JP5322091B2 - 有機電界発光素子用重合体、有機電界発光素子および有機elディスプレイ - Google Patents
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Description
本発明はまた、この有機電界発光素子用重合体を含有する有機電界発光素子用組成物と、この有機電界発光素子用重合体を含有する有機層を有する有機電界発光素子と、この有機電界発光素子を用いた有機ELディスプレイに関する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
本発明の有機電界発光素子用重合体(以下、「本発明の重合体」と称す場合がある。)は、下記式(I)で表される構造(以下「構造(I)」と称する場合がある。)、好ましくは後述の式(II)で表される構造(以下「構造(II)」と称す場合がある。)または式(III)で表される構造(以下「構造(III)」と称す場合がある。)を含むものである。
また、本発明の重合体が共重合体である場合、構造(I)、好ましくは構造(II)および/または構造(III)を含むものであればよく、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本発明の重合体の重量平均分子量は、通常3,000以上、好ましくは4,000以上、通常400,000以下、好ましくは150,000以下である。この分子量は、GPC法により測定されたものであって、測定条件はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて重量既知のポリスチレン標準サンプルにて作成した検量線と対比して得られるものである。
本発明の重合体の数平均分子量は、通常2,000以上、好ましくは3,000以上、通常300,000以下、好ましくは100,000以下である。この分子量は、GPC法により測定されたものである。
<Ar1およびAr2>
式(I)中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基、好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
また、上述の単環、または2〜5縮合環が複数個連結されて形成された基も好ましい。例えば、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、ベンゼン環若しくはナフタレン環等の由来の基、またはこれらが複数個連結されて形成された基(例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基等)が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖または分岐のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいシクロアルキル基(例えば、アダマンチル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアルケニル基(好ましくは炭素数2以上8以下のアルケニル基であって、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアルキニル基(好ましくは炭素数2以上8以下のアルキニル基であって、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアラルキル基(好ましくは炭素数7以上20以下のアラルキル基であって、例えば、ベンジル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアミノ基(好ましくは、置換基に炭素数1以上8以下のアルキル基を1つ以上有するアミノ基であって、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいヘテロアリールアミノ基(例えば、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアルコキシ基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下のアルコキシ基であって、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくは、芳香族炭化水素基や芳香族複素環基を有するアリールオキシ基であって、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアシル基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下のアシル基であって、例えば、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数2以上13以下のアルコキシカルボニル基であって、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数2以上13以下のアリールオキシカルボニル基であり、アセトキシ基などが挙げられる。);
カルボキシ基;
シアノ基;
水酸基;
チオール基;
置換基を有していてもよいアルキルチオ基(好ましくは、炭素数1以上8以下までのアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくは、炭素数6以上20以下までのアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいスルホニル基(例えば、メシル基、トシル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいボリル基(例えば、ジメシチルボリル基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよいホスフィノ基(例えば、ジフェニルホスフィノ基等が挙げられる。);
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環等の芳香族炭化水素由来の基が挙げられる。);
置換基を有していてもよい芳香族複素環基(例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の芳香族複素環由来の基が挙げられる。)
R1およびR2は、それぞれ独立に置換基を表す。該置換基としては、上記置換基群Qに記載の基が挙げられるが、耐久性、溶解性、膜質の向上などのため、好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、シリル基、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が挙げられる。
本発明の重合体は、下記式(II)で表される構造を含む重合体であることが好ましい。
R3〜R5は、それぞれ独立に置換基を表す。置換基としては、上記置換基群Qに記載の基が挙げられる。
R3〜R5として好ましくは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。
aは0〜4の整数を表すが、好ましくは0〜2である。
bは0〜5の整数を表すが、好ましくは0〜2である。
cは0〜4の整数を表すが、好ましくは0〜2である。
本発明の重合体は、下記式(III)で表される構造を含む重合体であることが好ましい。
R6〜R9は、それぞれ独立に置換基を表す。該置換基としては、上記置換基群Qに記載の基が挙げられる。
R6〜R9として好ましくは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。
dは0〜4の整数を表すが、好ましくは0〜2である。
eは0〜4の整数を表すが、好ましくは0〜2である。
本発明の重合体は、前記構造(I)、好ましくは構造(II)または構造(III)(構造(II)と構造(III)とを含むものであってもよい)の他、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。本発明の重合体が含んでいてもよい他の繰り返し単位としては、例えば以下のような構造が挙げられる。
Ar61〜Ar74の具体例としては、前記置換基群Qにおいて例示した2価の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が挙げられ、その有していてもよい置換基も、置換基群Qに挙げられた芳香族炭化水素基および芳香族複素環基が有していてもよい置換基として例示したものと同様である。
また、R21〜R24の置換基としては、それぞれ独立に、置換基群Qに記載のものが挙げられる。
構造(I)、好ましくは構造(II),(III)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の重合体はまた、1重項および3重項の両方の励起状態からの発光により、白色に発光することを特徴とする。
1重項および3重項の両方の励起状態からの発光により、白色に発光する重合体としては、上記説明したとおり、上記式構造(I)、好ましくは構造(II)または構造(III)(構造(II)と構造(III)とを含むものであってもよい)を含む重合体が挙げられる。
本発明の重合体は、白色発光が可能であることから有機電界発光素子の発光層の材料として使用することができる。また、本発明の重合体は、発光層以外の他の層に含有させることにより、有機電界発光素子の性能を向上させることができる。例えば、本発明の重合体は正孔輸送層の材料としても使用することができ、また、電子輸送層の材料として使用することもできる。もちろん、その他の層に用いてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上述の本発明の重合体と溶剤とを含有するものであり、通常、後述する本発明の有機電界発光素子の有機層を湿式製膜法により形成する場合に用いられる。
本発明の有機電界発光素子用組成物には、本発明の重合体の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物中には、上述した溶剤以外に、必要に応じて、各種の他の溶剤を含んでいてもよい。このような他の溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
さらに、本発明の有機電界発光素子用組成物中には、レベリング剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
また、後述する本発明の有機電界発光素子の有機層を形成する場合において、当該有機層に含まれる他の化合物を含んでいてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含まれる本発明の重合体および必要に応じて添加可能な成分(例えば、レベリング剤等)等の固形分濃度は、通常、0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、最も好ましくは1重量%以上である。但し、通常、80重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。有機電界発光素子用組成物に含まれる本発明の重合体等の固形分濃度が過度に低いと、有機層を成膜する際に所定の厚みの膜を形成するのが困難となる傾向がある。有機電界発光素子用組成物の固形分濃度が過度に高いと、薄膜を形成するのが困難となる傾向がある。
本発明の有機電界発光素子は、陽極および陰極と、陽極と陰極との間の有機層をと有し、この有機層に前述した本発明の重合体が含有される。
前述の如く、本発明の重合体は、白色発光が可能であることから有機電界発光素子の発光層の材料として好適に用いられ、発光層以外の他の層、例えば、正孔輸送層、電子輸送層、その他の層に用いることによっても有機電界発光素子の性能の向上に有効であるが、本発明の有機電界発光素子において、本発明の重合体を含有する有機層は、正孔輸送層または発光層が好ましく、発光層がより好ましい。
この場合、有機層を形成する際に使用する組成物としては、例えば、本発明の重合体と本発明の重合体を含有する有機層に含まれる他の化合物を含む組成物、本発明の重合体と溶剤とを含む組成物等が挙げられるが、湿式成膜法による有機層の形成には、好ましくは、上述の本発明の有機電界発光素子用組成物が用いられる。
図1,2は、本実施の形態が適用される有機電界発光素子の一例を示す模式的な断面図である。
図1に示すように、有機電界発光素子10は、支持体としての基板1と、基板1上に順に積層された陽極2、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6および陰極8とを有する。
また、図2に示すように、有機電界発光素子20は、支持体としての基板1と、基板1上に順に積層された陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7および陰極8とを有する。
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものである。基板1の材料としては、例えば、石英やガラスの板、金属板や金属箔、透明なプラスチックフィルムやシート等が挙げられる。特に、ガラスの板、プラスチックフィルムやシートが好ましい。ここでプラスチックフィルム等に使用される合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
尚、プラスチックフィルムやシートを使用する場合は、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設け、ガスバリア性を確保してもよい。
基板1上に設けられる陽極2は、正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。陽極2は導電性材料により形成される。このような導電性材料としては、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。
さらに、導電性高分子を使用する場合は、電解重合により、基板1上に直接薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(例えば、Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。尚、陽極2は、異なる物質で積層して形成することも可能である。
また、透明性が必要とされない場合は、陽極2の厚みは基板1と同一でもよい。さらに、上記の陽極2の上に、他の異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極2の上に設けられる正孔輸送層4を構成する材料(正孔輸送材料)としては、陽極2からの正孔注入効率が高く、且つ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。
また、発光層5に接するために、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。さらに、このような一般的要求以外に、例えば、車載表示用等の用途を考えた場合、素子にはさらに耐熱性が要求される。従って、ガラス転移温度(Tg)として85℃以上の値を有する材料が望ましい。
また、バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。尚、バインダー樹脂の添加量は、通常、正孔輸送層4内の含有量で50重量%以下が好ましい。バインダー樹脂の添加量が過度に多いと、正孔移動度を低下させる傾向がある。
正孔輸送層4の上に設けられる発光層5は、通常、前述した本発明の重合体を含有することが好ましい。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入されて正孔輸送層4を移動する正孔と、陰極8から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起され、強い発光を示す。
発光層5は、前述した本発明の有機電界発光素子用組成物により湿式成膜法で形成されることが好ましい。
発光層5の厚みは、通常10nm以上、好ましくは、20nm以上である。但し、通常200nm以下、好ましくは、100nm以下である。
発光層5の上に積層される正孔阻止層6は、正孔輸送層4から移動してくる正孔を陰極8に到達するのを阻止する役割と、陰極8から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は正孔と電子を発光層5内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
正孔阻止層6を構成する材料としては、例えば、アルミニウムヒドロキシキノリン系錯体、トリアゾール系化合物、フェナントロリン系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。正孔阻止層6の厚みは、通常0.3nm〜100nm、好ましくは0.5nm〜50nmである。正孔阻止層6は、前述した正孔輸送層4と同様の方法で形成することができ、通常、真空蒸着法が用いられる。
陰極8は、正孔阻止層6を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前述した陽極2に使用される材料を用いることが可能である。効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属またはそれらの合金が用いられる。
陰極8として用いられる合金の具体例としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極8の厚みは、通常、前述した陽極2の厚みと同様の範囲である。
図2の有機電界発光素子20は、図1の有機電界発光素子において、陽極2と正孔輸送層4との間に正孔注入層3が設けられている。正孔注入層3は、正孔注入の効率をさらに向上させ、有機層全体の陽極2への付着力を改善させるために、正孔輸送層4と陽極2との間に設けられている。
正孔注入層3を挿入することにより、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。正孔注入層3に用いられる材料に要求される条件としては、陽極2とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、融点およびガラス転移温度が高いことが挙げられる。融点としては、300℃以上、ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。さらに、イオン化ポテンシャルが低く、陽極2からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
このような正孔輸送性ポリマーの例としては、例えば、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも、非晶質性、溶剤への溶解度、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
さらに、芳香族アミン化合物の中でも、特に、芳香族三級アミン化合物が好ましい。尚、ここでいう芳香族三級アミン化合物は、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されず、中でも、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1,000以上、100万以下の高分子化合物が更に好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
正孔注入層3中の正孔輸送性ポリマーの割合は、適宜選択され特に限定されないが、正孔注入層3全体に対する重量比の値で、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上である。但し、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。なお、2種以上のポリマーを併用する場合には、これらの合計の含有量が上記の範囲に含まれるようにすることが好ましい。
これらの化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。
以上の様にして形成される正孔注入層3の厚みは、通常3nm〜100nm、好ましくは5nm〜50nmである。
図2の有機電界発光素子20は、図1の有機電界発光素子において、更に正孔阻止層6と陰極8との間に電子輸送層7が設けられている。電子輸送層7は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる素子の発光効率をさらに向上させるために、正孔阻止層6と陰極8との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極8から注入された電子を効率よく正孔阻止層6の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
電子輸送層7の厚みは、通常5nm〜200nm、好ましくは10nm〜100nmである。
また、陰極8の上に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することにより、低仕事関数金属からなる陰極8を保護し、素子の安定性を増大させることができる。
本発明の有機電界発光素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
本発明の有機ELディスプレイは、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。
本実施の形態が適用される有機ELディスプレイは、少なくとも透明支持基板と透明支持基板上に積層された有機電界発光素子とを有し、有機電界発光素子として、上述した本発明の有機電界発光素子用重合体または有機電界発光素子用組成物を用いて形成された有機層を備える有機電界発光素子を使用することにより、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような有機ELディスプレイを形成することができる。
1H NMR(CDCl3):0.88-0.93(m,6H),1.31-1.39(m,8H),1.41-1.51(m,4H),
1.59-1.70(m,4H),2.83-2.89(m,4H)
13C NMR(CDCl3):14.1,22.6,29.5,29.7,31.3,31.5,109.5,116.3,129.3,
130.8,141.1
Anal.Calcd.FOR C22H26Br4S2:C=39.19,H=3.89
Found:C=39.09,H=4.07
1H NMR(CDCl3):0.91(t,J=7.1Hz,6H),1.31-1.38(m,8H),1.44-1.53(m,4H),
1.63-1.74(m,4H),2.96(t,J=7.8Hz,4H),7.26(s,2H)
1.52-1.59(m,4H),1.77-1.84(m,4H),3.04(t,J=8.2Hz,4H),
6.89-6.92(m,6H),6.92-6.96(m,4H),7.12(s,2H)
13C NMR(CDCl3):14.1,22.7,29.8,29.9,31.6,31.9,124.1,126.0,127.8,
127.9,130.3,130.8,139.1,140.5,141.7;
Anal.Calcd.FOR C34H38Br4S2:C=79.95,H=7.50
Found:C=80.16,H=7.63
2.18(s,3H),2.28(s,3H),2.55(t,J=7.9Hz,2H),5.21(s,1H),
6.90(d,J=8.4Hz,2H),7.03(s,1H),7.09(d,J=8.4Hz,2H),
7.30(s,1H)
1.89(s,6H),2.25(s,6H),2.52(t,J=7.5Hz,2H),
6.58(d,J=8.4Hz,2H),6.76(s,2H),6.96(d,J=8.4Hz,2H),
7.33(s,2H)
・HPLC装置名:日本分光社製
ポンプ:PU-980
UV検出器:PU-970(検出波長:254nm)
カラムオーブン:CO-1565
デガッサー:DG-1580-53
・GPCカラム名:東ソーTSKgel MultiporeHXL-M
(カラム内径:7.8mm、カラム長:300mm×2本)
・GPC溶媒:THF
・測定温度:40℃
・解析ソフト名:Borwin
数平均分子量:4000
重合度:4.48
数平均分子量:11000
重合度:16
合成例2で得られた式(II-A)で表される繰り返し単位からなる重合体(以下、「コポリマーP−BPTx」という)のUV吸収およびPLスペクトルを、以下の測定装置および測定条件で測定した。UV吸収およびPLスペクトルは、溶液およびフィルムの両方で測定を行った。
測定用溶液の作製方法:コポリマーP−BPTxをトルエンに溶解して1×10-5mol/L濃度の溶液を作成した。
フィルムの作製方法:コポリマーP−BPTxをトルエンに1.5重量%濃度で溶解してスピンコート法(1800rpm,60s)により、ガラス基板(Clinical Test Ware,岩城硝子社製 Code:2918,Cover24-40,thickness:0.13-0.16mm)上にフィルムを作成した。
・UV装置:機種名 V-530(日本分光社製)
・UV測定条件:
(溶液)
バンド幅 :2.0nm
レスポンス :Medium
測定範囲 :550-300nm
データ取込間隔:1nm
走査速度 :100nm/min
(フィルム)
バンド幅 :2.0nm
レスポンス :Medium
測定範囲 :550-300nm
データ取込間隔:1nm
走査速度 :100nm/min
・PL装置:機種名 FP-6200(日本分光社製)
・PL測定条件:
(溶液)
測定モード :蛍光スペクトル
励起側バンド幅:5nm
蛍光側バンド幅:5nm
レスポンス :Medium
感度 :Medium
測定範囲 :300-650nm
データ取込間隔:1nm
励起波長 :339.0nm
走査速度 :125nm/min
(フィルム)
測定モード :蛍光スペクトル
励起側バンド幅:5nm
蛍光側バンド幅:5nm
レスポンス :Medium
感度 :low
測定範囲 :350-600nm
データ取込間隔:1nm
励起波長 :320.0nm
走査速度 :125nm/min
また、溶液およびフィルムともに蛍光のみが観測された。
Phys.Rev.Lett.2001,86,1358に記載のT1レベル算出の式(T1=(1.13×S1−1.43)±0.25(eV))を用いて、三重項エネルギーバンドギャップを算出した。上記のEgの値よりS1=3.25eVであることから、T1は2.24±0.25(eV)であることがわかった。
このことから燐光がみられるとすれば、波長545〜560nmに発光極大を示すものと推測された。
ITO(インジウム錫酸化物)透明電極付きガラス製の基板をイソプロピルアルコール中で洗浄し、UVオゾン処理を60分間行った。その基板上に、スピンコート法(3000rpm、180秒)でPEDOT:PSSを塗布し、130℃で10分間アニーリングし、膜厚40nmの正孔輸送層とした。次いで、コポリマーP−BPTxのトルエン1.5重量%溶液をスピンコート法(1800rpm、60s)で正孔輸送層上に塗布し、130℃で10分間アニーリングし発光層を形成した。さらに真空蒸着法によってCa(30nm)、Al(120nm)を順次積層し、有機電界発光素子サンプル1を作製した。
得られたサンプルについて大気中でI−Vプロット(電圧に対する電流値)、I−Lプロット(電圧に対する輝度)、および電圧に対するELスペクトルを測定した。結果を図4、5に示す。
白色発光が得られ、低電圧下では波長560nm付近に発光を示し、高電圧下では波長560nmの発光が消滅し、波長450nmの蛍光が観察された。前記計算より、波長560nmの発光は燐光と帰属された。
実施例2において、コポリマーP−BPTxのトルエン溶液を、コポリマーP−BPTxの10mg/mLクロロホルム溶液に変えた以外は、実施例2と同様に素子を作製して、測定を行った。結果を図4に示す。
白色発光が得られ、波長450nmの蛍光が観察されるとともに、波長560nmに燐光が観察された。
コポリマーP−BPTxのトルエン溶液の10重量%分を以下に示すPBDの10mg/mLクロロホルム溶液に変えた以外は、実施例2と同様に素子を作製して、測定を行った。
波長450nmの蛍光がみられるとともに波長560nmに燐光がみられた。この場合、450nmの発光強度の方が主となる発光ピークを与えた。
コポリマーP−BPTxのトルエン溶液の30重量%を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の10mg/mLクロロホルム溶液に変えた以外は、実施例2と同様に素子を作製して、測定を行った。
結果を図8、9に示す。
波長560nmのピークのみが観察された。
コポリマーP−BPTxに代えて、合成例3で得られた式(III-A)で表される繰り返し単位からなる重合体(以下、「コポリマーP−BPBP」という)を用いた以外、実施例1と同様にしてP−BPBPの発光スペクトルを測定した。結果を図10に示す。
また、発光挙動について5K〜280Kまで温度を変えて測定した。
白色発光が得られ、発光スペクトルからは低温にて2.12eVに対応する波長585nmの発光と波長420〜430nmの発光がみられ、波長585nmの発光は昇温とともに消滅した。このことから、波長585nmの発光はコポリマーP−BPTxと同様に燐光であると結論できた。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極
10,20 コポリマー
Claims (5)
- 請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用重合体および溶剤を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
- 陽極、陰極、および該陽極と該陰極との間の有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層に請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
- 請求項4に記載の有機電界発光素子を用いた有機ELディスプレイ。
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