JP5426589B2 - エアフィルタ用濾材 - Google Patents

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Description

本発明は、エアフィルタ用濾材、特に半導体、液晶、バイオ・食品工業関係のクリーンルーム、クリーンベンチなどの空気浄化施設用途のエアフィルタ、ビル空調用エアフィルタ又は空気清浄機用途のエアフィルタなどにおいて、気体中の微粒子を濾過するために使用される準高性能エアフィルタ用濾材又は高性能エアフィルタ用濾材に関する。
従来、空気中のサブミクロン乃至ミクロン単位の粒子を効率的に捕集するために、エアフィルタの捕集技術が用いられている。エアフィルタは、その対象とする粒子径や除塵効率の違いによって粗塵用フィルタ、中性能フィルタ、準高性能フィルタ、高性能フィルタ(HEPAフィルタ、ULPAフィルタ)などに大別される。
このうち、準高性能フィルタ、高性能フィルタの規格としては、欧州規格のEN1822がある。EN1822においては最大透過粒径(MPPS)における捕集効率のレベルにより、U16からH10まで7段階に分類されている。その他、高性能フィルタの規格としては、米国のIEST‐RP‐CC001、日本のJIS Z 4812:1995「放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ」などがある。そして、準高性能フィルタ、高性能フィルタに使用される濾材としては、これら規格をエアフィルタとして満足するものが使用されている。濾材の素材としては、不織布状のガラス繊維製エアフィルタ用濾材が多く使われており、主要構成物として平均繊維径がサブマイクロメートル〜約3マイクロメートルのガラス短繊維が用いられている。
また、クリーンルームで使用されるエアフィルタ用濾材は、必要に応じて、撥水性が付与される。なお、本発明における撥水性とは、MIL−STD−282の測定法によって規定されるものである。濾材に撥水性を付与する目的としては、濾材を加工するときに使用するシール剤、ホットメルトなどの染み込みを防ぐことや、温度変化によって水分が結露した場合においても、そのまま濾材を使用できるようにすることなどが挙げられる。また、海塩粒子が多く存在するような環境下において塩分の潮解を防ぐためには、高い撥水性を有する濾材が必要とされている。
エアフィルタ用濾材に関する先行技術としては、例えば次のものがある。従来、ガラス繊維を主体繊維とするエアフィルタ濾材への撥水性付与の方法として、シリコーン系樹脂で構成される撥水剤の使用(例えば、特許文献1を参照。)、又はフッ素系樹脂で構成される撥水剤の使用(例えば、特許文献2を参照。)が行われてきた。本願発明者らも過去、ガラス繊維表面にアルキルケテンダイマーを付着形成させたことを特徴とするエアフィルタ用濾材(例えば、特許文献3を参照。)や、低分子環状シロキサンを主とした有機アウトガスを発生させない撥水剤として、少なくとも分子内に三つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシランを加水分解したのち縮合した縮合物を、前記ガラス繊維表面に付着形成させたことを特徴とするアウトガスの少ないエアフィルタ用濾材(例えば、特許文献4を参照。)を提案した。また、撥水剤を使用せずに濾材に撥水性を付与させる方法として、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂をベースとするソープフリーエマルジョンを使用する方法(例えば、特許文献5を参照。)が提案されている。本願発明者らも過去、バーサティック酸ビニル重合物樹脂若しくはバーサティック酸ビニル重合物樹脂−アクリル系樹脂混合物又はアクリル−バーサティック酸ビニル共重合物樹脂をガラス繊維に付着形成させたことを特徴とするエアフィルタ用濾材(例えば、特許文献6を参照。)及びバインダーとしてポリエステル樹脂、好ましくは水分散性又は水溶性ポリエステル樹脂をバインダーとして使用したエアフィルタ用濾材(例えば、特許文献7を参照。)を提案した。
特開平2−41499号公報 特開昭62−090395号公報 再公表WO02/016005号公報 特開2007−29916号公報 特開平10−244112号公報 特開2002−136815号公報 特開2003−135917号公報
撥水性について、特許文献1〜7の技術があるが、このうち特許文献1〜4は撥水剤を使ってガラス繊維表面を処理したものである。従来の撥水剤を用いて、非常に高い撥水性(例えば、650mm水柱高以上)を安定的に発現させるためには、濾材に対して撥水剤を大量に付着させる必要がある。しかし、濾材に対する大量の撥水剤の付着は、撥水剤使用量の増大によるコストの上昇を引き起こすだけでなく、濾材に実使用上必要とされる強度を付与するために用いられるバインダー樹脂の効果を阻害して、濾材の強度低下を引き起こす。また、特許文献5〜7は撥水剤を使用せずに濾材に撥水性を付与させる方法である。使用する薬剤は撥水剤に比べれば必ずしも高い撥水性ではなく、非常に高い撥水性(例えば、650mm水柱高以上)を安定的に発現させるにはまだ課題が多い。
このように、特許文献1〜7の技術はいずれも濾材の高撥水化に対する対策としては抜本的な対策ではなかった。
本発明の課題は、コストの上昇、濾材の強度の低下及び濾過性能の低下を引き起こすことなく、高い撥水性を有するガラス繊維を主体としたエアフィルタ用濾材を提供することである。具体的には、本発明は、撥水剤の大量付着を必要とせずに、撥水剤を使用しないか又は必要最小限量の使用で従来のエアフィルタ用濾材と同等又は従来以上の撥水性を発現したエアフィルタ用濾材を提供することを目的とする。
本発明者らは、濾材中において所定のバインダー分布を持たせることで、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明に係るエアフィルタ用濾材は、ガラス短繊維を主体としたエアフィルタ用濾材において、濾材全体のバインダー付着率が4〜8質量%であり、かつ、前記濾材の一方の面から厚さ方向1/3の領域を領域A1とし、前記濾材の反対面から厚さ方向1/3の領域を領域A2とし、領域A1と領域A2との間の残りの厚さ方向1/3の中間領域を領域Bとしたとき、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上であるバインダー分布を有し、前記バインダーが、疎水性合成樹脂系バインダーであることを特徴とする。撥水剤を添加しなくても撥水性を高めることができる。
本発明に係るエアフィルタ用濾材では、前記疎水性合成樹脂系バインダーが、モノマー成分としてアクリル酸ブチルモノマー若しくはアクリル酸2−エチルへキシルの一方又は両方を含有する、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂又はアクリル酸エステル共重合樹脂であることが好ましい。このような構成とすることで、撥水剤を添加しなくても撥水性をより高めることができる。
本発明に係るエアフィルタ用濾材では、撥水剤が付着していてもよい。親水性樹脂バインダーを使用したときにおいて併用することで従来に比べて撥水性を高めることができる。
また、本発明に係るエアフィルタ用濾材は、ガラス短繊維を主体としたエアフィルタ用濾材において、濾材全体のバインダー付着率が4〜8質量%であり、かつ、前記濾材の一方の面から厚さ方向1/3の領域を領域A1とし、前記濾材の反対面から厚さ方向1/3の領域を領域A2とし、領域A1と領域A2との間の残りの厚さ方向1/3の中間領域を領域Bとしたとき、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上であるバインダー分布を有し、前記バインダーが、親水性樹脂バインダーであり、かつ、撥水剤が該親水性樹脂バインダーと併用されていることを特徴とする。
本発明のエアフィルタ用濾材を使用することにより、撥水剤を使用しないあるいは必要最小限量の使用でも従来のエアフィルタ用濾材と同等の撥水性を保持させることができる。
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材は、ガラス短繊維を主体としたエアフィルタ用濾材において、濾材全体のバインダー付着率が4〜8質量%であり、かつ、前記濾材の一方の面から厚さ方向1/3の領域を領域A1とし、前記濾材の反対面から厚さ方向1/3の領域を領域A2とし、領域A1と領域A2との間の残りの厚さ方向1/3の中間領域を領域Bとしたとき、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上であるバインダー分布を有する。
本実施形態で主体繊維として使用するのはガラス短繊維と称されるものであり、ガラス短繊維は必要とされる濾過性能やその他物性に応じて、種々の繊維径を有するガラス短繊維の中から自由に選ぶことができる。特に、ガラス短繊維は、火焔延伸法又はロータリー法などで製造されるウール状のガラス繊維であり、濾材の圧力損失を所定の値に保ち、適正な捕集効率とするための必須成分である。繊維径が小さくなるほど捕集効率は高くなるため、高性能の濾材を得るためには平均繊維径の小さい極細ガラス繊維を配合する必要がある。ただし、繊維径が小さくなると圧力損失が上昇しすぎる場合がある。したがって、ガラス短繊維の平均繊維径は、5μm以下のものが使われるが、0.2〜3.5μm、好ましくは0.5〜3.0μmの範囲内で適正な繊維径のものを選択すべきである。なお、数種の繊維径のものをブレンドして配合しても構わない。ガラス短繊維のガラス組成としては、エアフィルタ用途の大半はボロシリケートガラスであり、この中には耐酸性を有するCガラス(含アルカリガラス)又は電気絶縁性を有するEガラス(無アルカリガラス)も含まれる。また、半導体工程などにおけるボロン汚染を防止する目的で、ローボロンガラス短繊維やシリカガラス短繊維を使用することもできる。なお、本実施形態における主体繊維とは、全原料繊維配合の70質量%以上、好ましくは80質量%以上を占める繊維のことを示す。そして、本実施形態の場合は、ガラス短繊維のことである。
また、本実施形態の目的に支障が無い限り、副資材として、ガラス短繊維より太い5μm以上の繊維径を有するチョップドガラス繊維、無機繊維、太径の天然繊維、太径の化合繊短繊維などを、全原料繊維のうち30質量%以下の配合をしても差し支えない。
バインダーは有機系バインダーが好ましく、例えばアクリル酸エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの疎水性合成樹脂や、澱粉、ポリビニルアルコール系樹脂などの親水性樹脂が挙げられる。これらは水溶液又は水系エマルジョン状として濾材に付着される。このうち、疎水性合成樹脂系バインダーは、撥水剤を使用しないか、又は必要最小限の使用で本実施形態の効果を発揮できるので好ましい。疎水性合成樹脂系バインダーを使用するときの必要最小限の撥水剤の使用とは、撥水剤の添加率が疎水性合成樹脂系バインダー固形分100質量部に対して25質量部以下、好ましくは15質量部以下ということである。また、疎水性合成樹脂系バインダーのなかでもスチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂やアクリル酸エステル共重合樹脂はさらに好ましく、スチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂やアクリル酸エステル共重合樹脂のなかでも、モノマー成分としてアクリル酸ブチルモノマー若しくはアクリル酸2−エチルへキシルの一方又は両方を含有する、スチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂又はアクリル酸エステル共重合樹脂は最も好ましい。
親水性樹脂バインダー自体は水濡れ性が強いので、単独に使用しても撥水性がほとんど発現されないが、撥水剤を親水性樹脂バインダーと併用した場合、従来に比べて撥水性を高めることができる。このとき、好ましい撥水剤の添加率は、親水性樹脂バインダー固形分100質量部に対して5〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部以下である。
濾材全体のバインダーの付着率としては、4〜8質量%であり、好ましくは4.5〜7質量%である。4質量%より少ないと濾材中のバインダー総量が少ないので撥水性が低くなる。8質量%より多いとバインダーの樹脂膜が濾材の繊維ネットワークの孔を塞ぐため、濾材の圧力損失を増大させるなどの問題が生じる。
本実施形態では濾材の厚さ方向のバインダー分布を制御することが必須である。濾材は、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%、好ましくは6〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4.0質量%、好ましくは1.5〜3.0質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上、好ましくは2〜5倍量であるバインダー分布を有する。領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が10質量%より多いとバインダーの樹脂膜が濾材の繊維ネットワークの孔を塞ぐため、濾材の圧力損失を増大させるなどの問題が生じる。逆にバインダー付着率が5質量%より少ないと本発明の撥水性改善が見られなくなる。また、領域Bでのバインダー付着率が4質量%より多いと撥水性向上の効果が見られなくなる。逆にバインダー付着率が1.5質量%より少ないと中間領域への水の浸込みが大きくなって撥水性の向上効果が少なくなり、加えて濾材が中間領域から剥離しやすくなって濾材のプリーツ作成時に問題を引き起こしやすくなる。また、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量未満であると本実施形態の効果が発現されない。
本実施形態では、必要に応じて濾材に撥水剤が付与される。これら撥水剤は、一般的に、バインダーと同様に、バインダー液と混合して濾材に付与される。撥水剤としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ワックス、アルキルケテンダイマー、アルコキシシランの加水分解縮合物などが用いられる。
バインダー液には、その他必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、帯電防止剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤などの添加剤を適宜選定して添加することができる。
濾材の撥水性が向上する原因としては、濾材の表面近くにバインダーが多く存在するため、親水性であるガラス繊維表面について疎水性バインダーのコーティング効果がより高まり、水が濾材表面から内部へ浸透することを阻止しているものと考えられる。一方、濾材の中間領域は相対的にバインダーが少ないため、水はより浸透しやすくなるが、濾材表面での水の阻止効果がより大きいので結果的に撥水性が高くなると推定される。また、撥水剤を併用した場合でも本実施形態のバインダー分布であれば撥水効果が一層高まる。従来、ガラス繊維濾材においては、濾材厚さ方向のバインダー分布が不均一であることは濾材の層間剥離やフィルタとしての捕集特性が悪くなるなど問題であると考えられてきたため、可能な限りバインダー分布を均一にすべく制御してきたが、驚くべきことに本実施形態の範囲内でバインダー分布を不均一となるように制御すれば撥水性に対し斯様な効果を上げることができることを見出した。
濾材の製造工程では、繊維を水中に分散したのち、抄紙ワイヤ上に繊維を積層し、ワイヤ下方から脱水してシートを形成する、いわゆる湿式抄紙法が用いられる。このとき用いる抄紙機の種類は、本実施形態では限定されず、例えば枚葉式抄紙装置、又は連続抄紙機であれば長網式抄紙機、円網式抄紙機、傾斜ワイヤ式抄紙機、ギャップフォーマー、デルタフォーマーなどを用いることができ、それら一種以上を組み合わせた多層抄き抄紙機を用いてもよい。このとき、より高性能なフィルタ用濾材を得るためには、できるだけ均一に、地合良く、嵩高くシート化することが望ましい。
次に、シート化された繊維ウェブにバインダーを付与する工程となる。バインダーの付与方法としては、各種のバインダー成分を水などの溶媒に稀釈したバインダー液を、含浸、ロールアプリケート、スプレー、カーテン塗工などの各種の方法でシートに付与したのち、余分なバインダー液を負圧又は正圧の空気で除去する方法が一般的である。バインダー液を付与する前のシートは、湿潤状態であっても乾燥状態であっても構わないが、より高性能なフィルタ濾材を得るためには、シートは湿潤又は半湿潤状態であることが望ましい。
バインダー液を付与した後のシートは、乾燥ゾーンで乾燥される。このときの乾燥方法は、特に限定されないが、熱風乾燥、ドラム乾燥、赤外線乾燥などが好適に用いられる。乾燥温度としては110〜160℃が望ましい。
完成したシートは、オンライン又はオフラインによって巻き取られ、又はカッターによって裁断されて製品となる。
濾材の厚さ方向のバインダー分布を制御する方法については、本実施形態では特に限定されない。例えば、前記の濾材製造工程において、バインダーを含浸法で付与する際、湿潤状態の繊維ウェブへの含浸時間を制御して繊維ウェブ内部に対するバインダー液の浸透度をコントロールする方法が挙げられる。また、バインダー液を付与した後のシートを乾燥ゾーンで乾燥する際、繊維ウェブ中のバインダー液が表裏に移動するバインダーの熱マイグレーションの現象を利用してコントロールする方法が挙げられる。これらは、付与方法の違い、製造装置の違い、乾燥方式の違いなど様々な要因があるので、目的とする濾材の性能に応じて最適な手段を適宜選択すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本実施例では便宜上、濾材シートの抄紙ワイヤに接触する面を「裏面」、その反対面を「表面」とし、濾材の表面から厚さ方向1/3領域のバインダー付着率を「表層バインダー付着率」、反対面である裏面から厚さ方向1/3領域のバインダー付着率を「裏層バインダー付着率」、残りの厚さ方向1/3中間領域のバインダー付着率を「中層バインダー付着率」とする。
(実施例1)
平均繊維径2.5μm以下のボロシリケートガラス短繊維(ジョンズマンビル社製、Micro−Strand(登録商標)Fiber Glass Micro−Fibers Type 475)100質量%に硫酸酸性pH3.5の酸性水を加えて固形分濃度0.5質量%とし、これら原料を食品用ミキサー(松下電器産業社製;品番MX‐V200)内で1分間離解した。次いで、離解後の原料を同じ酸性水で固形分濃度0.1質量%まで希釈し、手抄装置を用いて抄紙することによって湿紙を得た。次にスチレン/アクリル酸2−エチルへキシルであるスチレン-アクリル酸エステル樹脂バインダー(JSR社製、試作品名A)を、湿紙に対して8秒間含浸付与してから余分なバインダー液を負圧の空気で除去し、その後1次乾燥として145℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して絶乾とし、その後さらに2次乾燥として150℃の熱風乾燥機で5分間乾燥し、坪量70g/m、バインダー付着率が6.2質量%であるHEPA濾材を得た。ここで、平均繊維径2.5μm以下のボロシリケートガラス短繊維とは、目的の圧力損失(実施例では275Pa)とするため平均繊維径2.5μm以下の各種繊維径のボロシリケートガラス短繊維を適宜組み合わせたものであり、バインダー付着率は付与するバインダー液濃度を増減することにより制御した。これらは実施例2以降においても同様である。また、2次乾燥は、以降の実施例の1次乾燥条件が異なるため、最終的にキュアー条件を同列にして評価する目的で行った。
(実施例2)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を3秒間とし、その後の1次乾燥において110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が4.2質量%であるHEPA濾材を得た。
(実施例3)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を15秒間とし、その後の1次乾燥において140℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が5.8質量%であるHEPA濾材を得た。
(実施例4)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を11秒間とし、その後の1次乾燥において110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が7.4質量%であるHEPA濾材を得た。
(実施例5)
実施例1において、バインダーをスチレン/アクリル酸ブチルであるスチレン-アクリル酸エステル樹脂バインダー(JSR社製、試作品名B)とし、湿紙に対する含浸付与時間を8秒間とし、その後の1次乾燥において145℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が5.9質量%であるHEPA濾材を得た。
(実施例6)
実施例1において、完全鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−117)とフッ素系撥水剤(共栄社化学社製、ライトガードT−10)とを固形分質量比100/30に混合したものをバインダーとし、湿紙に対する含浸付与時間を8秒間とし、その後1次乾燥において145℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着分が6.0質量%であるHEPA濾材を得た。
(実施例7)
実施例1において、スチレン/アクリル酸2−エチルヘキシルであるスチレン-アクリル酸エステル樹脂バインダー(JSR社製、試作品名A)とフッ素系撥水剤(共栄社化学社製、ライトガードT−10)とを固形分質量比100/25に混合したものをバインダーとし、湿紙に対する含浸付与時間を8秒間とし、その後1次乾燥において145℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着分が5.9質量%であるHEPA濾材を得た。
(比較例1)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を20秒間とし、その後の1次乾燥において110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が5.2質量%であるHEPA濾材を得た。
(比較例2)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を1秒間とし、その後の1次乾燥において110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が4.0質量%であるHEPA濾材を得た。
(比較例3)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を8秒間とし、その後の1次乾燥において150℃の熱風乾燥機で5分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が6.6質量%であるHEPA濾材を得た。
(比較例4)
実施例1において、湿紙に対する含浸付与時間を15秒間とし、その後の1次乾燥において110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥して絶乾とした以外は、実施例1と同様にして坪量70g/m、バインダー付着率が5.2質量%であるHEPA濾材を得た。
実施例及び比較例の濾材について次の試験を行った。
(1)バインダー付着率
10cm×10cmサイズの濾材サンプルについて550℃2時間加熱処理を行った後の質量減量分を求め、(数1)バインダー付着率=質量減量分/濾材サンプル質量×100(%)により求めた。
(2)バインダー分布
表層バインダー付着率は10cm×10cmサイズの濾材サンプルについてカミソリを使って表層を掻き取ってサンプル全質量の1/3質量まで掻き取った分、中層バインダー付着率は残りのサンプルからさらにサンプル全質量の1/3質量まで掻き取った分、裏層バインダー付着率は残り1/3の残量分について、各々550℃2時間加熱処理を行った後の質量減量分を求め、(数2)各層のバインダー付着率=各質量減量分/各層の濾材質量×100(%)により、各層のバインダー付着率とした。
(3)撥水性
撥水性は、MIL‐STD‐282に準拠して測定した。
(4)中層剥離性評価
3cm×20cmの大きさの試料について定規を用いて、長手方向に直角に1mm厚の定規を当てて2cmピッチでひだ折り加工を行った。このひだ折り加工した試料の折り端面を観察し、中層で層間剥離しなかったものは○、層間剥離したものは×と評価した。
(5)圧力損失
自製の装置を用いて、有効面積100cmの濾材に面風速5.3cm/secで通風したときの圧力損失を微差圧計で測定した。自製の装置は、MIL−F−51079Dに準ずる測定を行うことができる。
(6)0.3−0.4μmDOP透過率
ラスキンノズルで発生させた多分散DOP粒子を含む空気を、有効面積100cmの濾材に面風速5.3cm/secで通風したときの上流及び下流の個数比からDOPの透過率を、リオン社製レーザーパーティクルカウンターを使用して測定した。なお、対象粒径は、0.3−0.4μmとした。
(7)PF値
濾材のフィルタ性能の指標となるPF値は、(1)、(2)のデータを使って(数3)から求めた。PF値が高いほど、同一圧力損失で低透過率又は同一透過率で低圧力損失を示す。
Figure 0005426589
これらの試験の測定結果を表1に示す。
Figure 0005426589
比較例1は中層バインダー付着率が4質量%を超えていて表層又は裏層のバインダー付着率が中層のバインダー付着率の2倍未満でありバインダー分布が比較的均一である例である。これに対し、実施例1〜5は、バインダー液の含浸時間や乾燥時の熱マイグレーションを使って本願発明の規定内にバインダー分布を制御した例であり、撥水剤を使用しなくてもいずれも高い撥水性を示した。一方、比較例2は中層バインダー付着率が1.5質量%未満の例であるが、撥水性は改善されず中層剥離性も悪化した。比較例3は表層バインダー付着率が10質量%を超えた例であり、撥水性は高いもののDOP透過率は増大してPF値が低下した。比較例4は表層又は裏層のバインダー付着率が中層のバインダー付着率の2倍未満の例であり、撥水性の向上がほとんど見られなかった。実施例6〜7は、撥水剤を併用した例であり、少量の撥水剤の添加であってもいずれも高い撥水性を示した。

Claims (4)

  1. ガラス短繊維を主体としたエアフィルタ用濾材において、
    濾材全体のバインダー付着率が4〜8質量%であり、かつ、前記濾材の一方の面から厚さ方向1/3の領域を領域A1とし、前記濾材の反対面から厚さ方向1/3の領域を領域A2とし、領域A1と領域A2との間の残りの厚さ方向1/3の中間領域を領域Bとしたとき、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上であるバインダー分布を有し、前記バインダーが、疎水性合成樹脂系バインダーであることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
  2. 前記疎水性合成樹脂系バインダーが、モノマー成分としてアクリル酸ブチルモノマー若しくはアクリル酸2−エチルへキシルの一方又は両方を含有する、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂又はアクリル酸エステル共重合樹脂であることを特徴とする請求項に記載のエアフィルタ用濾材。
  3. 撥水剤が付着していることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアフィルタ用濾材。
  4. ガラス短繊維を主体としたエアフィルタ用濾材において、
    濾材全体のバインダー付着率が4〜8質量%であり、かつ、前記濾材の一方の面から厚さ方向1/3の領域を領域A1とし、前記濾材の反対面から厚さ方向1/3の領域を領域A2とし、領域A1と領域A2との間の残りの厚さ方向1/3の中間領域を領域Bとしたとき、領域A1及び領域A2でのバインダー付着率が各々5〜10質量%であり、領域Bでのバインダー付着率が1.5〜4質量%であり、かつ、領域A1でのバインダー付着率又は領域A2でのバインダー付着率の少なくともいずれか一方が、領域Bでのバインダー付着率に対して2倍量以上であるバインダー分布を有し、前記バインダーが、親水性樹脂バインダーであり、かつ、撥水剤が該親水性樹脂バインダーと併用されていることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
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