以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[第一の実施形態]
図1〜図3は、第一の実施形態に係るインクジェットヘッド保守装置を備えたラインヘッド型カラー(4色刷り)印刷機11(以下、印刷機11と記載)の連続紙Wの走行方向に対して直角な断面を表わした概略図である。また、図4は、図1のX−X断面矢視図であり、印刷機11の概要を示す内面図である。さらに、図5は、図1のY−Y断面矢視図であり、各色の異なるインクを吐出する4つのインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fを下から見上げた図である。
印刷機11には、印刷媒体である連続紙Wの走行方向と平行に設けられている左右1組のフレーム111,112に設けられた図示しないブラケットに、シアンのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH110、マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH120、イエローのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH130、ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH140が取付けられている。図示しない給紙部及び連続紙Wに張力を与えるインフィード部からガイドローラー201〜209によって案内される連続紙Wに対して、前記4つのインクジェットヘッドユニットによって、矢印Kで示す連続紙Wの走行方向上流側から順に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクによる重ね刷りが行われる。印刷機11によって印刷された連続紙Wは、図示しない紙引きローラを通り、図示しない後処理装置によって所定の寸法にカットされ、必要に応じて折り畳まれて印刷物となる。
印刷機11のガイドローラー203〜207は、連続紙WをインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面F直下の所定の位置に案内する案内手段を担っており、その軸端部を枠Tに回転自在に支持されている。そして印刷機11のフレーム111と112にブラケットを介して取付けられた4本のエアーシリンダーVのロッドに枠Tは取付けられている。4本のエアーシリンダーVのロッドを同時に押出し、あるいは引込みさせることによって枠Tを垂直方向に上昇、あるいは下降させることができる。
枠Tを上昇させると、ガイドローラー203〜207は、その周面がインク吐出面F近傍の所定の位置a(図1参照)に移動して、該ガイドローラー203〜207によって案内される連続紙Wをインク吐出面F直下の印刷が行われる印刷位置に案内することができ、枠Tを下降させると、ガイドローラー203〜207は、インク吐出面Fから隔離した位置b(図2,図3参照)に移動して、インク吐出面F周囲にスペースを形成し、インク吐出面Fのメンテナンスを行うことが可能となる。
少なくとも後述する払拭手段Bが、インク吐出面Fを払拭するとき、及びキャップ手段Cがインク吐出面Fを覆うときには、ガイドローラー203〜207を位置bに移動させる。
印刷機11の各色のインクを吐出するインクジェットヘッドユニット、例えば、シアンのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH110は、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH111〜H114を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH010に取付けることによって構成されている(図5参照)。支持プレートH010には、インクジェットヘッドH111〜H114の各インク吐出面Fに合わせた抜き穴が設けてあり、各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。
連続紙Wの幅方向において、印刷に不連続が生じないようにするためには、連続紙Wの幅方向で隣り合うインクジェットヘッドの、図5において網かけを施して示したインク吐出面Fのノズル範囲Fhを、連続紙Wの幅方向で多少オーバーラップさせる必要がある。
したがって、インクジェットヘッドユニットH110の隣り合うインクジェットヘッドH111とH112,H112とH113,H113とH114を互いに連続紙Wの走行方向に少なくともその筐体の短辺の長さ分ずらすことによって、上述の通りノズル範囲Fhが連続紙Wの幅方向で必要なオーバーラップが得られる分、筐体の長辺(連続紙Wの幅方向)をオーバーラップさせて配置している。なお、本実施形態の印刷機11では、インクジェットヘッドユニットH110の各インクジェットヘッドH111〜H114は連続紙Wの走行方向(搬送方向)に対して直角に配置されており、かつ、連続紙Wの走行方向でインクジェットヘッドH111に対してH112を下流側に、インクジェットヘッドH112に対してH113を上流側に、インクジェットヘッドH113に対してH114を下流側に、4つのインクジェットヘッドを連続紙Wの走行方向で交互にずらして配置している。
マゼンタのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH120もインクジェットヘッドユニットH110と同様に、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH121〜H124を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH020に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH121〜H124の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、隣り合うインクジェットヘッドH121とH122,H122とH123,H123とH124を互いに連続紙Wの走行方向にずらすことによって、ノズル範囲Fhが連続紙Wの幅方向で必要なオーバーラップが得られる分、筐体の長辺(連続紙Wの幅方向)をオーバーラップさせて配置している。そして、インクジェットヘッドユニットH120は、インクジェットヘッドユニットH110の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
イエローのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH130も、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH131〜H134を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH030に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH131〜H134の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、隣り合うインクジェットヘッドH131とH132,H132とH133,H133とH134を互いに連続紙Wの走行方向にずらすことによって、ノズル範囲Fhが連続紙Wの幅方向で必要なオーバーラップが得られる分、筐体の長辺(連続紙Wの幅方向)をオーバーラップさせて配置している。そしてまた、インクジェットヘッドユニットH130は、インクジェットヘッドユニットH120の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッドユニットH140も、連続紙Wの幅に対して短いインクジェットヘッドH141〜H144を連続紙Wの幅方向に並べて支持プレートH040に取付けることによって構成されており、インクジェットヘッドH141〜H144の各インク吐出面Fは連続紙Wの上面に平行に向き合うようになっている。そして、隣り合うインクジェットヘッドH141とH142,H142とH143,H143とH144を互いに連続紙Wの走行方向にずらすことによって、ノズル範囲Fhが連続紙Wの幅方向で必要なオーバーラップが得られる分、筐体の長辺(連続紙Wの幅方向)をオーバーラップさせて配置している。そしてまた、インクジェットヘッドユニットH140は、インクジェットヘッドユニットH130の連続紙W走行方向下流側の隣に設置されている。
印刷機11には、インクジェットヘッド保守装置である払拭手段B、キャップ手段C1及びそれらを待機位置r(図1参照)と折返し位置s(図3参照)とへ移動させる移動手段Gと補助フレーム113が設けられている。
本実施形態では、印刷機11の連続紙Wの走行経路を挟んで、フレーム111が設けられている側が、印刷中に作業者が印刷機11の操作を行う操作側である。そして、補助フレーム113は、連続紙Wの走行経路を挟んで操作側と反対の側、すなわち印刷機11のフレーム112が設けられている側にフレーム112と平行に設けられている。フレーム112と補助フレーム113との間には、後述するように配置された払拭手段B及びキャップ手段C1の略全体が収容できる間隔がとられている。
移動手段Gは、後述する4つの払拭手段Bと1つのキャップ手段C1とを一体として、連続紙Wの幅方向で、インク吐出面Fと平行に、矢印Eの向きに移動させ(図2参照)、インクジェットヘッドユニットH110〜H140が連続紙Wに印刷可能な状態、すなわち払拭手段B及びキャップ手段C1が連続紙Wの走行を妨げないフレーム112と補助フレーム113の間に定めた待機位置r(図1参照)と、矢印Dの向きに移動させて、払拭手段BがインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fの下を通過して、ブレードB1がインクジェットヘッドユニットH110〜H140の矢印D方向端部を越えた折返し位置s(図3参照)の2位置に停止することが可能である。
そして、キャップ手段C1は、折返し位置sに停止しているとき、後述するキャップ手段C1の各囲い部材C30の囲む範囲が、対応する直上の各インクジェットヘッドH111〜H114,H121〜H124,H131〜H134,H141〜H144のインク吐出面Fのノズル範囲Fhと一致するように設けられている。
移動手段Gは、2つの案内移動手段G10と、取付け台G21及び枠G22からなっている。
2つの案内移動手段G10は、連続紙Wの走行方向に対して直角な方向で、インクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fと平行に、印刷機11のフレーム111からフレーム112、そして補助フレーム113に渡って同じ高さに、取付け台G21及び枠G22を取付ける間隔をおいて、設けられている。案内移動手段G10は、それぞれ移動部材G100を有しており、取付け台G21及び枠G22がそれぞれ2つの案内移動手段G10の移動部材G100に渡って取付けられることによって、2つの移動部材G100は連結されている。
案内移動手段G10は、取付け台G21及び枠G22を待機位置rと折返し位置sとへ移動させる駆動機能と、前記移動の経路を定め、取付け台G21と枠G22及びそれらに設けられた払拭手段Bとキャップ手段C1の重量を支えるガイド機能の両機能を備えている。
案内移動手段G10は、例えば、駆動機能を担うロッドレスエアーシリンダーとガイド機能を担う直動ベアリングを組合わせて構成したものである。組合わされたロッドレスエアーシリンダー及び直動ベアリングの移動テーブルが移動部材G100に相当し、空気圧によって駆動されて移動部材G100は移動可能である。
2つの案内移動手段G10の移動部材G100を、同時に、かつ、同じ方向に駆動することによって、移動部材G100とともに取付け台G21及び枠G22が一体となって駆動する。
前記取付け台G21には4つの払拭手段Bが取付けられており、枠G22にはキャップ手段C1が取付けられている。
払拭手段B及びキャップ手段C1が待機位置rにあるとき、払拭手段Bが設けられている取付け台G21がインクジェットヘッドユニットH110〜H140に近い側に、キャップ手段C1が設けられている枠G22がインクジェットヘッドユニットH110〜H140に対して取付け台G21より遠い側に配置されている。
払拭手段Bとキャップ手段C1とは適宜な間隔をおいて配置されており、払拭手段B及びキャップ手段C1が折返し位置sに停止しているとき、すべての払拭手段BはインクジェットヘッドユニットH110〜H140の下を通り抜けて印刷機11の操作側から作業者の手が届く位置となる。
払拭手段Bは、インクジェットヘッドユニットH110〜H140に対応して4つ設けられている。図6に図1のZ部詳細図である払拭手段Bの断面図を示す。各払拭手段Bは、ブレードB1、ブレードB1を取付けるケースB3、ブレードB1が取付けられたケースB3を角変位させることによってブレードB1を変位(本実施形態ではブレードB1も角変位)させるブレード変位機構B4からなっている。
そして、各払拭手段BのブレードB1のインク吐出面Fを払拭する縁は、インク吐出面Fに平行で、インクジェットヘッドユニットH110〜H140それぞれのインク吐出面Fの連続紙Wの走行方向長さL(図5参照)を払拭可能な長さを有している。なお、本実施形態では、ブレードB1のインク吐出面Fを払拭する縁は連続紙Wの走行方向と平行であるが、連続紙Wの走行方向に平行と限られたものではない。
払拭手段Bを取付ける取付け台G21には、払拭手段BのケースB3を位置決めし、かつ、角変位可能に支持するためにブロックG31とピンG30が設けられている。ブロックG31は1つの払拭手段Bに対して2つ平行に設けられており、ケースB3の連続紙W走行方向長さよりわずかに広い間隔で取付け台G21に固定されている。ケースB3が2つのブロックG31の間に配置されることによって、ブレードB1が対応するインクジェットヘッドユニットに対して連続紙W走行方向所定の位置となる。また、前記2つのブロックG31の向き合う面には、連続紙W走行方向と平行にピンG30が取付けられており、ケースB3の後述する足B31が嵌まるようになっている。
ケースB3は上面が開放された箱形で、取付け台G21に取付けられてブレード変位機構B4の作用を受け、ケースB3とともにブレードB1を角変位させる。そして、本実施形態では、ケースB3は、ブレードB1によって払拭されたインクを受けるインク受けも兼ねている。ケースB3は、底部の両端に逆U字型の溝を設けた足B31を有し、前述のブロックG31に設けられたピンG30に足B31の前記溝が嵌まることによって、ピンG30の軸心を中心として角変位可能に設けられている。足B31はブレードB1を含むケースB3の重心位置の直下よりピンG30の軸心が図6において右側になる位置、すなわち、ケースB3がブレードB1を含む重さによってピンG30の軸心を中心に図6において左方向に角変位して後述する払拭位置でない位置(以下、非払拭位置と記す)pへ傾くようになっている。また、ケースB3の両端面には耳B32が取付けられており、耳B32は、ケースB3が非払拭位置pにあるとき、後述するブレード変位機構B4の2つのエアーシリンダーB41のロッドに略直角となる向きに固定されている。
また、ケースB3の内側には、ブレードB1の長さと略同じ長さの板状部材であるブラケットB30が固定されている。ブラケットB30は、ケースB3の底面に対して略直角に取付けられている。
ブレードB1は可撓性を有する材質、例えば、適宜な厚みのゴム板で作られており、その高さ方向の下側略半分をブラケットB30に沿わせてボルト等によって取付けられており、ブレードB1の高さ方向の上側略半分は、その可撓性によって撓むことができる。
ブレード変位機構B4は、2つのエアーシリンダーB41及び1つのプランジャーB42によって構成されている。プランジャーB42は、シリンダーから突出している棒状ピストンに、シリンダーに内蔵されている圧縮バネによって押出し方向の弾力性が加えられている。
プランジャーB42及びエアーシリンダーB41は、それらシリンダーが略水平、かつ、連続紙Wの走行方向に直角な向きに配置されており、プランジャーB42の棒状ピストンの押出し方向と、エアーシリンダーB41のロッドの押出し方向は対向している。
エアーシリンダーB41のロッドを引込めることによって、ケースB3は、側面B301をプランジャーB42の棒状ピストンによって押されるとともに、ブレードB1を含む重さによってピンG30の軸心を中心として角変位し、ケースB3の側面B301に向かい合う側面の縁B302あるいは縁B303が取付け台G21に接触してなる非払拭位置p(図6において外形が実線で描かれた位置)と、エアーシリンダーB41のロッドを押出すことによって、該ロッドがケースB3に設けられた耳B32を押し返し、側面B301がプランジャーB42の棒状ピストンを押し縮めて、ケースB3をピンG30の軸心を中心に角変位させて、ブレードB1が略垂直となる払拭位置q(図6において外形が二点鎖線で描かれた位置)とを選択することが可能である。
移動手段Gによって払拭手段Bが水平方向に移動してインク吐出面Fの下を通過する際、ケースB3が非払拭位置pにあれば、ブラケットB30に取付けられたブレードB1は、図2に破線で示すようにインク吐出面Fに接触することがなく、払拭位置qにあれば、図2に実線で示すようにブレードB1の上端縁がインク吐出面Fに接触し、ブレードB1が適度に撓んだ状態となる。図6の一点鎖線hはインク吐出面Fの高さ方向の位置を示している。
なお、本実施形態では、移動手段Gによって払拭手段Bを連続紙Wの走行方向に対して直角な方向に移動させることで、払拭手段Bがそれぞれ対応するインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fを払拭可能であるが、インクジェットヘッドユニットが連続紙Wの幅方向(連続紙Wの走行方向に対して直角な方向)に対して角度αをなして設けられているときは、払拭手段Bを連続紙Wの幅方向に対して角度αの方向に移動させてもよい。すなわち、払拭手段Bを移動させる方向は、インクジェットヘッドユニットのインク吐出面を払拭可能であれば、限定されるものではない。
また、ケースB3が非払拭位置pにあるとき、エアーシリンダーB41は、その引込まれたロッド先端と耳B32との間にわずかな隙間を生じる位置にあり、かつ、プランジャーB42は、その突出しきった棒状ピストンと、該ピストンが対向するケースB3の側面B301との間にわずかな隙間を生じる位置に調整されており、ケースB3は、ブレード角変位機構B4とはつながっておらず、ブレードB1、ブラケットB2等を含む重さによって足B31の溝がピンG30に嵌まり、そして、縁B302あるいは縁B303が取付け台G21に接触した状態となっている。したがって、ブレードB1が取付けられているケースB3は、足B31の逆U字型の溝の開放されている方向と逆の方向、すなわち、略斜め上方に対しては規制がない、非規制状態である。
そして、エアーシリンダーB41のロッドを押出して、ケースB3が払拭位置qにあるとき、プランジャーB42の棒状ピストンはケースB3の側面B301によって押し縮められて、プランジャーB42のシリンダー端部に側面B301が当たってストッパーとなり、ブレードB1が略垂直となる払拭位置qの位置を決めている。
なお、エアーシリンダーB41のロッドを引込めて、ケースB3が払拭位置qから角変位して非払拭位置pへ到る際、プランジャーB42の棒状ピストンはケースB3の側面B301を押して、ブレードB1及びケースB3の重さによる角変位を補助して、非払拭位置pへ向かわせるものである。したがって、プランジャーB42は省略することも可能であり、ケースB3が払拭位置qとなる位置を決めるためには、例えば、ボルト等によるストッパーを設ければ足りる。
また、払拭手段のブレード変位機構の他の実施例を図7に示す。図7は、払拭手段BvのブレードBv1に直角な断面図である。この実施例では、払拭手段BvのケースBv3は、ケースBv3の側面Bv301と側面Bv304の間隔よりわずかに広い間隔である取付け台G21の壁面G211と壁面G212の間に配置されることによって、移動手段Gの移動方向の位置決めがされ、ケースBv3の連続紙W走行方向長さよりわずかに広い間隔で取付け台G21に固定されている2つのブロックG31の間にケースBv3が配置されることによって、ブレードBv1が対応するインクジェットヘッドユニットに対して連続紙W走行方向所定の位置となる。ブレードBv1は払拭手段BのブレードB1と同様に、ケースBv3の底面に対して略直角に取付けられているブラケットBv30にボルト等によって取付けられている。
ケースBv3は、その下面が後述するブレード変位機構Bv4の2つのカムBv44のカム面に載っている。
ブレード変位機構Bv4は、ケースBv3の両端部近傍に設けられた2つのエアーシリンダーBv41と2つのカムBv44によって構成されている。カムBv44は、取付け台G21のブロックG31の向き合う面に連続紙W走行方向と平行に取付けられた軸Bv43を介して取付けられており、軸Bv43を中心に角変位可能である。エアーシリンダーBv41のロッドは、軸Bv43に直角な向きでロッド先端部をカムBv44の側面にピンBv45によってつなげてある。したがって、図7でエアーシリンダーBv41のロッドを押出すと、カムBv44は右方向に角変位し、カム面がケースBv3の下面をブレードBv1と共に上方に押し上げる。そして、エアーシリンダーBv41のロッドを引込めると、カムBv44は左方向に角変位し、カム面のケースBv3下面に接する部分が下がるので、ケースBv3はブレードBv1と共に、それらの重さによって下がる。このように、エアーシリンダーBv41のロッドを伸縮させることによって、ブレードBv1はケースBv3とともに垂直方向上下に変位して、払拭位置q(図7において外形が二点鎖線で描かれた位置)と非払拭位置p(図7において外形が実線で描かれた位置)とを選択可能となる。図7の一点鎖線hは、インク吐出面Fの高さ方向の位置を示している。また、ブレードBv1が取付けられているケースBv3は、取付け台G21上で、上方に対しては規制がない、非規制状態である。
図8に、図1のAX−AX断面矢視図を示す。
キャップ手段C1は、ベースプレートC11と、ベースプレートC11の上面に配置された4つの底板C20と、弾性を有する材質で作られたインクジェットヘッドの数と同数(本実施形態では16)の囲い部材C30と、ベースプレートC11を垂直方向に移動させるキャップ昇降機構を構成する5つのエアーシリンダーC41とからなっている。
エアーシリンダーC41は、ロッドを垂直とする向きで、ロッドの先端をベースプレートC11の四隅と中央部に固定し、移動手段Gの枠G22にシリンダー側を固定して設けてあり(図1参照)、5つのエアーシリンダーC41のロッドを一斉に押出し、あるいは引込めることによって、ベースプレートC11を垂直方向上下に移動させることができる。ベースプレートC11は、板状であるか、あるいは、底板C20を保持可能であれば枠組みだけでもよい。
底板C20は、それぞれ各色のインクジェットヘッドユニットH110〜H140に対応しており、ベースプレートC11の上面に設けられた位置決めピンC110に、底板C20に設けられた位置決め穴C200が嵌まることによって予め決められた位置に配置されている。そして、底板C20上面に各インクジェットヘッドH111〜H114,H121〜H124,H131〜H134,H141〜H144に対応する囲い部材C30が予め決められた位置に接着剤等で底板C20との間に隙間がないように貼付けられてキャップを形成している。
底板C20に貼付けられた囲い部材C30は、各インクジェットヘッドのインク吐出面Fのノズル範囲Fhを囲うように形成されており、例えば、適宜な厚みのゴム板を切り抜いたものとして構成されている。移動手段Gによって、キャップ手段C1がインクジェットヘッドユニットH110〜H140下の所定の位置、すなわち、折返し位置sへ移動して停止した後、5つのエアーシリンダーC41のロッドを同時に押出すことによって、ベースプレートC11を垂直方向上方に移動させると(図3の破線で示す位置)、囲い部材C30は各インクジェットヘッドのインク吐出面Fのノズル範囲Fhの外側に密着し、囲い部材C30と底板C20によって形成されるキャップによってノズル範囲Fhを外気から遮断する。なお、囲い部材C30は、少なくともインク吐出面Fに密着するために弾性変形し得る厚みがあれば、薄い方が好ましい。
キャップ手段C1が待機位置rにあるときには、囲い部材C30及び底板C20の清掃を行うことができる。また、清掃は、ベースプレートC11から囲い部材C30が貼付けてある底板C20を外して行うこともできる。
なお、4枚の底板を一体として、エアーシリンダーC41のロッドの先端を底板の四隅と中央部に固定し、底板にベースプレートを兼ねさせてもよい。その場合、ベースプレート及び位置決めピンを省略できる。
以上に記載の払拭手段B、キャップ手段C1及び移動手段Gは、例えば、以下のように動作させる。
印刷が行われていない状態では、印刷機11のガイドローラー203〜207は配置bに下がっている。連続紙Wが印刷機11の内部に通された状態であれば、連続紙Wもまた、自重によってガイドローラー203〜207の周面に載って下がっている。そして、すべてのインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fのノズル範囲Fhは、ノズル内のインクの乾燥を防ぐとともに、埃等の付着を防ぐためにキャップ手段C1の底板C20と囲い部材C30からなるキャップによって覆われている(図3でキャップ手段C1が破線で示された状態)。
まず、印刷を始めるにあたり、キャップ手段C1の5つのエアーシリンダーC41のロッドを引込み、ベースプレートC1とその上面に配置されている底板C20及び囲い部材C30を垂直方向下方に移動させ、囲い部材C30をインク吐出面Fから隔離させる(図3でキャップ手段C1が実線で示された状態)。
上記折返し位置sにあるキャップ手段C1と払拭手段Bを、移動手段Gの移動部材G100を図2の矢印Eの方向へ移動させることで待機位置rへと移動させる。その際、払拭手段BのケースB3は非払拭位置pにしておき(図2で払拭手段Bが破線で示された状態)、移動中にブレードB1をインク吐出面Fに接触させない。
キャップ手段C1及び払拭手段Bが待機位置rへの移動を完了した後、インクジェットヘッドユニットH110〜H140でインクパージを行う。インクパージに際しては、例えば、図9に示すように、インクパージによって吐出されるインクを受ける適宜のパージ受けMをインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fの下方の位置vに位置させて、インクを受ける。インクパージ終了後、パージ受けMを適宜な移動手段によって収納位置u(図9でインク受けMが破線で示された位置)へ収納する。
上記インクパージの間に、又はインクパージの後に4つの払拭手段BのエアーシリンダーB41のロッドを押出して、4つのケースB3を払拭位置qに位置させる。そして、移動手段Gの移動部材G100を図2の矢印Dの方向へ移動させて払拭手段B及びキャップ手段C1を折返し位置sに向けて移動させる。この移動の間に、ブレードB1は、その上端縁が、各インクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fに接触して、上端部近傍が適度に撓んだ状態でインク吐出面Fを払拭し(図2で払拭手段Bが実線で示された状態)、インクパージによってインク吐出面Fに付着しているインクのほとんどを、インク受けを兼ねるケースB3に収容する。また、このインク吐出面Fに付着しているインクは、ブレードB1とインク吐出面F間の潤滑作用を果たし、ブレードB1がインク吐出面Fに膠着してキズをつけることを防ぐ。
払拭手段Bがすべてのインク吐出面Fの払拭を終えて、キャップ手段C1とともに折返し位置sに到着した後、払拭手段BのエアーシリンダーB41のロッドを引込める。すると、ケースB3は、プランジャーB42及び自重によって傾斜位置pとなる。この状態で移動手段Gの移動部材G100を移動させてキャップ手段C1及び払拭手段Bを再度待機位置rへ移動させる。その際、払拭手段BのケースB3は傾斜位置pとしてあるので、インクの付着しているブレードB1が移動中にインク吐出面Fに接触することはない。
払拭手段B及びキャップ手段C1が待機位置rへの移動を完了した後、印刷機11の4本のエアーシリンダーVのロッドを同時に押出し、枠Tに支持されているガイドローラー203〜207を位置aに移動させて、印刷を開始する。
印刷が終了した後、印刷機11の4本のエアーシリンダーVのロッドを同時に引込み、枠Tに支持されているガイドローラー203〜207を位置bに移動させる。
払拭手段BのケースB3を非払拭位置pとした状態のまま、移動手段Gの移動部材G100を移動させて払拭手段B及びキャップ手段C1を折返し位置sに向けて移動させる。このときケースB3は非払拭位置pであるからブレードB1はインク吐出面Fに接触することはない。
払拭手段B及びキャップ手段C1が折返し位置sに到着して停止後、キャップ手段C1の5つのエアーシリンダーC41のロッドを押出し、ベースプレートC11、底板C20及び囲い部材C30を垂直方向上方に移動させ、囲い部材C30をインク吐出面Fに押し当て、ノズル範囲Fhを底板C20と囲い部材C30からなるキャップによって覆い、外気から遮断する。
また、払拭手段B及びキャップ手段C1が折返し位置sにあるとき、払拭手段Bは、インクジェットヘッドユニットH110〜H140の下部を通り抜けて、印刷機11の操作側に出現している。この位置で、作業者によって、払拭手段BのブレードB1に付着しているインク等の清掃を行うとともに、ケースB3に収容されているインクの回収を行う。ケースB3は非払拭位置pにあるので、その重さによって足B31の溝がピンG30に嵌まり、縁B302あるいは縁B303が取付け台G21に接触した状態であり、エアーシリンダーB41のロッド先端及びプランジャーB42の棒状ピストンから離れているので、ケースB3を非規制方向である略斜め上方に持ち上げることによって、足B31の溝の開放されている部位からピンG30が外れ、ケースB3はそれに取付けられているブレードB1と一体で容易に取付け台G21から取り外すことができるので、インクの回収、清掃作業は極めて容易である。
なお、上記動作では、払拭手段Bの清掃作業を印刷終了後キャップ手段C1がノズル範囲Fhを覆った後に行っているが、払拭手段Bが、インク吐出面Fの払拭を終えた直後に行ってもよい。すなわち、払拭手段Bがインク吐出面Fの払拭を終えて、キャップ手段C1とともに折返し位置sに到着して停止したとき、払拭手段BのエアーシリンダーB41のロッドを引込め、ケースB3をプランジャーB42及びケースB3等の重さによって非払拭位置pとして、ケースB3とそれに取付けられているブレードB1と一体で取付け台G21から取り外して行ってもよい。
他方、4つのインクジェットヘッドユニットH110〜H140のうち、選択された任意のインクジェットヘッドユニットのみを払拭手段Bによって払拭することもできる。
例えば、印刷中に4色のインクジェットヘッドユニットH110〜H140のうち、いずれか1色のインクジェットヘッドユニットにインクの吐出不良が発生した場合には、印刷を中断して、インクの吐出不良が発生したインクジェットヘッドユニットでインクパージを行い吐出不良の原因となった異物をノズルから排出させた後、そのインクジェットヘッドユニットに対応する払拭手段Bのみ、そのエアーシリンダーB41のロッドを押出してケースB3を払拭位置qに位置させて、待機位置rから折返し位置sに向けて移動させる。この移動の間に、払拭位置qにあるブレードB1の上端縁が、インクパージを行ったインクジェットヘッドユニットのインク吐出面Fに接触してインク吐出面Fを払拭する。インクパージを行わなかったインクジェットヘッドユニットに対応する払拭手段Bは非払拭位置pとしておくことによって、それらインクジェットヘッドユニットのインク吐出面FにブレードB1は接触することはない。なお、この際、インクパージに先立って、ガイドローラー203〜207を位置bに移動させ、また、パージ受けMをインクジェットヘッドユニットH110〜H140のインク吐出面Fの下方の位置vに位置させることは、勿論である。
この払拭動作では、インクパージを行わなかったインクジェットヘッドユニットのインク吐出面Fは、インクによって湿潤していない乾燥した状態にある可能性があるが、ブレードB1による払拭が行われないので、ブレードB1がインク吐出面Fに膠着してキズをつける虞がない。すなわち、吐出不良が発生していないインクジェットヘッドユニットが、ブレードによる払拭によってインク吐出面にキズがつくことを防ぐために、当該インクジェットヘッドユニットのインク吐出面をインクによって湿潤させる目的でインクパージを行うインクの無駄をなくすことができる。
なお、払拭手段Bに替えて払拭手段Bvとした場合は、エアーシリンダーBv41のロッドを引込めてケースBv3を非払拭位置pとし、エアーシリンダーBv41のロッドを押出して払拭位置qとする。また、ケースBv3は上方に対しては規制がない非規制状態であるから、折返し位置sにあるとき上方に持ち上げることによってブレードBv1と一体で取付け台G21から取り外すことができる。
[第二の実施形態]
次に、キャップ手段の昇降機構の他の実施形態について説明する。
以下に説明する第二の実施形態では、キャップ手段のベースプレートを垂直方向に移動させる昇降機構を構成するエアーシリンダーを移動手段の枠に取付けず、印刷機のフレーム間に渡したステーに取付けたことが、第一の実施形態に係るキャップ手段C1と異なる。したがって、払拭手段B及び移動手段Gの要部に変更はなく、また、キャップ手段C1と同じ構成個所は、同じ符号を付し、説明を簡略とするか、あるいは省略する。
図10は、キャップ手段C1に替えてキャップ手段C2とした印刷機11を連続紙Wの走行方向に平行な方向から見た内面図である。また、図11は、図10のAY―AY断面矢視図である。なお、ガイドローラー203〜207は、インクジェットヘッドのインク吐出面Fから離隔させた位置bとして描かれている。
印刷機11には予め、フレーム111と112の間に渡って3本のステーJ1,J2,J3を設ける。
ステーJ1は、インクジェットヘッドユニットH110の連続紙Wの走行方向上流側に、ステーJ2は、インクジェットヘッドユニットH120とインクジェットヘッドユニットH130の間に、ステーJ3は、インクジェットヘッドユニットH140の連続紙Wの走行方向下流側にそれぞれ配置されている。
キャップ昇降機構を構成する5つのエアーシリンダーC42は、ロッドを垂直とする向きで、前記ステーJ1に2つ、J2に1つ、J3に2つ、後述する爪C60に対応する位置で、各ステーJ1〜J3の下面にシリンダー側を固定して設けられている。該エアーシリンダーC42の下方に突出している各ロッドの先端部には、適宜な径のフランジC50が取付けてあり、5つのエアーシリンダーC42のロッドを押出して、フランジC50を下げた(図10,図11において実線で示す)状態でキャップ手段C2が待機位置rから折返し位置sに向けて移動すると、ベースプレートC12に設けられた5つの爪C60が、フランジC50上面に位置するようになっている。
図12に爪60とエアーシリンダーC42及びフランジC50の関係を示す。矢印Dは待機位置rから折返し位置sへ移動する方向を示す。なお、ステーは図示を省略している。
爪C60は、ベースプレートC12上面の四隅と中央部に取付けられている。各爪C60は、フランジC50の径の寸法と略同じ寸法の幅の板材で、移動手段Gによる移動方向において、折返し位置s側が開いたU字型の溝を有し、該溝の閉じている側を折曲げてベースプレートC12に取付けることによって、U字型の溝部はベースプレートC12上面との間にフランジC50が入る隙間を有している。
インクジェットヘッドユニットH110〜H140のノズル範囲Fhをキャップ手段によって覆うには、5つのエアーシリンダーC42のロッドを押出した状態で、払拭手段B及びキャップ手段C2を待機位置rから折返し位置sに移動させる(矢印Dが示す方向)。
すると、各爪C60のU字型溝にエアーシリンダーC42のロッドが入り込み、フランジC50が爪C60のU字型溝を有する板材の下側に位置する。そして、払拭手段B及びキャップ手段C2が折返し位置sに位置決めされた後、5つのエアーシリンダーC42のロッドを引込めると、フランジC50が図10,図11において破線で示す位置に上昇して爪C60を上方に引き上げ、ベースプレートC12が垂直方向上方に移動して囲い部材C30がインク吐出面Fに接触し、底板C20と囲い部材C30からなるキャップによってノズル範囲Fhが覆われる。
なお、ベースプレートC12の四隅に取付けられている爪C60のうち、前記矢印Dが示す方向で、先行側にある爪C60のU字型溝部と後行側にある爪C60のU字型溝部とは、そのベースプレートC12上面からの高さに差をつけて設けてある。すなわち先行側を低く、後行側を高くし、かつ、エアーシリンダーC42のフランジC50の位置も先行側の爪C60に対応するものは低く、後行側の爪C60に対応するものは高くすることによって(図11参照)、待機位置rから折返し位置s(矢印Dが示す方向)へ移動の際、先行側の爪C60が後行側の爪C60に対応するエアーシリンダーC42のフランジC50に抵触しないようになっている。
ノズル範囲Fhからキャップによる覆いを除けるには、5つのエアーシリンダーC42のロッドを押出す。すると、底板C20及び囲い部材C30が載ったベースプレートC12は、自重によって爪C60がフランジC50に載って下降し、案内移動手段Gの枠G22上に載る。エアーシリンダーC42のロッドが完全に押出されるとフランジC50上面と爪C60の下面の間に隙間ができるので、払拭手段B及びキャップ手段C2を折返し位置sから待機位置rに移動させる。この移動にともなって、エアーシリンダーC42のロッドは、爪C60のU字型溝の開放側から抜け出る。
なお、移動手段Gの枠G22には、前記ベースプレートC12が昇降機構によって垂直方向上方へ移動する量より長い位置決めピン(図示せず)を設けておき、ベースプレートC12に設けた位置決め穴(図示せず)に挿入させることによって、ベースプレートC12が垂直方向へ上下移動しても折返し位置sからずれることはない。
第二の実施形態では、キャップ手段C2のベースプレートC12及び底板C20、囲い部材C30を垂直方向に移動させる5つのエアーシリンダーC42を、折返し位置sと、待機位置rとを移動する移動手段Gの枠G22に取付けず、印刷機11に設けたステーJ1,J2,J3に取付けているので、5つのエアーシリンダーC42が移動せず、5つのエアーシリンダーC42に接続される空気配管を固定設置できる。
[第三の実施形態]
さらに、キャップ手段の昇降機構の第三の実施形態として、昇降機構を構成する5つのエアーシリンダーのうち、4つのエアーシリンダーを、図7で示した実施形態と同様にロッドを垂直とする向きでロッドの先端をベースプレートの四隅に固定し、移動手段の枠に前記4つのエアーシリンダーのシリンダー側を固定して設ける。そして残る1つのエアーシリンダーは、前述した第二の実施形態において、ベースプレートの中央に取付ける爪に対応するように設ける。すなわち、4つのインクジェットヘッドユニットの中間に印刷機の2つのフレーム間に渡って1本のステーを設け、1つのエアーシリンダーを、ロッドを垂直とする向きで、前記ステーの略中央下面にシリンダー側を取付けて設け、該エアーシリンダーの下方に突出しているロッドの先端部にはフランジを取付けて、該エアーシリンダーの押出されたロッドのフランジ上面に、ベースプレート中央に設けられた1つの爪が挿入されるようにする。爪と前記フランジとの関係は、図12に示したように、前述した第二の実施形態と同じであるから説明を省略する。
第三の実施形態では、印刷機に付加するステーが1本ですみ、かつ、ベースプレート中央部を昇降させるエアーシリンダーを移動手段の枠に設けていないので、移動手段の枠中央部にエアーシリンダーを取付けるための部材を設ける必要がなく、該枠を軽量、簡素化できる。
以上、本発明に係るインクジェットヘッド保守装置が取り得る種々の形態例を説明した。上述した本発明に係るインクジェットヘッド保守装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
すなわち、印刷中の操作性を妨げることがないように、払拭手段及びキャップ手段が退避している側は、連続紙走行経路を挟んで作業者が印刷機の操作を行う側とは反対の側であるが、移動手段によってインクパージを行った後のインク吐出面の払拭を行ってきた払拭手段のブレードは、インクジェットヘッドユニットのインク吐出面を通り過ぎて作業者の手が届きやすい印刷機の操作側へ出現するので、払拭手段のメンテナンスを行うために、作業者は連続紙を供給する給紙部等、あるいは印刷された用紙を処理する後処理部等を迂回して払拭手段の待機位置へ行く必要がなく、インクの付着したブレードや払拭したインクを受けたケースの清掃及びブレードの交換作業を印刷機の操作側で行うことができるので、作業が極めて容易である。
また、払拭手段のブレード、ブレードを取付けたケースは、非払拭位置にあるとき、その重さによってのみ移動手段に載っている非規制状態にあるので、払拭手段のケースは案内移動手段から容易に取外し、取付けが可能であり、印刷機の操作側へ出現した払拭手段のケースをブレードとともに移動手段から取外して、任意の場所でメンテナンスが行えるので、なお作業が行いやすい。
さらに、インクジェットヘッドのインク吐出面を払拭する払拭手段を、各色の異なるインクを吐出するインクジェットヘッドユニット毎に設け、かつ、各払拭手段のブレードをそれぞれブレード変位機構によって個別に変位させるので、ブレードがインク吐出面に接触してインク吐出面を払拭可能な払拭位置と、ブレードがインク吐出面に接触しない非払拭位置とを選択できる。したがって、インクパージを行った後の払拭が必要なインクジェットヘッドユニットに対応する払拭手段のみを選択的に払拭位置にし、インクパージを行わない乾燥した状態にある可能性があるインク吐出面に対応する払拭手段は、ブレードがインク吐出面に接触しないようにできる。これによって、インクによって湿潤していない乾燥した状態にあるインク吐出面にブレードが膠着してインク吐出面をキズつける虞がない。言い換えれば、吐出不良を起こしたインクジェットヘッドユニットのみにインクパージを行わせ、他のインクジェットヘッドユニットに、ブレードとインク吐出面の潤滑のためのインクパージを行わせる必要がないので、インクの無駄を減らすことができる。
またさらに、キャップ手段は、インク吐出面のノズル範囲を外気から遮断すればよいので、前記ノズル面を覆った際にインク吐出面とキャップ内面によって形成される空間を最小にすることが可能となり、キャップ手段を小型化(薄型化)することができる。しかも、インク吐出面とキャップ内面によって形成される空間が狭いので、ノズル内のインク溶媒が蒸発してもわずかな量で空間内が飽和するため、ノズル内のインク溶媒の蒸発を少なくすることができる。また、キャップの清掃の際も、キャップの底部が浅いので、清掃が容易である。
さらにまた、キャップ手段は、所定の折返し位置で移動手段による移動方向において停止した状態で、昇降機構によってそのキャップを垂直方向に昇降させるので、キャップがインクジェットヘッドのインク吐出面を擦ることはなく、また、キャップの位置がインクジェットヘッドのノズル範囲に対してずれることもなく、ノズル範囲をキャップによって確実に覆うことができる。
そして、払拭手段及びキャップ手段を待機位置と折返し位置との間を移動させるとき、及び折返し位置に停止させているときは、連続紙をインクジェットヘッドユニットのインク吐出面直下の所定の位置に案内しているガイドローラーを下方に移動させておくので、インクジェットヘッドユニットを移動させることなく、払拭手段及びキャップ手段がインクジェットヘッドユニットのインク吐出面の下で保守を行うスペースを得ることができる。すなわち、精密に位置決めされて設置されているインクジェットヘッドを移動させないので、それらの位置がずれる虞がない。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、どの実施形態のキャップ手段においても、エアーシリンダーの数は5つに限られたものではなく、キャップ手段の大きさに応じて適宜増減することができる。
また、昇降機構を構成するアクチュエーターについても、略垂直方向に昇降可能であれば、エアーシリンダーに限られたものではない。
以上説明した本発明に係るインクジェットヘッド保守装置は、払拭手段、キャップ手段及び移動手段を有してなっているが、例えば、印刷機の非稼働時間が短く、インク吐出面をキャップで覆う必要がなければ、払拭手段と移動手段とで構成してもよい。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。