JP5365987B2 - 金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下PAS樹脂と略す)は優れた耐熱性、耐薬品性、難燃性、剛性、機械的特性を有しており、いわゆるエンジニアリングプラスチックとして、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、構造部品等に広く使用されている。PAS樹脂はこれら優れた特性を持つ一方で、靭性特に延性に乏しく脆弱であるという欠点があるため、これを補う目的でガラスファイバー等の各種無機フィラーを強化剤として添加して利用される例が多い。しかしながら、これらの無機フィラーは通常ミクロンオーダーでマトリクス樹脂との接触面積が大きくないため脆性を改良するためには30〜50質量%と多量を添加する必要がある。一方、フィラーを多量に添加しなくとも良いように、ナノサイズの無機フィラーを直接溶融混練する方法も考えられるが、一般にナノフィラーは表面エネルギーが高いために自己凝集性が強く単純な溶融混練では2次凝集を分散させることが出来ない。そのため、ナノフィラーを用いることによる効果が十分に発現しない問題があった。また溶融混練時により良好なフィラー分散状態を得るためには一般に強いせん断力を加える必要がある。その場合剪断発熱や空気酸化によるPASの劣化、異常架橋や主鎖切断の恐れがあり、溶融混練温度、剪断速度等をコントロールしなければならないといった問題もあった。
これに対し、主に無機金属塩(金属塩化物、硫化物等)をこれらが可能な溶媒に溶解させ、本溶液をPAS樹脂と混合したのち溶媒を除去し、得られた材料を溶融混練することで、金属化合物中を金属へ還元したPAS樹脂と単体金属との複合体についての製造方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。この方法により、PAS樹脂95〜99.99重量%、及び、元素周期表VIII族及びIb族から選ばれる少なくとも一種類の金属0.01〜5重量%からなり、該金属がPASマトリックス中に平均粒径0.5〜30nmの大きさで均一に分散している複合体が得られるとある。
しかしながら特許文献1に記載の方法は無機金属塩を使用するために、得られた複合体には金属カチオンに対するカウンターアニオン成分が樹脂組成物中に残存する場合がある。特に特許文献1の実施例6〜13で開示された内容には原料として金属塩化物が使用されるため、得られる複合体には塩素成分が残存する。従って電子材料等のハロゲン成分を嫌う分野には不適といった問題があった。さらに、溶融混練操作中の部分的な異常加熱によりカウンターアニオン成分由来の発生ガスが(塩化物の場合は塩素ガスが、硫化物の場合はSOxガスが、硝化物の場合はNOxガスが)発生する恐れもある。これらは強い腐食性ガスであるため溶融混練装置内部を腐食させたり、作業環境を悪化させる恐れもある。
また、無機金属塩の溶液をPAS樹脂と混合した後の溶媒を除去操作に伴い、溶解していた金属塩が再度溶解前と同様に凝集、粗大析出してしまうといった問題もある。従って特許文献1の方法では、溶融混練後でも粗大粒子が残存する恐れがあった。
また、実質的に溶融混練の工程を経るために、溶融混練にかかる前記問題も解決なされていない。
特開平8−208849号公報
本発明の課題は、金属カチオンに対するカウンターアニオンが存在しない不純物元素が少ない金属元素含有ナノ粒子が分散されたPAS樹脂組成物を、溶融混練を行うことなく製造する方法を提供することにある。
本発明者は、PAS樹脂を溶解可能な有機溶剤に、PAS樹脂と、金属アルコキシド、カルボン酸金属塩、金属キレート等の有機金属化合物とを溶解させた後、析出させることで、溶融混練をすることなく、容易に金属元素含有ナノ粒子が分散されたPAS樹脂組成物が得られることを見出した。
具体的には、PAS樹脂と有機金属化合物の両方を一旦有機溶媒に溶解させた後、両方をほぼ同時に析出させることで、PAS樹脂中に、極めて小粒径の金属元素含有粒子を分散させることができることを見出した。有機金属化合物を使用するので、系中にカウンターアニオンが存在することがない。また有機金属化合物中の有機成分は、一旦溶解し再析出させる過程において有機成分のみが有機溶剤に溶出するため、洗浄工程で除去可能である。
即ち本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な有機溶剤に、ポリアリーレンスルフィド樹脂と有機金属化合物とを溶解させた後、析出させる、金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明により、溶融混練を行うことなく金属元素含有ナノ粒子が分散されたPAS樹脂組成物を製造することができる。溶融混練を行わないので、PAS樹脂に溶融混練時の剪断力がかかることがなく、樹脂の酸化劣化や主鎖切断の恐れもない。
また有機金属化合物を使用するために系中にカウンターアニオンが存在することがないので、樹脂組成物中にカウンターアニオン由来のハロゲン等の不純物成分が残留することはない。従ってハロゲン成分の残存を嫌う電子材料分野への応用も可能な上、溶融混練操作や射出成形操作中にカウンターアニオン由来の発生腐食ガスにより加工装置を劣化させることがない。また有機金属化合物中の有機成分は、一旦溶解し再析出させる過程において有機成分のみが有機溶剤に溶出するため、洗浄工程で除去可能である。
また、マトリックスとなるPAS樹脂を溶解させるため、溶融混練時よりも拡大したポリアリーレンスルフィド分子鎖間に析出した金属元素含有ナノ粒子がより均一分散化しやすく、ミクロンメートルオーダーの粗大粒子を含まない、極めて小粒径の金属元素含有粒子が分散されたPAS樹脂組成物を得ることが可能である。
(言葉の定義「金属元素含有ナノ粒子」)
本発明の製造方法により得られる組成物中に含まれる「金属元素含有ナノ粒子」とは、金属元素含有化合物のナノ粒子である。これは、後述の、使用する金属化合物をPAS樹脂と共に有機溶媒に溶解し再析出されて得た粒子であり、使用する金属化合物の金属種や溶解析出する条件により、析出された粒子は、溶解前の金属化合物そのものであるほかに、金属イオン種や還元された金属単体や、共存成分(残存水分、原料金属化合物由来の酸素)により酸化された金属酸化物を含むと推定される。本発明においては得られる組成物中に含まれるナノ粒子が金属元素を含むことが証明されているために、このような表現とした。
(PAS樹脂)
本発明で使用するPAS樹脂としては、特に限定されず、公知のPAS樹脂が使用できる。例えば置換基を有してもよい芳香族環と硫黄原子が結合した構造の繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体、およびそれらの混合物あるいは単独重合体との混合物等が挙げられる。
これらのPAS樹脂の代表的なものとしては、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPS樹脂という)が挙げられる。該PPS樹脂の中でも、上記繰り返し単位の芳香環への結合がパラ位である構造を有するものが耐熱性や結晶性の面で好ましい。
(結合種)
また、PAS樹脂には、メタ結合、エーテル結合、スルホン結合、スルフィドケトン結合、ビフェニル結合、フェニルスルフィド結合、ナフチル結合を10モル%未満を上限とし(但し3官能以上の結合を含む成分を共重合させる場合は5モル%を上限として)含有させても良い。本発明では後述の通りスルフィド(−S−)が金属含有材料の分散に寄与していると考えられるため、これらの密度が共重合により大幅に低下したPAS樹脂を用いることは適さない。
(分子量)
本発明に使用するPAS樹脂の分子量分布については特に制限はないが複合化操作の際でのPAS樹脂の溶媒への溶解が容易である観点より、一定以下の分子量であることが好ましい。好ましくは1−クロロナフタレンを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる分子量分布のピーク分子量が5万以下、更に好ましくは4.5万以下である。
なお本発明におけるピーク分子量は、後記実施例のゲル浸透クロマトグラフ測定において、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算量として求められる数値に基づくものである。数平均分子量や質量平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーの分子量分布曲線のベースラインの取り方次第で値が変化するのに対し、ピーク分子量は、値が分子量分布曲線のベースラインの取り方に左右されないものである。
本発明に使用するPAS樹脂の溶融粘度は特に制限されず、キャビラリーレオメーターを用いて測定した、300℃、せん断速度500sec−1での粘度が20〜2000Pa・sであれば良い。
(PAS樹脂の製造方法)
PAS樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば1)ジハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合モノマーとを、硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、2)ジハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合モノマーとを、極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下に、重合させる方法、3)p−クロルチオフェノールと、更に必要ならばその他の共重合モノマーとを自己縮合させる方法、4)有機極性溶媒中で、スルフィド化剤とジハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合モノマーとを反応させる方法等が挙げられる。
これらの方法のなかでも、4)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加しても良い。
上記4)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物を含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることによりPAS樹脂を製造する方法(特開平07−228699号公報参照。)で得られるものが特に好ましい。
(有機溶剤)
本発明では、PAS樹脂は有機溶剤に溶解することが必須であるため、使用する有機溶剤はPAS樹脂を一定条件下で溶解できる必要がある。PAS樹脂を溶解させる条件は常温でも加温下でも良いが、現在知られている溶媒では一定以上の分子量のPAS樹脂を溶解させるためには一定温度への加温が必要である。PAS樹脂を溶解させることができる溶媒としては、アミド系溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−シクロヘキシルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、テトラメチル尿素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が、スルホキシド系溶媒としてテトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド等が、その他の溶媒としてはポリエチレンジアルキルエーテルや1-クロロナフタレン、ジフェニルスルフィドが例示できる。このなかでも特に、アミド系溶媒は各種有機金属化合物を容易に溶解性させることができ、複合化成分を広く選択できる点、複合化成分含有率を多くできるため特に好ましく用いられる。中でもNMPが特に好ましい。
(有機金属化合物)
本発明で使用する金属化合物は、有機溶剤にPAS樹脂が溶解する条件下(主に加温下)において有機溶媒に大部分が溶解すれば良い。本発明で用いる有機金属化合物としては金属アルコキシド、カルボン酸金属塩、金属キレート、金属アセテート等を例示することができる。
金属アルコキシドとしては、各種金属のメトキシド、エトキシド、i−プロポキシド、n―プロポキシド、i−ブトキシド、n−ブトキシド、sec−ブトキシド、t−ブトキシド等を例示することができる。また、カルボン酸金属塩としては各種金属のステアリン酸塩、オクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、乳酸塩、リノレン酸塩、酢酸塩、樹脂酸塩、クエン酸塩、トール油脂肪酸塩等を例示することができる。 また、金属キレートとしてはアセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体、オクチレングリコール錯体、トリエタノールアミン錯体、乳酸錯体、カルボニル錯体、シクロペンタジエニル錯体、金属フタロシアニン類、クロロフィル金属等を例示することができる。金属アシレートとしては、金属アセテート等を例示できる。
また、これらの有機金属化合物には水和物を用いても良い。
(金属化合物;金属種)
前記有機金属化合物中に用いられる金属種は特に限定はないが典型金属、遷移金属が好ましく用いられる。典型金属としてはアルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、鉛、アンチモン等、遷移金属としてはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、セリウム等の各種金属を例示することが出来るが、これらに限定されない。またこれらの有機金属化合物は必要に応じ複数種用いても良い。
(製造方法)
前記有機溶剤に、前記PAS樹脂と前記有機金属化合物とを溶解させた後、析出させる。PAS樹脂は常温下では各種溶媒に不溶と言われておりPAS樹脂を溶解させるためには実質的には加温が必要となる。PAS樹脂を溶解できる溶媒でも、PAS樹脂を完全に溶解させるためには該溶媒の沸点以上に温度を高める必要がある場合が多い。従って、高温密閉下においてPAS樹脂を溶解可能な有機溶剤にPAS樹脂と有機金属化合物とを溶解させた後、冷却して析出させる方法が好ましい。このように密閉下で複合化操作を行うことは高温で昇華性を持つ金属キレート等の有機金属化合物も原料に用いることができるため好ましい。溶融混練は実質的に開放系で行われるため昇華性材料を原料に用いて複合化することは困難である。
そのため、本発明の製造方法に使用する製造装置としては、PAS樹脂と有機金属化合物とを有機溶剤に溶解させることができる溶解槽を持つ装置であり、加温設備が必要となる。さらに加温に要する温度が使用する有機溶剤の沸点を超える場合には加温を有効に行うために耐圧容器が必要となる。加温可能な耐圧容器としてはオートクレーブを例示することができる。通常、PAS樹脂(特にPPS)の合成設備は加温可能な耐圧容器を備えているため好ましく用いることができる。
他の方法としてはPAS樹脂組成物溶液を水、アルコール等のPAS樹脂の貧溶媒に注入し、析出させることによって析出させても良い。
本発明の製造方法により析出される樹脂は溶解前のPAS樹脂であるが、ナノ粒子は、前述の通り、使用する有機金属化合物種や溶解析出条件により、構造が異なる可能性がある。
本発明におけるナノ粒子の構造、あるいはPAS樹脂との複合化状態は完全には明らかとなっていないが、概ね下記の4種類の状態と推定している。
(1)単体金属:PAS樹脂はスルフィド部位がスルフォキシド、スルフォンと酸化される上、高温下ではベンゼン環部位が酸化することも知られている。従って共存する有機金属化合物を還元する能力を持つ。複合化の原料として用いられる有機金属化合物中の金属が還元されやすい種類(貴金属系)である場合には単体金属として複合化される可能性がある。
(2)無機金属化合物:原料として使用する有機金属化合物中の金属が還元されにくい卑金属でかつ、有機成分が加熱により分解されやすい材料の場合にはPAS樹脂により還元されることはなく、金属化合物の状態で複合化されると考えられる。金属化合物は一般に金属酸化物が最も安定であるため残存水分、有機溶媒、有機金属化合物中に含まれる系内の酸素源により酸化される可能性が考えられる。
(3)金属イオン:PAS樹脂の基本構成である芳香環やスルフィド部位は電子供与性があるため金属イオンが配位結合的に複合化できる場合があると考えられる。溶解析出時に、PAS樹脂のスルフィド部位や芳香環からの電子供与により金属含有材料がPAS分子鎖に捕捉されていると仮定すると、前記金属種としては高い酸化数や高い配位数を取りうる材料が好ましい。
(4)有機金属化合物:原料として使用する有機金属化合物の安定性が非常に高く、溶媒溶解や加熱により分解されない場合は有機金属化合物微粒子として複合化される場合も考えられる。
析出したナノ粒子とPAS樹脂との複合化状態は、マトリックスとなるPAS樹脂が溶媒に溶解しており、溶融混練時よりもポリアリーレンスルフィド分子鎖間が拡大していると推定されることから、析出した金属元素含有ナノ粒子がより均一分散化しやすいと考えられ、そのため、極めて小粒径の金属元素含有粒子が分散されたPAS樹脂組成物を得ることができたのだと推定している。
(金属元素含有ナノ粒子の平均粒径)
本発明の製造方法で得られる組成物中の金属元素含有ナノ粒子の平均粒径は、微粒子の粒径が小さいと粒子質量あたりの粒子表面積が大きくなることで少量の添加で添加効果を発揮できることから、平均粒径が1μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは500nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
前記金属元素含有ナノ粒子の平均粒径測定方法としては、樹脂組成物中での粒径を直接見る必要があることより走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等の観察結果より算出する方法が例示できる。その他、金属元素含有ナノ粒子の粒径分布や形状は、本発明で得られた組成物の用途先により最適な形状になるように設計されれば良いため特に制限はない。
(金属元素含有ナノ粒子の含有率)
本発明の製造方法で得られる組成物中の金属元素含有ナノ粒子の含有率は特に制限がない。しかし、本手法では極めて少粒径で複合化を行うことができるため、通常の溶融混練法よりも少ない含有率例えば0.01質量%以上の含有率でも、樹脂の強化材、改質剤としての役割を発現しうる。一方含有率の上限は、金属元素含有ナノ粒子の微粒径を保てなくなる可能性あるので、具体的には0.01質量%〜20質量%が好ましい。
(PAS樹脂の高分子量化)
PAS樹脂の溶解の温度条件はPAS樹脂の合成条件と概ね一致する。従って、PAS樹脂に残存する末端官能基を用いて、より高分子量化する操作を同時に行うことでPAS樹脂組成物の特性をさらに向上させることもできる。本方法はポストコンデンセーション(後重合)として知られている。具体例としてはジハロゲノ芳香族化合物を原料として合成したPAS樹脂に残存しているハロゲン末端を、該残存末端と適量のスルフィド化剤とを反応させる操作を有機金属化合物の複合化と同時に行うことが例示できる。この操作によりPAS樹脂の低ハロゲン化をすすめることもできる。
加えて、有機溶剤に溶解はしないが良分散性の無機材料や、有機溶剤に溶解性の高分子等の有機材料を併用してPAS樹脂と無機材料、高分子等の複合化操作を行うことで第3成分を添加する操作をおこなっても良い。
(組成物の精製操作)
得られた組成物の精製操作としては、組成物の製造後に該組成物中に含有される有機溶剤や、副生成物(たとえば、有機金属化合物の熱分解物)を除去できる操作であれば特に限定されない。有機溶剤を除去する方法としては水洗、蒸気洗、溶媒洗や、蒸留処理、フラッシュ操作による脱溶剤等が例示される。
(後加工、及び併用材料)
本発明により得られた金属元素含有ナノ粒子が分散されたPAS樹脂組成物は、これを直接材料として用い所望の形状に加工しても良いし、これをPAS樹脂や他の熱可塑性樹脂に更に複合化して用いてもよい。また、公知慣用の無機フィラー類や熱可塑性エラストマー類と併用しても差し支えない。
以下に具体例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<合成例1 PAS樹脂(PPS−1)の合成>
温度センサー、冷却塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物分離槽を連結した攪拌翼付チタン製反応釜(オートクレーブ)にパラジクロロベンゼン(以下p−DCBと略す)1838kg(12.5キロモル)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)4958kg(50キロモル)、水 90kg(5.0キロモル)を室温で仕込み、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃まで20分かけて昇温し、系を閉じ、更に220℃まで40分かけて昇温し、その温度で内圧を0.22MPaにコントロールして、Na2S・xH2O 1500kg、NaSH・yH2O 225kg、水425kgの混合液(Na2S:11.4キロモル、NaSH:3.2キロモル、水分50.3質量%)を3時間かけて滴下した。滴下中は同時に脱水操作を行い、水は系外に除去し、水と共に留出するp−DCBは連続的にオートクレーブに戻した。なお、脱水操作とp−DCBを戻す操作は240℃昇温完了まで行い、昇温完了時に系を密閉した。
その後、そのままの温度圧力で1時間保持した後、1時間かけて、内圧を0.17MPaに下げながら、内温を240℃まで昇温し、その温度で1時間保持して反応を終了し、室温まで冷却した。
留出液の分析結果によると、反応終了時の反応系内の水分量は全使用スルフィド化剤に対して0.17(モル/モル)であった。
得られた反応スラリーを減圧下(−0.08MPa)、120℃に加熱することにより反応溶媒を留去し、残査に水を注いで80℃で1時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作を3回繰り返し、更に水を加え、200℃で1時間攪拌後、濾過し、熱風乾燥機で120℃−10時間乾燥して白色粉末状のポリマーを得た。このポリマーを以後PPS−1という。このPPS−1のピーク分子量は、43,700、溶融粘度は240Pa・sであった。
(実施例1:鉄(III)アセチルアセトナートを用いた金属元素含有ナノ粒子が分散されたPAS樹脂組成物(以下ナノ粒子分散PAS組成物と略す)の製造方法)
2Lビーカー中に有機溶剤としてNMP800gに、有機金属化合物として有機金属キレートである鉄(III)アセチルアセトナート25.0gを仕込み室温下で30分間攪拌し完全に溶解させることで茶褐色のNMP溶液を得た。
温度センサー及び、窒素ガスライン(入口、出口各1)を連結した内容積2Lの攪拌翼付チタン製反応釜(オートクレーブ)に、先に調製したNMP溶液を入れた後、PAS樹脂として合成例1で作製したPPS−1を200gを仕込み、完全に密閉した。その後、窒素ガス用の入口、出口を開け、窒素ガスを1L/分の流量で10分間流通させることで容器中の空気を置換したのち窒素ガス用の入口、出口を閉じた。300min−1の回転速度で槽内を攪拌しつつ4℃/分で昇温し250℃に到達したあと15分間保持した。
その後、攪拌を維持しつつ槽内を4℃/分で降温させ70℃に到達したところで攪拌を停止し釜を開放した。内部は均一茶褐色の塊状物があり、加温前のNMP溶液と樹脂との2相物とは完全に異なる状態となっていた。該塊状物を2Lのイオン交換水中にいれ室温下で30分間攪拌することで分散洗浄を行い、この分散スラリーを110mmφのヌッチェに桐山ロート5B濾紙を敷いた上から注ぎ減圧濾過を行った。濾紙上の樹脂組成物を2Lのイオン交換水で分散洗浄する操作をもう2回繰り返すことで洗浄濾過液が透明になった。ここで回収した濾紙上の樹脂組成物を金属バット上に広げ、120℃で14時間熱風乾燥することでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例2:コバルト(II)アセチルアセトナートを用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに同じく有機金属キレートであるコバルト(II)アセチルアセトナート二水和物30.0gをNMP中に常温下で完全に溶解させて得た濃紺色のNMP溶液を用いた以外は、実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例3:亜鉛アセチルアセトナートを用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに同じく有機金属キレートである亜鉛アセチルアセトナート一水和物26.0gをNMP中に70℃加温下で完全に溶解させて得た無色透明のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例4:銅アセチルアセトナートを用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに同じく有機金属キレートである銅アセチルアセトナート26.0gをNMP中に90℃加温下で完全に溶解させて得た濃紺色のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例5:オクチル酸ジルコニウムを用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに有機カルボン酸金属塩であるオクチル酸ジルコニウム30.0gをNMP中に室温下で完全に溶解させて得た淡黄色のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例6:酢酸亜鉛2水和物を用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに有機カルボン酸金属塩である酢酸亜鉛2水和物20.0をNMP中に室温下で完全に溶解させて得た淡黄色のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例7:酢酸マンガン(II)四水和物を用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに有機カルボン酸金属塩である酢酸マンガン(II)四水和物20.0gをNMP中に室温下で完全に溶解させて得た赤色のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(実施例8:オクチル酸セリウムを用いたナノ粒子分散PAS組成物の製造方法)
実施例1で用いた鉄(III)アセチルアセトナートの代わりに有機カルボン酸金属塩であるオクチル酸セリウム10.0gをNMP中に70℃下で完全に溶解させて得た淡黄色のNMP溶液を用いた以外は実施例1と同様な複合化、洗浄、乾燥操作を行うことでナノ粒子分散PAS組成物を得た。
(比較例1:溶融混練法によるPAS組成物の作製、実施例3の比較に相当)
樹脂溶融混練装置である、ラボプラストミルCタイプ、KF−6((株)東洋精機製作所製)を用いて以下の条件で溶融混練法によりPAS樹脂と有機金属化合物とを混練する試験を行った。本比較例は実施例3の比較試験に相当する組成である。加熱温度340℃に加熱した混練室にミキサー回転数10rpmで混練刃を回転させつつ、ドライブレンドしたPPS−1樹脂粉末5.0gと亜鉛アセチルアセトナート1水和物粉末0.65gとを導入した。混練室に粉末を完全に導入したのち、ミキサー回転数を300rpmに高め10分間溶融混練処理を行った。本操作では混練時間が7分を経過時点より、著しいトルク上昇が認められ最終時の混練トルクは混練回転数を300rpmに高めた直後の2.5倍に達しPASの酸化架橋(即ち樹脂成分の劣化)が生じていることが推定された。得られた粒子分散PAS組成物を回収した。
(比較例2:溶融混練法によるPAS組成物の作製、実施例4の比較に相当)
比較例1中の亜鉛アセチルアセトナート一水和物粉末の代わりに銅アセチルアセトナート粉末0.625gに変更した以外は比較例1と同様な操作を行なった。本方法では比較例1よりも混練工程でのトルク上昇が著しく混練開始5分後よりトルク上昇が認められ、最終時の混練トルクは混練回転数を高めた直後の3倍に達し、装置トルクオーバー寸前となった。得られた粒子分散PAS組成物を回収した。
(比較例3:溶融混練法によるPAS組成物の作製、特許文献1;実施例7に相当)
塩化パラジウム(II)0.66gを水:メタノール1:1混合溶液100mlに溶解させた液とPPS−1樹脂粉末100gとを混合したのち、減圧乾燥により溶媒を除去しPPS−1と塩化パラジウム(II)の混合体を得た。この混合体の5.6gを採取し、比較例1と同様な操作方法で溶融混練を行った。本混練操作によっても混練工程でのトルク上昇が認められ、最終時の混練トルクは混練回転数を高めた直後の2.5倍に達した。得られた粒子分散PAS組成物を回収した。
(比較例4:溶融混練法によるPAS組成物の作製、特許文献1;実施例13に相当)
塩化パラジウム(II)の代わりに塩化鉄(III)0.28gを用いた以外は比較例3と同様な手法により粒子分散PAS組成物を得た。本操作中では混練装置より軽い塩素臭が発生した。また比較例1〜3同様に混練トルク上昇が見られ最終時の混練トルクは回転数を高めた直後の2倍に達した。
上記各実施例、比較例で得られたナノ粒子分散PAS組成物について下記の方法によりシート状の測定用サンプルを作製した後、以下の項目の測定、試験を行なった。
(板状樹脂組成物(測定用サンプル)の作製)
各実施例、比較例で得た樹脂組成物、及び複合化処理をしてないPAS-1の1.0gを用い6cm角の開口部を持つ200μm厚の銅板を型として、6cm角で厚さ200μmの板状樹脂組成物を得た。本板状サンプルを以降の測定に用いた。
(測定1)蛍光X線での測定による無機成分の検証及び、含有率の測定
前記方法で作製した各種の板状樹脂組成物を3cm角に切断したのち重量を測定し、この組成物の密度を測定した。これを開口部が直径20mmの測定用ホルダ−にセットした。該試料を理化学電気工業株式会社製蛍光X線分析装置「ZSX100e」を用いて全元素分析を行った。PPS-1より得たシートでは合成原料に含まれる極僅かのNa以外の金属元素は含まれなかった。また、Clは合成原料由来と推定される0.05質量%が後述のFP法により定量検出された。各実施例及び比較例1,2では複合化原料に用いた有機金属化合物由来の金属元素が一定量確認できた。また、Clは0.05±0.003質量%の範囲内で検出され大きな増加は認められなかった。比較例3,4でも原料の金属塩化物由来の金属元素は確認できたが、塩素含有量はPPS−1シートよりも明らかに高い値を示した。後述のFP法による定量で比較例3ではCl含有率は0.30質量%、比較例4では0.10質量%に達した。
得られた全元素分析の結果を用い、測定用試料の試料データ(与えたデータは、試料形状;フィルム、補正成分;PPS、実測した試料の面積当たりの質量値)を装置に与えることにより、FP法(Fundamental Parameter法;試料の均一性、表面平滑性を仮定し装置内の定数を用いて補正を行い成分の定量を行う方法)にて各々得られたナノ粒子分散PAS組成物に含まれる金属元素割合(質量%)を算出した。
また、上記方法で得られた金属元素割合(検出値、質量%と、有機金属化合物中の金属元素が100%複合化されたときの存在割合(金属元素仕込み割合、質量%)とを用いて複合化収率(%)を下式により算出した。
Figure 0005365987
また、残存塩素(原料由来)として、PPS−1よりも塩素量が0.01質量%以上増加した場合はCl増加有り、0.01質量%以下の増加であればCl増加無しとした。
(測定2)走査型電子顕微鏡(SEM)観察による無機平均粒径の算出
板状樹脂組成物を剃刀により切り出し、断面が上面になるようにSEM用ホルダーにセットした。これに1nmのPtを蒸着しSEM観察用サンプルを作製した。走査型電子顕微鏡S−3400N((株)日立ハイテクノロジー製)での反射電子検出器を用いて断面での無機微粒子の分散状態を500〜20000倍にて観察した。本測定では周囲のPAS樹脂よりも質量が重い有機金属化合物は明るい領域として観察される。この観察条件では最小40nmの粒子が観察可能である。本方法で観察された100個の粒径を測定し、その平均値を平均粒径とした。また、平均粒径とは別に、1μm以上の粗大粒子が500倍での任意の観察領域中に1つでも見られた場合は粗大粒子有り、見られなかった場合は粗大粒子無しと判定した。
(測定3)PAS組成物の溶融粘度の測定
各実施例及び比較例で得られたPAS組成物の溶融粘度(Pa・s)特性をキャビラリーレオメーターキャピログラフ1D PMD−C((株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。測定条件は、測定温度300℃、使用キャピラリーφ1×10mm、せん断速度500sec−1である。
(測定4)有機金属化合物残存有機成分の検出
(フ−リエ変換型赤外分光分析:FT−IRの測定)
得られた複合体シートおよびPPS-1より得られたシートを、FT−IR(ジャスコエンジニアリング(株)製FT/IR4200)を用いてATR1回反射測定法により測定を行った。
各実施例、比較例(実施例1〜8、比較例1,2)で有機金属化合物として用いた各種化合物はいずれもC=O結合を有する。そのため有機金属化合物中の有機成分が残存していた場合は1700cm−1付近に明瞭なピークが観察されることとなる。ブランク測定に相当するPPS−1でのIR測定結果よりも明らかに大きいピークがこの領域に見られた場合は残存有機成分あり、なければ残存成分なしと判定した。いずれの実施例、比較例とも残存有機成分は認められなかった。(表1には示さず)
以下、表1に各実施例及び比較例の結果をまとめた。
Figure 0005365987
*略号:AA;アセチルアセトナト、OC;オクチル酸、AC;酢酸
表1の各実施例で見られるように、本発明ではPAS樹脂を溶解可能な有機溶剤に有機金属化合物を溶解させた後、析出させることにより、金属成分を含有するナノ粒子分散PAS組成物を得ることができた。更に、金属の添加量に対する収率も68%以上と比較的高く複合化が効率よく生じていることが明らかとなった。これは、本方法がPAS樹脂と有機金属化合物とを有機溶媒中に溶解させ複合化させるため、有機金属化合物の金属成分が、最小ではイオン状態にまで微粒化された状態で、溶媒により膨潤したPAS分子鎖間に入りこみボトムアップ型で複合化され、さらに複合化が溶媒中且つ密閉下で行われるため、有機金属化合物中の金属成分の損失が生じにくいためと考えられる。また本実施例のように複合化が加温下で行われる場合には、有機金属化合物中の有機成分は分解され洗浄時に流出するため余剰な有機成分が含まれず、残存有機成分が発生しなかったと考えられる。
加えて、ミクロンオーダーの粗大粒子が全く観察されず均質な組成物であることが確認できた。また、溶融粘度も原料PASから無機複合化操作により殆ど上昇しなかた。
一方、有機金属化合物を直接溶融混練した比較例1,2では金属成分は300nm以上の粒径で凝集する結果となった。また、ミクロンオーダーの粒子も散見された。これは有機金属化合物がドライブレンドのような不完全な分散状態から複合化されるため微粒化できないためと考えられる。加えて金属成分の収率が10%台と低いのは溶融混練操作により複合化される前に昇華、蒸発などの理由により系外にでたと推測される。
また、比較例3,4に示した金属塩化物を溶媒に溶解させPASに混合した後に溶媒を除去し引き続き溶融混練を行った方法(特許文献1の実施例に準拠)では、平均粒径は小さいもののミクロンオーダーの粒子も見られた。これは溶媒除去中に金属塩化物が再凝集した部分がありこれが分散しきれずに粗大粒子を形成したと推定される。また原料金属塩化物由来のClが組成物中に残存する問題も生じた。さらに比較例4では混練温度が塩化鉄(III)の沸点以上であったため収率が低い結果となった。
いずれの比較例でも、強いせん断力を与えての混練を行ったため、PAS樹脂が酸化架橋、劣化したと推定される溶融粘度の上昇を伴った。溶融混練法による複合化においてはこうした強いせん断下にも係らず粗大粒子が少量混在する問題を持つ事が明らかとなった。

Claims (5)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な有機溶剤に、ポリアリーレンスルフィド樹脂と有機金属化合物とを溶解させた後、析出させることを特徴とする、金属元素含有ナノ粒子が分散されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  2. 高温密閉下においてポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な有機溶剤にポリアリーレンスルフィド樹脂と有機金属化合物とを溶解させる請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記有機金属化合物の金属成分が典型金属または遷移金属から選ばれる1種である、請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記有機溶剤がN−メチル−2−ピロリドンである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  5. オートクレーブを使用する請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
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