JP5397499B2 - 風味の改善された大豆飲食品、並びにそれらの製造法 - Google Patents

風味の改善された大豆飲食品、並びにそれらの製造法 Download PDF

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Description

本発明は、大豆由来原料を使用した洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの大豆飲食品、並びにそれらの製造法に関する。
洋菓子、パン、デザートなどのトッピング(飾り付け)やナッペ(表面コーチング)、フィリング、練り込みなどの用途に、また調理用の風味付け用途に、生クリームやコンパウンドクリーム(脂肪分が乳脂肪と植物性油脂を混合されたもの)が独特のコクのある乳風味付与や冷涼感のある口当たり付与のために幅広く利用されている。特に、生クリームは濃厚なコク味、乳味のため洋菓子や調理に欠かせない素材であるが、比較的高価であること、冷蔵保管でも開封後は2〜3日以内に使用する必要があり長期保存が難しいこと、加えて油分が30〜50重量%と比較的高油分でありヘルシー指向に合致しにくいことから、風味が良くて使い勝手の良い生クリームを代替しうる素材が求められている。
上記を代替しうる素材として、豆腐や豆乳の利用が検討されているが、かかる原材料を使用した洋菓子類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの大豆飲食品は、ヘルシーなイメージはあるものの、大豆に由来する特有の青臭みを持つとともにコク味、旨味に乏しいものであった。そのため、かかる風味が改善された大豆飲食品に対する市場ニーズは高いものである。
上記の大豆由来の特有の風味を改善する方法として、特許文献1には、大豆飲食物に対して分岐構造を有する3〜4糖類を含有する低甘味の糖組成物を添加して、大豆由来の青臭みを抑制するとともに加熱処理工程で生じるざらつき感も抑制する方法が開示されている。特許文献2には、豆乳又は豆乳の製造工程中の大豆原料に蛋白質架橋酵素を作用させ、次いで滅菌処理する工程を含むことを特徴として得られる濃厚感(コク味)と良好な風味を有する滅菌豆乳が開示されている。また、特許文献3には、豆乳を130〜150℃で数十秒間加熱処理した後、乳酸発酵や酸性物質添加で酸性にすることを特徴とする酸性豆乳飲料に関し、大豆特有の青臭み、エグ味などの不快な風味がなく、飲み口がスッキリとし、且つコク味のあるという酸性豆乳飲料の製造法が開示されている。
特開2006−280310号公報 特開2004−261107号公報 特開2007−159593号公報
特許文献1の方法では、低甘味の糖組成物特有の風味が自然な大豆風味とやや違和感があるとともに、大豆由来の青臭みは抑制できるものの濃厚なコク味には欠けるものであった。豆乳に蛋白質架橋酵素を作用させ、次いで滅菌処理するという特許文献2の方法では、青臭み、コク味とも改善出来る方法ではあるが、酵素反応条件の微妙な制御が必要で容易でないという問題があった。また、特許文献3の酸性豆乳飲料は、青臭みがなくコク味のあるものではあるが、酸性風味であることから利用用途が飲料や調理用などに限定されるという問題があった。
上記のように、従来のいずれの方法も、生クリームなどの乳製品を代替しうるような、大豆由来の青臭みがなく濃厚なコク味のある大豆由来素材として十分なものとはいえなかった。本発明は、生クリームなどの乳製品代替物として使用することができる風味の改善された大豆乳化組成物、及びその使用により、大豆由来の青臭みがなく濃厚なコク味のある大豆飲食品を提供することを課題とする。
かかる状況に鑑み、生クリームを代替しうるような風味の改善された大豆由来素材を得るために本発明者らは種々検討した結果、NSIが特定の範囲になるまで予め変性処理を施した加工大豆を用いて水抽出した不溶性画分が、中性脂質及び極性脂質が濃縮された大豆乳化組成物として得られ、本大豆乳化組成物が大豆由来の青臭みがなく濃厚なコク味のある大豆由来素材として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1は、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品である。
第2は、乾物あたりの食物繊維含量が10重量%以下である、前記第1の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品である。
第3は、乾物あたりの脂質含量が15重量%以上であってNSIが20〜77の範囲に加工された含脂大豆を用い、
1)該含脂大豆に加水して懸濁液を調製する工程、
2)該懸濁液を固液分離し、中性脂質及び極性脂質を不溶性画分に移行させて、蛋白質及び糖質を含む水溶性画分を除去し、不溶性画分を回収する工程、
で得られる、前記第1の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品である。
第4は、回収された不溶性画分をさらに均質化した後、該均質化液を固液分離して食物繊維を除去し、上清を回収して得られる、前記第3の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品である。
第5は、風味改善された大豆飲食品への第1〜第4のいずれかの大豆乳化組成物の使用である。
第6は、第1〜第4のいずれかの大豆乳化組成物を、風味改善の有効成分として用いることを特徴とする、大豆飲食品の風味改善方法である。
第7は、第1〜第4のいずれかの大豆乳化組成物を、風味改善の有効成分として用いることを特徴とする、大豆飲食品の製造方法である。
本発明の、含脂大豆から得られる中性脂質及び極性脂質が濃縮された大豆乳化組成物は大豆特有の青臭みがなく、濃厚なコク味、自然な大豆の旨味に優れた風味を有し、本大豆乳化組成物を乳製品の代替物として用いることにより、風味が大幅に改善された大豆飲食品を提供することができる。
本発明の大豆飲食品は、下記に説明する「大豆乳化組成物」を含有することが特徴である。詳しくは、日本国出願(特願2011−108598号)の明細書に開示されるものであるが、以下、該大豆乳化組成物について説明する。
<大豆乳化組成物>
本発明の大豆飲食品に用いられる大豆乳化組成物は、大豆を由来とし、蛋白質のうち、グリシニンやβ−コングリシニン以外の脂質親和性蛋白質(あるいは別の指標としてリポキシゲナーゼ蛋白質)の割合が特に高く、中性脂質及び極性脂質を多く含む乳化組成物である。すなわち、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、乾物あたりの脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が乾物あたりの蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上、より好ましくは60%以上であることを主要な特徴とするものである。
(脂質)
一般に脂質含量はエーテル抽出法で測定されるが、本発明に用いられる大豆乳化組成物中には中性脂質の他にエーテルで抽出されにくい極性脂質も多く含まれるため、本発明における脂質含量は、クロロホルム:メタノールが2:1(体積比)の混合溶媒を用い、常圧沸点において30分間抽出された抽出物量を総脂質量として、脂質含量を算出した値とする。溶媒抽出装置としてはFOSS社製の「ソックステック」を用いることができる。なお上記の測定法は「クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法」と称するものとする。
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、この大豆粉の脂質含量/蛋白質含量の比よりも高い値の脂質を含み、特に極性脂質に富むことが特徴である。該脂質は原料となる大豆に由来する脂質である。
本発明に用いられる大豆乳化組成物の脂質含量は、乾物あたりの蛋白質含量に対して100重量%以上、好ましくは120〜250重量%、さらに好ましくは120〜200重量%であり、蛋白質よりも脂質が多いことが特徴である。また構成に必須ではないが、脂質含量を絶対量で表す場合、乾物あたり35重量%以上、好ましくは40重量%以上であるのが適当である。大豆乳化組成物を繊維質等が除去されたものとすれば脂質含量を乾物あたり50重量%以上にもすることができる。また脂質含量の上限は限定されないが、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
(蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物の蛋白質含量は乾物あたり25重量%以上、好ましくは30重量%以上である。また蛋白質含量の上限は限定されないが、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
○蛋白質含量の分析
本発明における蛋白質含量はケルダール法により窒素量として測定し、該窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
○蛋白質の各成分の組成分析
本発明に用いられる大豆乳化組成物の蛋白質の各成分組成はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析することができる。
界面活性剤であるSDSと還元剤であるメルカプトエタノールの作用によって蛋白質分子間の疎水性相互作用、水素結合、分子間のジスルフィド結合が切断され、マイナスに帯電した蛋白質分子は固有の分子量に従った電気泳動距離を示ことにより、蛋白質に特徴的な泳動パターンを呈する。電気泳動後に色素であるクマシーブリリアントブルー(CBB)にてSDSゲルを染色した後に、デンシトメーターを用い、全蛋白質のバンドの濃さに対する各種蛋白質分子に相当するバンドの濃さが占める割合を算出する方法により求めることができる。
(リポキシゲナーゼ蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、一般に大豆中のオイルボディにはほとんど含まれないリポキシゲナーゼ蛋白質が特定量以上含まれることが大きな特徴であり、大豆乳化組成物中の全蛋白質あたり少なくとも4%以上含有し、好ましくは5%以上含有するものである。
通常の未変性(NSI 90以上)の大豆を原料とした場合ではリポキシゲナーゼ蛋白質は可溶性の状態で存在するため、水抽出すると水溶性画分側へ抽出される。一方、本発明ではリポキシゲナーゼ蛋白質が原料大豆中において加熱処理によって失活され不溶化しているため、不溶性画分側に残る。
蛋白質中におけるリポキシゲナーゼ蛋白質の割合が高まることによって油脂の乳化状態が安定化されるばかりでなく、グロブリン蛋白質を主体とした通常の大豆蛋白質組成では得られない滑らかな物性の食感を得ることができ、また素材にコクのある風味が付与される。
リポキシゲナーゼ蛋白質の場合は通常L-1、L-2、L-3の3種類が存在し、上記の電気泳動法により、リポキシゲナーゼ蛋白質に相当するこれらのバンドの濃さから含量を算出できる。
(脂質親和性蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、蛋白質の種類の中では脂質親和性蛋白質(Lipophilic Proteins)が一般の大豆素材より多く含まれることが特徴である。脂質親和性蛋白質は、大豆の主要な酸沈殿性大豆蛋白質の内、グリシニン(7Sグロブリン)とβ−コングリシニン(11Sグロブリン)以外のマイナーな酸沈殿性大豆蛋白質群をいい、レシチンや糖脂質などの極性脂質を多く随伴するものである。以下、単に「LP」と略記することがある。
LPは雑多な蛋白質が混在したものであるが故、各々の蛋白質を全て特定し、LPの含量を厳密に測定することは困難であるが、下記LCI(Lipophilic Proteins Content Index)値を求めることにより推定することができる。これによれば、大豆乳化組成物中の蛋白質のLCI値は通常55%以上であり、好ましくは58%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは63%以上、最も好ましくは65%以上である。
通常の未変性(NSI 90以上)の大豆を原料とした場合ではLPは可溶性の状態で存在するため、水抽出すると水溶性画分側へ抽出される。一方、本発明に用いられる大豆乳化組成物の場合、LPが原料大豆中において加熱処理によって失活され不溶化しているため、不溶性画分側に残る。
蛋白質中におけるLPの割合が高まることによって油脂の乳化状態が安定化されるばかりでなく、グロブリン蛋白質を主体とした通常の大豆蛋白質組成では得られない滑らかな物性の食感を得ることができ、また素材にコクのある風味が付与される。
〔LP含量の推定・LCI値の測定方法〕
(a) 各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはαサブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11Sは酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及びリポキシゲナーゼ蛋白質(P34+Lx)を選択し、SDS−PAGEにより選択された各蛋白質の染色比率を求める。電気泳動は表1の条件で行うことが出来る。
(b) X(%)=(P34+Lx)/{(P34+Lx)+(α+α’)+AS}×100(%)を求める。
(c) 低変性脱脂大豆から調製された分離大豆蛋白のLP含量を加熱殺菌前に上記方法1,2の分画法により測定すると凡そ38%となることから、X=38(%)となるよう(P34+Lx)に補正係数k*=6を掛ける。
(d) すなわち、以下の式によりLP推定含量(Lipophilic Proteins Content Index、以下「LCI」と略する。)を算出する。
(表1)
Figure 0005397499
Figure 0005397499
(乾物含量)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は通常生クリーム様の性状であり、通常の乾物(dry matter)は20〜30重量%程度であるが、特に限定されるものではない。すなわち加水により低粘度の液状としたものや、濃縮加工されてより高粘度のクリーム状としたものであってもよく、また粉末加工されて粉末状としたものであってもよい。
(大豆乳化組成物の製造態様)
本発明に用いられる大豆乳化組成物は、例えば水溶性窒素指数(Nitrogen Solubility Index、以下「NSI」と称する。)が20〜77、好ましくは20〜70、乾物あたりの脂質含量が15重量%以上の全脂大豆などの含脂大豆に対して、加水して懸濁液を調製する工程の後、該懸濁液を固液分離し、中性脂質及び極性脂質を不溶性画分に移行させて、蛋白質及び糖質を含む水溶性画分を除去し、不溶性画分を回収することにより得ることができる。以下、該製造態様について示す。
・原料大豆及びその加工
大豆乳化組成物の原料である大豆としては、全脂大豆あるいは部分脱脂大豆等の含脂大豆を用いる。部分脱脂大豆としては、全脂大豆を圧搾抽出等の物理的な抽出処理により部分的に脱脂したものが挙げられる。一般に全脂大豆中には脂質が乾物あたり約20〜30重量%程度含まれ、特殊な大豆品種については脂質が30重量%以上のものもあり、特に限定されないが、用いる含脂大豆としては、少なくとも脂質を15重量以上、好ましくは20重量%以上含むものが適当である。原料の形態は、半割れ大豆、グリッツ、粉末の形状でありうる。
過度に脱脂され脂質含量が少なすぎると本発明に用いられる脂質に富む大豆乳化組成物を得ることが困難となる。特にヘキサン等の有機溶媒で抽出され、中性脂質の含量が1重量%以下となった脱脂大豆は、大豆の良い風味が損なわれ好ましくない。
上記含脂大豆は天然の状態では蛋白質の多くが未変性で可溶性の状態にあり、NSIとしては通常90を超えるが、本発明においては、NSIが20〜77好ましくは20〜70になるよう加工処理を施した加工大豆を用いるのが適当である。より好ましいNSIの下限値は40以上、より好ましくは41以上、さらに好ましくは43以上、最も好ましくは45以上とすることができる。より好ましいNSIの上限値は75未満、より好ましくは70未満とすることができ、またさらに65未満、あるいは60未満、あるいは58未満の低NSIのものを用いることができる。
そのような加工大豆は、加熱処理やアルコール処理等の加工処理を行って得られる。加工処理の手段は特に限定されないが、例えば乾熱処理、水蒸気処理、過熱水蒸気処理、マイクロ波処理等による加熱処理や、含水エタノール処理、高圧処理、およびこれらの組み合わせ等が利用できる。
NSIが低すぎると、大豆乳化組成物中の蛋白質の割合が高くなりやすく、蛋白質に対する脂質含量が低くなる。また過加熱による焙煎臭等の雑味が生じやすくなる。逆にNSIが例えば80以上の高い数値になると大豆乳化組成物中の蛋白質の割合が低下し、大豆からの脂質の回収率も低下しやすくなる。また風味は青臭みが強くなる。
例えば過熱水蒸気による加熱処理を行う場合、その処理条件は製造環境にも影響されるため一概に言えないが、おおよそ120〜250℃の過熱水蒸気を用いて5〜10分の間で加工大豆のNSIが上記範囲となるように処理条件を適宜選択すれば良く、加工処理に特段の困難は要しない。簡便には、NSIが上記範囲に加工された市販の大豆を用いることもできる。
なお、NSIは所定の方法に基づき、全窒素量に占める水溶性窒素(粗蛋白)の比率(重量%)で表すことができ、本発明においては以下の方法に基づいて測定された値とする。
すなわち、試料2.0gに100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分間遠心分離し、上清1を得る。残った沈殿に再度100mlの水を加え、40℃にて60分攪拌抽出し、1400×gにて10分遠心分離し、上清2を得る。上清1および上清2を合わせ、さらに水を加えて250mlとする。No.5Aろ紙にてろ過したのち、ろ液の窒素含量をケルダール法にて測定する。同時に試料中の窒素含量をケルダール法にて測定し、ろ液として回収された窒素(水溶性窒素)の試料中の全窒素に対する割合を重量%として表したものをNSIとする。
前記の加工大豆は水抽出の前に、予め乾式又は湿式による粉砕、破砕、圧偏等の組織破壊処理を施されることが好ましい。組織破壊処理に際して、あらかじめ水浸漬や蒸煮により膨潤させても良く、これによって組織破壊に必要なエネルギーを低減させたり、ホエー蛋白質やオリゴ糖等の不快味を持つ成分を溶出させ除去できると共に、保水性やゲル化性の能力が高いグロブリン蛋白質(特にグリシニン及びβ−コングリシニン)の全蛋白質に対する抽出比率、すなわち水溶性画分への移行比率をより高めることができる。
・原料大豆からの水抽出
水抽出は含脂大豆に対して3〜20重量倍、好ましくは4〜15重量倍程度の加水をし、含脂大豆を懸濁させて行われる。加水倍率は高い方が水溶性成分の抽出率が高まり、分離を良くすることができるが、高すぎると濃縮が必要となりコストがかかる。また、抽出処理を2回以上繰り返すと水溶性成分の抽出率をより高めることができる。
抽出温度には特に制限はないが、高い方が水溶性成分の抽出率が高まる反面、油脂も可溶化されやすくなり、大豆乳化組成物の脂質が低くなるため、70℃以下、好ましくは55℃以下で行うと良い。あるいは5〜80℃、好ましくは50〜75℃の範囲で行うこともできる。
抽出pH(加水後の大豆懸濁液のpH)も温度と同様に高いほうが水溶性成分の抽出率が高まる反面、油脂も可溶化されやすくなり、大豆乳化組成物の脂質が低くなる傾向にある。逆にpHが低すぎると蛋白質の抽出率が低くなる傾向にある。具体的には下限をpH6以上、もしくはpH6.3以上、もしくはpH6.5以上に調整して行うことができる。また上限は脂質の分離効率を上げる観点でpH9以下、もしくはpH8以下、もしくはpH7以下に調整して行うことができる。あるいは蛋白質の抽出率を高める観点でpH9〜12のよりアルカリ性側に調整して行うことも可能である。
・水抽出後の固液分離
水抽出後、含脂大豆の懸濁液を遠心分離、濾過等により固液分離する。この際、中性脂質のみならず極性脂質も含めた大部分の脂質を水抽出物中に溶出させず、不溶化した蛋白質や食物繊維質の方に移行させ沈殿側(不溶性画分)とすることが重要である。具体的には含脂大豆の脂質の70重量%以上を沈殿側に移行させる。また抽出の際に上清側にも少量の脂質が溶出するが、豆乳中の脂質のように微細にエマルション化されたものではなく、15,000×g以下、あるいは5,000×g程度以下の遠心分離によっても容易に浮上させ分離することができ、この点で遠心分離機を使用するのが好ましい。なお遠心分離機は使用する設備によっては10万×g以上の超遠心分離を使用することも可能であるし、本発明に用いられる大豆乳化組成物の場合は超遠心分離機を用いなくとも実施が可能である。
また水抽出の際あるいは水抽出後に解乳化剤を添加して豆乳からの脂質の分離を促進させることも可能であり、解乳化剤は特に限定されない。ただし本発明に用いられる大豆乳化組成物を調製する場合は解乳化剤を用いなくとも実施が可能である。
水抽出工程後の固液分離により、中性脂質のみならず極性脂質を不溶性画分に移行させ、これを回収することにより大豆乳化組成物の画分を得ることができる。
固液分離として遠心分離を用いる場合、二層分離方式、三層分離方式のいずれも使用することができる。二層分離方式の場合は沈殿層である不溶性画分を回収する。また三層分離方式を用いる場合は、(1)浮上層(脂質を含む比重の最も小さいクリーム画分)、(2)中間層(脂質が少なく蛋白質、糖質を多く含む水溶性画分)、(3)沈殿層(脂質と食物繊維を多く含む不溶性画分)、の三層の画分に分けられる。この場合、脂質含量の少ない水溶性画分の中間層(2)を除去又は回収し、不溶性画分として浮上層(1)又は沈殿層(3)を回収するか、あるいは(1)と(3)を合わせて回収するとよい。
得られた不溶性画分(1)、(3)はそのまま、あるいは必要により濃縮工程、加熱殺菌工程、粉末化工程等を経て本発明に用いられる大豆乳化組成物とすることができる。
・食物繊維の除去
得られた不溶性画分が食物繊維を含む場合、例えば上記(3)又は(1)及び(3)の画分である場合、必要により加水し、高圧ホモゲナイザーあるいはジェットクッカー加熱機等による均質化した後、該均質化液をさらに固液分離して上清を回収する工程を経ることにより、食物繊維(オカラ)を除去することもでき、コクのある風味がより濃縮された大豆乳化組成物を得ることができる。該均質化の前後いずれかにおいて必要により加熱処理工程、アルカリ処理工程等を付加することにより蛋白質をより抽出しやすくすることもできる。この場合、乾物あたりの食物繊維含量は10重量%以下であり、5重量%以下がより好ましい。なお、本発明において食物繊維含量は、「五訂増補日本食品標準成分表」(文部科学省、2005)に準じ、酵素−重量法(プロスキー変法)により測定することができる。
(大豆乳化組成物の特徴)
本発明に用いられる上記の大豆乳化組成物は、脂質(中性脂質及び極性脂質)及び蛋白質が特定の範囲で含まれ、蛋白質のうち特にLP含量が高く、必要により繊維質も含まれる乳化組成物であり、大豆が本来有する自然な美味しさが濃縮されており、従来の問題とされていた青臭味や収斂味、渋味等の不快味がないか非常に少なく、非常にコクのある風味を有するものである。
通常の大豆粉や分離大豆蛋白に水、油脂を加えて該大豆乳化組成物と類似の組成の乳化組成物にすることは可能であるが、リポキシゲナーゼ蛋白質含量あるいはLCI値を同等なレベルに調整することは困難である。そして本技術により調製された大豆乳化組成物は、このような組み立て製品に比べて格段に風味が良好であり、食品素材としての利用適性が高いことに特徴を有する。
本発明に用いられる大豆乳化組成物は上記の特徴を持つものであり、従来の豆腐、豆乳及び大豆乳化組成物に対比して、大豆特有の青臭みがなく、独特のコク味を有する。従って、大豆由来製品はコク味、旨味に乏しいという従来の常識を超えて、本発明の大豆乳化組成物は、牛乳や生クリームなどの乳製品を代替しうる素材として、広く洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの生クリームなどの乳製品が使用される飲食品に利用することができる。
なお、本発明の大豆乳化組成物は乾燥して粉末状大豆乳化組成物として、全脂粉乳を代替する食品原材料として上記の大豆飲食品に利用することも可能である。
本発明は、かかる粉末状大豆乳化組成物及びそれを利用した大豆含有食品も包含する。
<大豆飲食品>
本発明は、上記の大豆乳化組成物を含有する大豆飲食品である。本発明の大豆飲食品とは、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品が利用される洋菓子用またはパン用原材料、洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などにおいて、使用される乳製品の一部又は全部が本発明の大豆乳化組成物に置換されたものを意味する。すなわち、本発明の大豆飲食品は、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品代替物として大豆乳化組成物を含有する飲食品である。
具体的には、洋菓子用またはパン用原材料としては、ケーキ、パン類のトッピング、コーチング、サンド、フィリング及び練り込みのいずれかの1目的以上に用いられるホイップクリームなどの水中油型乳化組成物、マーガリン、ファットスプレッドなどの油中水型乳化組成物、カスタードクリームなどのフラワーペースト類、ガナッシュや生チョコレートなどの含水チョコレート類、流動状、ペースト状、固形状のチーズ様食品類などを意味する。
洋菓子類及びパン類とは、上記の洋菓子用またはパン用原材料を使用したショートケーキやチーズケーキなどの洋菓子及びパン全般を意味する。デザート類としては、上記の洋菓子用またはパン用原材料の1種以上をトッピング、コーチング、サンド、フィリング及び練り込みのいずれかの1目的以上に用いたゼリー、ババロア、プリン、冷菓、アイスクリームなどを意味する。
飲料類としては、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品が利用される乳飲料、発酵飲料、果汁飲料、コーヒークリームのなど乳製品の一部又は全部が本発明の大豆乳化組成物に置換されたものを意味する。
スープ類及びソース類としては、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品が利用されるスープ、ソース類全般において、乳製品の一部又は全部が本発明の大豆乳化組成物に置換されたものを意味し、具体的にはスープ、シチュー、グラタン、ホワイトソースなどを意味する。
本発明は、上記の風味改善された大豆飲食品、すなわち、洋菓子用及びパン用原材料、洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などへの大豆乳化組成物の使用である。本大豆乳化組成物の使用量は本発明の大豆乳化組成物の風味的特徴が明確に出る量であれば特に制限はないが、概ね乾物換算で大豆飲食品に対し0.5重量%以上、好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1〜20重量%である。下限未満では、本発明の大豆乳化組成物の風味的特徴が明確に出ないため、好ましくない。
また、本発明の大豆乳化組成物の使用において、糖類、デンプン類、油脂、食塩、乳化剤、乳化安定剤、増粘剤、調味料、酸味料、香辛料、着色料、酸化防止剤などの1種以上を適宜併用することができる。
糖類としては、メープルシロップ、はちみつ、黒糖、グラニュー糖、マルトース、トレハロース、マルチトースなどが例示でき、デンプン類としては生デンプン、加水分解されたデンプン類、加工デンプン類を例示できる。
油脂としては、特に制限はないが、ココアバター、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、豚脂、魚油等の動物性油脂、上記油脂の単独若しくは混合油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂の1種以上を例示できる。
乳化剤としては、レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどが例示できる。
乳化安定剤及び増粘剤としては、水溶性大豆多糖類、プルラン、カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどが例示できる。
香辛料としては、ターメリック、からし、胡椒などが例示できる。着色料としては、カロテンやリコペンなどの植物色素や各種合成色素を利用することができる。
また、酸化防止剤として、トコフェロール類、カテキン類、ルチンなどのフラボン類、アスコルビン酸誘導体類、ローズマリーやヤマモモ抽出物のような植物抽出物類などが使用できる。
また、本発明は、大豆由来組成物を含有する洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの大豆飲食品の風味を改善する方法である。本発明の、従来の大豆由来素材より風味が大幅に改善された大豆乳化組成物を使用することにより、洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの風味を大幅に改善することができ、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品を一部又は全部置換することにより風味に優れた飲食品の提供を可能とする。
また、本発明は、大豆由来組成物を含有する洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの大豆飲食品の製造において、風味が大幅に改善された大豆飲食品の製造法である。牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品の一部又は全部を本発明の大豆乳化組成物と置換することにより、青くさみがなく大豆由来のコクのある大豆飲食品を容易に製造することができる。
以下に本発明の実施例を記載する。なお、以下「%」は特に断りのない限り「重量%」を意味する。脂質の分析は特に断りがない限りクロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法に準じて行ったものである。
(製造例1) 大豆乳化組成物の調製1
湿熱加熱処理によりNSI 59.4とした大豆粉3.5kgに対して4.5倍量、50℃の水を加えて懸濁液とし、保温しながら30分間攪拌し、水抽出した。このときのpHは6.7であった。3層分離方式の遠心分離を6,000×gにて連続的に行い、(1)浮上層・(2)中間層・(3)沈殿層に分離させた。そして浮上層と沈殿層を合わせた画分6.3kgを回収し、大豆乳化組成物Aを調製した。
(製造例2) 大豆乳化組成物の調製2
製造例1にて調製した大豆乳化組成物Aに対して0.5重量倍の加水を行い、さらに13MPaにて高圧ホモゲナイザーで均質化した後、該均質化液を蒸気直接吹き込み方式で142℃7秒間加熱処理し、連続式遠心分離機にて6,000×gにて不溶性の繊維質を分離除去し、上清画分を得、これを大豆乳化組成物Bとした。
製造例1,2で得られた大豆乳化組成物A,Bを分析用に一部凍結乾燥し、一般成分として乾物、並びに、乾物あたりの蛋白質(ケルダール法による)、脂質(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法による)及び灰分を測定し、さらにSDS-PAGEによりリポキシゲナーゼ蛋白質含量、LPの含量の推定値としてLCI値の分析を行った。また比較として、原料に用いた大豆粉、及び、米国特許第6,548,102号公報の方法で製造されていると推定される市販の大豆乳化組成物「Soy Supreme Kreme」(サンオプタ社(SunOpta Grains and Foods Group)製、粉末タイプ)についても同様に分析を行った。各分析値を表2に示す。
(表2)
Figure 0005397499
※カッコ内の数値は蛋白質あたりの脂質含量(%)を示す。
(実施例1)ホイップクリームの調製
製造例2で調製した大豆乳化組成物B 29.9%、硬化パーム核油(融点34℃)29.9%、果糖ぶどう糖液糖(FC;王子コーンスターチ株式会社製)1.4%、オリゴトース(三菱化学フーズ株式会社製)1.4%、水 37.0%、レシチン 0.2%、ショ糖脂肪酸エステル「リョートーシュガーエステルS−570」(三菱化学フーズ株式会社製) 0.1%、ショ糖脂肪酸エステル「リョートーシュガーエステルS−1670」(三菱化学フーズ株式会社製) 0.1%、ポリリン酸ナトリウム 0.015%を調合し、60℃、15分間予備乳化した。さらに、5Mpaで高圧均質化してから、5℃にて一晩冷却して大豆含有ホイップクリーム原液を調製した。本クリーム原液1kgに対し、グラニュー糖70gを添加し、ホバートミキサーによる高速攪拌にて2分30秒間ホイップした。得られた大豆含有ホイップクリームのオーバーランは159.4%であった。本大豆含有ホイップクリームは、冷涼感のある口溶けで、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(比較例1)
実施例1の大豆乳化組成物Bを、市販の大豆乳化組成物「Soy Supreme Kreme」(サンオプタ社(SunOpta Grains and Foods Group)製、粉末タイプ)を水に分散して、乾物含量が大豆乳化組成物Bと同等の18.2%に調整した分散液に置換して、実施例1同様に大豆含有ホイップクリーム原液を調製した。本クリーム原液1kgに対し、グラニュー糖70gを添加しホバートミキサー高速攪拌にて2分50秒間ホイップした。得られた大豆含有ホイップクリームのオーバーランは155.0%であった。本大豆含有ホイップクリームは、冷涼感のある口溶けであったが、大豆特有の青臭みがやや強く、コク味も弱いもので総合評価は低いものであった。
(参考例1)
品温5℃の生クリーム(油脂分30%、高梨乳業株式会社製)1kgにグラニュー糖70gを添加しホバートミキサーによる高速攪拌にて1分30秒間ホイップした。得られたホイップクリームのオーバーランは140.0%であった。本ホイップクリームは、冷涼感のある口溶けで、乳味、コク味とも優れており、総合評価の高いものであった。
表3に実施例1、比較例1、参考例1の風味評価結果を示した。なお、以下の各例に示す風味評価は、パネラー10名による官能評価であり、下記評価基準でのパネラー平均評価である。
(評価基準)
−:まったく感じない ±:ほとんど感じない +:感じる
++:やや強く感じる +++:強く感じる
◎:コクが強く、青臭みがない
○:コクがあり、青臭みもほとんどない
△:コクが弱く、青臭みがある
×:コクがなく、青臭みが強い
(表3)
Figure 0005397499
(実施例2) アイスクリームの調製
製造例2で調製した大豆乳化組成物B 50%、上白糖 11%、ハチミツ(サクラ印純粋ハチミツ)8%を混合、攪拌後、アイスクリーマーを用いて70℃から攪拌、冷却し、フリージングされたアイスクリーム原液を得た。本原液69部に対し、実施例1で得た大豆ホイップクリーム 31部を添加、混合して大豆アイスクリームを得た。本大豆アイスクリームを−20℃、15日保存後風味評価したところ、冷涼感のある軽い食感の口当たりで、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(実施例3)
製造例2で調製した大豆乳化組成物B 50%、上白糖 11%、黒砂糖 7%、水 1%を混合、攪拌後、アイスクリーマーを用いて70℃から攪拌、冷却し、フリージングされたアイスクリーム原液を得た。本原液69部に対し、実施例1で得た大豆ホイップクリーム 31部を添加、混合して大豆アイスクリームを得た。本大豆アイスクリームを−20℃、15日保存後風味評価したところ、冷涼感のある軽い食感の口当たりで、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(比較例2)
実施例2の大豆乳化組成物Bを、市販の大豆乳化組成物「Soy Supreme Kreme」(サンオプタ社(SunOpta Grains and Foods Group)製、粉末タイプ)を水に分散して、乾物含量が大豆乳化組成物Bと同等の18.2%に調整した分散液に置換して、実施例2同様にフリージングされたアイスクリーム原液を得た。本原液69部に対し、比較例1で得た大豆ホイップクリーム 31部を添加、混合して大豆アイスクリームを得た。本大豆アイスクリームを−20℃、15日保存後風味評価したところ、冷涼感のある軽い食感の口当たりであったが、大豆特有の青臭みがやや強く、コク味も弱いもので総合評価は低いものであった。
(参考例2)
実施例2の大豆乳化組成物Bを、参考例1の生クリームに代えて、実施例2同様にフリージングされたアイスクリーム原液を得た。本原液69部に対し、参考例1で得たホイップクリーム 31部を添加、混合してアイスクリームを得た。本アイスクリームを−20℃、15日保存後風味評価したところ、冷涼感のある軽い食感の口当たりで、乳味、コク味とも優れており、総合評価の高いものであった。
表4に実施例2〜3、比較例2、参考例2の風味評価結果を示した。
(表4)
Figure 0005397499
(実施例4) クリームスープの調製
スイートコーン 30.1%、ローストオニオン(エバラ株式会社製)6.0%、製造例1で調製した大豆乳化組成物A 15.0%、上白糖3.0%、食塩0.3%、コンソメチキン味粉末0.5%、重曹 0.1%、水45.1%、白胡椒 適量を混合し、湯煎で85℃まで加熱して豆乳仕立てのコーンクリームスープを調製した。本スープは、とろみのあるなめらかな食感で、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(比較例3)
実施例4の大豆乳化組成物Aを、無調整豆乳(固形分6.5%、不二製油株式会社製)に代えて、実施例4同様に豆乳仕立てのコーンクリームスープを調製した。本スープは、とろみのあるなめらかな食感であり、大豆特有の青臭みもほとんど感じられなかったが、コク味が弱いものであった。
(参考例3)
実施例4の大豆乳化組成物Aを参考例1の生クリームに代えて、実施例4同様にコーンクリームスープを調製した。本スープは、とろみのあるなめらかな食感で、乳味、コク味がある総合評価の高いものであった。
表5に実施例4、比較例3、参考例3の風味評価結果を示した。
(表5)
Figure 0005397499
(実施例5) ミルクプリン様の大豆飲食品
製造例2で調製した大豆乳化物B 90.81%に対し、砂糖 9.08%、豆腐用のにがり(41ブリックス)0.11%を添加、混合してからカップ容器に充填し、95℃、25分間蒸してミルクプリン様の大豆飲食品を得た。本大豆飲食品は、やや弾力のあるなめらかなプリン様の食感で、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(実施例6) フルーツミルク様大豆飲料の調製
水68.3%に砂糖 9.0%を溶解し、本溶液に対し攪拌しながら製造例2で調製した大豆乳化物B17.5%、2倍濃縮バナナ果汁 5.0%を添加、混合した。次いで、50%クエン酸水溶液を添加してPH6.0に調整した。次に、70℃まで加熱し15Mpaにて高圧均質化してから93℃まで加熱してバナナフレーバー 0.2%を添加し、冷水中で20℃まで冷却した。得られたバナナ風味飲料は、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(実施例7) フルーツミルク様大豆飲料の調製
水78.4%に砂糖9.0%、水溶性大豆多糖類「ソヤファイブS−ZR100」(不二製油株式会社製)の混合物を添加し、80℃で10分間攪拌、溶解した。本水溶液を20℃まで冷却し、製造例2で調製した大豆乳化物B 10.2%と5倍濃縮白桃透明果汁 2.0%を添加、混合した。次いで、50%クエン酸水溶液を添加してPH3.8に調整した。次に、70℃まで加熱し15Mpaにて高圧均質化してから93℃まで加熱してピーチフレーバー 0.1%を添加し、冷水中で20℃まで冷却した。得られたピーチ風味飲料は、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(実施例8) チーズスフレ様豆乳スフレの調製(1)
ホバートミキサーボールに卵黄200gを入れグラニュー糖30gを添加し、中速攪拌で軽くホイップした。その後、低速攪拌しながら大豆乳化物B300g、薄力粉80gを順次添加した。最後に、別途、卵白220gに対しグラニュー糖100g、トレハロース(林原商事社製)70gを添加し、攪拌起泡させたメレンゲを添加、混合して比重0.29の豆乳スフレ生地を調製した。調製した生地600gを8取り鉄板に流し込み、あらかじめ水でぬらした新聞紙上に載置してオーブンに入れ、ダンパー開にて上火190℃、下火160℃で18分間焼成し、チーズスフレ様豆乳スフレを得た。得られたチーズスフレ様豆乳スフレは、
チーズスフレ様のソフトな口当たりと良好な口溶けを有し、大豆特有の青臭みがなく、コク味がある総合評価の高いものであった。
(実施例9) チーズスフレ様豆乳スフレの調製(2)
ホバートミキサーボールに大豆乳化物B280gを入れ、低速攪拌しながら卵黄40g、グラニュー糖35g、コーンスターチ15gを順次添加混合した。さらに、低速攪拌しながらクリームチーズ様食品(商品名:クレメフロマージュ、不二製油株式会社製)320g、卵黄40g、薄力粉20gを添加、混合した。最後に、別途、卵白150gに対しグラニュー糖70g、トレハロース(林原商事社製)30gを添加し、攪拌起泡させたメレンゲを添加、混合して比重0.45の豆乳スフレ生地を調製した。調製した生地30gを直径50mmのアルミカップに流し込み、ダンパー開にて湯煎に入れた状態で上火180℃で30分間オーブン焼成した。得られたチーズスフレ様豆乳スフレは、チーズスフレ様のソフトな口当たりと良好な口溶けを有し、大豆特有の青臭みがなく、チーズ様風味とコク味がある総合評価の高いものであった。
洋菓子類、パン類、デザート類、飲料類、スープ類、ソース類などの製造において、牛乳、生クリーム、全脂粉乳などの乳製品の一部または全部を、本発明の風味が大幅に改善された大豆乳化組成物に置換することにより、風味が大幅に改善された大豆飲食品を提供することができる。

Claims (7)

  1. 乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量(クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出物としての含量をいう。)が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値が55%以上である大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品。
  2. 乾物あたりの食物繊維含量が10重量%以下である、前記請求項1記載の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品。
  3. 乾物あたりの脂質含量が15重量%以上であってNSIが40〜77の範囲に加工された含脂大豆を用い、
    1)該含脂大豆に加水して懸濁液を調製する工程、
    2)該懸濁液を遠心分離により固液分離し、中性脂質及び極性脂質を不溶性画分に移行させて、蛋白質及び糖質を含む水溶性画分を除去し、不溶性画分を回収する工程、
    で得られる、前記請求項1記載の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品。
  4. 回収された不溶性画分をさらに均質化した後、該均質化液を固液分離して食物繊維を除去し、上清を回収して得られる、前記請求項3記載の大豆乳化組成物を含有することを特徴とする大豆飲食品。
  5. 風味改善された大豆飲食品への請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の大豆乳化組成物の使用。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の大豆乳化組成物を、風味改善の有効成分として用いることを特徴とする、大豆飲食品の風味改善方法。
  7. 請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の大豆乳化組成物を、風味改善の有効成分として用いることを特徴とする、大豆飲食品の製造方法。
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