JP5407402B2 - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents
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Description
これによって、車両が大きなオーバーステア状態やアンダステア状態になってしまうことを防止する。
本発明は、上記のような点に着目したもので、車両安定性を向上した車両用操舵制御の技術を課題とする。
(構成)
図1に本実施形態に係る車両の構成図を示す。
まず構成について図1を参照しながら説明する。
運転者が操作するステアリングホイール1にステアリング入力軸2が連結する。そのステアリング入力軸2に対し、不図示のメカニカルバックアップ装置を介してステアリング出力軸3が連結する。メカニカルバックアップ装置は、通常状態では、ステアリング入力軸2とステアリング出力軸3との間のトルク伝達を切った状態とする。また、メカニカルバックアップ装置は、舵角制御コントローラ4からの指令に基づき、ステアリング入力軸2とステアリング出力軸3とを接続してトルク伝達を可能な状態とする。なお、メカニカルバックアップ装置を省略して、上記ステアリング入力軸2とステアリング出力軸3とは常時連結していても良い。
操舵角センサ10は、ステアリングホイール1の操舵角θ(回転角)を検出し、検出した操舵角θ信号を舵角制御コントローラ4に出力する。操舵角センサ10は、ステアリング入力軸2若しくはステアリングホイール1に設ける。操舵角センサ10は、例えば、パルスエンコーダ等からなり、運転者が操作する操舵角θを検出する。
車速センサ11は、車両の車体速Vを検出し、検出した車体速信号を舵角制御コントローラ4に出力する。
横Gセンサ12は、車両の横G(横加速度)を検出し、検出した横G信号を舵角制御コントローラ4に出力する。
上記目標値生成部41は、図3に示すように、車両モデル演算部41aと目標値演算部41bとを備える。
上記車両モデル演算部41aは、適用する車両モデルに従い、現在の操舵角θ及び車体速Vに応じた車両の走行状態を特定するヨーレイトに係る車両パラメータを演算する。演算する車両パラメータである状態量は、gφ(V)、ζφ(V)、ωφ(V)、Tφ(V)である。これらの状態量は、操舵角θ及び車体速Vから、後述の(6)式によって演算出来る。
ここで、車両モデルを使用した車両パラメータについて説明する。
車両モデルとして2輪モデルを採用すると、車両のヨーレイトφ′と横速度Vyは、下記式で表すことが出来る。すなわち、下記(1)式の状態方程式から、操舵角θ及び車体速Vに応じたヨーレイトと横速度を推定することが出来る。
φ′:ヨーレイト
s:微分演算子
θ:運転者の操舵角(前輪転舵角相当)
δ:後輪転舵角
Vx、V:車体速
Vy:横速度
Iz:車両慣性モーメント
M:車両重量
Lf:前軸〜重心点距離
Lr:重心点〜後軸距離
N:ギア比
Kf:前輪コーナリングパワー
Kr:後輪コーナリングパワー
Cf:前輪コーナリングフォース
Cr:後輪コーナリングフォース
また、
そして、ヨーレイトに係る車両パラメータ(車両パラメータ)が、上述の通り、
gφ(V)、ζφ(V)、ωφ(V)、Tφ(V)となる。
ここで、
gφ(V)は、車両特性モードの基本状態を示す状態量である。
ζφ(V)は、減衰項に係る状態量である。
ωφ(V)は、バネ系の固有振動数に係わる状態量である。
Tφ(V)は、定常偏差に係わる状態量である。
目標値演算部41bは、操舵角θ、車体速V、及び車両モデル演算部41aが演算した車両パラメータから、車両の目標ヨーレイトφ′*を求める。
先ず、設定されている車両特性モードに応じた目標特性状態量を算出する。
すなわち、車両モデルの上記車両パラメータに対して、下記式のように、それぞれ車両特性モードに応じたゲインを乗算する。これによって、車両モデル演算部41a−1が演算した車両パラメータを、車両特性モードに応じた目標特性状態量に変換する。
gφ*(V) =gφ(V) ×yrate_gain_map1
ζφ*(V) =ζφ(V) ×yrate_zeta_map1
ωφ*(V) =ωφ(V) ×yrate_omegn_map1
Tφ*(V) =Tφ(V) ×yrate_zeta_map1
ただし、yrate_gain_map1、yrate_omegn_map1、yrate_zeta_map1,yrate_zero_mapa1、 は、車速によって変化する予め設定したチューニングパラメータである。なお、通常モード、スポーツモードなどの複数の車両特性モードを選択可能な場合には、上記yrate_gain_map1は、車両特性モード毎に別のマップを有する。そして、選択された車両特性モードに対応するyrate_gain_map1を使用する。
ここで、目標ヨーレイトφ′*は、下記(9)式となる。
路面μ推定部42は、目標値生成部41が演算した目標ヨーレイトφ′*、実車体速V、及び車両の横加速度YGから、路面μ推定値Myuを推定する。本実施形態では、横加速度値によって路面摩擦係数を推定している。
上記路面μ推定部42の処理を、図4を参照しつつ説明する。
まずステップS100にて、以下の式に従って目標横加速度YG_comを演算する。この目標横加速度YG_comは、操舵角θと実車体速Vに応じた値である。
YG_com =φ′*・Vx
ステップS130では、目標横加速度YG_comの絶対値と、検出した横加速度YGの絶対値との差が、所定値ΔYG2以下か否かを判定する。上記条件を満足する場合には、ステップS150に移行する。一方、上記条件を満足しない場合にはステップS140に移行する。
ステップS150では、路面摩擦係数確定フラグflg_myuに「0」を設定する。すなわち、路面摩擦係数確定フラグflg_myuをゼロクリアした後、ステップS160に移行する。
ステップS170では、路面μ推定値Myuとして、検出した横加速度YGを設定する。その後終了する。
Myu =YG
Myu =10
ここで、路面摩擦係数の推定は上記処理に限定しない。駆動輪の回転数と従動輪の回転数との差から路面μ推定値を求める。すなわち、駆動力を生じている車輪と従動状態の車輪との路面に対する滑り率の差から、路面反力(路面摩擦力)を検出し、検出値を路面摩擦係数を推定してもよい。また、車輪の横力から路面摩擦係数を推定しても良い。
目標値補正部43は、図6に示すように、目標ヨーレイト最大値制限演算部43a、目標ヨーレイト低減補正演算部43b、及び目標ヨーレイト増加ゲイン補正演算部43cを備える。
上記目標ヨーレイト最大値制限演算部43aは、目標ヨーレイトφ′*を横力が最大となるヨーレイトで制限する。すなわち、横力が最大となる転舵相当に対応する目標ヨーレイト最大値φ0′* を求める。
φ0′* =φ′*×(Myu/YG_com)
この横力が最大となるヨーレイトφ0′*で目標ヨーレイトを制限することで、運転者の操作による操舵角が増加しても目標ヨーレイトは制限できる。これによって、実際のヨーレイト及びヨー角が過大になることを防止して、車両がスピン状態に陥ることを防止できる。
これに代えて、横加速度YG、ヨーレイトφ′および車体速Vを用いて下記式によって車輪のスリップ角βを計算し、スリップ角βから横力の限界値を求めたりしても良い。横力の限界値の求め方は上記方法に限定しない。
β=∫((YG/V)−γ)dt
目標ヨーレイト低減補正演算部43bは、横力が最大となるヨーレイトφ0′*よりも小さい値に、目標ヨーレイトφ′*を補正する。
まず、目標ヨーレイト低減補正演算部43bは、図7に示す「路面μ推定値−目標ヨーレイト低減補正値マップ」に基づき、推定した路面μ推定値に応じて目標ヨーレイト低減補正値ΔφT′*を算出する。
φ1′* =φ0′* −ΔφT′*
図8のように、低摩擦係数路面ほど最大の目標ヨーレイトφ0′*よりも小さい目標ヨーレイトの値とするので、推定した路面摩擦係数に応じて、低摩擦係数路面なほど車両がオーバーステア状態になった後に操舵角を戻した場合でも安定状態に戻るのに時間がかかるため、低摩擦係数であるほど限界近傍より手前(横力が大きくなる前)に目標ヨーレイトを制御する。
目標ヨーレイト増加ゲイン補正演算部43cでは、まず図9に示した「路面μ推定値〜目標ヨーレイトのゲイン補正値マップ」に基づき、基準となる目標ヨーレイトの増加傾きであるゲイン補正値GΔφB′*を算出する。
このゲイン補正値GΔφB′*は、図9に示すように、路面μ推定値が小さい場合(推定した路面摩擦係数が小さい場合)、路面μ推定値が大きい場合(推定した路面摩擦係数が大きい場合)と比較して小さな値となる。すなわち、低摩擦係数路面なほど増分の傾きであるゲイン補正値GΔφB′*を小さな値に設定する。
φ2′* = φ1′* +(φ′* −φ1′*)×GΔφB′*
図8,図10のように、現在の補正後目標ヨーレイトφ1′*と補正前の目標ヨーレイトφ′*との差分に応じて目標ヨーレイト増加ゲイン補正を演算する。このめ、図11に示す図のように、操舵角に応じて徐々に補正後目標ヨーレイト(≒前輪タイヤ切れ角)が増加し、車両のコントロール性が向上する。
目標出力値生成部44は、下記式に基づき、車両の目標ヨーレイト補正値(補正後の目標ヨーレイト)φ2′*から目標前輪操舵角α*を決定する。
φ2″* =a11×φ2′* +a12×Vy +bf1×α*
・・・・・(10)
α* =(1/bf1)×(φ2″* −a11×φ2′* −a12×Vy)
・・・・・(11)
そして目標出力値生成部44は、目標前輪操舵角α*を前輪転舵コントローラ6に出力する。
出来るだけ車両の実際の走行状態を検出するために、操舵角θ及び車体速Vから、車両モデルを使用して車両走行状態を表すヨーレイトを演算し、更に車両特性モードに応じた目標ヨーレイトφ′*を求める。そして、その目標ヨーレイトφ′*を実現するための目標前輪転舵角α*を演算する。すなわち、操舵角θに応じて前輪の目標前輪転舵角α*を演算する。
つまり、目標ヨーレイト低減補正演算部43bで補正した、所定閾値に対応する目標ヨーレイトにより、低減された目標ヨーレイトφ1′*と横力が最大となる目標ヨーレイトφ0′*とに差が生じる。そして、この間で、操舵角に応じて目標ヨーレイトを増加させるゲインも、路面μ推定値Myuにより変更することとなる。すなわち、路面摩擦係数が低いほど、その増加割合を小さくする。これによって、操舵角の変化に対するヨーレイトの変化代が小さくなり、つまり操舵角の変化に対する前輪の目標転舵角が小さくなる。この結果、不安定になりやすい低摩擦係数路面で安定性を損なうことなくコントロール性を向上させることができる。
(1)目標転舵角演算手段は、操舵角に応じて目標転舵角を演算する。転舵コントローラは、目標転舵角を目標値として転舵アクチュエータを制御して操向輪を転舵制御する。舵角変化制限手段は、横加速度が車輪の横力が最大となる横加速度よりも小さい所定閾値以上の場合には、横加速度が所定閾値未満の場合と比較して、操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制する。そして、上記所定閾値を、路面摩擦係数が小さいと判定する場合、路面摩擦係数が大きいと判定する場合に比べて小さくする。
これにより、たとえば圧雪路、凍結路のような低摩擦係数路面を走行している場合において、車両のオーバーステア或いはアンダステアを好適に抑制することが可能となる。
横力の限界となるスリップ角で操向輪の転舵を止めた場合、操舵角に対する操向輪の舵角の倍率が変化し、特に車両が不安定になりやすい低摩擦係数路面ではドライバの車両コントロール性が悪化する。
これに対し、低摩擦係数路面では横力の限界の手前から前輪舵角の制御量を徐々に減少させ運転者のコントロール領域を残すことで、実際の走行では横力の限界となるスリップ角近傍でも運転者が微調整を行うことができる。この結果、安定性が増す。
また、操向輪の舵角の増加割合を路面摩擦係数に応じて変更、例えば低摩擦係数なほど、傾きを小さくすることで、安定性を損なうことなくコントロール性を向上させることができる。
目標ヨーレイトに基づき目標転舵角を演算することで、スリップ角を直接使用することなく、車輪の横加速度が最大となる転舵角に対する舵角制御が可能となる。
4 舵角制御コントローラ
41 目標値生成部
41a 車両モデル演算部
41b 目標値演算部
42 路面μ推定部
43 目標値補正部
43a 目標ヨーレイト最大値制限演算部
43b 目標ヨーレイト低減補正演算部
43c 目標ヨーレイト増加ゲイン補正演算部
5 前輪転舵アクチュエータ
8 前輪(操向輪)
10 操舵角センサ
11 車速センサ
12 横Gセンサ
GΔφ′B ゲイン補正値
Myu 路面μ推定値
V、Vx 車体速
Vy 横速度
YG 横加速度
YG_com 目標横加速度
α* 目標前輪操舵角
ΔφT′ 目標ヨーレイト低減補正値
θ 操舵角
φ′* 目標ヨーレイト
φ0′* 目標ヨーレイト最大値
φ2′* 目標ヨーレイト補正値
Claims (4)
- 操向輪を転舵する転舵アクチュエータと、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、上記操舵角に応じて目標転舵角を演算する目標転舵角演算手段と、目標転舵角を目標値として転舵アクチュエータを制御して操向輪を転舵制御する転舵コントローラと、車両の横加速度を検出する横加速度検出手段と、走行路面の路面摩擦係数を検出する摩擦係数検出手段と、を備え、
上記目標転舵角演算手段は、横加速度が、車輪の横力が最大となる値よりも小さい所定閾値以上と判定すると、横加速度が所定閾値未満の場合と比較して、操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制する舵角変化制限手段を備え、
上記所定閾値を、路面摩擦係数が小さいと判定する場合、路面摩擦係数が大きいと判定する場合に比べて小さくし、上記路面摩擦係数が小さいほど増分の傾きが小さいゲイン補正値によって、上記操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 上記操舵角の変化に対する目標転舵角の変化の抑制量は、操舵角が大きくなるに従い大きくすることを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
- 車体速を取得する車体速取得手段を備え、
上記目標転舵角演算手段は、車体速と操舵角に基づき目標ヨーレイトを演算し、目標ヨーレイトに基づいて目標転舵角を演算し、
上記舵角変化制限手段は、上記目標ヨーレイトを制限することで、操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両用操舵制御装置。 - ステアリングホイールの操舵角に応じて演算した目標転舵角を目標値として、転舵アクチュエータを介して操向輪を転舵制御する車両用操舵制御方法において、
横加速度が所定閾値以上の場合には、横加速度が所定閾値未満の場合と比較して、操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制し、上記所定閾値を、路面摩擦係数が小さい場合、路面摩擦係数が大きい場合に比べて小さくし、上記路面摩擦係数が小さいほど増分の傾きが小さいゲイン補正値によって、上記操舵角の変化に対する目標転舵角の変化を抑制することを特徴とする車両用操舵制御方法。
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