JP5459603B2 - 光走査装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
この高負荷化により、ポリゴンスキャナの消費電力は増加し、その発熱が走査レンズなどの光学素子に悪影響を与える。具体的には、例えば、ポリゴンスキャナに最も近接する走査レンズの温度上昇である。ポリゴンスキャナにおける発熱は、光学ハウジングによる間接的な熱伝導または直接的な熱輻射により走査レンズの温度が上昇する。しかも、実際には、走査レンズを均一に温度上昇させるのではなく、発熱源であるポリゴンスキャナからの距離または各材質の熱膨張率の差や気流の影響により、特に長手方向となる主走査方向に対して温度分布(温度偏差)を持ってしまう。
特に、カラー機においては、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック等の各色に対応するレーザビームをそれぞれ走査しているので、上述した問題以外に各色に対応する光走査系相互間の温度偏差が問題となる。このような温度偏差は、各色に対応するビームスポットの相対位置関係のずれを発生させ、画像の色ずれとなってしまう。
また、高負荷ポリゴンミラーの発熱による温度上昇が、回転体構成部品、特に質量割合の大きいポリゴンミラーの微移動を誘発し、回転体バランスを変化させ、無用な振動を発生させてしまう。さらに、回転体を構成している部品、すなわちポリゴンミラーやロータ磁石が固定されるフランジおよび軸等の熱膨張率が異なっている場合、あるいは熱膨張率が一致していても部品公差や固定方法等を厳密に管理および検査していない場合などにおいては、高温高速回転時に回転体のバランス変化による微移動が発生し、ひいては無用な振動を増大させる結果となっていた。このような振動が、光走査装置内の、例えば折り返しミラー等の光学素子へ伝達増幅され、バンディングを発生させて、画像劣化や騒音を引き起こすことになる。
すなわち、特許文献1(特開2005−208460号)においては、共振周波数の増大にともなって、偏向ミラー面の駆動周波数を増大させるとともに、偏向ミラー面の揺動振幅を減小させることによって(Θ1→Θ2)、光ビーム検出位置Aから光ビーム検出位置Bまで光ビームが走査する時間はPTとなり、共振周波数増大前の走査時間PTとほぼ等しくなる。このように、偏向ミラー面を駆動する駆動信号を効率よく制御することによって省エネルギー化を実現するとともに、安定して光ビームにより被走査面上を走査させることができる。しかしながら、前述したようにして走査時間を等しくしても、走査時間内の走査特性は変化してしまうため、画像の倍率等に関してのリニアリティ誤差が残ってしまい、全体の画像が主走査方向に歪んだものとなり、画像が劣化するという問題がある。
したがって、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、消費電力が小さく、光走査に使用される走査レンズの温度上昇、並びにカラー機における各色の光走査系毎の温度偏差や振動を低減して、特に、ジッターが少なく良好な走査特性を得て、画像の経時安定性を確保することを可能とする光走査装置および画像形成装置を提供することを目的としている。
すなわち、本発明の請求項1の目的は、ジッターが少なく、良好な走査特性を得ることを可能とする光走査装置を提供することにある。
また、本発明の請求項2の目的は、特に、共振周波数frと駆動周波数fdとの相違を常時検出することができ、装置の停止を効果的に防止し得る光走査装置を提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、共振周波数frと駆動周波数fdとの相違を常時検出して、装置の停止を一層効果的に防止することを可能とする光走査装置を提供することにある。
本発明の請求項5の目的は、特に、光走査装置における消費電力が小さく、光走査に使用される走査レンズの温度上昇、並びに光走査系毎の温度偏差や振動を低減して、画像の経時安定性を確保することを可能とする画像形成装置を提供することにある。
本発明の請求項6の目的は、特に、カラー機における各色の光走査系毎の温度偏差や振動を低減して、画像の経時安定性を確保することを可能とする画像形成装置を提供することにある。
光源装置から射出されるレーザビームを、単一の振動ミラー偏向器によって主走査方向に偏向走査して、複数の被走査面に集光結像する走査結像手段を備える光走査装置であって、
前記振動ミラーは、当該振動ミラーの振幅を制御する振幅制御ループ、当該振動ミラーの理想振幅波形の振幅中心と実際の振幅波形の振幅中心との差を制御するオフセット制御ループ、基準クロックと当該振動ミラーの振れ角との関係を制御する位相制御ループ、で構成された制御手段により駆動制御され、
前記振動ミラーの振幅を一定に制御した状態で、前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係が、条件:
fd<fr
fr−fd≦(fr×0.002)
を満足するように、前記振動ミラーの駆動周波数fdを設定したことを特徴としている。
請求項2に記載した本発明に係る光走査装置は、請求項1の光走査装置であって、
主走査領域内に配置されて偏向走査された走査ビームを検出するレーザビーム検出器を有し、且つ
前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係は、駆動周波数の電圧波形を基準とし、前記レーザビーム検出器からの出力信号との位相差に基づいて算出することを特徴としている。
前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの差異を検出し、その検出結果に応じて駆動周波数fdを調整する制御手段を有することを特徴としている。
請求項4に記載した本発明に係る光走査装置は、請求項3の光走査装置であって、
前記振動ミラーによる偏向走査時は、共振周波数frと駆動周波数fdとの差異を常時検出することを特徴としている。
潜像担持体に光走査により潜像を形成し、当該潜像を可視化して所望の記録画像を得る画像形成装置であって、
前記潜像担持体の光走査に前記請求項1〜請求項4のいずれか1項の光走査装置を用いることを特徴としている。
請求項6に記載した本発明に係る画像形成装置は、請求項5の画像形成装置であって、
前記画像形成装置は、複数の各色毎にカラー画像を形成するカラー画像形成装置であることを特徴としている。
すなわち本発明の請求項1の光走査装置によれば、
光源装置から射出されるレーザビームを、単一の振動ミラー偏向器によって主走査方向に偏向走査して、複数の被走査面に集光結像する走査結像手段を備える光走査装置であって、
前記振動ミラーは、当該振動ミラーの振幅を制御する振幅制御ループ、当該振動ミラーの理想振幅波形の振幅中心と実際の振幅波形の振幅中心との差を制御するオフセット制御ループ、基準クロックと当該振動ミラーの振れ角との関係を制御する位相制御ループ、で構成された制御手段により駆動制御され、
前記振動ミラーの振幅を一定に制御した状態で、前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係が、条件:
fd<fr
fr−fd≦(fr×0.002)
を満足するように、前記振動ミラーの駆動周波数fdを設定したことにより、
ジッターが少なく、良好な走査特性を得ることが可能となる。
主走査領域内に配置されて偏向走査された走査ビームを検出するレーザビーム検出器を有し、且つ
前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係は、駆動周波数の電圧波形を基準とし、前記レーザビーム検出器からの出力信号との位相差に基づいて算出することにより、
特に、共振周波数frと駆動周波数fdとの相違を常時検出することができ、装置の停止を効果的に防止することが可能となる。
前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの差異を検出し、その検出結果に応じて駆動周波数fdを調整する制御手段を有することにより、
特に、共振周波数frと駆動周波数fdの差異に応じて駆動周波数fdを調整して、温度環境の変化するような状況においてもジッターの少ない良好な走査特性を得ることが可能となる。
本発明の請求項4の光走査装置によれば、請求項3の光走査装置において、
前記振動ミラーによる偏向走査時は、共振周波数frと駆動周波数fdとの差異を常時検出することにより、
特に、共振周波数frと駆動周波数fdとの相違を常時検出して、装置の停止を一層効果的に防止することが可能となる。
また、本発明の請求項5の画像形成装置によれば、
潜像担持体に光走査により潜像を形成し、当該潜像を可視化して所望の記録画像を得る画像形成装置において、
前記潜像担持体の光走査に前記請求項1〜請求項4のいずれか1項の光走査装置を用いることにより、
特に、光走査装置における消費電力が小さく、光走査に使用される走査レンズの温度上昇、並びに光走査系毎の温度偏差や振動を低減して、画像の経時安定性を確保することが可能となる。
本発明の請求項6の画像形成装置によれば、請求項5の画像形成装置において、
前記画像形成装置は、複数の各色毎にカラー画像を形成するカラー画像形成装置としたことにより、
特に、カラー機における各色の光走査系毎の温度偏差や振動を低減して、画像の経時安定性を確保することが可能となる。
図1〜図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置の要部の構成を示している。図1は、光走査装置の要部の構成を模式的に示す斜視図、図2は、レーザビームを偏向揺動させる振動ミラーを有する振動ミラー基板の構成を模式的に示す正面図、図3は、振動ミラー基板の振動ミラー部分を詳細に示し、(a)は背面側から見た背面図、(b)はその横断面図、そして図4は、振動ミラー部分をさらに詳細に説明するための分解斜視図である。
図1に示す光学走査装置は、この場合、例えば画像形成装置(図5参照)の作像部の中間転写ベルト2に当接して並設されて作像部を構成する4つの感光体ドラム3Y、3M、3Cおよび3K(これらのいずれか1つまたは全体を、「感光体ドラム3」とする)をレーザビームにて走査する光学走査装置5として構成され、光源部10(光源ユニット10Y、10M、10Cおよび10K)、振動ミラー11、シリンドリカルレンズ12、折り返しミラー13、走査結像光学系における走査レンズ群を構成する第1のレンズ14、結像レンズ15(15−1、15−2)、ミラー16(16Y、16M、16Cおよび16K)、走査結像光学系における走査レンズ群を構成する第2のレンズ17(17Y、17M、17Cおよび17K)、ミラー18(18Y、18Mおよび18C)および受光素子PD(PD1およびPD2)を具備している。感光体ドラム3Y、3M、3Cおよび3Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色に対応している(以下、符号に対する添字Y、M、CおよびKは、それぞれY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアンおよびK:ブラックの各色に対応する部分を示すものとする)。
図1に示す光源部10は、各色に対応して4つの光源ユニット10Y、10M、10Cおよび10Kを有しており、光源ユニット10Y、10M、10Cおよび10Kの各々は、半導体レーザとカップリングレンズにより構成されている。光源部10における4つの半導体レーザは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色成分画像を書込むための光束としてのレーザビームを射出する。
振動ミラー11の入射側には、明確には図示してはいないが、レーザ透過部材が配置されていて、光源部10側の各光源ユニット10Y、10M、10Cおよび10Kからそれぞれ射出される各光束は、レーザ透過部材を介して振動ミラー11に入射して、同一の方向に反射偏向される。振動ミラー11により偏向され、振動ミラー11の揺動により射出方向が揺動される4色分の偏向光束は、走査結像光学系の走査レンズ群を構成する第1のレンズ14を透過する。例えば、走査レンズ群の第1のレンズ14の図示上端の位置を通るブラック(K)成分画像を書込む光束は、ミラー16Kで反射され、走査レンズ群を構成する第2のレンズ17Kを透過して、被走査面となるドラム状の光導電性の感光体である感光体ドラム3Kの円筒状の外周表面上に光スポットとして集光され、この光スポットによって感光体ドラム3Kの外周表面を図示矢印方向に走査する。
ブラック(K)以外の、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の各色成分の画像を書込む光束は、それぞれ、ミラー16Y、16Mおよび16Cで反射され、第2のレンズ17Y、17Mおよび17Cを透過し、さらにミラー18Y、18Mおよび18Cで反射されて、感光体ドラム3Y、3Mおよび3Cの各外周面上に光スポットを結像し、各色とも同一の矢印方向に走査する。
これらの光走査により各感光体ドラム3Y、3M、3Cおよび3Kにそれぞれ対応する色成分画像の静電潜像が形成される。これら静電潜像は、現像装置(6)により対応する色のトナーで可視化され、中間転写ベルト2上に転写される。転写の際、各色のトナー画像は互いに重ね合わせられカラー画像を構成する。このカラー画像は、記録用紙等のシート状記録媒体上ヘ転写され、定着される。カラー画像を転写した後の中間転写ベルト2はクリーニング装置(図示せず)によってクリーニングされる。
各色に対応するレーザビームは、副走査方向について所定角度をもって上述した振動ミラー11の反射面に入射して、いわゆる斜入射光学系を構成している。具体的には、入射角度が最大となる色に対応するレーザビームで5°以下となるように設定されている。入射角度が5°以上の場合には、被走査面上での走査線曲がりが大きく発生し、しかもレーザビームが大径化し、結果として画像の劣化を招いてしまう。
振動ミラー11の詳細を、図2〜図4に示す。図2は、振動ミラー11全体を反射面側から見た正面図である。図3は、振動ミラー11の主要部分を示しており、(a)は、背面図、そして(b)は、横断面図である。図4は、図2に示した振動ミラー11全体の分解斜視図である。
図2〜図4に示す振動ミラー11は、実装基板40、可動ミラー部41、ねじり梁42(42A、42B)、振動板43、補強梁44(44A、44B)、フレーム46、フレーム47、ヨーク49、永久磁石50(50A、50B)、接続電極52、平面パターンコイル53、端子54(54A、54B)、トリミング用パッチ55および台座56を有している。振動ミラー11は、表面にミラー面を形成し振動子をなす可動ミラー部41と、その可動ミラー部41をねじれ変形により回転可能に支える軸を形成するねじり梁42(42A、42B)と、これらを支持する支持部としてのフレーム46および47を有してなり、これら各部は、基本的にSi(シリコン)基板をエッチングにより切り抜いて形成する。
すなわち、第1のSi層を構成する140μmの第1の基板61と、第2のSi層を構成する60μmの第2の基板62とからなるSOI基板を用いる場合を例にとって説明する。まず、背面側の140μmの第1の基板61の表面からプラズマエッチングによるドライプロセスによって、ねじり梁42A、42B、平面パターンコイル53が形成される振動板43、可動ミラー部41の骨格をなす補強梁44A、44Bおよびフレーム46を残して、それら以外の部分を酸化膜まで貫通させて除去する。次に、表面側の60μm基板(第1の基板)62の表面からKOH(水酸化カリウム)等を用いた異方性エッチングによって、可動ミラー部41およびフレーム47を残してそれ以外の部分を、酸化膜まで貫通させて除去する。最後に、可動ミラー部41の周囲の酸化膜を除去して分離し振動ミラー11の構造体を形成する。
さらに、60μmの第2の基板62の表面側にアルミニウム薄膜を蒸着して反射面とし、140μmの第1の基板61の背面側の表面には銅薄膜で平面パターンコイル53と、この平面パターンコイル53にねじり梁42Aおよび42Bを介して配線された端子54Aおよび54Bと、トリミング用のパッチ55とを形成する。当然、これとは逆に、振動板43側に薄膜状の永久磁石を設け、フレーム47側に平面コイルを形成する構成とすることもできる。このようにして、振動ミラー11の本体部となる可動ミラー部41およびその周囲関連部分を構成する。
実装基板40上には、振動ミラー11の上述した本体部を装着する枠状の台座56と、振動ミラー11の本体部を囲むように形成されるヨーク49を配備し、このヨーク49には、可動ミラー部41の両端部にほぼ対応して各々S極とN極とを対峙させ、ねじり梁42Aおよび42Bによって形成される振動板43の回転軸に対して直交する方向に磁界を発生する一対の永久磁石50Aおよび50Bが結合されている。
したがって、交流信号によって平面パターンコイル53に流れる電流の方向を交互に切り換えることによって、可動ミラー部41を反復する往復揺動にて振動させることができる。そして、この電流の切り換える周期を、振動ミラー11を構成する構造体のねじり梁42Aおよび42Bを回転軸とする1次振動モードの固有振動数、いわゆる共振振動数f0に近づけると、共振が励起され振幅の大きな振れ角を得ることができる。
一方、平面パターンコイル53に流す電流に直流成分を印加することにより、可動ミラー部41の揺動回転角度を静的に変化させ、振動の振幅中心を変化させることができる。但し、共振現象を利用しているので電流に応じた変化は、角度で±1°以内となる。この直流成分を上述した交流信号に重畳させることにより、振動ミラー11を偏向振動させながら、揺動の振幅中心を変化させることが可能となる。
上述した振動ミラー11は、可動部の質量およびイナーシャ(慣性)が、従来のポリゴンミラーに比べて非常に小さいため駆動部も小型化され、磁気回路の高効率化もあいまって消費電力を、ポリゴンミラーの1/10以下に低く抑えることができる。その結果、発熱が少なくなり書込光学系の光学素子やハウジングの温度上昇も実質的になくすことが可能となる。このため、特に樹脂製の走査レンズが局部的な温度分布を持つことがなくなり、レーザビームの走査位置を変動させることもなくなって、カラー画像形成時等における色ずれの発生を抑制することが可能となる。
上述した振動ミラー11の利点を活かすためには、次に好適な例を示すような制御が必要となる。
図6は、図1に示したカラー画像形成用の光走査装置のうち、1つの感光体ドラム3に対応する主要な部分を概略的に示している。振動ミラー11によって偏向走査されるレーザビームLBを、走査位置の範囲により区別し、最大振れ角の走査位置範囲に対応するレーザビームをLBa、最大振れ角範囲内に配置される受光素子PD1と受光素子PD2にレーザビームが入射して出力信号を発生させる位置の間の走査位置範囲に対応するレーザビームをLBb、そして感光体ドラム3における画像領域の端部間の走査位置範囲に対応するレーザビームをLBcとした。実際のレーザビームLBは、最大振れ角範囲内に配置される受光素子PD1および受光素子PD2に入射して出力信号が発生するタイミングの間で走査される。
上述したような特性の走査レンズを使用したとしても、図8〜図11に示すような振動ミラー11の揺動ばらつき変動が発生するため、このような変動を抑制するように、振幅制御(図8)、オフセット制御(図9および図10)および位相制御(図11)の各制御を行っている。振動ミラー11の共振周波数が一定でも、図8〜図11に示す振幅波形AW1〜AW4のような現象が発生し、いずれも、正弦波形からなる理想振幅波形AW0に対するレーザビームの走査位置変動となり、画像を劣化させることになる。
ここで、図12を参照して、振動ミラー11の駆動周波数fdについて詳述する。駆動周波数fdは、プリント枚数等の画像形成枚数を実現するための周波数であり、これが共振周波数と合致することが、光走査に必要な振幅Y1(図12に実線で示す)を稼ぐことができるので好適であるが、実際には、振動ミラー11の共振周波数の変動(初期のばらつきも含む)により合致しないことがある。そのような場合には、図12に示すように、光走査に必要な振幅Y1とするために、振動ミラー11への入力エネルギー(電圧、電流等)を増加させ、駆動周波数fdで振幅がY2しかない振動ミラー11の振幅を大きくして、図12に破線で示すように振幅Y1まで増幅させるという振動ミラーの振幅制御を行なっている。
なお、そもそもオフセット量が許容オフセット以内であれば、そのままでも許容し得ることになる。そこで、オフセット量が許容オフセット以内である場合に、上述した制御を行なわないようにしてもよい。例えば、リニアリティにおける設計値との偏差が1%以下、そしてビーム径における設計値との偏差が10%以下となるように、許容オフセット量を設定することにより、画像への影響を極力抑制することが可能となり、上述のようにオフセットの影響を軽減させるための制御を行なわなくとも問題はない。
駆動機構は、例えば基板72の下面にステッピングモータ(図示せず)が配置され、モータの回転軸と振動ミラー11の振動中心軸が一致するように配置される。この駆動機構は、振動ミラーユニット70を振動中心軸を中心として回転させて姿勢を変化させることにより、許容オフセット範囲内となるように調整する。この場合、ステッピングモータの回転ステップ分解能としては、少なくとも許容オフセット量の1/2以下に相当する量が必要である。
この種のオフセット調整自体は、従来より行なわれているが、従来は、上述したような許容オフセットという考え方ではなく、理想的にオフセット量をゼロとすべく制御調整している。
図10においては、オフセットを許容オフセット範囲内に制御調整するために、図10の矢印方向に示すように)、図7において説明したような、受光素子PD1の出力のタイムインターバルA(A1、A2…)と、受光素子PD2の出力のタイムインターバルB(B1、…)のそれぞれの演算値が一定となるように制御する。具体的にはA1−B1、A2−B2、…で数回の平均化を行い、許容オフセット以内か否かを判断し(詳細は後述する図13の比較部107)、許容オフセット以内であれば制御せず、許容オフセットを超えた場合には、オフセットを許容範囲内とするようにオフセット制御を行う。
図8における過大な振幅波形AW1および図10の許容オフセットを超える過大オフセットの振幅波形AW3の場合には、それぞれ理想となる走査速度および走査タイミングと異なる現象であるため、主走査方向の走査位置ずれとなる。例えば、主走査倍率の誤差および主走査方向のジッター(縦線のゆらぎ)という画像劣化を引き起こし、カラー画像に限らずモノクロ(モノクローム)画像においても共通の不具合である。
図13に、上述した振幅、オフセット、位相制御を実現する振動ミラー11の駆動制御系のブロック図を示している。図13に示す振動ミラー制御系は、カウンタ101、102、103、104、平均演算/差分演算部105、比較部106、107、108、コントローラ109、乗算部110、加算部111、駆動回路112、位相比較器113、114、ローパスフィルタ(LPF)115、積分器116、正弦波信号生成部117および差分演算部118を具備する。
なお、タイムインターバルAおよびタイムインターバルBに基づく振幅およびオフセット量については、それぞれ平均をとっている。このように平均化処理を行っている理由は、突発的な電気ノイズが混入した場合などに、誤った情報により制御が行われることを防止するためである。なお、平均化の回数は2〜10回の範囲で行われる。10回以上だと補正タイミングが遅くなり、制御偏差が大きくなるためである。
上述した制御系ループが振幅およびオフセット制御ループである。なお、オフセット制御は振幅制御がされた状態で行なわれる。
位相制御ループについては、上述した振幅制御およびオフセット制御が正常に働き、各々目標値に対して所要の範囲に入った制御状態において、位相制御ループを実行し、基準位相クロック信号と振動ミラーの振れ角が所定の位相関係となるようにする。位相制御は、振幅制御およびオフセット制御に比べて、高精度な制御であるため、すべての制御を同時に実行すると、互いに干渉して駆動信号の変動量が大きくなり、全ての制御が制御目標値範囲内に収束するまでに多くの時間を要する。そこで、最優先として振幅制御を行い、次にオフセット制御を行い、そのつぎに微調整として位相制御を行うようにすることによって、制御範囲内へ収束するまでの時間を短縮することが可能となる。
このようにして、振動ミラー11を駆動する駆動信号と振動ミラー11の振れ角とが、一定の位相関係となるような制御が行われることになる。なお、位相制御に対応する正弦波信号の生成分解能は、制御の許容範囲以上の高精度することが必要となるが、高精度にとすればするほどメモリが必要となるため高コストとなる。したがって、副走査方向の色ずれとして視覚認知される50μm以下となるように正弦波信号の生成分解能を設定している。
(fr−fd)/fr×100
なる算出式で求められる。ジッターとは、主走査方向の走査安定性、つまり走査のばらつき、を示す特性であり、ジッターが大きいと画像ゆらぎとして認知されるため、画像特性の重要な項目である。
駆動周波数fdを共振周波数frに一致させた状態を、ジッター比率1.0とし、共振周波数frと駆動周波数fdとの周波数差の相違によりジッターが変化することを示している。例えばジッター比率1.2とは、駆動周波数fdを共振周波数frに一致させたときよりもジッターが20%増大し、またジッター比率0.9とは10%減小することを意味する。
この場合、共振周波数frと駆動周波数fdとの周波数差が正か負かで異なる特性を示しており、周波数差が無い(fr=fd)ときと比較して、周波数差が正の場合(fr>fd)には、ジッターが良くなり、反面、周波数差が負の場合(fr<fd)には、ジッターが悪くなる。但し、正の場合でも、ジッターが良くなるのは、周波数差が計測ばらつきを考慮に入れると、実質的には、fr−fd≦(fr×0.002)なる関係の範囲までである。
fd<3000Hz
で、且つ、
3000Hz−fd≦(3000Hz×0.002)
すなわち、
→ fd≧2994Hz
の範囲である。
したがって、好適な周波数範囲は、
2994Hz≦fd<3000 Hz
となる。
上述した好適な周波数差を維持するために、共振周波数frと駆動周波数fdの差異を常時検出している(この点については、後に詳述する)。この差異の検出結果に応じて駆動周波数fdを好適な周波数差の範囲に調整する制御手段を有し、常時好適な周波数差を維持している。
また、図14のように共振周波数frと駆動周波数fdとの周波数差の相違によりジッターへの影響が変動するのは、図13に示すように、制御系が、振幅制御、オフセット制御および位相制御の3つの制御ループで構成されており、周波数差により振動ミラー11の伝達特性上の位相遅れが変化するためである。特に位相遅れが小さく制御系が安定となるのは、駆動周波数fd<共振周波数frの場合である。なお、駆動周波数fd<共振周波数frの差が大きくなりすぎると駆動電力は多く必要となるためフィードバック(FB〜帰還)ゲインが高くなり発振現象の影響からかえってジッターが悪くなる。
使用温度範囲が、(この実施の形態に係る光学走査装置やそれを組み込んだ画像形成装置がさらされる環境温度に機器内の温度上昇分をプラスして)0〜50℃とすると、振動ミラー11は、温度に応じてバネ定数が変化する。例えば、シリコン材料の場合、温度上昇にともなってバネ定数が低下し、共振周波数frが低下する傾向を示す(−0.1Hz/℃)。
このような傾向は、図2〜図4に示したようなねじり梁42(42A、42B)が振動ミラー11の可動ミラー部41等の可動部とフレーム46および47等の固定部とを連結接続するような構造であれば、材料にかかわらず共振周波数は温度上昇とともに低下する傾向を示す。これは、ねじり梁42(42A、42B)の剛性(ヤング率)が温度上昇とともに低下するためである。
次に、振動ミラー11の共振周波数frと駆動周波数fdとの差異の検出について詳述する。
図15および図16は、振動ミラー11の振幅ゲインにおける共振周波数特性と、振動ミラー11を駆動する駆動電圧波形との位相差である位相特性をあらわしている。太い実線が初期の共振周波数特性および位相特性である。この場合、振幅ゲイン特性Gainおよび位相特性Phaseは、以下の式で表すことができる。
ω0(=2πf0)[rad/s]は、共振周波数(fr)に対応し、この実施の形態においては、f0=3000[Hz]である。
これら、式(1)および式(2)によって、ω(=2πf)なる周波数で駆動したときの振幅ゲイン特性Gainおよび位相特性Phaseが求められる。
図15および図16において、環境温度の変化によって、振動ミラー11のねじり梁42(42A、42B)の剛性が変化するため、共振周波数fr(=ω0)が、図示矢印方向(D1およびD2)に変化する。図15には、環境温度が上昇した時の共振周波数frの変動方向D1を示しており、図16には、環境温度が下降した時の共振周波数frの変動方向D2を示している。なお、ここでは、環境温度とは、光走査装置(振動ミラー11)がさらされる環境温度であり、画像形成装置内に設けられるこのような光走査装置を含むユニットの発熱や画像形成装置が置かれる環境温度を含んでいる。
また、図16の例については、共振周波数3000Hzの振動ミラー11に対して、駆動電圧の周波数も3000Hzである場合、駆動電圧信号と振動ミラー11の振動との位相差は−90°となる。駆動電圧の周波数は、一定で、環境温度の下降にともなって共振周波数frが、図16の矢印D2方向に上昇変動すると、それと連動して位相特性も変動して、位相差は矢印E2方向に変化する。このような位相差の変化量を検知することによって共振周波数frの変動を把握することができる。
図13のブロック図においては、加算部111から出力される駆動電圧信号と受光素子PD1の検出信号との位相差は、位相比較器114とカウンタ104により計測され、差分演算部118によって、基準となる共振周波数frとの差分が演算される。その差分が比較部108にて許容値と比較され許容値範囲外であれば、正弦波信号生成部117を制御して駆動周波数fdを変化させ、共振周波数frに一致させるように駆動周波数fdを調整する。許容設定値は、共振周波数frの変動により生じる振幅低下を補正できる限界値から設定されている。振幅低下を補正して、振幅を一定に制御するためには、駆動電圧を上昇させることになるため駆動回路112の耐圧および振動ミラー11の許容耐圧のどちらか低い方となるように差分の許容値を決めている。この実施の形態では、振動ミラー11の許容耐圧を優先し、±10Hz以内としている。
駆動電圧の周波数調整タイミングは偏向走査ビームの走査特性が変化することになるため所要の条件が必要である。すなわち、好適な実施の形態においては、画像情報を光走査装置の光源へ入力しているか、すなわち被走査面領域にレーザビームを走査しているか否かを判断する判断手段を用いて、その判断が否となる画像情報のない非画像形成中のタイミングで行なう(このときにも、受光素子PD1およびPD2への走査ビームは偏向されている)ことである。非画像形成中とは、画像プリント時のプリント紙の間隔や、プリントジョブ(プリントJOB)の間隔の間である。
一方、その他の好適な実施の形態においては、上述のように被走査面領域にレーザビームを走査しているか否か関係なく、いつでも(駆動周波数が許容値外となったタイミングで随時)、調整可能とするために調整時の周波数変動を段階的に変化させる。例えば前記差異が10Hzを超え、11Hzとなった場合、直ちに駆動周波数を11Hz変化させるのではなく、例えば0.1Hz単位で110ステップを段階的に変化させる。変化させる時間は、調整タイミングの開始から完了までの時間として、プリント紙1枚を画像形成することができる時間が望ましい(ゆっくり周波数変化をさせることにより、画像劣化の副作用を軽減する)。
なお、振動ミラー11の共振周波数frと駆動周波数fdとの差異を検出し、その都度差異に応じて、駆動周波数を調整してしまうと、それによって画像形成時の副走査倍率が変化してしまうため、予め駆動周波数fdの調整は、好適な所定の値を設定している。駆動周波数fdの調整による変動量が所定値以上となった場合に副走査方向の画像倍率を調整することを行っている。ここでいう所定値とは画像倍率が視覚許容できる1%としている。なお、出力画像の対象によっては、1%でも問題となる場合があり、そのような状態を考慮し、所定値については使用者が適宜設定変更できるように所定値設定変更手段を設けている。
図17に、受光素子PD1を例にとって、レーザビーム走査との関係を詳細に説明する。受光素子PD1は、図1に示したように感光体ドラム3の外周面上を走査するレーザビームのビーム径および走査速度と光学的に等価となる(すなわち走査レーザビームスポットが通過する)位置に配置されている。受光素子PD1の配置は、感光体ドラム3の外周面の走査延長上が望ましいが、レイアウトの都合等によっては、折り返しミラーを経由して受光素子PD1をレーザビームで走査する構成としてもよい。受光素子PD1は、基本的にPINフォトダイオードからなる受光部91と、この受光部91からの出力信号を増幅する増幅回路およびその出力信号を波形整形するコンパレータ回路を有する回路部92とを含み、IC(集積回路)として樹脂からなるレーザビーム透過部材に封入され、1パッケージ化されている。受光部91および回路部92に外部から電気的な接続をするためのICリード端子93がパッケージ外に導出されている。受光部91上を、走査ビームスポットが通過することにより、図17に示す受光素子出力信号を発生し、受光素子出力信号をスレッシュホールド電圧と比較して、コンパレータ出力信号を発生させる。
図18は、上述した光走査装置を組み込んだ本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置の要部の構成を示している。図18に示す画像形成装置は、カラー画像形成装置であり、給紙カセット1、中間転写ベルト2、感光体ドラム3(3Y、3M、3C、3K)、上述した光走査装置5、現像装置6(6Y、6M、6C、6K)および定着装置7を具備する。
カラー画像形成装置は、複数、この場合イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色の感光体ドラム3(3Y、3M、3C、3K)を並列に配置したタンデム型のカラー画像形成装置として構成されている。装置の上部から順に、光走査装置5、現像装置6(6Y、6M、6C、6K)、感光体ドラム3(3Y、3M、3C、3K)、中間転写ベルト2、定着装置7および給紙カセット1がレイアウトされている。中間転写ベルト2上には、各色に対応した感光体ドラム3Y、3M、3Cおよび3Kが、互いに平行に等間隔で並列に配設されている。
帯電チャージャにより一様に帯電された感光体ドラム3Yは、図示矢印A方向に回転することによってレーザビームL1を副走査し、感光体ドラム3Y上に静電潜像が形成される。また、光走査装置5によるレーザビームL1の照射位置よりも感光体ドラム3の回転方向下流側には、感光体ドラム3Yにトナーを供給する現像器6Yが配設され、イエローのトナーが供給される。現像器6Yから供給されたトナーは、静電潜像が形成された部分に付着し、トナー像が形成される。同様に感光体3M、3Cおよび3Kには、それぞれマゼンタM、イエローYおよびブラックKの単色トナー像が形成される。
2 中間転写ベルト
3(3Y、3M、3C、3K) 感光体ドラム
5 光走査装置
6、(6Y、6M、6C、6K) 現像装置
7 定着装置
10 光源部
10Y、10M、10C、10K 光源ユニット
11 振動ミラー
12 シリンドリカルレンズ
13 折り返しミラー
14 走査レンズ群を構成する第1のレンズ
15、(15−1、15−2) 結像レンズ
16、(16Y、16M、16C、16K) ミラー
17、(17Y、17M、17C、17K) 走査レンズ群を構成する第2のレンズ
18、(18Y、18M、18C) ミラー
40 実装基板
41 可動ミラー部
42(42A、42B) ねじり梁、
43 振動板
44、(44A、44B)補強梁
46、47 フレーム
49 ヨーク
50、(50A、50B)永久磁石
52 接続電極
53 平面パターンコイル
54(54A、54B) 端子
55 トリミング用パッチ
56 台座
91 受光部
92 回路部
93 ICリード端子
101、102、103、104 カウンタ
105 平均演算/差分演算部
106、107、108 比較部
109 コントローラ
110 乗算部
111 加算部
112 駆動回路
113、114 位相比較器
115 ローパスフィルタ(LPF)
116 積分器
117 正弦波信号生成部
118 差分演算部
PD、(PD1、PD2) 受光素子
Claims (6)
- 光源装置から射出されるレーザビームを、単一の振動ミラー偏向器によって主走査方向に偏向走査して、複数の被走査面に集光結像する走査結像手段を備える光走査装置において、
前記振動ミラーは、当該振動ミラーの振幅を制御する振幅制御ループ、当該振動ミラーの理想振幅波形の振幅中心と実際の振幅波形の振幅中心との差を制御するオフセット制御ループ、基準クロックと当該振動ミラーの振れ角との関係を制御する位相制御ループ、で構成された制御手段により駆動制御され、
前記振動ミラーの振幅を一定に制御した状態で、前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係が、条件:
fd<fr
fr−fd≦(fr×0.002)
を満足するように、前記振動ミラーの駆動周波数fdを設定したことを特徴とする光走査装置。 - 主走査領域内に配置されて偏向走査された走査ビームを検出するレーザビーム検出器を有し、且つ
前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの関係は、駆動周波数の電圧波形を基準とし、前記レーザビーム検出器からの出力信号との位相差に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。 - 前記制御手段は、前記振動ミラーの共振周波数frと駆動周波数fdの差異を検出し、その検出結果に応じて駆動周波数fdを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の光走査装置。
- 前記振動ミラーによる偏向走査時は、共振周波数frと駆動周波数fdとの差異を常時検出することを特徴とする請求項3に記載の光走査装置。
- 潜像担持体に光走査により潜像を形成し、当該潜像を可視化して所望の記録画像を得る画像形成装置において、
前記潜像担持体の光走査に前記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光走査装置を用いることを特徴とする画像形成装置。 - 前記画像形成装置は、カラー画像形成装置であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
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