以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1の搬送車システム10の構成について図1〜図4を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の搬送車システム10が備える自動倉庫11の外観を示す図である。
図1に示す自動倉庫11は、有軌道台車であるスタッカクレーン12により、ラック13に物品17が自動で収納され、また、収納された物品が自動で搬出される倉庫である。
自動倉庫11は、スタッカクレーン12、スタッカクレーン12の移動のための走行レール16、スタッカクレーン12の通路に沿って設けられたラック13、および、入出庫の際に物品が置かれるステーション14を備えている。
スタッカクレーン12は、走行レール16上を移動し、昇降台15を昇降させ、かつスライドフォーク15aを出退させることができる。これにより、ステーション14とラック13との間で物品17を移動させることができる。
図2は、本発明の実施の形態1の搬送車システム10の構成を示す概要図である。
図2に示すように、搬送車システム10は、上述の自動倉庫11に加え、除塵装置20と、制御装置30とを備える。
除塵装置20は、ファンにより自動倉庫11内に清浄な空気を供給する装置である。
具体的には、除塵装置20は、複数のFFU21と、複数のFFU21により吸引された空気が流れるダクト24と、メインフィルタ25と、送出ファン26とを有する。
FFU21は、ファン22と、フィルタ23とを備え、FFU21単独でも除塵装置として機能し得る装置である。なお、本実施の形態において、除塵装置20は、4つのFFU21を有している。
FFU21は、自動倉庫11の床面に設けられた4つの吸入口18に1つずつ設置されている。
FFU21のファン22が回転することにより、吸入口18を介して自動倉庫11内の空気がFFU21に吸入される。吸入された空気はフィルタ23により除塵され、ダクト24へ排出される。
4つのFFU21から排出された空気は、ダクト24を通りメインフィルタ25によりさらに除塵される。
メインフィルタ25を経由した空気は、送出ファン26により、自動倉庫11の天井に配置された4つの吹き出し口19を介して自動倉庫11内に送り出される。
このように、自動倉庫11内では、全体として上から下に向かって空気が流れている。
なお、それぞれのファン22は、空気の吸入のみならず、ダクト24を介して清浄な空気を自動倉庫11内に供給するためのファンとしても機能している。
つまり、送出ファン26が存在しない場合であっても、それぞれのファン22が自動倉庫11内の空気を吸入する方向へ回転することにより、各フィルタ23およびメインフィルタ25により塵芥が除去された清浄な空気が、自動倉庫11内に供給される。
制御装置30は、搬送車であるスタッカクレーン12および除塵装置20の動作を制御する装置である。制御装置30は、具体的には、中央演算装置(CPU)、記憶装置、および情報の入出力を行うインターフェース等を有するコンピュータにより実現される。
図3は、自動倉庫11における4つのFFU21の配置位置を示す上面概要図である。
なお、図3において、4つのFFU21の配置位置を示す都合上、ラック13は点線で表している。
図3に示すように、4列になっているラック13の各列の下の床面に、それぞれ吸入口18が設けられている。また、吸入口18は、例えば、網目状の鉄板で覆われており、それぞれの鉄板の下にFFU21が配置されている。また、走行レール16はラック13に沿って設けられている。
このように設置されたFFU21は、制御装置30の制御に従って動作することにより、効率よく自動倉庫11内の空気を清浄化することができる。
図4は、搬送車システム10の機能的な構成を示すブロック図である。
なお、図4においては、制御装置30に制御される装置等を主に図示しており、ラック13等の他の構成要素の図示は省略されている。
制御装置30は、自動倉庫11および除塵装置20の動作を制御する装置である。制御装置30は、取得部31と、比較部32とを備え、自動倉庫11および除塵装置20との間で信号のやり取りを行うことでこれらの動作を制御する。
取得部31は、スタッカクレーン12に要求される、物品の搬送量を示す要求搬送量を取得する処理部である。比較部32は、取得部31により取得された要求搬送量と閾値とを比較する処理部である。
本実施の形態において、制御装置30は、スタッカクレーン12が単位時間あたりに搬送可能な最大量である最大搬送量を閾値として記憶している。
なお、最大搬送量がスタッカクレーン12に要求された場合、スタッカクレーン12は最大速さで移動することになる。
制御装置30は、比較部32による要求搬送量と最大搬送量との比較の結果に従い、除塵装置20の動作を制御する。これにより、除塵装置20の効率的な動作、および、効果的な空気の清浄化が実現される。
なお、搬送量とは、例えば、搬送する物品の個数である。または、搬送する物品ごとに、搬送距離に応じた重み付けがされた数値の和である。
例えば、1つの物品をステーション14からラック13内のいずれかの収納棚に搬送する場合、ステーション14から収納棚までの距離が遠いほどスタッカクレーン12が担うべき搬送量は大きくなる。
次に、図5〜図9を用いて、搬送車システム10の動作について、本発明の特徴である、除塵装置20の動作制御を中心に説明する。
図5は、搬送車システム10の基本動作を示すフロー図である。なお、図5では、本発明の特徴である、制御装置30による除塵装置20の動作制御の基本的な流れを示している。
搬送車システム10の制御装置30は、搬送車であるスタッカクレーン12の速さと、所定の速さとを比較する(S10)。なお、ここでいうスタッカクレーン12の速さとは、この比較の時点でのスタッカクレーン12の速さ、または、その後にスタッカクレーン12が到達するであろう速さ(予測される速さ)である。
この比較の結果、搬送車であるスタッカクレーン12の移動の速さが、所定の速さよりも遅い場合(S10でYes)、制御装置30は、スタッカクレーン12の移動の速さが、所定の速さである場合よりも、除塵装置20による単位時間あたりの清浄な空気の供給量が少なくなるように、除塵装置20を制御する。
また、スタッカクレーン12の移動の速さが、所定の速さと同じである場合(S10でNo)、除塵装置20による空気の供給量の変更は行わない。
ここで、本実施の形態においては、上述のように取得部31が要求搬送量を取得し、比較部32が要求搬送量と最大搬送量とを比較する。
つまり、搬送車であるスタッカクレーン12の速さそのものと、所定の速さとを比較するのではなく、スタッカクレーン12の搬送量を介して、要求される速さと最大速さとの比較を行う。
図6は、実施の形態1の搬送車システム10の動作の流れを示すフロー図である。
なお、除塵装置20は、通常は、制御装置30により設定された初期値に従い、単位時間当たり所定の量の空気を吸入する動作を開始する。また、これに伴い、当該所定の量に対応する量の清浄化された空気を自動倉庫11内に送出する動作を開始する。
また、上記の所定の量とは、本実施の形態においては、スタッカクレーン12が最大速さで移動している場合であっても自動倉庫11内の空気のクリーン度を所定の値に維持できる量である。
このように、除塵装置20が通常の動作を開始した後に、制御装置30の取得部31は、搬送車システム10の管理者等からの指示に基づく要求搬送量を取得する(S20)。
比較部32は、取得部31により取得された要求搬送量と、制御装置30の所定の記憶領域に記憶されている最大搬送量とを比較する(S21)。
この比較の結果、要求搬送量が最大搬送量よりも小さい場合(S21でYes)、制御装置30は、除塵装置20による単位時間あたりの空気の供給量を減少させるように、除塵装置20を制御する(S22)。
ここで、スタッカクレーン12の搬送量と移動の速さとは、少なくとも正の相関関係がある。
従って、要求搬送量が最大搬送量よりも小さい場合(S21でYes)とは、その要求に従ってスタッカクレーン12が移動する際の速さが、最大速さよりも遅い場合である。
この場合、スタッカクレーン12の移動により巻き上げられる塵の量は、最大速さで移動している場合よりも減少する。そのため、制御装置30は、除塵装置20による空気の供給量を最大速さで移動している場合よりも少なくさせる。
このように、本実施の形態では、制御装置30は、スタッカクレーン12に対する要求搬送量に応じて、除塵装置20の動作を制御する。
図7は、要求搬送量と、スタッカクレーン12の移動の速さと、除塵装置20の単位時間あたりの空気の供給量との関係を例示する図である。
図7に例示するように、要求搬送量が、最大搬送量であるW1から、W1よりも小さなW2に変化した場合、スタッカクレーン12の移動の速さは、最大搬送量に対応するV1から、V1よりも小さなV2に変化するように、制御装置30に制御される。
なお、スタッカクレーン12の速さは、実際には加速期間があるため時間軸に平行な直線とはならない。しかし、スタッカクレーン12の速さと、要求搬送量および除塵装置20の動作との関係を明確に示すために、図7では、各期間中の速さの代表値として、各期間中の速さの最大値を示している。後述する図8および図9についても同じである。また、後述する実施の形態2における搬送車の移動の速さについても同じである。
このスタッカクレーン12の移動の速さの変化にほぼ同期するように、制御装置30は、除塵装置20による供給量が少なくなるように除塵装置20を制御する。
具体的には、スタッカクレーン12の移動の速さが、最大速さであるV1から、V1よりも小さなV2に変化した場合、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量が、最大速さV1に対応するQ1から、Q1よりも小さなQ2に変化するように、除塵装置20は制御装置30に制御される。
例えば、要求搬送量が、最大搬送量の半分である場合、制御装置30は、スタッカクレーン12を制御して、移動の速さを最大速さのおよそ半分の速さにする。また、この移動の間、除塵装置20を制御して、例えば、単位時間あたりの空気の供給量をおよそ半分にする。
なお、制御装置30は、以下の(1)〜(3)のいずれかの方法、またはこれら方法の組み合わせにより、除塵装置20による単位時間あたりの空気の供給量を減少させる。
(1)4つのFFU21のファン22の回転速度を低下させる。
(2)4つのFFU21のうちの1以上のFFU21の稼動を停止させる。つまり、4つのファン22のうちの1以上のファン22の回転を停止させる。
(3)4つのFFU21のファン22の回転を所定の期間停止させた後にファン22の回転を再開させる。つまり、各FFU21を間欠稼動させる。
例えば、各FFU21のファン22の回転速度を、スタッカクレーン12が最大速さで移動している場合の回転速度の半分にする。これにより、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量は半減する。
なお、制御装置30は、このように、各FFU21の稼動状況を変化させる場合、この変化に同期して送出ファン26の回転速度を変化させる。これにより、自動倉庫11内の圧力はほぼ一定に保たれる。
このように制御装置30が、除塵装置20の動作を適応的に変化させることにより、図7の下段の図の網目領域に相当する供給量が減少する。これにより、以下のような有利な効果が発揮される。
すなわち、従来のように、搬送車の最大速さに合わせて決定された風量が常に自動倉庫内で流されることはなく、本来的には不要であった除塵装置20による風量を削減できる。
除塵装置20による風量を削減するということは、除塵装置20の消費電力が削減されることになる。
また、本来的には不要であった空気の流量を削減することで、収納物および搬送物に当たる風量が削減される。これにより、風を起因とする静電気による収納物および搬送物の破損の可能性、および塵の収納物および搬送物への付着量を抑制することができる。
つまり、回路基板など高度な防塵が求められる製品が自動倉庫11内に収納される場合、従来の自動倉庫と比較して、これら製品の歩留まりが向上する。
このように、本実施の形態の搬送車システム10は、制御装置30が、除塵装置20の動作をスタッカクレーン12の稼動状況に応じて動的に変化させることで、効率的に自動倉庫11内のクリーン度を維持することができる。
なお、除塵装置20による空気の供給量をQ1からQ2に減少させた後に、スタッカクレーン12の移動の速さがV1に戻った場合、制御装置30は、除塵装置20による空気の供給量をQ1に戻すように、除塵装置20を制御する。
ここで、図7は、スタッカクレーン12の速さが一段階低下した場合に、除塵装置20による空気の供給量も一段階低下させることを示している。
しかし、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を、スタッカクレーン12の移動の速さの変化に応じて多段階に変化させてもよい。
図8は、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を多段階に変化させる場合の、スタッカクレーン12の移動の速さと当該供給量との関係を例示する図である。
図8の上段に示すように、スタッカクレーン12の移動の速さが、V1、V2、V3、V4(V1>V4>V2>V3)の順に変化する場合を想定する。
この場合、制御装置30の取得部31が、これら速さの基礎である要求搬送量を順次、または一括して取得する。
比較部32は、取得部31により取得された要求搬送量のそれぞれを、閾値である最大搬送量と比較する。また、この比較の際、単に大小関係だけでなく割合を求める。
つまり、最大搬送量に対してどれだけの搬送量が要求されているかの割合を求める。制御装置30は、この比較部32により求められた割合に基づき、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を変化させる。
その結果、図8の下段の図に示すように、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量が、Q1、Q2、Q3、Q4(Q1>Q4>Q2>Q3)の順に変化する。
すなわち、制御装置30は、スタッカクレーン12の速さが遅いほど、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量が少なくなるように、除塵装置20を制御する。
また逆に、スタッカクレーン12の速さが速いほど、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量が増加するように、除塵装置20を制御する。
このように、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を、スタッカクレーン12の速さの変化に追随させることで、より効率的に自動倉庫11のクリーン度を維持することができる。
なお、スタッカクレーン12のある速さに対して、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量をどれだけにすればよいかについては、実験または理論計算等で最適なものを求めればよい。
また、本実施の形態において、制御装置30は、最大搬送量を閾値とし、要求搬送量が当該閾値より小さいか否かで、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を変化させている。
しかしながら、最大搬送量よりも小さな所定の搬送量を閾値として、当該閾値と要求搬送量との大小関係に応じて、除塵装置20による単位時間当たりの空気の供給量を増減させてもよい。
つまり、制御装置30は、スタッカクレーン12の最大速さ未満の所定の速さを基準とし、スタッカクレーン12の速さがその基準よりも遅い場合、空気の供給量をQ0とする。また、所定の速さ以上である場合は、空気の供給量をQ0より大きなQ1とする制御を行ってもよい。
図9は、スタッカクレーン12の最大速さ未満の所定の速さを基準として空気の供給量を制御する場合の、スタッカクレーン12の移動の速さと当該供給量との関係を例示する図である。
図9の上段に示すように、スタッカクレーン12が、T1まで停止した後、T1からT2まで稼動し、その間の移動速度の最大値がV1である場合を想定する。また、T2からT3までの移動速度の最大値がV2であり、その後停止した場合を想定する。
ここで、速さの基準をV0とし、図9に示すように、それぞれの速さの関係は、V1>V0>V2である。
このとき、制御装置30は、以下の制御を行う。すなわち、T1までは、スタッカクレーン12の速さ(0)は基準V0未満である。そのため、制御装置30は、基準V0未満の速さに対応する、単位時間当たりの供給量Q0で空気を供給するように除塵装置20を制御する。
また、T1からT2までは、スタッカクレーン12の速さV1が基準V0以上である。そのため、制御装置30は、基準V0以上の速さに対応する、単位時間当たりの供給量Q1で空気を供給するように除塵装置20を制御する。
さらに、T2以降は、スタッカクレーン12の速さ(T3までV2、その後0)は基準V0未満である。そのため、制御装置30は、基準V0未満の速さに対応する、単位時間当たりの供給量Q0で空気を供給するように除塵装置20を制御する。
このように、制御装置30は、スタッカクレーン12の移動の速さが、基準となる速さ以上であるか否かで、単位時間当たりの供給量を異ならせるように除塵装置20を制御してもよい。
こうすることで、自動倉庫11において、通常は除塵装置20を低速稼動させておき、搬送量が多くなった場合にのみ、除塵装置20を高速稼動させるといった運用を行うことができる。
つまり、自動倉庫11が、例えば時期的な要因により物品の搬送量が比較的少ない場合などにおいて、除塵装置20のより効率的な稼動が可能である。
また、本実施の形態において、制御装置30の取得部31は、要求搬送量を取得し、比較部32は、要求搬送量と最大搬送量とを比較するとした。つまり、搬送量を介してスタッカクレーン12に要求される速さと、最大速さとを比較するとした。
この場合は、制御装置30は、スタッカクレーン12が要求搬送量を処理するための移動を開始する前に、その要求搬送量に応じて除塵装置20の稼動状況を変化(例えば、高速稼動から低速稼動に移行)させることが可能である。
しかしながら、直接的にスタッカクレーン12の速さと最大速さとを比較してもよい。
この場合、例えば制御装置30にスタッカクレーン12の最大速さを記憶させておく。また、取得部31が、例えばスタッカクレーン12の速さを検出する機器と通信することでスタッカクレーン12の速さを取得する。
比較部32は、取得部31により取得された速さと、制御装置30に記憶されている最大速さとを比較する。制御装置30は、この比較の結果に応じて除塵装置20の動作を制御する。
こうすることでも、制御装置30は、スタッカクレーン12の移動の速さに応じて除塵装置20が効率的な稼動をするように、除塵装置20を制御することができる。
また、除塵装置20は、図2に示す構成以外の構成であってもよい。例えば、1つの側面から空気を吸入しフィルタにより除塵した後に、他の側面から清浄化された空気を排出する1台のFFUを除塵装置20として扱ってもよい。
また、例えば、4台のFFU21を床面ではなく天井に配置してもよい。この場合、床面の4つの吸入口18から吸入された空気は、ダクト24を通りメインフィルタ25で塵芥が除去された後、さらに4台のFFU21により塵芥が除去され清浄な空気となる。この清浄な空気は、それぞれのファン22により自動倉庫11内に供給される。
つまり、ファンにより所定の領域内に清浄な空気を供給する装置であれば、ファンの数および配置位置、並びに塵埃の除去方法等は特定のものに限定されない。
また、本実施の形態のように複数のFFU21を用いる場合、スタッカクレーン12の移動領域に応じて、複数のFFU21を個別に制御してもよい。
例えば、スタッカクレーン12が、ラック13の右から2列(図3参照)のみに対して複数の物品を載置するよう要求された場合を想定する。
この場合、例えば4つのFFU21のうち、左から1つまたは2つのFFU21を低速稼動に移行させてもよく、または、停止させてもよい。
つまり、スタッカクレーン12が移動する領域から比較的遠い位置にあるFFU21による清浄な空気の供給量を減少させるよう制御してもよい。こうすることでも、クリーン度を適切に維持し、かつ、除塵装置20による不要な風量を削減することができる。
また、本実施の形態において、制御装置30は、スタッカクレーン12の速さに応じて除塵装置20の動作制御を行っている。
しかしながら、制御装置30は、他の変数に応じて除塵装置20の動作制御を行ってもよい。例えば、スタッカクレーン12の加速度に応じて除塵装置20の動作制御を行ってもよい。
例えば、スタッカクレーン12の加速度が負であれば、スタッカクレーン12は移動の速さを低下させている状態である。この場合、スタッカクレーン12に巻き上げられる塵の量は減少することになる。従って、制御装置30は、除塵装置20による単位時間あたりの空気の供給量が少なくなるように除塵装置20を制御する。こうすることによっても、除塵装置20の効率的な動作が実現される。
(実施の形態2)
実施の形態1における自動倉庫11のように、回路基板等の高度な防塵が求められる製品が所定の領域内で搬送される施設は他にも存在する。
例えば、ある作業室内に工作機械が設置され、精密部品を搬送する搬送車が当該作業室内を走行する場合がある。
この場合も、搬送車の移動に伴う塵等の拡散が生じるため、当該作業室内の空気のクリーン度を維持する必要がある。
つまり、当該作業室をクリーンルームとする必要がある。この場合も実施の形態1における自動倉庫11と同じく、効率よくクリーン度を維持することが求められる。
そこで、実施の形態2として、クリーンルーム内を走行する搬送車およびクリーンルーム内の空気を除塵する除塵装置を制御する搬送車システム50について説明する。
図10は、実施の形態2における無人搬送車52の外観を示す図である。
図10に示す無人搬送車52は、例えば無線通信により移動を制御される搬送車である。無人搬送車52は、例えば、プラズマディスプレイパネル用のガラス基板53が複数積み重ねられて収納されたカセット54を搬送する。
図11は、実施の形態2の搬送車システム50の構成を示す概要図である。
図11に示すように、搬送車システム50は、クリーンルーム51と、除塵装置60と、制御装置70とを備える。
クリーンルーム51には4台の部品実装機55が備えられている。これら部品実装機55には、無人搬送車52によって複数のガラス基板53が供給される。各部品実装機55は供給されたガラス基板53に部品を実装する。
除塵装置60は、実施の形態1における除塵装置20と同じ構成であり、4つのFFU61と、4つのFFU61により吸引された空気が流れるダクト64と、メインフィルタ65と、送出ファン66とを有する。
また、空気の流れも実施の形態1と同じである。すなわち、クリーンルーム51の床面に設けられた4つの吸入口18に1つずつ設置されたFFU61により、空気が吸入される。
また、各FFU61に吸入されそれぞれのフィルタ63により除塵された空気は、ダクト64へ排出される。排出された空気は、ダクト64を通りメインフィルタ65によりさらに除塵される。
メインフィルタ65を経由した空気は、送出ファン66により、クリーンルーム51の天井に配置された4つの吹き出し口59を介してクリーンルーム51内に送り出される。
このように、クリーンルーム51内では、全体として上から下に向かって空気が流れている。
なお、実施の形態2における各FFU61のファン62も、実施の形態1におけるファン22と同様に、清浄な空気をクリーンルーム51内に供給するためのファンとしても機能している。
制御装置30は、無人搬送車52および除塵装置60の動作を制御する装置である。
図12は、クリーンルーム51における4つのFFU61の配置位置を示す上面概要図である。
なお、図12において、4つのFFU61の配置位置を示す都合上、各部品実装機55は点線で表している。
図12に示すように、各FFU61は、4台の部品実装機55の下の床面に、それぞれ吸入口58が設けられている。また、吸入口58は、例えば、網目状の鉄板で覆われており、それぞれの鉄板の下にFFU61が配置されている。
このように所定の間隔をおいて設置された部品実装機55の間を、無人搬送車52が移動する。無人搬送車52は、各部品実装機55近傍の所定の場所に複数のガラス基板53が収納されたカセット54を置く。
このようにして、各部品実装機55には、複数のガラス基板が供給される。また、部品が実装されたガラス基板53は無人搬送車52により回収され、例えば、クリーンルーム51外の所定の集積場所に保管される。
このように、無人搬送車52はクリーンルーム51内を移動する。そのため、実施の形態1におけるスタッカクレーン12が移動する場合と同じく、塵が巻き上げられるという問題がある。
そこで、除塵装置60がクリーンルーム51内の空気を吸入し除塵する。これによりクリーンルーム51内のクリーン度が維持される。
また、効率的なクリーン度の維持を実現するために、制御装置70は、除塵装置60による単位時間あたりの清浄な空気の供給量を、無人搬送車52の移動の速さに応じて動的に変化させる。
図13は、搬送車システム50の機能的な構成を示すブロック図である。
なお、図4においては、制御装置70に制御される装置等を主に図示しており、部品実装機55等の他の構成要素の図示は省略されている。
実施の形態2の搬送車システム50の機能的な構成は、図13に示すように、実施の形態1の搬送車システム10の機能的な構成とほぼ同一である。
具体的には、搬送車システム50は、制御装置70と、クリーンルーム51と、除塵装置60とを備える。
制御装置70は、無人搬送車52および除塵装置60の動作を制御する装置である。制御装置70は、取得部71と、比較部72とを備え、無人搬送車52および除塵装置60との間で信号のやり取りを行うことでこれらの動作を制御する。
取得部71は、無人搬送車52に対する要求搬送量を取得する処理部である。比較部32は、取得部31により取得された要求搬送量と閾値とを比較する処理部である。
本実施の形態において、制御装置70は、無人搬送車52が単位時間あたりに搬送可能な最大量である最大搬送量を閾値として記憶している。
なお、最大搬送量が無人搬送車52に要求された場合、無人搬送車52は最大速さで移動することになる。
制御装置70は、比較部72による要求搬送量と最大搬送量との比較の結果に従い、除塵装置60の動作を制御する。これにより、除塵装置60の効率的な動作、および、効果的な空気の清浄化が実現される。
このような機能構成を有する実施の形態2の搬送車システム50の基本的な動作は、図5のフロー図に示される動作と同じである。
すなわち、制御装置70は、搬送車であるスタッカクレーン12の速さと、所定の速さとを比較する(S10)。
この比較の結果、無人搬送車52の移動の速さが、所定の速さよりも遅い場合(S10でYes)、制御装置70は、除塵装置60による単位時間あたりの空気の供給量が少なくなるように、除塵装置20を制御する。
制御装置70は、具体的には、実施の形態1における制御装置30と同じく、要求搬送量と、最大搬送量とを比較することで無人搬送車52の最大速さと要求される速さとを比較する。
従って、要求搬送量が最大搬送量を下回っている期間は、除塵装置60による単位時間あたりの空気の供給量は比較的小さなものとなる。
図14は、要求搬送量と、無人搬送車52の移動の速さと、除塵装置60の単位時間あたりの空気の供給量との関係を例示する図である。
図14に例示するように、実施の形態2における、要求搬送量と、無人搬送車52の移動の速さと、除塵装置60の単位時間あたりの空気の供給量との関係は、実施の形態1と同様である。
つまり、要求搬送量が、最大搬送量であるW1から、W1よりも小さなW2に変化した場合、無人搬送車52の移動の速さは、最大搬送量に対応するV1から、V1よりも小さなV2に変化するように、制御装置70に制御される。
また、無人搬送車52の移動の速さが、最大速さであるV1から、V1よりも小さなV2に変化した場合、除塵装置60による単位時間当たりの空気の供給量が、最大速さV1に対応するQ1から、Q1よりも小さなQ2に変化するように、制御装置70に制御される。
また、制御装置70はが、除塵装置60による単位時間あたりの空気の供給量を減少させる方法も、実施の形態1と同様である。つまり、ファン62の回転速度、稼動するFFU61の台数、FFU61の稼動のタイミングのいずれかを制御することで単位時間あたりの空気の供給量を減少させる。
なお、制御装置70は、このように、各FFU61の稼動状況を変化させる場合、この変化に同期して送出ファン66の回転速度を変化させる。これにより、クリーンルーム51内の圧力はほぼ一定に保たれる。
このように制御装置70が、除塵装置60の動作を適応的に変化させることにより、図14の下段の図の網目領域に相当する供給量が減少する。
これにより、除塵装置60の消費電力を削減することができる。また、風を起因とする静電気によるガラス基板53の破損の可能性、および塵のガラス基板53への付着量を抑制することができる。
つまり、ガラス基板53など高度な防塵が求められる製品がクリーンルーム51内に収納される場合、従来のクリーンルームと比較して、これら製品の歩留まりが向上する。
このように、本実施の形態の搬送車システム50は、制御装置70が、除塵装置60の動作を無人搬送車52の稼動状況に応じて動的に変化させることで、効率的にクリーンルーム51内のクリーン度を維持することができる。
つまり、クリーン度を適切に維持し、かつ、除塵装置60の消費電力を削減できるとともに、風を起因とする静電気によるガラス基板53の破損の可能性、および塵のガラス基板53への付着量を抑制することができる。
なお、本実施の形態において、除塵装置60は、図11に示す構成以外の構成であってもよい。例えば、4台のFFU61を床面ではなく天井に配置してもよい。
つまり、ファンにより所定の領域内に清浄な空気を供給する装置であれば、ファンの数および配置位置、並びに塵埃の除去方法等は、本実施の形態においても特定のものに限定されない。
また、本実施の形態において、クリーンルーム51内で1台の無人搬送車52が走行する場合について説明した。
しかしながら、クリーンルーム51内で複数の無人搬送車52が移動する場合も一般に存在する。この場合、これら複数の無人搬送車52の移動の速さを考慮して、除塵装置60の動作を制御することで、本実施の形態と同様に、効率的にクリーンルーム51内のクリーン度を維持することができる。
図15は、2台の無人搬送車52が移動するクリーンルーム51の構成を示す上面概要図である。
図15に示すように、無人搬送車52aと無人搬送車52bがクリーンルーム51内に存在し、それぞれが移動することで、各部品実装機55に対するガラス基板53の供給および回収がなされる。
この場合、制御装置70は、除塵装置60の初期値として、無人搬送車52aおよび無人搬送車52bの双方が最大速さで移動した場合でも、クリーンルーム51におけるクリーン度が維持可能な初期値を設定する。
また、例えば、取得部71が、無人搬送車52aおよび無人搬送車52bに対するそれぞれの要求搬送量を取得する。比較部72は、2つの要求搬送量それぞれと最大搬送量とを比較する。
制御装置70は、この比較の結果に基づいて、除塵装置60の動作を制御する。
つまり、無人搬送車52aおよび無人搬送車52bに対する要求搬送量のいずれかが、最大搬送量を下回った場合、制御装置70は、除塵装置60による単位時間あたりの空気の供給量を減少させるように除塵装置60を制御する。
これにより、クリーン度の維持の確実性は担保され、かつ、除塵装置60による不要な風量は削減される。
なお、クリーン度を維持すべき所定の領域内で複数の搬送車が移動する場合、このような手法で除塵装置の動作を制御することで、同じように除塵装置による風量の削減等の効果がある。
つまり、実施の形態1において、自動倉庫11内で複数のスタッカクレーン12が移動する場合、制御装置30が、双方に対する要求搬送量を用いて、上述のような制御を除塵装置20に行ってもよい。
また、複数の搬送車に対する要求搬送量を介さずに、複数の搬送車の速さを検出または取得して、最大速さを比較してもよい。
また、実施の形態2における制御装置70が、図8に示す制御を行ってもよい。つまり、除塵装置60による単位時間当たりの空気の供給量を、無人搬送車52の移動の速さ変化に応じて多段階に変化させてもよい。
また、実施の形態2における制御装置70が、図9に示す制御を行ってもよい。つまり、無人搬送車52の速さが所定の基準よりも遅い場合、除塵装置60による単位時間あたりの空気の供給量をQ0とし、所定の速さ以上である場合、当該供給量をQ0より大きなQ1とする制御を行ってもよい。
いずれの場合であっても、効率的にクリーンルーム51のクリーン度の維持できるという効果は失われない。
また、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、除塵装置60の構成は上記以外のものであってもよい。
また、無人搬送車52の移動領域に応じて、4つのFFU61を個別に制御してもよい。
例えば、無人搬送車52が頻繁に移動する経路の近傍のFFU61のみを通常通り、または、より高速に稼動させる。また、当該経路から比較的遠い位置にあるFFU61を低速稼動に移行させる、または停止するよう制御してもよい。
このように除塵装置60を制御する場合であっても、クリーン度を適切に維持し、かつ、除塵装置60による不要な風量を削減することができる。
(実施の形態1および2の補足事項)
以上、実施の形態1では搬送車としてスタッカクレーン12を備える搬送車システム10について説明し、実施の形態2では搬送車として無人搬送車52を備える搬送車システム50について説明した。
しかし、本発明の搬送車システムにおける搬送車は、スタッカクレーン12および無人搬送車52に限られない。
例えば、天井に設けられた軌道上を走行する天井走行車を搬送車として用いてもよく、その台数も特定の数に限定されない。
つまり、本発明の搬送車システムの効果である、所定の領域における効率的なクリーン度の維持の実現は、搬送車の種類、大きさ、および台数等に依存することなく発揮される。