JP5356704B2 - 希少糖を含む二糖類の生産方法 - Google Patents
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Description
第一および第二の方法以外の方法として、既に特許出願をしているものとして、シュークロース・フォスフォリラーゼの逆反応を用いる方法で、シュークロースのD−フラクトースをD−プシコースにした二糖類の製造に成功している(特許文献3)。
(1)原料(基質)として二糖類を用い、該二糖類の3位を微生物反応で酸化して3ケト二糖類を生成させ、これをさらに還元する反応により、希少糖を含む二糖類を生成させること、
上記の微生物反応が、3ケト二糖類を作る性質を有するアグロバクテリウム属微生物に由来する酸化酵素を作用させる酸化反応であること、
を特徴とする少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
(2)上記の微生物が、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)である(1)記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
(3)3ケト二糖類を還元する反応が有機化学的な還元反応による(1)または(2)記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
(4)3ケト二糖類が、ラクチトールまたはラクトースを微生物酸化して得られたものであり、希少糖結合二糖が、希少糖D−グロースを構成単糖とするものである(1)ないし(3)のいずれかに記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
(5)さらに反応混合物から希少糖を含む二糖類を分離する(1)ないし(4)のいずれかに記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
希少糖を含有する二糖類の生産法として、背景技術の項に記載の方法以外新規方法を開発した。すなわち、これまでの方法は単糖である希少糖をアクセプター(受容体)して使用する方法である。従って、まず、遊離の単糖としての希少糖を製造し、それに他の単糖を各種の方法で結合させるものであった。本発明の新規方法は以下の特徴の全く新しい発想によるものである。
本発明の新規方法では、原料として二糖類を用いること、そして、二糖類を加水分解することなく、二糖類のままで構成糖である単糖を希少糖へ変換するという方法である。この方法では、希少糖を生産してから結合するということがないため、希少糖を含む二糖の生産に有効な方法である。
原料(基質)として二糖類を用い、二糖類のままで構成糖である単糖を希少糖へ変換する反応による本発明の新規方法の原理を図1ないし図3に示す。
3ケト二糖類を経由する反応であり、原料(基質)である二糖類の3位を微生物反応で酸化して3ケト二糖類を生成させる反応を包含する。より具体的には原料(基質)である二糖類の3位を微生物反応で酸化して3ケト二糖類を生成させ、これをさらに還元する反応である。原料(基質)としてラクチトール、ラクトース、トレハロースの酸化と還元反応をそれぞれ図1ないし図3に示す。
化1はラクチトールの場合の反応を示している。非還元側のD−ガラクトースの3位を酸化して(ii)、3―ケト・ラクチトールを生産することが可能である。すなわち、3ケト二糖類が、ラクチトールまたはラクトースを微生物酸化して得られたものであり、希少糖結合二糖が、希少糖D−グロースを構成単糖とするものである。二糖類ラクチトールは、そのままで構成糖である単糖が希少糖D−グロースへ変換するが、3ケト二糖類3−ケト−ラクチトールを経由する反応である(図1参照)。
本発明の新規方法は、この3ケトの二糖類を還元することによって、ラクチトールの場合は、D−グロシルーD−ソルビトールを生産する方法である。この還元は不斉的には反応は進行する方法は現在のところ存在しないので、反応後の溶液中にはラクチトールも存在することになる。
この基本的原理は微生物の3位を酸化する二糖類であれば、どのような二糖類にも適用が可能である。すなわち、本発明によって希少糖を含む二糖類は、非還元側の単糖の3位が酸化されるものであれば各種の二糖類が利用できる。
ラクチトール、ラクトース、シュークロース、マルトース、マルチトール、トレハロース、などはその例である。それぞれの二糖類から、酸化される単糖の3位がエピ化した希少糖と結合した二糖類を生産することが可能である。
化2ではトレハロースの場合を示している。この場合は酸化する場所が二箇所存在することとなり、一つ酸化したものである3−ケトトレハロース、両方が酸化された3−ジケトトレハロースが得られることとなる。この酸化3ケトトレハロースを還元することにより、三種の二糖類が得られることとなる。すなわち、D−グルコースが二つ結合した原料であるトレハロース、一つのD−グルコースがD−アロースに還元されたD−アロースとD−グルコースとの結合した二糖類、さらに、D−アロースとD−アロースが結合した二糖類が生産されることとなる(図3参照)。
反応終了後、必要に応じて希少糖を含む二糖類を既知の方法により分離することができる。その後、所望により、ゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー等の精製手段を適用することにより希少糖を含む二糖類を精製することができる。
本発明で使用する3ケト二糖類を作る性質を有する微生物はアグロバクテリウム属に属する微生物である。
二糖類を酸化して非還元側の糖の3位を酸化する微生物の分離について以下に記述する。
分離場所:香川大学農学部内の土壌
株名:M31
菌種同定:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(英名 Agrobacterium tumefaciens)(寄託番号NITE P−489)
すなわち、菌株 Agrobacterium tumefaciens M31 は、日本国独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に2008年2月15日に国内寄託している(寄託番号NITE P−489)
M31株の単離のために、2%(w/w)の ラクチトール(D-ガラクトシルーD-ソルビトール)を単一炭素源として含む無機塩液体培地(表1)を用い30℃で微生物の分離を行った。この条件で生育し、なおかつ二糖の状態で酸化し、その酸化物を培養上精に蓄積する能力を持つ菌株を分離した。微生物の単離や保存に用いる寒天培地は、表2に示す2%のTSB(トリプティック ソイ ブロース)寒天培地を用いた。
なお、ケトース量は、システインカルバゾール法にて測定した。酵素活性は先と同様に実施した。
1)pH
pH6〜9で活性を示すが、7〜8が望ましい。
2)金属イオン
特に活性を増加させる金属イオンはなく、二価の銅イオンで大きく阻害を受ける。
3)酸素の影響
窒素条件下では、ほとんど酸化されないが、空気条件下で撹拌するだけで十分に酸化される。
図6に示されるように、
マルトース:すべて消費されてなくなる。
ラクトース:5時間後で反応が終了(100%)、32時間後にはプロダクト以外にピークが生じる。
マルチトール:5時間後で反応が終了(21min、100%)、32時間後では21minはなくなり、28minのピークが主となる。
ラクチトール:5時間後で反応が終了(18min、100%)、32時間後もほぼ安定、29minにピークが生じる。
スクロース培養菌体3.0g(w/w)、50mM Tris−HCl(pH7.0) 5mlにて懸濁、同量の4%アルギン酸ナトリウム水溶液と混合した。0.2MCaCl2溶液中に滴下し2時間放置。50mM Tris−HCl(pH7.0)で洗浄した。
反応(図7):1%ラクチトール、10mM Tris−HCl(pH7.0)
初速度はフリーの1/3〜1/2に低下するが、最終的に100%転換される。
[培養]
2%TSBに1%スクロースを添加した3mlの培地で30度、10時間、前培養した。全量を同組成の3Lの培地にて培養した。培養装置は5L、有効容積3Lのジャーファーメンターで通気量3L/min、400rpmの撹拌で行った。なお信越シリコーン製の消泡剤を3ml添加した。30度で15時間培養した。15時間後の菌体濃度はOD660=6.74であった。
菌体を9000rpmで遠心分離後、10mMのリン酸緩衝液(pH7.5)で洗浄した。これをOD660=30、終濃度2%ラクチトールとなるように調製した。この条件だと今回は約630mlとなり、十分に通気させるために500ml用のバッフル付三角フラスコで約100ml入れ振とう培養機にて洗浄菌体反応を実施した。約27時間後に100%ラクチトールが3ケトーラクチトールに変換されていた。
反応後の糖液には多くのタンパク質や菌体残渣が混在しているため、中空糸フィルターによる精製を実施した。旭化成製のマイクロモジュールSLP-1053(分画<分子量3000)を用いてタンパク質を除去した。この時点で相当する糖量は60g。
ラクチトールとD-グルシル-D-ソルビトールは脱塩樹脂によって異性化、もしくは二糖間の結合が切断される現象が見られた。これについての理由は明らかにしていないが、糖によっては脱塩処理を長時間処理した場合、異性化などの変化を受けてしまうことが一般的に知られている。本発明の3-ケトーラクチトール、D-グルシル-D-ソルビトールは新規物質であり、その性質については未知な部分が多い。しかし、この原因の解明は本発明の主眼とははずれるため実施しなかった。次のステップの支障となるためにD-ソルビトールの除去を実施した。ワンパス方式クロマト分離装置(日進機械(株)製 NK-26)を用いて上記した糖混合液27g相当を分離した。表5に分離条件および図10に分離後のHPLCの結果を以下に示す。
前記の[3]で得られた糖がどのような糖から構成されているかを調べた。希塩酸を用いて酸加水分解を実施した。糖液を2%(w/v)濃度の480mlとし1Nの塩酸を等量混合させ、80度で6時間処理した。処理後、中和脱塩したのちHPLCで組成を分析した。その分析結果を図11に示す。
図11に示すように、
10分あたりのピークは除去しきれなかった塩
17.53分のピーク:D-ガラクトース
21.27分のピーク:D-グロース
26.45分のピーク:D-ソルビトール
これらの構成比はD-ガラクトース:D-グロース:D-ソルビトール=3.7:1.3:5であった。このことから得られた3-ケトーラクチトールから水素添加した際に生じる糖はラクチトール75%、D-グルシル-D-ソルビトール25%であることがわかった。
前記の[4]で得られた酸加水分解液を回収・濃縮して約8.5g相当の糖液を得た。上記のワンパス方式クロマト分離装置を用いてD-グロースを精製した。条件と結果を表6に示す。
一方、希少糖を含む二糖に関する研究は、多糖の加水分解酵素の糖転移反応を用いた方法、シュークロースフォスフォリラーゼの逆反応を利用した方法などが開発されているが、何れも希少糖を作り、それを受容体として他の単糖を結合させるという方法である。そのため生産量も少なく、希少糖を原料として用いるためコストも高くなる欠点がある。本発明においては二糖類を原料として用いて、二糖に結合したまま構成糖である単糖を希少糖へ変換するという方法のため大量に生産が可能となる。
希少糖を含む二糖はこれまで十分量を得ることができなかったため、殆ど生理活性などの研究が行われていない。本発明によって量的に大量の生産が可能となる方法を確立できたことによって、今後、全く新しい糖質として、食品などへの用途の開発が期待できる。
Claims (5)
- 原料(基質)として二糖類を用い、該二糖類の3位を微生物反応で酸化して3ケト二糖類を生成させ、これをさらに還元する反応により、希少糖を含む二糖類を生成させること、
上記の微生物反応が、3ケト二糖類を作る性質を有するアグロバクテリウム属微生物に由来する酸化酵素を作用させる酸化反応であること、
を特徴とする少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。 - 上記の微生物が、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens、寄託番号NITE P−489)である請求項1に記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
- 3ケト二糖類を還元する反応が有機化学的な還元反応による請求項1または2に記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
- 3ケト二糖類が、ラクチトールまたはラクトースを微生物酸化して得られたものであり、希少糖結合二糖が、希少糖D−グロースを構成単糖とするものである請求項1ないし3のいずれか一項に記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
- さらに反応混合物から希少糖を含む二糖類を分離する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の少なくとも一の希少糖を構成単糖とする希少糖結合二糖の生産方法。
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