発明の詳細な説明
本発明は分子生物学の分野に関し、より正確には化粧料および医薬に適用される分子生物学に関し、さらにより正確にはMunc18とシンタキシン-1との間の結合または相互作用、すなわちSNARE複合体の結合を調節可能な、ペプチドおよび前記ペプチドを含む組成物に関する。この活性により、本発明のペプチドおよび組成物は、シナプス小胞融合および筋収縮性を調節可能である。従って、前記ペプチドおよび組成物は上述の態様(例えば、筋弛緩)の調節に関連する状態の治療に効果的であり、化粧料(抗しわ活性および多汗症に対する活性)および医薬品(ニューロンの障害および/または筋収縮性障害)の両方に有用である。
特に、SNARE複合体およびシナプス小胞融合の異常な調節は、化粧料および医薬品の両方に非常に関連することが知られている、異常な筋収縮-弛緩を発生させる。
一方では、しわ(例えば、顔の表情のしわ)形成の原因またはメカニズムは皮膚を内側に引っ張る筋肉の緊張である。この筋肉の緊張は、対応する筋肉を活性化する神経の過敏の結果である。次に、前記神経過敏は、筋線維を興奮させる神経伝達物質の制御不能かつ過剰な放出によって特徴付けられる。
他方では、筋収縮-弛緩の変化をもたらす神経過敏(既に述べたように、筋線維を興奮させる神経伝達物質の制御不能かつ過剰な放出によって特徴づけられる)はいくつかの既知の疾患、例えば、老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症または多発性/側索硬化症の原因でもある(Jabbari B, (2018) Botulinum Toxin Treatment in Clinical Medicine A Disease-Oriented Approach, Springer, Cham.; Jankovic J, (2004) Botulinum toxin in clinical practice, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 75:951-957)。
前述したのと同様に、ニューロンのエキソサイトーシスの調節異常を引き起こすSNARE複合体およびシナプス小胞融合の異常は、筋肉だけでなく、例えば腺のような他の構造または器官の過剰な活性化または興奮を引き起こすこともある。従って、前記条件は例えば、多汗症(汗腺の過剰な活性化または興奮)のように、筋収縮に関連しない(本発明のペプチドおよび組成物が有用な)美容的および医学的な変化も引き起こす(Jabbari B, (2018) Botulinum Toxin Treatment in Clinical Medicine A Disease-Oriented Approach, Springer, Cham.; Luvisetto S, Gazerani P, Cianchetti C, Pavone F, (2015) Botulinum Toxin Type A as a Therapeutic Agent against Headache and Related Disorders, Toxins (Basel), Sep; 7(9): 3818-3844.;Molderings GJ, Haenisch B, Brettner S, et. al., (2016) Pharmacological treatment options for mast cell activation disease, Arch Pharmacol. 2016; 389: 671-694.; Basar E, Arici C, (2016), Use of Botulinum Neurotoxin in Ophthalmology, Turk J Ophthalmol. Dec; 46(6):282-290.; Schlereth T, Dieterich M, Birklein F(2009), Hyperhidrosis-causes and treatment of enhanced sweating, Dtsch Arztebl Int. Jan;106(3):32-7)。
神経伝達物質の放出はシナプス前小胞の融合によるものである。広く知られているように、前記シナプス前小胞の融合は、異なるタンパク質間の複雑な相互作用によって制御され、当該タンパク質は、神経伝達物質を伴った小胞をシナプス前膜に接近させる、分泌のために前記小胞の位置を決める、分泌のための膜融合を可能にする、および、生成された複合体をその再利用を可能にするために分解する役割を持つ。関与するタンパク質の組み立てと分解を含む、この全ての手順は、あらゆる種類の調節不全が美容への影響および/または健康への影響の両方を伴う変化につながる可能性があるので、厳密に制御される必要がある。
ニューロンのエキソサイトーシスを調節する分子は筋肉の緊張を緩和することに寄与し、従って、しわ(好ましくは、顔面のしわ)を予防、減少および/または排除し、そして/または異常なまたは調節不全のニューロンのエキソサイトーシスに関連する疾患を予防、改善または治癒する。
これに関連して、(神経伝達物質、好ましくはアセチルコリンが含まれた)シナプス前小胞融合は、SNAREタンパク質(すなわち、ニューロンの膜におけるシンタキシン-1およびSNAP-25;および小胞の膜におけるシナプトブレビンまたはVAMP)によって作動または制御されていると従来考えられていた。従って、SNAREタンパク質複合体は神経分泌を制御するための鍵となる標的を形成すると考えられていた。
これに関連して、SNAREタンパク質複合体に向けられたいくつかの治療的および美容的アプローチが生み出されてきた。例えば:
ボツリヌス毒素:特に血清型A(BOTOX(登録商標)Cosmetic、Allergan Inc.)は表情のしわを減少および/または排除する目的で広く使用されてきた。前記ボツリヌス毒素は局所的に注射され、それらの麻痺効果は平均期間6ヶ月の可逆的な効果であり、従って、反復注射が必要となる。ボツリヌス製剤に対する免疫反応を引き起こし、治療効果を失うという危険性が知られている。B、F、Eのようなボツリヌス毒素の他の血清型もこの問題を克服すると考えられていたが、前記血清型も免疫応答を引き起こす危険性を有する。分子レベルでは、ボツリヌス毒素は、カルシウムイオン活性化エキソサイトーシス機構に関与する、ニューロンタンパク質を分解するプロテアーゼである。例えば、ボツリヌス毒素Aは、ニューロンSNAP-25タンパク質を切断する。
SNARE複合体を形成するタンパク質の配列に由来する特定のペプチドがニューロンのエキソサイトーシスを阻害することも、現在の当技術分野で公知である。特定のペプチドとしては例えば、SNAP-25のアミノおよびカルボキシルドメインに由来するペプチド(例えば、PCT特許出願WO97/34620、欧州特許EP1180524B1および欧州特許EP2123673B1を参照のこと)、およびシナプトブレビンまたはシンタキシンに由来するペプチド(例えば、PCT特許出願WO97/34620; Blanes-Mira, C., Clemente, J., Jodas, G., Gil, A., Fernandez-Ballester, G., Ponsati, B., Gutierrez, L., Perez-Paya, E., Ferrer-Montiel, A. A synthetic hexapeptide (Argireline) with antiwrinkle activity. International Journal of Cosmetic Science, (2002), 24, 303-310)等がある。
しかしながら、シナプス神経伝達物質の放出の機構への干渉およびその阻害を可能にし、ニューロンのエキソサイトーシスの阻害を可能にする、従って特に、筋肉の弛緩または腺過敏の減少と、および対応する美容的および薬学的効果とを提供する、追加または代替の分子を見出すことがいまだ必要とされている。
最近の研究から、シナプス神経伝達物質放出のより複雑な調節が示唆されており、SNAREタンパク質複合体に加えて、Munc13およびMunc18などの他のタンパク質が、この手順の調節と膜融合を可能にするという点で重要な役割を果たすかもしれない(Rizo, J and Sudhof, T.C. (2012) The Membrane Fusion Enigma: SNAREs, Sec1/Munc18 Proteins, and Their Accomplices - Guilty as Charged?; Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 28:279-308)。この意味で、Munc18(配列番号1)とシンタキシン-1(配列番号2)との間の相互作用は、SNARE複合体の生成および膜融合の両方にとって、中心的かつ必須であると記載されている。一方では、Munc18はシンタキシン-1のHabcドメインと相互作用し、前記Munc18の安定化とその適切な輸送を可能にする。他方では、Munc18とシンタキシン-1のNペプチドとの相互作用はMunc18とSNARE複合体との相互作用、および膜融合にとって必要である(Zhou, P. et.al. (2013) Syntaxin-1 N-peptide and Habc-domain perform distinct essential functions in synaptic vesicle fusion; The EMBO Journal, 32:159-171; Rizo, J and Sudhof, T.C. (2012) The Membrane Fusion Enigma: SNAREs, Sec1/Munc18 Proteins, and Their Accomplices - Guilty as Charged?; Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 28:279-308)。
本発明者らは広範かつ徹底的な調査の後、驚くべきことに、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用面に位置する特異的配列と競合するペプチドが、前記複合体Munc18-シンタキシン-1の干渉または阻害と、従って神経伝達物質放出の阻害(好ましくは、アセチルコリンおよびCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド))と、筋収縮の阻害(間接的にニューロンのエキソサイトーシスを阻害する手段、および筋細胞内に直接効果を提供することの両方によって)とを可能にすることを見出した。驚くべきことに、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用面に位置する他の配列と競合するペプチドは、前記の効果を提供しないことが見出された。それゆえ、本発明者らは、配列番号3(Munc18の、すなわち配列番号1の46~51位に対応するものである)および/または配列番号4(Munc18の、すなわち配列番号1の63~66位に対応するものである)と競合するペプチド、Munc18の両方が、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用への干渉について、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用面に位置する他の配列よりも有利であることを見出した。前記ペプチド(本発明のペプチド)は、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用への効果的な干渉を示した。さらに、これらのペプチドは筋細胞に直接作用する、すなわち、他のペプチドにも見られるような、筋収縮に関与する遺伝子を調節することおよびカルシウム動員を調節することで、シナプス後側に作用する能力を有することで、直接的な筋弛緩効果を示した(Schagen, S.K. (2017)Topical treatments with effective anti-aging results, Cosmetics, 4, 16; PCT特許出願 WO2006047900)。従って、ニューロンにおけるアセチルコリン放出の効果的な阻害と、筋細胞における遺伝子発現の調節およびカルシウム動員の減少とを可能にすることにより、シナプス前側およびシナプス後側の両方で効果を示した。従って、本発明のペプチドは前記の問題を解決し、そして美容的徴候と、およびニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する疾患との両方の治療に有用である。
本発明者らは、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用に干渉して神経伝達物質放出を阻害する(従って、ニューロンのエキソサイトーシスを阻害する)、および筋収縮性を阻害する分子については、いかなる従来技術も発見していない。
第1の態様において、本発明は、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用面の特定の領域と競合することによって、Munc18-シンタキシン-1複合体相互作用に干渉可能なペプチドに関する。より正確には本発明のペプチドは、配列番号3および/または配列番号4と競合し、両方の配列はMunc18における、シンタキシン-1との相互作用面に位置する。
第2の態様において、本発明は、本発明のペプチド(本発明のペプチドの1つまたはその組み合わせ)を含む組成物に関する。
さらなる態様において、本発明は薬物として使用するための、より正確にはニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害の予防、改善および/または治療のために使用するための、さらにより正確にはSNARE複合体形成の調節不全、横紋筋収縮の調節不全、アセチルコリンおよび/またはCGRP放出の調節不全および/またはCa2+チャネル活性化の調節不全に関連する疾患の予防、改善および/または治療において使用するための、組成物またはペプチドに関する。
第4の態様において、本発明はニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害の予防、改善および/または治療のための方法に関し、さらにより正確には、SNARE複合体形成の調節不全、横紋筋収縮の調節不全、アセチルコリンおよび/またはCGRP放出の調節不全および/またはCa2+チャネル活性化の調節不全に関連する疾患の予防、改善および/または治療のための方法であって、それを必要とする被験体に本発明のペプチドまたは組成物を投与する工程を含む方法に関する。
さらに、本発明は第5の態様において、被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する美容的徴候、より具体的には皮膚の老化または表情による徴候を予防、減少および/または排除するための、本発明のペプチドまたは組成物の化粧料としての使用に関する。
第6の態様において、本発明は被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する美容的徴候、より具体的には皮膚の老化または表情による徴候を予防、減少および/または排除するための、本発明のペプチドまたは組成物の化粧料への使用に関する。
第7の態様において、本発明は、本発明のペプチドまたは組成物の使用を含むことを特徴とする、それを必要とする被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する美容的徴候(より具体的には皮膚の老化または表情による徴候)を予防、減少および/または排除する方法に関する。
用語「非環式脂肪族基」およびその複数形は、本明細書で使用される場合、当該用語に対して当技術分野で与えられる一般的な意味を有する。従って、これらの用語は例えば、直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を指すが、これらに限定されない。
用語「アルキル基」およびその複数形は本明細書で使用される場合、1~24個、好ましくは1~16個、より好ましくは1~14個、さらにより好ましくは1~12個、さらによりいっそう好ましくは1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、かつ、単結合によって分子の残りに結合した飽和直鎖または飽和分岐基を指し、例えば、限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、i-プロピル、イソブチル、tert-ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2-エチルヘキシル、2-メチルブチル、5-メチルヘキシルなどを含む。アルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「アルケニル基」およびその複数形は本明細書で使用される場合、2~24個、好ましくは2~16個、より好ましくは2~14個、さらにより好ましくは2~12個、さらによりいっそう好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、共役または非共役の1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有し、好ましくは1、2または3個の炭素-炭素二重結合を有し、単結合を介して分子の残りに結合した直鎖または分岐鎖基を指し、例えば、限定されないが、ビニル、オレイル、リノレイルおよび類似の基を含む。アルケニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「アルキニル基」およびその複数形は本明細書中で使用される場合、2~24個、好ましくは2~16個、より好ましくは2~14個、さらにより好ましくは2~12個、さらによりいっそう好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、共役または非共役の1つまたは複数の炭素-炭素三重結合、好ましくは1、2または3個の炭素-炭素三重結合を有し、単結合を介して分子の残りに結合した直鎖または分岐基を指し、例えば、これらに限定されないが、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニルのようなペンチニルおよび類似の基を含む。アルキニル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「脂環式基」およびその複数形は、本明細書中で使用される場合、当該用語に対して当技術分野で与えられる一般的な意味を有する。従って、これらの用語は例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニルまたはシクロアルキニル基を指すために使用されるが、これらに限定されない。
用語「シクロアルキル」およびその複数形は本明細書で使用される場合、3~24個、好ましくは3~16個、より好ましくは3~14個、さらにより好ましくは3~12個、さらによりいっそう好ましくは3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合を介して分子の残りに結合した飽和の単環式または多環式の脂肪族基を指し、例えば、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレン、ドデカヒドロ-フェナレン、アダマンチルおよび類似の基を含み、、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の基によって任意に置換され得る。
用語「シクロアルケニル」およびその複数形は本明細書で使用される場合、5~24個、好ましくは5~16個、より好ましくは5~14個、さらにより好ましくは5~12個、さらによりいっそう好ましくは5~6個の炭素原子を有し、共役または非共役の1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有し、好ましくは1、2、または3個の炭素-炭素二重結合を有し、単結合を介して分子の残りに結合した非芳香族の単環式または多環式の脂肪族基を指し、例えば、これらに限定されないが、シクロペント-1-エン-1-イル基および類似の基を含み、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の基によって任意に置換され得る。
用語「シクロアルキニル」およびその複数形は本明細書で使用される場合、8~24個、好ましくは8~16個、より好ましくは8~14個、さらにより好ましくは8~12個、さらによりいっそう好ましくは8または9個の炭素原子を有し、共役または非共役の1つまたは複数の炭素-炭素三重結合、好ましくは1、2、または3個の炭素-炭素三重結合を有し、単結合を介して分子の残りに結合した非芳香族の単環式または多環式の脂肪族基を指し、例えば、これらに限定されないが、シクロオクト-2-イン-1-イル基および類似の基を含み、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の基によって任意に置換され得る。
用語「アリール基」およびその複数形は本明細書で使用される場合、6~30個、好ましくは6~18個、より好ましくは6~10個、さらにより好ましくは6または10個の炭素原子を有する、1、2、3または4個の芳香環を含み、炭素-炭素結合によって結合されるかまたは縮合され、単結合を介して分子の残りに結合された芳香族基を指し、例えば、これらに限定されないが、特にフェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリルまたはアントラニルなどを含む。アリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「アラルキル基」およびその複数形は本明細書で使用される場合、7~24個の炭素原子を有する芳香族基によって置換されたアルキル基を指し、例えば、これらに限定されないが、-(CH2)1-6-フェニル、-(CH2)1-6-(1-ナフチル)、-(CH2)1-6-(2-ナフチル)、-(CH2)1-6-CH(フェニル)2およびその類似を含む。アラルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「複素環基」およびその複数形は本明細書中で使用される場合、3~10員のヘテロシクリル環または炭化水素環を指し、環原子の1つまたは複数、好ましくは環原子の1、2または3個が炭素とは異なる原子(例えば、窒素、酸素または硫黄)であり、そして飽和または不飽和であり得る。本発明の目的のために、ヘテロシクリルは縮合環系を含み得る環系、単環系、二環系または三環系であり得、窒素、炭素または硫黄原子は任意に、ヘテロシクリルラジカル中で酸化され得;窒素原子は任意に、四元化され得;ヘテロシクリルラジカルは部分的または完全に飽和され得るか、または芳香族であり得る。好ましくは、複素環という用語が5または6員環に関する。複素環基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「ヘテロアリールアルキル基」およびその複数形は本明細書で使用される場合、置換されたまたは非置換の芳香族ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基を指し、アルキル基は1~6個の炭素原子を有し、芳香族ヘテロシクリル基は2~24個の炭素原子および炭素以外の1~3個の原子を有し、例えば、これらに限定されないが、-(CH2)1-6-イミダゾリル、-(CH2)1-6-トリアゾリル、-(CH2)1-6-チエニル、-(CH2)1-6-フリル、-(CH2)1-6-ピロリジニルなどを含む。ヘテロアリールアルキル基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボニル、シアノ、アシル、アルコキシ-カルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルコキシチオなどの1つまたは複数の置換基によって任意に置換されていてもよい。
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書中で使用される場合、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指し、そのアニオンはハロゲン化物と呼ばれる。
本明細書で使用される場合、用語「誘導体」およびその複数形は、化粧料の調製に使用可能な対象の化合物由来の、美容的に許容される化合物と、美容的に許容される誘導体の調製に有用であり得る、美容的許容されない誘導体との両方を指す。「誘導体」という用語およびその複数形は、薬剤の調製に使用可能な対象の化合物由来の、薬学的に許容される化合物と、薬学的に許容される誘導体の調製に有用であり得る、薬学的に許容されない誘導体との両方を指す。
本明細書で使用される場合、用語「塩」およびその複数形は当技術分野で公知の任意の種類の塩、例えば、ハロゲン化物塩、ヒドロキシ酸塩(オキシ酸塩、酸塩、塩基性塩および二重塩など)、ヒドロキソ塩、混合塩、オキシ塩または他の水和塩を指す。この用語は美容的および/または薬学的に許容される塩、ならびに美容的および/または薬学的に許容されない塩の両方を含むが、これは、後者が美容的および/または薬学的に許容される塩の調製に有用であり得るためである。
本明細書で使用されるように、用語「異性体」およびその複数形は、光学異性体、鏡像異性体、立体異性体またはジアステレオ異性体を指す。個々の鏡像異性体またはジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物は、当技術分野で公知の従来技術によって分離することができる。
本明細書中で使用される場合、用語「溶媒和物」およびその複数形は極性、無極性または両親媒性溶媒和物のような、当技術分野で公知の任意の溶媒和物を指し、対象の被験体に投与または適用する際に、対象の化合物(本発明のペプチド)を(直接的または間接的に)提供する、任意の美容的に許容される溶媒和物を含む。好ましくは、溶媒和物は、水和物、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはイソプロパノールのようなアルコールとの溶媒和物、酢酸エチルなどのエステルとの溶媒和物、メチルエーテル、エチルエーテルもしくはTHF(テトラヒドロフラン)などのエーテルとの溶媒和物、またはDMF(ジメチルホルムアミド)との溶媒和物であり、より好ましくは水和物またはエタノールなどのアルコールとの溶媒和物である。
さらに、本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」およびその複数形は、天然であるか否かにかかわらず、そしてD-およびL-アミノ酸であるかどうかにかかわらず、遺伝コードによってコーディングされたアミノ酸、およびコーディングされていないアミノ酸を含む。コーディングされていないアミノ酸の例としては、これらに限定されないが、特にシトルリン、オルニチン、サルコシン、デスモシン、ノルバリン、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-クロロフェニルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、シクロセリン、カルニチン、システイン、ペニシラミン、ピログルタミン酸、チエニルアラニン、ヒドロキシプロリン、アロ-イソロイシン、アロ-スレオニン、イソニペコチン酸、イソセリン、フェニルグリシン、スタチン、β-アラニン、ノルロイシン、N-メチルアミノ酸、α-アミノ酸およびβ-アミノ酸、それらの誘導体などが挙げられる。それにもかかわらず、さらなる非天然アミノ酸は当該分野で公知である(例えば、“Unusual amino acids in peptide synthesis” by D. C. Roberts and F. Vellaccio, The Peptides, Vol. 5 (1983), Chapter VI, Gross E. and Meienhofer J., Eds., Academic Press, New York, USAを参照)。
本明細書で使用される場合、「表情のしわ」は、顔の皮膚上に顔の表情を引き起こす、顔の筋肉の収縮によって及ぼされる応力から生じるしわである。前記しわは、通常、額、眉の間の空間、口の周り、および/または目の周りに位置する。
前記の通り、第1の態様において、本発明は、配列番号3および/または配列番号4、と競合することを特徴とする、Munc18-シンタキシン-1複合体相互作用に干渉可能なペプチド、その許容可能な異性体、塩、溶媒和物および/または誘導体および/またはそれらの混合物に関する。
本発明のペプチドにおいて使用されるまたは存在するアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸またはそれらの組み合わせであることが意図される。好ましい実施形態において、本発明のペプチドにおいて使用されるまたは存在するアミノ酸は、L-アミノ酸である。
好ましくは、前記の異性体は立体異性体である。前記立体異性体は、鏡像異性体またはジアステレオ異性体であることが意図される。従って、本発明の好ましい実施形態において、ペプチドは、ラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、純粋な鏡像異性体または純粋なジアステレオ異性体である。
本発明のペプチドは、そのN末端および/またはそのC末端に結合した少なくとも1つの部分を含むことが意図される。前記少なくとも1つの部分は当技術分野で公知の任意の手段によって、好ましくは共有結合によって、ペプチドに結合され得る。好ましい実施形態において、ペプチドは、そのN末端に共有結合した1つの部分およびそのC末端に共有結合した1つの部分を含む。
一実施形態では、少なくとも1つのN-末端部分(好ましくは1つのN-末端部分)がH、置換されたまたは非置換の非環式脂肪族、置換されたまたは非置換のアリシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたまたは非置換のアリール、置換されたまたは非置換のアラルキルおよびR5-CO-から選択され、R5は置換されたまたは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたまたは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたまたは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたまたは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたまたは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたまたは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたまたは非置換のC6-C30アリール、置換されたまたは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたまたは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つのN末端部分(好ましくは1つのN末端部分)がHまたはR5-CO-から選択され、R5は置換されたまたは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたまたは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたまたは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたまたは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたまたは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたまたは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたまたは非置換のC6-C30アリール、置換されたまたは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたまたは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択される。さらにより好ましくは、少なくとも1つのN末端部分(好ましくは1つのN末端部分)がH、アセチル(以下、Ac)、tert-ブタノイル、ヘキサノイル、2-メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイルミリストイル、パルミトイル(以下、Pal)、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルから選択される。最も好ましい実施形態において、少なくとも1つのN末端部分(好ましくは、1つのN末端部分)はAcである。
一実施形態において、少なくとも1つのC末端部分(好ましくは1つのC末端部分)がH、-NR3R4-、-OR3および-SR3から選択され、ここで、R3およびR4はH、置換されたまたは非置換の非環式脂肪族基、置換されたまたは非置換のアリシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたまたは非置換のアリール、および置換されたまたは非置換のアラルキルから独立して選択される。最も好ましい実施形態において、少なくとも1つのC末端部分(好ましくは、1つのC末端部分)がNH2である。
従って、より好ましくは、本発明のペプチドは、N末端に結合した1つの部分およびC末端に結合した1つの部分を含み、ここで、N末端に結合した部分はAcであり、C末端に結合した部分はNH2である。
一実施形態において、本発明のペプチドの配列は配列番号3または配列番号4である(前記のように、前記ペプチドはN末端に結合した少なくとも1つの部分および/またはそのC末端に結合した少なくとも1つの部分を含み得、より好ましくは、N末端に結合した1つの部分およびC末端に結合した1つの部分を含み、ここで、N末端に結合した部分はAcであり、C末端に結合した部分はNH2である)。本発明のペプチドは、配列番号3または配列番号4と少なくとも70%の同一性、さらにより好ましくは配列番号3または配列番号4と80%の同一性、さらにより好ましくは配列番号3または配列番号4と90%の同一性、さらにより好ましくは配列番号3または配列番号4と95%の同一性、さらにより好ましくは配列番号3または配列番号4と99%の同一性を有する配列を有することが意図される。
好ましい実施形態の1つにおいて、本発明に係るペプチド、その美容的および薬学的に許容可能な異性体、塩、溶媒和物および/または誘導体ならびにそれらの混合物は、式(I)に記載の配列を有する:
R1-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-R2
(I)
ここで:
AA1は、正の電荷を有する側鎖または電荷を有さない極性の側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA2は、非極性の疎水性側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA3は、非極性の疎水性側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA4は、電荷を有する側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA5は、非極性の疎水性側鎖または芳香族側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA6は、Trpであり;
R1はH、置換されたもしくは非置換の非環式脂肪族、置換されたもしくは非置換のアリシクリル、置換されたもしくは非置換のヘテロシクリル、置換されたもしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアラルキル、およびR5-CO-から選択され、ここでR5は置換されたもしくは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたもしくは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたもしくは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたもしくは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたもしくは非置換のC6-C30アリール、置換されたもしくは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたもしくは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたもしくは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成された群から選択され;および、
R2はH、-NR3R4-、-OR3および-SR3から選択され、ここで、R3およびR4はH、置換されたまたは非置換の非環式脂肪族基、置換されたまたは非置換のアリシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたまたは非置換のアリール、および置換されたまたは非置換のアラルキルから独立して選択される。
より好ましくは、この好ましい実施形態において、式(I)中:
AA1は、Hisであり;
AA2は、非極性の疎水性側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA3は、非極性の疎水性側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA4は、電荷を有する側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA5は、Metまたは芳香族側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;および、
AA6は、Trpである。
より好ましくは、この好ましい実施形態において、式(I)中:
AA1は、Hisであり;
AA2は、Gly、Ala、Val、Leu、MetおよびIleの群から選択され;
AA3は、Gly、Ala、Val、Leu、MetおよびIleの群から選択され;
AA4は、Lys、Arg、His、AspおよびGluの群から選択され;
AA5は、Met、Phe、TyrおよびTrpから選択され;および、
AA6はTrpである。
より好ましくは、この好ましい実施形態において、式(I)である:
AA1は、Hisであり;
AA2は、AlaおよびIleの群から選択され;
AA3は、LeuおよびMetの群から選択され;
AA4は、ArgおよびAspの群から選択され;
AA5は、Met、PheおよびTrpの群からから選択され;および、
AA6は、Trpである。
さらにより好ましくは、この好ましい実施形態において、本発明に係るペプチドの配列が:
R1-His-Ile-Leu-Asp-Met-Trp-R2(R1-配列番号5-R2);
R1-His-Ile-Met-Asp-Phe-Trp-R2(R1-配列番号6-R2);
R1-His-Ile-Leu-Asp-Trp-Trp-R2(R1-配列番号7-R2);
R1-His-Ala-Leu-Arg-Phe-Trp-R2(R1-配列番号8-R2);および/または、
R1-His-Ile-Met-Asp-Trp-Trp-R2(R1-配列番号9-R2)である。
R1は好ましくはHまたはR5-CO-から選択され、ここで、R5は置換されたもしくは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたもしくは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたもしくは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたもしくは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたもしくは非置換のC6-C30アリール、置換されたもしくは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたもしくは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成された群から選択される。さらにより好ましくは、R1がH、アセチル(以下、Ac)、tert-ブタノイル、ヘキサノイル、2-メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイルミリストイル、パルミトイル(以下、Pal)、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルから選択される。さらにより好ましくは、R1はAcである。
好ましくは、R2はNH2である。
従って、より好ましくは、R1はAcであり、R2はNH2である。
従って、この好ましい実施形態では、好ましくは、本発明に係るペプチドの配列が:
Ac-His-Ile-Leu-Asp-Met-Trp-NH2(Ac-配列番号5-NH2);
Ac-His-Ile-Met-Asp-Phe-Trp-NH2(Ac-配列番号6-NH2);
Ac-His-Ile-Leu-Asp-Trp-Trp-NH2(Ac-配列番号7-NH2);
Ac-His-Ala-Leu-Arg-Phe-Trp-NH2(Ac-配列番号8-NH2)および/または、
Ac-His-Ile-Met-Asp-Trp-Trp-NH2(Ac-配列番号9-NH2)である。
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチド、その美容的および薬学的に許容可能な異性体、塩、溶媒和物および/または誘導体ならびにそれらの混合物は、式(II)に記載の配列を有する:
R1-AA1-AA2-AA3-AA4-R2
(II)
ここで:
AA1は、正の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA2は、任意のアミノ酸であり;
AA3は、正の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
AA4は、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群から選択され;
R1はH、置換されたもしくは非置換の非環式脂肪族、置換されたもしくは非置換のアリシクリル、置換されたもしくは非置換のヘテロシクリル、置換されたもしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたもしくは非置換のアリール、置換されたもしくは非置換のアラルキル、およびR5-CO-から選択され、ここでR5は置換されたもしくは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたもしくは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたもしくは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたもしくは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたもしくは非置換のC6-C30アリール、置換されたもしくは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたもしくは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成される群から選択され;および、
R2はH、-NR3R4-、-OR3および-SR3から選択され、ここで、R3およびR4はH、置換されたまたは非置換の非環式脂肪族基、置換されたまたは非置換のアリシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロシクリル、置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキル、置換されたまたは非置換のアリール、および置換されたまたは非置換のアラルキルから独立して選択される。
より好ましくは、この好ましい実施形態では、式(II)中:
AA1は、Lys、ArgおよびHisの群から選択され;
AA2は、任意のアミノ酸であり;
AA3は、Lys、ArgおよびHisの群から選択され;および、
AA4は、Phe、TyrおよびTrpの群から選択される。
より好ましくは、この好ましい実施形態では、式(II)中:
AA1は、Argの群から選択され;
AA2は、任意のアミノ酸であり;
AA3は、Argの群から選択され;および、
AA4は、Pheの群から選択される。
さらにより好ましくは、この好ましい実施形態において、本発明に係るペプチドの配列は:
R1-Arg-Arg-Arg-Phe-R2(R1-配列番号10-R2);および/または、
R1-Arg-Met-Arg-Phe-R2(R1-配列番号11-R2)である。
R1は好ましくはHまたはR5-CO-から選択され、ここで、R5は置換されたもしくは非置換のC1-C24アルキルラジカル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルケニル、置換されたもしくは非置換のC2-C24アルキニル、置換されたもしくは非置換のC3-C24シクロアルキル、置換されたもしくは非置換のC5-C24シクロアルケニル、置換されたもしくは非置換のC8-C24シクロアルキニル、置換されたもしくは非置換のC6-C30アリール、置換されたもしくは非置換のC7-C24アラルキル、置換されたもしくは非置換の3~10員のヘテロシクリル環、および2~24個の炭素原子と1~3個の炭素原子以外の原子と1~6個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換されたまたは非置換のヘテロアリールアルキルによって形成された群から選択される。さらにより好ましくは、R1がH、アセチルAc、tert-ブタノイル、ヘキサノイル、2-メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイルミリストイル、Pal、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルから選択される。さらにより好ましくは、R1はAcである。
好ましくは、R2はNH2である。
従って、より好ましくは、R1はAcであり、R2はNH2である。
従って、この好ましい実施形態では、本発明に係るペプチドの配列が:
Ac-Arg-Arg-Arg-Phe-NH2(Ac-配列番号10-NH2);および/または、
Ac-Arg-Met-Arg-Phe-NH2(Ac-配列番号11-NH2)である。
本発明のペプチドは、当技術分野で公知の任意の手段によって合成および産生され得る。例えば、前記ペプチドは、化学合成(好ましくは固相ペプチド合成の手段によって)、細胞培養にて前記ペプチドを発現させる、または植物あるいは動物におけるペプチドの遺伝子組み換え生産の手段によって、合成および生産され得る。さらに、本発明のペプチドは、当技術分野で公知の任意の手段によって精製され得る。
以下に含まれる例から明らかなように、本発明のペプチドはMunc18とシンタキシン-1との間の相互作用に対する効果的な干渉を提供し、シナプス前の段階で、アセチルコリン放出の阻害、従って、筋収縮の阻害をもたらす。また、以下に含まれる例から誘導され得るように、本発明のペプチドは、筋細胞において筋肉の弛緩を直接誘導することで、シナプス後の段階で直接的な効果を有する。従って、本発明のペプチドは前記の問題を解決し、かつニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する疾患および/または美的徴候を治療(予防、減少および/または排除)し得る追加のペプチドまたは代替のペプチドを提供する。
第2の態様において、本発明は、本発明に係る少なくとも1つのペプチドを含む組成物に関する。
本発明の組成物は、1種類の本発明のペプチド、または異なる本発明のペプチドの組み合わせまたは混合物を含むことが意図される。
好ましい実施形態において、本発明の組成物は化粧料組成物である。
本発明の化粧料組成物は、美容的に有効な量の、少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。より好ましくは、本発明の化粧料組成物が0.0001%~0.05%(m/v)の少なくとも1つの本発明のペプチド、より好ましくは0.0005%~0.005%(m/v)の少なくとも1つの本発明のペプチド、さらにより好ましくは0.05%~0.001%(m/v)の少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。
本発明の化粧料組成物は、本発明のペプチドの活性の結果として、(すなわち、Munc18とシンタキシン-1との間の相互作用の阻害、従って、神経伝達物質の放出の阻害および筋収縮の調節)、皮膚の老化および/または表情による徴候(好ましくはしわ)の予防、減少および/または排除を提供する。より正確には、本発明の化粧料組成物は、顔の表情のしわ、より好ましくは額のしわ、眉の間の空間のしわ、および/または口の周りおよび/または目の周りのしわおよび細い線の予防、減少および/または排除を提供する。
また、本発明の化粧料組成物が少なくとも1つの追加の化粧料成分を含むことを意図する。前記追加の化粧料成分は、少なくとも1つの賦形剤および/または少なくとも1つの追加の化粧料活性成分であり得る。
追加の化粧料成分は例えば、安定剤、可溶化剤、ビタミン、着色剤および香料などの補助剤;担体;および/または他の化粧料活性成分として、当技術分野で通常使用されるものを含む。
前記の追加の化粧料成分は、組成物の他の成分、特に本発明の組成物に含まれる本発明のペプチドと物理的および化学的に適合していなければならない。同様に、前記追加の化粧料成分の性質は、本発明のペプチドおよび組成物の利点を許容できないほど変えてはならない。前記追加の化粧料成分は例えば、植物抽出物などの合成または天然起源のものであってもよく、または生物発酵プロセスに由来するものであってもよい(例えば、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Eleventh Edition (2006)参照)。
前記の追加の化粧料成分は、皮膚および/または毛髪の洗浄に配慮するための組成物、および/または多汗症を予防するための脱臭剤および/またはクリームにおいて、通常に使用される成分が含まれることが意図される。前記成分としては例えば、メラニン合成阻害剤、ホワイトニング剤または脱色剤、抗老化剤、NO-シンターゼ阻害剤、抗酸化剤、抗大気汚染剤および/またはフリーラジカル捕捉剤、抗糖化剤、乳化剤、エモリエント剤、有機溶剤、液体噴射剤、スキンコンディショナー(例えば、湿潤剤、保湿物質、α-ヒドロキシ酸、保湿剤、ビタミンなど)、色素または着色剤、染料、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、柔軟剤、他のしわ防止剤、目の下の隈を減少または排除することができる薬剤、削剥剤、抗菌剤、抗真菌剤、殺菌剤、真皮または表皮における高分子合成を促進する薬剤および/またはその分解を防止または阻害できる薬剤(例えば、コラーゲン合成促進剤、エラスチン合成促進剤、ラミニン合成促進剤、コラーゲン分解阻害剤、エラスチン分解阻害剤、線維芽細胞増殖促進剤、ケラチノサイト増殖促進剤、ケラチノサイト分化促進剤、角質層の成分(セラミド、脂肪酸等)の合成および脂質合成の促進剤など)、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成促進剤、DNA修復剤、DNA保護剤、プロテオソーム活性促進剤、抗掻痒剤、敏感皮膚治療剤、再形成剤(reaffirming agents)、収斂剤、皮脂産生調節剤、リポリーシス促進剤、抗セルライト剤、鎮静剤、抗炎症剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、細胞ミトコンドリアに作用する薬剤、真皮-表皮接合部を強化する薬剤、防腐剤、香料、キレート剤、植物抽出物、エッセンシャルオイル、海洋性抽出物、生物発酵プロセス由来の薬剤、無機塩、細胞抽出物および/または、太陽光フィルター(紫外線AおよびBに対して活性な有機または無機光保護剤)などが挙げられる。
一実施形態において、追加の化粧料成分の少なくとも1つは、本発明のペプチドとして前記に開示されたものと同じ、類似の、相補的な、または異なる化粧料活性を発揮し得る化粧料活性成分または物質である。本発明の化粧料組成物は他の抗しわ剤または抗老化剤を含むことが意図される。他の抗しわ剤または抗老化剤としては例えば、コラーゲン、エラスチン、成長因子、ヒアルロン酸ブースター、保護機能促進剤、照明剤(illuminating agents)、コラーゲンI、III、IVおよび/またはVI、およびラミニンの発現および/または合成の促進剤;グリコサミノグルカンまたはヒアルロン酸の合成促進剤;エラスチンおよび/または他の弾性線維関連タンパク質の発現および/または合成の促進剤;コラーゲンおよび/または弾性線維の分解阻害剤;ミトコンドリア関連タンパク質(例えば、サーチュインおよびアコニターゼ)の発現および/または合成の促進剤;局所接着タンパク質の発現および/または合成の促進剤;ケラチノサイトおよび/または線維芽細胞の増殖および/または分化の促進剤;抗酸化剤;抗大気汚染剤および/またはフリーラジカル捕捉剤;抗糖化剤;解毒剤;経時的老化、環境老化、および炎症老化の抑制剤;およびメラニン産生抑制剤および/またはチロシナーゼ抑制剤および/または脂質合成および表皮の成分(ケラチン)、より具体的には角質層(ケラチン、セラミド、フィラグリン、ロリクリンおよびSPRR1B)の合成の促進剤が挙げられる。より好ましくは、追加の化粧料成分の少なくとも1つはアルギレリン(登録商標)(アセチルヘキサペプチド-8)、ロイファシル(登録商標)(ペンタペプチド-3)、イニルイン(登録商標)(アセチルヘキサペプチド-30)、Syn-Ake(登録商標)(トリペプチド-3)、またはそれらの組み合わせである。
さらに、本発明の化粧料組成物(または本発明のペプチド)は、当技術分野で通常使用される任意の形態として製剤化されていてよい。例えば、「洗い流さない」および「洗い流す」製剤を含む、溶液、懸濁液、エマルション、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、オイル、リニメント剤、美容液、ムース、軟膏、バーまたはペンシルが挙げられる。本発明の化粧料組成物はまた、ウエットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性(または非粘着性)パッチまたはフェイスマスクなどの様々な種類の固形部品に、当技術分野で公知の技術によって組み込むこともできる。または、特にコンシーラー、メイク用ファンデーション、ローション、もしくは化粧落としローションなど、様々な種類の化粧製品に組み込むこともできる。
また、本明細書に両方とも開示される、本発明の化粧料組成物または本発明のペプチドは、有効成分をよりよく浸透させるために、化粧料の持続的放出システムおよび/または担体と組み合わせることもできることが意図される。これらの例としては、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子およびナノ粒子などに加えて、スポンジ、ベシクル、ミセル、ミリスフィア、ミクロスフィア、ナノスフィア、リポスフィア、ミリカプセル、マイクロカプセル、およびナノカプセルなど、さらには、マイクロエマルション、ナノエマルションが挙げられる。
好ましい実施形態において、本発明の化粧料組成物はイオン導入によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用するために、適している、または適合される。
別の好ましい実施形態では皮下注射の手段によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用するために、適している、または適合される。
最も好ましい実施形態では、本発明の化粧料組成物が局所的に(より好ましくはクリーム状で)、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用するために、適している、または適合される。
別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は薬学的組成物である。
本発明の組成物は、1種類の本発明のペプチド、または異なる本発明のペプチドの組み合わせまたは混合物を含むことが意図される。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量の少なくとも1つの本発明のペプチドを含む。
本発明の薬学的組成物は本発明のペプチドの活性の結果として(すなわち、神経伝達物質の放出の阻害、および筋収縮の調節)、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害に関連する疾患の予防および/または治療、より正確にはSNARE複合体形成の調節不全、横紋筋収縮の調節不全、アセチルコリンおよび/またはCGRP放出の調節不全、および/またはCa2+チャネル活性化の調節不全、好ましくは老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症、多発性/側索硬化症、慢性偏頭痛、肥満細胞症、ジストニアまたは不安障害に関連する疾患の予防および/または治療を提供する。
本発明の薬学的組成物はまた、筋強直症、筋強直性ジストロフィー、先天性筋強直症、パーキンソン病、二次性パーキンソニズム、ハンチントン病、痙縮、遅発性ジスキネジア(TD)またはジストニア(眼瞼痙攣、マイジュ症候群、手の痙攣、四肢ジストニアまたは斜視)の治療を提供する。
薬学的組成物は、選択された経路に適した、当技術分野で公知の任意の形態であり得る。本発明の薬学的組成物は当技術分野で公知の任意の手段および任意の経路(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、または経口;後者の場合では、例えば、生理食塩水および/または生分解性物質、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよび/またはコレステロールのポリマー)による投与に適している、または適合されることが意図される。
本発明の薬学的組成物はまた、少なくとも1つの追加の薬学的成分を含むことが意図される。前記追加の薬学的成分は、少なくとも1つの賦形剤および/または少なくとも1つの追加の薬学的活性成分であり得る。前記少なくとも1つの追加の薬学的活性成分は、ベンゾジアゼピン、クロナゼパム、ロラゼパム、ジアゼパム、バクロフェン、抗コリン作用薬、トリヘキシフェニジル、ベンズトロピン、ドーパミン枯渇剤、テトラベンザジン、クロザピン、またはそれらの組み合わせであることが意図される。
前記の通り、第3の態様において、本発明は、医薬において使用するための、本発明に係るペプチドまたは組成物(すなわち、前記の通りである)に関する。
上述のおよび後述の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチド(従って、およびそれらを含む組成物)はアセチルコリンの放出および筋収縮を阻害可能であり、それゆえ、前記活性のために、それらは薬剤として有用である。
好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは組成物は、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害の予防および/または治療(好ましくは治療)における使用のためのものである。
筋収縮性障害は、好ましくは筋過収縮性(muscle hypercontractility)である。
好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害がSNARE複合体形成、横紋筋収縮、アセチルコリンおよび/またはCGRP放出、および/またはCa2+チャネル活性化の調節不全に関連する疾患である。
より好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害が老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症、多発性/側索硬化症、肥満細胞症、慢性片頭痛、ジストニアまたは不安障害から選択される。
従って、好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物が老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮硬化症、多発性/側索硬化症、肥満細胞症、慢性偏頭痛、ジストニアまたは不安障害の予防および/または治療に使用するためのものである。前記疾患に関して、老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症、多発性/側索硬化症、慢性片頭痛および不安障害はニューロンのエキソサイトーシス障害である。一方、ジストニアは筋収縮性障害である。
好ましくは、ジストニアが眼瞼痙攣、マイジュ症候群、手の痙攣、四肢ジストニアまたは斜視から選択される。
別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは組成物が筋強直症、筋強直性ジストロフィー、先天性筋強直症、パーキンソン病、二次性パーキンソニズム、ハンチントン病、痙縮または遅発性ジスキネジア(TD)の予防および/または治療に使用するためのものである。前記疾患は、筋収縮性障害である。
好ましくは、本発明のペプチドまたは組成物は、治療に有効な量にて使用される。
好ましい実施形態において、本発明のペプチドおよび組成物は、哺乳類、より好ましくはヒトに使用するためのものである。
好ましい実施形態において、組成物は、前記の通りの薬学的組成物である。
本発明のペプチドまたは組成物は、当技術分野で公知の任意の手段によって、または任意の経路を介して使用することができる。いずれの場合でも、ペプチドまたは組成物は選択された手段および/または経路(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または経口;後者の場合、例えば、生理食塩水および/または生分解性物質、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよび/またはコレステロールのポリマーの形態で)に適合される。
第4の態様において、本発明はニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害の予防および/または治療(好ましくは治療)のための方法に関し、これは、本発明のペプチドまたは組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む。
筋収縮性障害は、好ましくは筋過収縮性である。
好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害がSNARE複合体形成の調節不全、横紋筋収縮の調節不全、アセチルコリンおよび/またはCGRP放出の調節不全および/またはCa2+チャネル活性化の調節不全に関連する疾患である。
より好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害が老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症、多発性/側索硬化症、肥満細胞症、慢性片頭痛、ジストニアまたは不安障害から選択される。
前記疾患に関して、老人性認知症、アルツハイマー関連認知症、エイズ関連認知症、てんかん、筋萎縮性硬化症、多発性/側索硬化症、慢性片頭痛および不安障害はニューロンのエキソサイトーシス障害である。一方、ジストニアは筋収縮性障害である。
好ましくは、ジストニアが眼瞼痙攣、マイジュ症候群、手の痙攣、四肢ジストニアまたは斜視から選択される。
別の好ましい実施形態では、ニューロンのエキソサイトーシス障害および/または筋収縮性障害が筋強直症、筋強直性ジストロフィー、先天性筋強直症、パーキンソン病、二次性パーキンソニズム、ハンチントン病、痙縮または遅発性ジスキネジア(TD)から選択される筋収縮性障害である。
好ましくは、本発明のペプチドまたは組成物が治療に有効な量にて使用される。
好ましい実施形態において、本発明の治療方法を必要とする被験体は、哺乳類、より好ましくはヒトである。
好ましい実施形態において、組成物は、前記の通りの薬学的組成物である。
本発明のペプチドまたは組成物は、当技術分野で公知の任意の手段によって、または任意の経路を介して使用することができる。いずれにせよ、ペプチドまたは組成物は選択された手段および/または経路(例えば、皮下、筋肉内、静脈内または経口;後者の場合、例えば、生理食塩水および/または生分解性物質、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよび/またはコレステロールのポリマーの形態で)に適合される。
既に上述したように、第5の態様では、本発明は、被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する徴候を予防、減少および/または排除するための、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用に関する。
明らかなように、前記の徴候は美容的徴候である。
筋収縮性の調節障害は、筋過収縮性であることが望ましい。
好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋過収縮性の調節不全に関連する美容的徴候が皮膚の老化および/または表情による徴候である。
皮膚の老化の美容的徴候は、好ましくはしわである。
最も好ましい実施形態では、皮膚の老化および/または表情による徴候が顔のしわ(好ましくは表情による徴候)および/または顔の非対称性である。
好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物はイオン導入によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は皮下注射によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
最も好ましい実施形態では、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は局所的に(より好ましくはクリームの形態で)、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
好ましくは、被験体は哺乳類、さらにより好ましくはヒトである。
また、本発明の化粧料としての使用において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は、美容的に有効な量で使用される。より好ましくは、本発明のペプチドが0.0001%~0.05%(m/v)、より好ましくは0.0005%~0.005%(m/v)、さらにより好ましくは0.05%~0.001%(m/v)の濃度で使用される。
既に上述したように、本発明の化粧料組成物はまた、少なくとも1つの追加の化粧料成分を含むことが意図される。前記追加の化粧料成分は少なくとも1つの賦形剤および/または少なくとも1つの追加の化粧料活性成分であり得、これは前記で説明されたとおりであり得る。また、本発明のペプチドは、前記の通りの少なくとも1つの追加の化粧料成分と組み合わせて使用されることが意図される。
さらに、本発明のペプチドおよび本発明の化粧料組成物は、当技術分野で通常使用される任意の形態として製剤化されていてよい。例えば、「洗い流さない」および「洗い流す」製剤を含む、溶液、懸濁液、エマルション、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、オイル、リニメント剤、美容液、ムース、軟膏、バーまたはペンシルが挙げられる。本発明の化粧料組成物はまた、ウエットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性(または非粘着性)パッチまたはフェイスマスクなどの様々な種類の固形部品に、当技術分野で公知の技術によって組み込むこともできる。または、特にコンシーラー、メイク用ファンデーション、ローション、化粧落としローションなど、様々な種類の化粧製品に組み込むこともできる。
また、本明細書に両方とも開示される、本発明の化粧料組成物または本発明のペプチドは、有効成分をよりよく浸透させるために、化粧料の持続的放出システムおよび/または担体と組み合わせることもできることが意図される。これらの例としては、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子およびナノ粒子などに加えて、スポンジ、ベシクル、ミセル、ミリスフィア、ミクロスフィア、ナノスフィア、リポスフィア、ミリカプセル、マイクロカプセル、およびナノカプセルなど、さらには、マイクロエマルション、ナノエマルションが挙げられる。
第6の態様において、本発明は(すなわち、前記で説明されるように)被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する徴候を予防、減少および/または排除するための、本発明のペプチドまたは化粧料組成物の化粧料としての使用に関する。
前記の徴候は美容的徴候である。
筋収縮性の調節不全は、好ましくは筋過収縮性である。
好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋過収縮性の調節不全に関連する美容的徴候が皮膚の老化および/または表情による徴候である。
皮膚の老化の美容的徴候は、好ましくはしわである。
最も好ましい実施形態では、皮膚の老化および/または表情による徴候が顔のしわ(好ましくは表情のしわ)および/または顔の非対称性である。
好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物はイオン導入によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体の顔および/または首に適用される。
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は皮下注射の手段によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体の顔および/または首に適用される。
最も好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は局所的に(より好ましくはクリームの形態で)、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
好ましくは、被験体は哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
また、本発明の化粧料としての使用において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は、美容的に有効な量で使用される。より好ましくは、本発明のペプチドが0.0001%~0.05%(m/v)、より好ましくは0.0005%~0.005%(m/v)、さらにより好ましくは0.05%~0.001%(m/v)の濃度で使用される。
既に上述したように、本発明の化粧料組成物はまた、少なくとも1つの追加の化粧料成分を含むことが意図される。前記追加の化粧料成分は少なくとも1つの賦形剤および/または少なくとも1つの追加の化粧料活性成分であり得、これは前記で説明されたとおりであり得る。また、本発明のペプチドは、前記の通りの少なくとも1つの追加の化粧料成分と組み合わせて使用されることが意図される。
さらに、本発明のペプチドおよび本発明の化粧料組成物は、当技術分野で通常使用される任意の形態として製剤化されていてよい。例えば、「洗い流さない」および「洗い流す」製剤を含む、溶液、懸濁液、エマルション、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、オイル、リニメント剤、美容液、ムース、軟膏、バーまたはペンシルが挙げられる。本発明の化粧料組成物はまた、ウエットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性(または非粘着性)パッチまたはフェイスマスクなどの様々な種類の固形部品に、当技術分野で公知の技術によって組み込むこともできる。または、コンシーラー、メイク用ファンデーション、ローション、化粧落としローションなど、様々な種類の化粧製品に組み込むこともできる。
また、本明細書に開示される、本発明の化粧料組成物または本発明のペプチドは、有効成分をよりよく浸透させるために、化粧料の持続的放出システムおよび/または担体と組み合わせることもできることが意図される。これらの例としては、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子およびナノ粒子などに加えて、スポンジ、ベシクル、ミセル、ミリスフィア、ミクロスフィア、ナノスフィア、リポスフィア、ミリカプセル、マイクロカプセル、およびナノカプセルなど、さらには、マイクロエマルション、ナノエマルションが挙げられる。
前記のように、第7の態様において、本発明は、本発明に係るペプチドまたは化粧料組成物を使用することを含む、それらを必要とする被験体におけるニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋収縮性の調節不全に関連する徴候を予防および/または減少させる方法に関する。
前記の通り、徴候は美容的徴候である。
筋収縮性の調節不全は、好ましくは筋過収縮性である。
好ましくは、ニューロンのエキソサイトーシスおよび/または筋過収縮性の調節不全に関連する美容的徴候が皮膚の老化および/または表情による徴候である。
好ましくは、皮膚の老化の美容的徴候はしわである。
最も好ましい実施形態では、皮膚の老化および/または表情による徴候が顔のしわ(好ましくは表情のしわ)および/または顔の非対称性である。
好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物はイオン導入によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
別の好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は皮下注射の手段によって、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
最も好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は局所的に(より好ましくはクリームの形態で)、より好ましくは被験体の顔および/または身体に、より好ましくは被験体の顔、首、手および/または脇の下に、さらにより好ましくは被験体(好ましくはヒト)の顔および/または首に適用される。
好ましくは、被験体は哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
また、本発明の方法において、本発明のペプチドまたは化粧料組成物は、美容的に有効な量で使用される。より好ましくは、本発明のペプチドが0.0001%~0.05%(m/v)、より好ましくは0.0005%~0.005%(m/v)、さらにより好ましくは0.05%~0.001%(m/v)の濃度で使用される。
既に上述したように、本発明の化粧料組成物はまた、少なくとも1つの追加の化粧料成分を含むことが意図される。前記追加の化粧料成分は少なくとも1つの賦形剤および/または少なくとも1つの追加の化粧料活性成分であり得、これは前記で説明されたとおりであり得る。また、本発明のペプチドは、前記の通りの少なくとも1つの追加の化粧料成分と組み合わせて使用されることが意図される。
さらに、本発明のペプチドおよび本発明の化粧料組成物は、当技術分野で通常使用される任意の形態として製剤化されていてよい。例えば、「洗い流さない」および「洗い流す」製剤を含む、溶液、懸濁液、エマルション、ペースト、ゲル、クリーム、粉末、スプレー、ローション、オイル、リニメント剤、美容液、ムース、軟膏、バーまたはペンシルが挙げられる。本発明のペプチドおよび化粧料組成物はまた、ウエットティッシュ、ヒドロゲル、粘着性(または非粘着性)パッチまたはフェイスマスクなどの様々な種類の固形部品に、当技術分野で公知の技術によって組み込むこともできる。または、特にコンシーラー、メイク用ファンデーション、ローション、化粧落としローションなど、様々な種類の化粧製品に組み込むこともできる。
また、本明細書に両方とも開示される、本発明の化粧料組成物または本発明のペプチドは、有効成分をよりよく浸透させるために、化粧料の持続的放出システムおよび/または担体と組み合わせることもできることが意図される。これらの例としては、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子およびナノ粒子などに加えて、スポンジ、ベシクル、ミセル、ミリスフィア、ミクロスフィア、ナノスフィア、リポスフィア、ミリカプセル、マイクロカプセル、およびナノカプセルなど、さらには、マイクロエマルション、ナノエマルションが挙げられる。
より良い理解を可能にするために、例として提示される添付の図面および例示的かつ非限定的な例を参照して、以下に本発明を詳細に説明する。
図1は、分析されたペプチドで処理されたLAN細胞によるインビトロでのアセチルコリン放出の割合を、ポジティブコントロールと比較して示す(すなわち、ポジティブコントロール試料のアセチルコリン放出の割合を100%として、次いで残りの試料との比較を行う)。図1は、得られたペプチドの結果を示す:Ac-配列番号5-NH2(A)、Ac-配列番号6-NH2(B)、Ac-配列番号7-NH2(C)、Ac-配列番号8-NH2(D)、Ac-配列番号9-NH2(E)、Ac-配列番号10-NH2(F)、Ac-配列番号11-NH2(G)、Ac-配列番号13-NH2(H)およびAc-配列番号14-NH2(I)。Ac-配列番号8-NH2(D)を除くすべてのペプチドを、0.001mg/mL、0.005mg/mLおよび0.01mg/mLの濃度で試験し、ペプチドAc-配列番号8-NH2(D)は、0.005mg/mLおよび0.05mg/mLで試験した。図1(D)のx軸の縦列は左から右に、基底状態(無処理の細胞)、ポジティブコントロール(50mMのKClで処理した細胞)、100mMの毒(Ibanez C., Blanes-Mira C., Fernandez-Ballester G., Planells-Cases R., and Ferrer-Montiel A., (2004) Modulation of botulinum neurotoxin A catalytic domain stability by tyrosine phosphorylation, FEBS Letters 578, 121-127に記載の方法で生産したボツリヌス神経毒A軽鎖(BoNT A LC))で処理した細胞、0.1μMパルミトイル-アルギレリン(登録商標)(パルミトイル-アセチルヘキサペプチド-8(登録商標))で処理した細胞、ならびに0.005mg/mLおよび0.05mg/mLの対応するペプチドで処理した細胞に対応する。その側で、図1(A)~1(C)および1(E)~1(I)について、x軸の縦列は左から右に、基底状態(無処理の細胞)、ポジティブコントロール(50mMのKClで処理した細胞)、100nMの毒素(BoNT A LC)で処理した細胞、ならびに0.001mg/mL、0.005mg/mLおよび0.01mg/mLの対応するペプチドで処理した細胞に対応する。図1(A)~1(I)について、y軸は、(ポジティブコントロールに対する)アセチルコリン放出の割合を示す。
図2は、コントロール(処理なし)に対する複合体Munc18-シンタキシン-1の結合の割合を示し、コントロールは100%の結合を表す。図2において、ペプチドAc-配列番号8-NH2(A)およびAc-配列番号5-NH2(B)の、複合体Munc18-シンタキシン-1の形成を阻害する能力を観察することができる。図2(A)および2(B)の両方のx軸の縦列は左から右に、第1の縦列群(縦列の左群)がMunc18およびシンタキシン-1の比100nM:10nMである対応するペプチドのコントロールおよび濃度0.1、0.5および1mMに相当し、第2の縦列群(縦列の右群)がMunc18およびシンタキシン-1の比100nM:5nMである対応するペプチドのコントロールおよび濃度0.1、0.5および1mMに相当する。両方の図について、y軸は複合体の形成の割合を示し、これは、いかなる処理も行わない場合、100%のシグナルとなる。
図3は、本発明のペプチドによる処理によって誘導されたヒト骨格ミオサイトの遺伝子発現プロファイルの調整を示す。図3(A)はAc-配列番号8-NH2を用いた処理(濃度0.05および0.5mg/mL、6時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)、UTRN(ウトロフィン)、ACTA1(アクチンアルファ1)、TNNC1(トロポニンC1)、CALM3(カルモジュリン3)、CAV1(カベオリン1)、CACNB1(カルシウム電位ゲートチャネル補助サブユニットベータ1)、LRP4(LDL受容体関連タンパク質4)、およびMYH1(ミオシン重鎖1)。図3(A)において、示された結果のうち、遺伝子MHY1、LRP4、CACNB1およびUTRNに関するものは、0.05mg/mLでの処理に相当し、残りは0.5mg/mLでの処理に相当する。図3(B)はAc-配列番号8-NH2を用いた、濃度0.5mg/mL、24時間の処理によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:RAPSN(シナプスの受容体関連タンパク質)およびATP2A(ATPase Sarcoplasmic/Endoplasmic Reticulum Ca2+Transporting)。図3(C)はAc-配列番号5-NH2を用いた処理(濃度0.05mg/mLおよび24時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:UTRN(ウトロフィン)、ACTA1(アクチンα1)、TNNC1(トロポニンC1)、RAPSN(シナプスの受容体関連タンパク質)、SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)およびMYH1。図3(D)はAc-配列番号10-NH2を用いた処理(濃度0.1mg/mLおよび24時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:UTRN(ウトロフィン)、TNNC1(トロポニンC1)、SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)、CHRNA1(コリン作動性受容体ニコチンアルファ1サブユニット)およびCACNB1(カルシウム電位ゲートチャネル補助サブユニットベータ1)。前記図3(A)~(D)の4つの場合において、x軸は、基底状態に対する倍率変化を示す。負の倍率変化とは遺伝子発現の下方調節を指し、正の倍率変化とは上方調節を指す。
図4は、ペプチドAc-配列番号8-NH2で処理し、60mM KClで刺激した後、コントロール(60mM KClで刺激された非処理試料)を100%として規定した、ヒト骨格筋ミオサイトへのカルシウム流入が低下したことを示す。x軸の縦列は左から右に、コントロール、ならびに0.01、0.05および0.1mg/mLのペプチド濃度に相当する。y軸は、コントロールを100%のシグナルとして規定した、カルシウムシグナルの低下の割合を示す。
図5は、非処理の初代ヒト骨格筋細胞(図5(A))および0.05mg/mLのペプチドAc-配列番号8-NH2を用いて処理された、初代ヒト骨格筋細胞(図5(B))上の、ミオシン重鎖タンパク質の発現レベルの代表的な画像を示す。非処理の細胞に対して、0.05mg/mLのペプチドで処理された初代ヒト骨格筋細胞において、ミオシン重鎖タンパク質レベルの減少が観察され、これは図5(A)と比較して、図5Bにおいて染色またはシグナルの減少として見ることができる。
図6は、ペプチドAc-配列番号8-NH2で処理した後の初代ヒト骨格筋細胞において、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、ミオシン重鎖タンパク質レベルが低下したことを示す。X軸の縦列は左から右に、非処理細胞、ならびに0.05および0.5mg/mlのペプチド濃度に相当する。Y軸は基礎コントロールを100%シグナルとして規定した、(細胞蛍光の平均によって測定された、各処理群におけるミオシン重鎖タンパク質において観察された蛍光シグナルに基づく)ミオシン重鎖タンパク質のレベルを示す。
図7は、基準コントロールであるペプチドAc-配列番号8-NH2、アセチルヘキサペプチド-8、または阻害のポジティブコントロールであるα-ブンガロトキシンのいずれかで処理した後のヒト運動ニューロンおよびヒト骨格ミオサイト共培養物において観察された、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、収縮頻度の調整を示す。四角印の線は、非処理細胞(基礎コントロール)の収縮頻度を表す。×印の線は収縮阻害のポジティブコントロールである、α‐ブンガロトキシンによる収縮頻度を表す。菱形印の線は、基準である0.5mg/mlアセチルヘキサペプチド-8による収縮頻度を表す。丸印の線は0.1mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2による収縮頻度を表し、三角印の線は、0.05mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2による収縮頻度を表す。X軸は異なる活性物質による処理の長さに相当し、T0、T30min、T2h、T24hおよびリカバリーの各点は異なる時間の点を示す。T0は前記化合物による処理前の収縮状態に相当し;T30minは30分の処理に相当し;T2hは2時間の処理に相当し;T24時間は24hの処理に相当し;リカバリーは、全ての化合物を除去した後の24時間培養に相当する。Y軸は、基礎コントロール(非処理細胞)を100%のシグナルとして規定した、収縮頻度の割合を示す。
図8は、ペプチドAc-配列番号8-NH2または基準のアセチルヘキサペプチド-8で処理した後のヒト神経芽細胞腫細胞系において、非処理細胞である基礎コントロールを100%として規定した、エキソサイトーシスの低下を示す。X軸の縦軸は左から右に、非処理細胞、1mg/mlのアセチルヘキサペプチド-8で処理した細胞、および0.01mg/mlのペプチドAc-配塔番号8-NH2で処理した細胞に相当する。Y軸は、基礎コントロールを100%レベルとして規定した、エキソサイトーシスのレベルに相当する、蛍光シグナルの割合を示す。
図9は、ペプチドAc-配列番号8-NH2または基準のアセチルヘキサペプチド-8で処理した後のヒト神経芽細胞腫細胞系における、非処理細胞の基礎コントロールを100%として規定した、エキソサイトーシスの時間における遅延を示す。X軸の縦軸は左から右に、非処理細胞、1mg/mlのアセチルヘキサペプチド-8および0.01mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2に相当する。Y軸は、基礎コントロールを100%レベルとして規定した、エキソサイトーシスの遅延に対応する応答時間の割合を示す。
図10は、処理の開始後24時間(図10(A))および処理の開始後48時間(図10(B))に、Ac-配列番号8-NH2で処理した後の初代ヒト皮膚線維芽細胞による、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、I型コラーゲン産生を示す。X軸の縦軸は左から右に、それぞれ、基礎コントロール(非処理細胞)および0.01、0.05または0.1mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2で処理した細胞に相当する。Y軸は、コントロールを100%レベルとして規定した、I型コラーゲンタンパク質合成の増加の割合を示す。
〔実施例〕
省略形:
アミノ酸に使用される略語は、1983 IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature recommendations outlined in Eur. J. Biochem. (1984) 138:937に従う。
Ac、アセチル;Ala、アラニン;Arg、アルギニン;Asn、アスパラギン;Asp、アスパラギン酸;Boc、tert-ブチルオキシカルボニル;C末端、カルボキシ-末端;DCM、ジクロロメタン;DIEA、N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DIPCDI、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド;DMF、N,N-ジメチルホルムアミド;equiv、当量;ESI-MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析;Fmoc、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;Glu、グルタミン酸;hiPSC、ヒト誘導多能性幹細胞;His、ヒスチジン;HOBt、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;HRP、ホースラディッシュペルオキシダーゼ;Ile、イソロイシン;INCI、化粧料成分の国際命名法;MBHA、p-メチルベンズヒドリルアミン;Leu、ロイシン;Lys、リジン;Me、メチル;MeCN、アセトニトリル;MeOH、メタノール;Met、メチオニン;N-末端、アミノ-末端;Palm、パルミトイル;Pbf、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル;PFA、パラホルムアルデヒド;PMA、ホルボール12-ミリステート13-アセテート;Phe、フェニルアラニン;PMSF、フェニルメタンスルホニル;RT、室温;tBu、tert-ブチル;Thr、スレオニン;TFA、トリフルオロ酢酸;TIS、トリイソプロピルシラン;TMB、テトラメチルベンジジン;Trt、トリフェニルメチルまたはトリチル;Trp、トリプトファン;Tyr、チロシン。
実施例に含まれる化学合成手順に関して、すべての合成プロセスは、多孔質ポリエチレンディスクを取り付けたポリプロピレンシリンジまたは多孔質プレートを取り付けたPyrex(登録商標)リアクター中で実施したことに留意されたい。全ての試薬および溶媒は合成品質であり、いかなる追加の処理も行わずに使用した。溶媒および可溶性試薬は、吸引により除去した。Fmoc基は、ピペリジン-DMF(2:8、v/v)(最低1×1分,2×10分,5ml/g樹脂)により除去した(Lloyd Williams P. et al., Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, CRC, 1997, Boca Raton (Fla., USA))。脱保護、カップリング、および再度の脱保護の段階の間の洗浄は、10ml溶媒/g樹脂を毎回使用して、DMF(3×1分)およびDCM(3×1分)で行った。カップリング反応は、3ml溶媒/g樹脂で行った。カップリングの制御は、ニンヒドリン試験(Kaiser E. et al., Anal. Biochem., 1970, 34: 595598)を実施することによって行った。全ての合成反応および洗浄は、室温で行った。
実施例1.Mync18-シンタキシン-1の相互作用に干渉するペプチドのインシリコ測定
この実験における目的は、Munc18およびシンタキシン-1の相互作用領域に対して親和性および/または特異性を有し、したがって、前記2つのタンパク質間の相互作用および/または結合に対して競合、干渉および妨害可能であるインシリコペプチドを生成することであった。
Munc18-シンタキシン-1複合体の構造は既知であり、2.6Aの分解能(タンパク質データバンク参照、番号3C98)が使用可能であったので、この相互作用の三次元構造モデルを作製し、表1に含まれるMunc18の相互作用断片を選択した。
設計の第一段階として、前記標的断片に基づき、野生型ペプチド(100%結合ペプチドとして考えられる)をポリ-Ala(0%非結合ペプチドとして考えられる)に変異させ、全ての部位を独立として処理した。独立部位をそれぞれ20個の天然アミノ酸に変異させたが、他の部位はAlaとして残した。断片と複合体の残りの部位との間の理論上の結合エネルギーは、異なる部位における突然変異誘発との相互作用の向上を評価することで決定した。表を作成および結合エネルギーを正規化して、アミノ酸残基がペプチドの所望の位置にどれほど良好に適合するかを示す数値マトリクスを生成した。これらのマトリクスを用いて、Munc18-シンタキシン-1複合体形成を阻害すると推定されるペプチドを、順位付けしたリストを提案し、構築した。
実験の第2段階ではペプチドのリストを複合体上でモデル化したが、同時にペプチド中のすべての部位を変異させた。この方法では、ペプチド中の隣接する部位間の相互作用または不適合性を確実に考慮した。ペプチド-複合体の相互作用の結合エネルギーを再び評価し、当該エネルギーに従ってペプチドを再び順位付けした。次いで、100%より高いかまたは0%より低い結合エネルギーを、100%バインダー(野生型)および0%バインダー(ポリAlaペプチド)と比較した。最良のペプチドを、さらなる研究および検証のために選択し、提案した(表2参照)。
実施例2.ペプチドの合成および調製
Fmoc-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-Rink-MBHA-樹脂の取得。式中、AA1がL-Hisであり、AA2がL-IleまたはL-Alaであり、AA3がL-LeuまたはL-Metであり、AA4がL-AspまたはL-Argであり、AA5がL-Met、L-TrpまたはL-Pheであり、およびAA6がL-Trpである。
重量を正規化した。Fmoc基を除去するために、0.52mmol/gの官能基を有する4.8g(2.5mmol)のFmoc-Rink-MBHA樹脂を、当技術分野で公知の開示された一般的なプロトコルに従ってピペリジン-DMFで処理した。DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3当量)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3当量)の存在下で、DMFを溶媒として用い、1時間かけて、3.94gのFmoc-L-Trp(Boc)-OH(7.5mmol;3当量)を、脱保護された樹脂上に組み込んだ。
次いで、当技術分野で公知の一般的な方法に開示された通りに樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返し、次のアミノ酸のカップリングを行った。以前に開示されたプロトコルに従って、2.90gのFmoc-Phe-OH、2.78gのFmoc-L-Met-OHまたは3.94gのFmoc-L-Trp(Boc)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OHまたは3.08gのFmoc-L-Asp(tBu)-OH(7.5mmol;3当量);続いて2.65gのFmoc-L-Leu-OHまたは2.78gのFmoc-L-Met-OH(7.5mmol;3当量);続いて2.33gのFmoc-L-Ala-OHまたは2.65gのFmoc-L-Ile-OH(7.5mmol;3当量)、および続いて4.64gのFmoc-L-His(Trt)-OH(7.5mmol;3当量)を順番にカップリングさせた。各カップリングは、1.01gのHOBt(7.5mmol;3当量)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3当量)の存在下で行った。既に上述した通り、各アミノ酸付加工程の間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(それぞれ3分間、5回)、真空下で乾燥させた。
Fmoc-AA1-AA2-AA3-AA4-Rink-MBHA-樹脂の取得。式中、AA1がL-Arg、AA2がL-ArgまたはL-Met、AA3がL-ArgおよびAA4がL-Pheである。
重量を正規化した。0.52mmol/gの官能基を有する4.8g(2.5mmol)のFmoc-Rink-MBHA樹脂を、Fmoc基を除去するために、当技術分野で公知の開示された一般的なプロトコルに従ってピペリジン-DMFで処理した。DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3当量)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3当量)の存在下で、DMFを溶媒として用い、1時間かけて、2.90gのFmoc-L-Phe-OH(7.5mmol;3当量)を、脱保護された樹脂上に組み込んだ。
次いで、当技術分野で公知の一般的な方法に開示された通りに樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返し、次のアミノ酸のカップリングを行った。以前に開示されたプロトコルに従って、4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OHまたは2.78gのFmoc-L-Met-OH(7.5mmol;3当量)、および続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OH(7.5mmol;3当量)を順番にカップリングした。各カップリングは、1.01gのHOBt(7.5mmol;3当量)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3当量)の存在下で行った。既に上述した通り、各アミノ酸付加工程の間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(それぞれ3分間、5回)、真空下で乾燥させた。
Fmoc-AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-AA6-AA7-AA8-Rink-MBHA-樹脂の取得。式中、AA1がL-Glu;AA2がL-Arg;AA3がL-Ile;AA4がL-Asn;AA5がL-Lys;AA6がL-ArgまたはL-Met;AA7がL-ArgおよびAA8がL-TrpまたはL-Tyrである。
重量を正規化した。Fmoc基を除去するために、0.52mmol/gの官能基を有する4.8g(2.5mmol)のFmoc-Rink-MBHA樹脂を、当技術分野で公知の開示された一般的なプロトコルに従ってピペリジン-DMFで処理した。DIPCDI(1.17mL;7.5mmol;3当量)およびHOBt(1.01g;7.5mmol;3当量)の存在下で、DMFを溶媒として用い、1時間かけて、3.94gのFmoc-L-Trp(Boc)-OHまたは3.44gのFmoc-L-Tyr(tBu)-OH(7.5mmol;3当量)を、脱保護された樹脂上に組み込んだ。
次いで、一般的な方法に開示された通りに樹脂を洗浄し、Fmoc基の脱保護処理を繰り返し、次のアミノ酸のカップリングを行った。以前に開示されたプロトコルに従って、4.86gのFmoc-Arg(Pbf)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OHまたは2.78gのFmoc-L-Met-OH(7.5mmol;3当量);続いて3.51gのFmoc-L-Lys(Boc)-OH(7.5mmol;3当量);続いて4.45gのFmoc-L-Asn(Trt)-OH(7.5mmol;3当量);続いて2.65gのFmoc-L-Ile-OH;続いて4.86gのFmoc-L-Arg(Pbf)-OH、および続いて3.19gのFmoc-L-Glu(OtBu)-OH(7.5mmol;3当量)のカップリングを順番に行った。各カップリングは、1.01gのHOBt(7.5mmol;3当量)および1.17mLのDIPCDI(7.5mmol;3当量)の存在下で行った。既に上述したように、各アミノ酸付加工程の間に、Fmoc基の脱保護処理を行った。
合成後、ペプチド樹脂をDCMで洗浄し(それぞれ3分間、5回)、真空下で乾燥させた。
必要なアミノ酸の選択とともに前記の合成手順を使用して、以下の配列を合成した:
His-Ile-Leu-Asp-Met-Trp(配列番号5);
His-Ile-Met-Asp-Phe-Trp(配列番号6);
His-Ile-Leu-Asp-Trp-Trp(配列番号7);
His-Ala-Leu-Arg-Phe-Trp(配列番号8);
His-Ile-Met-Asp-Trp-Trp(配列番号9);
Arg-Arg-Arg-Phe(配列番号10);
Arg-Met-Arg-Phe(配列番号11);
Glu-Arg-Ile-Asn-Lys-Arg-Arg-Trp(配列番号13);および、
Glu-Arg-Ile-Asn-Lys-Met-Arg-Tyr(配列番号14)。
実施例3.実施例2に従って合成したペプチドのFmocN末端保護基の除去。
ペプチジル樹脂のN末端Fmoc基を、DMF中の20%ピペリジン(1×1分+2×10分)で脱保護した(Lloyd Williams P. et al. (1997) “Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins” CRC, Boca Raton (Fla., USA))。ペプチジル樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)で洗浄し、次いで真空下で乾燥させた。
実施例4.実施例3に従って得られたペプチジル樹脂上にR1アセチル基を導入するプロセス。
実施例2に従って得られたペプチジル樹脂1mmol(1当量)を、溶媒として5mLのDMFを使用して、25当量のDIEAの存在下、25当量の無水酢酸で処理した。前記樹脂を30分間反応させた後、ペプチジル樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)で洗浄し、次いで真空下で乾燥させた。
実施例5.実施例3および4に従って得られたペプチジル樹脂のポリマー支持体からの切断プロセス。
重量を正規化した。実施例2、3または4のいずれかで得られた乾燥ペプチジル樹脂200mgを、撹拌しながら、5mLのTFA/TIS/H2O(90:5:5)を用いて室温で2時間処理した。濾液を集め、50mL(8~10倍)の冷却ジエチルエーテルを用いて沈殿させた。エーテル溶液を減圧および室温で蒸発乾固乾燥させ、沈殿物をH2O中の50%MeCNに再溶解し、凍結乾燥した。
実施例6.実施例5において合成および調製したペプチドの特性の決定。
実施例5に従って得られたペプチドのHPLCを、逆相カラム(150×4.6mm、XBridge Peptide BEH C18、3.5μm、Waters、USA)を用いて、H2O(+0.045%TFA)中のMeCN(+0.036%TFA)勾配中、流量1.25mL/分で、島津機器(京都、日本)を用いて行い、220nmで検出を行った。全てのペプチドは、80%を超える純度を示した。移動相として流速0.2mL/分のMeOHを使用し、Water ZQ 4000検出器中のESI-MSによって、得られたペプチドの同一性を確認した。得られた結果は、表3に含まれるペプチドが効果的に合成されたことを示した。
実施例7.アセチルコリン放出の測定。
前記表3に含まれるペプチドは、実施例2~6に従って合成した。
前記ペプチドの、アセチルコリン放出を調節する能力についてインビトロで試験した。そのために、LAN細胞を48ウェル培養プレート上に播種し、制御された条件下(37℃、5%CO2)で適切なコンフルエンス(confluence)にまで到達させた後、N-2補充物、GlutaMAXTM、コリンクロライドおよび白血病抑制因子(GIBCO、Life technologies、MA、USA)を補ったNurobasal(登録商標)A培地を培養培地とすることで、分化を誘導した。細胞がその分化形態を獲得した時点で、細胞を、以下の濃度の前記ペプチドによって1時間処理した:Ac-配列番号8-NH2を除くすべてのペプチドは0.001mg/mL、0.005mg/mLおよび0.01mg/mL;ならびにペプチドAc-配列番号8-NH2は0.005mg/mLおよび0.05mg/mL。次いで、細胞をHEPESで洗浄した後、50mM KCl溶液によって外部から、脱分極によるアセチルコリン放出の刺激を行った。非刺激細胞は、非脱分極4mM KCl溶液と共に培養した。対応する脱分極または非脱分極KCl溶液と共に30分間培養した後、細胞上清を回収し、Amplex Red Acetylcholine Assay Kit(ThermoFisher Scientific、MA、USA)を用いてアセチルコリンレベルを測定した。細胞ペレットを用いて、BCAタンパク質試験アッセイ(Pierce BCA Protein Assay kit、ThermoFisher Scientific、MA、USA)(データ正規化目的のため)によってタンパク質含量を決定した。
アセチルコリン放出阻害の割合を、ポジティブコントロール(KCl細胞で刺激された非処理細胞)が100%の放出をしたと考え、計算した。
得られた結果を表4にまとめて示す:
この実験の結果は、図1(A)~(I)にも要約されている。前記図から直接導き出すことができる通り、表4においてアセチルコリンの調整において活性を有するとマークされたペプチドは、試験した全ての濃度においてアセチルコリンの放出の有意な減少を示す。一方では、表4において活性を有さないとマークされたペプチドは最低濃度において中~低度の阻害を示し、最高濃度において完全に阻害の喪失を示した。前記ペプチドは、試験した濃度のいずれにおいてもアセチルコリンの放出の統計的な減少を示さなかった。低濃度におけるわずかな阻害が観察されたのは、このタイプの細胞の技術的な問題、および試験固有の変動性によるものだと予想されたが、最高濃度において活性が完全に喪失したことは、これらのペプチド(Ac-配列番号13-NH2およびAc-配列番号14-NH2)がアセチルコリンの放出を阻害できなかったことを明らかに示している。
先行技術(Blanes-Mira C., Clemente J., Jodas G., et.al. (2002), A synthetic hexapeptide (Argireline) with antiwrinkle activity, International Journal of Cosmetic Science, 24, 303-310)から分かるように、透過性クロム親和性細胞からのエキソサイトーシス阻害は、BoNT Aを使用した場合には50%、またはArgireline(登録商標)を使用した場合には40%の最高値に達した。従って、この実験で得られた結果は、LAN細胞上でアセチルコリン放出の阻害を直接試験したときのように本発明のペプチドの高い活性を証明し、透過させていなくても、20~30%の阻害値が得られた。
実施例8:結合アッセイ
以下のペプチドを、実施例1のインシリコ研究および、実施例2~6に従って合成した:
Ac-配列番号5-NH2
Ac-配列番号8-NH2
SNARE複合体タンパク質であるシンタキシン‐1と、Munc18とのタンパク質‐タンパク質相互作用を阻害するペプチドの能力を、ELISA-ベースインビトロMunc18/シンタキシン‐1結合アッセイによって機能的に評価した。簡潔に述べると、0.1、0.5および1mMの前記ペプチドを、当該ペプチドの標的タンパク質である10および5nMのシンタキシン-1(GSTタグ化)と共に、バッファ(20mM Hepes、150mM NaCl、2mM MgCl2、2mM DTT、0.5% Triton-X100および0.5%脱脂乳)中で、室温で3時間、前培養した。一方、100nMのHis標識Munc18をニッケル被覆96ウェルプレートに結合させ、室温で1.5時間培養した。続いて、非結合タンパク質を洗浄除去した後、洗浄バッファ(PBS+0.02% Triton-X100)中の脱脂乳でウェルをさらに30分間ブロックした。次いで、ペプチドと前培養した10および5nMのGSTタグ付きシンタキシン-1をプレートに添加し、室温で2時間培養した。ウェルを洗浄バッファで3回洗浄した後、一次抗体(GSTタグポリクローナル抗体-Thermofisher Scientific、Massachusetts、USA)と共に45分間培養した。最後に、再び洗浄した後、HRP共役二次抗体(Anti-Rabbit-IgG-HRP-Sigma、Missouri、USA)を添加し、室温で培養した。TMB基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を用いてシグナルを発現させた。停止試薬を添加して、反応を停止させた。シンタキシン-1タンパク質のMunc18タンパク質への結合量を、450nmにおける吸光度の測定によって分析した。
この実験で得られた結果は図2に要約されている。図2は試験した両方のペプチドが(Ac-配列番号5-NH2がさらに驚くほど高度であった)Munc18とシンタキシン-1との間のタンパク質-タンパク質相互作用を有意にブロック可能であり、用量応答様式をさらに示すことを証明する。阻害の最大値は、Ac-配列番号8-NH2およびAc-配列番号5-NH2ペプチドについてそれぞれ37%および67%に達した。これらの結果に基づいて、本発明のペプチドは、調節されたエキソサイトーシス、およびその結果として生じる神経伝達物質放出に必要な、タンパク質-タンパク質相互作用を妨害可能であることが分かる。
実施例9.ヒト骨格筋ミオサイトにおける遺伝子発現調節。
以下のペプチドを、実施例1のインシリコ研究、および実施例2~6に従って合成した:
Ac-配列番号5-NH2
Ac-配列番号8-NH2
Ac-配列番号10-NH2
ヒト骨格筋ミオサイトにおける筋収縮および弛緩に関連するいくつかの遺伝子の発現を調節する能力を評価するために、前記ペプチドを試験した(Lodish H, Berk A, Zipursky SL, et al. (2000), Molecular Cell Biology, 4th edition; Section 18.3 Myosin: The Actin Motor Protein, Nueva York, W. H. Freeman; Kuo, IY, & Ehrlich, BE (2015), Signaling in Muscle Contraction, Cold Spring Harbor Perspectives in Biology, 7(2); RAPSN receptor associated protein of the synapse [ Homo sapiens (human) ], Gene ID in NCBI 5913; Blake DJ, Tinsley JM, Davies KE (1996), Utrophin: a structural and functional comparison to dystrophin, Brain Pathol., 6(1):37-47; Barik A, Lu Y, Sathyamurthy A, et.al. (2014), LRP4 Is Critical for Neuromuscular Junction Maintenance, The Journal of Neuroscience, 34(42), 13892-13905; Kim N, Stiegler AL, Cameron TO, Hallock PT, et.al. (2008), Lrp4 is a Receptor for Agrin and Forms a Complex with MuSK, Cell, 135(2), 334-342; Mahavadi S, Nalli A, Kumar D, et.al. (2014), Increased expression of caveolin-1 is associated with upregulation of the RhoA/Rho kinase pathway and smooth muscle contraction in diabetes (1110.11), The FASEB Journal, 28:1_supplement)。そのために、収縮スマートデータ遺伝子パネルを設計した。前記収縮スマートデータ遺伝子パネルは、表5に含まれる筋収縮および弛緩に関連する遺伝子の発現を分析する。
簡潔に述べると、ヒト骨格筋肉芽細胞を、12ウェル培養プレート中に1×105細胞/ウェルの密度で、2回播種し、そして48~72時間、標準的な培養条件下(37℃、95%湿度、5%CO2)で培養した。次にミオサイトへの筋芽細胞の分化を特異的分化培地(SKM‐D培地+1%抗生物質‐抗真菌薬)で誘導し、さらに7日間モニターした。分化した細胞を、0.05mg/mLのペプチドAc-配列番号5-NH2;または0.1mg/mLのペプチドAc-配列番号10-NH2で24時間;または0.05および0.5mg/mLのペプチドAc-配列番号8-NH2で6時間;または0.5mg/mLのペプチドAc-配列番号8-NH2で24時間処理した。非処理細胞を基礎コントロールとして使用した。次いで、細胞を、製造業者の説明書に従って、市販のRNA精製キット(RNeasy mini kit、Qiagen、Netherlands)を用いてRNAを抽出するために溶解した。次いで、RNAをナノドロップによって定量し、濃度を調整し、市販のキット(High-Capacity cDNA Reverse Transcription kit、Thermofisher Scientific、USA)を用いてcDNAへの逆転写を行うために処理した。得られたcDNAを用いて、taqman技術および表4に挙げた筋収縮性に関連する特定の遺伝子を標的とするように設計されたプローブのパネルを用いた、RTqPCR(Real Time Quantitative Polymerase Chain Reaction)を実施した。
この実験の結果を図3(A)~(D)に要約して示す。前記図において、ヒトミオサイトをペプチドAc-配列番号5-NH2で処理した場合、UTRN、ACTA1、TNNC1、RAPSN、SCN3AおよびMYH1の下方調節が観察されたことが分かる。ペプチドAc-配列番号8-NH2でミオサイトを処理すると、6時間の処理でSCN3A、UTRN、ACTA1、TNNC1、CALM3、CAV1、CACNB1、LRP4およびMYH1が下方調節され、24時間処理でRAPSNが下方調節され、ATP2Aが上方調節された。最後に、ペプチドAc-配列番号10-NH2によるミオサイトの処理は、UTRN、TNNC1、SCN3A、CHRNA1およびCACNB1の下方調節をもたらした。
前記遺伝子の下方調節は様々な経路で正常な筋収縮機能に影響を及ぼす可能性がある:筋細胞表面のアセチルコリンの結合に必要なRAPSN、CHRNA1、UTRNおよびLRP4は、神経伝達物質が誘導する膜脱分極および細胞骨格の安定性に影響を及ぼす可能性がある;電位依存性チャネルとしてSCN3AおよびCACNB1が、膜電位の興奮伝達に影響を及ぼす可能性がある;Ca2+輸送に関与するSLNは細胞内カルシウム蓄積に影響を及ぼす可能性がある;MYH1、TNNC1およびACTA1は細胞骨格の完全性、および収縮を作動させるパワーストライク(power strike)に影響を及ぼす可能性がある。したがって、この実施例で得られた、図3に示す結果は本発明のペプチドが筋肉の収縮-弛緩を調節する能力と、筋肉の弛緩の増加に寄与することを示す。
実施例10.カルシウム動員アッセイ
ペプチドAc-配列番号8-NH2を、実施例2~6に従って合成した。
ヒト骨格筋細胞上のカルシウム動員を減少させる、前記ペプチドAc-配列番号8-NH2の能力を、Fluo-4 NWカルシウムアッセイキット(ThermoFisher Scientific、MA USA)を用いてインビトロで評価した。簡単に述べると、ヒト骨格筋芽細胞を、1×104細胞/ウェルの密度で、ブラック96ウェルプレート、透明な底部に5回播種し、そして48~72時間、標準的な培養条件下(37℃、95%湿度、5%CO2)で培養した。次いで、ミオサイトへの筋芽細胞の分化を特異的分化培地(SKM-D培地+1% a/a)で誘導し、さらに7日間モニターした。分化した細胞を、細胞毒性を有さない濃度のペプチドAc-配列番号8-NH2(0.01mg/mL、0.05mg/mLおよび0.1mg/mL)でさらに48時間処理した。
培養が終了した時点で、細胞培養培地を100μlの色素ローディング溶液と入れ換え、プレートを培養器上に30分間保持した。次に、色素溶液をアッセイバッファと入れ替え、FLUOstar Omega測定器(BMG Labtech、Germany)を用いてカルシウム測定を行った。動力学的測定を適切に行うために、基準線のシグナルを決定する目的で、10秒間の刺激前の段階を設定した後、60mM KClの添加によるカルシウム流入を誘導した。刺激後の段階を90秒に設定し、494/516nm(励起/発光)で0.1秒毎に読み取った。
データを分析するために、以下の工程を行った:1)各条件における平均動力学曲線の計算;2)KClによる刺激後の各曲線における最大蛍光シグナルの決定;3)基準線に対する倍率変化による増加の計算;4)各条件(各ペプチド濃度)において得られた結果対コントロール(非処理細胞)において得られた結果の正規化。
この実験で得られた結果は図4に要約されており、(Ac-配列番号8-NH2によって例示されるように)カルシウム流入を用量依存様式で減少させる本発明のペプチドの能力を反映している(0.01mg/mL、0.05mg/mLおよび0.1mg/mLでそれぞれ-6%、-20%および-30%)。このカルシウム流入の減少は、筋弛緩を促進する細胞収縮性に影響を及ぼす。
前記の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチドは複合体Munc18-シンタキシン-1の形成を効果的に干渉または阻害し、したがって、ニューロンのエキソサイトーシスの調節(阻害)を可能にする。さらに、前記ペプチドは、筋細胞の弛緩(筋弛緩)を誘導またはそれに寄与することで、筋細胞に直接的な効果を提供する。したがって、本発明のペプチドは、当技術分野に存在する前記の問題を解決する。
実施例11.ミオシン重鎖タンパク質の減少
ヒト骨格筋細胞におけるミオシン重鎖タンパク質の発現を低下させる前記ペプチドAc-配列番号8-NH2の能力を、このタンパク質に対する特異的抗体(Biotechne、USA)、続いて二次蛍光抗体(Thermofisher、USA)を用いた免疫蛍光によって、インビトロで評価した。簡潔に述べると、ヒト骨格筋芽細胞を、3×104細胞/cm2の濃度でSKM-M培地(Tebu-Bio、France)中のカバーガラス上に播種し、標準的な培養条件下(37℃、95%湿度、5% CO2)で一晩培養した。次にミオサイトへの筋芽細胞の分化を特異的分化培地(Skeletal Muscle Cell Differentiation Medium、SKM-D培地)で誘導し、さらに7日間モニターした。分化した細胞を、細胞毒性を有さない濃度のペプチドAc-配列番号8-NH2(0.05mg/mLおよび0.5mg/mL)でさらに48時間処理した。
培養が終了した時点で、細胞を4%PFAで固定し、0.1%(v/v)Triton(Sigma、USA)を用いて透過処理した。次いで、ミオシンを、0.5mg/mlのミオシン重鎖抗体で、2時間室温で染色した。適切に洗浄した後、アクチンタンパク質を50μg/mlファロイジン(赤色)(Sigma、USA)で1時間標識し、洗浄後、細胞を4μg/mlの二次抗体ヤギ抗マウスigGで1時間染色した。最後に、核を3.5μg/mlのHoeschtマーカーで10分間染色した(Sigma、USA)。
顕微鏡画像は、5×および10×の対物レンズを用いて取得した。各状態について3つの複製を使用し、各カバーガラスにおける3~4箇所の視野の画像を、同じ設定を使用して取得した。
画像は、Image Jソフトウェアを用いて分析した。簡単に閾値を調節してミオシンを選択し、平均蛍光を測定した。陽性細胞の数は、DAPI染色を用いて計数した。ミオシンの平均蛍光強度をミオシン陽性細胞数で除した。最後に、全てのデータを以下の通り正規化して、非処理細胞と比較したミオシンの%を得た:%対コントロール=(処理ウェル中の細胞あたりの蛍光/非処理ウェル中の細胞あたりの蛍光)×100。
この実験で得られた結果は図5(A)、5(B)および6に要約されており、(Ac-配列番号8-NH2によって例示されるように)ミオシン重鎖タンパク質レベルを用量依存様式で減少させる本発明のペプチドの能力を反映している(図6における0.05mg/mLおよび0.5mg/mLで、それぞれ-26%および-38%)。このミオシン重鎖タンパク質レベルの低下は、筋弛緩を促進する細胞収縮性に影響を及ぼす。
前記の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチドは、筋細胞の弛緩(筋弛緩)を誘導またはそれに寄与することで、筋細胞に直接的な効果を提供する。
実施例12.収縮頻度
収縮頻度を調節する前記ペプチドAc-配列番号8-NH2の能力を、ヒト筋細胞およびhiPSC共培養由来の運動ニューロンを用いて、60秒間、処理の前と後(処理後は、それぞれ規定された時点)におけるInCell 2200自動顕微鏡で記録された局在化収縮筋線維のライブイメージングビデオによってインビトロで評価した。
ヒト筋細胞を、T75cm2フラスコ中で1×106細胞の密度で培養し、次いで、分化させるために96ウェルプレートに移した。hiPSC由来の運動ニューロンを、分化培地中の筋細胞を含む96ウェルプレート上に移した。10日間共培養を続け、筋線維を備えたニューロン接合部を作製した。5日以内に自然収縮が観察された。
次いで、共培養物を、コントロール培地(基礎)、1μMのα-ブンガロトキシン、参考基準として0.5mg/mLのアセチルヘキサペプチド-8、および0.05または0.1mg/mLのペプチドAc-配列番号8-NH2で処理した。共培養の動画を、処理前に60秒間記録し、培養の30分後、再び動画を60秒間記録した。培養プレートを化合物と共に、再び1時間30分培養し(培養は計2時間)、共培養の動画を再び60秒間記録した。培養プレートを化合物と共に合計24時間再び培養し、培養の終わりに、動画を再び60秒間記録した。最後に、化合物を洗い流し、当該化合物の洗い流しから24時間後の最後の記録を行って、筋収縮の最終的な回復(リカバリー)を評価した。
収縮の頻度を、各培養の前後で計算した。各培養条件について、6ウェルを分析した。
この実験で得られた結果は、図7に要約されており、(Ac-配列番号8-NH2によって例示されるように)わずか30分後から筋収縮頻度の重要な用量依存的な低下を誘導し(基礎非処理細胞に対して、0.05および0.1mg/mLで、筋収縮頻度がそれぞれ25%および18%)、24時間の培養期間に、筋収縮頻度の低下を維持する(0.05および0.1mg/mLで、それぞれ23%および10%)本発明のペプチドの能力を反映している。この化合物の洗い流しは、0.05mg/mL濃度でより良好な筋収縮頻度の部分的回復を可能にする(0.05および0.1mg/mLでそれぞれ65%および35%)。
0.5mg/mLで使用した基準(アセチルヘキサペプチド‐8)は30分後に筋収縮頻度の部分的な阻害(筋収縮頻度18%)を誘導したが、この効果はより長い培養で弱まり(24時間後で45%)、洗い流し後、頻度は完全に回復した(100%)。
前記の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチドは、筋線維の弛緩(筋弛緩)に寄与し、筋線維を備えたニューロン接合部を形成している間、筋収縮に対する直接的な効果を効果的に提供する。
実施例13.エキソサイトーシスレベルと遅延
神経芽細胞腫細胞株由来の神経伝達物質を含む小胞のエキソサイトーシスを調節する、前記ペプチドAc-配列番号8-NH2の能力を、20x対物レンズおよびキセノンランプを備えたZeiss axiovert 200倒立落射蛍光顕微鏡を用いた蛍光イメージングによって、SH-SY5Y細胞を用いてインビトロで評価した。
SH-SY5Y細胞(Sigma、USA)を、T25フラスコ中の補充培地(DMEM/F12、Gibco、USA)にて培養した。コンフルエンスが90%を超えたところで、細胞を1mlの0.5%(v/v)トリプシン-EDTAでトリプシン処理した。次に、5mLの前記補充培地を添加し、細胞濃度を測定した。細胞を、補充培地(Gibco、USA)中、24ウェルプレート中のポリリジン被覆12mm-処理カバーガラス上に15×104細胞/ウェル播種し、制御された条件(37℃、5%CO2)下で培養した。細胞播種から24時間後、細胞を製造業者の説明書に従って、リポフェクタミンTM3000(Invitrogen、USA)を使用して、エキソサイトーシスレポーターによって形質転換した。レポーター構築物は、管腔内特異的タンパク質およびpH感受性蛍光タンパク質から構成される融合タンパク質を含有した。
エキソサイトーシスをモニターするために、タンパク質発現の48時間後、細胞を0.01mg/mLのAc-配列番号8-NH2ペプチドまたは1mg/mLの規準のアセチルヘキサペプチド-8と共に37℃および5%CO2で1時間培養した。非処理細胞を基礎コントロールとして使用した。次に、細胞を100nM PMAで15分間前処理し、PMA(100nM)と共に12.5μMイオノマイシンで5分間刺激した(刺激は計20分間)。蛍光イメージングを刺激プロトコルの最後の10分間において行った。エキソサイトーシスレポーターの蛍光シグナルを、483~512nm励起フィルターおよび525~530nm発光フィルターを用いてモニターした。画像はAquacosmosソフトウェアを用いて5秒毎に10分間ORCA-ER CCDカメラで撮影した。
n=16のカバーガラスを用いたN=4の独立した実験で非処理細胞のアッセイを行い(483細胞を測定)、n=10のカバーガラスを用いたN=3の独立した実験でアセチルヘキサペプチド-8処理細胞のアッセイを行い(328細胞を測定)、およびn=8のカバーガラスを用いたN=3の独立した実験でAc-配列番号8-NH2処理細胞のアッセイを行った(240細胞を測定)。細胞を選択して、蛍光強度および時間経過を個々にモニターした。イオノマイシン添加によって誘発された蛍光ピークを使用して、GraphPadソフトウェアを使用して曲線下面積(AUC)を計算することによってエキソサイトーシスを定量した。2つのパラメータを定義し、分析した:
エキソサイトーシスレベル:個々の細胞について、AUC分析から総ピーク面積を得て、イオノマイシンを注射する前の3サイクルにおける蛍光強度として定義される基準線によって正規化した。
エキソサイトーシス遅延:個々の細胞について、応答時間(分)を、イオノマイシン注入(Y)とピークの開始(firstX)との間の時間枠としてAUC分析から得た。
蛍光値はさらに、各実験における、非処理細胞に対する割合変化として正規化した:(処理細胞のエキソサイトーシスレベル/非処理細胞のエキソサイトーシスレベル)×100および(処理細胞の応答時間/非処理細胞の応答時間)×100。
エキソサイトーシスモニターパラメータの分析:データは、非処理細胞に対する、エキソサイトーシスレベルおよびエキソサイトーシス遅延について、正規化された割合を表す。データは、平均±SEMとして表される;データは、非処理細胞についてはn=16の複製、N=4の独立した実験(483細胞を測定)から得られ;アセチル-ヘキサペプチド-8については、n=10の複製、N=3の独立した実験(328細胞を測定)から得られ;Ac-配列番号8-NH2についてはn=8の複製、N=3の独立した実験(240細胞を測定)から得られた。
この実験で得られた結果は図8および9に要約されており、(Ac-配列番号8-NH2によって例示されるように)特定のアセチルコリン受容体を介して筋収縮を活性化するニューロンによって放出されるアセチルコリンを含む、小胞のエキソサイトーシスを減少(図8)、および遅延(図9)させる本発明のペプチドの能力を反映している。
ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yにおいて、Ac-配列番号8-NH2を0.01mg/mLで1時間培養すると、エキソサイトーシス応答時間が有意に遅延し(24%遅延)、エキソサイトーシスレベルが低下した(-14%)一方で、アセチルヘキサペプチド-8を1mg/mLで1時間培養すると、エキソサイトーシスレベルを変化させることなく(7%)、エキソサイトーシス応答が有意に遅延した(67%遅延)。
前記の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチドは、筋収縮のためにニューロンによってシナプス間隙に放出されるアセチルコリン小胞のレベルを減少させ、前記エキソサイトーシスを遅延させることによって、筋収縮に対する間接的な効果を効果的に提供する。
実施例14.コラーゲン産生
皮膚硬化の潜在的な改善剤としてのI型コラーゲンの産生を調節する、前記ペプチドAc-配列番号8-NH2の能力を、ヒト皮膚線維芽細胞を用いてインビトロで評価した。
細胞を96ウェルプレートに1×104細胞/ウェルで播種し、標準的な培養条件下(37℃、95%湿度、5%CO2)で24時間培養した。24時間培養した後、培地を除去し、ペプチドAc-配列番号8-NH2を0.01、0.05または0.1mg/mLで含む新しい培地をウェルの濃縮物に添加した。処理は24時間または48時間継続させ、アッセイの最後に細胞培養培地を回収した。培養培地のみで処理した細胞を基礎コントロール(非処理細胞)として使用した。
24時間および48時間の処理後、細胞によって産生および放出されたI型コラーゲンの量(新たに合成されたI型コラーゲン)を、ELISAアッセイによって細胞培養培地中で測定した。試験物質の結果を基礎コントロールの条件(非処理細胞)と比較した。処理は、3つの異なる実験セッションで3回行った。
I型コラーゲン合成の定量は、競合ELISA方法により行った。抗体で予めコーティングした酵素ウェルに試料を添加し、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識した認識抗原を添加した;37℃で1時間培養した後、両者は固相の抗原と競合し、免疫複合体を形成した。リン酸緩衝液で洗浄した後、結合したHRPは触媒作用によってテトラメチルベンジジン(TMB)を青色に変化させ、酸の作用によって黄色に変化した;TMBは450nm波長下に吸収ピークを有し、その吸光度は試料の抗原密度に対し負の相関を有する。プレートはマイクロプレートリーダーで読み取った。
定量には、I型標準コラーゲンの既知濃度と増殖濃度からなる検量線を用いた。結果を細胞培養液50μL中のI型コラーゲン濃度(μg/ml)として表す。
3つの異なる実験セッションにおける各測定について、3回の試験を行った。ネガティブコントロールと試料との間のI型コラーゲン含量の%変動を計算し、コラーゲンIの合成を増加させるペプチドの有効度の直接的な指標を得た。
この実験で得られた結果は図10(A)および10(B)に要約されており、(Ac-配列番号8-NH2によって例示される)ヒト皮膚線維芽細胞によるI型コラーゲンの産生を誘導する本発明のペプチドの能力を反映している。
Ac-配列番号8-NH2ペプチドは0.01、0.05および0.1mg/mLでそれぞれ24時間後に線維芽細胞によるI型コラーゲン産生を9%、31%および37.5%有意に増強し、0.01、0.05および0.1mg/mLでそれぞれ48時間後に16%、29.5%および56.5%有意に増強した。
前記の実施例から直接導き出すことができるように、本発明のペプチドは強力な効果を効果的に提供し、皮膚の硬度および質を改善する。
図1は、分析されたペプチドで処理されたLAN細胞によるインビトロでのアセチルコリン放出の割合を、ポジティブコントロールと比較して示す(すなわち、ポジティブコントロール試料のアセチルコリン放出の割合を100%として、次いで残りの試料との比較を行う)。図1は、得られたペプチドの結果を示す:Ac-配列番号5-NH2(A)、Ac-配列番号6-NH2(B)、Ac-配列番号7-NH2(C)、Ac-配列番号8-NH2(D)、Ac-配列番号9-NH2(E)、Ac-配列番号10-NH2(F)、Ac-配列番号11-NH2(G)、Ac-配列番号13-NH2(H)およびAc-配列番号14-NH2(I)。Ac-配列番号8-NH2(D)を除くすべてのペプチドを、0.001mg/mL、0.005mg/mLおよび0.01mg/mLの濃度で試験し、ペプチドAc-配列番号8-NH2(D)は、0.005mg/mLおよび0.05mg/mLで試験した。図1(D)のx軸の縦列は左から右に、基底状態(無処理の細胞)、ポジティブコントロール(50mMのKClで処理した細胞)、100mMの毒(Ibanez C., Blanes-Mira C., Fernandez-Ballester G., Planells-Cases R., and Ferrer-Montiel A., (2004) Modulation of botulinum neurotoxin A catalytic domain stability by tyrosine phosphorylation, FEBS Letters 578, 121-127に記載の方法で生産したボツリヌス神経毒A軽鎖(BoNT A LC))で処理した細胞、0.1μMパルミトイル-アルギレリン(登録商標)(パルミトイル-アセチルヘキサペプチド-8(登録商標))で処理した細胞、ならびに0.005mg/mLおよび0.05mg/mLの対応するペプチドで処理した細胞に対応する。その側で、図1(A)~1(C)および1(E)~1(I)について、x軸の縦列は左から右に、基底状態(無処理の細胞)、ポジティブコントロール(50mMのKClで処理した細胞)、100nMの毒素(BoNT A LC)で処理した細胞、ならびに0.001mg/mL、0.005mg/mLおよび0.01mg/mLの対応するペプチドで処理した細胞に対応する。図1(A)~1(I)について、y軸は、(ポジティブコントロールに対する)アセチルコリン放出の割合を示す。
図2はコントロール(処理なし)に対するMunc18-シンタキシン-1複合体の結合の割合を示し、コントロールは100%の結合を表す。図2において、ペプチドAc-配列番号8-NH2(A)およびAc-配列番号5-NH2(B)の、Munc18-シンタキシン-1複合体の形成を阻害する能力を観察することができる。図2(A)および2(B)の両方のx軸の縦列は左から右に:第1の縦列群(縦列の左群)がMunc18およびシンタキシン-1の比が100nM:10nMであるペプチドのコントロールおよび濃度0.1、0.5および1mMに相当し、第2の縦列群(縦列の右群)がMunc18およびシンタキシン-1の比が100nM:5nMであるペプチドのコントロールおよび濃度0.1、0.5および1mMに相当する。両方の図について、y軸は複合体の形成の割合を示し、これは、いかなる治療も行わない場合、100%のシグナルとなる。
図3は、本発明のペプチドによる処理によって誘導されたヒト骨格ミオサイトの遺伝子発現プロファイルの調整を示す。図3(A)はAc-配列番号8-NH2を用いた処理(濃度0.05および0.5mg/mL、6時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)、UTRN(ウトロフィン)、ACTA1(アクチンアルファ1)、TNNC1(トロポニンC1)、CALM3(カルモジュリン3)、CAV1(カベオリン1)、CACNB1(カルシウム電位ゲートチャネル補助サブユニットベータ1)、LRP4(LDL受容体関連タンパク質4)、およびMYH1(ミオシン重鎖1)。図3(A)において、示された結果のうち、遺伝子MHY1、LRP4、CACNB1およびUTRNに関するものは、0.05mg/mLでの処理に相当し、残りは0.5mg/mLでの処理に相当する。図3(B)はAc-配列番号8-NH2を用いた、濃度0.5mg/mL、24時間の処理によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:RAPSN(シナプスの受容体関連タンパク質)およびATP2A(ATPase Sarcoplasmic/Endoplasmic Reticulum Ca2+Transporting)。図3(C)はAc-配列番号5-NH2を用いた処理(濃度0.05mg/mLおよび24時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:UTRN(ウトロフィン)、ACTA1(アクチンα1)、TNNC1(トロポニンC1)、RAPSN(シナプスの受容体関連タンパク質)、SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)およびMYH1。図3(D)はAc-配列番号10-NH2を用いた処理(濃度0.1mg/mLおよび24時間)によって得られた結果を示し、バーは上から下へ、以下の遺伝子を指す:UTRN(ウトロフィン)、TNNC1(トロポニンC1)、SCN3A(ナトリウム電位ゲートチャネルアルファサブユニット3)、CHRNA1(コリン作動性受容体ニコチンアルファ1サブユニット)およびCACNB1(カルシウム電位ゲートチャネル補助サブユニットベータ1)。前記図3(A)~(D)の4つの場合において、x軸は、基底状態に対する倍率変化を示す。負の倍率変化とは遺伝子発現の下方調節を指し、正の倍率変化とは上方調節を指す。
図4は、ペプチドAc-配列番号8-NH2で処理し、60mM KClで刺激した後、コントロール(60mM KClで刺激された非処理試料)を100%として規定した、ヒト骨格筋ミオサイトへのカルシウム流入が低下したことを示す。x軸の縦列は左から右に、コントロール、ならびに0.01、0.05および0.1mg/mLのペプチド濃度に相当する。y軸は、コントロールを100%のシグナルとして規定した、カルシウムシグナルの低下の割合を示す。
図5は、非処理の初代ヒト骨格筋細胞(図5(A))および0.05mg/mLのペプチドAc-配列番号8-NH2を用いて処理された、初代ヒト骨格筋細胞(図5(B))上の、ミオシン重鎖タンパク質の発現レベルの代表的な画像を示す。非処理の細胞に対して、0.05mg/mLのペプチドで処理された初代ヒト骨格筋細胞において、ミオシン重鎖タンパク質レベルの減少が観察され、これは図5(A)と比較して、図5Bにおいて染色またはシグナルの減少として見ることができる。
図6は、ペプチドAc-配列番号8-NH2で処理した後の初代ヒト骨格筋細胞において、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、ミオシン重鎖タンパク質レベルが低下したことを示す。X軸の縦列は左から右に、非処理細胞、ならびに0.05および0.5mg/mlのペプチド濃度に相当する。Y軸は基礎コントロールを100%シグナルとして規定した、(細胞蛍光の平均によって測定された、各処理群におけるミオシン重鎖タンパク質において観察された蛍光シグナルに基づく)ミオシン重鎖タンパク質のレベルを示す。
図7は、基準コントロールであるペプチドAc-配列番号8-NH2、アセチルヘキサペプチド-8、または阻害のポジティブコントロールであるα-ブンガロトキシンのいずれかで処理した後のヒト運動ニューロンおよびヒト骨格ミオサイト共培養物において観察された、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、収縮頻度の調整を示す。四角印の線は、非処理細胞(基礎コントロール)の収縮頻度を表す。×印の線は収縮阻害のポジティブコントロールである、α‐ブンガロトキシンによる収縮頻度を表す。菱形印の線は、基準である0.5mg/mlアセチルヘキサペプチド-8による収縮頻度を表す。丸印の線は0.1mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2による収縮頻度を表し、三角印の線は、0.05mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2による収縮頻度を表す。X軸は異なる活性物質による処理の長さに相当し、T0、T30min、T2h、T24hおよびリカバリーの各点は異なる時間の点を示す。T0は前記化合物による処理前の収縮状態に相当し;T30minは30分の処理に相当し;T2hは2時間の処理に相当し;T24時間は24hの処理に相当し;リカバリーは、全ての化合物を除去した後の24時間培養に相当する。Y軸は、基礎コントロール(非処理細胞)を100%のシグナルとして規定した、収縮頻度の割合を示す。
図8は、ペプチドAc-配列番号8-NH2または基準のアセチルヘキサペプチド-8で処理した後のヒト神経芽細胞腫細胞系において、非処理細胞である基礎コントロールを100%として規定した、エキソサイトーシスの低下を示す。X軸の縦軸は左から右に、非処理細胞、1mg/mlのアセチルヘキサペプチド-8で処理した細胞、および0.01mg/mlのペプチドAc-配塔番号8-NH2で処理した細胞に相当する。Y軸は、基礎コントロールを100%レベルとして規定した、エキソサイトーシスのレベルに相当する、蛍光シグナルの割合を示す。
図9は、ペプチドAc-配列番号8-NH2または基準のアセチルヘキサペプチド-8で処理した後のヒト神経芽細胞腫細胞系における、非処理細胞の基礎コントロールを100%として規定した、エキソサイトーシスの時間における遅延を示す。X軸の縦軸は左から右に、非処理細胞、1mg/mlのアセチルヘキサペプチド-8および0.01mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2に相当する。Y軸は、基礎コントロールを100%レベルとして規定した、エキソサイトーシスの遅延に対応する応答時間の割合を示す。
図10は、処理の開始後24時間(図10(A))および処理の開始後48時間(図10(B))に、Ac-配列番号8-NH2で処理した後の初代ヒト皮膚線維芽細胞による、基礎コントロール(非処理細胞)を100%として規定した、I型コラーゲン産生を示す。X軸の縦軸は左から右に、それぞれ、基礎コントロール(非処理細胞)および0.01、0.05または0.1mg/mlのペプチドAc-配列番号8-NH2で処理した細胞に相当する。Y軸は、コントロールを100%レベルとして規定した、I型コラーゲンタンパク質合成の増加の割合を示す。