JP5417531B2 - 光ファイバ素線の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Description
本願は、2010年6月11日に、日本に出願された特願2010−134387号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
図7は、従来の光ファイバ素線の製造方法で用いられる光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
その結果として、従来の捻り装置の押し圧力や引取りキャプスタンベルトの押圧の範囲でも、光ファイパ素線被覆の変形が大きくなり、場合によっては、一次被覆層とガラスの界面が剥がれる剥離や、一次被覆層が割れる問題が生じる。
また、本発明は、装置を複雑化させたり、線引き速度を遅くすることなく、被覆層の変形や剥離を防止することができ、信頼性の高い光ファイバ素線を効率よく製造することが可能な光ファイバ素線の製造装置を提供することを第二の目的とする。
上記本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際(工程D)には、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加えてもよい。
上記本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際(工程D)には、キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取ってもよい。
上記本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際(工程D)には、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加え;キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取ってもよい。
上記本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、前記光ファイバ素線中間体を形成する際(工程B)の被覆層が、前記光ファイバ裸線に接して配される第一層と、この第一層に重ねて配される第二層とを備え、前記第二層を形成する樹脂のヤング率が、前記第一層を形成する樹脂のヤング率よりも高い構成を採用してもよい。
上記本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、前記被覆層が前記第一層と前記第二層とを有する2層構造を形成する場合、前記第一層を形成した後および前記第二層を形成した後の各々において、前記被覆層が一次硬化されてもよい(工程C)。
本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置は、光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成する紡糸部と;前記光ファイバ裸線の外周に樹脂からなる被覆層を設けて光ファイバ素線中間体を形成する塗布部と;前記光ファイバ素線中間体を形成する前記被覆層を一次硬化させる第一硬化部と;前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する押圧部と;前記光ファイバ素線中間体の押圧された被覆層を二次硬化させる第二硬化部と;を備える。
上記本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置では、前記押圧部が、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加える捻り部を備えていてもよい。
上記本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置では、前記押圧部が、キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取る引取り部を備えていてもよい。
上記本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置では、前記押圧部が、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加える捻り部と;キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取る引取り部と;を備えていてもよい。
これにより、一次硬化後の被覆層に対して押圧することで生じた被覆層の変形や、一次硬化後の被覆層とガラス表面の剥離や一次被覆層の割れが、二次硬化時に修復され、良好な光ファイバ素線が得られる。その結果、本発明の第1の態様に係る光ファイバ素線の製造方法では、線引き速度を遅くすることなく、被覆層の変形や剥離を防止することができ、信頼性の高い光ファイバ素線を効率よく製造できる。
上記本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置では、被覆材を一次硬化させて被覆層を備えた光ファイバ素線中間体を形成する一次硬化部と、この被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する押圧部と、前記光ファイバ素線中間体の押圧後の被覆層を二次硬化して光ファイバ素線を形成する二次硬化部と、を備えている。
これにより、一次硬化後の被覆層に対して押圧することで生じた被覆層の変形や、被覆層とガラス表面の剥離や被覆層の割れが、二次硬化時に修復され、良好な光ファイバ素線が得られる。その結果、本発明の第2の態様に係る光ファイバ素線の製造装置では、装置を複雑化させたり、線引き速度を遅くすることなく、被覆層の変形や剥離を防止することができ、信頼性の高い光ファイバ素線を効率よく製造できる。
本実施形態に係る光ファイバ素線5の製造装置1は、光ファイバ母材2を溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する紡糸部10と、光ファイバ裸線3の外周に被覆材を塗布して光ファイバ素線中間体4α(4)とする塗布部30と、光ファイバ素線中間体4α(4)の被覆材を一次硬化して被覆層を備えた光ファイバ素線中間体4β(4)を形成する一次硬化部40と、この被覆層を介して光ファイバ素線中間体4β(4)の外周を押圧して、光ファイバ素線中間体4γを形成する押圧部と、光ファイバ素線中間体4γ(4)の前記被覆層を二次硬化して光ファイバ素線5を形成する二次硬化部70と、を少なくとも備える。
紡糸部10は、線引き炉内に吊り下げられた光ファイバ母材2と呼ばれる石英ガラスロッドを下降させながら、その先端を加熱炉11によって加熱溶融し、これから線引きすることにより光ファイバを製造する。
紡糸炉外へ引き出された光ファイバ裸線3は、冷却部20により冷却される。
冷却された光ファイバには、光ファイバ裸線3の保護を目的として、塗布部30にて樹脂コーティングされる。一般に樹脂コーティングは、2層コーティングであり、内側にヤング率の低い一次被覆層用の材料を塗布し、外側にヤング率の商い二次被覆層用の材料が塗布される。使用される材料は、紫外線硬化樹脂が多く、UVランプにより硬化される。
なお、コーティング方法は、一次被覆層と二次被覆層を別々に塗布し、それぞれ硬化させる方法、一次被覆層と二次被覆層を同時に塗布して、一括して硬化させる方法などがある。図1に示す例では、一次被覆層と二次被覆層を同時に塗布する場合を挙げているが、本発明はこの構成のみに限定されない。
一次硬化部40として、たとえば、光ファイバ素線中間体4α(4)を挟むように4対のUVランプが、長手方向に沿って配されている。
ここで、押圧部は、前記一次硬化された被覆層を介して光ファイバ素線中間体4β(4)の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、光ファイバ素線中間体4β(4)に捻りを加える捻り部50、及び/又は、キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体4γ(4)を把持して引取る引取り部60を備える。
また、引取り部60が、キャプスタンホイール61だけの場合、光ファイバ素線中間体4β(4)が押圧されることがないので押圧部に含まない。
捻りローラ51,51は、光ファイバ素線中間体4β(4)を挟むように配され、その長手方向が光ファイバ素線4の紡糸方向と略垂直となるように配されている。また、捻りローラ51は、捻りローラ51と一体をなす中心軸を中心として回転可能である。
さらに、捻りローラ51は、中心軸と共に、光ファイバ素線4の紡糸方向と垂直な方向へ並進運動可能である。
引取り部60において、引取りキャプスタン61は高速で回転し、ここで線引き速度が決定される。線引き速度が例えば2000m/minや1500m/minなどに相当する速度で引取りキャプスタン61は回転する。
引取り部60としては、例えば特開平9−227171に示されるような、キャプスタンホイールに対してキャプスタンベルトで光ファイバ素線中間体4γ(4)を押圧するような引取りキャプスタンを採用することができる。
一次硬化後の被覆層に対して押圧することで生じた被覆層の変形や、被覆層とガラス表面の剥離や被覆層の割れが、二次硬化時に修復される。これは、二次硬化時に、さらに硬化反応が進み、分子のネットワークが延びることと、硬化による発熱反応により局所的に被覆材の温度が上昇し、ガラス転移温度以上となることの相乗効果で、一次硬化時に生じた剥離や割れが修復されることによる。
本実施形態の光ファイバ素線の製造方法は、光ファイバ母材2を溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する工程Aと、光ファイバ裸線3の外周に被覆材を塗布して光ファイバ素線中間体4α(4)とする工程Bと、光ファイバ素線中間体4α(4)の前記被覆材を一次硬化して被覆層を備えた光ファイバ素線中間体4β(4)を形成する工程Cと、前記被覆層を介して光ファイバ素線中間体4β(4)の外周を押圧して、光ファイバ素線中間体4γ(4)を形成する工程Dと、前記光ファイバ素線中間体4γ(4)の前記被覆層を二次硬化して光ファイバ素線5を形成する工程Eと、を少なくとも備える。
その結果、本実施形態の光ファイバ素線の製造方法では、線引き速度を遅くすることなく、被覆層の変形や剥離を防止することができ、信頼性の高い光ファイバ素線5を効率よく製造することが可能である。
以下、工程順に説明する。
まず、石英系ガラスを主成分とする光ファイバ母材2を、溶融紡糸部10の加熱炉11内に軸方向に移動可能に吊り下げ、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス雰囲気中で、その下端部分を約2000℃に高温加熱し、これから光ファイバを線引きして、光ファイバ裸線3を形成する(溶融紡糸)。
なお、光ファイバ母材2の製造方法は、気相軸付法(VAD法)、外付け法(OVD法)、内付け法(CVD法、MCVD法、PCVD法)、ロッドインチューブ法などがあるが、本発明はこれらの方法のみに限定されない。
冷却部20において冷却された光ファイバ裸線3は、被覆層形成用の塗布部30において、その外周を覆うように紫外線硬化型樹脂からなる被覆材が塗布(コーティング)される。
一般に、樹脂コーティングは、2層コーティングであり、内側にヤング率の低いプライマリ材料を塗布し、外側にヤング率の商いセカンダリ材料が塗布される。換言すると、2層コーティングされた被覆層は、光ファイバ裸線3に接して配される第一層と、この第一層に重ねて配される第二層から構成されている。前記第二層をなす樹脂として、前記第一層をなす樹脂に比べてヤング率の高い樹脂が用いられる。
塗布方法は、第一層(一次被覆層)と第二層(二次被覆層)を別々に塗布し、それぞれ硬化させる方法、同時に塗布して、一括して硬化させる方法などがあるが、本発明はこれらの方法のみに限定されない。
これにより、光ファイバ裸線3の外周に第一層(一次被覆層)及び第二層(二次被覆層)からなる被覆層が形成された光ファイバ素線中間体4α(4)が得られる。
続いて、被覆層が形成された光ファイバ素線4α(4)は、一次硬化部40へと送られ、この一次硬化部40が備えるUVランプ41から照射される紫外線により硬化(一時硬化)して、一次硬化された被覆層を形成する。これにより、一次硬化された被覆層を備えた光ファイバ素線中間体4β(4)が得られる。
この工程Dは、光ファイバ素線中間体4β(4)に捻りを加える捻り工程、及び/又は、光ファイバ素線中間体4β(4)を把持して引取る引取り工程である。
続いて、光ファイバ素線中間体4γ(4)は、二次硬化部70へと送られ、この二次硬化部70(UVランプ)から照射される紫外線により被覆層をさらに硬化(二次硬化)することによって、光ファイバ素線5が得られる。
一次硬化後の被覆層に対して押圧することで生じた被覆層の変形や、被覆層とガラス表面の剥離や被覆層の割れが、二次硬化において修復される。
これは、二次硬化時に、さらに被覆材の硬化反応が進み、分子のネットワークが延びることと、硬化による発熱反応により局所的に被覆材の温度が上昇し、ガラス転移温度以上となることの相乗効果で、一次硬化時に被覆層に生じた剥離や割れが修復されることによる。
このように本実施形態では、装置を複雑化させたり、線引き速度を遅くすることなく、被覆層の変形や剥離を防止することができ、信頼性の高い光ファイバ素線5を効率よく製造することができる。
(実験例1)
図1に示した製造装置1A(装置A)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度2500m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を同時にコーティングし、同時に硬化させる方式とした。
UVランプを有する一次硬化部で被覆層を一次硬化させ、その後、捻り工程とキャプスタンベルトを用いた引取り工程を行った。その後、UVランプを有する二次硬化部で被覆層を二次硬化させた。
その後、ダンサーブーリーを通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
図1に示した製造装置1A(装置A)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
被覆層の一次硬化後のゲル分率が70%(別途サンプルを作製して評価)、二次硬化後のゲル分率が80%となるように、一次硬化部及び二次硬化部のUVランプ出力を調整したこと以外は、実験例1と同様にして光ファイバ素線を作製した。
図2に示した製造装置1B(装置B)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度1500m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を別々にコーティングし、別々に硬化させる方式とした。
UVランプを有する一次硬化部で被覆層を一次硬化させ、その後、捻り工程を行った。その後、UVランプを有する二次硬化部で被覆層を二次硬化させた。
その後、引取りキャプスタン(ベルト使用せず)を通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
図2に示した製造装置1B(装置B)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
光ファイバ母材の線引き速度を2000m/minとしたこと以外は、実験例3と同様にして光ファイバ素線を作製した。
図2に示した製造装置1B(装置B)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
被覆層の一次硬化後のゲル分率が60%(別途サンプルを作製して評価)、二次硬化後のゲル分率が85%となるように、一次硬化部及び二次硬化部のUVランプ出力を調整したこと以外は、実験例4と同様にして光ファイバ素線を作製した。
図3に示した製造装置1C(装置C)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度2000m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を同時にコーティングし、同時に硬化させる方式とした。
UVランプを有する一次硬化部で被覆層を一次硬化させ、その後、キャプスタンベルトを用いた引取り工程を行った。その後、UVランプを有する二次硬化部で被覆層を二次硬化させた。
その後、ダンサーブーリーを通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
図3に示した製造装置1C(装置C)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
被覆層の一次硬化後のゲル分率が92%(別途サンプルを作製して評価)、二次硬化後のゲル分率が95%となるように、一次硬化部及び二次硬化部のUVランプ出力を調整したこと以外は、実験例6と同様にして光ファイバ素線を作製した。
図4に示した製造装置D(装置D)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度1500m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を別々にコーティングし、別々に硬化させる方式とした。
UVランプを有する硬化部で被覆層を硬化させ、その後、捻り工程を行った。
その後、引取りキャプスタン(ベルトなし)を通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
図4に示した製造装置D(装置D)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
製造装置Dにおいて、硬化部のUVランプを1灯追加したこと以外は、実験例8と同様にして光ファイバ素線を作製した。
図5に示した製造装置E(装置E)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度2000m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を同時にコーティングし、同時に硬化させる方式とした。
UVランプを有する硬化部で被覆層を硬化させ、その後、捻り工程とキャプスタンベルトを用いた引取り工程を行った。
その後、ダンサーブーリーを通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
図6に示した製造装置F(装置F)を用いて、光ファイバ素線を作製した。
外径φ150mmの光ファイバ母材を使用して、線引き速度2500m/minで線引きを実施した。被覆層のコーティングは、第一層(一次被覆層)、第二層(二次被覆層)を別々にコーティングし、別々に硬化させる方式とした。
UVランプを有する一次硬化部で被覆層を一次硬化させ、その後、キャプスタンベルトを用いた引取り工程を行った。
その後、ダンサーブーリーを通し、光ファイバ素線を巻取りボビンに巻取りながら、線引きを500km実施した。
被覆層のゲル分率の測定は、被覆層を60℃のメチルエチルケトン(MEK)溶剤に16時間浸漬し、いわゆる未硬化分を溶剤抽出し、取り出した後に、試料被覆重量(W)を測定する。試料の初期重量をW0とするとき、ゲル分率は「(W/W0)×100(%)」で表される。
−60℃での損失変化については、1000mのファイバをフリーコイル状態にして、恒温槽に入れ、常温をリファレンスとして、−60℃での損失変動を比較した。被覆材の変形、剥離、割れなどのダメージがあると、損失がマイクロベンド損失となり損失が増加する。
さらに、マイクロスコープを用いて、被覆層の剥離、割れを観察した。
実験例1〜実験例11の光ファイバ素線についての評価結果を表1に示す。
実験例1〜7と実験例8〜11とを比較すると、実験例1〜実験例7では、破損変形、低温度での損失増加、剥離、割れ等もなく、良好な光ファイバ素線となっている。また、押圧装置への汚れの付着もみられなかった、これに対し、実験例8〜11では、被覆変形、低温度での損失増加、剥離、割れ等が悪い状態となっている。これは、一次硬化のみでは、被覆材のダメージが生じるが、二次硬化を設置することで、この被覆材のダメージが修復していることを示している。
なお、実験例4と実験例6とは、押圧装置が捻り装置であるか、引取キャプスタン(ベルトあり)であること以外は同じ条件である。この結果から、押圧装置として、捻り装置の場合でも、引取キャプスタンの場合でも両者とも同等の効果があることが確認できる。
一方、実験例7では、一次硬化後のゲル分率が92%であった。この場合、二次硬化によりさらにゲル分率が95%と上昇しているが、押圧による被覆材へのダメージが修復しきらず、残っていることを示している。
実験例2では、二次硬化後のゲル分率が80%であった。この場合、押圧による被覆材へのダメージの修復効果は得られているが、線引き後の後工程に進み、着色工程にて着色、テープ工程にてテープ化を実施したところトラブルが発生した。
特に、一次硬化後の被覆層の硬化度として、ゲル分率が70〜90%のときに十分な修復効果が得られることが確認された。また、二次硬化後の被覆層の硬化度として、ゲル分率が85%以上のときに、後工程でのトラブルを回避することができることが確認された。
2 光ファイバ母材
3 光ファイバ裸線
4α、4β、4γ(4) 光ファイバ素線中間体
5 光ファイバ素線
10 紡糸部
20 冷却部
30 塗布部
40 一次硬化部
50 捻り部
60 引取り部
70 二次硬化部
Claims (10)
- 光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成し;
前記光ファイバ裸線の外周に樹脂からなる被覆層を設けて光ファイバ素線中間体を形成し;
前記光ファイバ素線中間体を形成する前記被覆層を一次硬化させ;
前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧し;
前記光ファイバ素線中間体の押圧された被覆層を二次硬化させることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。 - 前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際には、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。
- 前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際には、キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取ることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。
- 前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する際には、
前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、前記光ファイバ素線中間体に捻りを加え;
キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取ることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。 - 前記光ファイバ素線中間体を形成する際の被覆層が、前記光ファイバ裸線に接して配される第一層と、この第一層に重ねて配される第二層とを備え、
前記第二層を形成する樹脂のヤング率が、前記第一層を形成する樹脂のヤング率よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。 - 前記被覆層が前記第一層と前記第二層とを有する2層構造を形成する場合、前記第一層を形成した後および前記第二層を形成した後の各々において、前記被覆層が一次硬化されることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ素線の製造方法。
- 光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成する紡糸部と;
前記光ファイバ裸線の外周に樹脂からなる被覆層を設けて光ファイバ素線中間体を形成する塗布部と;
前記光ファイバ素線中間体を形成する前記被覆層を一次硬化させる第一硬化部と;
前記光ファイバ素線中間体の外周を押圧する押圧部と;
前記光ファイバ素線中間体の押圧された被覆層を二次硬化させる第二硬化部と;
を備えることを特徴とする光ファイバ素線の製造装置。 - 前記押圧部が、前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、光ファイバ素線中間体に捻りを加える捻り部を備えることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造装置。
- 前記押圧部が、キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取る引取り部を備えることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造装置。
- 前記押圧部が、
前記一次硬化された被覆層を介して前記光ファイバ素線中間体の外周の一部に、少なくとも一対の捻りローラを当接した状態で、この一対の捻りローラを並進運動または揺動運動させて、光ファイバ素線中間体に捻りを加える捻り部と;
キャプスタンホイールとキャプスタンベルトを用いて前記光ファイバ素線中間体を把持して引取る引取り部と;
を備えることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバ素線の製造装置。
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