図1は、本発明が適用された車両用シフト制御装置(以下、「シフト制御装置」と表す)10の概略構成を説明する図である。このシフト制御装置10は、電子制御部20、シフト操作装置30、変速機40、パーキングロック装置50などを備え、電気制御により変速機40のシフトポジション(シフトポジション、シフトレンジ)を切り替えるシフトバイワイヤ方式のシフト制御装置として機能する。尚、以下においては、駆動力源としてエンジンと電動機とを備えたハイブリッド車両に好適に用いられる変速機40に本発明のシフト制御装置10が適用された場合の例について説明するが、本発明のシフト制御装置10が適用される車両は通常のエンジン車両、ハイブリッド車両、電動車両などどのような形式の車両であっても構わない。
電子制御部20は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、不図示のエンジンや変速機40に備えられた電動機に関するハイブリッド駆動制御等の駆動制御、シフトバイワイヤ方式を用いた変速機40のシフトレンジの切替制御などを実行する。
電子制御部20には、例えばシフトレバー32の操作位置(シフトポジション)PSHを検出する為の位置センサであるシフトセンサ36及びセレクトセンサ38(図2参照)からのシフトポジションPSHに応じた位置信号、ユーザにより操作されて変速機40のシフトレンジをパーキングレンジ(Pレンジ)とパーキングレンジ以外の非Pレンジとの間で切り替える為のPスイッチ34におけるスイッチ操作を表すPスイッチ信号、パーキングロックを作動或いは解除して変速機40のシフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替える為のパーキングロック装置50におけるパーキングロックの作動状態を表すP位置信号、ユーザにより操作されて車両電源のオン状態(車両電源ON)とオフ状態(車両電源OFF)とを切り替える為の車両電源スイッチ80におけるスイッチ操作を表すパワースイッチ信号、出力回転センサ82からの変速機40の出力回転部材の回転速度NOUTを表す出力回転速度信号、電動機回転センサ(例えばレゾルバ)84からの変速機40に備えられた電動機の回転速度NMを表す電動機回転速度信号、ブレーキスイッチ86からのフットブレーキ操作BONを表すブレーキ操作信号などが、それぞれ供給される。
また、電子制御部20からは、例えばエンジン出力を制御するエンジン出力制御指令信号、変速機40内の電動機の作動を指令するハイブリッドモータ制御指令信号、変速機40のシフトレンジを切り替える為のシフトレンジ切換制御指令信号、インジケータ(シフトレンジ表示装置)90を作動させて変速機40におけるシフトレンジの切替状態を表示する為のシフトレンジ表示制御指令信号及びパーキングロック状態を表示する為のパーキングロック表示制御指令信号、パーキングロック装置50の作動を指令するP切換制御指令信号等が、それぞれ出力される。
具体的には、電子制御部20は、電源制御用コンピュータ(以下、「PM−ECU」と表す)22、ハイブリッド制御用コンピュータ(以下、「HV−ECU」と表す)24、パーキング制御用コンピュータ(以下、「P−ECU」と表す)26、ID照合用コンピュータ(以下、「照合ECU」と表す)27、キースロット(以下、「ID−BOX」と表す)28などを備えている。電子制御部20内の各ECUや装置における相互の通信は、例えば車載向けの多重通信を行う為の多重通信線や各種制御を実行するに際して通信相手のECUやセンサ毎に例えばワイヤーハーネスを1対1に直接結んで構成されたメタルワイヤなどの通信線であるじか線を介して行われる。尚、上述した電子制御部20へ供給される各種信号や電子制御部20から出力される各種指令信号は、例えば通信相手のECUやセンサ毎に1対1に直接結んで構成されたワイヤーハーネスなどを介して送受信される。
PM−ECU22は、例えばユーザにより操作される車両電源スイッチ80からのパワースイッチ信号に基づいて車両電源ONと車両電源OFFとを切り替える。例えば、PM−ECU22は、車両電源OFFのときにパワースイッチ信号の入力を検知すると、車両電源ONと車両電源OFFとを切り替える為の不図示のリレーをオン状態として車両電源ONとする。また、PM−ECU22は、車両電源ONのときに車速Vが所定車速V’未満であること及びパワースイッチ信号の入力を検知すると、上記リレーをオフ状態として車両電源OFFとする。加えて、車両電源OFFとするときにP−ECU26から入力されるPロック状態信号がパーキングロック装置50におけるパーキングロックの解除中を表す信号である場合には、PM−ECU22は、パーキングロック装置50におけるパーキングロックを作動させてシフトレンジをPレンジとする信号をP−ECU26へ出力する(この一連の作動を「オートP作動」という)。上記所定車速V’は、例えば車両停止状態であると判断する為の予め実験的に求められて記憶された車両停止判定車速である。
HV−ECU24は、例えば変速機40の作動を統括的に制御する。例えば、HV−ECU24は、PM−ECU22により車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられる際に、フットブレーキ操作BONを表すブレーキ操作信号の入力を検知すると、車両走行を可能とする為のハイブリッドシステムを起動し、車両走行に関わるハイブリッドモータ制御指令を変速機40へ出力して車両走行を制御する。また、HV−ECU24は、シフトセンサ36及びセレクトセンサ38からのシフトポジションPSHに応じた位置信号に基づいてシフトレンジ切換制御指令を変速機40へ出力してシフトレンジを切り替える。また、HV−ECU24は、Pスイッチ34からのPスイッチ信号に基づいて変速機40のシフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替えるP切替信号をP−ECU26へ出力する。また、HV−ECU24は、シフトレンジの状態を表示する為のシフト表示制御指令信号(シフトレンジ表示制御指令信号、パーキングロック表示制御指令信号)をインジケータ90へ出力する。インジケータ90は、HV−ECU24が出力したシフト表示制御指令信号に基づいてシフトレンジの状態を表示する。尚、本実施例では、車両電源ONというのは上述したようにハイブリッドシステムを起動して車両走行を可能な状態とするものであることはもちろんのこと、車両走行が可能でない状態(電動機等のハイブリッドモータ制御が実行できない状態)であっても少なくとも変速機40のシフトレンジの切換制御を可能な状態とするものであれば良い。
P−ECU26は、例えばHV−ECU24からのP切替信号に基づいてシフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替える為に、パーキングロック装置50の駆動を制御してパーキングロックを作動させるか或いは解除させる。また、P−ECU26は、パーキングロック装置50からのパーキングロックの作動状態を表すP位置信号に基づいて変速機40のシフトレンジがPレンジであるか非Pレンジであるかを判断し、その判断した結果をPロック状態信号としてPM−ECU22、HV−ECU24等へ出力する。また、P−ECU26は、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられた際には、後述するように、パーキングロック装置50における初期駆動制御を実行し、P位置信号や非P位置信号が適切に得られる為のP壁位置及び非P壁位置の検出制御を実行する。また、P−ECU26は、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられた際の上記パーキングロック装置50における一連の初期制御を実行する前に、P−ECU26自体のイニシャル処理(初期処理)を実行する。
更に、P−ECU26は、車両電源OFFのときに、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられて停止状態から起動状態とされた際の上記パーキングロック装置50における一連の初期制御を実行することはできないまでも、車両情報を検知すること例えば車両停止中の機能チェック等の車両が備える機能を作動させておくことが可能なウェイク状態とすることができる。つまり、P−ECU26は、車両電源ONとすることで上記パーキングロック装置50における一連の初期制御が可能な第1の動作状態としての起動状態と車両電源OFFとすることでその一連の初期制御が不能な第2の動作状態としての停止状態とは別に、その一連の初期制御は不能ではあるが車両情報を検知することは可能な第3の動作状態としてのウェイク状態とすることが可能である。このウェイク状態では、例えば車両電源ON時にP−ECU26へ電力を供給する電源とは別の電源によりP−ECU26へ電力が供給される。また、P−ECU26は、上述したように車両電源OFFで制御を継続することが可能なECUであり、すなわちPM−ECU22により制御される車両電源ONと車両電源OFFとに拘わらずウェイク状態とすることが可能なECUであり、センサやスイッチなどからの信号によりユーザが車両から離れたと思われる一定の条件を検知すると、暗電流の低減を図る為に、ウェイク状態から低電流消費モードであるスリープ状態へ移行する。また、P−ECU26は、スリープ状態からウェイク状態へ移行する際にはP−ECU26自体のイニシャル処理(初期処理)を実行する。従って、ウェイク状態から起動状態とされるときには、P−ECU26自体のイニシャル処理は既に実行されているので、再度そのイニシャル処理は実行されない。このようなことから、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられる際には、P−ECU26がウェイク状態とされてイニシャル処理が実行された後にP−ECU26が起動状態とされる。
P−ECU26のウェイク状態で作動される車両停止中の機能チェック等の車両が備える機能は、例えば自車に登録されたキー以外を使用した場合の車両電源ON(例えばハイブリッドシステムの起動)を禁止する車両盗難防止機能として良く知られた所謂イモビライザー機能である。このイモビライザー機能は例えば照合ECU27及びID−BOX28により実現される。また、P−ECU26のウェイク状態で作動される車両停止中の機能チェック等の車両が備える他の機能としては、例えばユーザによるPスイッチ34の操作に基づくパーキングロックの解除への切替えを行う為の変速機40の非Pレンジへの切替えを実行不能とする盗難防止機能である。
ID−BOX28は、例えば不図示のキーの挿入状態を検出し、検出結果を例えば照合ECU27やP−ECU26へ出力する。P−ECU26は、キーの挿入が検出されたことでウェイク状態とされる。また、例えば上記キーに内蔵された通信チップがIDコードをID−BOX28を介して照合ECU27へ発信する。
照合ECU27は、例えばID−BOX28を介して上記キーのIDコードを受信し、車両登録IDと照合する。そして、上記キーのIDコードと車両登録IDとの照合結果が上記キーに内蔵された通信チップからID−BOX28を介して或いは照合ECU27からPM−ECU22やP−ECU26へ出力される。上記キーのIDコードと車両登録IDとが一致するという照合結果であれば、イモビライザーシステムが解除され、車両電源ONへの切替えが許可される。
図2は、変速機40において複数種類のシフトレンジを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置30の一例を示す図である。このシフト操作装置30は、例えば運転席の近傍に配設され、複数のシフトポジションPSHへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー32を備えている。また、本実施例のシフト操作装置30は、変速機40のシフトレンジをパーキングレンジ(Pレンジ)としてパーキングロックする為のモーメンタリ式の操作子としてのPスイッチ34をシフトレバー32の近傍に別スイッチとして備えている。
シフトレバー32は、図2に示すように車両の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つのシフトポジションPSHであるRポジション(R位置)、Nポジション(N位置)、Dポジション(D位置)と、それに平行に配列されたMポジション(M位置)、Bポジション(B位置)とへそれぞれ操作されるようになっており、シフトポジションPSHに応じた位置信号をHV−ECU24へ出力する。また、シフトレバー32は、RポジションとNポジションとDポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、MポジションとBポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、更に、NポジションとBポジションとの相互間で上記縦方向に直交する車両の横方向に操作可能とされている。
Pスイッチ34は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、ユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号をHV−ECU24へ出力する。例えば変速機40のシフトレンジが非PレンジにあるときにPスイッチ34が押されると、車両が停止状態であるなどの所定の条件が満たされていれば、HV−ECU24からのP切替信号に基づいてP−ECU26によりシフトレンジがPレンジとされる。このPレンジは、変速機40内の動力伝達経路が遮断され、且つ、パーキングロック装置50により駆動輪の回転を機械的に阻止するパーキングロックが実行される駐車レンジである。
シフト操作装置30のMポジションはシフトレバー32の初期位置(ホームポジション)であり、Mポジション以外のシフトポジションPSH(R,N,D,Bポジション)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー32を解放すればすなわちシフトレバー32に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー32はMポジションへ戻るようになっている。シフト操作装置30が各シフトポジションPSHへシフト操作された際には、HV−ECU24によりシフトポジションPSH(位置信号)に基づいてそのシフト操作後のシフトポジションPSHに対応したシフトレンジに切り替えられると共に、現在のシフトポジションPSHすなわち変速機40のシフトレンジの状態がインジケータ90に表示される。
各シフトレンジについて説明すると、シフトレバー32がRポジションへシフト操作されることにより選択されるRレンジは、車両を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行レンジである。また、シフトレバー32がNポジションへシフト操作されることにより選択されるニュートラルレンジ(Nレンジ)は、変速機40内の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立レンジである。また、シフトレバー32がDポジションへシフト操作されることにより選択されるDレンジは、車両を前進させる駆動力が駆動輪38に伝達される前進走行レンジである。例えば、HV−ECU24は、シフトレンジがPレンジであるときに、車両の移動防止(パーキングロック)を解除する所定のシフトポジションPSH(具体的には、Rポジション、Nポジション、又はDポジション)へシフト操作されたと判断した場合には、パーキングロックを解除させるP切替信号をP−ECU26へ出力する。P−ECU26は、HV−ECU24からのP切替信号に基づいてパーキングロック装置50に対してパーキングロックを解除するP切換制御指令信号を出力してパーキングロックを解除させる。そして、HV−ECU24は、そのシフト操作後のシフトポジションPSHに対応したシフトレンジへ切り換える。
また、シフトレバー32がBポジションへシフト操作されることにより選択されるBレンジは、Dレンジにおいて例えば電動機に回生トルクを発生させるなどによりエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪の回転を減速させる減速前進走行レンジ(エンジンブレーキレンジ)である。従って、HV−ECU24は、現在のシフトレンジがDレンジ以外のシフトレンジであるときにシフトレバー32がBポジションへシフト操作されてもそのシフト操作を無効とし、DレンジであるときのみBポジションへのシフト操作を有効とする。例えば、Pレンジであるときに運転者がBポジションへシフト操作したとしてもシフトレンジはPレンジのまま継続される。
本実施例のシフト操作装置30では、シフトレバー32に作用する外力が無くなればMポジションへ戻されるので、シフトレバー32のシフトポジションPSHを視認しただけでは選択中のシフトレンジを認識することは出来ない。そのため、運転者の見易い位置にインジケータ90が設けられており、選択中のシフトレンジがPレンジである場合も含めてインジケータ90に表示されるようになっている。
本実施例のシフト制御装置10は所謂シフトバイワイヤを採用しており、シフト操作装置30は上記縦方向である第1方向とその方向と交差する(図2では直交する)横方向である第2方向とに2次元的にシフト操作されるので、そのシフトポジションPSHを位置センサの検出信号として電子制御部20に出力するために、上記第1方向のシフト操作を検出する第1方向検出部としてのシフトセンサ36と上記第2方向のシフト操作を検出する第2方向検出部としてのセレクトセンサ38とを備えている。シフトセンサ36とセレクトセンサ38との何れもシフトポジションPSHに応じた検出信号(位置信号)としての電圧を電子制御部20に対し出力し、その検出信号電圧に基づき電子制御部20はシフトポジションPSHを認識(判定)する。すなわち、上記第1方向検出部(シフトセンサ36)と第2方向検出部(セレクトセンサ38)とが全体として、シフト操作装置30のシフトポジションPSHを検出するシフトポジション検出部を構成していると言える。
シフトポジションPSHの認識について一例を示せば、図3に示すようにシフトセンサ36の検出信号電圧VSFは、前記縦方向(第1方向)のシフトポジションPSHがB又はDポジションであればlow範囲内の電圧になり、M又はNポジションであれば上記low範囲より高電圧のmid範囲内の電圧になり、Rポジションであれば上記mid範囲より高電圧のhigh範囲内の電圧になる。また、図4に示すようにセレクトセンサ38の検出信号電圧VSLは、前記横方向(第2方向)のシフトポジションPSHがM又はBポジションであればlow範囲内の電圧になり、R、N又はDポジションであれば上記low範囲より高電圧のhigh範囲内の電圧になる。HV−ECU24はこのように変化する上記検出信号電圧VSF,VSLを検出することにより、図5の図表に示すように、「VSF=mid,VSL=high」であればシフトポジションPSHはNポジションであると認識し、「VSF=high,VSL=high」であればシフトポジションPSHはRポジションであると認識し、「VSF=low,VSL=high」であればシフトポジションPSHはDポジションであると認識し、「VSF=mid,VSL=low」であればシフトポジションPSHはMポジションであると認識し、「VSF=low,VSL=low」であればシフトポジションPSHはBポジションであると認識する。尚、図3においては、low範囲、mid範囲、high範囲の各範囲は連続するものであるが、それら各範囲間に判定不定の不感帯を設けても良い。また、シフトセンサ36の検出信号電圧VSFの特性すなわち縦方向のシフトポジションPSHに対するlow〜highの特性は、逆のhigh〜lowであっても良い。同様に、図4においては、low範囲とhigh範囲とは連続するものであるが、それらの範囲間に判定不定の不感帯を設けても良い。また、セレクトセンサ38の検出信号電圧VSLの特性すなわち横方向のシフトポジションPSHに対するlow〜highの特性は、逆のhigh〜lowであっても良い。
このようにしてHV−ECU24によりシフトポジションPSHは認識されるが、誤操作や誤認識(判定)等の防止のため、各シフトポジションPSHへシフト操作されれば直ちにそのシフト操作後のシフトポジションPSHに対応したシフトレンジへと切り換えられるわけでは無く、各シフトポジションPSHもしくは各シフトレンジにつき所定のレンジ確定時間(シフト操作確定時間)が予め設定されている。例えば、HV−ECU24は、シフト操作後のシフトポジションPSHでシフトレバー32が留まっている時間である滞留時間が上記所定のレンジ確定時間以上になった場合にそのシフト操作を確定しシフト操作後のシフトポジションPSHに対応したシフトレンジへと切り換える。PレンジからNレンジへと切り換えられる場合を例に説明すると、シフトレンジがPレンジであるときにMポジションからNポジションへシフト操作された場合において、HV−ECU24は、シフトシフトレバー32のNポジションでの滞留時間が、Nポジションへのシフト操作を確定する為の上記所定のレンジ確定時間であるニュートラルレンジ確定時間以上になった場合に、そのシフト操作後のシフトポジションPSHがNポジションであると確定(判定)し、変速機40のシフトレンジをPレンジからNレンジに切り替える。
図6は、駆動輪の回転を機械的に阻止するパーキングロック装置50の構成を説明する図である。図6において、パーキングロック装置50は、Pロック機構52、Pロック駆動モータ54、エンコーダ56などを備え、電子制御部20(例えばP−ECU26)からの制御信号に基づき車両の移動を防止するために作動するアクチュエータである。
Pロック駆動モータ54は、スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)により構成され、P−ECU26からの指令(制御信号)を受けてシフトバイワイヤシステムによってPロック機構52を駆動するアクチュエータである。エンコーダ56は、A相、B相及びZ相の信号を出力するロータリエンコーダであって、Pロック駆動モータ54と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知してその回転状況を表す信号すなわちPロック駆動モータ54の移動量(回転量)に応じた計数値(エンコーダカウント)を取得するためのパルス信号をP−ECU26へ供給する。P−ECU26は、エンコーダ56から供給される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行う。
Pロック機構52は、Pロック駆動モータ54により回転駆動されるシャフト58、シャフト58の回転に伴って回転するディテントプレート60、ディテントプレート60の回転に伴って動作するロッド62、駆動輪と連動して回転するパーキングギヤ64、パーキングギヤ64を回転阻止(ロック)するためのパーキングロックポール66、ディテントプレート60の回転を制限してシフトポジションを固定するディテントスプリング68、及びころ70を備えている。パーキングギヤ64は、それがロックされれば駆動輪もロックされる関係にあれば設けられる場所に制限は無いが、例えば変速機40の出力回転部材に固定されている。
ディテントプレート60は、シャフト58を介してPロック駆動モータ54の駆動軸に作動的に連結されており、ロッド62、ディテントスプリング68、ころ70などと共にPロック駆動モータ54により駆動されてPレンジに対応するパーキングロックポジションとPレンジ以外の各シフトレンジに対応する非パーキングロックポジションとを切り替えるためのパーキングロック位置決め部材として機能する。シャフト58、ディテントプレート60、ロッド62、ディテントスプリング68、及びころ70は、パーキングロック切替機構の役割を果たす。
図6は、シフトレンジが非Pレンジであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール66がパーキングギヤ64をロックしていないので、駆動輪の回転はPロック機構52によっては妨げられない。この状態から、Pロック駆動モータ54によりシャフト58を図6に示す矢印Cの方向に回転させると、ディテントプレート60を介してロッド62が図6に示す矢印Aの方向に押され、ロッド62の先端に設けられたテーパー部材72によりパーキングロックポール66が図6に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート60の回転に伴って、ディテントプレート60の頂部に設けられた2つの谷のうち一方、すなわち非パーキングロックポジション74(以下、非P位置74(図7参照))にあったディテントスプリング68のころ70は、山75を乗り越えて他方の谷、すなわちパーキングロックポジション76(以下、P位置76(図7参照))へ移る。ころ70は、その軸心を中心として回転可能にディテントスプリング68に設けられている。ころ70がP位置76に来るまでディテントプレート60が回転したとき、パーキングロックポール66は、パーキングギヤ64と噛み合う位置まで押し上げられる。これにより、パーキングギヤ64と連動して回転する駆動輪の回転が機械的に阻止され、シフトレンジがPレンジに切り換わる。
パーキングロック装置50では、Pレンジと非Pレンジとの間のシフトレンジ切替時にディテントプレート60、ディテントスプリング68、シャフト58などのPロック機構52にかかる負荷を低減する為に、例えばP−ECU26はディテントスプリング68のころ70が山75を乗り越えて落ちるときの衝撃が少なくなるようにPロック駆動モータ54の回転量を制御する。
図7は、ディテントプレート60の構成を説明する図である。それぞれの谷において、山75から離れた側に位置する面を壁と言う。すなわち壁は、P−ECU26による以下に示す制御を行わない状態で、ディテントスプリング68のころ70が山75を乗り越えて谷に落ちるときに、ころ70とぶつかる位置に存在する。P位置76における壁を「P壁」と呼び、非P位置74における壁を「非P壁」と呼ぶ。ころ70がP位置76から非P位置74に移動する場合、P−ECU26は、非P壁78がころ70に衝突しないようにPロック駆動モータ54を制御する。具体的には、P−ECU26は、非P壁78がころ70に衝突する手前の位置でPロック駆動モータ54の回転を停止する。この位置を「非P目標回転位置」と言う。また、ころ70が非P位置74からP位置76に移動する場合、P−ECU26は、P壁77がころ70に衝突しないようにPロック駆動モータ54を制御する。具体的には、P−ECU26は、P壁77がころ70に衝突する手前の位置でPロック駆動モータ54の回転を停止する。この位置を「P目標回転位置」と言う。P−ECU26によるPロック駆動モータ54の制御により、シフトレンジ切替時においてディテントプレート60、ディテントスプリング68、シャフト58などのPロック機構52にかかる負荷を大幅に低減することができる。負荷を低減することにより、Pロック機構52の軽量化、低コスト化を図ることもできる。
図8は、Pロック駆動モータ54の回転量すなわちエンコーダカウントとシフトレンジとの対応関係を説明する図である。Pロック駆動モータ54はディテントプレート60を回転駆動し、そのPロック駆動モータ54の回転量はP壁77および非P壁78により規制される。図8に、Pロック駆動モータ54の回転制御を行う上でのP壁77の位置(P壁位置)及び非P壁78の位置(非P壁位置)を概念的に示した。このP壁位置から非P壁位置までをPロック駆動モータ54の可動回転量と言う。また、図8に示したP判定位置および非P判定位置は、いずれもシフトレンジの切替えが判定されるディテントプレート60の所定位置である。すなわち、P判定位置からP壁位置までがPレンジ範囲であり、非P判定位置から非P壁位置までが非Pレンジ範囲である。エンコーダ56で検出したPロック駆動モータ54の回転量がPレンジ範囲にあるときには、シフトレンジがPレンジであることが判定される一方で、Pロック駆動モータ54の回転量が非Pレンジ範囲にあるときには、シフトレンジが非Pレンジであることが判定される。尚、Pロック駆動モータ54の回転量がP判定位置から非P判定位置の間にあるときには、シフトレンジが不定、またはシフトレンジが切替中であることが判定される。以上の判定は、P−ECU26により実行される。
また、図8に示すように、Pレンジ範囲内にP目標回転位置が設定され、非Pレンジ範囲内に非P目標回転位置が設定される。P目標回転位置は、非PレンジからPレンジへの切替時に、P壁77がディテントスプリング68のころ70に衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。この所定のマージンは、経時変化などによるガタを考慮して余裕をもって設定される。これにより、ある程度の使用回数であれば、経時変化を吸収することができ、非PレンジからPレンジへのシフトレンジ切替時におけるP壁77ところ70との衝突を回避できる。同様に、非P目標回転位置は、Pレンジから非Pレンジへの切替時に、非P壁78がディテントスプリング68のころ70に衝突しない位置であり、非P壁位置から所定のマージンをもって定められる。この所定のマージンは、経時変化などによるガタを考慮して余裕をもって設定され、ある程度の使用回数であれば、経時変化を吸収することができ、Pレンジから非Pレンジへのシフトレンジ切替時における非P壁78ところ70との衝突を回避することができる。尚、非P壁位置からのマージンとP壁位置からのマージンとは同一である必要はなく、ディテントプレート60の形状などに依存して異なってもよい。
このように構成されたパーキングロック装置50において、PM−ECU22はエンコーダ56により出力されたパルス信号に基づいてPロック駆動モータ54の回転量に応じたエンコーダカウントを取得する。また、PM−ECU22は、車両電源ONへの切替え時には、エンコーダカウントを零に設定し、その後のエンコーダ56からの信号出力に基づいて順次エンコーダカウントを更新する。尚、本実施例では、P壁位置方向への回転(図6の矢印C方向への回転)によるエンコーダカウントを負として設定する。また、PM−ECU22は、取得したエンコーダカウントを予め設定された目標エンコーダカウント(目標カウント値、目標計数値)に一致させるようにPロック駆動モータ54を制御する。この目標カウント値は、例えばPロック駆動モータ54をP目標回転位置や非P目標回転位置に停止させる為の予め実験的に求められて設定された目標値である。
以上、Pロック駆動モータ54の回転量とシフトレンジとの対応関係を説明した。ところで、エンコーダ56は相対位置センサであるためPロック駆動モータ54の絶対位置を把握する必要がある。以下に、相対的な位置情報を検出するエンコーダ56を用いて、Pロック駆動モータ54の位置制御を行う方法を具体的に説明する。
図9は、車両電源ONとされた際のパーキングロック装置50における一連の初期制御を説明する状態遷移図である。図9において、PM−ECU22により車両電源ONとされると[状態A]、P−ECU26はPロック駆動モータ54のリレーが繋がるのを待つ期間として初期待機を行う[状態B]。この状態Bでは、例えばP−ECU26はスリープ状態からウェイク状態としてP−ECU26自体のイニシャル処理を行う。続いて、P−ECU26は、Pロック駆動モータ54の回転を適切に制御する為に、Pロック駆動モータ54の励磁合わせ(位相合わせ)などのPロック駆動モータ54の初期駆動制御を行う[状態C]。続いて、P−ECU26は、Pロック駆動モータ54の前記P壁位置、及び非P壁位置を検出して、基準位置を設定する[状態D]。P−ECU26は、基準位置を設定した後は、例えばユーザによるPスイッチ34の操作に基づくパーキングロックの作動や解除を実行する通常制御を行う[状態E]。以下に、上記(状態D)におけるP壁位置及び非P壁位置を検出する制御方法を説明する。
図10は、P壁位置を検出する制御方法を説明するための図である。P−ECU26は、P壁位置検出制御では、先ず、Pロック駆動モータ54を駆動させてディテントプレート60を図6に示す矢印Cの方向、すなわちP壁77がディテントスプリング68のころ70に向かう方向に回転させ、ころ70とP壁77とを接触させる。P壁77は、P位置76においてすなわち所定のシフトレンジとしてのPレンジにおいて、Pロック駆動モータ54の所定方向としての図6に示す矢印Cの方向の回転を規制する規制部材として機能する。尚、P壁77は、ディテントスプリング68及びころ70と協同して規制部材を構成してもよい。図10において、矢印F1はPロック駆動モータ54による回転力、矢印F2はディテントスプリング68によるバネ力、矢印F3はロッド62による押し戻し力を示す。点線で示すディテントプレート60’は、P壁77ところ70とが接触した位置を示す。従って、ディテントプレート60’の位置を検出することが、P壁77の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート60は、P壁77ところ70との接触後も、点線で示す位置から、Pロック駆動モータ54の回転力F1により図6に示す矢印Cの方向に、ディテントスプリング68のバネ力に抗して回転される。これによりディテントスプリング68に撓みが生じて、バネ力F2が増加し、またロッド62による押し戻し力F3も増加する。回転力F1が、バネ力F2及び押し戻し力F3と釣り合ったところで、ディテントプレート60の回転が停止する。
P−ECU26は、取得したエンコーダカウントに基づいてディテントプレート60の回転停止を判定する。例えば、P−ECU26は、エンコーダカウントの最小値又は最大値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート60及びPロック駆動モータ54の回転停止を判定する。エンコーダカウントの最小値又は最大値の何れを監視するかは、エンコーダ56に応じて設定されればよく、何れにしても最小値又は最大値が所定時間変化しないことは、ディテントプレート60が動かなくなった状態を示す。
P−ECU26は、回転停止時のディテントプレート60の位置を暫定的なP壁位置(以下、「暫定P壁位置」と言う)として検出し、更に、ディテントスプリング68の撓み量又は撓み角を算出する。この撓み量又は撓み角の算出は、例えばP−ECU26に予め記憶されているPロック駆動モータ54への印加電圧に対応する撓み量又は撓み角の関係を示すマップを用いて行われる。P−ECU26は、そのマップから暫定P壁位置検出時のPロック駆動モータ54への印加電圧に対応する撓み量又は撓み角を算出する。尚、Pロック駆動モータ54の印加電圧の代わりに、バッテリ電圧を用いたマップであってもよい。バッテリ電圧は例えばP−ECU26により監視されており、容易に検出することができる。尚、この場合は、バッテリからPロック駆動モータ54までのワイヤーハーネスなどによる電圧降下分を考慮して、マップが作成されることになる。
P−ECU26は、このマップを用いて算出した撓み量又は撓み角から暫定P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置をP壁位置として確定する。このとき、P−ECU26は、確定したP壁位置において、エンコーダカウントをCNTPに設定する。そして、P−ECU26は、エンコーダカウントを零にするように、Pロック駆動モータ54を駆動させてディテントプレート60を図6に示す矢印Dの方向、すなわちP壁77がディテントスプリング68のころ70から離反する方向に回転させ、ディテントプレート60の位置を所定のP位置とする。この所定のP位置は、Pレンジ範囲において予め設定された所定位置であって、確定されたP壁位置とのエンコーダカウント差がCNTPとなるように設定されている。また、この所定のP位置をP目標回転位置としても良い。このように、P壁位置を確定することによりP目標回転位置を設定することができる。尚、印加電圧に対応する撓み量又は撓み角の関係を示すマップの代わりに、Pロック駆動モータ54の出力トルクに対応する撓み量又は撓み角の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、撓み量又は撓み角を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
図11は、非P壁位置を検出する制御方法を説明するための図である。P−ECU26は、非P壁位置検出制御では、先ず、Pロック駆動モータ54を駆動させてディテントプレート60を図6に示す矢印Dの方向、すなわち非P壁78がディテントスプリング68のころ70に向かう方向に回転させ、ころ70と非P壁78とを接触させる。非P壁78は、非P位置74においてすなわち所定のシフトレンジとしての非Pレンジにおいて、Pロック駆動モータ54の所定方向としての図6に示す矢印Dの方向の回転を規制する規制部材として機能する。尚、非P壁78は、ディテントスプリング68及びころ70と協同して規制部材を構成してもよい。図11において、矢印F1はPロック駆動モータ54による回転力、矢印F2はディテントスプリング68によるバネ力、矢印F3はロッド62による引っ張り力を示す。点線で示すディテントプレート60”は、非P壁78ところ70とが接触した位置を示す。従って、ディテントプレート60”の位置を検出することが、非P壁78の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート60は、非P壁78ところ70との接触後も、点線で示す位置から、Pロック駆動モータ54の回転力F1により図6に示す矢印Dの方向に、ディテントスプリング68の引っ張り力に抗して回転される。これによりディテントスプリング68に伸びが生じて、バネ力F2が増加し、またロッド62による引っ張り力F3も増加する。回転力F1が、バネ力F2及び引っ張り力F3と釣り合ったところで、ディテントプレート60の回転が停止する。
P−ECU26は、取得したエンコーダカウントに基づいてディテントプレート60の回転停止を判定する。例えば、P−ECU26は、エンコーダカウントの最小値又は最大値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート60及びPロック駆動モータ54の回転停止を判定する。
P−ECU26は、回転停止時のディテントプレート60の位置を暫定的な非P壁位置(以下、「暫定非P壁位置」と言う)として検出し、更に、ディテントスプリング68の伸び量を算出する。この伸び量の算出は、例えばP−ECU26に予め記憶されているPロック駆動モータ54への印加電圧に対応する伸び量の関係を示すマップを用いて行われる。P−ECU26は、そのマップから暫定非P壁位置検出時のPロック駆動モータ54への印加電圧に対応する伸び量を算出する。
P−ECU26は、このマップを用いて算出した伸び量から暫定非P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置を非P壁位置として確定する。このとき、P−ECU26は、確定した非P壁位置において、エンコーダカウントをCNTCPに設定する。そして、P−ECU26は、エンコーダカウントを所定計数値だけ減少させたエンコーダカウントCPとするように、Pロック駆動モータ54を駆動させてディテントプレート60を図6に示す矢印Cの方向、すなわち非P壁78がディテントスプリング68のころ70から離反する方向に回転させ、ディテントプレート60の位置を所定の非P位置とする。この所定の非P位置は、非Pレンジ範囲において予め設定された所定位置であって、確定された非P壁位置とのエンコーダカウント差が所定計数値となるように設定されている。また、この所定の非P位置を非P目標回転位置としても良い。このように、非P壁位置を確定することにより非P目標回転位置を設定することができる。尚、印加電圧に対応する伸び量の関係を示すマップの代わりに、Pロック駆動モータ54の出力トルクに対応する伸び量の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、伸び量を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
このように、車両電源ONとされたP−ECU26の起動状態では、Pロック駆動モータ54の移動(回転)が規制される方向にPロック駆動モータ54を移動するとき、取得されたエンコーダカウントに基づいて所定のシフトレンジに対応したPロック駆動モータ54の壁位置を検出して、基準位置を設定することができる。
図12は、Pロック駆動モータ54に印加する通電指令パルスの波形を説明する図である。シフトレンジ切替えの通常制御時は、通電指令パルスとしてハイ期間の長い信号をPロック駆動モータ54に印加する。一方、P−ECU26による壁位置検出制御時には、通電指令パルスとして、Pロック駆動モータ54の単位時間当たりの出力を、シフトレンジ切替えの通常制御時におけるPロック駆動モータ54の単位時間当たりの出力よりも小さくする信号をPロック駆動モータ54に印加する。具体的には、Pロック駆動モータ54に印加する通電指令パルスのオン幅を小さくする。壁位置検出制御時のPロック駆動モータ54の回転速度を遅くすることにより、壁ところ70との衝撃を低減できる。尚、例えば図12に示す通電指令パルスがオン且つPロック駆動モータ54におけるUVW三相の通電指令がオンであるときに、UVW三相のそれぞれの相に通電される。
以上のように、車両電源ONへの切替え時にはすなわちP−ECU26の起動状態への切替え時には、P−ECU26のウェイク状態にてP−ECU26自体のイニシャル処理が実行された後、P−ECU26の起動状態にてパーキングロック装置50における初期制御が実行されて壁位置が検出される。すなわち、パーキングロック装置50における初期制御として、Pロック駆動モータ54の初期駆動制御が行われ、続いて、Pロック駆動モータ54の前記P壁位置及び非P壁位置が検出されて基準位置が設定される。つまり、Pロック駆動モータ54の実可動回転量は2つの壁位置の間の範囲であって、一方のシフトレンジにおける壁位置検出制御を行って壁位置を検出した後、他方のシフトレンジにおける壁位置検出制御を行って他方の壁位置を検出することで測定することができる。そして、壁位置を検出することでPロック駆動モータ54の絶対位置が把握できるので、目標回転位置を設定することができる。
ここで、上述したように、本実施例では、Pロック駆動モータ54の初期動作においてPロック駆動モータ54を制御する為の基準位置を検出することが可能な第1の動作状態としての起動状態と、その基準位置を検出することが不能な第2の動作状態としての停止状態との間でP−ECU26の動作状態を切替え可能である。加えて、停止状態と起動状態とは別に、上記基準位置を検出することは不能ではあるが車両情報を検知することは可能な第3の動作状態としてのP−ECU26のウェイク状態とすることが可能である。
ところで、例えば車両電源OFF時にP−ECU26がウェイク状態となっている状態において、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられてP−ECU26がウェイク状態から起動状態とされるときには、既に実行済みであるP−ECU26自体のイニシャル処理を実行しない。従って、P−ECU26のウェイク状態において車両電源OFFから車両電源ONへ切り替える場合には、P−ECU26自体のイニシャル処理(図9の[状態B])後に実行されるPロック駆動モータ54の初期駆動制御(図9の[状態C])やPロック駆動モータ54の壁位置検出制御(図9の[状態D])も、そのイニシャル処理と同様に実行しないという態様が考えられる。例えば、車両電源OFFとした後、P−ECU26のウェイク状態が継続されている状態で再び車両電源ONへ切り替えた場合には、P−ECU26自体のイニシャル処理と同様にPロック駆動モータ54の初期駆動制御や壁位置検出制御を実行しないという態様が考えられる。そうすると、初期駆動制御によるPロック駆動モータ54の位相合わせや壁位置検出制御によるPロック駆動モータ54の基準位置の設定が車両電源OFFによって初期状態に戻されているにも拘わらず、車両電源ON時にその初期駆動制御や壁位置検出制御が実行されないために、例えばPロック駆動モータ54の回転が適切に制御されず、またPレンジと非Pレンジとの切替えが適切に行われない可能性がある。
そこで、本実施例では、電子制御部20(例えばP−ECU26)は、P−ECU26の起動状態から停止状態への切替え後例えば車両電源ONから車両電源OFFへの切替え後、P−ECU26のウェイク状態を継続したままP−ECU26の停止状態から起動状態へ切り替える場合は例えば車両電源OFFから車両電源ONへ切り替える場合は、再びPロック駆動モータ54の初期駆動制御(図9の[状態C])やPロック駆動モータ54の壁位置検出制御(図9の[状態D])を実行する。
より具体的には、図13は、シフト制御装置10(電子制御部20)による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図13において、ユーザ操作有無判定部すなわちユーザ操作有無判定手段100は、例えばP−ECU26をウェイク状態を含む起動状態とする為のユーザ操作が行われたか否かを判定する。例えば、ユーザ操作有無判定手段100は、パワースイッチ信号に基づいて車両電源OFF時に車両電源ONへ切り替える為の車両電源スイッチ80の押し操作が行われたか否かを判定する。また、ユーザ操作有無判定手段100は、P−ECU26をウェイク状態として盗難防止機能のみを有効とするような操作例えば車両のドアを開ける操作やキーをキースロットから抜き取る操作や挿入する操作が行われたか否かを判定する。
イニシャル処理実行有無判定部すなわちイニシャル処理実行有無判定手段102は、例えばユーザ操作有無判定手段100によりP−ECU26をウェイク状態を含む起動状態とするユーザ操作が行われたと判定された場合に、そのユーザ操作に起因してP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為されたか否かを判定する。例えば、イニシャル処理実行有無判定手段102は、ユーザ操作に起因してP−ECU26がスリープ状態(或いは停止状態)からウェイク状態へ切り替えられたか否かを判定する。より具体的には、イニシャル処理実行有無判定手段102は、P−ECU26がスリープ状態からウェイク状態へ切り替えられたと判定した場合には、ユーザ操作に起因してP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為されたと判定する。一方で、イニシャル処理実行有無判定手段102は、P−ECU26のウェイク状態が継続中であると判定した場合には、ユーザ操作に起因したP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為されていないと判定する。
初期制御用電源オン判定部すなわち初期制御用電源オン判定手段104は、例えばユーザ操作有無判定手段100によりP−ECU26をウェイク状態を含む起動状態とするユーザ操作が行われたと判定された場合に、そのユーザ操作に起因して実際に起動状態とされたか否かすなわちPロック駆動モータ54の初期駆動制御や壁位置検出制御などの初期制御に関わる機能を働かせる為の電源がオン状態とされたか否かを判定する。例えば、初期制御用電源オン判定手段104は、車両電源OFFから車両電源ONとされたか否かを判定する。
初期制御部すなわち初期制御手段106は、車両電源OFFから車両電源ONとされるときにP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為される場合には、例えば図9の[状態C]及び[状態D]に示されるように、Pロック駆動モータ54の励磁合わせ(位相合わせ)などを行う初期駆動制御、及びPロック駆動モータ54のP壁位置及び非P壁位置を検出して基準位置を設定する壁位置検出制御などの初期制御を実行する。加えて、初期制御手段106は、イニシャル処理実行有無判定手段102によりユーザ操作に起因したP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為されていないと判定された場合であっても、初期制御用電源オン判定手段104によりPロック駆動モータ54の初期制御に関わる機能を働かせる為の電源がオン状態とされたと判定された場合には、Pロック駆動モータ54の初期駆動制御や壁位置検出制御などの上記初期制御を実行する。
図14は、電子制御部20の制御作動の要部すなわちPロック駆動モータ54を制御する為の基準位置を確実に検出(設定)し、そのPロック駆動モータ54を介した変速機40のPレンジと非Pレンジとの切替えを適切に行う為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、ユーザ操作有無判定手段100に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えばP−ECU26をウェイク状態を含む起動状態とする為のユーザ操作が行われたか否かが判定される。具体的には、パワースイッチ信号に基づいて車両電源OFF時に車両電源ONへ切り替える為の車両電源スイッチ80の押し操作が行われたか否か、車両のドアを開ける操作やキーをキースロットから抜き取る操作や挿入する操作などのP−ECU26をウェイク状態として盗難防止機能のみを有効とするような操作が行われたか否かなどが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合はイニシャル処理実行有無判定手段102に対応するS20において、例えば上記S10にて判定されたユーザ操作に起因してP−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為されたか否かが判定される。つまり、上記S10にて判定されたユーザ操作に起因してP−ECU26がスリープ状態からウェイク状態へ切り替えられたか否かが判定される。ここで、ユーザ操作に起因してP−ECU26がスリープ状態からウェイク状態へ切り替えられる態様としては、例えば車両電源OFFにてP−ECU26がスリープ状態であるときに車両電源スイッチ80の押し操作が行われて車両電源ONへ切り替えられる場合などが想定される。また、P−ECU26をウェイク状態へ切り替えるユーザ操作があったにも拘わらずP−ECU26がスリープ状態からウェイク状態へ切り替えられない態様としては、すなわちP−ECU26のウェイク状態が継続される態様としては、例えば車両電源ONにてP−ECU26が起動状態であるときに車両電源スイッチ80の押し操作が行われて車両電源OFFへ切り替えられた際に盗難防止機能を働かせる為にP−ECU26がウェイク状態とされ、そのP−ECU26のウェイク状態のときに車両電源スイッチ80の押し操作が行われて車両電源ONへ切り替えられたり、車両のドアを開ける操作が行われたり、フットブレーキの踏込操作が行われたりする場合などが想定される。
上記S20の判断が肯定される場合は初期制御手段106に対応するS50において、P−ECU26自体のイニシャル処理の実行が為される要因となったユーザ操作が車両電源スイッチ80の押し操作である場合は、例えば図9の[状態C]及び[状態D]に示されるように、Pロック駆動モータ54の励磁合わせ(位相合わせ)などを行う初期駆動制御、及びPロック駆動モータ54のP壁位置及び非P壁位置を検出して基準位置を設定する壁位置検出制御などの初期制御が実行される。一方で、上記S20の判断が否定される場合は初期制御用電源オン判定手段104に対応するS30において、上記S10にて判定されたユーザ操作に起因してP−ECU26が実際に起動状態とされたか否かすなわちPロック駆動モータ54の初期駆動制御や壁位置検出制御などの初期制御に関わる機能を働かせる為の電源がオン状態とされたか否かが、例えば車両電源OFFから車両電源ONとされたか否かに基づいて判定される。より具体的には、上記S10にて判定されたユーザ操作が車両電源スイッチ80の押し操作であり、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられた場合にはこのS30の判断が肯定される。また、上記S10にて判定されたユーザ操作が車両のドアを開ける操作であったりフットブレーキ操作であり、車両電源OFFから車両電源ONへ切り替えられない場合にはこのS30の判断が否定される。
上記S30の判断が肯定される場合は初期制御手段106に対応するS50において、Pロック駆動モータ54の初期駆動制御(モータ位相合わせ制御)や壁位置検出制御などの上記初期制御が実行される。一方で、上記S30の判断が否定される場合は初期制御手段106に対応するS40において、Pロック駆動モータ54の初期駆動制御や壁位置検出制御などの上記初期制御が実行されず、現在の車両状態が維持される。
上述のように、本実施例によれば、Pロック駆動モータ54の初期動作においてPロック駆動モータ54を制御する為の基準位置を検出することが可能な第1の動作状態(P−ECU26の起動状態、車両電源ON)からその基準位置を検出することが不能な第2の動作状態(P−ECU26の停止状態、車両電源OFF)への切替え後、前記基準位置を検出することは不能ではあるが車両情報を検知することは可能な第3の動作状態(P−ECU26のウェイク状態)が継続されたまま、前記第2の動作状態から前記第1の動作状態へ切り替えられる場合は、再び前記基準位置が検出されるので、Pロック駆動モータ54を制御する為の基準位置が確実に検出され、そのPロック駆動モータ54を介した変速機40のPレンジと非Pレンジとの切替えが適切に行われる。例えば、車両電源OFFから車両電源ONへの切替えに際して、P−ECU26のウェイク状態が継続されているときであっても、Pロック駆動モータ54の上記初期制御が実行されて一旦初期状態に戻された基準位置がPロック駆動モータ54の初期動作において再度検出される。
また、本実施例によれば、前記第2の動作状態(P−ECU26の停止状態、車両電源OFF)から前記第1の動作状態(P−ECU26の起動状態、車両電源ON)へ切り替える際は、前記第3の動作状態(P−ECU26のウェイク状態)となった後に前記第1の動作状態とされるので、前記第1の動作状態におけるPロック駆動モータ54を制御する為の基準位置の検出が適切に実行される。例えば、前記第3の動作状態にて行われるP−ECU26のイニシャル処理(初期処理)が適切に実行された後に前記第1の動作状態とされる。
また、本実施例によれば、前記第2の動作状態とすることは車両電源OFFとすることであり、前記第1の動作状態とすることは車両電源ONとすることであるので、車両電源OFFから車両電源ONへの切替えに際して、例えば一旦初期状態に戻された基準位置がPロック駆動モータ54の初期動作において再度検出される。
また、本実施例によれば、運転者の操作に基づくパーキングロックの作動と解除との切替えを行う為の変速機40のパーキングレンジと非パーキングレンジとの切替えをPロック駆動モータ54を作動させて電気的に制御するものであり、P−ECU26のウェイク状態では、運転者の操作に基づくパーキングロックの解除への切替えを行う為の変速機40の非パーキングレンジへの切替えを実行不能とする盗難防止機能が働いており、車両電源の状態に拘わらずP−ECU26のウェイク状態とすることが可能であるので、盗難防止機能が働いているときに前記第2の動作状態(P−ECU26の停止状態、車両電源OFF)から前記第1の動作状態(P−ECU26の起動状態、車両電源ON)へ切り替える際は、Pロック駆動モータ54の初期動作においてそのPロック駆動モータ54を制御する為の基準位置が検出される。
また、本実施例によれば、Pロック駆動モータ54の移動量に応じたエンコーダカウントを取得し、その取得したエンコーダカウントを予め設定された目標エンコーダカウントに一致させるようにPロック駆動モータ54を制御するものであり、所定のシフトレンジにおいてPロック駆動モータ54の所定方向の移動を規制することが可能であり、前記第1の動作状態(P−ECU26の起動状態、車両電源ON)では、Pロック駆動モータ54の移動が規制される方向にそのPロック駆動モータ54を移動するとき、その取得したエンコーダカウントに基づいて、所定のシフトレンジに対応したPロック駆動モータ54の基準位置を検出するので、Pロック駆動モータ54を制御する為の基準位置が適切に検出される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、電子制御部20は、シフトバイワイヤ機能を実現する為に、PM−ECU22、HV−ECU24、P−ECU26などの複数のECUを備えていたが、このような構成に限られるものではなく、種々の構成が適用され得る。例えば、HV−ECU24とP−ECU26とがそれらの機能を有する1つのECUで構成されても良い。
また、前述の実施例において、シフトレバー32は2次元的にシフト操作されるものであるが、一軸に沿ってシフト操作されるものであってもよいし、3次元的にシフト操作されるものであってもよい。
また、前述の実施例において、シフトレバー32の位置を検出する位置センサとしてシフトセンサ36とセレクトセンサ38とを備えているが、位置センサの数は2つに限定されるわけではない。
また、前述の実施例のシフトレバー32は、複数種類のシフトポジションPSHにシフト操作されるモーメンタリ式のレバースイッチであったが、それに替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等であっても良い。更に言えば、シフト操作装置30は、手動操作ではなく、足によりシフト操作されてもよいし、運転者の音声に反応してシフト操作されてもよい。また、Pスイッチ34と分離されていたが、パーキングポジションを更に備えて、Pスイッチ34の機能を有する構成であっても良い。また、Pスイッチ34を含めモーメンタリ式でなくても良い。このようにしても本発明は適用され得る。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。