JP5337868B2 - 血管新生ペプチド - Google Patents

血管新生ペプチド Download PDF

Info

Publication number
JP5337868B2
JP5337868B2 JP2011506200A JP2011506200A JP5337868B2 JP 5337868 B2 JP5337868 B2 JP 5337868B2 JP 2011506200 A JP2011506200 A JP 2011506200A JP 2011506200 A JP2011506200 A JP 2011506200A JP 5337868 B2 JP5337868 B2 JP 5337868B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sfklry
seq
peptide
angiogenic
composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011506200A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011519835A (ja
Inventor
タエフーン リー,
Original Assignee
ノヴァセル テクノロジー インコーポレイテッド.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ノヴァセル テクノロジー インコーポレイテッド. filed Critical ノヴァセル テクノロジー インコーポレイテッド.
Publication of JP2011519835A publication Critical patent/JP2011519835A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5337868B2 publication Critical patent/JP5337868B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61QSPECIFIC USE OF COSMETICS OR SIMILAR TOILETRY PREPARATIONS
    • A61Q19/00Preparations for care of the skin
    • A61Q19/08Anti-ageing preparations
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K8/00Cosmetics or similar toiletry preparations
    • A61K8/18Cosmetics or similar toiletry preparations characterised by the composition
    • A61K8/30Cosmetics or similar toiletry preparations characterised by the composition containing organic compounds
    • A61K8/64Proteins; Peptides; Derivatives or degradation products thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61QSPECIFIC USE OF COSMETICS OR SIMILAR TOILETRY PREPARATIONS
    • A61Q19/00Preparations for care of the skin
    • A61Q19/02Preparations for care of the skin for chemically bleaching or whitening the skin
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K7/00Peptides having 5 to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
    • C07K7/04Linear peptides containing only normal peptide links
    • C07K7/06Linear peptides containing only normal peptide links having 5 to 11 amino acids
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Description

本発明は、標的細胞で細胞内のカルシウム放出をおこし、これによって初代培養した内皮細胞で増殖、移動および毛細血管類似(capillary−like)管形成を誘導する血管新生ペプチドに関する。また、前記血管新生ペプチドは、特に患者の傷の治癒、足および脚の潰瘍の治療などのような血管新生が関連する状態の予防および/または治療に使用され得る。また、前記血管新生ペプチドは、例えば、シワ抑制および皮膚美白のような老化した皮膚のための化粧品の成分として使用され得る。
血管新生、つまり、既存の脈管構造から新生血管の成長は、傷の治癒、胚発生、慢性炎症、ならびに癌の進行および転移を含む多様な生理学的および病理学的状態において基本的な過程である(J.Folkman,Nat.Med.1(1995)、pp.27〜31;W.Risau,Nature 386(1997)、pp.671〜674)。血管新生の間、細胞外基質の分解、増殖、移動、および管形成のための内皮細胞の形態的分化を含む複雑な細胞過程が起こる。このような全体の過程は新血管形成を調節する局所的因子により組織化され(F.Bussolino,et al.,Trends Biochem.Sci.22(1997)、pp.251〜256)、血管新生バランスの変化は「脈管新生スイッチ」を媒介しうる。脈管新生スイッチの混乱は血管内で深刻な問題を誘発し得る。
カルシウムは、多様な細胞外刺激により喚起されたシグナル伝達事象および多様な細胞機能において、重要な役割を果たす(MJ.Berridge,Nature 361(1993)、pp.315〜325;K.Kiselyov,et al.,Cell Signal 15(2003)、pp.243〜253)。増加した細胞内Ca2+は、生体におけるヒト内皮細胞の接着、コラーゲン溶解活性、移動および増殖ならびに毛細血管成長に必須である(E.C.Kohn,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92(1995)、pp.1307〜131)。実際に、血管内皮増殖因子(VEGF)、受容体チロシンキナーゼ(RTK)リガンド、およびスフィンゴシン−1−燐酸塩(S1P)、G−蛋白共役型受容体(GPCR)リガンドは、細胞内Ca2+レベルを調節することにより新血管形成を誘導する(M.Faehling,et al.,FASEB J.16(2002)、pp.1805〜1807;M.Guidoboni,et al.,Cancer Res.65(2005)、pp.587〜595)。したがって、内皮細胞でのCa2+動員特性を調査することは、血管新生と関連した生理学的過程の包括的理解のために重要な情報を提供するだろう。
合成ペプチドコンビナトリアルライブラリーの位置スキャニング戦略(positional−scanning of synthetic−peptide combinatorial library、PS−SPCL)は、血管新生活性を有するペプチドを分離するために使用されてきた(R.A.Houghten,et al., Nature 354(1991)、pp.84〜86)。また、前記PS−SPCL法は、多様な生物学的過程と関連した有用なペプチドをふるいわけするのに好適に適用されてきており、その結果、インターロイキン−8−特異的アンタゴニスト(S.Hayashi,et al.,J Immunol.154(1995)、pp.814〜824)、活性化T細胞の核内因子に対する抑制剤(J.Aramburu,et al.,Science 285(1999)、pp.2129〜2133)、および免疫調節ペプチド(Y.S.Bae,et al.,Blood 97(2001)、pp.2854〜2862)のような幾つかのペプチドが同定された。
内皮細胞に作用する生物学的に活性な合成ペプチドを獲得するために、合成ペプチドライブラリーのスクリーニングを行い、そして本発明者らは、試験管内および生体外で血管新生活性を強く誘導する新規なペプチドを同定した。また、本発明者らは、SFKLRY−NHの血管新生活性が、内皮細胞でVEGF−Aの誘導により媒介されることを証明する。
本発明の一具体的態様は、細胞移動、血管新生、またはコラーゲン合成の増進活性、またはメラニン形成の抑制活性がある、6〜15アミノ酸の長さで選択される血管新生ペプチド配列を提供する。前記血管新生ペプチドは、必須のヘキサペプチドおよび1〜9個のアミノ酸で構成される連結ペプチドを含む。任意に、前記血管新生ペプチドは、C末端のカルボキシル基を−NHで置換することによって修飾される。前記血管新生ペプチドの血管新生活性は、血管内皮増殖因子(VEGF)の上向調節により媒介される。
本発明の他の一具体的態様は、前記血管新生ペプチドを含む、傷の治癒、コラーゲン合成の増進またはメラニン合成の抑制のための組成物を提供する。前記組成物は、活性成分として前記血管新生ペプチドを含み、また薬学的に許容可能な担体を含む傷の治癒のための薬学的組成物である。前記組成物は、活性成分として前記血管新生ペプチドを含み、また化粧用として許容可能な担体を含む老化した皮膚の状態改善のための化粧料組成物である。前記化粧料組成物は、シワ抑制および皮膚美白の活性がある。
また他の一具体的態様は、有効量の血管新生ペプチドを必要とする対象に投与することを含む、哺乳動物における血管新生を増進させる方法を提供する。
さらに他の一具体的態様は、傷の治癒に有効な量の血管新生ペプチドまたはその類似体(mimic)を、必要とする対象に提供するステップを含む、対象における傷を治療する方法を提供する。
また他の態様で本発明は、有効量の前記血管新生ペプチドまたはその類似体(mimic)を、必要とする対象に投与することを含むシワ改善方法に関する。
さらに他の態様で本発明は、有効量の前記血管新生ペプチドまたはその類似体(mimic)を、必要とする対象に投与して皮膚色素沈着(pigmentation)を弱化させる方法に関する。
さらに他の様態で本発明は、内皮細胞を提供する段階;前記細胞を候補アンタゴニスト化合物と接触させる段階;および、前記候補が前述のペプチドまたはその類似体の血管新生活性を抑制したときには、前記候補アンタゴニスト化合物をアンタゴニスト化合物と同定する段階を含む、血管新生抑制分子の同定方法に関する。
本発明のこれらおよび他の目的は、発明の説明、本明細書に参考として添付された図面および請求項からより深く理解されるであろう。
本発明は、本明細書の以下に記載された詳細な説明および添付図面からより深く理解されるが、前記添付図面は単に説明のためのものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
図1A〜図1Fは、MS−1細胞において細胞内カルシウムを増加させるペプチドのPS−SPCLs初期スクリーニングを示しており、それぞれの棒(panel)は、ヘキサペプチドの6個の位置ごとにそれぞれ公知のアミノ酸を有するペプチドプール(pools)を使用して得られた結果を示す。前記6個の位置は、19個のL−アミノ酸のうちのいずれか一つでそれぞれ定義(例えば、O1、O2)される。残りの5個の位置は、19個のL−アミノ酸(システイン以外)の混合配列(X)(mixture(X))で構成される。ライブラリーは、114ペプチドプールで構成される;前記PS−SPCLは、総47,045,881個の異なるペプチドから構成される。[Ca2+]i増加は、材料および方法の部分に記載されたように、Fura−2/AMを使用して蛍光定量的に測定した。その結果は、3つの独立した実験のうちの一つを示す。 図2A〜図2Cは、SFKLRY−NH2(配列番号2)がHUVECsにおいて増殖、移動、および管形成を誘導することを示す。細胞をそれぞれ異なる濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1〜10μM)で処理した。48時間培養後、DNA合成活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。バーは3つの独立した実験の平均±S.D.を示す。*P<0.05。(B)SFKLRY−NH2(配列番号2)の異なる用量によるHUVECsの移動性。創傷後、HUVECsを示された濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1〜10μM)で16時間培養した後、基準線をこえて移動したHUVECsを計数した。数値は2回行われた3つの独立した実験の代表値である(平均±S.D.)。*P<0.05。(C)HUVECsの管形成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果。HUVECsを成長因子量を減少させたマトリゲルに播種して、比較のためにSFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)、FYSRLK−NH2(10μM)、およびS1P(100nM)で処理した。24時間培養後、管類似構造を撮影し、管形成の長さを測定した。数値は2回行われた3つの独立した実験の代表値である(平均±S.D.)。*P<0.05。 図3A〜図3Bは、BAPTA、U73122およびPTXがMS−1細胞において、SFKLRY−NH2に誘導された[Ca2+]iの増加を抑制したことを示す。細胞内カルシウムのキレート剤であるBAPTA−AM(A)、PLC抑制剤であるU73122およびその不活性類似体であるU73433、ならびにPTX(B)の存在または非存在下で、SFKLRY−NH2(配列番号2)で誘導された細胞内Ca2+動員活性を測定した。(A)前記細胞を10μMのBAPTA−AMを含むDMEM内でFluo−4/AMと30分間37℃で前培養した。細胞は0.2mMのEGTAを含むCa2+フリーのロッケ溶液に懸濁し、示された濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理した。蛍光強度の変化を励起488nmおよび放出520nmにて測定した。(B)細胞をU73122(10μM)、U73433(10μM)の存在または非存在下で30分間、およびPTX(100ng/mL)の存在または非存在下で2時間、それぞれFura−2と共に前培養した。その後、Fura−2を添加された細胞をCa2+フリーのロッケ溶液に懸濁し、1μMのSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理した。データはそれぞれ3回行われた平均±(3つの独立した実験)を示す。*P<0.05。 図4は、SFKLRY−NH2(配列番号2)が生体外で血管出芽(vessel sprouting)を誘導することを示す。マトリゲル内でラット大動脈外植片を、SFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)、FYSRLK−NH2(1μM)、S1P(10nM)、VEGF(10ng/mL)、U73122(10μM)もしくはPTX(50ng/mL)を含むSFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)、または10%のFBSを含有するM−199で培養し、7日間培養後に撮影した。その後、3つの独立した実験をそれぞれ2回ずつ行った。 図5A〜図5Bは、SFKLRY−NH2(配列番号2)によるVEGFおよびVEGFR−1 mRNAの上向調節を示す。RT−PCR分析を、SFKLRY−NH2(配列番号2)で処理された初代培養HUVECsから単離されたmRNAに対して行った。表示されたデータは3つの独立した実験の代表的なものである。SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)をHUVECsで0、1、2、3、4、8、または12時間(A)、そして0、0.01、0.1、または10μMで2時間処理し(B)、VEGF−Aを、その特異的なプライマーを使用して増幅した。GAPDHは対照遺伝子として使用された。 図6A〜図6Bは、HUVECsにおいて、抗VEGF抗体がSFKLRY−NH2(配列番号2)で誘導された管形成を阻害することを示す。細胞を、SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)またはVEGF−A(10ng/mL)と抗VEGF−A中和抗体(0.1、1、または10μg/mL)とを含む培地で24時間培養した。24時間培養後、管類似構造を撮影し、管形成の長さを測定した。データは二つの独立的実験のうちの一つから代表され、数値は二つの独立した実験の平均である。*P<0.05:溶媒処理と比較して。 図7A〜図7Bは、14日目における創傷治癒組織の組織像を示す。(A)モック処理された(Mock−treated)傷は、深刻な浮腫および組織崩壊した微小構造を示している。(B)正常にまでほとんど完全に復元された微小構造が、SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)処理により観測された。 図8は、I型コラーゲンに対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を示す。ヒト繊維芽細胞をSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1、1、10μM)で処理した。 図9A〜図9Bは、Bl6メラノーマ細胞内のメラニン含量に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を示す。
内皮細胞で[Ca2+]i増加を誘導する一連の新規なペプチドが、合成ペプチドコンビナトリアルライブラリーの位置スキャニング方法(PS−SPCL)を適応させること(accommodating)により明らかになった。前記ペプチドのうち、プロトタイプペプチドであるSFKLRY−NH2(配列番号2)が、内皮細胞においてPTX感受性G蛋白質/PLC−媒介性[Ca2+]i増加を通じてDNA合成、移動、および管形成を誘導するということが証明されたが、これらは血管新生のための必須段階である。SFKLRY−NH2(配列番号2)の同定は、小さいペプチドとして血管新生の研究において注目すべきである。SFKLRY−NH2(配列番号2)は、試験管内および生体外で血管新生活性を示したばかりか、ラットモデルで劇的な創傷治癒活性も示した。また、前記ペプチドの処理は、皮膚繊維芽細胞においてコラーゲンの合成を促進し、メラニン合成を抑制した。
本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有するプロトタイプペプチドおよび保存的変異体(conservative variant)またはこれらの機能的フラグメントに関するものである。前記血管新生ペプチドは、6〜15、6〜10、6〜7、または6個のアミノ酸長であり得、必須的な部分としてX1FX2LRX3のアミノ酸配列を含み、X1FX2LRX3のC末端に連結された1〜9個のアミノ酸で構成されるペプチドを含む。前記血管新生ペプチドは、前記末端のカルボキシル基を−NH2で置換することによって修飾されていてもよい。前記血管新生ペプチドの例としては、配列番号l、2、8、12、14または15〜24からなるペプチドが挙げられる。
本明細書で使用される前記血管新生ペプチドは、化学式Iのアミノ酸配列を有するヘキサペプチドを含み、約6〜約15のアミノ酸長であり得るオリゴペプチドを意味する。また、前記ペプチドは[Ca2+]i増加を刺激し、これによって内皮細胞で毛細血管類似管形成を誘導する化合物である。
1FX2LRX3
前記X1は、セリンまたはスレオニンであり;
X2は、リシン、アルギニン、またはイソロイシンであり;
X3は、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アルギニン、またはヒスチジンである。
各位置で最も活性であるアミノ酸は:1番目の位置ではSer(S)およびThr(T);2番目の位置ではPhe(F);3番目の位置ではIle(I)、Lys(K)、およびArg(R);4番目の位置ではLeu(L);5番目の位置ではArg(R);そして6番目の位置ではArg(R)、Phe(F)、Trp(W)、Tyr(Y)、およびHis(H)であった。
本明細書で使用される「血管新生」という用語は、新たな血管の成長、または「新血管形成」を意味し、内皮細胞で構成された比較的小口径の新たな血管の成長を含む。血管新生は、癌細胞増殖固形腫瘍の形成、炎症、傷の治癒、損傷された虚血組織の回復、心筋の血管再生および再構築、卵胞成熟、月経周期、および胎児発生を含む多くの重要な生物学的過程において、必須の部分である。新たな血管形成は、正常なものでも病的なものでも新たな組織の発達のために必要とされ、したがって正常組織および「正常」血管新生の成長を助長する治療的機会のみならず、多くの疾病状態調節において有望な管理点である。
血管新生に関する完全なメカニズムが全て知られているわけではないが、次のようにして毛細血管の内皮細胞が関連していることが知られている:
(1)おそらくプロテアーゼおよびグリコシダーゼにより媒介されて、内皮細胞および周辺細胞外基質(ECM)の間の接着が変化し、それにより微細血管の内皮細胞を囲む基底膜が破壊され、その結果内皮細胞が化学走性因子の方向に細胞質芽(cytoplasmic buds)を拡張することができる;
(2)血管新生化されるべき組織に向かって内皮細胞が移動する「化学走性過程」がある;そして
(3)「有糸***誘発過程」(例えば、新たな管のために追加の細胞を提供するための内皮細胞の増殖)がある。これらそれぞれの血管新生活動は、試験管内の内皮細胞培養を活用して独立的に測定できる。
傷は構造の正常な連続性を妨害する、体内または体外の身体損傷または病変であって、機械的、化学的、細菌的、または熱的手段のような物理的手段により引き起こされる。このような身体損傷には、皮膚が損傷しない傷である挫傷、皮膚が切断手段により損傷された切開、および皮膚が鈍器により損傷された裂創が含まれる。傷は事故または外科手術の過程により生じ得る。
傷の治癒は、損傷された組織を回復させ、固有の組織を再生させ、新たな組織を再組織させる一連の過程からなる。傷の治癒は、一般に3段階に分けられる:炎症段階、増殖段階、再構成段階。フィブロネクチンは、特に浸潤細胞が付着し得る足場を作ることで、傷の治癒過程の各段階に関連していることが知られている。初期に、フィブロネクチンおよびフィブリノゲンのような多くのメディエーターが、傷部位に放出される。その後、血管新生および再上皮化が起こる(US特許第5,641,483号)。虚血に起因した損傷組織の回復は、広範囲な再構成および再血管新生を要する傷の治癒の一形態である。梗塞は、定義によれば、そして局所血液循環の閉塞による組織虚血性壊死領域である。その結果できる壊死性病変は、患部組織を酸素と栄養分が取り去られた状態にする。心臓では、特に冠状動脈循環の妨害が、心筋梗塞を招く。虚血性心筋は急速に酸素欠乏になるため、影響を受けた心筋の低酸素性微細環境は、再血管新生を試みるために血管新生因子の合成を誘導する。例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)は梗塞が発生した心筋の部位で酸性されることが知られている(Ref)。
一具体的態様において、本発明は[Ca2+]i増加を刺激して内皮細胞における毛細血管類似管形成を誘導するポリペプチド、ペプチド類似体、または化学的化合物のような化合物のスクリーニングに関するものである。前記化合物は、糖尿病または傷に伴う足と脚の潰瘍および網膜症を含む、血液供給が障害されることにより誘発される疾患を患っている人々を治療することと期待される。
ファージディスプレイライブラリー(phage display library)または化学的ライブラリーを含む多様なライブラリーが、内皮細胞で[Ca2+]i増加を刺激する化合物をスクリーニングするのに使用され得る。他の方法は、糖尿病または傷に伴う足と脚の潰瘍および網膜症を含む、血液供給が障害されることにより誘発される疾患を治療することを含む、対象における血管形成を誘導する化合物を同定するためにツーハイブリッドシステム(例えば、酵母または哺乳類のツーハイブリッドシステム)を使用する。これら多くの方法はハイスループット分析に適用可能である。また、追加の血管新生化合物の同定およびひいては足と脚の潰瘍、網膜病症、および傷を治療および/または予防する方法が提供される。一つの方法は、理論的薬物設計技術の使用を含む。すなわち、同定された化合物と類似する分子、およびこのような分子のフラグメントまたは誘導体が、コンピュータを使用した相同性分析、蛋白質モデリングおよび組み合わせ化学を使用してデザインされ、作られる。例えば、X1FX2LRX3ペプチド、またはそのフラグメントもしくは誘導体に対応する核酸または蛋白質配列を含むデータベースが、類似のリガンドを同定するために、前記配列を公的にまたは商業的に利用可能なデータベースの他の配列と比較する検索プログラムによりアクセスされる。他の合理的方法によって、蛋白質モデリング技術(例えば、x−線結晶学、NMR、およびコンピュータモデリング)が前記化合物のモデルを構築するために使用される。これらモデルから、理論的薬物設計が可能である。一旦候補化合物がデザインされ、作られると、好ましくはそれらについて、内皮細胞において[Ca2+]i増加を刺激する能力を評価する。候補の前記能力およびその結果として発生する血管形成の誘導を評価する方法は、マトリゲルアッセイ(Matrigel assay)のような多様なアッセイを使用して行なわれ得る。
[変異および突然変異ポリペプチド]
ポリペプチドの特性を向上または変化させるために、アミノ酸工学が使用されてもよい。新規な突然変異ポリペプチドを作るために、単一または多重アミノ酸置換、欠失、付加、または融合蛋白質を含む、当該分野で熟練した技術を有する者に知られた組み換えDNA技術が使用できる。特に短いペプチドにおいて、類似する突然変異ポリペプチドが化学的合成によっても製造できる。このように修飾されたポリペプチドは、例えば、増加した/減少した活性または増加した/減少した安定性を示しうる。また、これらは少なくとも一定の精製および保管条件下で、対応する天然ポリペプチドに比べて高収率で精製され得、また、より優れた溶解度を示しうる。
X1FX2LRX3ペプチド、およびこれらの分子のフラグメントまたは誘導体と類似する化合物(例えば、X1FX2LRX3ペプチド類似体)には、一次アミノ酸配列として血管新生ペプチド、およびこれらの分子のフラグメントまたは誘導体のアミノ酸配列の全部または一部を含む天然分子のみならず、結果的にサイレント変化となる範囲の残基によって、機能的に同等なアミノ酸残基が置換された変更配列も含まれる。したがって、血管新生ペプチド、およびこれらの分子のフラグメントまたは誘導体の配列内の一つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用してサイレント変化を招く、他の類似する極性のアミノ酸で置換されてもよい。配列内アミノ酸の置換は、前記アミノ酸が属している群の他の構成アミノ酸より選択されてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。非荷電極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む。正電荷を帯びた(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。負電荷を帯びた(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンを含む。本発明の他の態様において、翻訳途中または以降に、例えば、燐酸化、グリコシル化、架橋、アシル化、蛋白質切断、抗体分子、膜分子、もしくは他のリガンドに対する連結により異なった様式で修飾された、X1FX2LRX3ペプチド、およびこれらの分子のフラグメントまたは誘導体である。したがって、X1FX2LRX3ペプチド、およびこれらの分子のフラグメントまたは誘導体に対応する前記蛋白質配列が、公知の配列と比較可能である。X1FX2LRX3ペプチドと同等かあるいはそれ以上である前記候補化合物が同定され、その後にカルシウム動員アッセイを使用して分析される。
[類似体(Mimetics)]
本発明の態様で使用されるペプチドもまた修飾されてもよい。例えば、前記ペプチドは、ペプチドで通常見られない置換基を有してもよく、またペプチドで通常見られるが通常とは異なったペプチドの領域に置換基が導入されてもよい。本発明の態様で使用されるペプチドは、例えば、アセチル化、アシル化、またはアミノ化されてもよい。前記ペプチドを修飾するために該ペプチドに含まれ得る置換基は、H、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、芳香族、エーテル、エステル、非置換もしくは置換されたアミン、アミド、ハロゲン、または非置換もしくは置換されたスルホニル、または5もしくは6員環の脂肪族もしくは芳香族環を含むが、これに制限されない。「SFKLRYペプチド類似体」は、SFKLRYペプチドと類似する化合物である。SFKLRYペプチド類似体は、ペプチド模倣体(peptidomimetics)、ペプチド、修飾ペプチド、および誘導体化されたペプチドでありうる。
追加的な化合物誘導体は、関心があるポリペプチドと類似するペプチド模倣体(peptidomimetics)を含む。ペプチドの生物学的製造で使用される自然発生アミノ酸は全てL配置である。合成ペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、または2種類の異なる立体配置のアミノ酸の多様な組み合わせを活用して、従来の合成法で製造可能である。例えば、オリゴペプチドのような特定ペプチドの立体配置および好ましい特性は模倣するが、例えば柔軟性(立体配置の喪失)および結合分解のような好ましくない特性は避ける合成化合物、かつてそのようなペプチドが発見されていて、それは「ペプチド模倣体(peptidomimetics)」として知られている。
一般に、ペプチド模倣体(peptidomimetics)のデザインおよび合成は先ず、ペプチドの配列および所望のペプチド(例えば、最も可能性あるシミュレーション上のペプチド)の立体配置データ(例えば、結合長および結合角のような幾何学的データ)で始まり、ペプチド模倣体(peptidomimetics)のデザインに取り入れられるべき幾何学的構造を決定するために、かかるデータを利用することを含む。このようなステップを遂行するための多くの方法と技術が当該分野に知られており、如何なるものも使用可能である。
ペプチド類似体の定義が類似体を非ペプチドリガンドと特徴づける一方、天然アミノ酸で構成された真性ペプチドとペプチド類似体との間のどこかに多くの構造が存在する。何がペプチド類似体を構成するのかについての論争が依然として続いているが、当該分野で熟練した技術を有する者は類似体とペプチドを区別することができる。ペプチド類似体は一般にペプチドの改良体とみなすことができる。ペプチド結合の還元のようなペプチド上の化学修飾は、その酵素的安定性を増加させることができる。また、非天然アミノ酸を導入すると、ペプチドの活性および選択性の両方を向上させることができる。ペプチドが構造的および/または化学的に変わるほど、それはより真性ペプチド類似体となる。ペプチド類似体には、ペプチド、蛋白質、およびこれらの誘導体、例えば、非ペプチド有機残基を含むペプチド、ペプチドリガンドの構造的および機能的特性は維持しながらアミノ酸および/またはペプチド結合を含んでも含まなくてもよい合成ペプチド、およびSimon et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:9367(1992)に記載されたもののようなN−置換グリシンを含む分子であるペプトイドおよびオリゴペプトイド;および抗イディオタイプ(anti−idiotype)抗体などの抗体が含まれる。
本発明の他の態様において、本発明の前記発明された化合物は足場(scaffolds)のような多様な任意の化合物、ターン模倣体(turn mimetics)、およびペプチド結合置換を導入して合成的に作られてもよい。ペプチド骨格の代わりに多様な線形および複素環式足場(scaffolds)を使用したアミノ酸合成を採用しうる。化学的工程および方法には、向上した血液−脳浸透のために中性プロドラッグとして電荷を帯びたペプチドを一時的に保護すること、および複素環、オレフィンおよびフルオロオレフィン、およびケトメチレンのような群でペプチド結合を置換することが含まれる。
本発明の一具体的態様において、前記類似体はその標的に高度に特異的であり、毒性が低く、傷の治癒を向上させるために皮膚障壁を通過するペプチド類似体に関するものである。したがって、皮膚障壁を通過することができるように修飾された化合物は、本発明に包含される。
[薬学的組成物]
本明細書で使用される「担体」は、細胞または哺乳動物が適用される用量および濃度でこれらにさらされたときに無毒である、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤を含む。前記薬学的に許容可能な担体は、たいていpH緩衝水溶液である。薬学的に許容可能な担体の例は、これに限定されるわけではないが、燐酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのような蛋白質;ポリビニルピロリドンのような親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成カウンターイオン;および/またはTWEENTR、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICSTRのような非イオン性界面活性剤を含む。
本明細書で使用される「有効量」は、有利な効果または所望の臨床的もしくは生化学的結果を得るに十分な量を意味する。有効量は1回またはそれ以上の回数で投与されてもよい。本発明の目的のために、抑制剤化合物の有効量は疾病状態の緩和、寛解、安定、復帰、緩慢化または進行を遅延させるのに十分な量を意味する。本発明の好ましい一具体的態様において、前記「有効量」は、所定の一連の実験で応答を誘発することができる化合物の量と定義される。
本明細書で使用される「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは人間である。
本明細書で使用される「治療」という用語は、有利なまたは所望の臨床的結果を得るための方法をいう。本発明の目的のために、有利なまたは所望の臨床的結果には、感知できるか否かを問わずに、症状の軽減、疾病の規模の縮小、疾病状態の安定化(つまり、悪化しない)、疾病進行の遅延または減速、疾病状態の寛解または緩和、および鎮静(部分的であるか全的であるかを問わずに)が含まれるが、これに制限されない。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想されるのに比べて生存期間を延長させることも意味する。「治療」は、治療的処置および予防的措置の両方を意味する。治療を要する対象には、前記異常が予防されている者のみならず、既に異常がある者も含まれる。疾病の「緩和」は、治療がない状況に比べ、疾病状態の規模および/または好ましくない臨床症状が減少することおよび/または進行の時間経過が遅延されたり延長されることを意味する。
幾つかの新規な血管新生ペプチドの発見が本開示で提供される。このような薬品は、経皮、局所、非経口、胃腸、経気管支、および経肺胞を含むあらゆる公知の経路を通じて送達され得るが、これらに制限されない。本発明の具体的態様はまた、糖尿病に伴う足と脚の潰瘍および網膜症、傷、および皮膚老化を研究、治療、および/または予防するための、生命工学的ツール、予防法、治療法および前述したものの使用方法を含む。
治療的化合物の剤型は、当該分野に一般に知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Co.,Easton、Pa.,USAが好適に参照できる。例えば、一日に約0.05μg/Kg(体重)〜約20mg/Kg(体重)が投与されてもよい。用量計画は最適の治療的応答が得られるように調整されうる。例えば、毎日数回の分割量で投与されたりまたは治療状態の緊急事態の兆候に応じて比例して減少させてもよい。活性化合物は、経口、静脈注射(水溶性の場合)、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内または座薬経路または植え込み(例えば、腹腔内経路により、又は試験管内で感作され、受容者に養子導入される単核球または樹状突起細胞のような細胞を利用することにより、徐放性分子を利用する)のような公知の方法で投与されうる。投与経路に応じて前記ペプチドは、成分を不活性化しうる酵素、酸および他の自然状態の作用から保護するために、ある材料でコーティングして包む必要があるかもしれない。
例えば、親油性の低いペプチドは、胃腸管内ではペプチド結合を開裂することができる酵素により、胃内では酸加水分解により破壊されるだろう。ペプチドを非経口投与でない方法で投与するために、ペプチドは不活性化を防止するための材料でコーティングされるか、またはこれと共に投与されうる。例えば、ペプチドは補助剤内に入った状態で、酵素阻害剤剤と共に、またはリポソームに入れた状態で投与されてもよい。本明細書で意図される補助剤は、レゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテルのような非イオン性界面活性剤を含む。酵素阻害剤は、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロ燐酸(DEP)およびトラジロールを含む。リポソームは、公知のリポソームのみならず、水中油中水CGFエマルジョンを含む。
前記活性化合物はまた、非経口で、または腹腔内に投与されてもよい。また分散液が、グリセロール液体ポリエチレングリコール(glycerol liquid polyethylene glycols)、およびこれらの混合物およびオイル内で調製可能である。通常の保管および使用条件下で、このような製剤は微生物の成長を防止するために保存剤を含む。
注入用として適した前記薬品の形態は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注入溶液または分散液の即時調製に使用される滅菌粉末を含む。全ての場合において前記形態は滅菌されたものでなければならず、また容易な注射能力(syringability)が実現するほどの流体でなければならない。前記形態は製造および保管条件下で安定していなければならず、バクテリアおよび菌類のような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適した混合物および植物油を含む溶剤または分散媒でありうる。例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には要求される粒子径の維持により、および界面活性剤(superfactants)の使用により適切な流動性が維持できる。微生物作用の防止は、例えば、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チオメルサール(theomersal)など多様な抗菌および抗真菌剤により実施可能である。多くの場合で、例えば、糖類または塩化ナトリウムのような等張化剤(isotonic agents)を含むことが好ましいだろう。例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンのような吸収遅延剤を組成物内に含めて使用することにより、注入可能な組成物の吸収を遅延させることができる。
前記ペプチドが適切に保護された場合、前記活性化合物は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と共に経口で投与されたり、あるいは硬いかまたは柔らかい皮のゼラチンカプセルに封入されたり、または圧縮して錠剤にされたり、または食事の食品に直接混合されてもよい。経口治療的投与において、前記活性化合物は賦形剤と混合され、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、オブラートなどの形態で使用されてもよい。このような組成物および製剤は少なくとも1重量の活性化合物を含む。前記組成物および製剤の比率は、もちろん変更されてもよい。このような治療的に有用な組成物内の活性化合物の量は、適した用量になる量である。本発明における好ましい組成物または製剤は、活性化合物を約0.1μg〜2000mg含む経口用量単位形態で製造される。
前記錠剤、丸剤、カプセルなどはまた、次のものを含んでもよい:トラガカントガム、アカシアガム、とうもろこしデンプンまたはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムのような賦形剤;とうもろこしデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような崩壊剤;マグネシウムステアレートのような滑沢剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンのような甘味剤が追加されたり、ペパーミント、冬緑油(oil of wintergreen)、またはチェリー香料のような香味料である。前記用量単位形態がカプセルである場合、前述の種類の物質に加えて、液体担体を含んでもよい。多様な他の物質がコーティングとして、また他の場合には前記用量単位形態の物理的形態を修飾するために存在しうる。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルは、シェラック、糖類またはこれら両方によりコーティングされていてもよい。シロップまたはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーまたはオレンジ香料のような香料を含んでもよい。もちろん、用量単位形態の製造で使用されたあらゆる物質は、使用される量で薬学的に純粋で実質的に無毒性であればよい。また、前記活性化合物は、徐放性製剤および剤型内に導入されてもよい。
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤」は、あらゆる全ての溶剤、分散媒、コーティング抗菌および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性である物質として、このような媒体および物質を使用することは当該分野によく知られている。如何なる公知の媒体または物質が、前記活性成分と不適合性である場合でない限り、治療的組成物内におけるこれらの使用が意図される。追加の活性成分もまた、前記組成物に導入可能である。
例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内への導入、受容体媒介性エンドサイトーシスのような多様な送達システムが知られており、本発明の化合物を投与するに際して使用することができる。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、これらに制限されない。前記化合物または組成物は、例えば、注入またはボーラス投与により、上皮または皮膚粘膜内壁(mucocutaneous linings)(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収といった、あらゆる公知の経路により通じて投与され得、また他の生物学的活性薬剤と共に投与されてもよい。投与は全身的または局所的であってもよい。また、前記本発明の薬学的化合物または組成物を脳室内(intraventricular)およびクモ膜下腔内注射を含む、あらゆる適切な経路によって中枢神経系に導入することが好適であろう;脳室内注射は、例えば、オマヤ槽のようなリザーバに付着された脳室内カテーテルにより容易化されるかもしれない。肺の投与もまた、例えば、吸入器または噴霧器、およびエアゾール製剤の使用により可能である。
[化粧料組成物]
本明細書に使用される「化粧用として許容可能な」は、記載された成分が過度な毒性、非適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などなしに組織(例えば、皮膚または毛髪)と接触して使用するのに適することを意味する。
本明細書に使用される「有効量」は、シワおよび黒化のような人間の老化した皮膚を改善するのに十分であるが、深刻な副作用を避けられる程度の少ない量を意味する。前記組成物の安全且つ効果的な量は、治療部位、最終消費者の年齢および皮膚のタイプ、治療の期間および性質、使用される特定の成分または組成物、使用される化粧用として許容可能な特定の担体などの因子により変わり得る。
一具体的態様において、前記局所組成物は、重合体に加えてさらに他の化粧用活性成分を含む。「化粧用活性成分」は、皮膚または毛髪に化粧的または治療的効果を有する化合物(例えば、合成化合物または天然資源もしくは天然抽出物から分離された化合物)であり、例えば、抗にきび剤、光沢制御剤(shine control agents)、抗菌剤、抗炎症剤、日焼け止め、光防護剤(photoprotectors)、抗酸化剤、角質溶解剤、洗浄剤/界面活性剤、保湿剤、栄養剤、ビタミン、エネルギー増強剤(energy enhancers)、制汗剤、収斂剤、消臭剤、安定剤、たこ抑制剤(anti−callous agents)、および毛髪および/または皮膚コンディショニング剤が挙げられるが、これらに制限されない。
本発明は、以下の実施例を参照してより詳しく説明される。しかしながら、本実施例は如何なる意味においても本発明の範囲を制限すると解釈されない。
[実施例1]
FPRLl拮抗剤(Antagonist)ペプチドの特性評価のための物質および方法
1.1.物質
フラ−2(Fura−2)ペンタアセトキシメチルエステル(Fura−2−AM)およびl,2−ビス(2−アミノフェノキシ)エタン−N,N,N’,N’−テトラアセトキシメチルエステル(BAPTA−AM)は、Molecular Probes(Eugene、OR)から、百日咳毒素(PTX)、U73122およびU73433はCalbiochem(San Diego、CA)から、マトリゲルは、Becton Dickinson(Bedford、MA)から、組み換えヒトVEGFおよび抗−VEGF中和抗体は、R&D systems(Minneapolis、MN)から購入した。ペプチドは、Peptron Inc.(韓国)により合成された。PS−SPCLsは、以前S.H.Baek,et al.,J Biol Chem 271(1996)、pp.8170〜8175;R.A.Houghten,et al.,Nature 354(1991)、pp.84〜86)に記載されたようにして、浦項工科大学(韓国)ペプチドライブラリー支援施設で準備した。
1.2.細胞培養
MS−1細胞およびB16Flマウスメラノーマ細胞を、10%FBSを含んでいるDMEM内で、37℃、95%の空気および5%のCO2が供給された加湿インキュベータで成長させた。HUVECsは、以前E.A.Jaffe,et al.,J Clin Invest 52(1973)、pp.2745〜2756)に記載されたようにして、新鮮なヒト臍帯からコラゲナーゼ消化により調製し、20%FBS含有M199培地で維持した。本研究に使用した全てのHUVECsは5継代(passage)以下である。ヒトの通常の繊維芽細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。前記細胞は、10%FBSおよび1%抗生物質を含有しているDMEM内で、37℃、5%CO2の加湿雰囲気で培養した。その後前記細胞は、2日または3日毎に新鮮な培地に交換した後、0.05%トリプシン−0.53mMのEDTAで継代培養した。
1.3.MS−1細胞における[Ca2+]i動員アッセイを利用したPS−SPCLsの反復スクリーニング
細胞を4μM Fura−2AMおよび250μM スルフィンピラゾンと共に無血清DMEM培地内で、継続して撹拌しながら30分間37℃で培養した。その後、前記細胞をロッケ溶液(M.Faehling,et al.,FASEB J 16(2002)、pp.1805〜1807)で洗浄し、2x106cells/mLになるように希釈した。分量50μLの細胞懸濁液を96−ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加し、ペプチドの添加後340および380nmの二重励起波長と500nmの放出波長で、蛍光比の変化を測定した。ペプチドプールの添加後プレートを直ちに測定し、その結果、ペプチド添加とFLEXstation(Molecular Devices)による検出との間の時間遅延はほぼ5秒であった。全てのサンプルが同等の条件にさらされたことを保証するために、陰性および陽性対照をテストサンプルと同時に測定した。Grynkiewicz et al., J BiolChem 260(1985)、pp.3440〜3450に従って、[Ca2+]iについての蛍光比の較正を行った。
1.4.[3H]−チミジン取り込みアッセイ
HUVECsを24−ウェル培養皿に2x104細胞/ウェルの密度でまいて、一晩付着させた。12時間の血清除去後、前記細胞を指定の濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)で、またはそれなしで48時間処理した。細胞をアッセイ前に4時間[3H]−チミジン(25mCi/mmol;Amersham、Aylesbury、英国)で標識した(M.Guidoboni,et al., Cancer Res 65(2005)、pp.587〜595)。取り込まれなかった[3H]−チミジンは10%トリクロロ酢酸で洗浄して除去し、その後取り込まれた[3H]−チミジンを、0.2MのNaOHおよび0.1%のSDSで、37℃で1時間抽出した。細胞内放射能は、液体シンチレーションカウンター(Beckman Instruments、Fullerton、CA)で計数した。
1.5.管形成アッセイ
以前M.S.Lee,et al., J Immunol 177(2006)、pp.5585〜5594に記載されたようにして、HUVECsを、予め重合されたマトリゲル層上に、VEGF中和抗体の存在または非存在下で、SFKLRY−NH2(配列番号2)、その組み換え配列FYSRLK−NH2、S1PまたはVEGFと共にまいた。24時間培養後、細胞形態変化を位相差顕微鏡を通して観察し撮影した。毛細血管網の形成を測定するために、場所(field)当りの合計管長さを、40倍拡大スケールで測定した。三つの異なる場所を、1ウェル毎に分析した。
1.6.傷移動検査
HUVECの移動に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を測定するために、以前M.S.Lee,et al.,J Immunol 177(2006)、pp.5585〜5594に記載されたようにして、試験管内において傷の治癒の回復アッセイを行った。簡単に言えば、35−mm培養皿に90%コンフルエンスでHUVECsをまき、2mm幅のかみそりの刃で傷をつけ、その傷の線に印を付けた。傷をつけた後に、前記細胞を無血清培地にて洗浄し、1%血清および/または示された量のSFKLRY−NH2(配列番号2)を含有するM199でさらに培養した。HUVECsを16時間移動させ、無血清培地でリンスし、無水メタノール(absolute methanol)で固定し、ギムザで染色した。傷の線を越えて移動した細胞数を計数することで、移動を定量した。
1.7.大動脈輪アッセイ
In Vitro Cell Dev Biol 26(1990)、pp.119〜128でNicosiaおよびOttinettiにより開発された方法を一部変更して使用した。大動脈を6週齢Sprague−Dawley系ラットから採取した。周辺の繊維脂肪組織を除去した後、輪を培養皿のウェル内マトリゲルに漬けた。大動脈輪を、PTXもしくはU73122の存在または非存在下で、SFKLRY−NH2(配列番号2)、S1P、FYSRLK−NH2もしくはVEGFを含有する無血清Ml99内で培養した(5%CO2、37℃)。7日目に、大動脈移植片からの出芽を測定した。
1.8.RT−PCR分析
easy−BLUETM全RNA抽出キット(Intron Biotechnology、Inc.)を使用し、製造会社の説明書に基いてHUVECsから全RNAを分離した。3μgのDNAフリー全RNAおよびオリゴ(dT)15プライマー(Promega)を使用して、モロニーマウス白血病ウィルス逆転写酵素(MMLV−RT)により、一本鎖cDNAを合成した。使用されたプライマ−の配列は次の通りである。ヒトVEGF(150−bp産物):フォワード、5’−GAGGAGGGCAGAATCATCACG−3’(配列番号25);リバース、5’−ATCGCATGAGGGGCACACAGG−3’(配列番号26)。PCR産物を2%アガロースゲル上で電気泳動し、臭化エチジウムで染色して可視化した。
1.9.培養上清およびELISA
培養上清を次の通り作製した。6−ウェル皿において80%コンフルエントのHUVECsに、皿当り2mlの無血清M199を供給し、示された時間培養した。残余細胞を除去するために、回収した培地を遠心分離し、−80℃で凍結させた。VEGF(R&D systems)用の酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を、製造会社の説明書に基づいて行った。
1.10.統計分析
データは平均±S.D.で示す。グループ間の統計的比較は、シグマプロット(SigmaPlot)を使用して行い、続けてスチューデントt−検定(Student’s t−test)を行うことにより実施した。
[実施例2]
2.1.MS−1細胞において[Ca2+]i増加を誘導するペプチドの同定
マウスの内皮細胞(MS−1細胞)で細胞内カルシウム動員を刺激するペプチドを同定するために、本発明者らはC末端アミド化された合成ヘキサペプチドの114プールをスクリーニングした。MS−1細胞におけるペプチドライブラリーの初期スクリーニング結果を図1A〜1Fに示した。
図1A〜1Fは、MS−1細胞における細胞内カルシウムを増加させるペプチドを探すためのPS−SPCLsの初期スクリーニングを示している。それぞれの棒は、ヘキサペプチドの6個のそれぞれの位置に公知のアミノ酸を有するペプチドプールを使用して得られた結果を示す。前記6個の位置は、19個のL−アミノ酸のうちのいずれか一つで個別に定義(例えば、O1、O2)される。残りの5個の位置は、19個のL−アミノ酸(システインを除く)の混合配列(X)(mixture(X))で構成される。ライブラリーは114ペプチドプールで構成される;前記PS−SPCLは、合計で47,045,881個の異なるペプチドで構成される。[Ca2+]i増加は、実施例1に記載されたFura−2/AMを使用して蛍光定量的に測定した。本結果は、3つの独立した実験のうちの一つを示す。
各位置で最も活性のあるアミノ酸は:一番目の位置でSer(S)およびThr(T);2番目の位置でPhe(F);3番目の位置でIle(I)、Lys(K)、およびArg(R);4番目の位置でLeu(L);5番目の位置でArg(R);そして6番目の位置でArg(R)、Phe(F)、Trp(W)、Tyr(Y)、およびHis(H)であった。
ペプチドライブラリーの初期スクリーニングから得られた結果に基づき、SFKLRY−NH2(配列番号2)を選択し、さらなる分析のためのプロトタイプペプチドとして合成した。SFKLRY−NH2(配列番号2)のC末端アミド化体は、カルボキシル化されたペプチド(SFKLRY−COOH)よりも強い活性を示し、一番目のアミノ末端残基を修飾(欠失またはD−型アミノ酸置換)すると、細胞内カルシウム動員活性が完全に消失した、これは、細胞内カルシウム動員活性が配列特異的であり、また、アミノ末端残基はC末端残基よりも活性においてより重要であるということを示唆している。また、他のヘキサペプチドの結果もまた、初期スクリーニング結果と相関していた(表1)。多くのペプチドリガンドがC末端アミド化形態で存在し、このような修飾は、幾つかの場合においては活性の発現に重要である(Y.In、M.Fujii,et al., Acta Crystallogr B 57(2001)、pp.72〜81);したがって、我々のペプチドは細胞内の特定の受容体に対するリガンドとしての特性を共有している。
2.2.SFKLRY−NH2(配列番号2)は、HUVECsにおける[Ca2+]iの増加、増殖、移動、および管類似(tubular−like)構造の形成を誘導する
SFKLRY−NH2(配列番号2)がヒト内皮細胞で[Ca2+]i増加を誘導するかを確認するために、初代培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)における細胞内Ca2+動員を測定した。SFKLRY−NH2(配列番号2)処理は、HUVECsにおける[Ca2+]i増加を、1.4±0.15μMで最大の半分の効果で誘導したが(データは示さず)、組み換えた配列であるFYSRLK−NH2(10μM)は、HUVECsにおいてCa2+動員を引き起こさなかった。ペプチドにより引き起こされた、Ca2+放出についての用量−反応曲線は、マウス内皮細胞株で観察されたものと非常に類似していた(図2A〜2C)。
図2A〜2Cは、SFKLRY−NH2(配列番号2)が、HUVECsにおいて増殖、移動、および管形成を誘導することを示している。(A)HUVECsの増殖に対するSFKLRY−NH2の影響。細胞を異なる濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1−10μM)で処理した。48時間培養後、DNA合成活性を液体シンチレーションカウンターで計数した。バーは3つの独立した実験の平均±S.D.を示す。*P<0.05。(B)異なった用量のSFKLRY−NH2(配列番号2)によるHUVECsの移動性。傷をつけた後に、HUVECsを示された濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1〜10μM)で16時間培養した後、基準線を越えて移動したHUVECsを計数した。数値は2回行われた3つの独立した実験の代表値である(平均±S.D.)。*P<0.05。(C)HUVECsの管形成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果。HUVECsを、成長因子が減量されたマトリゲルにまき、比較のためにSFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)、FYSRLK−NH2(10μM)、およびS1P(100nM)で処理した。24時間培養後、管類似構造を撮影して、管形成の長さを測定した。数値は2回行われた3つの独立した実験の代表値である(平均±S.D.)。*P<0.05。
血管新生過程は複雑であり、細胞外基質分解、増殖、移動、および管形成のための内皮細胞の形態的分化を含む、幾つかの区別可能な段階を含む(F.Bussolino,et al.,Trends Biochem Sci 22(1997)、pp.251〜256)。SFKLRY−NH2(配列番号2)が血管新生を誘導するかを決定するために、血管新生刺激剤としてのSFKLRY−NH2(配列番号2)の能力を、試験管内血管新生モデルで評価した。本発明者らは先ず血管新生カスケードの面:すなわちHUVECsにおける増殖に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を評価した。
HUVECsのDNA合成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を、[3H]−チミジン取り込みアッセイを用いて評価した時、SFKLRY−NH2(配列番号2)はHUVECsの増殖活性を用量依存的に増進させ、HUVECsのDNA合成を1μMで約2.5倍増加させた。10μMのペプチドの増殖活性は、10%FBSの増殖活性と類似していた(図2A)。
血管新生は、内皮細胞の運動性に高度に依存的であるため、本発明者らは、次に試験管内傷移動アッセイでHUVEC移動に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を評価した。図2Bに示されているように、HUVECsの移動活性は、SFKLRY−NH2(配列番号2)の添加により用量依存的に増進され、10μMで最大活性に近づいた。SFKLRY−NH2(配列番号2)10μMにおける移動活性は、対照群(溶媒または未処理)より1.6倍増加し、SFKLRY−NH2(配列番号2)の効果は、HUVEC移動の刺激剤として知られている10%FBSと類似していた。
内皮細胞におけるSFKLRY−NH2(配列番号2)の機能的役割に対する追加の証拠を提供するために、HUVECsにおける形態的分化に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を、試験管内管形成アッセイで評価した(図2C)。対照群細胞が凝集して塊を形成したのに対し、SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)で処理したHUVECsは、ネットワーク(network)形成へと至る伸長(elongation)および内壁化(lining)といった形態的変化を示した。SFKLRY−NH2(配列番号2)の管形成活性(20.25±1.31)は、対照群細胞(9.4±0.67)の2倍以上であり、10μMのSFKLRY−NH2(配列番号2)の活性は、100nMのS1Pの活性(19.69±0.32)と類似する反面、組み換えた配列の10μMのFYSRLK−NH2(8.96±1.14)はHUVECsの形態的変化に対して効果がなかった(図2C)。このような結果は、試験管内でのヒト内皮細胞培養系における新血管形成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の配列特異的な性質を裏付ける。
2.3.SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導[Ca2+]i増加は、PTX感受性G蛋白質−PLCシグナル伝達経路により媒介される
内皮細胞におけるSFKLRY−NH2(配列番号2)媒介性シグナル伝達経路を描写するために、本発明者らは細胞内Ca2+増加と関連した上流シグナル伝達メカニズムを検討した。PLCは、細胞内Ca2+動員を活性化させるIP3およびジアシルグリセロールを生産することが知られている(MJ.Berridge et al., Nature 312(1984)、pp.315〜321;P.W. Majerus,et al., Biochem Biophys Res Commun 268(2000)、pp.47〜53;およびY.Nishizuka、Science 258(1992)、pp.607〜614)。SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導Ca2+シグナル伝達において、PLC媒介性シグナル伝達経路が関係する可能性を調べるために、ペプチド誘導性細胞内カルシウム動員に対するPLC抑制剤、U73122およびその不活性アナログU73433の効果を検討した。
図3A〜3Bは、BAPTA、U73122およびPTXがMS−1細胞におけるSFKLRY−NH2誘導[Ca2+]i増加を抑制したことを示している。細胞内カルシウムキレート化剤、BAPTA−AM(A)、PLC抑制剤U73122およびその不活性アナログであるU73433、およびPTX(B)の存在または非存在下で、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導細胞内Ca2+動員活性を測定した。(A)前記細胞を10μMのBAPTA−AMを含むDMEM内でFluo−4/AMと共に30分間、37℃で前培養した。細胞は0.2mMのEGTAを含むCa2+フリーのロッケ溶液に懸濁し、示された濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理した。蛍光強度の変化を、励起488nmおよび放出520nmで測定した。(B)細胞を、U73122(10μM)、U73433(10μM)の存在または非存在下で30分間、およびPTX(100ng/mL)の存在または非存在下でFura−2と共に2時間、それぞれ前培養した。その後、Fura−2を添加された細胞をCa2+フリーのロッケ溶液に懸濁し、1μMのSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理した。データはそれぞれ3回行われた平均±3(独立した実験)を示す。*P<0.05。
U73122(10μM)はペプチド誘導細胞内カルシウム動員を完全になくしたが、U73433(10μM)は抑制効果がほとんどなかった(図3B)。HUVECsのGi−共役受容体−PLC−細胞内Ca2+シグナル伝達経路を通じた血管新生活性の誘導は、(D.English,et al., Biochim Biophys Acta 1582(2002)、pp.228〜239;O.H.Lee,et al.,Biochem Biophys Res Commun 268(2000)、pp.47〜53;F.Wang,et al., J Biol Chem 274(1999)、pp.35343〜35350)によく記載されているため、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導細胞内Ca2+動員におけるG−蛋白質の関連を評価した。SFKLRY−NH2(配列番号2)で処理する2時間前にMS−1細胞を百日咳毒素(PTX)(100ng/mL)で処理した時、ペプチド依存性細胞内Ca2+動員は、図3Bに示されているように、PTX前処理により顕著に弱化された、これは、応答がPTX感受性G−蛋白質により大部分引き起こされることを示す。一般に、[Ca2+]iの上昇は内部のストアからのCa2+放出または外部環境からの流入により達成される。
Ca2+プールの源を確認するために、0.2mMのEGTAを含むCa2+フリーのロッケ溶液中にて、MS−1細胞におけるペプチド誘導[Ca2+]i増加を測定した。BAPTA−AMの非存在下では、細胞内Ca2+濃度の上昇は用量依存的な様式であることが示された反面(図3A)、細胞内Ca2+キレート化剤BAPTA−AM(10μM)をMS−1細胞に予め添加することにより細胞内Ca2+を枯渇させると、最大効果のペプチド濃度で処理した細胞ですら[Ca2+]i増加が完全になくなった(図3A)。このような結果は、SFKLRY−NH2(配列番号2)が細胞内Ca2+ストアからの[Ca2+]i増加を引き起こすことができ、PTX−感受性G−蛋白質は、MS−1細胞におけるPLC−媒介性細胞内カルシウム動員と関連があるかもしれないことを示している。
もし、SFKLRY−NH2(配列番号2)が膜受容体に結合し、細胞内Ca2+生産を誘導することができるなら、関連したシグナル伝達メカニズムを知らなければならない。αサブユニットのADP−リボシル化によりG蛋白質を抑制するPTXは、細胞内Ca2+増加を大きく弱化させ(図3B)、SFKLRY−NH2(配列番号2)によるラット大動脈輪における血管移植片からの内皮細胞の成長活性を顕著になくした(図4)。したがって、我々のデータは、PTX−感受性G蛋白質の媒介が、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導性血管新生の作用において重要なシグナルであることを示唆する。シグナル伝達の後G蛋白質は、ホスホリパーゼCの活性化を含む多様な細胞反応を導く、その酵素はPIP2を加水分解してDAGおよびIP3を形成し、これらは細胞内Ca2+ストアからの細胞内カルシウムの放出を媒介する。多様なホルモン、成長因子、および多様な神経伝達物質がこのようなシグナル伝達経路を使用する(MJ.Berridge.,Nature 312(1984)、pp.315〜321;P.W.Majerus,et al.,Cell 63(1990)、pp.459〜465;Y.Nishizuka、Science 258(1992)、pp.607〜614)。ホスホリパーゼC抑制剤、U73122は、SFKLRY−NH2(配列番号2)により開始された細胞内カルシウム動員をなくした(図3B)、従って[Ca2+]i増加がPLCの活性化に依存することが示される。このような結果に基づき、SFKLRY−NH2(配列番号2)がPTX感受性G−蛋白質共役細胞表面受容体の活性化を通じてその応答を引き起こし、続けて内部のストアからPLC−媒介性細胞内カルシウム動員が起こることと思われる (図3A)。
したがって、我々のデータは百日咳毒素感受性G蛋白質の媒介は、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生の作用において重要な信号であり、これはマストパランのような直接G蛋白質活性化剤よりはGPCRに分類される受容体を示唆する(R.Weingarten、J Biol Chem 265(1990)、pp.11044〜11049)。マストパランは両親媒性ペプチドであり、免疫および神経細胞株を含む多様な細胞において細胞内Ca2+動員活性を有する(J.F.Klinker,et al.,Biochem J 304(1994)、pp.377〜383;T.Murayama,et al.,J Cell Physiol 169(1996)、pp.448〜454)。しかしながら、SFKLRY−NH2(配列番号2)は細胞膜を貫通し難い親水性ペプチドであり、細胞内カルシウム動員活性はMC3T3−E1、C6bu1、NIH/3T3、およびC2C12のような細胞内において観察されたが、PC12およびU937のような神経または免疫細胞では観察されなかった(データは示さず)。しかしながら、他の細胞で同一レベルのカルシウム応答を達成するためには、10倍以上の用量のSFKLRY−NH2(配列番号2)が必要であった。我々の観察結果は、SFKLRY−NH2(配列番号2)の推定される受容体は間葉系統の細胞で広く発現しており、SFKLRY−NH2(配列番号2)の作用は内皮細胞でより特異的であることを示唆する。
最近、幾つかの報告で、血管新生過程の調節において、G蛋白質共役型受容体(GPCRs)の活性化に続けてPLC−Ca2+シグナル伝達経路が活性化するとの示唆が記載された(D.English,et al.,Biochim Biophys Acta 1582(2002)、pp.228〜239;D.S.Gelinas,et al.,Br J Pharmacol 137(2002)、pp.1021〜1030;Y.M.Kim,et al.,J Biol Chem 277(2002)、pp.6799〜6805;F.Wang,et al.,J Biol Chem 274(1999)、pp.35343〜35350)。Gi共役受容体媒介性のPLC−Ca2+シグナル伝達経路は、S1Pで刺激された内皮細胞の接着点形成および移動において重要であることが知られている(O.H.Lee,et al.,Biochem Biophys Res Commun 268(2000)、pp.47〜53;F.Wang,et al.,J Biol Chem 274(1999)、pp.35343〜35350)。新血管形成の初期段階では、内皮細胞の発芽は細胞増殖、細胞移動および管形成を必要とする必須の段階である(W.Risau,et al.,Nature 386(1997)、pp.671〜674)。我々の結果は、HUVECsの細胞増殖、移動、および管形成がSFKLRY−NH2(配列番号2)処理により用量依存的に増強されることを示した(図2)。また、生体外でのラット大動脈輪からのSFKLRY−NH2(配列番号2)により刺激された内皮細胞の成長結果は、VEGF処理により得られた結果と類似している(図4)。SFKLRY−NH2(配列番号2)による血管移植片からの内皮細胞の発芽は、PTXまたはU73122の処理により、それら抑制剤のペプチド誘導[Ca2+]i動員に対する効果により、顕著に減少した。これらの結果は、PTX感受性GPCR−PLC−Ca2+シグナル伝達経路がSFKLRY−NH2(配列番号2)誘導内皮細胞発芽に必須であることを示唆する。
2.4.SFKLRY−NH2による生体外における血管発芽の誘導
SFKLRY−NH2(配列番号2)が生体外において、血管内皮細胞の発芽で役割を果たすかについて取り組むために、1μMのSFKLRY−NH2(配列番号2)、10ng/mLのVEGF、10nMのS1P、および10%のFBSを含む多様な刺激の存在下に、大動脈輪を分析した。SFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)は血管移植片からの内皮細胞の顕著な成長をおこし、血管発芽活性は10nMのS1Pおよび10ng/mLのVEGF処理の場合よりも高かった。図4は、SFKLRY−NH2(配列番号2)が生体外において血管発芽を誘導することを示す。マトリゲル内でラット大動脈移植片をSFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)、FYSRLK−NH2(1μM)、S1P(10nM)、VEGF(10ng/mL)またはSFKLRY−NH2(配列番号2)(1μM)を含むM−199、あるいはさらにU73122(10μM)またはPTX(50ng/mL)を含むM−199、あるいは10%のFBSを有するM−199で培養し、7日間培養後に撮影した。そして3つの独立した実験をそれぞれ2回ずつ行った。
また、組み換え配列のFYSRLK−NH2(1μM)は無視できる程度の活性を有していた。[Ca2+]i動員に対するPTXおよびU73122の影響により、SFKLRY−NH2(配列番号2)により増進された血管発芽活性は、PTX(50ng/mL)またはU73122(10μM)との併用処理により顕著に弱化された(図4)。したがって、これらの発見はPTX感受性G蛋白質、PLC−[Ca2+]iシグナル伝達経路がペプチドによる管発芽増強に関連していることを示す。
2.5.SFKLRY−NH2(配列番号2)によるVEGF mRNAの上向調節
SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生過程におけるVEGFシグナル伝達経路の関連の可能性を明確にするために、SFKLRY−NH2(配列番号2)で処理したHUVECsにおいて、血管新生因子の発現をRT−PCRで測定した。図5A〜5Bは、SFKLRY−NH2(配列番号2)によるVEGFおよびVEGFR−1 mRNAの上向調節を示す。RT−PCR分析は、SFKLRY−NH2(配列番号2)で処理した初代培養HUVECsから分離されたmRNAに対して行った。表示されたデータは3つの独立した実験を代表するものである。SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)は、HUVECsにおいて0、1、2、3、4、8、または12時間(A)、そして0、0.01、0.1、または10μMで2時間処理し(B)、VEGF−Aを、その特異的なプライマーを使用して増幅した。GAPDHを対照遺伝子として使用した。
図5Aに示されているように、強力な血管新生因子のVEGF−Aの発現レベルは3.77倍増加し、時間依存的な誘導を示し、2時間において発現が最大となった。
VEGF−Aの誘導は8および4時間以上持続した。一方、SFKLRY−NH2(配列番号2)刺激は、発現レベルbFGF、およびFGFR−2に影響を与えなかった(データは示されず)。前記ペプチドは、VEGF−Aの誘導を用量依存的に誘発した(図5B)。これらのデータは、増強されたVEGFの発現が、HUVECsにおけるSFKLRY−NH2(配列番号2)の血管新生作用と関連があるかもしれないということを示唆する。
2.6.SFKLRY−NH2(配列番号2)はVEGFの上向調節を通じて血管新生効果を誘導する
本発明者らは、RT−PCR分析により、蛋白質に対応するメッセンジャーの増加を評価することによって、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生におけるVEGF上向調節の関連の可能性を示した(図5Aおよび5B)。SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生におけるVEGF−A誘導の役割の可能性をより裏付けるために、ペプチド誘導血管新生に対するVEGF中和抗体の効果を管形成アッセイで評価した。
図6A〜6Bは、HUVECsにおいて抗−VEGF抗体が、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導管形成を阻害することを示す。細胞を、SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)またはVEGF−A(10ng/mL)と、抗VEGF−A中和抗体(0.1、1、または10μg/mL)とを含む培地で24時間培養した。24時間培養後、管類似構造を撮影し、管形成の長さを測定した。データは二つの独立した実験のうちの一つから代表され、数値は二つの独立した実験の平均である。*P<0.05 溶媒処理と比較して。
SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導HUVECs管形成(18.2±0.77)は、VEGF中和抗体の併用処理により統計的に有意な減少を示し、約1/2抑制された、これは対照群(VEGF+VEGF中和抗体、12.1±0.63)と同様の水準である(図6A)。また、ELISAで測定した結果、SFKLRY−NH2(配列番号2)刺激後のVEGF−A mRNA発現の最大3.77倍の増加には、HUVECsによるVEGF−A生産の劇的な増加が伴った(図6B)。これらの結果は、VEGFの誘導がSFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生と関連していることを示す。
SFKLRY−NH2(配列番号2)が他の血管新生因子を誘導することによって血管新生に影響を与えるか検討するために、血管新生と関連している、よく知られたシグナル伝達分子についてRT−PCR分析を行った。本発明者らは、HUVECsにおいて、SFKLRY−NH2(配列番号2)で2時間の処理という早さでVEGF−A発現の増加を観測した(図5)、一方、bFGFおよびFGFR−2の発現レベルには変化がなかった(データは示さず)。また、VEGF−中和抗体はSFKLRY−NH2(配列番号2)誘導HUVECs管形成を高度に抑制した(図6A)。培養培地内に分泌されたVEGF−A蛋白質をELISA分析でモニタリングしたところ、HUVECsにおけるSFKLRY−NH2(配列番号2)刺激の結果、VEGF蓄積が3倍増加したことがわかった(図6B)。これらの結果から我々は、SFKLRY−NH2(配列番号2)誘導血管新生活性のメカニズムはVEGF誘導により媒介されるまたはされ得ることを提案する、また、VEGF中和抗体を使用して得られた1/2−抑制の結果(図6A)はまた、SFKLRY−NH2(配列番号2)刺激による血管新生活性における、特徴づけられていないメディエーターを提案する。
最近の研究は、プラスミドまたはVEGFをコードするアデノウイルスDNAの伝達が、動物モデルで心筋梗塞および十二指腸潰瘍の治療において好ましい効果を有する臨床的状況で、VEGF誘導の重要性を提案する(X.Deng,et al.,J Pharmacol Exp Ther 311(2004)、pp.982〜988;J.Rutanen,et al.,Circulation 109(2004)、pp.1029〜1035;Y.S.Yoon,et al.,MoI Cell Biochem 264(2004)、pp.63〜74)。SFKLRY−NH2(配列番号2)が生体内でVEGF発現を誘導するかをテストすべきではあるが、標的器官に対する治療プラスミド遺伝子の送達は難しく、しばしば一時的なものであるため、ペプチド治療は遺伝子送達よりも有利な方法であろう。また、TNF−α、トランスフォーミング増殖因子−β、インターロイキン−lβ、およびエンドセリンのような公知のVEGF誘導剤のうちで(F.Bussolino,et al.,J Pharmacol Exp Ther 311(2004)、pp.982〜988)、SFKLRY−NH2(配列番号2)は最も小さいペプチドであって、合成が容易であり、蛋白質発現よりも費用が少なく、また発現システムが不要であるという点で他の蛋白質に対していくつかの利点を有している;本発明者らは単純に高純度のペプチドを得る。管再構成に対するこのようなSFKLRY−NH2(配列番号2)の潜在的利点は、糖尿病または傷と関連した足と脚の潰瘍を含む、障害された血液供給により誘発される人間の疾病に、SFKLRY−NH2(配列番号2)が使用できる可能性があることを提案する。
[実施例3]
動物モデルにおける傷の治療の増進
傷の治癒実験をSprague−Dawley系(6週齢、雄、体重140−160グラム)を使用して行い、前記動物は任意に3グループに分けた。ゲロラン麻酔下で、背毛を剃り、皮膚を70%エタノールで殺菌した。8−mm皮膚生検パンチで全層創傷を背の皮膚に作った。傷の部位をテガダーム(Tegaderm)で覆った。本発明者らは対照群(HBSS)、SFKLRYのl0uMおよびfysrlkのl0uMを、1日1回で14日間各グループに局所的に投与された。14日後、ラットを屠殺し、その後創傷組織を除去した。これらのサンプルはその後別々に4%ホルムアルデヒドで固定され、段階的な一連のアルコール(graded alcohol series)で脱水し、キシレンで洗浄しパラフィンワックスで包埋した。4μmの連続切片を切りとり、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
試験管内での創傷移動アッセイでのHUVEC移動に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の促進的効果に基づき、創傷に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果をラットモデルで評価した。14日目における、生検創傷組織の組織像を図7Aおよび7Bに示す。図7A〜7Bは、14日目における治癒しつつある創傷組織の組織像を示している。図7Aにおいて、モック処理された創傷は深刻な浮腫および微小構造の崩壊(disorganized microarchitectures)を示している。図7Bでは、微小構造の通常の状態へのほとんど完璧な復元が、SFKLRY−NH2(配列番号2)(10μM)処理により観測された。
対照(PBS−処理)に比べ、SFKLRY−NH2(配列番号2)で処理するとほとんど完璧に創傷が復元された。
[実施例4]
コラーゲン合成の誘導
血管形成および皮膚老化の間に関連がありうることを想起し、抗シワ用化粧料の成分としてのSFKLRY−NH2(配列番号2)の使用の可能性を検討した。I型コラーゲンの発現をウェスタンブロットで測定した。各グループから繊維芽細胞をペレット化して、氷冷細胞溶解バッファー(Cell Signaling Technologies)で抽出した。細胞可溶化液を15000gで15分間、4℃で遠心分離し、各グループからの上清を8%SDS−PAGEで分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。ブロッキング溶液(5%脱脂乳)でインキュベートした後、膜を1次抗体(Sigma−Aldrich)と一晩4℃でインキュベートした。膜を1xTBST溶液で洗浄した後、2次抗体(1:5000希釈、Amersham Life Sciences)と2時間インキュベートした。膜をECLシステム(Amersham Life Sciences)で測定し、蛋白質バンドの相対強度をScan−gel−itソフトウェアで分析した。
図8に示されているように、SFKLRY−NH2(配列番号2)は10μMの濃度で最大反応を示し、I型コラーゲンの発現を有意に向上させた。図8は、I型コラーゲンの合成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を示す。ヒト繊維芽細胞をSFKLRY−NH2(配列番号2)(0.1、1、10μM)で処理した。24時間後、I型コラーゲンの発現をウェスタンブロットで測定した。実験は3回繰り返し、再現可能な結果が得られた。
[実施例5]
メラノーマ細胞におけるメラニン形成の抑制
メラニン形成に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果の可能性を調べるために、α−MSHで刺激したB16メラノーマ細胞を、1、10、または50μMの濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)の存在下に5日間培養した。B16メラノーマ細胞は、与えられた濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理され、続いてα−MSH(10nM)で5日間処理された。処理後、これらをトリプシン/EDTAで短時間インキュベートして剥離した。沈澱後、細胞ペレットを撮影して、沸騰2M NaOHにて20分間可溶化した。メラニン含量の分光光度分析を405nmで行った。
図9A〜9Bは、Bl6メラノーマ細胞内のメラニン含量に対するSFKLRY−NH2(配列番号2)の効果を示している。図9Aにおいて、B16メラノーマ細胞は、与えられた濃度のSFKLRY−NH2(配列番号2)で処理され、続けてα−MSH(10nM)で5日間処理された。処理後、これらをトリプシン/EDTAで短時間インキュベートして剥離した。沈澱後、図9Aにおいて細胞ペレットを撮影して、沸騰2M NaOHにて20分間可溶化した。図9Bでは、メラニン含量の分光光度分析を405nmで行った。実験結果は対照群(α−MSH−処理)に対する比率として示されている。
図9Aおよび9Bに示されているように、細胞ペレットは脱色され、SFKLRY−NH2(配列番号2)処理はメラニン形成に対する顕著な抑制効果(約60%の抑制)を示し、1μMで応答が飽和した。
本明細書で引用された全ての参考文献は全て参考として包含される。当該分野で熟練した技術を有する者は、本明細書に具体的に記載されている本発明の具体的な態様に対する多くの等価なものを、単に通常の実験をすることで認識するであろうし、また確認することができる。このような等価なものは本発明の特許請求の範囲に含まれるものである。

Claims (11)

  1. アミノ酸の長さが6〜15個であり、必須部分としてX1FX2LRX3のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群より選択される血管新生ペプチド:
    1FX2LRX3
    (前記X1は、セリンまたはスレオニンであり;
    2は、リシン、アルギニン、またはイソロイシンであり;
    3は、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、アルギニン、またはヒスチジ
    ンである。)。
  2. 前記血管新生ペプチドが、X1FX2LRX3のC末端に結合した1〜9個のアミノ酸で構成される連結ペプチドを含むものである、請求項1に記載の血管新生ペプチド。
  3. 前記血管新生ペプチドが、前記C末端のカルボキシル基を−NH2で置換することによって修飾されたものである、請求項1または2に記載の血管新生ペプチド。
  4. 前記血管新生ペプチドが、配列番号l、2、8、12、14または15〜24のアミノ酸配列である、請求項1に記載の血管新生ペプチド。
  5. 前記血管新生ペプチドが、細胞移動、血管新生、またはコラーゲン合成の増進活性、またはメラニン形成の抑制活性を有するものである、請求項1に記載の血管新生ペプチド。
  6. 前記血管新生ペプチドの血管新生活性が、血管内皮増殖因子(VEGF)の上向調節により媒介されるものである、請求項1に記載の血管新生ペプチド。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の血管新生ペプチドを含む、傷の治癒、コラーゲン合成の増進またはメラニン合成の抑制のための組成物。
  8. 前記組成物が、細胞移動、血管新生またはコラーゲン合成を増進させるものである、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記組成物が、活性成分として請求項1〜6のいずれか一項に記載の血管新生ペプチド、および薬学的に許容可能な担体を含む傷の治癒のための薬学的組成物である、請求項7に記載の組成物。
  10. 前記組成物が、活性成分として請求項1〜6のいずれか一項に記載の血管新生ペプチド、および化粧用として許容可能な担体を含む老化した皮膚の状態改善のための化粧料組成物である、請求項7に記載の組成物。
  11. 前記化粧料組成物が、シワ抑制および皮膚美白活性があるものである、請求項10に記載の組成物。
JP2011506200A 2008-04-23 2009-04-23 血管新生ペプチド Active JP5337868B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US4733808P 2008-04-23 2008-04-23
US61/047,338 2008-04-23
PCT/KR2009/002136 WO2009131395A2 (en) 2008-04-23 2009-04-23 Angiogenic peptide

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011519835A JP2011519835A (ja) 2011-07-14
JP5337868B2 true JP5337868B2 (ja) 2013-11-06

Family

ID=41217280

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011506200A Active JP5337868B2 (ja) 2008-04-23 2009-04-23 血管新生ペプチド

Country Status (7)

Country Link
US (1) US9925398B2 (ja)
EP (1) EP2280988B1 (ja)
JP (1) JP5337868B2 (ja)
KR (1) KR101046325B1 (ja)
CN (1) CN102066404B (ja)
HK (1) HK1152717A1 (ja)
WO (1) WO2009131395A2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102102862B1 (ko) * 2011-10-14 2020-04-22 제넨테크, 인크. 항-HtrA1 항체 및 사용 방법
US11358989B2 (en) 2017-11-22 2022-06-14 University Of Florida Research Foundation, Incorporated Apratyramide therapeutic agents and methods of treatment
CN111632127B (zh) * 2019-02-14 2022-07-05 三凡生技研发股份有限公司 短链胜肽组合物及其于皮肤保护的用途

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2706300B1 (fr) 1993-06-17 1995-09-01 Dior Christian Parfums Utilisation d'un peptide ayant un groupement lysine et un groupement alanine en position terminale pour la préparation d'une composition dépigmentante et composition dépigmentante en comportant application.
US5885782A (en) * 1994-09-13 1999-03-23 Nce Pharmaceuticals, Inc. Synthetic antibiotics
US6020312A (en) 1994-09-13 2000-02-01 Nce Pharmaceuticals, Inc. Synthetic antibiotics
AU2001250912B2 (en) * 2000-03-21 2007-01-04 Curagen Corporation VEGF-modulated genes and methods employing them
EP1268544A2 (en) * 2000-03-31 2003-01-02 Institut Pasteur Peptides blocking vascular endothelial growth factor (vegf)-mediated angiogenesis, polynucleotides encoding said peptides and methods of use thereof
GB0026134D0 (en) * 2000-10-25 2000-12-13 Eurogene Ltd Peptides and their use
GB0103424D0 (en) * 2001-02-12 2001-03-28 Chiron Spa Gonococcus proteins
DE102004055541A1 (de) * 2004-11-17 2006-05-18 Henkel Kgaa Kosmetische und dermatologische Zusammensetzungen zur Behandlung reifer Haut

Also Published As

Publication number Publication date
WO2009131395A2 (en) 2009-10-29
EP2280988A2 (en) 2011-02-09
CN102066404A (zh) 2011-05-18
EP2280988B1 (en) 2017-05-24
US20110110875A1 (en) 2011-05-12
US9925398B2 (en) 2018-03-27
JP2011519835A (ja) 2011-07-14
CN102066404B (zh) 2013-11-13
WO2009131395A3 (en) 2010-02-11
KR20100127295A (ko) 2010-12-03
HK1152717A1 (en) 2012-03-09
KR101046325B1 (ko) 2011-07-05
EP2280988A4 (en) 2011-08-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7902329B2 (en) Oligopeptide tyrosinase inhibitors and uses thereof
US8338364B2 (en) Peptide tyrosinase inhibitors and uses thereof
JP6431367B2 (ja) PGC−1αを調節するペプチド
US20100167997A1 (en) Method for stimulation collagen synthesis and/or kgf expression
JP2018500330A (ja) ペプチド化合物、それらを含む組成物及び前記化合物の使用、特に化粧用途
HUE026698T2 (en) Peptide fragments for inducing the synthesis of extracellular matrix proteins
JP7296642B2 (ja) 化粧料および医薬に使用するためのペプチドおよび組成物
IL197115A (en) Peptides bind to gcpr receptors and methods for their use
JP2011514891A (ja) メタロプロテイナーゼ阻害剤を含む化粧品または医薬組成物
JP5908589B2 (ja) マトリックスメタロプロテアーゼ活性抑制ペプチド及びその用途
KR20240042649A (ko) 합성 펩티드, 화장료 조성물 또는 약학 조성물 및 그의 사용
KR20060114030A (ko) Fpr 계열 수용체 매개 신호전달에 대하여 길항작용 하는펩티드
WO2006042282A2 (en) Peptide inhibitors against seprase
JP5337868B2 (ja) 血管新生ペプチド
JP4689039B2 (ja) ファゴサイトーシスおよびicam−1発現を調節するための組成物および方法
Lee et al. Identification of novel synthetic peptide showing angiogenic activity in human endothelial cells
EP1458748A2 (de) Apoptotisch wirksame peptide
JP2018532774A (ja) 脱毛症の予防的及び根治的治療において使用するペプチド
JP2023504461A (ja) 化粧品および医薬品に使用するためのペプチドおよび組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130402

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130624

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130723

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130805

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5337868

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250