JP5458516B2 - アントラセン化合物、湿式成膜用電荷輸送材料、湿式成膜用電荷輸送材料組成物、有機電界発光素子、および有機elディスプレイ - Google Patents

アントラセン化合物、湿式成膜用電荷輸送材料、湿式成膜用電荷輸送材料組成物、有機電界発光素子、および有機elディスプレイ Download PDF

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Description

本発明はアントラセン化合物、湿式成膜用電荷輸送材料、有機電界発光素子用組成物および有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは溶剤に対する溶解性が優れており、成膜性、湿式プロセス適性に優れたアントラセン化合物、及び、それを用いた有機電界発光素子用組成物、さらには、それを用いた高効率、長寿命な有機電界発光素子、また該有機電界発光素子を有する有機ELディスプレイに関するものである。
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を使用したものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子の開発が行われるようになっている。有機電界発光素子は、通常、陽極と陰極との間に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層などを有し、この各層に適した赤、緑、青などの発光素子の開発が進んでいる。しかしながら、中でも青色の発光素子は、効率、寿命、耐熱性の観点で満足できるものではなく、フルカラーディスプレイ用途への適用は限定的であるという課題があった。
また、有機電界発光素子の各層の形成方法としては、蒸着成膜法や湿式成膜法がある。蒸着成膜法では、テレビやモニタ用の中・大型フルカラーパネルなどを製作する場合、歩留まりの観点で課題を有する。そのため、中でもこれら大面積の用途には湿式成膜法が好適である。
しかしながら、湿式成膜法で有機電界発光素子の各層を形成するためには、各層を形成する材料が溶媒に溶解し、かつ湿式成膜後にも素子として高い性能を有することが望まれていた。しかし、従来開発されている蒸着成膜法に使用されてきた材料であっても、湿式成膜法には適さないものが多かった。
例えば、特許文献1では、下記式で示される材料を用いて、湿式成膜法によって作製した素子が開示されている。
Figure 0005458516
また、特許文献2には、下記式で示される材料を用い、湿式成膜法によって作製した素子が開示されている。
Figure 0005458516
しかしながら、これらの材料は、溶剤に対する溶解性や耐熱性といった湿式成膜のプロセス上の要求物性を満足していない上、ホストの正孔注入・輸送性が乏しいため、湿式成膜用途に実用的ではなかった。
国際公開2006/070712号パンフレット 特開2004−224766号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、有機電界発光素子の湿式成膜法で形成される有機層に有用な化合物であって、溶解性に優れ、湿式成膜法で形成しても、高効率、長寿命な有機電界発光素子を提供できる化合物を提供することである。
本発明者らが鋭意検討した結果、下記式(I)で表わされる化合物を用いることにより上記課題が解決できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記式(I)で表わされることを特徴とするアントラセン化合物に存する(請求項1)。
Figure 0005458516
(式(I)中、Arは、炭素数6以上26以下の芳香族炭化水素基を置換基として有してもよい、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基を表わし、Arは、炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を置換基として有してもよい、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アリール−9−アントリル基、または1−ピレニル基を表わし、Ar、Arは、それぞれ独立に、炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を置換基として有していてもよい、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基を表わす。Gは、直接結合を表わす。)
また、分子内のアミノ基が、−GN(Ar)(Ar)のみであることが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、上記のアントラセン化合物からなることを特徴とする、湿式成膜用電荷輸送材料に存する(請求項)。
このとき、ガラス転移点が120℃以上であり、且つ、トルエンに対する溶解度が5重量%以上であることが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、上記のアントラセン化合物を含有することを特徴とする、湿式成膜用電荷輸送材料組成物に存する(請求項)。
このとき、湿式成膜用電荷輸送材料組成物が、発光材料を1重量部以上50重量部以下含有することが好ましい(請求項)。
このとき、湿式成膜用電荷輸送材料組成物が、溶剤を含有することが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、上記の湿式成膜用電荷輸送材料を含有する層を有することを特徴とする、有機電界発光素子に存する(請求項)。
本発明の別の要旨は、陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、上記の湿式成膜用電荷輸送材料組成物を含有する層を有することを特徴とする、有機電界発光素子に存する(請求項)。
本発明の別の要旨は、上記の有機電界発光素子を有することを特徴とする、有機ELディスプレイに存する(請求項10)。
本発明によれば、新規の化合物を提供できる。該化合物は、溶剤に対する溶解性が高く、また、湿式成膜法で形成される有機電界発光素子の有機層に好適である。該化合物を用いて製造された湿式成膜法で形成された有機層を用いると、有機電界発光素子は高効率、長寿命な有機電界発光素子が得られる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更して実施することができる。
本発明は、下記式(I)で表わされるアントラセン化合物、該アントラセン化合物を用いた湿式成膜用電荷輸送材料及び湿式成膜用電荷輸送材料組成物、並びに、それらを含有する有機電界発光素子に関する。
以下、上記の順に説明する。
[1.アントラセン化合物]
<1−1.アントラセン化合物の構造>
本発明のアントラセン化合物は、下記式(I)で表わされる構造を有していれば、他に制限はない。以下、その構造について説明する。
Figure 0005458516
(式(I)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わす。Gは、直接結合または連結基を表わす。Arが結合するアントラセン環は、更に置換基を有していてもよい。)
(Ar〜Arについて)
式(I)中、Ar〜Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わす。
芳香族炭化水素基とは、芳香性を有する環状の炭化水素基である。ひとつの環を構成する骨格元素の数は、通常6以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、また、通常36以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは24以下である。また、通常2つ以上また通常5つ以下の環が縮合した環(例えば、ナフタレン環等。)であってもよい。これらの芳香族炭化水素基の中でも、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の芳香族炭化水素基が好ましい。
例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の由来の基が挙げられる。
また、上述の単環又は2〜5縮合環が複数個連結されて形成された基も好ましい。例えば、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
Arとして好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基である。これらはさらに、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アリール−9−アントリル基、1−ピレニル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、o−ビフェニル基などの炭素数6以上26以下の芳香族炭化水素基を、置換基として有していてもよい。
Arとして好ましくは、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アリール−9−アントリル基、または1−ピレニル基である。これらはさらに、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、o−ビフェニル基などの炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を、置換基として有していてもよい。
ArおよびArとして好ましくは、それぞれ独立に、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基である。これらはさらに、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基などの炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を、置換基として有していてもよい。
芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、下記置換基群Qに記載の置換基が挙げられる。これらの置換基は、芳香族炭化水素基1つあたり、1種の置換基が単独で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
<置換基群Q>
置換基群Qとしては、
置換基を有してもよいアルキル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下の直鎖または分岐のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアルケニル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2以上8以下のアルケニル基であって、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアルキニル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2以上8以下のアルキニル基であって、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアラルキル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数7以上15以下のアラルキル基であって、例えば、ベンジル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアミノ基(好ましくは、置換基に炭素数1以上8以下のアルキル基を1つ以上有し、さらに別の置換基を有していてもよいアミノ基であって、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいヘテロアリールアミノ基(例えば、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアルコキシ基(好ましくは、置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアルコキシ基であって、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアリールオキシ基(好ましくは、芳香族炭化水素基や複素環基を有するアリールオキシ基であって、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアシル基(好ましくは、置換基を有してもよい炭素数1以上8以下のアシル基であって、例えば、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは、置換基を有してもよい炭素数2以上13以下のアルコキシカルボニル基であって、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基(好ましくは、置換基を有してもよい炭素数2以上13以下のアリールオキシカルボニル基であり、アセトキシ基などが挙げられる。);
置換基を有していてもよいシクロアルキル基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数5以上20以下のシクロアルキル基であって、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。);
カルボキシ基;
シアノ基;
水酸基;
チオール基;
置換基を有していてもよいアルキルチオ基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下までのアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下までのアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいスルホニル基(例えば、メシル基、トシル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいボリル基(例えば、ジメシチルボリル基等が挙げられる。);
置換基を有してもよいホスフィノ基(例えば、ジフェニルホスフィノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の由来の基が挙げられる。);
置換基を有していてもよい芳香族複素環基(例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が由来の芳香族炭化水素基が挙げられる。);等が挙げられる。
なお、上記の置換基群Qが有していてもよい置換基としては、アルキル基、ジアリールアミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。具体例としては、上記置換基群Qに挙げたものと同様である。
また、Ar〜Arがそれぞれ有する置換基どうしが結合して、環を形成してもよい。例えば、シクロヘキサン環などの脂肪族環を形成することができる。
ここで、電気的耐久性と電荷輸送性の観点からは、Ar、Ar、及び後述するGの何れか一つは、炭素数10以上の縮合環由来の芳香族炭化水素、若しくはパラ位に置換基を有するベンゼン環由来の基(フェニル基)が好ましい。
ただし、本発明のアントラセン化合物は、分子内のアミノ基が、−GN(Ar)(Ar)のみであることが好ましく、Ar〜Arは何れもアミノ基ではないことが好ましく、またアミノ基で置換されていないことが好ましい。電気的還元に対する耐性を損なわないため、あるいは必要以上の正孔輸送性の発現を防ぐためである。
(アントラセン環が有する、更なる置換基について)
Arが結合するアントラセン環は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、上記置換基群Qに記載の基が挙げられる。
置換基群Qの中でも、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましい。特にベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環由来の基、あるいは、これらの基が任意の組合せで複数(通常2以上、また、通常8以下、好ましくは4以下)連結されて形成された置換基が好ましい。
Arが結合するアントラセン環にさらに置換する基は、1種の置換基が単独で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上記の置換基の置換位置は、2,3,6,7位が好ましい。分子の平面性を著しく損なうことに伴う、電気的耐久性の低下を避けるためである。
ただし、本発明のアントラセン化合物は、上述の理由と同様にして、分子内のアミノ基が、−GN(Ar)(Ar)のみであることが好ましい。従って、アントラセン環が有する更なる置換基はアミノ基ではないことが好ましい。
(Gについて)
は、直接結合または連結基を表わす。即ち、N原子とベンゼン環が直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。
連結基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましく、中でも6員環の単環又は2〜5縮合環由来の芳香族炭化水素基が好ましい。
例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の由来の基が挙げられる。
また、上述の単環又は2〜5縮合環が複数個連結されて形成された2価の基も好ましい。例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
としてより好ましくは、ベンゼン環若しくはナフタレン環由来の基、又はこれらが複数個連結されて形成された基(例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基等)が挙げられる。
は置換基を有していてもよい。
該置換基としては好ましくは、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基等が挙げられる。
好ましくは、芳香族炭化水素基であり、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、またはこれらが複数個連結されて形成された基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基等)が好ましい。
の置換基の数は、本発明の効果を著しく損なわない限り制限はないが、通常2以下、好ましくは1、また、置換していなくてもよい。この範囲を上回ると、電荷輸送性が低下する可能性がある。
また、Gには、任意の1種の置換基が単独で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、上述したように、電気的耐久性と電荷輸送性の観点からは、Ar、Ar、及びGの何れか一つは、炭素数10以上の縮合環由来の芳香族炭化水素、若しくはパラ位に置換基を有するベンゼン環由来の基(フェニル基)が好ましい。
<1−2.アントラセン化合物の物性等>
(分子量)
本発明のアントラセン化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは600以上、また、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、特に好ましくは1500以下である。この範囲を下回ると、湿式成膜時に、結晶化を起こしやすくなったり、加熱処理時、気化してしまったり、耐熱性が低下したりする可能性がある。また、この範囲を上回ると、有機溶剤に対する溶解性が低下したり、不純物の除去が困難になったりする傾向がある。
(結晶化温度)
本発明のアントラセン化合物の結晶化温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、200℃以上が好ましく、250℃以上が更に好ましく、観測されないことが特に好ましい。本発明のアントラセン化合物は、湿式成膜の際、あるいはその後の加熱処理の際に、結晶化を起こさないことが特に好ましいためである。
(気化温度)
本発明のアントラセン化合物の気化温度は、0.001Pa条件下において、500℃以下が好ましく、450℃以下が更に好ましい。高真空下における昇華精製が可能であると、化合物の高純度化を促進することができるためである。
(ガラス転移点)
本発明のアントラセン化合物のガラス転移点は、通常120℃以上、好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、また、通常350℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。ガラス転移点がこの範囲を下回ると、湿式成膜用電荷輸送材料を用いて作製した薄膜が、加熱処理あるいは通電などによって、結晶化を起こす可能性がある。また、ガラス転移点がこの範囲を上回ると、溶剤に対する溶解性が低下する傾向がある。
ガラス転移点の測定は、示差走査熱量分析法により測定できる。
反応装置としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6220を用いる。サンプル量2〜6mgをアルミ製液体用試料容器に入れ、窒素フロー(50mL/分)雰囲気下、室温〜400℃の間を昇温速度10℃/分で融点以上まで昇温する。なお、融点が検出されない場合には、300℃まで昇温する。
次に、一度昇温したサンプルを、−100℃/分以上の速度で室温以下に急冷してから、再び、昇温速度10℃/分で昇温した際に検出されたガラス転移点を、本発明のガラス転移点と定義する。
(溶媒への溶解度)
本発明のアントラセン化合物をトルエンに溶解する場合、その溶解度は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは6重量%以上、特に好ましくは7重量%以上である。溶解度がこの範囲を下回ると、湿式成膜した際に形成される薄膜の膜質が低下し、不均一になる傾向がある。また、各種溶剤の選定が制限される可能性がある。
溶解度の測定は、内容量2mL以上10mL以下のガラス製サンプル瓶に、溶質Xg(通常3mg以上10mg以下の範囲)、溶剤(例えばトルエン)Ygを投入し、該サンプル瓶の蓋を閉じた後、撹拌、超音波照射あるいは加熱処理し、極力溶解を促進する。
その後、室温(通常、10℃以上30℃以下)下、10時間以上静置するとき、目視あるいは顕微鏡観察により、析出物、懸濁あるいは層分離が確認されなかった場合、溶解度は(X/(X+Y)×100)%以上であり、析出物が確認された場合、溶解度は(X/(X+Y)×100)%未満であると判定する。
<1−3.アントラセン化合物の製造方法>
本発明のアントラセン化合物は、公知の合成方法を任意に組み合わせることによって製造することができる。
以下、その一例を説明するが、本発明のアントラセン化合物の製造方法は、以下の例に限定されない。
本発明のアントラセン化合物は、例えば、下記の合成経路によって製造することが好ましい。以下の合成経路に示される化合物の置換基のうち、同様の種類の置換基については、同じ記号で示している(例えば、X、X、G等)。また、式(I)等で説明した置換基と同じ置換基に関しては、式(I)と同じ記号で示している(例えば、Ar、G等)。以下、下記の合成経路の各反応について詳説する。
Figure 0005458516
<反応1>
反応1は、化合物aと、中間体A又は中間体Bとを反応させて、化合物bを合成する反応である。
化合物aにおいて、X〜Xは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、CFSO−基等の脱離基等を表わす。
化合物bにおいて、X〜Xは、化合物aと同じものである。Ar〜Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したAr〜Arと同じものである。
(中間体Aと反応させる場合)
以下、化合物aと中間体Aとを反応させて化合物bを得る場合について説明する。なお、中間体Aは、後述する<反応6>によって得られる化合物である。
該反応で得られる化合物bのGは直接結合である。
中間体Aとの反応には、銅触媒を用いる場合と、パラジウム錯体触媒を用いる場合とがある。以下、それぞれについて説明する。
・銅触媒を用いる場合
化合物aと中間体Aとを銅触媒を用いて反応させる場合、銅触媒及び塩基性物質の存在下で、化合物aと中間体Aとを反応させることが好ましい。該反応は、不活性ガス雰囲気下でもよいし、溶媒下でもよいし、無溶媒で行なってもよい。また、さらに配位子の存在下で該反応を行なってもよい。
中間体Aを用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常2当量以下である。
銅触媒としては、例えば、銅粉末;銅線;CuCl、CuBr、CuI等のハロゲン化銅;CuO、CuO等の酸化銅;Cu(CHCOO)、Cu(CHCOO)等の酢酸銅;等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、銅触媒を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.01当量以上、また、通常10当量以下である。
塩基性物質としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、tert−ブトキシナトリウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、塩基性物質を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常1当量以上、また、通常100当量以下である。
不活性ガスとしては、例えば、窒素;He、Ne、Ar等の希ガス類;等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン等の芳香族溶媒;テトラグライム、ポリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメトキシエタン等の溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物aの1molに対して、通常0.1L(リットル)以上、また、通常100L以下である。
上記の他に更に配位子の存在下で反応を行なってもよい。配位子としては、例えば、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミン、1,2−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジアミン、サリチルアルドキシム、ジメチルグリオキシム、2−ピリジンアルドキシム、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、配位子を用いる量は、銅触媒1モルに対して、通常1mol以上、また、通常10mol以下である。
反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常20℃以上、また、通常300℃以下である。
また、反応時間は、通常0.5時間以上、また、通常60時間以下である。
・パラジウム錯体触媒を用いる場合
化合物aと中間体Aとをパラジウム錯体触媒を用いて反応させる場合、パラジウム錯体触媒、及び、塩基性物質の存在下で、化合物aと中間体Aとを反応させることが好ましい。該反応は、溶媒下で行なうことが好ましい。
中間体Aを用いる量は、銅触媒を用いる方法と同様である。
パラジウム錯体触媒としては、0価のパラジウム錯体及び/又はパラジウム塩化物錯体を用いることが好ましい。
0価のパラジウム錯体としては、例えば、Pd(dba)(ここで、dbaとは、「ジベンジリデンアセトン」のことである。)、Pd(dba)、酢酸パラジウム等の2価のパラジウム触媒と、BINAP(IUPAC名:2,2’−ビス(ジフェニルフォスフィノ−1,1’−ビナフチル))、トリ(tert−ブチル)フォスフィン、トリフェニルフォスフィン、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)ブタン、dppf(IUPAC名:1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン)等のリガンド類とを組み合わせた錯体が挙げられる。
パラジウム塩化物錯体としては、例えば、PdCl(dppf)等が挙げられる。
これらのパラジウム錯体触媒は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、パラジウム錯体触媒を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.001当量以上、また、通常1当量以下である。
塩基性物質としては、例えば、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、塩基性物質を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常2当量以上、また、通常100当量以下である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、キシレン、トルエン、トリエチルアミン、ピリジン等の溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物aの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常100L以下である。
反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常20℃以上、また、通常300℃以下である。
また、反応時間は、通常0.5時間以上、また、通常60時間以下である。
(中間体Bと反応させる場合)
以下、化合物aと中間体Bとを反応させて化合物bを得る場合について説明する。なお、中間体Bは、後述する<反応10>によって得られる化合物である。
該反応によって得られる化合物b中のGは、連結基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したGである。
化合物aと中間体Bとを用いて反応させる場合、パラジウム触媒及び塩基性物質の存在下で、化合物aと中間体Aとを反応させることが好ましい。該反応は、不活性ガス雰囲気下の溶媒中で行なうことが好ましい。また、さらに配位子の存在下で該反応を行なってもよい。
中間体Bを用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常2当量以下である。
パラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム等の0価のパラジウム触媒が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、パラジウム触媒を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.0001当量以上、また、通常0.2当量以下である。
塩基性物質としては、例えば、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三カリウム、トリエチルアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フッ化カリウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、塩基性物質を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常2当量以上、また、通常10当量以下である。
溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ノルマルヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルベンゾエート、酢酸エチル等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物aの1molに対して、通常0.01L以上、また、通常100L以下である。
不活性ガスとしては、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)で例示した不活性ガスを用いることが出来る。
反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常−40℃以上、また、通常150℃以下である。
また、反応時間は、通常1時間以上、また、通常60時間以下である。
<反応2>
反応2は、化合物aと、Ar−X12とを反応させて、化合物cを合成する反応である。
Ar−X12において、X12は、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。また、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したArである。
化合物cにおいて、X〜Xは、化合物aと同じものである。Arは、Ar−X12と同じものである。
化合物aと、Ar−X12との反応は、<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)において、中間体Bの代わりにAr−X12を用いることによって行なうことができる。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として化合物cを得ることができる。
<反応3>
反応3は、化合物bと、Ar−X12とを反応させて、中間体Cを合成する反応である。
Ar−X12は、<反応2>で用いたAr−X12と同じものである。
中間体Cにおいて、Arは、Ar−X12と同じものである。X、及びAr〜Arは、化合物bと同じものである。
化合物bと、Ar−X12との反応は、<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、中間体Bの代わりに、Ar−X12を用いて<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)の反応を行なう。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として中間体Cを得ることができる。
<反応4>
反応4は、化合物cと、中間体A又は中間体Bとを反応させて、中間体Cを合成する反応である。
中間体A及び中間体Bは、<反応1>で用いた中間体A及び中間体Bと同じものである。
中間体Cは、<反応3>で合成された中間体Cと同じものである。
化合物cと、中間体A又は中間体Bとの反応は、<反応1>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりに、化合物cを用いて<反応1>を行なう。また、それに伴い、中間体A、中間体B、溶媒、銅触媒、パラジウム錯体触媒等の用いる量は、化合物cを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応1>と同様である。
この反応の結果、生成物として中間体Cを得ることができる。
なお<反応1>と同様に、中間体CのGは、中間体Aを用いて反応を行なった場合には直接結合であり、中間体Bを用いて反応を行なった場合には連結基である。連結基の種類は、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したGと同様である。
<反応5>
反応5は、中間体Cから中間体Dを合成する反応である。
中間体Dにおいて、X13は、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。また、Ar〜Ar、Gは、中間体Cと同じものである。
反応5として、以下に3種類の反応を説明する。
(反応5の第1の方法)
中間体Cから、中間体Dを合成する第1の方法について説明する。
まず、中間体Cとリチオ化剤とを、無水条件下、不活性ガス雰囲気下の溶媒存在中で混合し、中間体Cの脱離基XをLiに変換する。次に、ホウ素化剤、ハロゲン化金属等を作用させて、中間体Dを得る。
リチオ化剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、リチオ化剤を用いる量は、中間体Cの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常10当量以下である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、中間体Cの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常100L以下である。
中間体Cの脱離基XをLiに変換する反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常−90℃以上、また、通常20℃以下である。
また、反応時間は、通常0.1時間以上、また、通常24時間以下である。
これらの反応によって、中間体Cの脱離基XがLiに変換される。
不活性ガスとしては、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)で例示した不活性ガスを用いることが出来る。
次に、脱離基XがLiに変換された中間体Cに、ホウ素化剤及び/又はハロゲン化金属を作用させて、中間体Dを得る。
ヨウ素化剤としては、例えば、トリメトキシボラン、トリス(i−プロピルオキシ)ボラン、メトキシピナコラートボラン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、ヨウ素化剤を用いる量は、脱離基XがLiに変換された中間体Cの1当量に対して、通常1当量以上、また、通常10当量以下である。
ハロゲン化金属としては、例えば、ハロゲン化錫、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、ハロゲン化金属を用いる量は、脱離基XがLiに変換された中間体Cの1当量に対して、通常1当量以上、また、通常10当量以下である。
なお、ヨウ素化剤を用いた場合には、さらに酸性水溶液で処理を行なうことが好ましい。
(反応5の第2の方法)
中間体Cから、中間体Dを合成する第2の方法について説明する。
まず、中間体Cと金属マグネシウムとを、無水条件下、不活性ガス雰囲気下の溶媒存在中で混合し、中間体Cの脱離基Xをマグネシウムハライド残基に変換する。次に、ホウ素化剤を作用させて、中間体Dを得る。
金属マグネシウムを用いる量は、中間体Cの1当量に対して、通常1当量以上、また、通常5当量以下である。
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、中間体Cの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常10L以下である。
不活性ガスとしては、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)で例示した不活性ガスを用いることが出来る。
中間体Cの脱離基Xをマグネシウムハライド残基に変換する反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常−90℃以上、また、通常100℃以下である。
また、反応時間は、通常0.1時間以上、また、通常24時間以下である。
これらの反応によって、中間体Cの脱離基Xがマグネシウムハライド残基に変換される。
次に、脱離基Xがマグネシウムハライド残基に変換された中間体Cに、ホウ素化剤を作用させ、その後で酸性水溶液で処理を行なうことで、ボロン酸残基が導入された中間体Dを得が得られる。
なお、ホウ素化剤を作用させる方法や、酸性水溶液で処理する方法は、前述の(反応5の第1の方法)で説明した方法と同様である。
(反応5の第3の方法)
中間体Cから、中間体Dを合成する第3の方法について説明する。
まず、中間体CとジボランとPd触媒と塩基性物質とを、無水条件下、不活性ガス雰囲気下の溶媒存在中で混合し、中間体Cの脱離基Xをボロン酸エステル残基に変換した中間体Dを得る。
ジボランとしては、例えば、ビス(ピナコラート)ジボラン等が挙げられる。ジボランは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、ジボランを用いる量は、中間体Cの1当量に対して、通常1当量以上、また、通常10当量以下である。
Pd触媒としては、例えば、[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ジクロロメタン錯体(1:1)等が挙げられる。
また、Pd触媒を用いる量は、中間体Cの1当量に対して、通常0.001当量以上、また、通常0.5当量以下である。
塩基性物質としては、例えば、塩化カリウム等が挙げられる。塩基性物質は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン等が挙げられる。溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物aの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常100L以下である。
不活性ガスとしては、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)で例示した不活性ガスを用いることが出来る。
また、不活性ガスを用いる場合には、不活性ガス雰囲気下で反応を行なうことができれば制限はないが、一定の気流下で用いることが好ましい。
中間体Cの脱離基Xをボロン酸エステル残基に変換する反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常20℃以上、また、通常120℃以下である。
また、反応時間は、通常1時間以上、また、通常60時間以下である。
これらの反応によって、中間体Cの脱離基Xがボロン酸エステル残基に変換された中間体Dが得られる。
<反応6>
反応6は、化合物dと、Ar−X15とを反応させて、中間体Aを合成する反応である。
化合物dにおいて、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したArである。
Ar−X15において、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したArである。
15は、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、CFSO−基、−OH基等の脱離基等を表わす。
中間体Aにおいて、Arは、Ar−X15と同じものである。Arは、化合物dと同じものである。
化合物dと、中間体Aとの反応は、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりにAr−X15を、中間体Aの代わりに化合物dを用いて<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)の反応を行なう。ただし、Ar−X15を用いる量は、化合物dの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常1.25当量以下である。
それ以外の条件(触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として中間体Aを得ることができる。
<反応7>
反応7は、中間体Aと、X−G−Xとを反応させて、化合物eを合成する反応である。
−G−Xにおいて、X、Xは、それぞれ独立に、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、CFSO−基等の脱離基等を表わす。Gは、2価の芳香族炭化水素基を表わす。Gは、Gと同じものであってもよく、後述するGと結合して、Gを形成可能なG前駆体であってもよい。
化合物eにおいて、Ar〜Arは、中間体Aと同じものである。G、及びXは、X−G−Xと同じものである。
中間体Aと、X−G−Xとの反応は、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりにX−G−Xを用いて、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)を行なう。また、それに伴い、中間体A、溶媒、銅触媒、パラジウム錯体触媒等の用いる量は、X−G−Xを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物eを得ることができる。
<反応8>
反応8は、化合物eから化合物fを合成する反応である。
化合物fにおいて、G、及びAr〜Arは、化学物eと同じものである。また、Xは、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。
化合物eの反応は、<反応5>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、中間体Cの代わりに化合物eを用いて、<反応5>を行なう。また、それに伴い、リチオ化剤、マグネシウムハライド、ジボラン、溶媒、触媒等の用いる量は、化合物eを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応5>と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物fを得ることができる。
<反応9>
反応9は、化合物fと、X−G−Xとを反応させて、化合物gを合成する反応である。
−G−Xにおいて、X及びXは、それぞれ独立に、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、CFSO−基等の脱離基等を表わす。Gは、2価の芳香族炭化水素基を表わす。Gは、Gと同じものであってもよく、前述したGと結合して、Gを形成可能なG前駆体であってもよい。
化合物gにおいて、Ar〜Arは、化合物fと同じものである。Xは、X−G−Xと同じものである。Gは、直接結合又は連結基である。連結基の種類は、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したGと同様である。
化合物fと、X−G−Xとの反応は、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりにX−G−Xを、中間体Aの代わりに化合物fを用いて、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)を行なう。また、それに伴い、化合物f、溶媒、銅触媒、パラジウム錯体触媒等の用いる量は、X−G−Xを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応1>の(中間体Aと反応させる場合)と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物gを得ることができる。
<反応10>
反応10は、化合物gから中間体Bを合成する反応である。
中間体Bにおいて、G、及びAr〜Arは、それぞれ化学物gと同じものである。
また、Xは、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。
化合物gの反応は、<反応5>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、中間体Cの代わりに化合物gを用いて、<反応5>を行なう。また、それに伴い、リチオ化剤、マグネシウムハライド、ジボラン、溶媒、触媒等の用いる量は、化合物gを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応5>と同様である。
この反応の結果、生成物として中間体Bを得ることができる。
<反応11>
反応11は、化合物hから化合物iを合成する反応である。
化合物hにおいて、X10は、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;CFSO−基、−OH基等の脱離基;等を表わす。
化合物iにおいて、X10及びX11は、それぞれ独立に、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;CFSO−基、−OH基等の脱離基;等を表わす。
反応11として、以下に2種類の反応を説明する。
(反応11の第1の方法)
化合物hから、化合物iを合成する第1の方法について説明する。
11がハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)である化合物iを得る場合、化合物hとハロゲン分子とを、ルイス酸触媒存在下、溶媒存在下で混合する。
ハロゲン分子としては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
ハロゲン分子を用いる量は、化合物aの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常100当量以下である。
ルイス酸触媒としては、塩化鉄(III)等が挙げられる。ルイス酸触媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、ルイス酸触媒を用いる量は、化合物hの1当量に対して、通常0.001当量以上、また、通常100当量以下である。
溶媒としては、ジクロロメタン等が挙げられる。溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物hの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常100L以下である。
反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常−50℃以上、また、通常100℃以下である。
また、反応時間は、通常0.1時間以上、また、通常60時間以下である。
この反応の結果、生成物として化合物iを得ることができる。
(反応11の第2の方法)
化合物hから、化合物iを合成する第2の方法について説明する。
該第2の方法としては、化合物hとN−ハロゲン化コハク酸イミドとを、溶媒存在下で混合することが好ましい。
N−ハロゲン化コハク酸イミドとしては、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド、等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、N−ハロゲン化コハク酸イミドを用いる量は、化合物hの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常100当量以下である。
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、溶媒を用いる量は、化合物hの1molに対して、通常0.1L以上、また、通常100L以下である。
反応は、撹拌混合で行なうことが好ましい。このときの反応温度は、通常−50℃以上、また、通常200℃以下である。
また、反応時間は、通常0.1時間以上、また、通常60時間以下である。
この反応の結果、生成物として化合物iを得ることができる。
<反応12>
反応12は、化合物hと、Ar−X12とを反応させて、化合物jを合成する反応である。
Ar−X12において、X12は、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。また、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、<1−1.アントラセン化合物の構造>で詳述したArである。
化合物jにおいて、Arは、Ar−X12と同じものである。
化合物hと、Ar−X12との反応は、<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、中間体Bの代わりに、Ar−X12を用いて<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)の反応を行なう。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として化合物jを得ることができる。
<反応13>
反応13は、化合物jから化合物kを合成する反応である。
化合物kにおいて、Arは、化学物jと同じものである。また、X10は、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;CFSO−基、−OH基等の脱離基;等を表わす。
化合物jの反応は、<反応11>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物hの代わりに化合物jを用いて、<反応11>を行なう。また、それに伴い、ハロゲン分子、ルイス酸触媒、N−ハロゲン化コハク酸、溶媒等の用いる量は、化合物hを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、ハロゲン分子、ルイス酸触媒、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応11>と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物kを得ることができる。
<反応14>
反応14は、化合物iと、Ar−X12とを反応させて、化合物kを合成する反応である。
Ar−X12は、<反応12>で用いたAr−X12と同じものである。
化合物kは、<反応13>で合成された化合物kと同じものである。
化合物cと、Ar−X12との反応は、<反応1>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりに化合物iを、中間体A又は中間体Bの代わりにAr−X12を用いて<反応1>を行なう。また、それに伴い、Ar−X12、溶媒、銅触媒、パラジウム錯体触媒等の用いる量は、化合物iを基準として規定される。
ただし、化合物iは、例えば9−ブロモ−10−ヨードアントラセンの様に、X10とX11との反応性が異なることが好ましい。例えば9,10−ジブロモアントラセンの様に、X10とX11との反応性が同一の場合、Ar−X12の当量を、化合物iの1当量に対して、通常0.1当量以上、また、通常1.5量以下とする。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応1>と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物kを得ることができる。
<反応15>
反応15は、化合物kから化合物lを合成する反応である。
化合物lにおいて、Arは、化学物kと同じものである。また、X14は、ボロン酸残基、ボロン酸エステル残基、錫ハライド残基、亜鉛ハライド残基、マグネシウムハライド残基などの脱離基を表わす。
化合物lの反応は、<反応5>と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、中間体Cの代わりに化合物kを用いて、<反応5>を行なう。また、それに伴い、リチオ化剤、マグネシウムハライド、ジボラン、溶媒、触媒等の用いる量は、化合物kを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、溶媒等の種類;反応温度、反応時間等)は、<反応5>と同様である。
この反応の結果、生成物として化合物lを得ることができる。
<反応16>
反応16は、化合物lと、中間体Cとを反応させて、最終物(式(I)で表わされる本発明のアントラセン化合物)を合成する反応である。
中間体Cは、<反応3>又は<反応4>で合成された中間体Cと同じものである。
化合物lと、中間体Cとの反応は、<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりに中間体Cを、中間体Bの代わりに化合物lを用いて、<反応1>(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法を行なう。また、それに伴い、パラジウム触媒、塩基性物質、溶媒、配位子等の用いる量は、中間体Cを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として本発明のアントラセン化合物を得ることができる。
<反応17>
反応17は、化合物kと、中間体Dとを反応させて、最終物(式(I)で表わされる本発明のアントラセン化合物)を合成する反応である。
中間体Dは、<反応5>で合成された中間体Dと同じものである。
化合物kと、中間体Dとの反応は、<反応1>の(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法で行なうことが出来る。
具体的には、化合物aの代わりに化合物kを、中間体Bの代わりに中間体Dを用いて、<反応1>(中間体Bと反応させる場合)と同じ方法を行なう。また、それに伴い、パラジウム触媒、塩基性物質、溶媒、配位子等の用いる量は、化合物kを基準として規定される。
それ以外の条件(例えば、触媒、塩基性物質、溶媒の種類及びそれらを用いる量;反応温度、反応時間等)は、同様である。
この反応の結果、生成物として本発明のアントラセン化合物を得ることができる。
<その他のアントラセン化合物の製造方法>
本発明に係るアントラセン化合物の製造方法は、上述した例に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、他の何れの公知の方法によって製造してもよい。また、アントラセン化合物の合成には、上述した例以外の、他の何れの公知の原材料を用いてもよい。
具体例としては、「Palladium in Heterocyclic Chemistry : A guide for the Synthetic Chemist」(第二版、2002、Jie Jack Li and Gordon W. Gribble、Pergamon社)、「遷移金属が拓く有機合成 その多彩な反応形式と最新の成果」(1997年、辻二郎、化学同人社)、「ボルハルト・ショアー現代有機化学 下」(2004年、K.P.C.Vollhardt、化学同人社))等に記載または引用されている、環同士の結合(カップリング)反応(例えば、ハロゲン化アリールとアリールボレートとのカップリング反応等)等を用いることもできる。
<アントラセン化合物の精製方法>
合成して得られたアントラセン化合物の精製方法としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知の何れの方法を用いることが出来る。
具体例としては、「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分および難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ
ピー シー発行)、あるいは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法等が挙げられる。
さらに具体的には、抽出(懸濁洗浄、煮沸洗浄、超音波洗浄、酸塩基洗浄を含む)、吸着、吸蔵、融解、晶析(溶媒からの再結晶、再沈殿を含む)、蒸留(常圧蒸留、減圧蒸留)、蒸発、昇華(常圧昇華、減圧昇華)、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー。移動相分類:ガス、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー)などが挙げられる。
生成物の確認や純度の分析方法としては、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(AAA)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)質量分析(MS、LC/MS、GC/MS、MS/MS)、核磁気共鳴装置(NMR(H−NMR、13C−NMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、紫外可視近赤外分光高度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)、透過型電子顕微鏡(TEM−EDX)電子線マイクロアナライザー(EPMA)、金属元素分析(イオンクロマトグラフ、誘導結合プラズマ−発光分光(ICP−AES)原子吸光分析(AAS)蛍光X線分析装置(XRF))、非金属元素分析、微量成分分析(ICP−MS、GF−AAS、GD−MS)等を必要に応じ、適用可能である。
<1−4.アントラセン化合物の好ましい例>
以下、本発明のアントラセン化合物の好ましい例について例示する。以下は例示であって、本発明のアントラセン化合物は、式(I)を満たしていれば制限されない。
Figure 0005458516
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<1−5.アントラセン化合物の用途>
本発明のアントラセン化合物は、高耐熱性、有機溶剤に対する優れた溶解性、あるいは高い電荷輸送性を有するため、電荷輸送性材料あるいは発光材料として、電子写真感光体、有機電界発光素子、光電変換素子、有機太陽電池、有機整流素子等に好適に使用できる。
また、高い一重項励起準位、優れた蛍光量子収率、優れた電気的耐久性、あるいは優れた非晶質性を有することから、本発明のアントラセン化合物からなる電荷輸送材料を用いることにより、耐熱性に優れ、長期間安定に駆動(発光)する有機電界発光素子が得られる。そのため、本発明のアントラセン化合物および電荷輸送材料は有機電界発光素子材料として、とりわけ好適である。
[2.湿式成膜用電荷輸送材料]
本発明はまた、上記式(I)で表わされるアントラセン化合物からなる湿式成膜用電荷輸送材料に関する。
ここで、湿式成膜用電荷輸送材料とは、溶剤に分散又は溶解させた状態で成膜し、その後、溶剤の一部あるいは全部を除去することで、電荷輸送性を有する膜を形成することを目的とした材料をいう。
湿式成膜用電荷輸送材料は、ガラス転移点が120℃以上であり、且つ、トルエンに対する溶解度が5重量%以上であることが、湿式成膜法を利用した有機電界発光素子の用途の上で好ましい。以下、ガラス転移点及び溶媒に対する溶解度について詳述する。
(ガラス転移点)
湿式成膜用電荷輸送材料のガラス転移点は、通常120℃以上、好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、また、通常350℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。ガラス転移点がこの範囲を下回ると、湿式成膜用電荷輸送材料を用いて作製した薄膜が、加熱処理あるいは通電などによって、結晶化を起こす可能性がある。また、ガラス転移点がこの範囲を上回ると、溶剤に対する溶解性が低下する傾向がある。
なお、ガラス転移点の測定は、<1−2.アントラセン化合物の物性>で説明した方法と同様にして測定できる。
(溶媒への溶解度)
湿式成膜用電荷輸送材料をトルエンに溶解する場合、その溶解度は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは6重量%以上、特に好ましくは7重量%以上である。溶解度がこの範囲を下回ると、湿式成膜した際に形成される薄膜の膜質が低下し、不均一になる傾向がある。また、各種溶剤の選定が制限される可能性がある。
なお、溶媒への溶解度の測定は、<1−2.アントラセン化合物の物性>で説明した方法と同様にして測定できる。
[3.湿式成膜用電荷輸送材料組成物]
本発明はまた、上記式(I)で表わされるアントラセン化合物を含有する湿式成膜用電荷輸送材料組成物に関する。
ここで、湿式成膜用電荷輸送材料組成物とは、湿式成膜用電荷輸送材料と、湿式成膜用電荷輸送材料以外の化合物や溶剤との混合物をいう。本発明のアントラセン化合物以外の化合物としては、例えば、電荷輸送性化合物を含有することが好ましい。
<電荷輸送性化合物>
電荷輸送性化合物としては、下記式(II)で表わされる化合物が好ましい。
Figure 0005458516
(式(II)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素数6以上30以下の芳香族炭化水素基を表わす。また、Ar32およびAr33は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わす。但し、Ar32およびAr33の少なくとも一方は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。Ar31が結合するアントラセン環は、更に置換基を有していてもよい。)
(Ar31について)
式(II)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素数6以上30以下の芳香族炭化水素基を表わす。
該芳香族炭化水素基としては、<1−1.アントラセン化合物の構造>で説明した、式(I)の化合物のArとして例示した基が挙げられる。その中でも好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基、またはこれらが複数個連結されて形成された基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基等)が挙げられる。
芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記置換基群Qに記載の置換基が挙げられる。これらの置換基は、芳香族炭化水素基1つあたり、1種の置換基が単独で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
(Ar32およびAr33について)
式(II)中、Ar32およびAr33は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わす。但し、Ar32およびAr33の少なくとも一方は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素基の好ましい種類などは、Ar31と同様である。
(アントラセン環が有する、更なる置換基)
Ar31が結合するアントラセン環は、更に置換基を有していてもよい。該置換基としては、上記置換基群Qに記載の基が挙げられる。
置換基群Qの中でも、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が好ましい。特にベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環由来の基、あるいは、これらの基が任意の組合せで複数(通常2以上、また、通常8以下、好ましくは4以下)連結されて形成された置換基が好ましい。
Ar31が結合するアントラセン環にさらに置換する基は、1種の置換基が単独で置換していてもよいし、2種以上の置換基が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
上記の置換基の好ましい置換位置は、2,3,6,7位が好ましい。分子の平面性を著しく損なうことに伴う、電気的耐久性の低下を避けるためである。
(分子量)
式(II)で表わされる化合物の分子量は、好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは600以上、また、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、特に好ましくは1500以下である。分子量がこの範囲を下回ると、湿式成膜時に、結晶化を起こしやすくなったり、加熱処理時、気化してしまったり、耐熱性が低下したりする可能性がある。また、この範囲を上回ると、有機溶剤に対する溶解性が低下したり、不純物の除去が困難になる傾向がある。
(結晶化温度)
式(II)で表わされる化合物の結晶化温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上が更に好ましく、観測されないことが特に好ましい。
式(II)で表わされる化合物は、湿式成膜の際、あるいはその後の加熱処理の際に、結晶化を起こさないことが特に好ましいためである。
(気化温度)
式(II)で表わされる化合物の気化温度は、0.001Pa条件下において、500℃以下が好ましく、450℃以下が更に好ましい。高真空下における昇華精製が可能であると、化合物の高純度化を促進することができるためである。
(混合割合)
湿式成膜用電荷輸送材料組成物において、本発明のアントラセン化合物と式(II)で表わされる電荷輸送性化合物とを混合する場合、その混合割合に制限はない。
ただし、湿式成膜用電荷輸送材料組成物を100重量部としたときに、本発明のアントラセン化合物を通常10重量部以上、好ましくは20重量部以上、また、通常90重量部以下、好ましくは80重量部以下と、式(II)で表わされる電荷輸送性化合物を通常10重量部以上、好ましくは20重量部以上、また、通常90重量部以下、好ましくは80重量部以下とを含有することが望ましい。
<発光材料>
湿式成膜用電荷輸送材料組成物は、さらに発光材料を含有することが好ましい。
ここで、発光材料とは、不活性ガス雰囲気下、室温で、希薄溶液中における、蛍光量子収率が30%以上である材料であって、希薄溶液中における蛍光スペクトルとの対比から、それを用いて作製された有機電界発光素子に通電した際に得られるELスペクトルの一部または全部が、該材料の発光に帰属される材料、と定義される。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、あるいはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
また、発光材料のその他の具体例としては、アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物、アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体、後述する式(III)で表わされる縮合芳香族環化合物等があげられる。
アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物としては、国際公開第2006/070712号パンフレットにおいて式(6)〜式(11)で表わされる化合物が好ましい。なお、式(11)における核炭素数が5〜40のアリール基として、国際公開第2006/070712号パンフレットに記載されている例示の他に、ベンゾフェナンスリルも好ましい。
アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体としては、国際公開第2006/070712号パンフレットにおいて、式(12)で表わされる化合物が好ましい。
発光材料として、下記式(III)で表わされる縮合芳香族環化合物も好ましい。
Figure 0005458516
式(III)中、Ar10は置換もしくは無置換の核炭素数5以上40以下のアリール基である。該アリール基は、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、また、好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下の芳香環核が縮合した構造を有する。
式(III)中、Ar10としては、クリセニル基、ナフタセニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、フルオランテニル基、ベンゾフェナンスリル基、アセナフトフルオランテニル基、フルオレニル基などがあげられる。
式(III)中、Rは水素原子、脂環炭化水素基、又は国際公開第2006/070712号パンフレットにおける式(11)のアリール基の置換基として例示された基から選択される。
脂環炭化水素基としては、炭素数5以上炭素数8以下の脂環式炭化水素基が好ましく、具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
また、国際公開第2006/070712号パンフレットにおける式(11)のアリール基の置換基として例示された基の中でも、アルキル基が好ましく、特に3級炭素原子または4級炭素原子を基内に有するアルキル基が好ましく、中でも炭素数4以上炭素数15以下のアルキル基が好ましい。
その他、青色用の発光材料として以下の化合物を使用することもできる。
Figure 0005458516
Figure 0005458516
Figure 0005458516
なお、青色用の発光材料としては好ましい化合物としては、中心骨格に好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、また、好ましくは7以下、更に好ましくは6以下の芳香環核が縮合したアリール基である。その中心骨格としては、クリセニル基、ナフタセニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、フルオランテニル基、ベンゾフェナンスリル基、アセナフトフルオランテニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
湿式成膜用電荷輸送材料組成物の発光材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、湿式成膜用電荷輸送材料組成物に対する発光材料は、該組成物を100重量部とすると、通常1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。この範囲を上回ると、発光効率の低下、駆動寿命の低下、発光スペクトルのブロード化等が生じる可能性がある。また、この範囲を下回ると、発光寿命の低下、駆動寿命の低下、駆動電圧の上昇が生じる可能性がある。
<溶剤>
湿式成膜用電荷輸送材料組成物は、さらに溶剤を含有することが好ましい。
ここで溶剤とは、湿式成膜により本発明のアントラセン化合物を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
溶剤は、溶質が良好に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、以下の例が好ましい。
例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
(沸点)
溶剤の沸点は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。この範囲を下回ると、湿式成膜時において、湿式成膜用電荷輸送材料組成物からの溶剤蒸発による、成膜安定性の低下する可能性がある。
また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶剤が適当な速度で蒸発することが好ましい。このため、溶剤の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
(使用量)
溶剤の使用量は、湿式成膜用電荷輸送材料組成物100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。含有量が10重量部を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。一方、99.95重量部を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。
<その他、湿式成膜用電荷輸送材料組成物に含有してよいもの>
湿式成膜用電荷輸送材料組成物には、必要に応じて、上記の化合物等の他に、更に他の化合物を含有していてもよい。
例えば、上記の溶剤の他に、別の溶剤を含有していてもよい。そのような溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
また、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。
[4.有機電界発光素子]
本発明はまた、基板上に、陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、上記の湿式成膜用電荷輸送材料または湿式成膜用電荷輸送材料組成物を含有する層を有することを特徴とする有機電界発光素子に関する。
<構成>
図1は、本発明の有機電界発光素子の一例を示す断面模式図である。
図1において、有機電界発光素子10は、基板1上に陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層(有機発光層)5、正孔阻止層6、電子輸送層7、陰極バッファ層8、陰極9をこの順に積層され形成されている。これらの層のうち、正孔注入層3から陰極バッファ層8(ただし、発光層5を除く)までの層は、必要に応じて全ての層が積層されていても、何れかの層が積層されていなくてもよい。
また、本発明の有機電界発光素子は、本発明の効果を著しく損なわない限り、図1の構成に限定されず、任意の形状、配置等をとることができる。例えば、基板上に上記の有機発光素子10とは逆順に積層(即ち、陰極側から積層)してもよい。
なお、上記湿式成膜用電荷輸送材料または湿式成膜用電荷輸送材料組成物を含有する層は、発光層5であることが好ましい。
以下、図1を例として、上記の層について詳説する。
<基板1>
基板1は、有機電界発光素子10の支持体となるものである。
基板1の材料は、本発明の効果を著しく損なわない制限はないが、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が好ましい。特に、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
なお、基板1として、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが望ましい。基板1のガスバリア性が低すぎると、基板1を通過した外気により、有機電界発光素子10が劣化する場合がある。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に、緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法等を講じることが好ましい。
基板1の厚さは制限されないが、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上、また、通常5cm以下、好ましくは2cm以下、さらに好ましくは1cm以下である。
なお、基板1は単一の層からなる構成であってもよいし、複数の層が積層された構成を有していてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいし、異なる材料からなる層であってもよい。
<陽極2>
基板1の上には、陽極2が形成される。
陽極2は、基板1と反対方向の隣接する層への正孔注入の役割を果たすものである。
陽極2の材料は、導電性を有していれば制限はないが、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
陽極2を形成する手法は制限されないが、通常はスパッタリング法、真空蒸着法等が用いられる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、これらを適当なバインダー樹脂溶液に分散させ、基板1上に塗布することにより、陽極2を形成することもできる。
更に、導電性高分子を材料として用いる場合は、電解重合により基板1上に薄膜を直接形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成したりすることもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
なお、図1において、陽極2は単層構造であるが、所望により複数の層が積層された積層構造としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいし、異なる材料からなる層であってもよい。
更には、陽極2を上述の基板1と一体に形成し、陽極2が基板1を兼ねる構成としてもよい。
陽極2の厚みは、陽極2に求められる透明性により適宜選定される。
陽極2に透明性が求められる場合には、可視光の透過率を通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。陽極2が薄すぎると、電気抵抗が大きくなる場合がある。また、厚すぎると透明性が低下する。
一方、陽極2が不透明でよい場合、陽極2の厚みは任意である。
なお、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極2の表面に対して、紫外線(UV)処理、オゾン処理をしたり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等のプラズマ処理をしたりすることが好ましい。
<正孔注入層3>
陽極2の上には、正孔注入層3が形成することができる。
正孔注入層3は、陽極2の陰極側に隣接する層へ正孔を輸送する層である。
なお、本発明の有機電界発光素子10は、正孔注入層3を省いた構成であってもよい。
正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層3中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
正孔注入層3は、必要に応じて、バインダー樹脂や塗布性改良剤を含んでもよい。なお、バインダー樹脂は、電荷のトラップとして作用し難いものが好ましい。
また、正孔注入層3は、電子受容性化合物のみを湿式成膜法によって陽極2上に成膜し、その上から直接、電荷輸送材料組成物を塗布、積層することも可能である。この場合、電荷輸送材料組成物の一部が電子受容性化合物と相互作用することによって、正孔注入性に優れた層が形成される。
(正孔輸送性化合物)
上記の正孔輸送性化合物としては、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。ただし、湿式成膜法に用いる場合には、湿式成膜法に用いる溶媒への溶解性が高い方が好ましい。
正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の種類は特に制限されず、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよいが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型炭化水素化合物)が好ましい。
また、芳香族アミン化合物の中でも、特に、芳香族三級アミン化合物が好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例としては、下記式(i)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
Figure 0005458516
(上記式(i)中、Ara1、Ara2は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ara3〜Ara5は、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。Zは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表わす。また、Ara1〜Ara5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
Figure 0005458516
(上記各式中、Ara6〜Ara16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価または2価の基を表わす。Ra1およびRa2は、各々独立して、水素原子または任意の置換基を表わす。)
Ara1〜Ara16としては、任意の芳香族炭化水素環または芳香族複素環由来の1価または2価の基が適用可能である。これらの基は各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、これらの基は、更に任意の置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。
Ara1、Ara2としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の観点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。
また、Ara3〜Ara5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基がさらに好ましい。
一般式(i)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用するのが好ましい。
(電子受容性化合物)
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
電子受容性化合物の例としては、例えば、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等の有機基の置換したオニウム塩、塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物、テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物、フラーレン誘導体、ヨウ素等が挙げられる。
上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物等が好ましい。また、種々の溶剤に可溶で湿式塗布に適用可能である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物等が好ましい。
電子受容性化合物として好適な有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられ、その好適例も同様である。例えば、下記構造式で表わされる化合物が挙げられるが、何らそれらに限定されるものではない。
なお、電子受容性化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
Figure 0005458516
(カチオンラジカル化合物)
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
カチオンラジカルとしては、正孔輸送性化合物として前述した化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。正孔輸送性化合物として好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、溶解性などの点から好適である。
ここで、カチオンラジカル化合物は、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、前述の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、または、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
(正孔注入層3の製造方法)
正孔注入層3は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で形成することができるが、例えば、湿式成膜法または真空蒸着法により陽極2上に形成される。
湿式成膜法による層形成の場合、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上の所定量を、必要により電荷のトラップとして作用し難いバインダー樹脂や塗布性改良剤と共に溶剤に溶解させて、まず塗布溶液を調製する。次いで、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等の湿式成膜法により陽極上に塗布し、乾燥して、正孔注入層3を形成させることができる。
湿式成膜法による層形成のために用いられる溶剤としては、前述の各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を溶解することが可能な溶剤であれば、その種類は特に限定されない。なお、正孔注入層に用いられる各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)を失活させる可能性のある失活物質または失活物質を発生させる物質を含まないことが好ましい。
好ましい溶剤の具体例としては、前記本発明の湿式成膜用電荷輸送材料組成物に含有される溶剤として例示したものが挙げられ、中でも、芳香族エーテル類、芳香族エステル類、脂肪族エーテル類などのエーテル系溶剤またはエステル系溶剤が好ましい。
上記塗布溶液中における溶剤の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常、99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、さらに好ましくは99.9重量%以下である。なお、2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにすればよい。
真空蒸着法による層形成の場合には、まず、前述した各材料(正孔輸送性化合物、電子受容性化合物、カチオンラジカル化合物)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、次いで、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気する。その後、るつぼを加熱し(2種以上材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱し)、蒸発量を制御して蒸発させて(2種以上材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させることができる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱し蒸発させて正孔注入層形成に用いることもできる。
上述のようにして形成される正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。正孔注入層3が薄すぎると、正孔注入性が不十分になる可能性がある。また、厚すぎると、抵抗が高くなる場合がある。
なお、正孔注入層3は単一の層からなる構成としてもよいが、複数の層が積層された構成としてもよい。後者の場合、複数の層は同一の材料からなる層であってもよいし、異なる材料からなる層であってもよい。
<正孔輸送層4>
正孔輸送層4は、正孔注入層3が有る場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。
正孔輸送層4によって、発光層5へ正孔を輸送し効率良く注入することができる。
なお、本発明の有機電界発光素子10は、正孔輸送層4を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層4に利用できる材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。
また、多くの場合発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが好ましい。
このような正孔輸送材料としては、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物に加えて、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体等が挙げられる。
更には、後述する成膜法により薄膜を形成した後、加熱や光や磁気等の電磁波照射などによって重合する化合物や、任意の複数化合物が予め重合した高分子を利用することも可能である。
このような高分子としては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym. Adv. Tech., 7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
正孔輸送層4は、例えば、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常の塗布法や、インクジェット法、スクリーン印刷法など各種印刷法等の湿式成膜法や、真空蒸着法などの乾式成膜法で形成することができる。
塗布法の場合は、正孔輸送材料の1種又は2種以上に、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を混合し、適当な溶剤に溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2あるいは正孔注入層3上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。
バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、正孔輸送層中の含有量で50重量%以下が好ましい。
また、真空蒸着法の場合には、例えば正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで減圧した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた、陽極2あるいは正孔注入層3上に正孔輸送層4を形成させることができる。
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般にスピンコート法や真空蒸着法が多く用いられる。
<発光層5>
発光層5は、正孔輸送層4が有る場合には正孔輸送層4の上に、正孔輸送層4が無くて正孔注入層3が有る場合には正孔注入層3の上に、正孔輸送層4と正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成される。
発光層5は前述の正孔注入層3や正孔輸送層4、及び後述する正孔阻止層6や電子輸送層7等とは独立した層であってもよいが、独立した発光層5を形成せず、正孔輸送層4や電子輸送層7など他の有機層が発光層の役割を担ってもよい。
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から直接に、又は正孔注入層3や正孔輸送層4等を通じて注入された正孔と、陰極9から直接に、又は陰極バッファ層8や電子輸送層7や正孔阻止層6等を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
なお、発光層5は、本発明の湿式成膜用電荷輸送材料、又は本発明の湿式成膜用電荷輸送材料組成物を用いて形成されることが好ましい。
発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で形成することができるが、例えば、湿式成膜法または真空蒸着法により陽極2上に形成される。ただし、大面積の発光素子10を製造する場合には、湿式成膜法の方が好ましい。湿式成膜法、及び真空蒸着法の方法は、正孔注入層3と同様の方法を用いて行なうことができる。
一般に有機電界発光素子においては、同じ材料で比較した場合、電極間の膜厚の薄い方が、実効電界が大きくなって注入される電流が多くなるので、駆動電圧が低下する。その為、電極間の総膜厚は薄い方がよいが、あまりに薄いとITO等の電極に起因する突起により短絡や、隣接する層界面近傍への励起子拡散に起因する消光などが発生する。従って、ある程度の膜厚が必要となる。
したがって、発光層5以外に正孔注入層3や正孔輸送層4、後述する正孔阻止層6や電子輸送層7等の有機層を有する場合、発光層5と他の有機層とを合わせた総膜厚としては、通常30nm以上、好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは100nm以上、また、1000nm以下、好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。
また、発光層5以外の有機層の導電性が高い場合、発光層5に注入される電荷量が増加する。例えば正孔注入層3の膜厚を厚くして発光層4の膜厚を薄くする等により、総膜厚としてある程度の膜厚を維持しながら駆動電圧を下げることも可能である。斯かる場合、発光層5の膜厚としては、通常10nm以上、好ましくは20nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。
なお、本実施の形態の有機電界発光素子10が、陽極2および陰極9の両極間に、発光層5のみを有する場合の発光層5の膜厚としては、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは300nm以下である。
<正孔阻止層6>
正孔阻止層6は、発光層5の上に形成することができる。
正孔阻止層6は、陽極2から注入され移動してくる正孔が陰極9に到達するのを阻止することができ、且つ陰極9から注入された電子を効率よく発光層5に輸送、注入することができる化合物によって形成されることが望ましい。
なお、本発明の有機電界発光素子10は、正孔阻止層6を省いた構成であってもよい。
正孔阻止層6に利用できる材料としては、電子移動度が高く、かつ、正孔移動度が低いことが好ましい。また、エネルギーギャップ(HOMO(最高被占軌道;Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(最低空軌道;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)との差)が大きいことや、発光層5中で生成した励起子のエネルギーが正孔阻止層6を形成する材料へ移動しないことや、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないこと等がさらに好ましい。
このような条件を満たす正孔阻止層用の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報);バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報);2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物(国際公開第2005/022962号パンフレット);等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。正孔阻止層6は、正孔注入層3から発光層5までの各層と同様の方法で形成することができ、湿式成膜法、真空蒸着法等を用いることができる。
<電子輸送層7>
電子輸送層7は、正孔阻止層6が有る場合には正孔阻止層6の上に、正孔阻止層が無い場合には発光層5の上に形成することができる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく発光層4の方向に輸送することができる化合物によって形成されることが望ましい。
なお、本発明の有機電界発光素子10は、電子輸送層7を省いた構成であってもよい。
電子輸送層7に利用できる電子輸送性化合物としては、陰極9または陰極バッファ層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが好ましい。
このような条件を満たす電子輸送性化合物としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−または5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラセンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
電子輸送層7の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。電子輸送層7は、正孔注入層3から正孔阻止層6までの各層と同様の方法で形成することができ、例えば、湿式成膜法、又は真空蒸着法により形成することができる。中でも真空蒸着法が好ましい。
<陰極バッファ層8>
陰極バッファ層8は、電子輸送層7が有る場合には電子輸送層7の上に、電子輸送層7が無くて正孔阻止層6が有る場合には正孔阻止層6の上に、電子輸送層7と正孔阻止層6が無い場合には発光層5の上に形成することができる。
陰極バッファ層8は、陰極9から注入された電子を効率よく隣接する有機層へ注入する層である。
なお、本発明の有機電界発光素子10は、陰極バッファ層8を省いた構成であってもよい。
陰極バッファ層8に利用できる材料としては、仕事関数の低い金属を使用することが好ましい。有機層へ電子注入を効率よく行うためである。
具体的には、例えば、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属が用いられる。また、LiF、MgF、LiO、CsCO等の金属塩を利用することもできる(Appl.Phys.Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEETrans.Electron.Devices,44巻,1245頁,1997年;SID 04 Digest,154頁)。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
陰極バッファ層8の膜厚としては、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上で、通常は10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
陰極バッファ層8は、前述の正孔注入層3から電子輸送層7までの各層と同様の方法で形成することができ、例えば、湿式成膜法、又は真空蒸着法により形成することができる。
真空蒸着法の場合には、例えば、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで減圧する。その後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼまたは金属ボートと向き合って置かれた基板上に陰極バッファ層8を形成することができる。
アルカリ金属の蒸着は、例えばクロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行うことができる。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで減圧する。その後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼおよびディスペンサーと向き合って置かれた基板上に陰極バッファ層8を形成することができる。このとき、陰極バッファ層8の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があってもよい。
<陰極9>
陰極9は、陰極バッファ層8が有る場合には陰極バッファ層8の上に、陰極バッファ層8が無くて電子輸送層7が有る場合には電子輸送層7の上に、陰極バッファ層8と電子輸送層7が無くて正孔阻止層6が有る場合には正孔阻止層6の上に、陰極バッファ層8と電子輸送層7と正孔阻止層6とが無い場合には発光層5の上に形成される。
陰極9は、隣接する陽極側の層(陰極バッファ層8、電子輸送層7等)に電子を注入する役割を果たす。
陰極9の形成には、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能である。効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属を用いることが好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金が用いられる。
低仕事関数合金電極を形成する素材の具体例としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等が挙げられる。
陰極9の膜厚は、通常は陽極2と同様であるが、低仕事関数金属からなる陰極を保護する目的で、陰極9の上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することができる。この目的に適した金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
<その他の構成層>
以上、図1に示す層構成の素子を中心に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子は、陽極2及び陰極9と、発光層5との間には、その性能を損なわない限り、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよい。また、発光層の役割を担う最低一層の有機層以外の任意の層を省略してもよい。
また、正孔阻止層6と同様の目的で、発光層5の陽極側に隣接する形で電子阻止層を設けることも可能である。電子阻止層は、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3あるいは正孔輸送層4に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、陽極側の層から注入された正孔を効率よく発光層5に注入する役割とがある。
更には、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。この場合、段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV等を電荷発生層(CGL)として用いると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明の有機電界発光素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
また、本発明の有機電界発光素子において、透明陰極を用いることにより、上方より(基板1とは反対側の面より)発光を取り出す、トップエミッション型の素子として形成することも可能である。
<本発明の有機電界発光素子の利点>
本発明有機電界発光素子は、高効率な発光素子であり、耐久性が高く、長寿命な有機電界発光素子が得られる。
[5.有機ELディスプレイ]
次に、本発明の有機ELディスプレイは、上述した本発明の有機電界発光素子を表示にかかる構成に有するディスプレイである。
本発明の有機ELディスプレイは、少なくとも基板上に積層された有機電界発光素子を有し、有機電界発光素子として、上述した本発明の有機電界発光素子を使用することにより、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような有機ELディスプレイ(有機ELディスプレイ)を形成することができる。
[6.本発明の利点]
本発明によれば、新規のアントラセン化合物を提供できる。該化合物は、溶剤に対する溶解性が高く、また、耐熱性、溶剤に対する溶解性、電気化学的安定性、大気中における安定性の全てにおいて優れている。そのため、湿式成膜法で形成される有機電界発光素子の有機層に好適であり、湿式成膜用電荷輸送材料として好適に用いられる。
また、該化合物を用いて湿式成膜法有機層を製造すると、有機電界発光素子は高効率、長寿命な有機電界発光素子が得られる。
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、以下の記載において部とは重量部のことを指す。
[測定・評価方法]
(溶剤に対する溶解度の評価方法)
内容量2mL〜10mLのガラス製サンプル瓶に、溶質Xg(通常3〜10mgの範囲)、溶剤(例えばトルエン)Ygを投入し、該サンプル瓶の蓋を閉じた後、撹拌、超音波照射あるいは加熱処理し、極力溶解を促進する。その後、室温(通常、10〜30℃)下、10時間以上静置したとき、目視あるいは顕微鏡観察により、析出物、懸濁あるいは層分離が確認されなかった場合、溶解度は(X/(X+Y)×100)%以上であり、析出物が確認された場合、溶解度は(X/(X+Y)×100)%未満であると判定した。
[実施例1]
式(I)で表わされるアントラセン化合物の一種を合成した。合成は、1,3,5−トリブロモベンゼンを出発物質として、目的物4の化合物(式(I)で表わされるアントラセン化合物に相当する。)を得る多段階反応を行なった。
(出発物質から目的物1への反応)
以下の式は、該多段階反応の前半に当たる、目的物3までの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、1,3,5−トリブロモベンゼン(25.18g)、2−ナフチルボロン酸(10.32g)、トルエン(160mL)、及びエタノール(80mL)の混合溶液を調製した。そこに、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(2.77g)を混合し、次いで、炭酸ナトリウム(25.44g)と水(40mL)との混合溶液を混合し、加熱還流下、5時間撹拌した。
撹拌後、ろ過を行い、不溶成分を除去後、濃縮してから、メタノール中での懸濁洗浄およびシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン溶媒)で精製し、目的物1(12.8g)を得た。
(目的物1から目的物2への反応)
窒素気流中、トルエン(45mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.155g:上記の合成経路では「Pd(dba)CHCl」と表わす。)、及び1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.163g:上記の合成経路では「dppf」と表わす。)を混合し、室温で、20分間撹拌した。
そこに、目的物1(5.431g)、ジフェニルアミン(2.538g)、及びtert−ブトキシナトリウム(1.730g:上記の合成経路では「NaOtBu」と表わす。)を順次混合し、115℃の油浴中、9時間撹拌した。
撹拌後、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、得られた固形分を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=9/1混合溶媒)で精製し、目的物2(2.79g)を得た。
(目的物2から目的物3への反応)
窒素気流中、目的物2(2.79g)、ビス(ピナコラート)ジボラン(2.05g)、[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II),ジクロロメタン錯体(1:1)(0.0354g:上記の合成経路では「PdCl(dppf)CHCl」と表わす。)、酢酸カリウム(2.07g:上記の合成経路では「KOAc」と表わす。)、及び脱水ジメチルスルホキシド(40mL:上記の合成経路では「DMSO」と表わす。)を混合し、80℃で、5.3時間撹拌した。
撹拌後、ろ過により不溶成分を除去後、濃縮してから、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物3(1.43g)を得た。
(目的物3から目的物4への反応)
以下の式は、該多段階反応の後半に当たる、目的物4までの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、目的物3(1.426g)、9−ブロモ−10−(2−ナフチル)アントラセン(1.154g)、トルエン(20mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、及び1,2−ジメトキシエタン(20ml:上記の合成経路では「DME」と表わす。)を混合して混合溶液を調製した。
そこに、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(0.265g:上記の合成経路では「Pd(PPh」と表わす。)を混合し、次いで、リン酸三カリウム(2.433g)と水(40mL)の混合溶液(上記の合成経路では「2M KPO4aq.」と表わす。)を混合し、加熱還流下、11時間撹拌した。
撹拌後、食塩水、及び1規定の塩酸水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮した。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=3/1混合溶媒)で精製し、さらに塩化メチレン/酢酸エチル/エタノール混合溶媒を用いて再結晶、高真空下における昇華精製(最高加熱温度350℃)により精製し、目的物4(1.08g)を得た。
(目的物4の物性)
得られた目的物4に、DEI−MS(Desorption electron ionization mass spectrum:脱離電子イオン化法マススペクトル法)を行なった結果、m/z=673(M+)が得られた。
また、目的物4のガラス転移点は136℃、結晶化温度および融点は観測されず、重量減少開始温度は559℃であった。
室温下、トルエンに対する溶解度は7重量%以上であった。
[実施例2]
式(I)で表わされるアントラセン化合物の一種を合成した。合成は、4−フェノキシアニリンを出発物質として、目的物7の化合物(式(I)で表わされるアントラセン化合物に相当する。)を得る多段階反応を行なった。
(出発物質から目的物5への反応)
以下の式は、該多段階反応の前半に当たる、目的物6までの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、脱水トルエン(100mL)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.816g)、及び1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.88g)を混合し、50℃で、20分間撹拌した。
そこに、4−フェノキシアニリン(14.60g)、ブロモベンゼン(12.99g)、tert−ブトキシナトリウム(9.09g)を順次混合し、115℃の油浴中、7.3時間撹拌した。
撹拌後、ろ過により不溶成分を除去した後、濃縮した。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン混合溶媒)で精製し、さらに塩化メチレン/メタノール混合溶媒を用いて再沈殿で精製し、目的物5(15.5g)を得た。
(目的物5から目的物6への反応)
窒素気流中、トルエン(25mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.086g:上記の合成経路では「Pd(dba)CHCl」と表わす。)、及び1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.09g:上記の合成経路では「dppf」と表わす。)を混合し、50℃で、20分間撹拌した。
そこに、目的物5(2.17g)、目的物1(3.01g)、tert−ブトキシナトリウム(0.96g:上記の合成経路では「NaOtBu」と表わす。)を順次混合し、115℃の油浴中、5時間撹拌した。
撹拌後、ろ過により不溶成分を除去した後、濃縮した。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=9/1混合溶媒)で精製し、さらに塩化メチレン/メタノール混合溶媒を用いて再沈殿した後、メタノール/水混合溶媒中での懸濁洗浄で精製し、目的物6(1.965g)を得た。
(目的物6から目的物7への反応)
以下の式は、該多段階反応の後半に当たる、目的物7までの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、目的物6(1.965g)、10−(2−ナフチル)アントラセン−9−ボロン酸(1.640g)、トルエン(28mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、及びエタノール(14mL:上記の合成経路では「EtOH」と表わす。)を混合して混合溶液を調製した。
そこに、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(0.335g:上記の合成経路では「Pd(PPh」と表わす。)、リン酸三カリウム(3.08g)と水(7mL)の混合溶液(上記の合成経路では「2M KPO4aq.」と表わす。)を順次混合し、加熱還流下、3.3時間撹拌した。
撹拌後、食塩水、及び1規定の塩酸水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥、ろ過、濃縮した。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=3/1混合溶媒)で精製し、さらに高真空下における昇華精製(最高加熱温度390℃)により精製し、目的物7(2.27g)を得た。
(目的物7の物性)
得られた目的物7に、DEI−MSを行なった結果、m/z=765(M)が得られた。
また、目的物7のガラス転移点は122℃、結晶化温度および融点は観測されず、重量減少開始温度は499℃であった。
室温下、トルエンに対する溶解度は、5重量%以上であった。
[実施例3]
式(I)で表わされるアントラセン化合物の一種を合成した。合成は、10−(2−ナフチル)アントラセン−9−ボロン酸を出発物質として目的物8を得る反応段階と、アニリン及び4−ブロモビフェニルを出発物質として目的物9を得る反応段階と、目的物8及び目的物9を出発物質として目的物10(式(I)で表わされるアントラセン化合物に相当する。)とを得る反応段階を有してなる、多段階反応を行なった。
(出発物質から目的物8への反応)
以下の式は、該多段階反応の一部にあたる、10−(2−ナフチル)アントラセン−9−ボロン酸を出発物質として目的物8を得るまでの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、10−(2−ナフチル)アントラセン−9−ボロン酸(3.0g)、目的物1(5.3g)、トルエン(110mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、エタノール(55mL:上記の合成経路では「EtOH」と表わす。)を混合して混合溶液を調製した。
そこに、炭酸ナトリウム(20g)と水(100mL)との混合溶液(上記の合成経路では「2M NaCO3aq.」と表わす。)、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(0.51g:上記の合成経路では「Pd(PPh」と表わす。)を順次混合し、加熱還流下、2時間撹拌した。
撹拌後、冷却後晶析した固形分を濾取した(これを以下、「結晶A」と呼ぶ。)。濾液を分液後、有機層を水で洗浄し、得られた溶液を濃縮して得られた固形物をエタノールで懸洗し、結晶を得た(これを以下、「結晶B」と呼ぶ。)。
結晶Aと結晶Bとを合わせて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン85/15)により精製し、濃縮と乾燥の後、目的物9(3.4g)を得た。
(出発物質から目的物9への反応)
以下の式は、該多段階反応の一部にあたる、アニリン及び4−ブロモビフェニルを出発物質として目的物9を得るまでの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、脱水トルエン(5mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム錯体(0.21g:上記の合成経路では「Pd(dba)CHCl」と表わす。)、及び1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン(0.45g:上記の合成経路では「dppf」と表わす。)を混合し、60℃で7分間撹拌した。これをA液とした。
次に、窒素気流中、脱水トルエン(205mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、アニリン(11g)、4−ブロモビフェニル(25g)、及びtert−ブトキシナトリウム(14.4g:上記の合成経路では「NaOtBu」と表わす。)を混合し、混合液を調製した。これに上記のA液を加え、100℃の油浴中、4時間撹拌した。
撹拌後、ろ過により、不溶成分を除去後、濃縮し、メタノール(200mL)を加えて結晶を析出させ懸濁液を得た。その懸濁液を加熱還流後、室温に冷却し生じた結晶を濾取し乾燥し、目的物9(16.9g)を得た。
(目的物8及び目的物9から目的物10への反応)
以下の式は、該多段階反応の一部にあたる、目的物8及び目的物9を出発物質として目的物10(式(I)で表わされるアントラセン化合物に相当する。)を得るまでの合成経路を表わしたものである。以下、各反応段階での実施内容について説明する。
Figure 0005458516
窒素気流中、脱水トルエン(15mL:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)錯体(0.69g:上記の合成経路では「Pd(dba)」と表わす。)、トリt−ブチルフォスフィン(0.15g:上記の合成経路では「ttBP」と表わす。)を加え、60℃で10分間撹拌した。これをB液とした。
次に、窒素気流中、脱水トルエン(72ml:上記の合成経路では「Toluene」と表わす。)、目的物8(1.77g)、目的物9(0.81g)、及びtert−ブトキシナトリウム(1.74g:上記の合成経路では「NaOtBu」と表わす。)を混合し、混合液を調製した。これに上記のB液を加え、100℃の油浴中、4時間撹拌した。
撹拌後、ろ過により、不溶成分を除去後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=5/1混合溶媒)で精製し、さらに高真空下における昇華精製(最高加熱温度390℃)により精製して、目的物10(1.2g)を得た。
(目的物7の物性)
得られた目的物10に、DEI−MSを行なった結果、m/z=749(M)が得られた。
また、目的物10のガラス転移点は136℃、結晶化温度および融点は観測されず、重量減少開始温度は499℃であった。
室温下、トルエンに対する溶解度は、6重量%以上であった。
[比較例1]
比較例として、以下の化合物のトルエンに対する溶解度を測定したところ、1重量%未満であった。
Figure 0005458516
[比較例2]
比較例として、以下の化合物のトルエンに対する溶解度を測定したところ、1重量%未満であった。
Figure 0005458516
[比較例3]
比較例として、以下の化合物のトルエンに対する溶解度を測定したところ、1重量%未満であった。
Figure 0005458516
[実施例4]
以下の製造法で有機電界発光素子を作製した。
(陽極の形成)
ガラス基板の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nmの厚さで成膜した(スパッタ成膜品、シート抵抗15Ω)。これに、通常のフォトリソグラフィ技術により2mm幅のストライプにパターニングして陽極を形成した。
パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、紫外線オゾン洗浄を行った。
(正孔注入層の形成)
陽極の上に正孔注入層を形成した。正孔注入層の材料として、下記に示す構造式の芳香族三級アミン高分子化合物(PB−1:重量平均分子量が29400、数平均分子量が12600)を用いて、電子受容性化合物(A−1)と共にスピンコートした。
スピンコートは、[表1]の条件で行なった。また、PB−1とA−1との使用比率は、PB−1:A−1=10:4(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、260℃で180分の乾燥を行ない、膜厚30nmの均一な正孔注入層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
Figure 0005458516
Figure 0005458516
(正孔輸送層)
正孔注入層の上に正孔輸送層を形成した。正孔輸送層の材料として、以下に示す化合物(HT−1)を用いて、スピンコートにより発光層を形成した。
スピンコートは、[表2]の条件で行なった。スピンコートを行なった後、230℃で60分の乾燥を行ない、膜厚20nmの均一な正孔輸送層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
Figure 0005458516
(発光層)
正孔輸送層の上に発光層を形成した。発光層の材料として、以下に示した化合物1(本発明のアントラセン化合物、上記目的物4)、及び蛍光発光性のドーパント(D−1)を用いて、スピンコートにより発光層を形成した。
スピンコートは、[表3]の条件で行なった。また、化合物1とD−1との使用比率は、化合物1:D−1=10:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚50nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
Figure 0005458516
(正孔阻止層・電子輸送層)
発光層の上に正孔阻止層、正孔阻止層の上に電子輸送層を形成した。
正孔阻止層の材料として、下記に示すHB−1を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmの正孔阻止層を形成した。
次に、電子輸送層の材料として、下記に示すET−1を用いて、真空蒸着法により膜厚30nmの電子輸送層を形成した。
Figure 0005458516
(陰極バッファ層・陰極)
電子輸送層の上に陰極バッファ層を、陰極バッファ層の上に陰極を形成した。
真空蒸着法により、陰極バッファ層の材料としてフッ化リチウム(LiF)を用いて膜厚0.5nmの陰極バッファ層を、陰極の材料としてアルミニウムを用いて膜厚80nmの陰極を、それぞれ陽極であるITOストライプと直交する形状の2mm幅のストライプ状に積層した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子からは、ELピーク波長462nmの青色発光が得られた。なお、[実施例4]〜[実施例6]で得られた有機EL素子の特性及び駆動寿命をまとめて[表5]に示す。
[実施例5]
発光層を形成する組成物として、本発明の化合物1及びD−1に加えて、電荷輸送性助剤として化合物E−1を用いて、スピンコートして発光層を形成した。
具体的には、スピンコートを[表4]の条件で行なった。また、化合物1とD−1とE−1との使用比率は、化合物1:E−1:D−1=2.5:7.5:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚50nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
発光層を上記の通り形成した以外は、実施例4と同様にして、有機電界発光素子を得た。この素子からは、ELピーク波長467nmの青色発光が得られた。
Figure 0005458516
Figure 0005458516
[実施例6]
実施例5における化合物1:E−1:D−1の混合比を5:5:1としたこと以外は、実施例5と同様にして、有機電界発光素子を得た。この素子からは、ELピーク波長467nmの青色発光が得られた。
Figure 0005458516
[実施例7]
実施例4と同様の操作により得られた正孔注入層の薄膜上に、正孔輸送層の材料として化合物HT−1を用いて、[表6]の条件でスピンコートして正孔輸送層を形成した。
スピンコートを行なった後、230℃で60分の乾燥を行ない、膜厚20nmの均一な正孔輸送層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
次いで、正孔輸送層の上に発光層を形成した。発光層の材料として化合物1、及び蛍光発光性のドーパントD−1を用いて、スピンコートにより発光層を形成した。
スピンコートは、[表7]の条件で行なった。また、化合物1とD−1との使用比率は、化合物1:D−1=10:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚10nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
正孔輸送層および発光層を上記の通り形成した以外は実施例4と同様にして、有機電界発光素子を得た。この素子からは、ELピーク波長461nmの青色発光が得られた。
なお、[実施例7]および[比較例4]で得られた有機電界発光素子の特性及び駆動寿命をまとめて[表9]に示す。
[比較例4]
発光層の材料として、化合物E−1、及び蛍光発光性のドーパントD−1を用いてスピンコートにより発光層を形成した。
スピンコートは、[表8]の条件で行なった。また、化合物E−1とD−1との使用比率は、化合物E−1:D−1=10:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚20nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
発光層を上記の通り形成した以外は、実施例7と同様にして有機電界発光素子を得た。
この有機電界発光素子は、ELピーク波長こそ459nmの青色領域であったが、スペクトルの半値幅が77nmと広い青緑色発光であり、発光効率も低かった。
Figure 0005458516
以上のように、本発明の化合物を用いることにより、高輝度かつ長寿命な有機電界発光素子を構築することが可能であった。
[実施例8]
発光層の材料として、以下に示した化合物2(本発明のアントラセン化合物、上記目的物7)及び蛍光発光性のドーパントD−1を用いて、スピンコートにより発光層を形成した。
Figure 0005458516
スピンコートは、[表10]の条件で行なった。また、化合物2とD−1との使用比率は10:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚10nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
発光層を上記の通り形成した以外は、実施例7と同様にして有機電界発光素子を得た。
なお、[実施例8]〜[実施例10]で得られた有機電界発光素子の特性及び駆動寿命をまとめて[表12]に示す。
[実施例9]
発光層の材料として、以下に示した化合物3(本発明のアントラセン化合物、上記目的物10)及び蛍光発光性のドーパントD−1を用いて、スピンコートにより発光層を形成した。
Figure 0005458516
スピンコートは、[表11]の条件で行なった。また、化合物3とD−1との使用比率は10:1(重量比)とした。
スピンコートを行なった後、100℃で60分の乾燥を行ない、膜厚10nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
Figure 0005458516
発光層を上記の通り形成した以外は、実施例7と同様にして有機電界発光素子を得た。
[実施例10]
発光層の形成において、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンの代わりにトルエンを用い、塗布液濃度を0.75重量%とした以外は、実施例7と同様にして有機電界発光素子を得た。
[実施例8]〜[実施例10]で得られた有機電界発光素子の特性及び駆動寿命は、以下[表12]に示した通りである。
Figure 0005458516
本発明のアントラセン化合物は、溶剤に対する溶解性が優れている。そのため、成膜性、湿式プロセス適性に優れた有機電界発光素子用組成物に好適に用いることができ、さらには、それを用いた高効率、長寿命な有機電界発光素子に好適に用いることができる。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例を、模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極バッファ層
9 陰極
10 有機電界発光素子

Claims (10)

  1. 下記式(I)で表わされる
    ことを特徴とするアントラセン化合物。
    Figure 0005458516
    (式(I)中、Arは、炭素数6以上26以下の芳香族炭化水素基を置換基として有してもよい、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基を表わし、Arは、炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を置換基として有してもよい、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、10−アリール−9−アントリル基、または1−ピレニル基を表わし、Ar、Arは、それぞれ独立に、炭素数6以上16以下の芳香族炭化水素基を置換基として有していてもよい、フェニル基、1−ナフチル基、または2−ナフチル基を表わす。Gは、直接結合を表わす。)
  2. 分子内のアミノ基が、−GN(Ar)(Ar)のみである
    ことを特徴とする、請求項1記載のアントラセン化合物。
  3. 請求項1又は請求項2記載のアントラセン化合物からなる
    ことを特徴とする、湿式成膜用電荷輸送材料。
  4. ガラス転移点が120℃以上であり、且つ、トルエンに対する溶解度が5重量%以上である
    ことを特徴とする、請求項3に記載の湿式成膜用電荷輸送材料。
  5. 請求項1又は請求項2記載のアントラセン化合物を含有する
    ことを特徴とする、湿式成膜用電荷輸送材料組成物。
  6. 発光材料を1重量部以上50重量部以下含有する
    ことを特徴とする、請求項5記載の湿式成膜用電荷輸送材料組成物。
  7. 溶剤を含有する
    ことを特徴とする、請求項5又は請求項6記載の湿式成膜用電荷輸送材料組成物。
  8. 陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、
    請求項3又は請求項4に記載の湿式成膜用電荷輸送材料を含有する層を有する
    ことを特徴とする、有機電界発光素子。
  9. 陽極、陰極、およびこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子であって、
    請求項5〜7の何れか一項に記載の湿式成膜用電荷輸送材料組成物を含有する層を有する
    ことを特徴とする、有機電界発光素子。
  10. 請求項8又は請求項9記載の有機電界発光素子を有する
    ことを特徴とする、有機ELディスプレイ。
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