

Family Applications (3)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008557240A Expired - Fee Related JP5468782B2 (ja) 2006-03-02 2006-11-15 癌治療と幹細胞調節のための方法
JP2013015684A Pending JP2013121974A (ja) 2006-03-02 2013-01-30 癌治療と幹細胞調節のための方法
JP2013213366A Expired - Fee Related JP5902138B2 (ja) 2006-03-02 2013-10-11 癌治療と幹細胞調節のための方法

Family Applications After (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013015684A Pending JP2013121974A (ja) 2006-03-02 2013-01-30 癌治療と幹細胞調節のための方法
JP2013213366A Expired - Fee Related JP5902138B2 (ja) 2006-03-02 2013-10-11 癌治療と幹細胞調節のための方法

Country Status (7)

Country Link
US (2) US8058258B2 (ja)
EP (2) EP1993553B1 (ja)
JP (3) JP5468782B2 (ja)
AU (1) AU2006339445A1 (ja)
SG (1) SG170041A1 (ja)
TW (1) TW200812590A (ja)
WO (1) WO2007100304A1 (ja)

Families Citing this family (22)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009058102A1 (en) * 2007-11-02 2009-05-07 Agency For Science, Technology And Research Methods and compounds for preventing and treating a tumour
WO2010027935A1 (en) 2008-09-08 2010-03-11 Merck Sharp & Dohme Corp. Ahcy hydrolase inhibitors for treatment of hyper homocysteinemia
CN102369204A (zh) * 2008-09-26 2012-03-07 新加坡科技研究局 3-脱氮瓶菌素衍生物
WO2010111712A2 (en) * 2009-03-27 2010-09-30 Cold Spring Harbor Laboratory Identification of rnai targets and use of rnai for rational therapy of chemotherapy-resistant leukemia and other cancers
US8491927B2 (en) 2009-12-02 2013-07-23 Nimble Epitech, Llc Pharmaceutical composition containing a hypomethylating agent and a histone deacetylase inhibitor
SG180031A1 (en) * 2010-10-15 2012-05-30 Agency Science Tech & Res Combination treatment of cancer
RU2013130253A (ru) * 2010-12-03 2015-01-10 Эпизайм, Инк. 7-деазапуриновые регуляторы метилтрансферазы гистонов и способы их применения
AU2011341441A1 (en) 2010-12-03 2013-06-20 Epizyme, Inc. Modulators of histone methyltransferase, and methods of use thereof
MX2013006251A (es) 2010-12-03 2013-10-01 Epizyme Inc Compuestos de purina y 7 - deazapurina substituidos como moduladores de enzimas epigeneticas.
WO2012159085A2 (en) * 2011-05-19 2012-11-22 Glax L.L.C. Compositions and methods for treating and preventing cancer by targeting and inhibiting cancer stem cells
WO2013036846A2 (en) * 2011-09-09 2013-03-14 Koronis Pharmaceuticals, Incorporated N4 derivatives of deoxycytidine prodrugs
CA2887461A1 (en) * 2012-07-09 2014-01-16 Metheor Therapeutics Corporation Oligonucleotide inhibitors of dna methyltransferases and their use in treating diseases
EP2882750A4 (en) 2012-08-10 2016-08-17 Epizyme Inc INHIBITORS OF THE PROTEIN METHYLTRANSFERASE DOT1L AND METHOD OF USE THEREOF
AU2013312319B2 (en) 2012-09-06 2018-04-19 Epizyme, Inc. Method of treating leukemia
CA2886607A1 (en) 2012-10-17 2014-04-24 Cedars-Sinai Medical Center Molecular signatures of ovarian cancer
US20160010059A1 (en) * 2013-03-06 2016-01-14 The Regents Of The University Of California EXPANSION OF HEMATOPOIETIC PROGENITOR CELLS BY HISTONE METHYLTRANSFERASE G9a INHIBITION
CA2903303A1 (en) 2013-03-15 2014-09-25 Epizyme, Inc. Methods of synthesizing substituted purine compounds
WO2016022563A1 (en) 2014-08-04 2016-02-11 Auburn University Enantiomers of the 1',6'-isomer of neplanocin a
US20160271149A1 (en) * 2015-03-16 2016-09-22 Epinova Therapeutics Corp. Therapeutic compounds that suppress protein arginine methyltransferase activity for reducing tumor cell proliferation
WO2020055663A1 (en) * 2018-09-11 2020-03-19 The Texas A&M University System L-oligonucleotide inhibitors of polycomb repressive complex 2 (prc2)
CN110972481B (zh) * 2018-09-17 2020-10-20 诺未科技(北京)有限公司 一种组合物及其用途
WO2023249714A1 (en) * 2022-06-24 2023-12-28 Memorial Sloan-Kettering Cancer Center Therapeutic compositions and methods for activating double stranded rna response in cancer patients via dnmt1 targeted therapy

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US510260A (en) 1893-12-05 Electric-arc-lighting system
US4968690A (en) 1986-05-27 1990-11-06 United States Government As Represented By The Secretary Of The Dept. Of Health And Human Services 3-deazaneplanocin, intermediates for it, and antiviral composition and method of treatment using it
US4975434A (en) 1986-05-27 1990-12-04 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Department Of Health And Human Services Antiviral and anticancer cyclopentenyl cytosine
JPH04327587A (ja) 1991-04-26 1992-11-17 Asahi Chem Ind Co Ltd 6’−c−アルキル−3−デアザネプラノシンa誘導体、その製造法およびその用途
US5843780A (en) 1995-01-20 1998-12-01 Wisconsin Alumni Research Foundation Primate embryonic stem cells
US6090622A (en) 1997-03-31 2000-07-18 The Johns Hopkins School Of Medicine Human embryonic pluripotent germ cells
WO1999048527A1 (en) 1998-03-27 1999-09-30 Genentech, Inc. Apo-2 ligand-anti-her-2 antibody synergism
SE517975C2 (sv) 2000-05-30 2002-08-13 Power Ab C Fackverkskonstruktion av balkar sammansatta till ett tredimensionellt ramverk samt användning av en sådan fackverkskonstruktion
US20050191618A1 (en) 2001-05-18 2005-09-01 Sirna Therapeutics, Inc. RNA interference mediated inhibition of human immunodeficiency virus (HIV) gene expression using short interfering nucleic acid (siNA)
ATE539146T1 (de) 2002-09-13 2012-01-15 Univ Leland Stanford Junior Säugetier-megakaryozytenstammzelle
AU2003295444A1 (en) 2002-11-15 2004-06-15 The Board Of Trustees Of The University Of Illinois Methods for in vitro expansion of hematopoietic stem cells
US20050245559A1 (en) 2004-01-23 2005-11-03 Koul Hari K Treatment and prevention of prostate cancer
WO2005105136A1 (en) 2004-04-27 2005-11-10 University Of South Florida Nanogene therapy for cell proliferation disorders
WO2006014653A1 (en) 2004-07-20 2006-02-09 Schering Corporation Induction of apoptosis in toll-like receptor expressing tumor cells

Also Published As

Publication number Publication date
EP1993553A1 (en) 2008-11-26
AU2006339445A1 (en) 2007-09-07
US20120077841A1 (en) 2012-03-29
US8211869B2 (en) 2012-07-03
WO2007100304A1 (en) 2007-09-07
JP5902138B2 (ja) 2016-04-13
EP1993553A4 (en) 2010-07-28
JP2009528345A (ja) 2009-08-06
TW200812590A (en) 2008-03-16
EP2522352B1 (en) 2017-01-11
US20100075915A1 (en) 2010-03-25
EP1993553B1 (en) 2013-05-08
SG170041A1 (en) 2011-04-29
US8058258B2 (en) 2011-11-15
JP2013121974A (ja) 2013-06-20
JP2014028853A (ja) 2014-02-13
EP2522352A1 (en) 2012-11-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5902138B2 (ja) 癌治療と幹細胞調節のための方法
Garros-Regulez et al. Targeting SOX2 as a therapeutic strategy in glioblastoma
US20160201063A1 (en) Epigenetic regulators of frataxin
EP1996206A1 (en) Sensitizing a cell to cancer treatment by modulating the activity of a nucleic acid encoding rps27l protein
Zarredar et al. Critical microRNAs in lung cancer: recent advances and potential applications
Hu et al. RETRACTED: Silencing of Long Non-coding RNA HOTTIP Reduces Inflammation in Rheumatoid Arthritis by Demethylation of SFRP1
US20230031499A1 (en) Targeting glioblastoma stem cells through the tlx-tet3 axis
Zhu et al. Epigenetic regulation of cancer stem cell and tumorigenesis
Wang et al. Tumor suppressors microRNA-302d and microRNA-16 inhibit human glioblastoma multiforme by targeting NF-κB and FGF2
Bai et al. Modulating MGMT expression through interfering with cell signaling pathways
CN114574580A (zh) 靶向a2br联合化疗在三阴性乳腺癌治疗中的应用
EP4299742A1 (en) Combination therapy for melanoma
WO2020153503A1 (ja) SNHG12遺伝子に由来するncRNAの発現抑制剤を有効成分とするがん増殖抑制剤
Hosseini DISSECTING THE ROLE OF LYSINE-SPECIFIC DEMETHYLASE1 (LSD1): IDENTIFICATION OF MARKERS/EFFECTORS OF SENSITIVITY TO LSD1 INHIBITORS IN CANCER.
WO2024003350A1 (en) Combination therapy for melanoma
JP2010529852A (ja) 癌治療のためのNuMAのRNAi媒介ノックダウン
WO2021209608A1 (en) Medical methods and medical uses
Costa Role of miR-29b in the regulation of progranulin and dna methyltransferases 3A and 3B expression: therapeutic potential in glioblastoma
Tyutyunyk-Massey et al. Leveraging epigenetics to enhance the cellular response to chemotherapies and improve tumor immunogenicity
TWI585204B (zh) 用以治療癌症之短干擾核糖核酸分子
Yan Role of Mir-29b in the Regulation of Progranulin and Dna Methyltransferases 3a and 3b Expression: Therapeutic Potential in Glioblastoma
Mio Analysis of the biological mechanisms de-regulated after pharmacological BET inhibition in a model of anaplastic thyroid cancer
JPWO2020040185A1 (ja) Hsp47の阻害物質を用いた、化学療法剤感受性の増強
WO2020028562A1 (en) Snail sirna-loaded mesoporous silica nanoparticles
WO2011112607A2 (en) NKX3-1 saRNA AND KLF4 saRNA AND USES THEREOF

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091111

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091111

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120807

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20121107

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20121114

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20121206

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20121213

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20130104

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20130111

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130130

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20130611

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131011

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20131216

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140107

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140130

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees