以下、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
<複合機10の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、複合機10のプリント部11の内部構造を示す縦断面図である。
複合機10は、プリント部11及びスキャン部12を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。本発明に係る両面記録装置は、複合機10のプリント部11として実施されている。したがって、複合機10においてプリンタ機能以外の機能は任意のものである。
図1に示されるように、複合機10の下部がプリント部11である。図2に示されるように、プリント部11の内部に第1搬送路22及び第2搬送路23が形成されている。プリント部11は、給紙トレイ20、搬送部15(本発明の搬送部の一例)、記録部24(本発明の記録部の一例)、及び排紙トレイ21(図1参照)を備える。給紙トレイ20は、画像記録に使用される記録用紙(本発明のシートの一例)を収容するものである。搬送部15は、記録用紙を第1搬送路22及び第2搬送路23に沿って搬送するものである。記録部24は、第1搬送路22に沿って搬送される記録用紙にインクを吐出して当該記録用紙に画像を記録するものである。排紙トレイ21には、記録部24により画像が記録された記録用紙が排出される。
複合機10は、記録用紙の表裏面(両面)に画像を記録できる。記録用紙に画像が両面記録される場合には、表面(本発明の第1面に相当する)に画像が記録された記録用紙が、第1搬送路22から第2搬送路23へ案内される。これにより、記録用紙は、第2搬送路23から再び第1搬送路22に送り込まれて表裏面が反転される。記録部24は、表裏面が反転された記録用紙の裏面(本発明の第2面に相当する)に画像を記録する。
図1に示されるように、複合機10の上部がスキャン部12である。スキャン部12は、フラットベッドスキャナ(FBS:Flat Bed Scanner)、及び自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)を有して構成されている。図1に示されるように、複合機10の天板として原稿カバー30が開閉自在に設けられている。ADFは、この原稿カバー30に設けられている。図には示されていないが、原稿カバー30の下側には、プラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。スキャン部12では、プラテンガラスに載置された原稿、又はADFにより搬送される原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。このスキャン部12によって読み取られた原稿の画像データに基づいて、プリント部11による両面記録に必要な印刷データが生成される。
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、プリント部11やスキャン部12を操作するための装置である。操作パネル14は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ、ユーザが情報を入力する入力キー等から構成される。
複合機10は、スロット部16を備えている。記憶媒体である各種小型メモリカードがスロット部16に装填され得る。スロット部16に小型メモリカードが装填された状態で、ユーザーが操作パネル14において所定の操作を行うことにより、小型メモリカードに記憶された画像データが読み出されて、プリント部11において、その画像が記録用紙に記録される。
<プリント部11>
以下に、プリント部11の構成が詳細に説明される。
図1に示されるように、プリント部11の正面に開口13が設けられている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口13の内側に上下2段に設けられている。図2に示されるように、プリント部11は、給紙トレイ20、給紙ローラ25、アーム26、及び動力伝達機構27を備えている。なお、図2においては、排紙トレイ21が省略されている。
図3は、プリント部11の主要部を示す拡大断面図である。
図2及び図3に示されるように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が配置されている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を第1搬送路22へ供給する。給紙ローラ25は、アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、LFモータ77(図6参照)を駆動源として動力伝達機構27を介して駆動伝達されて回転される。この動力伝達機構27は複数のギヤを有し、これらが直列に噛合されることにより構成されている。
アーム26は、基軸28に支持されている。アーム26は、その基端部が基軸28に支持されている。これにより、アーム26が基軸28を中心として回転可能である。この回転によって、アーム26は、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動できる。アーム26は、自重により又はバネ等に付勢されて下側へ回転付勢されている。給紙トレイ20の側壁にはアーム26を上方へ回転されるカムフォロワが形成されており、これによって給紙トレイ20が挿抜される際にアーム26が上側へ退避される。
アーム26が下側へ回転付勢されることにより、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間に発生する摩擦力により、最上位置の記録用紙が傾斜板32の方へ送り出される。記録用紙の先端が傾斜板32に当接すると、記録用紙の束のうちの最上位置の1枚が捌かれて上方へ案内される。
<第1搬送路22>
傾斜板32の上方には、第1搬送路22が設けられている。第1搬送路22は、傾斜板32から上方へ向かった後、正面側(図2における右側)へ横向きU字形状に曲がっている。第1搬送路22は、複合機10の背面側(図2における左側)から正面側へと延び、記録部24を経て排紙トレイ21(図1参照)へ通じている。つまり、排紙トレイ21は、第1搬送路22における記録用紙の搬送方向下流側に配置されている。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、第1搬送路22に沿って下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至り、記録部24によって画像記録が行われた後、排紙トレイ21へ排出される。なお、図2及び図3には排紙トレイ21が省略されている。
第1搬送路22は、記録部24等が配設されている箇所以外では、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機10の背面側の第1搬送路22の湾曲部分は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが所定の間隔で対向配置されることにより構成されている。この場合、外側ガイド部材18が湾曲外側のガイド面を構成し、内側ガイド部材19が湾曲内側のガイド面を構成する。外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、複合機10の筐体やフレームなどに固定されている。
<記録部24>
図3に示されるように、記録部24は、第1搬送路22が複合機10の背面側から正面側へ延びる途中に配置されている。記録部24は、キャリッジ40、インクジェット記録ヘッド41、CRモータ79(図6参照)、及びプラテン42を備えている。インクジェット記録ヘッド41は、キャリッジ40に搭載されている。キャリッジ40は、ガイドレール43,44に沿って記録用紙の幅方向(図3における紙面垂直方向)に往復動される。図3には示されていないが、ガイドレール44には、CRモータ79を駆動源とするベルト駆動機構が設けられている。このようなベルト駆動機構は周知であるが、例えば、ガイドレール44の幅方向両端付近に駆動プーリ及び従動プーリがそれぞれ設けられ、この駆動プーリ及び従動プーリに無端環状の駆動ベルトが巻架されてなる。ベルト駆動機構の駆動ベルトにキャリッジ40が連結されることにより、CRモータ79の駆動がベルト駆動機構を介してキャリッジ40へ伝達され、キャリッジ40が往復動する。
第1搬送路22には、インクジェット記録ヘッド41と対向するプラテン42が設けられている。プラテン42は、第1搬送路22を搬送される記録用紙を支持する。プラテン42により、記録用紙がインクジェット記録ヘッド41と所定のヘッドギャップを有して支持される。図には示されていないが、複合機10の内部には、インクジェット記録ヘッド41と独立してインクカートリッジが配置されている。このインクカートリッジからインクチューブを通じて各色インクがインクジェット記録ヘッド41へ供給される。キャリッジ40が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド41から各色インクが微小なインク滴としてプラテン42へ向けて選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。
図3には示されていないが、キャリッジ40及びガイドレール44にはリニアエンコーダ83(図6参照)が設けられている。リニアエンコーダ83は、キャリッジ40の位置を検知するためのものである。リニアエンコーダ83は、エンコーダストリップと、エンコーダストリップのパターンを検出する光学センサとからなる。エンコーダストリップは、キャリッジ40の上側においてガイドレール44の幅方向(図3の紙面垂直方向)に渡って延出されている。エンコーダストリップには、光を透過させる透光部及び光を遮断する遮光部が、その長手方向に所定ピッチで交互に配置されて、所定のパターンを形成している。キャリッジ40の上面には、エンコーダストリップと対応する位置に光学センサが設けられている。この光学センサはキャリッジ40とともに往復動して、エンコーダストリップのパターンを検知する。リニアエンコーダ83から出力されるエンコーダ量に基づいて、後述される制御部70(図6参照)が、キャリッジ40の往復動及びインクジェット記録ヘッド41からのインクの吐出を制御する。また、図3には示されていないが、キャリッジ40には、インクジェット記録ヘッド41からのインクの吐出を制御するヘッド制御回路81(図6参照)が搭載されている。
<第2搬送路23>
図3に示されるように、第2搬送路23は、第1搬送路22と給紙トレイ20とを接続する。詳細には、第2搬送路23の一端側が、第1搬送路22における記録部24よりも下流側部位45と接続されている。また、第2搬送路23の他端側が、給紙トレイ20における給紙ローラ25より上流側と接続されている。給紙トレイ20が傾斜板32を介して第1搬送路22と接続されている。このため、第2搬送路23は、給紙ローラ25を介して、第1搬送路22における記録部24よりも上流側部位46と接続されている。第2搬送路23は、表面(第1面)に画像が記録されてスイッチバック搬送される記録用紙を給紙トレイ20上へ導くものである。
第2搬送路23は、所定の間隔で対向配置された一対の上側ガイド部材47と下側ガイド部材48とによって区画形成されている。上側ガイド部材47及び下側ガイド部材48は、第1搬送路22の下流側部位45から給紙ローラ25の上流側へ向かって、斜め下方へ延出されている。
<搬送部15>
搬送部15は、第1搬送路22及び第2搬送路23に沿って記録用紙を搬送するものである。この搬送部15は、給紙ローラ25、搬送ローラ50、排紙ローラ51、スイッチバックローラ53、フレーム55、及びLFモータ77を有して構成されている。
図2及び図3に示されるように、第1搬送路22における記録部24よりも上流側に搬送ローラ50が設けられている。搬送ローラ50の下側には、搬送ローラ50に圧接するピンチローラが設けられている。搬送ローラ50は、第1搬送路22の幅方向(図3における紙面垂直方向)に渡って設けられており、ピンチローラは、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が設けられている。搬送ローラ50とピンチローラによって、第1搬送路22を搬送される記録用紙が挟持されてプラテン42上へ搬送される。
第1搬送路22において記録部24よりも下流側に排紙ローラ51及び拍車52が設けられている。拍車52は、排紙ローラ51に圧接されている。排紙ローラ51は、第1搬送路22の幅方向に渡って設けられている。拍車52は、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が設けられている。排紙ローラ51及び拍車52によって、画像が記録された記録用紙が挟持されて、第1搬送路22の下流側部位45へ搬送される。
搬送ローラ50及び排紙ローラ51は、LFモータ77を駆動源として駆動される。搬送ローラ50及び排紙ローラ51の駆動は同期されており、画像記録時において間欠駆動され、画像記録の前後においては連続駆動される。これによって、記録用紙は、記録部24へ到達するまでは第1搬送路22を所定の速度で搬送され、記録部24へ到達すると所定の改行幅で間欠して搬送される。記録用紙の搬送が間欠された間に、キャリッジ40が往復動されて、インクジェット記録ヘッド41によって記録用紙の所定の位置に画像記録がなされる。
図2及び図3には示されていないが、搬送ローラ50にロータリーエンコーダ82(図6参照)が設けられている。ロータリーエンコーダ82は、搬送ローラ50と共に回転するエンコーダディスクと、エンコーダディスクのパターンを検知する光学センサとからなる。ロータリーエンコーダ82から出力されるエンコーダ量に基づいて、後述される制御部70(図6参照)が、搬送ローラ50及び排紙ローラ51の回転を制御する。
また、図2及び図3には示されてないが、第1搬送路22において搬送ローラ50よりも上流側にはレジセンサ84(本発明の検出部の一部)が配置されている。レジセンサ84は、検出子と光学センサとからなる。検出子は、第1搬送路22を横切るように配置されて、記録用紙が当接することにより第1搬送路22から弾性的に退避する。この検出子の動きが光学センサにより検出される。制御部70は、この検出子から出力される検出信号(以下、「センサ信号」とも称される。)の変化に基づいて、搬送ローラ50の上流側に記録用紙の先端又は後端が到達したか否かを判断する。
図3に示されるように、第1搬送路22における下流側部位45の直下流側には、スイッチバックローラ(SBローラ)53及び拍車54が設けられている。拍車54は、スイッチバックローラ53に圧接されている。スイッチバックローラ53は、第1搬送路22の幅方向に渡って設けられている。拍車54は、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が配置されている。スイッチバックローラ53及び拍車54によって、表面に画像記録された記録用紙が挟持されて、スイッチバック搬送される。また、両面に画像記録がされた記録用紙が挟持されて、排紙トレイ21へ排出される。
スイッチバックローラ53は、LFモータ77を駆動源として駆動される。スイッチバックローラ53は正逆双方向へ回転可能である。スイッチバックローラ53の回転方向は、LFモータ77の正逆転により制御される。なお、LFモータ77からスイッチバックローラ53への駆動伝達過程において、ギヤ列の切換によって、一定方向のLFモータ77の回転をスイッチバックローラ53の双方向の回転として伝達するようにしてもよい。スイッチバックローラ53の「正転」及び「逆転」は相対的なものであるが、本実施形態では、記録用紙を排紙トレイ21側へ搬送する回転が「正転」と称され、記録用紙を第2搬送路23へ搬送する回転が「逆転」と称される。
拍車54は、フレーム55に支持されて、スイッチバックローラ53に対して接離可能にスライドされる。図2及び図3には詳細に示されていないが、拍車54は、その回転軸がコイルバネによって弾性付勢されて、常にスイッチバックローラ53に圧接されている。したがって、スイッチバックローラ53が回転されると、それに従動して拍車54も回転する。コイルバネによって拍車54に付与される弾性付勢力が、スイッチバックローラ53及び拍車54による記録用紙のニップ力である。スイッチバックローラ53及び拍車54は、画像記録直後の記録用紙を挟持するので、これらによるニップ力は比較的弱く設定されている。したがって、スイッチバックローラ53及び拍車54に挟持された状態で記録用紙に外力が付与されると、記録用紙の剛性(腰)にニップ力が負けて、記録用紙は容易に姿勢変化される。つまり、記録用紙に外力が付与されると、記録用紙がスイッチバックローラ53及び拍車54に対して滑りうる。
<経路切換部>
以下に、経路切換部が説明される。図4は、第1姿勢のフレーム55を示す拡大断面図である。図5は、第2姿勢のフレーム55を示す拡大断面図である。
経路切換部は、フレーム55及び拍車56を備える。フレーム55には、上述のスイッチバックローラ53が回転自在に支持されている。フレーム55は、スイッチバックローラ53から搬送方向上流側(図4及び図5における左側)へ延出されて下流側部位45へ至る。フレーム55の延出端に拍車56が回転自在に支持されて、拍車56が下流側部位45に配置されている。フレーム55は、第1搬送路22の幅方向に延出されており、拍車56は、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が配置されている。
フレーム55は、スイッチバックローラ53の回転軸を中心として、延出端側(図4及び図5における左側)が回転可能に構成されている。フレーム55には、LFモータ77の駆動力が伝達されて、所定の回転位置に姿勢変化される。この回転位置は、後述される第1姿勢及び第2姿勢である。フレーム55の基端側に支持された拍車54と、フレーム55の延出端に支持された拍車56とは、フレーム55とともスイッチバックローラ53の回転軸周りに回転される。
図4に示されるように、フレーム55は、第1姿勢において、スイッチバックローラ53から水平方向へ、その延出端を延ばす。第1姿勢において、スイッチバックローラ53と拍車54とのニップ位置を通過する拍車56の接線57は、搬送ローラ50及びピンチローラによるニップ位置と、排紙ローラ51及び拍車52によるニップ位置とを結ぶ直線と一致する。つまり、搬送ローラ50及びピンチローラ、並びに排紙ローラ51及び拍車52にそれぞれ挟持されて搬送される記録用紙65は、接線57に沿って搬送される。そして、接線57に沿って搬送される記録用紙65は、拍車56の最下部を通過して、スイッチバックローラ53及び拍車54に挟持される。つまり、第1姿勢のフレーム55によって、記録用紙65が排紙トレイ21側へ案内される。
図5に示されるように、フレーム55は、第2姿勢において、スイッチバックローラ53から斜め下方へ、その延出端を延ばす。フレーム55が第1姿勢から第2姿勢へ姿勢変化することにより、フレーム55とともに、拍車54,56がスイッチバックローラ53の回転軸周りに回転する。スイッチバックローラ53及び拍車54によってスイッチバック搬送された記録用紙65は、その後端62が拍車56によって接線59方向へ案内される。ここで、接線59は、スイッチバックローラ53と拍車54とのニップ位置を通過する拍車56の接線である。第2姿勢のフレーム55によって、記録用紙65が第2搬送路23を通過できる方向へ案内される。
図4及び図5に示されるように、スイッチバックローラ53及び拍車54より搬送方向下流側に拍車60が設けられている。拍車60は、第1搬送路22の幅方向に所定間隔で複数が設けられている。拍車60は、その最下部が拍車54の最下部より上側となる位置に配置されている。したがって、図4に示されるように、第1姿勢のフレーム55によって接線57に沿って搬送される記録用紙65は、拍車60とは接触しない。
第2姿勢のフレーム55によって接線59に沿ってスイッチバック搬送される記録用紙65は、その剛性によって、スイッチバックローラ53及び拍車54による挟持位置より排紙トレイ21側の部分を、接線59に沿って上側へ持ち上げようとする。この場合に、図5に示されるように、記録用紙65の当該部分に拍車60が接触する。記録用紙65は、拍車60と接触することにより撓んで、スイッチバックローラ53に巻き付けられる。これにより、記録用紙65の剛性がスイッチバックローラ53への圧接力として作用する。
<制御部70>
図6は、複合機10の制御部70の構成例を示すブロック図である。
制御部70は、プリント部11のみでなくスキャン部12も含む複合機10の全体動作を制御するものである。制御部70はメイン基板により構成され、複合機10内の所定の位置に配置される。なお、スキャン部12の制御に関する構成は、本発明の主要な構成ではないので、その詳細な説明は省略される。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)74を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部70は、バス75を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)76に接続されている。
ROM72には、CPU71が複合機10の各種動作を制御するためのプログラム等が記憶されている。RAM73は、CPU71が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に格納する記憶領域又は作業領域として使用される。このRAM73には、印刷データ、インク量66、乾燥時間67等が格納される。印刷データは、スキャン部12により読み取られた原稿の画像データに基づいて生成されるものである。プリント部11における両面記録は、この印刷データに基づいて実行される。なお、印刷データはこれに限定されるものではない。すなわち、印刷データは、例えばLANを介して通信可能に接続されたコンピュータ(PC)等から取得されるものであってもよい。なお、インク量66及び乾燥時間67については後に詳述される。
EEPROM74(本発明の記憶部に相当する)には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。このEEPROM74には、本実施形態においては、デフォルト時間テーブル35、最短時間テーブル36、限界時間テーブル37が格納されている。これらのテーブル35〜37については、後に詳述される。これらCPU71、ROM72、RAM73、及びEEPROM74によって構成される制御部70が本発明の検出部の一部、設定部、制御部、取得部、及び区画部として機能する。
ASIC76には、ヘッド制御回路81、駆動回路80、駆動回路78、スキャン部12、操作パネル14、レジセンサ84、ロータリーエンコーダ82、リニアエンコーダ83、及びLAN I/F(Local Area Network Interface)86が接続されている。
ASIC76は、CPU71からの指令に従い、LFモータ77に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、LFモータ77の駆動回路78に付与され、この駆動回路78を介して駆動信号がLFモータ77に通電される。このようにして、LFモータ77の回転制御が行われる。
駆動回路78は、LFモータ77を駆動させるものである。このLFモータ77には、給紙ローラ25、搬送ローラ50、排紙ローラ51、スイッチバックローラ(SBローラ)53、及びフレーム55が接続されている。駆動回路78は、ASIC76からの出力信号を受けて、LFモータ77を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてLFモータ77が回転する。LFモータ77の回転力が給紙ローラ25、搬送ローラ50、排紙ローラ51、スイッチバックローラ53、及びフレーム55へ伝達される。なお、LFモータ77の回転力は、ギヤや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介してスイッチバックローラ53及びフレーム55等に伝達される。制御部70は、LFモータ77の回転方向及び駆動機構を制御することにより、スイッチバックローラ53の正逆転、及びフレーム55の姿勢変化を制御する。
ASIC76は、CPU71からの指令に従い、CRモータ79に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、CRモータ79の駆動回路80に付与され、この駆動回路80を介して駆動信号がCRモータ79に通電される。このようにして、CRモータ79の回転制御が行われる。
駆動回路80は、CRモータ79を駆動させるものである。駆動回路80は、ASIC76からの出力信号を受けて、CRモータ79を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてCRモータ79が回転する。CRモータ79の回転力は、所要の駆動機構を介してキャリッジ40へ伝達される。これにより、キャリッジ40が往復動される。このようにして、キャリッジ40の往復動が制御部70により制御される。
ヘッド制御回路81は、ASIC76から入力される印刷データに基づいて、インクジェット記録ヘッド41を駆動制御する。これにより、インクジェット記録ヘッド41から所定のタイミングで各色インクが選択的に吐出され、記録用紙に画像が記録される。なお、ヘッド制御回路81は、インクジェット記録ヘッド41とともにキャリッジ40に搭載されている。
ロータリーエンコーダ82は、搬送ローラ50の回転量を検出するものである。リニアエンコーダ83は、キャリッジ40の位置を検知するものである。レジセンサ84は、記録用紙の先端及び後端を検知するものである。制御部70は、リニアエンコーダ83から出力されるエンコーダ量に基づいて、キャリッジ40の移動量を把握する。制御部70は、この移動量に基づいてキャリッジ40の往復動を制御すべく、CRモータ79の回転を制御する。また、制御部70は、レジセンサ84の信号及びロータリーエンコーダ82が出力するエンコーダ量に基づいて記録用紙74の先端又は後端の位置を把握する。
<ジャム検出>
両面記録では、アーム55が第2姿勢に維持された状態でスイッチバックローラ53が逆転されることにより、記録用紙65がその後端62から第2搬送路23へ送られる。第2搬送路23に送られた記録用紙65は、その後端62が給紙トレイ20上の記録用紙と給紙ローラ25とのニップ点へ進入する。給紙ローラ25が回転駆動されることによって、記録用紙65が第1搬送路22へ送られる。この第1搬送路22には、レジセンサ84が設けられている。制御部70は、LFモータ77の駆動を制御して記録用紙65をスイッチバック搬送させる間、レジセンサ84から出力されるセンサ信号に基づいて記録用紙65のジャムを検出する。制御部70は、記録用紙65を所定量搬送した後にレジセンサ84により記録用紙65が検出されたことを条件として、記録用紙65のジャムは発生しなかったと判断する。制御部70は、記録用紙65を所定量搬送したにも関わらずレジセンサ84により記録用紙65が検出されなかったことを条件として、記録用紙65のジャムが発生したと判断する。
スキャン部12は、原稿の画像データを読み取るものである。プリント部11における画像記録は、この画像データを基に制御部70が生成した印刷データに基づいて実行される。操作パネル14は、複合機10に対するユーザの操作入力を受け付けるものである。複合機10は、この操作パネル14からの操作入力に基づいて動作する。例えば、ユーザが操作パネル14を操作することによって、片面記録モード又は両面記録モードが設定される。片面記録モードは、記録用紙65の表面64のみに画像が記録されるモードである。両面記録モードは、記録用紙65の表裏面に画像が記録されるモードである。
LAN I/F86は、図外のLAN(Local Area Network)と複合機10とを通信可能に接続するインターフェースである。図には示されていないが、複合機10は、LAN I/F86及びLANを介してコンピュータ(例えばPC)と通信可能に接続される。プリント部11による両面記録は、このコンピュータから送信される印刷データに基づいて行われてもよい。
なお、図には示されていないが、ASIC76には、上述のスキャン部12や操作パネル14のほか、スロット部16、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)やモデム(MODEM)が接続されている。
プリント部11において両面記録が行われる場合、搬送部15は、第1搬送を行った後に第2搬送を行う。第1搬送は、記録用紙をその表面を記録部24のインクジェット記録ヘッド41と対向させて搬送する動作である。第2搬送は、第1搬送された記録用紙の裏面を記録部24のインクジェット記録ヘッド41と対向させて搬送する動作である。
<第1搬送>
給紙ローラ25は、給紙トレイ20に載置された最上位置の記録用紙に圧接されている。例えば操作パネル14から両面記録を開始させるための所定操作が行われると、搬送部15による第1搬送が開始される。第1搬送では、まずLFモータ77から給紙ローラ25へ駆動力が伝達される。これにより給紙ローラ25が回転駆動され、給紙トレイ20における最上位置の記録用紙が矢印17(図3参照)で示される方向に第1搬送路22へ供給される。第1搬送路22へ供給された記録用紙は、搬送ローラ50とピンチローラ、及び排紙ローラ51と拍車52によって、その表面がインクジェット記録ヘッド41と対向した状態で第1搬送路22に沿って搬送される。その搬送過程においてインクジェット記録ヘッド41から記録用紙へインクが吐出され、記録用紙の表面に画像が記録される。
この記録用紙(記録用紙65、図4参照)は、記録部24から下流側部位45に設けられた経路切換部へ送られる。経路切換部は、LFモータ77からの駆動力が伝達されることにより、アーム55が第1姿勢に維持されるとともにスイッチバックローラ53が正転されている。このため、一方の面(表面64)に画像が記録された記録用紙65は、排紙トレイ21側へ搬送される。そして、この記録用紙65の後端62が拍車56よりも上流側の所定位置(図4参照)に到達したときに、搬送ローラ50、排紙ローラ51、スイッチバックローラ53が停止される。これにより、記録用紙65が静止されて第1搬送が完了する。なお、記録用紙65が静止される所定位置は、図4に示される位置に限定されるものではない。例えば、所定位置は、記録用紙65の後端62が拍車52(図3参照)よりも上流側に配置された位置であってもよい。また、所定位置は、記録用紙65の後端62が給紙ローラ15へ到達しない程度に第2搬送路23へスイッチバック搬送された位置であってもよい。
<第2搬送>
第1搬送が完了してから後述の乾燥時間67(図6参照)を経過すると、搬送部15による第2搬送が開始される。第2搬送では、まず経路切換部のアーム55にLFモータ77から駆動力が伝達されて、アーム55が第1姿勢(図4参照)から第2姿勢(図5参照)へ姿勢変化される。記録用紙65の後端62は、拍車56によって下側へ押圧され、第2搬送路23側へ向けられる。スイッチバックローラ53が逆転されることにより、記録用紙65は搬送方向が変えられて第2搬送路23に沿ってスイッチバック搬送される。この記録用紙65は、給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙と給紙ローラ25との間(以下、「当接位置」とも称される。)へ送られる。
この記録用紙65は、給紙ローラ25が回転駆動されることによって、第2搬送路23から第1搬送路22における記録部24の上流側(上流側部位46)へ供給される。その結果、記録用紙65は、表裏反転されて第1搬送路22へ供給されることとなる。記録用紙65は、搬送ローラ50とピンチローラ、及び排紙ローラ51と拍車52により、裏面が記録部24のインクジェット記録ヘッド41と対向した状態で第1搬送路22に沿って再送される。記録用紙65の裏面は、表面64の反対側の面である。記録用紙65の搬送過程においてインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65へインクが吐出され、記録用紙65の裏面に画像が記録される。経路切換部は、LFモータ77からの駆動力が切り替えられることにより、アーム55が第2姿勢から第1姿勢へ戻されてスイッチバックローラ53が正転されている。このため、裏面に画像が記録された記録用紙65は、第1搬送路22から排紙トレイ21へ排出される。これにより、第2搬送が完了する。
<乾燥時間67>
上述のように記録用紙65に画像が両面記録される場合、制御部70は、第1搬送が完了するまでに乾燥時間67を設定する。すなわち、制御部70は、乾燥時間67を決定してRAM73に格納する。ここで、乾燥時間67は、記録用紙65が第1搬送される過程で記録部24により記録用紙65の表面64に付着されたインクを乾燥させるための時間である。乾燥時間67は、両面記録が行われる毎に設定される。したがって、RAM73に格納されている乾燥時間67は、両面記録が行われる毎に更新される。
制御部70は、上述の第1搬送が完了してから乾燥時間67を経過した後に第2搬送を搬送部15に開始させる。すなわち、記録用紙65は、第1搬送が完了してから乾燥時間67を経過するまでの期間、所定の待機位置に待機される。本実施形態においては、図4に示されるように、記録用紙65の後端62が拍車56よりも上流側に位置した状態で記録用紙65が乾燥時間67だけ静止される。
上述のように、第1搬送が完了してから乾燥時間67を経過すると、第2搬送が開始される。これにより、記録用紙65は、後端62側から第2搬送路23に沿ってスイッチバック搬送される。乾燥時間67が長く設定されている場合、記録用紙65の表面64に付着されたインクが充分に乾燥した状態で記録用紙65がスイッチバック搬送される。この場合、記録用紙65の後端62が上述の当接位置へ正しく進入し、ジャムが発生することなく記録用紙65が第1搬送路22へ供給されると考えられる。逆に、乾燥時間67が短すぎる場合、記録用紙65の表面64に付着されたインクが充分に乾燥していない状態で記録用紙65がスイッチバック搬送される。すなわち、記録用紙65がインク滴によって濡れて剛性が低下すると共に脆くなった状態でスイッチバック搬送される。この場合、記録用紙65が第2搬送路23に引っ掛かったり、或いは後端62が上述の当接位置へ正しく進入しないことが原因で、記録用紙65のジャムが発生すると考えられる。このように、本実施形態に係る複合機10では、第2搬送路23においてジャムが発生すると想定される。乾燥時間67は、記録用紙65に付着したインクがジャムを誘発しない程度に必要充分な時間に設定される。この乾燥時間67は、本実施形態においては、記録用紙65のジャムの発生状況、及びインク量66を参照して適切な時間に設定される。
<インク量66>
インク量66は、プリント部11による両面記録において、記録部24から記録用紙65の表面64に吐出されるインクの量を示すデータである。制御部70は、記録部24のインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64に吐出されるインクの量を、例えば印刷データに基づいて取得する。本実施形態においては、このインク量66を参照して乾燥時間67が決定される。なお、このインク量は、インクジェット記録ヘッド41から実際に吐出されるインクの量を測定することにより取得されてもよい。
図7は、記録用紙65の表面64を示す模式図である。図7中の矢印は、第1搬送時の記録用紙65の搬送方向を示す。
プリント部11による両面記録が行われる場合、例えばスキャナ12による原稿の画像読み取りが行われて、印刷データがRAM73に格納される。制御部70は、この印刷データに基づいて、インクジェット記録ヘッド41から吐出されるインクの量を算出してインク量66としてRAM73に格納する。図7に示されるように、制御部70は、本実施形態においては、記録用紙65の表面64における記録面の全域に付着されるインクの量を印刷データから算出する。そして、制御部70は、算出したインクの量をインク量66としてRAM73に格納する。なお、インクジェット記録ヘッド41から吐出されるインクの量を印刷データから算出する方法は周知であるため、その詳細な説明は省略する。
図8は、EEPROM74に格納されているテーブルを示す説明図であり、(A)はデフォルト時間テーブル35であり、(B)は最短時間テーブル36であり、(C)は限界時間テーブル37である。
図8(A)に示されるように、デフォルト時間テーブル35は、「インク量」フィールド、及び「デフォルト時間」フィールドと命名された2つのフィールドを有する。「インク量」フィールドには、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインクの量が予め格納されている。図8(A)においては、記録用紙65における表面64の全体にインクを吐出した場合の総インク量を「100」とした場合のインク量が示されている。例えば、「インク量」フィールドにおける「0〜10」は、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインク量が、上記総インク量の0%から10%の範囲内であることを示す。また、例えば、「インク量」フィールドにおける「80〜90」は、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインク量が、上記総インク量の80%から90%の範囲内であることを示す。「デフォルト時間」フィールドには、デフォルトの乾燥時間(以下、「デフォルト時間」とも称される。)が格納されている。EEPROM74には、各フィールドの情報がデフォルト時間テーブル35における同一レコードに格納されることによって対応付けて記憶されている。
例えば複合機10の電源投入直後など、プリント部11による両面記録が一度も行われていない場合に、このデフォルト時間テーブル35が参照される。すなわち、制御部70は、RAM73に乾燥時間67が格納されていない場合に、デフォルト時間テーブル35からデフォルト時間を読み出して乾燥時間67に設定する。制御部70は、例えばインクジェット記録ヘッド41から記録紙65の表面64へ吐出されるインク量「15」を印刷データに基づいて取得する。この場合、制御部70は、「インク量」フィールドに「10〜20」が格納されているレコードにおける「デフォルト時間」フィールドのデフォルト時間T1をデフォルト時間テーブル35から読み出して乾燥時間67に設定する。また、制御部70は、例えばインクジェット記録ヘッド41から記録紙65の表面64へ吐出されるインク量「85」を印刷データに基づいて取得する。この場合、制御部70は、「インク量」フィールドに「80〜90」が格納されているレコードにおける「デフォルト時間」フィールドのデフォルト時間T9をデフォルト時間テーブル35から読み出して乾燥時間67に設定する。
図8(B)に示されるように、最短時間テーブル36は、「インク量」フィールド、及び「最短時間」フィールドと命名された2つのフィールドを有する。「インク量」フィールドには、デフォルト時間テーブル35における「インク量」フィールドと同様に、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインクの量が予め格納されている。「最短時間」フィールドには、制御部70によりジャム無しが検出された最短の乾燥時間(以下、「最短時間」とも称される。)が格納される。EEPROM74には、各フィールドの情報が最短時間テーブル36における同一レコードに格納されることによって対応付けて記憶されている。
例えば、制御部70は、表面64に吐出されるインク量が「23」の両面記録に対して乾燥時間67を設定する。そして、制御部70は、その両面記録においてレジセンサ84によりジャム無しを検出した場合、「インク量」フィールドに「20〜30」が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドにその乾燥時間67を最短時間TCとして格納する。また、例えば、制御部70は、表面64に吐出されるインク量が「95」の両面記録に対して乾燥時間67を設定する。そして、制御部70は、その両面記録においてレジセンサ84によりジャム無しを検出した場合、「インク量」フィールドに「90〜100」が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドにその乾燥時間67を最短時間TKとして格納する。このように、最短時間テーブル36には、ジャムが検出されなかった両面記録に対して設定された乾燥時間67のうち最も短い乾燥時間67(最短時間)がインク量毎に格納される。なお、この最短時間は、過去にジャムが検出されていない状況で設定された乾燥時間67のうち、最も短い時間である。
図8(C)に示されるように、限界時間テーブル37は、「インク量」フィールド、及び「限界時間」フィールドと命名された2つのフィールドを有する。「インク量」フィールドには、デフォルト時間テーブル35における「インク量」フィールドと同様に、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインクの量が予め格納されている。後に詳述されるが、前回の両面記録でジャムが検出されていなければ、乾燥時間67は前回の両面記録のときよりも短くなるように設定される。レジセンサ84からのセンサ信号に基づいて制御部70によってジャム有りが検出された場合、最短時間テーブル36に格納されている最短時間が、ジャム無しが検出され得る最短の乾燥時間(以下、「限界時間」とも称される。)と考えられる。「限界時間」フィールドには、ジャム有りが検出されたことを条件として、最短時間テーブル36に格納されている最短時間が限界時間として格納される。EEPROM74には、各フィールドの情報が限界時間テーブル37における同一レコードに格納されることによって対応付けて記憶されている。
例えば、制御部70は、時間K1を乾燥時間67に設定したインク量が「15」である両面記録においてジャム無しを検出する。この場合、制御部70は、最短時間テーブル36の「インク量」フィールドに「10〜20」が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドに時間K1を格納する。そして、制御部70は、時間K2を乾燥時間67に設定したインク量が「15」である次の両面記録においてジャム有りを検出する。この場合、制御部70は、最短時間テーブル36を参照し、「インク量」フィールドに「10〜20」が格納されているレコードの「最短時間」フィールドから時間K1である最短時間TBを読み出す。そして、制御部70は、限界時間テーブル37の「インク量」フィールドに「10〜20」が格納されているレコードにおける「限界時間」フィールドに、読み出した最短時間TBを限界時間TIIIとして格納する。
なお、本実施形態においては、テーブル35〜37においてインク量が10段階に分類されているが、「インク量」フィールドにおけるレコード数は10以外であってもよい。
このように、EEPROM74は、制御部70によりジャム有りが検出されたことを条件として、過去の両面記録において制御部70によりジャム無しが検出された最短の乾燥時間67(最短時間テーブル36に格納された最短時間)を限界時間として記憶する。この限界時間は、制御部70により印刷データから取得される表面64のインク量に対応付けてEEPROM74に記憶される。
連続する複数回の両面記録において、乾燥時間67は、デフォルト時間テーブル35、最短時間テーブル36、及び限界時間テーブル37を参照して以下のように設定変更される。
図9は、乾燥時間67の設定変更を例示する説明図である。なお、図9においては、例えば複合機10の電源投入直後など、最初(1枚目)の両面記録に対する乾燥時間67を「100」として7枚の記録用紙65に対する乾燥時間67が例示されている。
例えば複合機10の電源投入直後など最初の両面記録(1枚目の記録用紙65に対する両面記録)を行う場合、制御部70は、1枚目の記録用紙65の表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「55」を取得する。過去に両面記録が行われていないので、制御部70は、デフォルト時間テーブル35(図8(A)参照)を参照してインク量「55」に対応する乾燥時間「100」を読み出して乾燥時間67に設定する。制御部70は、今回の両面記録の第2搬送におけるジャムの発生を検出し、ジャムが検出されなかったことを条件としてその旨を示す情報をRAM73に記憶する。
制御部70は、2枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「55」を取得する。2枚目の記録用紙65に対する両面記録では、インクジェット記録ヘッド41から表面64に吐出されるインク量「55」は1枚目の記録用紙65の表面64に吐出されたインク量と同じである。また、1枚目の記録用紙65に対する両面記録ではジャム無しが検出されている。この場合、制御部70は、2枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67を1枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間「100」よりも短い「95」に設定する。
制御部70は、3枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「55」を取得する。このインク量は、2枚目の記録用紙65に対して表面64に付着されたインク量と同じである。また、2枚目の記録用紙65に対する両面記録では「ジャム無し」が検出されている。この場合、制御部70は、3枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67を2枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間「95」よりも短い「90」に設定する。このように、制御部70は、前回の両面記録でジャム無しが検出されたことを条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間67を前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも短く設定する。
なお、この3枚目の記録用紙65に対する両面記録ではジャム有りが検出されているので、制御部70は、乾燥時間「95」を限界時間として限界時間テーブル37(図8(C)参照)に格納する。すなわち、制御部70は、ジャム有りが検出されたことを条件として、過去の両面記録においてジャム無しが検出された乾燥時間「100」、「95」のうち、最短の乾燥時間「95」を限界時間としてEEPROM74に記憶する。
制御部70は、4枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「55」を取得する。上述のように、限界時間テーブル37にはインク量「55」に対応する限界時間「95」が格納されている。制御部70は、インク量「55」に対応する限界時間「95」を限界時間テーブル37から読み出して4枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67に設定する。このように、制御部70は、過去にジャム有りが検出された両面記録と略同じインク量で行われる両面記録に対する乾燥時間67を限界時間テーブル37に格納されている限界時間に設定する。なお、限界時間テーブル37に格納されている限界時間「95」は、ジャム有りが検出された3枚目の記録用紙65に対する乾燥時間「90」よりも長い時間である。このため、4枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67は、前回の両面記録でジャム有りが検出されたことを条件として、前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも長く設定される。
制御部70は、5枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「45」を取得する。このインク量は、4枚目の記録用紙65に対する両面記録において表面64に付着されたインク量「55」よりも少ない。また、4枚目の記録用紙に対する両面記録では「ジャム無し」が検出されている。この場合、制御部70は、5枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67を4枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間「95」よりも短い「85」に設定する。このように、制御部70は、今回の両面記録で取得されたインク量が前回の両面記録で取得されたインク量66よりも少ないことを条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間67を前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも短く設定する。
制御部70は、6枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「75」を取得する。このインク量は、5枚目の記録用紙65に対する両面記録において表面64に付着されたインク量「45」よりも多い。また、5枚目の記録用紙に対する両面記録では「ジャム無し」が検出されている。この場合、制御部70は、6枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間67を5枚目の記録用紙65に対する両面記録の乾燥時間「85」よりも長い「110」に設定する。このように、制御部70は、今回の両面記録で取得されたインク量が前回の両面記録で取得されたインク量66よりも多いことを条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間67を前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも長く設定する。
制御部70は、7枚目の記録用紙65に対する両面記録を行う場合、その表面64に記録される印刷データに基づいて、インク量「55」を取得する。上述のように、限界時間テーブル37には、このインク量「55」に対応する限界時間が格納されている。したがって、制御部70は、7枚目の記録用紙65に対する両面記録で取得されたインク量「55」に対応する限界時間「95」を限界時間テーブル37から読み出して乾燥時間67に設定する。このように、記録用紙65のジャムが検出された後は、乾燥時間67が表面64に付着されたインクを乾燥させるために必要充分な時間に設定されることとなる。
なお、このような両面記録は必ずしも連続して行われる必要はない。例えば、3枚目の記録用紙65に対する両面記録と4枚目の記録用紙65に対する両面記録との間に片面記録が行われてもよい。すなわち、上述した7枚の記録用紙65に対する両面記録は、1ジョブ内で連続的に実行されるものに限定されるものではない。
<プリント部11における両面記録>
以下、プリント部11で行われる両面記録の処理が詳細に説明される。
図10〜図12は、両面記録の開始命令が入力された場合に複合機10において実行される処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートに基づいて説明する複合機10の処理は、ROM72に記憶されている制御プログラムに基づいて制御部70が発行する命令に従って行われる。図9で例示した乾燥時間67の設定変更は、図10〜図12に示す以下の処理が実行されることにより実現される。
複合機10の制御部70は、操作パネル14において所定の操作入力が行われたか否かに基づいて、両面記録の開始命令があったか否かを判断する(S1)。両面記録の開始命令がないと制御部70が判断した場合(S1:NO)、処理がステップS1へ戻される。制御部70は、両面記録の開始命令があったと判断した場合(S1:YES)、今回の両面記録において記録用紙65の表面64に吐出されるインク量を取得する(S2)。具体的には、制御部70は、スキャナ12に原稿の画像読み取りを実行させて画像データを取得し、その画像データに基づいて印刷データを生成してRAM73に格納する。制御部70は、RAM73に格納された印刷データに基づいて、記録部24のインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されるインクの量を取得する。
次に、制御部70は、EEPROM74に限界時間が記憶されているか否かを判断する(S3)。具体的には、制御部70は、限界時間テーブル37を参照し、ステップS2において取得したインク量が「インク量」フィールドに格納されているレコードにおける「限界時間」フィールドに限界時間が格納されているか否かを判断する。制御部70は、限界時間が格納されていると判断した場合(S3:YES)、その限界時間を乾燥時間67に設定する(S4)。具体的には、制御部70は、ステップS2において取得したインク量に対応する限界時間を限界時間テーブル37から読み出して乾燥時間67としてRAM73に格納する。このように、制御部70は、今回の両面記録において取得されたインク量に対応する、限界時間テーブル37に格納された限界時間を今回の両面記録に対する乾燥時間67に設定する。なお、後に詳述されるが、限界時間は、記録用紙65のジャムが発生することによって限界時間テーブル37に格納される。そして、限界時間テーブル37に限界時間が格納された後は、インク量が同じ範囲内であれば、その限界時間が乾燥時間67に設定されることとなる。このように、制御部70は、レジセンサ84によりジャム有りが検出された後の両面記録に対する乾燥時間67を限界時間テーブル37に格納された限界時間に設定する。
制御部70は、限界時間が記憶されていないと判断した場合(S3:NO)、前回の乾燥時間67がRAM73に記憶されているか否かを判断する(S5)。制御部70は、前回の両面記録に対する乾燥時間67が記憶されていないと判断した場合(S5:NO)、デフォルト時間を今回の両面記録に対する乾燥時間67に設定する(S6)。具体的には、制御部70は、ステップS2の処理で取得したインク量に対応するデフォルト時間をデフォルト時間テーブル35から読み出して乾燥時間67としてRAM73に格納する。具体的には、制御部70は、ステップS2において取得したインク量に対応するデフォルト時間をデフォルト時間テーブル35から読み出して乾燥時間67としてRAM73に格納する。
制御部70は、ステップS4の処理、ステップS6の処理、又は後述するステップS35の処理を行った後、第1搬送を開始する(S7)。すなわち、制御部70は、搬送部15のLFモータ77を制御することにより、記録用紙65をその表面64を記録部24のインクジェット記録ヘッド41と対向させた状態で第1搬送路22に沿って搬送する。この搬送過程において、記録部24は、記録用紙65の表面64に画像を記録する(S8)。具体的には、ヘッド制御回路81は、入力される印刷データに基づいてインクジェット記録ヘッド41の動作を制御することにより、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ選択的にインクを吐出させる。
制御部70は、記録用紙65の表面64に対する画像記録が完了したか否かを判断する(S9)。記録用紙65の表面64に対する画像記録が完了していないと制御部70が判断した場合(S9:NO)、処理がステップS9へ戻される。制御部70は、記録用紙65の表面64に対する画像記録が完了したと判断した場合(S9:YES)、LFモータ77を制御して記録用紙65の搬送を停止させる(S10)。これにより、記録用紙65は、上述のように図4に示される所定位置に静止される。制御部70は、このステップS10の処理を行ってからの経過時間をカウントする。
図11に示されるように、制御部70は、上記経過時間のカウントを開始してから、ステップS4の処理、ステップS6の処理、又は後述のステップS35の処理で設定した乾燥時間67を経過したか否かを判断する(S13)。乾燥時間67を経過していないと制御部70が判断した場合(S13:NO)、処理がステップS13へ戻される。制御部70は、乾燥時間67を経過したと判断した場合(S13:YES)、上述の第2搬送を開始する(S14)。これにより、アーム55が第1姿勢(図4参照)から第2姿勢(図5参照)へ姿勢変化され、記録用紙65が第2搬送路23に沿ってスイッチバック搬送される。
搬送部15によるステップS14の第2搬送が開始されると、制御部70は、レジセンサ84から出力されるセンサ信号に基づいて、記録用紙65のジャムの発生を検出する(S15)。制御部70は、記録用紙65のジャムが検出されていないと判断した場合(S15:NO)、記録用紙65の後端62が記録部24に到達したか否かを判断する(S16)。具体的には、制御部70は、第2搬送される記録用紙65の後端62がレジセンサ84により検出された後の記録用紙65の搬送量が所定量に達したか否かをロータリーエンコーダ82から出力されるエンコーダ量に基づいて判断する。記録用紙65の搬送量が所定量に達していなければ記録用紙65が記録部24に到達していないと判断される。逆に、記録用紙65の搬送量が所定量に達していれば記録用紙65が記録部24に到達したと判断される。
記録用紙65が記録部24に到達していないと制御部70が判断した場合(S16:NO)、処理がステップS15へ戻される。上述のように、記録用紙65は、第2搬送されることにより第2搬送路23から第1搬送路22へ供給される。その結果、記録用紙65は、表裏反転されて記録部24へ供給される。制御部70は、記録用紙65が記録部24に到達したと判断した場合、第2搬送される記録用紙65の裏面に画像を記録する(S17)。具体的には、制御部70は、ヘッド制御回路81に印刷データを入力して、インクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の裏面へインクを選択的に吐出させる。
制御部70は、第2搬送される記録用紙65の裏面に対する画像記録が完了したか否かを判断する(S18)。記録用紙65の裏面に対する画像記録が完了していないと制御部70が判断した場合(S18:NO)、ステップS17の処理が継続される。制御部70は、記録用紙65の裏面に対する画像記録が完了したと判断した場合(S18:YES)、記録用紙65を第1搬送路22から排紙トレイ21へ排出する(S19)。
このようにして記録用紙65に対する画像の両面記録が完了した後、制御部70は、ジャム無しを記憶する(S20)。具体的には、制御部70は、レジセンサ84によって記録用紙65のジャムが検出されなかったことを示す情報をRAM73に格納する。そして、制御部70は、今回の両面記録においてインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されたインク量をRAM73に記憶する(S21)。すなわち、制御部70は、ステップS2の処理で取得したインク量をインク量66としてRAM73に格納する。RAM73に既にインク量66が格納されている場合、そのインク量66が、ステップS2の処理で取得されたインク量に書き換えられる。また、ステップS4の処理、ステップS6の処理、又は後述のステップS36の処理が行われることによってRAM73に乾燥時間67が記憶されている。これにより、次の両面記録が行われる際に、前回の両面記録において記録用紙65の表面64へ吐出されたインク量66、及び前回の両面記録に対して設定されていた乾燥時間67を参照して乾燥時間を設定することが可能となる。
続いて、制御部70は、今回の両面記録に対して設定された乾燥時間67が最短時間よりも短いか否かを判断する(S22)。具体的には、制御部70は、最短時間テーブル36を参照して、「インク量」フィールドにインク量66が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドの最短時間を最短時間テーブル36から読み出す。そして、制御部70は、乾燥時間67が読み出した最短時間よりも短いか否かを判断する。制御部70は、乾燥時間67が読み出した最短時間よりも短いと判断した場合(S22:YES)、乾燥時間67を最短時間として記憶する(S23)。具体的には、制御部70は、最短時間テーブル36に対して、「インク量」フィールドにインク量66が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドに乾燥時間67を格納する。これにより、上記読み出された最短時間が乾燥時間67に更新される。なお、このステップS23の処理は、ステップS22の処理が行われることなく実行されてもよい。
制御部70は、ステップS23の処理を行った後、又はステップS22において「NO」と判断した場合、次ページの印刷データがあるか否かを判断する(S24)。次ページの印刷データがあると制御部70が判断した場合(S24:YES)、処理がステップS2へ進められる。次ページの印刷データがないと制御部70が判断した場合(S24:NO)、印刷ジョブが完了したものとして処理が終了される。
制御部70は、記録用紙65の裏面に対する画像記録が開始されるまでに記録用紙65のジャムを検出した場合(S15:YES)、ジャム有りを記憶する(S25)。具体的には、制御部70は、レジセンサ84によって記録用紙65のジャムが検出されたことを示す情報をRAM73に格納する。そして、制御部70は、今回の両面記録においてインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64へ吐出されたインク量をRAM73に記憶する(S26)。この処理は、ステップS21の処理と同様に行われる。
制御部70は、EEPROM74に最短時間が記憶されているか否かを判断する(S27)。具体的には、制御部70は、最短時間テーブル36を参照して、「インク量」フィールドにインク量66が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドに最短時間が格納されているか否かを判断する。制御部70は、最短時間が格納されていると判断した場合(S27:YES)、最短時間を限界時間として記憶する(S28)。具体的には、制御部70は、最短時間テーブル36を参照して、「インク量」フィールドにインク量66が格納されているレコードにおける「最短時間」フィールドから最短時間を読み出す。そして、制御部70は、この最短時間を限界時間テーブル37において「インク量」フィールドにインク量66が格納されているレコードの「限界時間」フィールドに格納する。このように、制御部70は、レジセンサ84によりジャム有りが検出されたことを条件として、最短時間を限界時間としてEEPROM74に記憶する。なお、最短時間は、上記ステップS22及び上記ステップS23の説明から明らかなように、過去の両面記録においてレジセンサ84によりジャム無しが検出された最短の乾燥時間である。
制御部70は、ステップS28の処理を行った後、又は最短時間が記憶されていないと判断した場合(S27:NO)、ジャム解除操作を促す旨を報知する(S29)。具体的には、制御部70は、例えば「用紙が詰まりました」、「カバーを開いて取り除いてください」等のメッセージを操作パネル14に表示させる。そして、制御部70は、周知の方法で、ジャムが解消されたか否か(詰まった記録用紙65が取り除かれたか否か)を判断する(S30)。ジャムが解消されていないと制御部70が判断した場合(S30:NO)、ステップS29の処理が継続される。ジャムが解消されたと制御部70が判断した場合(S30:YES)、処理がステップS3へ進められる。
上記ステップS5において前回の乾燥時間67がRAM73に格納されていると制御部70が判断した場合(S5:YES)、処理がステップS32(図12参照)へ進められる。制御部70は、RAM73に記憶されているジャムの発生状況を示す情報(ステップS20の処理又はステップS25の処理でRAM73に格納された情報)に基づいて、前回の裏面記録でジャムが発生したか否かを判断する(S32)。前回の両面記録においてステップS20の処理が行われた場合、このステップS32において「NO」と判断される。逆に、前回の両面記録においてステップS25の処理が行われた場合、このステップS32において「YES」と判断される。
制御部70は、前回の裏面記録でジャムが発生しなかったと判断した場合(S32:NO)、乾燥時間を前回よりも短くする(S33)。具体的には、制御部70は、RAM73から前回の乾燥時間67を読み出し、その乾燥時間67を減少させる。
制御部70は、前回の裏面記録でジャムが発生したと判断した場合(S32:YES)、乾燥時間を前回よりも長くする(S34)。具体的には、制御部70は、RAM73から前回の乾燥時間67を読み出し、その乾燥時間67を増加させる。ステップS33の処理及びステップS34の処理は、例えば予め設定された演算式に基づいて行われる。
制御部70は、今回の両面記録で記録用紙65の表面64に吐出されるインク量が前回の両面記録で記録用紙65の表面64に吐出されたインク量と同じであるか否かを判断する(S35)。具体的には、制御部70は、ステップS2の処理で取得した今回のインク量がRAM73に格納されている前回のインク量66と一致するか否かを判断する。制御部70は、今回の表面64のインク量が前回と同じであると判断した場合(S35:YES)、ステップS33の処理又はステップS34の処理で変更された乾燥時間を乾燥時間67としてRAM73に格納する(S36)。すなわち、制御部70は、前回の両面記録で使用した記録用紙65のジャム無しがレジセンサ84により検出されたこと(ステップS32で「NO」と判断されたこと)を条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間を前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも短く設定する。逆に、制御部70は、前回の両面記録で使用した記録用紙65のジャム有りがレジセンサ84により検出されたこと(ステップS32で「YES」と判断されたこと)を条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間を前回の両面記録に対する乾燥時間67よりも長く設定する。
制御部70は、表面64のインク量が前回と異なると判断した場合(S35:NO)、表面64のインク量が前回よりも多いか否かを判断する(S37)。具体的には、制御部70は、ステップS2の処理で取得した今回のインク量がRAM73に格納されている前回のインク量66よりも多いか否かを判断する。制御部70は、今回の表面64のインク量が前回よりも多いと判断した場合(S37:YES)、ステップS33の処理又はステップS34の処理で変更された乾燥時間を長くする(S38)。
制御部70は、今回の表面64のインク量が前回よりも少ないと判断した場合(S37:NO)、ステップS33の処理又はステップS34の処理で変更された乾燥時間を短くする(S39)。ステップS38の処理及びステップS39の処理は、例えば予め設定された演算式に基づいて行われる。
このように、今回の表面64のインク量が前回と異なる場合、ステップS38又はステップS39の処理によって変更された乾燥時間が制御部70により乾燥時間67としてRAM73に設定される(S36)。すなわち、制御部70は、今回の両面記録で取得されたインク量が前回の両面記録で取得されたインク量67よりも多いこと(ステップS37で「YES」と判断されたこと)を条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間を前回の両面記録に対する乾燥時間よりも長く設定する。逆に、制御部70は、今回の両面記録で取得されたインク量が前回の両面記録で取得されたインク量67よりも少ないこと(ステップS37で「NO」と判断されたこと)を条件として、今回の両面記録に対する乾燥時間を前回の両面記録に対する乾燥時間よりも短く設定する。
以上説明したように、制御部70は、前回の両面記録で使用した記録用紙65に対するレジセンサ84のジャム検出結果、及び制御部70により取得された表面64のインク量に基づいて、今回の両面記録で使用する記録用紙65に対する乾燥時間67を設定する。ただし、今回の両面記録に対して設定される乾燥時間は、前回の両面記録で使用した記録用紙65に対するレジセンサ84の検出結果(ジャムの発生状況)のみに基づいて設定されてもよい。この場合、上記ステップS35、上記ステップS37〜ステップS39の処理が不要となる。
<本実施形態の作用効果>
今回の両面記録で使用する記録用紙65に対する乾燥時間は、前回の両面記録で使用した記録用紙65に対するレジセンサ84の検出結果に基づいて設定される。すなわち、前回の両面記録においてジャムが検出されていれば今回の両面記録に対する乾燥時間が前回よりも長く設定される。また、前回の両面記録においてジャムが検出されていなければ今回の乾燥時間が前回よりも短く設定される。換言すれば、前回の両面記録でジャム有りが検出された場合には今回の両面記録に対する乾燥時間が前回の両面記録のときよりも長くなるように設定されて、今回の両面記録におけるジャムの発生が未然に防止される。逆に、乾燥時間を短くしてもジャムが発生するおそれが少ないと想定される場合(前回の両面記録でジャム無しが検出された場合)に乾燥時間が前回の両面記録のときに比べて短縮されて、両面記録にかかる時間が短縮される。このように、前回の両面記録における記録用紙65のジャムの有無に基づいて乾燥時間が設定されるので、ジャムの発生を低減するために必要充分な乾燥時間を設定することができる。したがって、ジャムの発生を抑制しつつ、両面記録にかかる時間を短くすることができる。
記録用紙65の表面64に付着されたインクを乾燥させるために必要な時間は、表面64に対してインクジェット記録ヘッド41から吐出されるインクの量によって変化する。すなわち、表面64に付着されるインクが多いほどインクを乾燥させるために必要な時間は長くなる。逆に、表面64に付着されるインクが少ないほどインクを乾燥させるために必要な時間は短くなる。本実施形態においては、今回の両面記録で使用する記録用紙65の表面64に付着されるインクの量が前回の両面記録で使用した記録用紙65の表面64に付着されたインクの量よりも多い場合に、乾燥時間が前回の両面記録のときよりも長く設定されて、ジャムの発生が未然に防止される。逆に、今回の両面記録で使用する記録用紙65の表面64に付着されるインクの量が前回の両面記録で使用した記録用紙65の表面64に付着されたインクの量よりも少ない場合に、乾燥時間が前回の両面記録のときよりも短く設定されて、両面記録にかかる時間が短縮される。このように、本実施形態においては、記録用紙65のジャムの発生状況に加えて、記録部24のインクジェット記録ヘッド41から記録用紙65の表面64に吐出されるインクの量を基に乾燥時間が設定される。このため、記録用紙65のジャムの発生状況のみに基づいて乾燥時間が設定される場合に比べて、乾燥時間をより最適な時間に設定することができる。
また、ジャムが発生した後の両面記録では、限界時間テーブル37を参照することにより、ジャムが発生した両面記録と略同じインクの量で実施される両面記録に対してジャムが発生するおそれが少ない最短の時間(限界時間)に乾燥時間が設定される。より詳しくは、今回の両面記録に対する乾燥時間が、ジャムが発生した両面記録の乾燥時間よりも長く且つジャムが発生しなかった乾燥時間の中で最も短い時間に設定される。このため、設定された乾燥時間が短すぎてジャムの発生が誘発されることなく、できるだけ短い時間で両面記録を完了するための乾燥時間が、インク量に応じた最適な時間に設定される。
<本実施形態の変形例>
図13は、記録用紙65の表面64を示す模式図であり、(A)は領域88を示し、(B)は領域91〜領域94を示す。
記録用紙65は、第1搬送されてから乾燥時間67を経過した後に、後端62側から第2搬送路23に沿ってスイッチバック搬送される(図5参照)。そして、記録用紙65は、後端62側から給紙トレイ20における最上位置の記録用紙と給紙ローラ25との間の当接位置へと送られる。すなわち、記録用紙65は、ジャムが発生すると想定される位置(本実施形態においては、当接位置)へ後端62側から送られる。このため、記録用紙65の表面64のうち、後端62付近の領域88(図13(A)参照)に付着されるインクの乾燥状況がジャムの発生に大きく影響する。図13(A)に示されるように、制御部70は、記録用紙65の表面64を複数の領域(ここでは、領域88とその他の領域)に区画する。この記録用紙65の表面64を区画する処理は、ロータリーエンコーダ82から出力されるエンコーダ量に基づいて制御部70により実行される。制御部70は、この区画された領域毎に印刷データに基づいてインクの量を取得し、領域88に対してインクジェット記録ヘッド41から吐出されるインクの量をインク量66として設定する。これにより、ジャムの発生状況、及びジャムの発生に大きく影響する領域88に付着されるインクの量に基づいて乾燥時間67を設定することができる。この場合、上記実施形態におけるテーブル35〜テーブル37の「インク量」フィールドのインク量を、領域88に付着されるインク量に対応させればよい。
また、表面64を記録用紙65の搬送方向に複数の領域に区画し、各領域に付着されるインクの量を領域毎に重み付けて足し合わせ、その総インク量をインク量66として設定してもよい。図13(B)に示されるように、制御部70は、例えば記録用紙65の表面64を搬送方向に領域91〜領域94の4つの領域(複数の領域の一例)に区画する。そして、制御部70は、領域94のインク量×0.1+領域93のインク量×0.2+領域92のインク量×0.3+領域91のインク量×0.4の演算式で求めた総インク量をインク量66とする。このように、ジャムの発生に対する影響が大きい領域ほどより大きい重み係数を使用する。なお、区画する領域の数及び各領域に対する重み係数は、適宜変更されてもよい。
このように、ジャムの発生に与える影響の大きい領域88のみのインク量を考慮して乾燥時間を決定したり、或いは上記影響の大小に応じて各領域91〜94に付着されるインク量に重み付けをすることにより、より最適な乾燥時間を設定することが可能となる。
なお、本実施形態においては、第1搬送された記録用紙65が所定の待機位置に静止される形態について説明したが、第1搬送が完了してから乾燥時間67を経過するまでの期間、記録用紙65が搬送されていてもよい。すなわち、本実施形態においては、ジャムが発生すると想定される地点が給紙ローラ25と給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙とが当接する当接位置であるため、上記期間において、この当接位置まで記録用紙65が搬送されていてもよい。つまり、本発明における第2搬送は、ジャムが発生すると想定される地点よりも記録部24側において記録用紙65を搬送する動作である。
また、本発明の第2搬送は、アーム55を第1姿勢から第2姿勢へ姿勢変化させてから、裏面に画像が記録された記録用紙65を第1搬送路22から排紙トレイ21へ排出するまでの動作に限定されるものではない。本発明の第2搬送は、例えば、記録用紙65の後端62が上記当接位置へ到達してから、記録用紙65を第1搬送路22へ再送する搬送動作であってもよい。すなわち、記録用紙65を第2搬送路23に沿ってスイッチバック搬送する動作は、第1搬送が完了してから乾燥時間67を経過するまでの期間に行われてもよいし、或いは乾燥時間67を経過してから第2搬送が開始されるまでに行われてもよい。
また、本実施形態においてレジセンサ84から出力されるセンサ信号に基づいて制御部70により記録用紙65のジャムが検出される形態について説明したが、ジャムの検出方法はこれに限定されるものではない。例えば、メディアセンサをキャリッジ40に搭載して、レジセンサ84及びメディアセンサから出力されるセンサ信号に基づいて、第2搬送される記録用紙65のジャムが検出されてもよい。メディアセンサは、プラテン42上へ送られた記録用紙65の先端及び後端62、記録用紙56の幅方向(図3における紙面垂直方向)の両端を検出する光センサである。