第1の発明は、高周波発生手段と、前記高周波発生手段の高周波を受けて発熱する高周波発熱体を貼り付けた加熱皿と、前記加熱皿を装着する加熱庫と、前記加熱皿表面の温度を複数箇所検出する温度分布検出手段と、前記高周波発生手段を制御する加熱制御手段を有し、前記加熱制御手段は、前記温度分布検出手段の検出した温度分布により前記加熱皿の上の食品の有無を判定する食品検出部を有し、前記食品検出部が、前記温度分布検出手段の検出した所定範囲の温度検出箇所の中から最低温度を抽出する最低温度抽出部を有し、前記最低温度抽出部の抽出する最低温度により前記加熱皿の上の食品の有無を判定し、前記食品検出部により食品が無いことを検出したときには前記高周波発生手段の出力を低下または停止させる構成であり、この構成により、高周波発熱体を貼り付けた加熱皿を加熱庫に装着して高周波発生手段で高周波を発生して加熱し、温度分布検出手段で複数箇所の温度を検出し、そのうち加熱皿の温度上昇する箇所を温度検出の所定範囲として、その所定範囲の最低温度の温度上昇が大きいときには加熱皿の上に食品が無いと判定する。この場合には食品の置き方のばらつきも吸収できてより確実に加熱皿の上に食品が無いと判定でき、食品が無いと判定したときには高周波発生手段の出力を低下または停止して安全を確保する。
第2の発明は、高周波発生手段と、前記高周波発生手段の高周波を受けて発熱する高周波発熱体を貼り付けた加熱皿と、前記加熱皿を装着する加熱庫と、前記加熱皿表面の温度を複数箇所検出する温度分布検出手段と、前記高周波発生手段を制御する加熱制御手段を有し、前記加熱庫は、前記加熱皿を装着する高さを設定できる複数の皿掛部を有し、前記加熱制御手段は、前記温度分布検出手段の検出した複数の異なる所定範囲の温度検出箇所の中から各々最低温度を抽出する最低温度抽出部と、前記最低温度抽出部の抽出した最低温度の中から最高温度を抽出する最高温度抽出部と、前記最高温度抽出部の抽出した最高温度により前記加熱皿の上の食品の有無を判定する食品検出部を有し、前記食品検出部により食品が無いことを検出したときには前記高周波発生手段の出力を低下または停止させる構成である。
この構成により、高周波発熱体を貼り付けた加熱皿を加熱庫に装着して高周波発生手段で高周波を発生して加熱し、温度分布検出手段で加熱皿の表面温度分布を検出し、加熱皿を装着する複数の高さそれぞれでの加熱皿の温度上昇する箇所を所定範囲とし、そのそれぞれの所定範囲の最低温度を抽出する最低温度抽出部を複数持ち、複数の最低温度のうち最高温度を最高温度抽出部が抽出するので、いずれの高さに加熱皿があってもその上に食品が無ければいずれかの最低温度が高温となって食品が無いことが判定でき、食品が無いと判定したときには高周波発生手段の出力を低下または停止して安全を確保する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の構成図を示すものである。図1において加熱調理器1は、食品の加熱調理に高周波加熱および熱風、熱輻射による加熱が可能なオーブンレンジとして使用されるものである。
食品などを収納する加熱庫2内に高周波を出力する高周波発生手段であるマグネトロン3、輻射熱を発生する平面ヒータ4、加熱庫2内に温風を送るためのコンベクションヒータ(シーズヒータ)5と循環ファン6、食品を載置して加熱する際に用いる加熱皿7と、加熱皿7を装着する皿掛部8を備え、高周波、輻射、熱風の少なくともいずれか1つ以上を加熱庫2に供給して加熱庫2内の食品を加熱する。
加熱庫2は前面開放の箱形の本体ケース9内部に形成していて、本体ケース8の前面に、加熱庫2の食品取り出し口を開閉する開閉扉10を設けている。また加熱庫2の上面隅
には加熱庫2内の雰囲気温度を検出するためのサーミスタ11をその先端を加熱庫2内に突出させるように設け、加熱庫2の外部には加熱庫2の壁面に設けた覗き孔12より加熱庫2内を臨むようにして赤外線センサ13を設けている。赤外線センサ13は加熱庫2内の食品の表面温度などを検出する。
マグネトロン3は加熱庫2の下側の空間に配置されており、このマグネトロン3から発生した高周波を受ける位置にはスタラー羽根14を設けている。そして、スタラー羽根14を回転すすることによって、高周波を攪拌しながら加熱庫2内に供給するようにしている。なおマグネトロン3やスタラー羽根14は加熱庫2の下側に限らず、上面や側面に設けることもできる。
加熱制御手段15は、サーミスタ11により検出する加熱庫2内の雰囲気温度や、赤外線センサ13により検出する加熱庫2内の食品の表面温度などに基づいて、マグネトロン3、平面ヒータ4、コンベクションヒータ5などを制御する。また、加熱制御手段15は食品検出部16を含んでいて、食品検出部16はマグネトロン3による加熱を開始してからの時間をカウントするタイマー17を含んでいて、加熱開始からの経過時間と赤外線センサ13の検出する温度に基づき、加熱皿7を使う加熱メニューのときに加熱皿7の上に食品が載置されているかどうかを判定する。
次に、図2、図3を用いて加熱皿7について説明する。図2は加熱皿7の上面図、図3は図2におけるA−A’断面図である。加熱皿7は食品の載置面となる金属板18と、金属板18に接着して配置される主材料がフェライトよりなる高周波発熱体19と、使用者が把持する部分でありまた加熱庫2壁面の皿掛部8に掛け置きするための樹脂材料よりなる取っ手部20を有する。
金属板18は、表面に波状の凹凸を設けた水溜可能な深さを有している。金属板18自体を波形として凹凸を形成することで、高周波発熱体19の接着面積が大きくなり、高周波発熱体19上での発熱量が増加する効果が得られる。金属板18の表面には防汚効果の高いフッ素塗装を施し、裏面は吸熱効果の高い黒色耐熱塗装を施している。
また、加熱皿7にはスリット孔21を設けている。マグネトロン3から発生し加熱庫2に導入された高周波は大部分高周波発熱体19に吸収されるが、一部はこのスリット孔21を通過して加熱皿7より上に回り込み直接加熱皿7上の食品を加熱する。
次に、図4を用いて加熱庫2内における赤外線センサ13の視野について説明する。図4(a)は加熱皿7の上に魚などの食品22を載せて加熱する場合の赤外線センサ13の視野を説明する図であり、点線で視野の広がりを表している。赤外線センサ13は加熱庫2の上部側面に設けた覗き孔12より加熱庫2内の温度を検出するものであって、加熱皿7を装着したときには、裏面に高周波発熱体19を接着している金属板18の一部を視野としている。食品22の置き方によっては食品22の一部が視野となる。
ここで、加熱皿7の上に食品が載置されていないときにマグネトロン3により高周波加熱を行うと、金属板18に接着された高周波発熱体19が高周波を吸収して金属板18は急激に温度上昇する。
しかし食品22が載置されていると、食品22で温度上昇が抑制されて、金属板18の温度上昇も緩やかである。その違いを赤外線センサ13で検出することができる。また、食品22が赤外線センサ13の視野に入っている場合には、検出する温度は更に上昇が緩やかであり、加熱皿7の上に食品22が載置されているかどうかの判定が可能である。
図4(b)は、加熱皿7を装着していないときの赤外線センサ13の視野を説明する図である。赤外線センサ13は覗き孔12より加熱庫2内を臨むように斜めに取り付けていて、加熱庫2の底面では赤外線センサ13が取り付けられている反対側底面の端の方が視野となるようにしている。
加熱皿7が装着されていない空の状態でマグネトロン3により高周波加熱を行うと、加熱庫2内に供給された高周波は吸収されるところがなく、加熱庫2の底面を急激に温度上昇させる。ここで、加熱皿7がないときに加熱庫2の底面を視野とするようにしておくことで、加熱皿7が装着されていないときには加熱皿7の上に食品22が載置されていないときと同じように温度上昇を検知することとなる。
こうして、マグネトロン3により高周波加熱したときの赤外線センサ13の検出する温度により高温を検出すれば、加熱皿7の上に食品22がない誤った使い方をされている状態、高温を検出しなければ加熱皿7があり食品22が載置されている正しい状態として区別をすることができ、加熱制御手段15の食品検出部16がその判定を行う。
そして、加熱皿7がない誤った使い方をされている状態は食品22が載置されていない誤った使い方をされている場合と同様の判定を行う。
図5のフローチャートを用いて加熱皿7を使って加熱するときの動作について説明する。焼き物を調理するときには、使用者はまず加熱皿7に魚などの食品を載せて加熱庫2の皿掛部8に装着し、開閉扉10を閉める。そして、操作部(図示せず)で焼き魚などの焼き物メニューを選択し、加熱開始の操作を行う。
加熱制御手段15は、まずS1でマグネトロン3を駆動して加熱庫2内で高周波加熱を開始する。S2で赤外線センサ13により温度Tを検出する。S3で食品検出部16が検出した温度Tと予め定めた所定温度Tsとを比較する。
ここで、所定温度Tsより低ければS6へ進む一方、高ければS4へ進みマグネトロンを停止する。これは高温を検出したため、即ち加熱皿7の上に食品が載置されていないと判定して安全のためにマグネトロン3を停止する。
そして、S5で食品が載置されていないことを表示したり、ブザーを鳴らしたりして使用者に報知し、処理を終了する。
S6ではタイマー17によりカウントしたマグネトロン3により高周波加熱を開始してからの経過時間が所定時間t1を経過したかどうかを判定し、既に経過していればS7に進む一方、まだ経過していなければS2に戻り温度Tの検出、S3で所定温度Tsとの比較を繰り返す。
食品22を載置せずに加熱皿7を装着してマグネトロン3により高周波加熱を行うと、例えば1分後には表面温度100℃以上に上昇する。それに対して、加熱皿7の上に食品22を載置して高周波加熱をしたとき、1分後の加熱皿7の表面温度は60℃ぐらいにしかならない。
従って、例えば所定時間t1を1分、所定温度Tsを70℃としておくと、食品22が載置されていないときには1分以内にS4に進んでマグネトロン3を停止し、食品22が載置されていれば、1分経過したところでS7に進む。また加熱皿7が装着されていないと加熱庫2底面の温度は1分間で80℃ぐらいにまで上昇するのでS4に進んでマグネトロン3を停止する。
そして、S7で所定の加熱時間t2を経過するまで高周波を発生し続ける。所定時間t2加熱すると、S8でマグネトロン3の駆動を停止してS9に進む。この所定時間t2は食品によって異なるが、5〜10分ぐらいが目安で、鮭の切身などは焦げ目が付きやすいので短時間、さんまなどは焦げ目が付きにくいので長時間となる。
S9では、平面ヒータ4を通電して加熱皿7上の食品を上から輻射加熱して食品22の表面に焦げ目を付ける。S10で所定の加熱時間t3を経過するまで平面ヒータ4を通電し続ける。所定時間t3加熱すると、S11で平面ヒータの通電を停止して加熱調理終了となる。ここで所定時間t3は食品によって異なるが、ほぼt2と同じぐらいの時間で、5〜10分ぐらいが目安となる。
以上のように、本実施の形態では、加熱皿7の上に食品22を載置して加熱庫2内に装着して高周波を発生したときの加熱皿7の表面の温度上昇特性と、加熱皿7の上に食品22が載置されていない時の加熱皿7表面の温度上昇特性の違いより、食品22が載置されているかどうかを判定し、食品22が載置されていなければ高周波を停止して、安全を確保できる。
また、本実施の形態では、赤外線センサ13の視野は加熱皿7が装着されていないときには加熱庫2の底面となるようにしているので、加熱皿7が装着されていないときにも食品が載置されていないときと同様の温度上昇を示すことから高周波を停止して、安全を確保できる。
(実施の形態2)
図6は、本発明の第2の実施の形態における加熱調理器の構成図を示すものである。図6において、前記した第1の実施の形態と同じ機能を有する部品には同じ記号を付して説明を省略する。
第1の実施の形態と異なるところは、加熱制御手段15の食品検出部16に初期温度記憶部23と温度差算出部24があることである。
第2の実施の形態においては、マグネトロン3による高周波発生の開始時点で赤外線センサ13が検出した温度を初期温度記憶部23に記憶する。以後、赤外線センサ13が検出する温度と初期温度記憶部23に記憶されている温度との温度差を温度差算出部24で算出し続ける。
そして、マグネトロン3による加熱を開始してからの時間をタイマー17がカウントし、加熱開始からの経過時間と温度差算出部24が算出する温度差、即ち赤外線センサ13が検出する温度の初期からの上昇値に基づき、加熱皿7の上に食品が載置されているかどうかを判定する。
図7のフローチャートを用いて動作について説明する。図7において、実施の形態1を説明する図5と同じ処理には同じ記号を付して説明を省略する。
使用者が加熱皿7に魚などの食品を載せて加熱庫2の皿掛部8に装着し、開閉扉9を閉めて加熱開始の操作を行うと、最初にS21で赤外線センサ13により初期温度T0の検出を行い、検出した温度を初期温度記憶部23に記憶する。そして、S1でマグネトロン3を駆動し加熱庫2内に高周波を発生させて加熱を開始する。
次に、S2で赤外線センサ13により温度Tを検出する。更にS22で温度差算出部2
4が検出した温度Tと初期温度記憶部23に記憶している初期温度T0との温度差ΔTを算出する。
S23でこの算出した温度差ΔTが予め定めた所定の温度差ΔTsより小さいかどうかを比較し、小さければS6に進む一方、大きければ加熱皿7の上に食品22が載置されていないと判定してS4に進んでマグネトロン3を停止し、更にS5で使用者に報知して処理を終了する。
S6ではタイマー16によりマグネトロン3による加熱を開始してから予め定めた所定時間t1を経過したかどうかを判定し、まだ経過していなければS2に戻って前記した処理を繰り返す一方、所定時間t1を経過していればS7に進む。S7以降の動作は図5に示した実施の形態1と同じである。
ここで、加熱庫7の上に食品22を載置せずにマグネトロン3により高周波加熱を行うと、例えば1分間で表面温度は80℃以上温度上昇する。それに対して加熱皿7の上に食品22を載置して高周波加熱をしたとき、40℃ぐらいの温度上昇しかない。
従って、例えば所定時間t1を1分、所定温度差ΔTsを50℃の温度上昇としておくと、加熱皿7の上に食品22が載置されていないときには1分以内にS4に進んでマグネトロン3を停止し、加熱皿7の上に食品22が載置されていれば、1分経過したところでS7に進む。
また、加熱皿7が装着されていないときも加熱庫2底面の温度は1分間で60℃ぐらい温度上昇するのでS4に進んでマグネトロン3を停止する。
以上のように、本実施の形態では、加熱皿7の上に食品22を載置して加熱庫2内に装着して高周波を発生したときの加熱皿7の表面の温度上昇特性と、加熱皿7の上に食品22が載置されていない時の加熱皿7表面の温度上昇特性の違いより、食品22が載置されているかどうかを判定し、食品22が載置されていなければ高周波を停止して、安全を確保できる他、加熱開始時の初期温度との温度差で食品22が載置されているかどうかを判定しているので、夏と冬など雰囲気温度の違いや、繰り返し加熱などでの加熱皿7の表面の初期温度の違う条件でも食品22の有無判定を間違いなく行うことができる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態における加熱調理器の構成図を示すものである。図8において、前記した第1の実施の形態と同じ機能を有する部品には同じ記号を付して説明を省略する。第1の実施の形態と異なるところは赤外線センサ13が1箇所の温度でなく、複数箇所の温度を検出する温度分布検出手段であることである。
食品検出部16は、赤外線センサ13が検出した温度分布のうち所定範囲の複数箇所の温度の中から最低温度を抽出する最低温度抽出部25を備えている。食品検出部16はその最低温度が所定時間経過前に所定温度以上に達すれば加熱皿7の上に食品が載置されていないと判定する。
本実施の形態における赤外線センサの構成を、図9を用いて説明する。図9において、赤外線センサ13は、基板26上に一列に並んで設けられた8個の赤外線検出素子27と、基板26全体を収納するケース28と、ケース28を赤外線検出素子27が並んでいる方向と垂直に交わる方向に移動させるステッピングモータ29とを備えるものである。
基板26上には、赤外線検出素子27を封入する金属製のカン30と、赤外線検出素子
の信号を処理する電子回路31とを設けている。また、カン30には赤外線が通過するレンズ32を設けている。また、ケース28には、赤外線を通過させる赤外線通過孔33と、電子回路31からのリード線を通過させるリード線孔34とを設けている。
この構成により、ステッピングモータ29が回転運動することで、ケース28を、赤外線検出素子27が一列に並んでいる方向とは垂直方向に移動させることができる。
図10は、加熱庫2の底面における赤外線温度検出スポットを説明する図である。図に示すように、本実施の形態3の加熱調理器1は、赤外線センサ13のステッピングモータ29が往復回転動作することにより、加熱庫2内のほぼ全ての領域の温度分布を検出することができるものである。
具体的には、例えば、まず図10中のA1〜A8の領域の温度分布を、赤外線センサ13が有する一列に並んだ8個の赤外線検出素子27が同時に検出する。次に、ステッピングモータ29が回転動作しケース28が移動するとき、赤外線検出素子27がB1〜B8の領域の温度分布を検出する。
ステッピングモータ29が回転動作してケース28が移動するとき、赤外線検出素子27がC1〜C8の領域の温度分布を検出し、同様に、D1〜D8、E1〜E8、F1〜F8、G1〜G8、H1〜H8の領域の温度分布を順次検出する。
また、上記の動作に続けて、ステッピングモータ29が逆回転することで、H1〜H8の領域側から、G1〜G8、F1〜F8、E1〜E8、D1〜D8、C1〜C8、B1〜B8、A1〜A8の順に、温度分布を検出する。
赤外線センサ13は、以上の動作を繰り返すことで、加熱庫2内の全体の温度分布を検出することができる。
ここで、図10において視野が加熱庫2底面からはみ出しているものがいくつもあるが、これは視野の一部または全部に開閉扉10や加熱庫2の壁面などが含まれることとなり、その面積比に応じて両方の温度が平均化されたような温度を検出することとなる。このように、はみ出す部分を作っているのは、後述する加熱皿7の温度を検出するためである。
このように構成することで、例えば冷えた食品を再加熱するような場合、加熱制御手段15はマグネトロン3を駆動して加熱庫2内に高周波を発生させて食品を加熱し、赤外線センサ12で加熱庫2内の温度分布を検出してA1〜H8のどこかの箇所が所定温度(例えば70℃)を超えれば加熱を終了とすれば、食品はどこに置かれていても適温に加熱することができる。
図11は加熱庫2の皿掛部8に加熱皿7を装着したときに、加熱皿7の表面における赤外線検出スポットを説明する図である。
加熱皿7は十分赤外線センサ13に近い高さに装着されるので、赤外線検出スポット全体は図11にVで示す領域となり、その一部はほとんど温度上昇しない取っ手部20を視野とすることとなる。高周波発熱体19が接着された金属板18を視野とする部分は点線で囲んだVxで示す領域である。
図10に戻って、加熱庫2底面での検出スポットで領域Vxを表すと、A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3、・・・、H1〜H3(以下A1〜H3と記す)の部分であり、加
熱庫2底面では左端のほうから加熱庫2左壁面にあたる部分を占める領域である。
再度図11で説明すると、加熱皿7の上に食品を載置せずに高周波加熱すると、高周波発熱体19を裏面に接着している金属板18は全面温度上昇し、Vxの領域は温度検出箇所A1〜H3すべてが温度上昇する。その中で最低温度抽出部25が最低温度を抽出しても高温を抽出することになる。
一方、加熱皿7の上に食品が載置されているときには、領域Vxは温度分布が大きい。このVxの領域に食品が載置されている場合には、食品が視野に入るとその検出箇所は著しく温度上昇が遅い。
金属板18の表面温度は食品に近いほど温度上昇は遅く、食品から離れるほど温度上昇は急である。食品の置き方は使用者まかせのところがあり、食品の置き位置を限定するのは難しいが、Vxの領域のどこかには温度上昇の遅い箇所は存在する可能性が高く、A1〜H3の検出箇所の中で最低温度を抽出すれば、食品が載置されている場合と載置されていない場合とでは温度上昇に差が有り、有無を判定できる。
図12のフローチャートを用いて、実施の形態3の動作について説明する。図12において、実施の形態1を説明する図5と同じ処理には同じ記号を付して説明を省略する。使用者が加熱皿7に魚などの食品を載せて加熱庫2の皿掛部8に装着し、開閉扉9を閉めて加熱開始の操作を行うと、加熱制御手段15はまずS1でマグネトロン3を駆動して加熱庫2内で高周波加熱を開始する。
S31で赤外線センサ13によりA1〜H8の温度分布を検出する。S32で食品検出部16はそのうちのA1〜H3の最低温度Tminを抽出する。S33でこの最低温度Tminと予め定めた所定温度Tminsと比較する。ここで所定温度Tminsより低ければS6へ進む一方、高ければS4へ進みマグネトロン3を停止する。
これは高温を検出したため、即ち加熱皿7の上に食品が載置されていないと判定して安全のためにマグネトロン3を停止する。そして、S5で食品が載置されていないことを使用者に報知し、処理を終了する。
S6ではタイマー17によりカウントしたマグネトロン3により高周波加熱を開始してからの経過時間が所定時間t1を経過したかどうかを判定し、既に経過していればS7に進む一方、まだ経過していなければS31に戻りA1〜H8の温度分布検出、S32でA1〜H3の最低温度抽出、S33で最低温度Tminと所定温度Tminsとの比較を繰り返す。S7以降の動作は図5に示した実施の形態1と同じである。
ここで、所定時間t1を例えば1分とすると、食品を載置せずに加熱皿7を装着してマグネトロン3により高周波加熱を行うと、Vxの領域では全面100℃以上に上昇し、最低温度を抽出しても100℃以上である。それに対して加熱皿7に食品を載置して高周波加熱をしたとき、1分経っても食品の表面は保存されていたときとほとんど変わらず、常温で保存されていたのなら20〜30℃程度にしかならない。
視野に食品が入らないとしても、加熱皿7の表面温度は食品に近いところでは1分後では50〜60℃程度にしか上昇せず、Vxの領域の最低温度であれば60℃以下となる。
従って、例えば所定時間t1を1分、所定温度Tminsを70℃としておくと、食品が載置されていないときには1分以内にS4に進んでマグネトロン3を停止し、食品が載置されていれば、1分経過したところでS7に進む。
このように、加熱皿の上に食品が載置されていなければ温度が急上昇する箇所で、赤外線センサ13の視野となっている検出箇所全体の最低温度により食品が載置されているかどうかを判定するので、食品の置き位置に影響されることが少なく、食品の有無の判定をすることができる。
なお、実施の形態3では所定範囲の温度検出箇所の最低温度が所定温度Tminsを超えたかどうかで、加熱皿7の上に食品が載置されているかどうかを判定するものとしたが、実施の形態2で説明したように初期に検出した温度を記憶して、それとの温度差を算出して、その温度差が最低の箇所の温度上昇が所定温度差を超えたかどうかで食品が載置されているかどうかを判定しても良い。
この場合には雰囲気温度や繰り返し加熱したときの温度の影響を受けにくく、食品の有無をより正確に判定できる。
(実施の形態4)
次に本発明の第4の実施の形態について図13を用いて説明する。この実施の形態4における赤外線センサ13は実施の形態3と同様、温度分布を検出するものであり、図9に示す構成をしている。
加熱制御手段15の食品検出部16は最低温度抽出部25を複数有する構成としている。この複数の最低温度抽出部25で抽出した最低温度の中から最高温度を抽出する最高温度抽出部35を有する構成としている。
また、皿掛部8が複数あり、上段と下段の2種類の高さで加熱皿7を装着できるようにしている。一般には食品は平面ヒータ4に近付けるほうが焦げ目を付けやすく、上段で加熱することが多いのであるが、例えばローストチキンのように食品の高さが高い場合には上段には入れられない場合があり、もう1段別の高さとして下段を用意している。
図14は加熱庫2の下段の皿掛部8に加熱皿7を装着したときに、加熱皿7の表面における赤外線検出スポットを説明する図である。
加熱皿7は十分赤外線センサ13から離れ図10に示した加熱庫2の底面での検出スポットに近いものとなる。赤外線検出スポット全体は図14に実線Vで示す領域となり、その一部はスリット孔21などあまり温度上昇しない周縁部や加熱庫2の壁面や開閉扉10を視野とすることとなる。高周波発熱体19が接着された金属板18を視野とする部分は点線Vyで示す領域である。
図10に戻って、加熱庫2底面での検出スポットで領域Vyを表すと、C1〜C8、D1〜D8、E1〜E8、F1〜F8(以下C1〜F8と記す)の部分である。再度図14で説明すると、加熱皿7の上に食品を載置せずに高周波加熱すると、高周波発熱体19を裏面に接着している金属板18は全面温度上昇し、Vyの領域は温度検出箇所C1〜F8すべてが温度上昇する。
複数の最低温度抽出部25は、一つは所定範囲として図11で示したVxの領域、即ちA1〜H3の検出温度の中から最低温度を抽出するものであり、もう一つは図14に示すVyの領域、即ちC1〜F8の検出温度の中から最低温度を抽出するものである。最高温度抽出部35はこのA1〜H3の最低温度とC1〜F8の最低温度のうちの高い温度のほうを抽出する。
加熱皿7が上段に装着されている場合、高周波加熱すると食品が載置されていなければ図11のVxに示す領域はすべて急速に温度上昇し、A1〜H3は全てが高温になるので最低温度も高温になる。
一方C1〜F8については取っ手部20を視野としているC8〜F8などは温度上昇しないので最低温度は低温である。最高温度抽出部35はA1〜H3の最低温度のほうを抽出して高温を抽出する。
それに対して、食品が載置されているとA1〜H3に低温部分が含まれてしまうので最低温度は低温、C1〜F8は同様に取っ手部20を視野に含むので最低温度は低温、いずれも低温の中で最高温度抽出部35が温度の高い方を抽出してもそれは低温である。
加熱皿7が下段に装着されている場合には、高周波加熱すると食品が載置されていなければ図14に示すVyに示す領域はすべて急速に温度上昇し、C1〜F8は全てが高温になるので最低温度も高温になる。
一方A1〜H3についてはスリット孔21など高周波発熱体19が接着されていない加熱皿7の周縁部や更には加熱庫2の壁面や開閉扉10など温度上昇しない部分を視野としていて、A1やH1などは温度上昇しないので最低温度は低温である。
最高温度抽出部35はC1〜F8の最低温度のほうを抽出して高温を抽出する。それに対して食品が載置されているとC1〜F8に低温部分が含まれてしまうので最低温度は低温、A1〜H3は同様に温度上昇しない部分を視野に含むので最低温度は低温、いずれも低温の中で最高温度抽出部35が温度の高い方を抽出してもそれは低温である。
このように、複数の最低温度抽出部25の抽出した最低温度の中から最高温度を最高温度抽出部35が抽出することで、加熱皿7が上段にあっても下段にあっても食品が載置されていれば低温、食品が載置されていなければ高温を抽出することになって、食品が載置されているかどうかの判定が可能となる。
図15のフローチャートを用いて、実施の形態4の動作について説明する。図15において、実施の形態1を説明する図5と同じ処理には同じ記号を付して説明を省略する。
使用者が加熱皿7に魚などの食品を載せて加熱庫2の上段か下段いずれかの皿掛部8に装着し、開閉扉9を閉めて加熱開始の操作を行うと、加熱制御手段15はまずS1でマグネトロン3を駆動して加熱庫2内で高周波加熱を開始する。
S41で赤外線センサ12によりA1〜H8の温度分布を検出する。S42で最低温度抽出部25はそのうちのA1〜H3の最低温度Tminxを抽出する。また、S43でもう一つの最低温度抽出部25はC1〜F8の最低温度Tminyを抽出する。S44で最高温度抽出部35がTminxとTminyの高温の方を最高温度Tmaxとして抽出する。
S45でこの最高温度Tmaxと予め定めた所定温度Tmaxsと比較する。ここで所定温度Tmaxsより低ければS6へ進む一方、高ければS4へ進みマグネトロン3を停止する。
これは高温を検出したため、即ち加熱皿7の上に食品が載置されていないと判定して安全のためにマグネトロン3を停止する。そして、S5で食品が載置されていないことを使用者に報知し、処理を終了する。
S6ではタイマー17によりカウントしたマグネトロン3により高周波加熱を開始してからの経過時間が所定時間t1を経過したかどうかを判定し、既に経過していればS7に進む一方、まだ経過していなければS41に戻りA1〜H8の温度分布検出、S42でA1〜H3の最低温度を抽出、S43でC1〜F8の最低温度を抽出、S44で複数の最低温度のうち最高温度Tmaxを抽出、S45で最高温度Tmaxと所定温度Tmaxsとの比較を繰り返す。S7以降の動作は図5に示した実施の形態1と同じである。
ここで、所定時間t1を例えば1分とすると、食品を載置せずに加熱皿7を装着してマグネトロン3により高周波加熱を行うと、加熱皿7が上段にあるときはVx、下段にあるときはVyの領域は全面100℃以上に上昇し、いずれかの最低温度は100℃以上である。
それに対して加熱皿7に食品を載置して高周波加熱をしたとき、加熱皿7が上段にあるときのVxは食品が視野になかったとしても食品に近いところでは50〜60℃程度、Vyは取っ手部20のところでは40℃程度なので最低温度の高いほうを抽出しても50℃程度、加熱皿7が下段にあるときのVyは食品が視野に入るはずで20〜30℃、入らなかったとしても食品に近いところで50〜60℃程度、Vxは加熱庫2の壁面や開閉扉10は30℃程度にしかならず最低温度の高い方を抽出して50℃程度である。
したがって、Tmaxsを例えば70℃に設定してあれば、加熱皿7の上に食品が載置されていなければ上段にあっても下段にあっても1分以内にS4に進んで加熱を停止することができ、加熱皿7の上に食品が載置されていれば上段にあっても下段にあっても1分後にS7に進み適切に加熱されることとなる。
以上のように、実施の形態4では複数の所定範囲の最低温度を抽出し、その複数の最低温度の中から最高温度を抽出して、その最高温度で加熱皿の上に食品が載置されているかどうかを判定しているので、加熱皿がどの高さに装着されていても食品の有無を判定し、食品がないときには加熱を停止して安全を確保することができる。
なお、実施の形態4では複数の所定範囲の温度検出箇所の最低温度の中から抽出した最高温度が所定温度Tmaxsを超えたかどうかで加熱皿7の上に食品が載置されているかどうかを判定するものとしたが、実施の形態2で説明したように初期に検出した温度を記憶してそれとの温度差を算出してその温度差に基づき、複数の所定範囲での最低温度差の中から抽出した最高温度差が所定温度差を越えたかどうかで加熱皿7の上に食品が載置されているかどうかを判定しても良い。
この場合には雰囲気温度や繰り返し加熱したときの温度の影響を受けにくく、加熱皿の上の食品の有無をより正確に判定できる。
以上、実施の形態1〜4において食品検出部16が、加熱皿7の上に食品が載置されていないと判定したときには、マグネトロン3を停止することとして説明してきたが、安全を確保することが目的であるから、停止するのでなく安全を確保できるレベルに出力を低下させて高周波加熱を継続しても良い。
加熱皿7の上のどこに食品が置かれるかは使用者まかせなので、赤外線センサ13の視野VxやVyから極端に離れたところに載置されたり、また極端に小さい食品を載置されたりした場合には、食品が載置されているにもかかわらず食品が載置されていないと判定してしまう可能性はある。
そのときに加熱を停止してしまうのでなく、出力を低下させて加熱することで時間は長くかかっても焦げ目を付けた焼き物の加熱を行うことで使用者の目的は達成できる場合もあるからである。