JP5332474B2 - 磁気特性測定装置及び磁気特性測定方法 - Google Patents

磁気特性測定装置及び磁気特性測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、帯状又は板状の磁性体を測定対象とし当該測定対象の磁気特性測定装置及び磁気特性測定方法に関し、特に帯状又は板状の金属磁性体の磁気特性を製造ライン等においてオンラインで測定するのに好適な技術に関する。
製鉄業などの製造業において、製造製品の品質管理は非常に重要である。例えば、上記製鉄業における薄鋼板は、自動車のボディや家電製品の外板に用いられることが多く、この目的のために、通常はプレス加工等の成型が施される。薄鋼板のプレス加工を精度よく安定して行うためには、加工する薄鋼板の降伏点(Yp)や引張強度(Ts)、伸び率(EL)などといった機械的性質が予め判っていることが重要である。一方、このような加工が施される薄鋼板は、通常はコイル状に巻取られた状態で出荷されることが多い。このコイルの長手方向や幅方向において薄鋼板の機械的性質が不均一である場合、薄鋼板を同一の条件で加工しようとしても、機械的性質の不均一に起因した成型性の差異が生じてしまう。よって、薄鋼板の安定した加工が困難となる場合がある。従って、製造工程において、製造される薄鋼板の機械的性質などを予め測定することが、その後のプレス加工等のために重要である。
一方、上記で例示した薄鋼板等の帯状又は板状の金属磁性体の機械的性質は、その磁性体の保磁力や残留磁束密度(残留磁化)といった磁気特性との間に相関関係を有することが知られている。また、金属磁性体の保磁力と結晶粒径との間にも相関関係が存在することも知られてる。従って、薄鋼板などの金属磁性体の磁気特性を測定することは、金属磁性体の機械的性質を測定する上で効果的である。
例えば特許文献1,2には、薄鋼板の保磁力を測定して結晶粒径を評価する技術が開示されている。この特許文献1,2に係る保磁力測定装置は、薄鋼板の片側に配置されたヨーク式の磁化器を有する。そして、この保磁力測定装置は、磁化器の励磁コイルに交流電流を流して、磁化器から交番磁界を発生させて薄鋼板を磁化する。このとき、磁化器のヨーク(鉄芯)と薄鋼板とは磁気回路を構成し、当該磁気回路内を磁束が周回する。更に、保磁力測定装置は、磁極に巻き付けられた検出コイルを有し、この検出コイルに誘起される電圧を測定して時間積分することにより磁束を測定する。当該磁束の時間変化すなわち磁化曲線の測定結果から、保磁力測定装置は保磁力に相当する値を測定し、予め実験的に求めた保磁力相当値と結晶粒径との関係式から結晶粒径を算出する。
また特許文献3には、薄鋼板の保磁力を測定する技術が開示されている。この特許文献3に記載された保磁力測定装置は、上記特許文献1,2と同様に、薄鋼板の片側に配置されたヨーク式の磁化器で薄鋼板を磁化する。そして、この保磁力測定装置は、薄鋼板の表面近傍において、磁界と漏洩磁束を検出する。更に、保磁力測定装置は、検出した漏洩磁束で測定されるバルクハウゼンノイズ(Barkhausen Noise)が最大となるタイミングで磁界強度を測定することにより、保磁力を測定する。そして、この技術では、保磁力と相関関係の存在する物性値や機械的性質として、鉄損、結晶粒径・材料劣化・引張試験値・降伏点等を算出する。
特開平6−213872号公報 特開平6−265525号公報 特開2001−141701号公報 特開平3−277962号公報
上記特許文献1〜3に係る保磁力測定装置は、測定対象である薄鋼板の片側にヨーク式の磁化器を配置して、保磁力又は保磁力相当値を測定する点で共通する。この際、製造中の製品(これらの場合薄鋼板)の磁気特性(これらの場合保磁力等)を安定して測定するためには、当該製品である帯状又は板状の金属磁性体を安定して磁化させる必要がある。しかしながら、製造工程を通板中の薄鋼板等の磁性体は、振動したり不均一な形状を有することがある。この振動や不均一な形状により、上記の保磁力測定装置は、製造工程を通板中に磁性体を安定して磁化することが困難となる場合がある。磁化が不安定になると、その磁化を利用して測定する磁気特性の測定結果も不安定となり、適切な測定が行えない。
より具体的には、例えば磁性体が薄鋼板の場合、通板される薄鋼板は、振動しており、かつ、反り等の不均一な形状を有する場合が多い。このような振動や不均一な形状は、薄鋼板と磁化器の磁極面との間隔(空隙、ギャップ)を安定的に小さくすることを困難にする。また、このギャップが変動する場合、磁化器のヨーク、薄鋼板及び空隙で構成される磁気回路において、空隙での磁気抵抗が変動してしまい、薄鋼板内に誘起される磁束の値が不安定になる。
これに対して、磁極面と薄鋼板との間隔を一定に保ち磁化力を安定させるために、上記特許文献4には、上記特許文献3と同様な漏洩磁束法を利用して、磁化力を向上させて欠陥を検出する磁気探傷装置が開示されている。この特許文献4に係る磁気探傷装置は、薄鋼板の両面に対向配置された中空で非磁性な1対のロールと、各ロール中に配置された1組の磁化器とを有する。この磁気探傷装置は、磁化器をロール中に配置し、2つのロール間に薄鋼板を挟んで通板することにより、磁極面と薄鋼板との間隔を一定に保ち、磁化力を安定させている。
しかしながら、非磁性とはいえロールを介した磁化では、ロールの材質が金属であった場合、渦電流により発生される磁界により磁化器からの磁界が影響を受けるため、磁気特性の測定結果も影響を受けてしまう。また、磁化器がロール中に配置されるので、ロール等を設置する必要があり、装置自体が大がかりになり、かつ、一端配置した後は装置を移動させることが難しい。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、製造工程などにおいて移動する帯状又は板状の磁性体に交番磁界を印加しながら、当該磁性体の磁気特性を安定して精度良く測定することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、移動する帯状又は板状の金属磁性体を交番磁界で磁化して該磁性体の、磁化された場合に示す磁気的な諸特性である磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、上記磁性体を磁化するための磁化器であって、ヨーク及び該ヨークの外側に巻かれた励磁コイルを有し、上記帯状又は板状の磁性体を挟んで互いに対向配置された第1の磁化器及び第2の磁化器と、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器にそれぞれ配置され、上記第1の磁化器又は上記第2の磁化器により誘起される磁束を検出して検出電圧を出力する第1の検出コイル及び第2の検出コイルと、上記第1の検出コイル及び上記第2の検出コイルそれぞれから出力される検出電圧を入力信号として、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器により上記磁性体にそれぞれ誘起された磁束密度を測定する磁束密度測定部と、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれの励磁コイルに流れる励磁電流の値からそれぞれ算出した磁界の大きさと、上記磁束密度測定部が測定した上記磁性体の磁束密度とに基づいて、上記第1の磁化器に対応する磁気特性と、上記第2の磁化器に対応する磁気特性との平均値である、上記磁性体の磁気特性を算出する磁気特性算出部と、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量、および予め測定された上記変位量と上記磁気特性の誤差との相関関係を使用して、上記磁気特性算出部が算出した磁気特性を、上記変位量に起因した該磁気特性の誤差が低減するように補正する磁気特性補正部と、を有することを特徴とする、磁気特性測定装置が提供される。
この構成によれば、第1の磁化器及び第2の磁化器がそれぞれ発生させる磁界により、磁性体を磁化させることができる。その磁界に応じた磁性体の磁束密度を、第1の検出コイル及び第2の検出コイルと磁束密度測定部とにより測定することができる。そして、磁気特性算出部により、第1の磁化器及び第2の磁化器それぞれの励磁コイルに流れる励磁電流の値から算出した磁界の大きさと、磁束密度測定部により測定された磁性体の磁束密度とに基づいて、磁性体の磁気特性を算出することができる。更に、磁気特性補正部により、2つの磁化器間の磁性体の通過位置の変位量に応じて磁気特性を補正することができる。その結果、該変位量に起因した誤差を減少させることができ、より安定して精度良い磁気特性を測定することができる。また、上記構成は、磁性体に接触した他の構成などに組み込む必要がなく、他の構成を別途配置する必要もない。よって、より容易に装置を配置することも可能である。
また、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量を算出する変位量算出部を更に有し、上記磁束密度測定部は、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器が発生させた磁界それぞれによる上記磁性体の磁束密度を検出し、上記磁気特性算出部は、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれの磁界の大きさと、該磁界それぞれによる上記磁束密度と、に基づいて、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性を算出し、上記変位量算出部は、上記磁気特性算出部が算出し上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性に基づいて、上記磁性体の通過位置の変位量を算出してもよい。
この構成によれば、磁束密度測定部により、第1の磁化器及び第2の磁化器それぞれの磁界に応じた2つの磁束密度を検出することができ、磁気特性算出部により、2つの磁束密度それぞれに応じた磁気特性を算出することができる。この2つの磁束密度は第1の磁化器及び第2の磁化器それぞれの磁化力を反映しており、この磁化力は各磁化器と磁性体との距離を反映している。よって、変位量算出部は、この2つの磁気特性に基づいて、磁性体の通過位置の変位量を算出することができる。
また、上記磁気特性算出部は、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応し最大磁束密度を含む上記磁気特性を算出し、上記変位量算出部は、上記第1の磁化器に対応した上記最大磁束密度と、上記第2の磁化器に対応した上記最大磁束密度との比に基づいて、上記磁性体の通過位置の変位量を算出してもよい。
また、上記磁気特性補正部は、上記磁気特性算出部が算出し上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性の平均値を補正してもよい。
また、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量を測定する変位計を更に有し、上記磁気特性補正部は、上記変位計が測定した上記通過位置の変位量に応じて、上記磁気特性算出部が算出した磁気特性を補正してもよい。
また、上記磁気特性算出部は、上記磁性体の保磁力を含む磁気特性を算出し、上記磁気特性補正部は、上記磁気特性算出部が算出した保磁力を補正してもよい。
上記磁気特性補正部が補正した上記磁性体の磁気特性と、該磁性体の磁気特性と機械的性質との間の既知の相関関係と、に基づいて、上記磁性体の機械的性質を算出する機械的性質算出部を更に有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、移動する帯状又は板状の金属磁性体を交番磁界で磁化して該磁性体の、磁化された場合に示す磁気的な諸特性である磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、ヨーク及び該ヨークの外側に巻かれた励磁コイルを有し、上記帯状又は板状の磁性体を挟んで互いに対向配置された第1の磁化器及び第2の磁化器により、上記磁性体を磁化させる磁化ステップと、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器にそれぞれ配置された第1の検出コイル及び第2の検出コイルにより、上記第1の磁化器又は上記第2の磁化器により誘起される磁束を検出して検出電圧を出力する磁束検出ステップと、上記磁束検出ステップで出力された検出電圧から、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器により上記磁性体にそれぞれ誘起された磁束密度を測定する磁束密度測定ステップと、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれの励磁コイルに流れる励磁電流の値からそれぞれ算出した磁界の大きさと、上記磁束密度測定ステップで測定した上記磁性体の磁束密度とに基づいて、上記第1の磁化器に対応する磁気特性と、上記第2の磁化器に対応する磁気特性との平均値である、上記磁性体の磁気特性を算出する磁気特性算出ステップと、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量、および予め測定された上記変位量と上記磁気特性の誤差との相関関係を使用して、上記磁気特性算出ステップで算出した磁気特性を、上記変位量に起因した該磁気特性の誤差が低減するように補正する磁気特性補正ステップと、を有することを特徴とする、磁気特性測定方法が提供される。
また、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量を算出する変位量算出ステップを更に有し、上記磁束密度測定ステップでは、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器が発生させた磁界それぞれによる上記磁性体の磁束密度を検出し、上記磁気特性算出ステップでは、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれの磁界の大きさと、該磁界それぞれによる上記磁束密度と、に基づいて、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性を算出し、上記変位量算出ステップでは、上記磁気特性算出ステップで算出され上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性に基づいて、上記磁性体の通過位置の変位量を算出してもよい。
また、上記磁気特性算出ステップでは、上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応し最大磁束密度を含む上記磁気特性を算出し、上記変位量算出ステップでは、上記第1の磁化器に対応した上記最大磁束密度と、上記第2の磁化器に対応した上記最大磁束密度との比に基づいて、上記磁性体の通過位置の変位量を算出してもよい。
また、上記磁気特性補正ステップでは、上記磁気特性算出ステップで算出され上記第1の磁化器及び上記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性の平均値を補正してもよい。
また、上記第1の磁化器と上記第2の磁化器との間における上記磁性体の通過位置の変位量を測定する変位量測定ステップを更に有し、上記磁気特性補正ステップでは、上記変位量測定ステップで測定された上記通過位置の変位量に応じて、上記磁気特性算出ステップで算出された磁気特性を補正してもよい。
また、上記磁気特性算出ステップでは、上記磁性体の保磁力を含む磁気特性を算出し、
上記磁気特性補正ステップでは、上記磁気特性算出ステップで算出された保磁力を補正してもよい。
また、上記磁気特性補正ステップで補正された上記磁性体の磁気特性と、該磁性体の磁気特性と機械的性質との間の既知の相関関係と、に基づいて、上記磁性体の機械的性質を算出する機械的性質算出ステップを更に有してもよい。
以上説明したように本発明によれば、製造工程などにおいて移動する帯状又は板状の磁性体に、当該磁性体面の両側に磁化器を配置して交番磁界を印加し、磁性体内の誘導される磁束に相当する磁束を測定することにより磁性体の磁気特性を算出し、その測定した磁気特性を磁性体の通過位置の変位量に応じて補正することができるので、当該磁性体の磁気特性を安定して精度良く測定することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明の実施形態に係る磁気特性測定装置は、磁性体材料を製造する様々な製造業等に適用することができる。以下では、説明の便宜上、磁気特性測定装置の適用例として、製鉄業に適用され、磁性体材料として帯状又は板状の金属磁性体である「薄鋼板」を例に挙げて説明する。
この磁気特性測定装置は、以下で説明するように、薄鋼板を磁化させることにより、薄鋼板の磁気特性を測定する。この「磁気特性」とは、磁性体が磁化された場合にその磁性体が示す磁気的な諸特性を意味する。磁気特性としては、例えば、鉄損・最大磁束密度(飽和磁束密度)・保磁力・透磁率(最大透磁率や初期透磁率等)・残留磁束密度(残留磁化)などが挙げられる。以下では説明の便宜上、磁気特性測定装置が、これらの磁気特性の中でも「保磁力」を測定することを目的とする場合について説明する。しかし、磁気特性測定装置が測定することが可能な磁気特性は、保磁力に限定されるものではない。以下で説明する磁気特性測定装置は、薄鋼板を交番磁界を印加して交流磁化させることにより得られる「磁化曲線」を利用して磁気特性を測定する。よって、磁気特性測定装置が測定することが可能な磁気特性は、薄鋼板の保磁力に限定されず、例えば、鉄損・磁束密度・最大磁束密度・透磁率・残留磁束密度などのように、磁化曲線の特徴量等であってもよい。なお、ここで例示する磁性体の薄鋼板は強磁性体であるため、この磁化曲線は「磁気ヒステリシス曲線(図2等参照。)」となる(以下単に「ヒステリシスループ」ともいう。)。
また、通常の磁気工学における保磁力とは、磁性体を準静的に交番磁界で磁化することにより得られるヒステリシスループ(特にメジャーループ)において、磁化又は磁束密度がゼロとなるときの外部磁界の大きさを意味する。一方、製造工程などにおいて搬送ロール上を移動する薄鋼板を測定対象とする場合、準静的な交番磁界で薄鋼板を磁化して、その磁界と磁束密度を測定することは困難である。そこで、本発明の実施形態に係る磁気特性測定装置は、搬送ロール上を移動する薄鋼板を交番磁界で磁化して、磁化器のヨークと薄鋼板で構成する磁気回路内の磁束を測定することにより磁気特性を測定する。従って、この磁化に用いられる交番磁界は、準静的ではなく、磁気特性測定装置が測定する保磁力は、磁気工学における保磁力とは厳密には異なる可能性がある。しかし、磁気特性測定装置が測定する保磁力は、磁気工学における保磁力に相当した保磁力(「保磁力相当値」ともいう。)であり、以下では説明の便宜上、「保磁力」には、磁気工学における保磁力だけでなく、保磁力相当値をも含むものとし、例えば最大磁束密度や残留磁束密度などの他の磁気特性も同様にその相当値を含むものとする。
なお、磁気工学における保磁力と保磁力相当値との対応関係を、実測等により予め求めておくことにより、保磁力相当値から磁気工学における磁力を算出することができるが、必ずしも必要ではない。
更に、本実施形態の磁気特性測定装置では、測定した磁気特性(ここでは保磁力)から、薄鋼板の機械的性質をも算出する。この「機械的性質(機械的特性とも言う。)」とは、薄鋼板の機械的な変形及び破壊等に関する諸性質を意味する。また、このような機械的性質は、例えば、強度・硬さ・靱性・疲労・加工性などに大別される。機械的性質を限定するものではないが、これらの各機械的性質の具体的な例を挙げれば以下の通りである。
強度 :例えば、降伏点・引張強度・圧縮強さ・クリープ強さ等
硬さ :例えば、ビッカース硬さ・ブリネル硬さ・ロックウェル硬さ等
靭性 :例えば、シャルピー衝撃値・アイゾット衝撃値等
疲労 :例えば、低サイクル疲労・高サイクル疲労等
加工性:例えば、伸び率・絞り性・r値等
薄鋼板等の磁性体の磁気特性は、その磁性体の結晶粒径や転位密度などとの間に相関関係が存在する。一方、磁性体の機械的性質も、磁性体の結晶粒径や転位密度などとの間に相関関係が存在することがある。よって、磁性体の磁気特性と磁性体の機械的性質との間には、相関関係が存在する場合がある(図6、図11〜図15等参照。)。本発明の実施形態に係る磁気特性測定装置は、この相関関係の一例を利用して、薄鋼板の機械的性質をも算出する。以下では説明の便宜上、この磁気特性測定装置が、機械的性質として上記の例示した性質のうちの降伏点を測定する場合について説明する。しかし、これはあくまで例示であり、磁気特性測定装置が測定する機械的性質は、測定した磁気特性と相関関係が存在する様々な磁気特性を算出することが可能であることは言うまでもない。
つまり、以下では説明の便宜上、本発明の実施形態に係る磁気特性測定装置が、鋼板の保磁力を測定し、その保磁力から鋼板の降伏点を算出する場合を例に挙げて説明する。
<一実施形態>
まず、図1を参照しつつ、本発明の一実施形態の磁気特性測定装置の構成について説明する。
(磁気特性測定装置の構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態の磁気特性測定装置1は、磁化器10,20と、発振器31と、励磁電源32と、磁界測定部101,201と、磁束密度測定部102,202と、磁気特性算出部103,203と、変位量算出部301と、相関データ記憶部302と、平均磁気特性算出部303と、磁気特性補正部304と、補正データ記憶部305と、機械的性質算出部306と、機械的性質データ記憶部307とを有する。
磁化器10,20は、両磁化器10,20の間に薄鋼板Fを挟んで対向配置される。つまり、磁化器10は、通板される薄鋼板Fの片方の面に対向して配置され、磁化器20は、通板される薄鋼板Fの他方の面に対向して配置される。磁化器10と磁化器20との間の間隙を、ここでは「ギャップ(空隙)」ともいう。つまり、薄鋼板Fは、このギャップと直交する方向に移動する。磁化器20から磁化器10に向けた方向を「ギャップ方向x(図1中のx方向)」ともいい、ギャップ方向xにおける薄鋼板Fの位置を「パスライン(通過位置の一例)」ともいう。ギャップ方向における磁化器10と磁化器20との間の基準位置からのパスラインの「ずれ量」を、ここでは「変位量Δx」ともいう。つまり、変位量Δxは、パスラインを表す。なお、この変位量Δxの基準位置は、例えば磁化器10と磁化器20との間の中間点であってもよいが、中間点から所定の距離ずれた位置であってもよい。また、磁化器10と磁化器20との間のギャップは、通板する薄鋼板Fの厚みや磁化器10,20の磁界の強さにもよるが、例えば約20〜150mmに設定することが望ましい。このギャップが20mm程度未満である場合には、薄鋼板Fの振動や反りなどにより薄鋼板Fと磁化器10,20とが接触する可能性が高くなる。また、ギャップが150mm程度超過である場合には、磁化器10,20により薄鋼板Fに印加される磁界が弱くなり過ぎることがある。なお、磁化器10,20と薄鋼板Fとが接触しない限り、ギャップは狭い方が薄鋼板Fを磁化するのに効果的であることは明らかである。
磁化器10,20のそれぞれは、薄鋼板Fに所定の間隔を開けて対向した2以上の磁極を有する(図1には2つの磁極を有する場合を例示している。)。磁化器10,20は、この磁極から交番磁界Hを発生させることにより、薄鋼板Fを磁化させる。この磁化器10と磁化器20は、それぞれ同じ仕様(形状及び構成部材等)で形成されることが望ましいが異なっていてもよい。磁化器10と磁化器20との仕様を同じにすることにより、測定条件を薄鋼板Fの両面に対して対称にすることができ、安定化させることができる。図1に示した本実施形態に係る磁気特性測定装置1は、同様の仕様の2つの磁化器10,20を有し、磁化器10,20はそれぞれ、ヨーク11,21と、励磁コイル12,22と、検出コイル13,23とを有する。よって、以下では、磁化器10を例に挙げて説明する。なお、磁化器10と磁化器20とは、薄鋼板Fを挟んで対称に配置されることが望ましい。また、磁化器10のヨーク11・励磁コイル12・検出コイル13は、それぞれ磁化器20のヨーク21・励磁コイル22・検出コイル23に対応している。
ヨーク(鉄芯)11は、コア部材の一例であって、薄鋼板Fに対して磁束を導く磁路を構成する。ヨーク11は、略コの字状の形状を有し、略コの字の各先端部に薄鋼板Fの面に対向した磁極を有する。つまり、ヨーク11は、薄鋼板Fに対して略垂直に設けられた2つの腕部(両腕部)と、薄鋼板Fとは反対側において両腕部それぞれの端部を接続する中央部とで構成されている。このヨーク11は、軟磁気特性の良い電磁鋼板やNi−Znフェライト等のような透磁率の高い材質で形成される。ヨーク11を電磁鋼板で形成する場合には、薄い電磁鋼板を複数積層してヨーク11を成型することにより、交番磁界を発生するときの渦電流損を抑えることができる。
励磁コイル12は、ヨーク11の両腕部に巻き付けられ、交流電流が通電されることにより磁界Hを発生させる。なお、各腕部に巻き付けられた励磁コイル12は、ヨーク11中に発生する磁界Hが互いに強め合う方向に磁界Hを発生させる。つまり、一方の腕部の磁極と他方の腕部の磁極とが互いに異なり、磁化器10がU字型の磁石のような磁界を発生するように、励磁コイル12は磁界Hを発生させる。この励磁コイル12の巻線としては、例えばポリイミド被覆銅線やエナメル被覆銅線などのような周知の銅線を用いることができる。上述の通り、ここでは励磁コイル12は、ヨーク11の両腕部に巻き付けられた2つの励磁コイルである場合を示しているが、本発明はかかる例に限定されない。励磁コイル12は、例えば、ヨーク11の中央部や片方の腕部に巻き付けられた1つの励磁コイル、又はヨーク11の所定の位置に巻き付けられた3以上の励磁コイルであってもよい。また、磁化器10が3以上の磁極を有する場合、各磁極に対応するように励磁コイルの個数を設定することも可能である。
このように構成された磁化器10,20には、発振器31及び励磁電源32により交流の電流が通電される。発振器31は、測定すべき所定の周波数の正弦波信号(電圧信号)を生成する。交番磁界Hの周波数は、例えば、磁化器10,20の間のギャップを薄鋼板Fが通過する間に数回以上、磁界が交番する程度に高い周波数に設定されることが好ましい。一方、交番磁界Hの周波数は、高すぎると表皮効果の影響により薄鋼板Fの全板厚を磁化することが難しくなるので、表皮効果を抑制して薄鋼板の全板厚を磁化しうる程度の周波数以下に設定されることが好ましい。より具体的には、この周波数は、例えば、薄鋼板Fについては約40〜70Hzに設定してもよいが、測定対象に応じて適宜選択すればよい。
また、励磁電源32は、発振器31で生成された正弦波信号(電圧信号)を増幅させて、交流の励磁電流を出力する。励磁電源32としては、入力電圧(交流)の振幅に比例した振幅値の交流電流を出力する定電流(CC)タイプの電流増幅器を用いることができる。励磁電源32から励磁コイル12,22へ出力される励磁電流の振幅値は、交番磁界Hの振幅値を決定する。発振器31及び励磁電源32でそれぞれ決定される周波数及び振幅値等は、上記条件等に従い実際に測定に有効な値となるように、実験等によって予め設定される。
発振器31及び励磁電源32により生成された励磁電流(それに伴う交流電圧:励磁電圧)は、並列に2系統に出力される。つまり、この励磁電源32には、磁化器10の励磁コイル12と磁化器20の励磁コイル22とが並列に接続されており、両励磁コイル12,22に同時に励磁電圧が印加され、両励磁コイル12,22に同時に交流の励磁電流が通電して、両磁化器10,20それぞれからは、交番磁界Hが生成される。なお、励磁コイル12及び励磁コイル22それぞれを2つ又は3つ以上で構成するときの結線については、並列及び直列のどちらであってもよい。また、励磁コイル12と励磁コイル22とを励磁電源32に直列接続することも可能であるが、励磁コイル12,22を励磁させるための励磁電圧が高くなるので、測定するのに十分な励磁電流を得ることができないときがある。
ここでは各磁化器10,20が生成する磁界を区別するために、磁化器10が生成した磁界を「磁界H1」といい、磁化器20が生成した磁界を「磁界H2」という。なお、相互に対向する磁化器10の磁極と磁化器20の磁極とが同じ極性(N極同士、又は、S極同士)を有するように、各励磁コイル12,22は励磁電源32と結線される。よって、薄鋼板Fには2台の磁化器10,20が発生させた磁界H1,H2が加算されて印加される。言わば、磁界H1と磁界H2とにより誘起された磁束が加算されて薄鋼板F内に発生する。なお、当該現象は、より厳密には、磁化器10,20のヨーク11,21、ギャップ、及び薄鋼板Fにより構成される磁気回路について、励磁コイル12,22により発生する起磁力により説明できる。
磁化器10,20には、磁束値を測定するための検出コイル13,23が配置される。磁化器10を例に挙げて説明する。磁化器10では上述の構成により、ヨーク11,薄鋼板F、及びヨーク11と薄鋼板Fとの間のギャップにより磁気回路が構成され、励磁コイル12により発生した起磁力により、磁束Φ1が当該磁気回路(磁路)を流れることになる。検出コイル13は、ヨーク11の少なくとも1方の磁極近傍(例えばヨーク端部である磁極部)において、磁束Φ1をできるだけ漏れ無く測定するために磁極面を囲むように巻かれ、磁極面の外周より大きなコイル断面を有する。従って、検出コイル13は、磁極と薄鋼板Fとの間のギャップに発生する磁束Φ1の時間変化を、電磁誘導により検出して検出信号(電流値又は電圧値)を出力する。なお、磁気回路内の磁束Φ1は、磁気回路内の各位置において大きさ及び位相が若干異なる。しかし、磁化器10を薄鋼板Fに近接して配置することにより、検出コイル13により測定した磁束Φを近似的に薄鋼板Fの磁束Φ1と同一であると見なすことができる。すなわち、検出コイル13は、薄鋼板Fの磁束Φ1に相当する磁束Φ1(磁束相当値)を測定する。また、図1には、検出コイル13がヨーク11の腕部の磁極近傍に配置される場合を示しているが、検出コイル13は、ヨーク11中を通過する磁束Φ1を測定することができる位置であれば任意の位置に配置することができる(例えば中央部など。)。しかし、検出コイル13が図1に示すように磁極近傍に配置される場合、磁気回路からの漏洩磁束の影響を抑制することができて、検出コイル13が検出する磁束Φ1の相当値における漏れ磁束等の誤差を低減させることができる。
一方、検出コイル23は、検出コイル13と同様に磁化器20に配置される。そして、検出コイル13と検出コイル23とも、薄鋼板Fを挟んで対称に配置される。従って、検出コイル13は、磁化器10が発生する磁界H1に応じた磁束Φ1の時間変化を測定するのに対して、検出コイル23は、磁化器20が発生する磁界H2に応じた磁束Φ2の時間変化をする。各検出コイル13,23から出力された検出信号は、それぞれ磁束密度測定部102又は磁束密度測定部202に出力される。
磁束密度測定部102は、検出コイル13から出力された検出信号(磁束Φ1相当)に基づいて、磁化器10が発生させた磁界H1に応じた薄鋼板Fの磁束密度B1(相当値)を測定する。一方、磁束密度測定部202は、検出コイル23から出力された検出信号(磁束Φ2相当)に基づいて、磁化器20が発生させた磁界H2に応じた薄鋼板Fの磁束密度B2(相当値)を測定する。なお、各磁束密度測定部102,202は、検出コイル13又は検出コイル23自身による電圧降下を抑制するために高入力インピーダンスの増幅器を有する。検出コイル13又は検出コイル23は、それぞれ対応する磁束密度測定部102,202の増幅器に接続され、各増幅器は、接続された検出コイル13又は検出コイル23の両端間に誘起される誘導電圧(検出信号)を、予め定められたゲインで増幅する。そして、磁束密度測定部102,202のそれぞれは、増幅した誘導電圧から、各検出コイル13,23のコイル形成面を通過した磁束Φ1,Φ2の時間微分値(相当値)を算出する(誘導電圧=−dΦ/dt)。そして、磁束密度測定部102,202のそれぞれは、磁束Φ1,Φ2の時間微分値を時間軸に対して積分することにより、磁束Φ1,Φ2を求め、この磁束Φ1,Φ2と予め設定されたコイル形成面の面積Sとにより、薄鋼板Fの磁束密度B1,B2(相当値)を算出する(B=Φ/S)。以上の信号処理は、検出信号を増幅した後、A/D変換器でデジタル信号にしてから実施することが望ましい。
磁界測定部101,201は、それぞれ励磁電源32と、励磁コイル12又は励磁コイル22との間に配置される。そして、磁界測定部101,201のそれぞれは、磁化器10が発生させた磁界H1、又は、磁化器20が発生させた磁界H2を測定する。より具体的には、各磁界測定部101,201は、例えば、励磁電源32と、励磁コイル12又は励磁コイル22との間の接続線路上に直列に配置され、抵抗値R(例えば0.1〜1Ω程度)が既知の抵抗器を有する。そして、各磁界測定部101,201は、抵抗器の端子間電圧を測定し、この端子間電圧及び抵抗値Rより各接続線路上に流れる励磁電流値を測定する(励磁電流=端子間電圧/R)。そして、磁界測定部101,201は、励磁電流値から、磁化器10又は磁化器20が発生させる磁界H1又は磁界H2の大きさを算出する(磁界=励磁コイルの巻き数×励磁電流)。なお、ここでは、磁界測定部101,201が抵抗器を有する場合を説明したが、磁界測定部101,201は、抵抗器の代わりにCT(電流センサ)等の電流プローブを有し、この電流プローブにより励磁電流を測定してもよい。
磁気特性算出部103,203は、磁界H1と磁束密度B1から磁化器10に対応したヒステリシスループL1を算出し、磁界H2と磁束密度B2から磁化器20に対応したヒステリシスループL2を算出する。そのために磁気特性算出部103,203は、例えば、多チャンネルのオシロスコープ、又はA/D(アナログ/デジタル)変換器及び測定値を処理するデータ処理部を備える。この磁気特性算出部103,203が算出するヒステリシスループL1,L2も薄鋼板Fの磁気的な性質を反映しており、磁気特性の一例である。このヒステリシスループL1,L2を図2に示す。
図2は、本実施形態に係る磁気特性測定装置が測定する磁気特性の一例を説明するための説明図である。図2(A)は、磁化器10に対応したヒステリシスループL1を示し、図2(B)は、磁化器20に対応したヒステリシスループL2を示す。なお、本実施形態では、磁気特性測定装置が磁気特性の一例として、薄鋼板Fの保磁力Hcを測定する場合について説明する。各ヒステリシスループL1,L2において、磁束密度B1,B2が0となるときの磁界H1,H2の大きさの絶対値が、各磁化器10,20に対応した薄鋼板Fの保磁力Hc1,Hc2(相当値)を表す。また、磁界H1,H2が0となるときの磁束密度B1,B2の絶対値が、各磁化器10,20に対応した残留磁束密度Br1,Br2を表す。そして、磁束密度B1,B2の最大値が最大磁束密度Bm1,Bm2を表し、磁界H1,H2の大きさの最大値が最大磁界Hm1,Hm2を表す。そこで、磁気特性算出部103,203は、これらの各ヒステリシスループL1,L2から、磁気特性として必要に応じた特徴量を抽出する。なお、本実施形態に係る磁気特性測定装置1は、上述の通り、磁気特性の一例として保磁力Hcを測定することを目的とするので、磁気特性算出部103,203のそれぞれは、少なくとも保磁力Hc1又は保磁力Hc2を抽出する。また、本実施形態に係る磁気特性測定装置1は、後述する薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxを求める際に、測定することを目的とする特徴量(ここでは保磁力Hc)と同じ特徴量を使用することも可能であるが、ここではその特徴量以外の少なくとも1つの特徴量を使用する。この場合、測定する特徴量と、変位量Δxを求めるのに使用する特徴量とが異なることにより、パスラインの変位量Δxによる、測定する特徴量の誤差に対する補正の精度を向上させることが可能である。この特徴量として、本実施形態では最大磁束密度Bm1,Bm2を例に説明する。なお、この特徴量は、最大磁束密度Bm1,Bm2に限定されるものではなく、例えば最大磁束密度Bm1,Bm2に達した際の磁界の大きさである最大磁界Hm1,Hm2(図10参照)、保磁力Hc1,Hc2、残留磁束密度Br1,Br2などであってもよい。
つまり、磁気特性算出部103,203は、磁界H1,H2の大きさと、磁束密度B1,B2とから、各磁化器10,20に対して少なくとも2つずつの磁気特性(ここでは、保磁力Hc1,Hc2と、最大磁束密度Bm1,Bm2)を算出する。
なお、ここでは磁気特性算出部103,203がヒステリシスループL1,L2を一旦算出し、各特徴量を抽出する場合について説明したが、磁気特性算出部103,203は、磁界H1,H2の大きさと磁束密度B1,B2とから、直接少なくとも2以上の磁気特性(特徴量)を算出してもよい。準静的に測定したヒステリシスループに対するアナロジー(類比)から、磁束密度B1,B2の変化が最も急峻な時刻における磁界H1,H2の大きさが、保磁力Hc1,Hc2に相当すると考えられる。よって、直接少なくとも2以上の磁気特性を算出する場合、例えば、磁束密度測定部102,202は、磁束Φ1,Φ2の時間微分値(相当値)を磁気特性算出部103,203に出力し(測定した検出コイルの電圧値に当たる)、磁気特性算出部103,203は、この時間微分値が最大又は最小となる時刻における磁界H1,H2の大きさを、保磁力Hc1,Hc2(相当値)として抽出してもよい。また、最大磁束密度Bm1,Bm2については、例えば、磁気特性算出部103,203は、磁束密度測定部102,202から出力された磁束密度B1,B2の最大値又は最小値を測定して、最大磁束密度Bm1,Bm2として抽出してもよい。一方、磁気特性として残留磁束密度Br1,Br2を測定する場合には、磁気特性算出部103,203は、例えば、磁界H1,H2の大きさが0となる時刻における磁束密度B1,B2を測定すればよい。更に、磁気特性として最大磁界Hm1,Hm2を測定する場合には、磁気特性算出部103,203は、磁束密度B1,B2が最大磁束密度Bm1,Bm2となる時刻における磁界H1,H2の大きさを測定すればよい。また、単に磁界H1,H2の最大値を、それぞれの最大値として求めることも可能である。
変位量算出部301は、磁気特性算出部103,203が算出した2つの最大磁束密度Bm1,Bm2を取得する。そして、変位量算出部301は、この2つの最大磁束密度Bm1,Bm2に基づいて、薄鋼板Fのパスラインの変位量Δx(ギャップ方向xの変動:通過位置の一例)を算出する。
より具体的に説明する。
上述の通り、磁気特性算出部103,203は、それぞれ磁化器10又は磁化器20に対応した磁気特性を算出する。磁化器10及び磁化器20は同様の構成を有し、かつ、同一の対象(薄鋼板F)について測定するので、磁化器10に対応した磁気特性と、磁化器20に対応した磁気特性とは、一見すると、ほぼ一致することが予想される。しかしながら、本発明の発明者らは磁気特性測定装置等について鋭意研究を行った結果、各磁化器10,20で測定する磁気特性は、必ずしも一致しないことを見いだした。つまり、製造工程などにおいて通板される薄鋼板Fは、振動したり、反りなどの平坦でない形状等を有するので、パスラインにはギャップの中心からの「ずれ量」である変位量Δxが存在する。この変位量Δxは、薄鋼板Fに実際に印加される磁界H1,H2の大きさ、及び、その磁界H1,H2に応じた磁束密度B1,B2に影響を及ぼす。本発明の発明者らは、更に鋭意研究を行った結果、パスラインの変位量Δxと磁気特性の一例である最大磁束密度比(例えば、Bm1/Bm2)との間には、図3に示すような略一次関数的な相関関係が存在することを見いだした。薄鋼板Fの変動により薄鋼板Fが近づいた磁化器では、磁気抵抗が減少して、最大磁束密度が増加し、逆に薄鋼板Fが遠くなった磁化器では、磁気抵抗が増加して、最大磁束密度が減少する。その結果、図3に示すような相関関係が発生している。そこで、変位量算出部301は、このような変位量Δxと最大磁束密度比(Bm1/Bm2)との間の相関関係を利用して、変位量Δxをリアルタイムに算出する。
つまり、図3に示す変位量Δxと最大磁束密度比(Bm1/Bm2)との間の相関関係を、予め実験等により測定し、この測定結果を使用して、最大磁束密度比(Bm1/Bm2)を代入すると変位量Δxをかえす近似関数(相関関数、図3参照。)を算出しておき、この算出した近似関数を、相関データ記憶部302に記録しておく。そして、変位量算出部301は、最大磁束密度Bm1,Bm2に基づいて、まず、最大磁束密度比(Bm1/Bm2)を算出する。そして、変位量算出部301は、相関データ記憶部302から近似関数を取得して、その近似関数と最大磁束密度比(Bm1/Bm2)とから、変位量Δxを算出する。
平均磁気特性算出部303は、磁気特性算出部103,203が算出した2つの保磁力Hc1,Hc2を取得する。そして、平均磁気特性算出部303は、この2つの保磁力Hc1,Hc2に基づいて、平均保磁力Hc0を算出する。
磁気特性補正部304は、変位量算出部301が算出した変位量Δxと、平均磁気特性算出部303が算出した平均保磁力Hc0とを取得する。そして、磁気特性補正部304は、変位量Δxに応じて、平均保磁力Hc0を補正する。
より具体的に説明する。
本発明の発明者らは、上述の通り、パスラインの変位量Δxにより磁気特性が変動することなどを見いだしたが、本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結果、パスラインの変位量Δxと磁気特性の誤差との間には、略2次関数的な相関関係が存在することをも更に見いだした。この変位量Δxと、磁気特性の誤差(ここでは平均保磁力Hc0の誤差ΔHc)との関係を、図4に示す。図4(A)には、変位量Δxが約−25mm〜約25mm程度における誤差ΔHcを示し、図4(B)には、変位量Δxが約−10mm〜約10mm程度における誤差ΔHcの拡大図を示す。そこで、磁気特性補正部304は、この変位量Δxと平均保磁力Hc0の誤差ΔHcとの相関関係を利用して、この誤差ΔHcが低減するように、平均保磁力Hc0を補正して、薄鋼板Fの保磁力Hcを算出する。
つまり、図4に示す変位量Δxと平均保磁力Hc0の誤差ΔHcとの間の相関関係を、薄鋼板Fに応じて予め実験等により測定し、この測定結果を使用して、変位量Δxを代入すると誤差ΔHc(%)をかえす近似関数(相関関数、図4参照。ここでは「補正関数」ともいう。)を算出しておき、この算出した補正関数を、補正データ記憶部305に記憶しておく。そして、磁気特性補正部304は、補正データ記憶部305から補正関数を取得して、その補正関数と変位量Δxとから、誤差ΔHc(%)を算出する。更に、磁気特性補正部304は、誤差ΔHc(%)と平均保磁力ΔHc0とから、平均保磁力Hc0に応じた誤差ΔHcの大きさを算出し、この誤差ΔHcの大きさを平均保磁力Hc0に加算又は減算して、誤差を低減させた薄鋼板Fの保磁力Hcを算出する。
このような磁気特性補正部304を備えない場合、図4(B)に示すように、薄鋼板Fの変位量Δxが±5mm程度変化するだけで、保磁力Hcは、約2〜3%程度変動してしまう。これに対して、磁気特性補正部304による補正後の保磁力Hcの誤差ΔHcを、図5に示す。図5に示すように、磁気特性補正部304は、薄鋼板Fの変位量Δxが±10mm程度変化しても、誤差ΔHcを約1%程度以下にまで補正することが可能である。
なお、この変位量Δxと平均保磁力Hc0の誤差ΔHcとの相関関係は、薄鋼板Fの仕様(例えば、厚みや成分など)により異なることがある。そのときには、薄鋼板F仕様に対応して補正関数を予め準備するのがよい。
機械的性質算出部306は、磁気特性補正部304が補正した保磁力Hcから、薄鋼板Fの機械的性質の一例として降伏点Ypを算出する。より具体的には、薄鋼板Fの保磁力Hcと降伏点Ypとの間には、図6に示すような相関関係が存在する。従って、薄鋼板Fに応じて保磁力Hcと降伏点Ypとの間の相関関係を、予め実験等により測定し、この測定結果を使用して、保磁力Hcを代入すると降伏点Ypをかえす近似関数(相関関数、図6参照。ここでは「機械的性質関数」ともいう。)を算出しておき、この算出した機械的性質関数を、機械的性質データ記憶部307に記憶しておく。そして、機械的性質算出部306は、機械的性質データ記憶部307から機械的性質関数を取得して、この機械的性質関数に磁気特性補正部304が補正した保磁力Hcを代入して、薄鋼板Fの降伏点Ypを求めることができる。
なお、図6に示す機械的性質関数も薄鋼板Fの性質(例えば、厚みや成分など)により異なる。よって、機械的性質データ記憶部307には、薄鋼板Fの性質に応じた複数の機械的性質関数を記録しておき、機械的性質算出部306は、薄鋼板Fの製造工程の制御装置等から薄鋼板Fの性質に関する情報を取得して、この情報に示された性質に応じた機械的性質関数を、機械的性質データ記憶部307から取得して使用することも可能である。
また、磁気特性補正部304で補正された薄鋼板Fの保磁力Hc、及び、機械的性質算出部306で算出された薄鋼板Fの降伏点Ypの少なくとも1方は、例えば、別途の表示装置に表示されたり、別途の記憶装置に記録されてもよい。
(磁気特性測定装置の動作)
以上、本実施形態に係る磁気特性測定装置1の構成等について説明した。次に、図7を参照しつつ、磁気特性測定装置1の動作について説明する。
図7に示すように、まず、ステップS01が処理され、磁化器10,20に磁界H1,H2を発生させて、磁化器10,20の間を通過する薄鋼板Fを磁化させる(磁化ステップ)。次に、ステップS11が処理され、磁界測定部101により各磁化器10,20の磁界H1,H2の大きさを測定する(磁界測定ステップ)。そして、ステップS12が処理され、検出コイル13,23及び磁束密度測定部102,202により、薄鋼板Fの各磁化器10,20に応じた磁束密度B1,B2を測定する(磁束測定ステップ、磁束密度測定ステップ)。そして、ステップS21に進む。
ステップS21では、磁気特性算出部103が、磁界H1の大きさ及び磁束密度B1に基づいて、磁気特性として、ヒステリシスループL1を算出し、このヒステリシスループL1から保磁力Hc1と最大磁束密度Bm1を抽出する(磁気特性算出ステップ)。一方、磁気特性算出部203が、磁界H2の大きさ及び磁束密度B2に基づいて、磁気特性として、ヒステリシスループL2を算出し、このヒステリシスループL2から保磁力Hc2と最大磁束密度Bm2を抽出する。ただしこの際、上述の通り、一旦ヒステリシスループL1,L2を算出することは、必ずしも必要ではない。そして、ステップS31に進む。
ステップS31では、変位量算出部301が、最大磁束密度Bm1,Bm2と相関データ記憶部302に記録された近似関数(図3参照。)とに基づいて、薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxを算出する(通過位置算出ステップの一例)。そして、ステップS32に進み、平均磁気特性算出部303が、保磁力Hc1,Hc2から平均保磁力Hc0を算出する。そして、ステップS41に進む。
ステップS41では、磁気特性補正部304が、薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxに応じ、補正データ記憶部305に記録された補正関数(図4参照。)を使用して平均保磁力Hc0を補正して薄鋼板Fの保磁力Hcを算出する(磁気特性補正ステップ)。そして、ステップS42に進む。
ステップS42では、機械的性質算出部306が、補正された保磁力Hcと、機械的性質データ記憶部307に記録された機械的性質関数(図6参照。)とに基づいて、薄鋼板Fの機械的性質として、降伏点Ypを算出する。
かかる動作を通じて、磁気特性測定装置1は、通板される薄鋼板Fの磁気特性を、更に安定して精度良く、かつ、容易に測定することができる。
(磁気特性測定装置による測定結果の一例)
以上、本実施形態に係る磁気特性測定装置1の構成及び動作等について説明した。次に、図8及び図9を参照して、このように構成された磁気特性測定装置1による測定結果の一例を説明する。図8は、本実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出結果の一例を説明するための説明図である。図9は、本実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出結果の一例における効果を説明するための説明図である。
なお、ここで説明する測定結果の一例の測定条件を説明すれば、以下の通りである。
磁化器10,20は、それぞれ板厚が0.23mmの電磁鋼板を積層して形成した。この際の各磁化器10,20中の2つの磁極の間隔は、約200mm、磁化器10,20の幅(図1における紙面と垂直な方向の幅)は、約100mmとなるように、両磁化器10,20を形成した。このように形成した磁化器10,20を、両者のギャップの間隔が約50mmとなるように対向して配置した。また、磁化器10,20間に通板される測定対象として、機械試験により求められた降伏点Ypが約330MPaと既知の薄鋼板Fを用意した。この薄鋼板Fの板厚は、約1mmとした。そして、発振器31の周波数を50Hzとし、励磁コイル12,22に流される励磁電流の振幅を3.6Aとした。なお、励磁コイル12としては、直径2mmのエナメル被覆銅線を150ターンずつ、磁化器10の両腕部に巻き付けて形成した。一方、検出コイル13としては、直径0.2mmのエナメル被覆銅線を使用し、5ターン巻くことにより形成した。そして、励磁コイル22及び検出コイル23も、励磁コイル12及び検出コイル13と同様に形成した。そして、図2〜図6等に示した必要な測定値を取得して磁気特性測定装置1に記録した。なお、上記磁気測定装置の構成及び動作において例示した各測定結果(図2〜図6参照。)を測定した際に使用した測定条件も、上記と同様の条件で測定した。
上記のような測定条件下において、磁気特性測定装置1により薄鋼板Fの機械的性質を測定した結果を、図8に示す。図8に示すように、本実施形態に係る磁気特性測定装置1によれば、薄鋼板Fのパスラインの変動(Δx=±10mm)に対して、降伏点Ypの測定誤差ΔYpは、約5MPa程度に抑制することが可能であることが見て取れる。
一方、図9には、磁気特性補正部304等を備えず、補正をしていない平均保磁力Hc0から薄鋼板Fの機械的性質を算出した結果を示す。図9に示すように、平均保磁力Hc0を補正しない場合、薄鋼板Fのパスラインの変動量Δxが±4mm存在すれば、降伏点Ypの測定誤差ΔYpは、約10MPa程度も存在し、更に変動量Δxの絶対値が増加すれば、測定誤差ΔYpは、2次関数的に増加してしまうことが判る。これに対して、上述の通り、本実施形態に係る磁気特性測定装置1は、磁気特性補正部304等を備えることにより、Δx=±4mmにおいて、降伏点Ypの測定誤差ΔYpを約半分以下に抑えることができる。
(磁気特性測定装置による効果の一例)
以上、本発明の一実施形態に係る磁気特性測定装置1の構成、動作及び測定例等について説明した。この磁気特性測定装置1によれば、磁気特性補正部304を備えることにより、薄鋼板Fの通板中においても、より安定して精度よく薄鋼板Fの保磁力Hcを測定することができる。その結果、磁気特性測定装置1は、更に安定して精度よく薄鋼板Fの降伏点Ypを算出することが可能である。
この際、磁気特性測定装置1は、変位量算出部301等を備えることにより、薄鋼板Fに接触して変位量Δxを測定する変位計などの別途のセンサを配置することなく、薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxを算出することができる。また、磁化器10,20等の構成も、製造工程中を通板する薄鋼板Fの近傍に容易に配置することが可能である。従って、磁気特性測定装置1は、容易に磁気特性を測定することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
(変位量算出等の変更例)
例えば、上記実施形態では、変位量算出部301等により、磁気特性の一つである最大磁束密度Bm1,Bm2から、薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxを算出する場合について説明した。しかし、変位量Δxの算出に使用される磁気特性は、この例に限定されるものではない。つまり、変位量算出部301は、変位量Δxとの間に相関関係がある様々な磁気特性に基づいて、変位量Δxを算出することが可能である。このような磁気特性の例としては、例えば、図10に示すような最大磁界Hm1,Hm2の強度比(例えばHm1/Hm2)や、保磁力比(例えばHc1/Hc2)、残留磁束密度比(例えばBr1/Br2)などが挙げられる。例えば、磁気特性が最大磁界Hm1,Hm2の強度比(Hm1/Hm2)(以下「最大磁界比」ともいう。)である場合には、変位量算出部301により、以下のように変位量Δxが算出される。つまり、図3に示す相関関係の代わりに、図10に示す変位量Δxと最大磁界比(Hm1/Hm2)との間の相関関係を、予め実験等により測定し、この測定結果を使用して、最大磁界比(Hm1/Hm2)を代入すると変位量Δxをかえす近似関数(相関関数、図10参照。)を算出しておき、この算出した近似関数を、相関データ記憶部302に記録しておく。そして、変位量算出部301は、最大磁界Hm1,Hm2に基づいて、まず、最大磁界比(Hm1/Hm2)を算出する。そして、変位量算出部301は、相関データ記憶部302から近似関数を取得して、その近似関数と最大磁界比(Hm1/Hm2)とから、変位量Δxを算出することができる。
なお、薄鋼板Fは、上記実施形態で説明した最大磁束密度比(Bm1/Bm2)や最大磁界比(Hm1/Hm2)は、例えば保磁力比や残留磁束密度比等の他の磁気特性に比べて、変位量Δxに対する相関関係が強い。よって、薄鋼板Fの場合には、変位量算出部301は、最大磁束密度比(Bm1/Bm2)又は最大磁界比(Hm1/Hm2)を使用して変位量を算出することが望ましい。但し、変位量算出部301は、例えば、磁気特性算出部103,203による各磁気特性に対する算出精度等を考慮して、当該精度が最も高い磁気特性を使用して、変位量Δxを算出することも可能である。
また、磁気特性測定装置1は、変位量Δxを、磁気特性に寄らずに検出してもよい。この際、磁気特性測定装置1は、変異量Δxを直接的又は間接的に検出できる他の方法でも、簡便であれば用いることができる。また、この場合、磁気特性測定装置1は、変位量算出部301を必ずしも備える必要はない。磁気特性測定装置1は、例えば、薄鋼板Fに接触して薄鋼板Fのパスラインの変位量Δxを測定する機械式変位計や、薄鋼板Fに対して光を発し薄鋼板Fにおける反射光から変位量Δxを測定する光学式変位計などのように、薄鋼板Fの変位量Δxを測定する変位計(センサ)を備えてもよい。図7に示した磁気特性測定装置1の動作中のステップS32の代わりに変位量測定ステップを処理してもよい。
また、上記実施形態では、磁気特性測定装置1は、平均磁気特性算出部303を備える場合について説明した。しかし、本発明はかかる例に限定されず、磁気特性測定装置1は、平均磁気特性算出部303を備えなくてもよい。この場合、例えば、補正データ記憶部305には、保磁力Hc1又は保磁力Hc2と変位量Δxとの相関関係を表した補正関数を記録しておき、磁気特性補正部304は、この補正関数と、補正関数に表された保磁力Hc1又は保磁力Hc2とに基づいて、薄鋼板Fの保磁力Hcを算出することも可能である。
(機械的性質の変更例)
また、上記実施形態では、機械的性質として降伏点Ypを例に挙げて説明した。しかしながら、この機械的性質は、上述の通り、この例に限定されるものではない。機械的性質としては、磁気特性との間に何らかの相関関係が認められるものであれば、如何なる機械的性質も算出可能である。なお、機械的性質は、上述の通り、測定対象の機械的な変形及び破壊に関する諸性質を意味し、その降伏点Yp以外の例としては、引張強度・伸び率・絞り・硬さ・衝撃値・疲れ強さ・クリープ強さなどが挙げられる。ここで機械的性質算出部306による他の機械的性質の幾つかの算出例について説明する。
上記実施形態に係る機械的性質算出部306は、薄鋼板Fにおいて予め測定した保磁力Hcと降伏点Ypとの相関関係を表した機械的性質関数を機械的性質データ記憶部307から取得して、その機械的性質関数に基づいて、磁気特性補正部304が補正した保磁力Hcから降伏点Ypを算出する。そして、この機械的性質関数として、図6を例示した。機械的性質算出部306は、他の機械的性質を求める場合も、同様に算出することが可能である。
例えば、図11には、薄鋼板Fに対する保磁力Hcと引張強度Tsとの相関関係(つまり機械的性質関数)を示す。また、図12には、薄鋼板Fに対する保磁力Hcと伸び率ELとの相関関係(つまり機械的性質関数)を示す。図6に示した保磁力Hcと降伏点Ypとの間の機械的性質関数に代えてか加えて、この図11に示す保磁力Hcと引張強度Tsとの機械的性質関数、及び、図12に示す保磁力Hcと伸び率ELとの機械的性質関数の少なくとも一方をも予め実験等により求めて、機械的性質データ記憶部307に記録しておく。そして、機械的性質算出部306は、機械的性質データ記憶部307から機械的性質関数を取得して、これらの機械的性質関数に磁気特性補正部304が補正した保磁力Hcを代入して、薄鋼板Fの降伏点Ypだけでなく引張強度Tsや伸び率ELを求めることが可能である。
なお、引張強度Tsや伸び率ELなどの機械的性質も薄鋼板Fの性質(例えば、厚みや成分など)により異なる。よって、機械的性質データ記憶部307には、薄鋼板Fの性質に応じた複数の機械的性質関数を記録しておき、機械的性質算出部306は、薄鋼板Fの製造工程の制御装置等から薄鋼板Fの性質に関する情報を取得して、この情報に示された性質に応じた機械的性質関数を、機械的性質データ記憶部307から取得して使用することが望ましい。
このように、機械的性質は、上記実施形態での例「降伏点Yp」に限定されるものではなく、ここで図11及び図12に例示した「引張強度Ts」及び「伸び率EL」であってもよい。もちろん、この機械的性質は、これら以外にも、例えば絞り・硬さ・衝撃値・疲れ強さ・クリープ強さなどのように、機械的な変形及び破壊に関する諸性質を意味し、かつ、磁気特性との間に相関関係が存在するものであってもよく、機械的性質算出部306は、これらの様々な機械的性質を上記同様に算出可能であることは言うまでもない。
(磁気特性の変更例)
また、これらの機械的性質は薄鋼板Fの磁気特性から算出され、上記実施形態では、その磁気特性として「保磁力Hc(相当値)」を例に挙げて説明した。しかしながら、この磁気特性も、上述の通り、この例に限定されるものではない。磁気特性としては、様々な磁気的性質の特性値を採用することができる。ただし、単に磁気特性を算出するだけでなく、上記のように機械的性質を算出する場合には、磁気特性測定装置1が測定する磁気測定は、機械的性質との間に何らかの相関関係が認められるものであることが望ましい。なお、磁気特性とは、上述の通り、磁性体が磁化された場合にその磁性体が示す磁気的な諸特性を意味し、その保磁力Hc以外の例としては、鉄損・最大磁束密度(飽和磁束密度)・透磁率・残留磁束密度(残留磁化)などが挙げられる。ここで、機械的性質との間に相関関係が存在する磁気特性の他の例として、残留磁束密度Brについて説明する。
磁気特性の例としての残留磁束密度Brと機械的性質との相関関係(つまり機械的性質関数)を、図13〜図15に示す。図13には、薄鋼板Fに対する残留磁束密度Brと降伏点Ypとの機械的性質関数を示す。図14には、薄鋼板Fに対する残留磁束密度Brと引張強度Tsとの機械的性質関数を示す。そして図15には、薄鋼板Fに対する残留磁束密度Brと伸び率ELとの機械的性質関数を示す。図13〜図15に示すように、磁気特性の例としての残留磁束密度Brと機械的性質と間にも相関関係が存在する。
そこで、磁気特性として残留磁束密度Brを使用する場合、図13〜図15に示すような残留磁束密度Brと各磁気特性との間の機械的性質関数を、予め実験等により測定して作成し、機械的性質データ記憶部307に記録しておく。一方、磁気特性算出部103,203と、平均磁気特性算出部303と、磁気特性補正部304となどにより、残留磁束密度Brを算出する。そして、機械的性質算出部306は、これらの機械的性質関数を機械的性質データ記憶部307から取得して、その機械的性質関数に基づいて、磁気特性補正部304が補正した残留磁束密度Brから降伏点Yp・引張強度Ts・伸び率ELなどの機械的性質を算出することができる。ただし、この場合も機械的性質は、これらの例に限定されるものではない。
なお、磁気特性算出部103,203と平均磁気特性算出部303と磁気特性補正部304となどによる残留磁束密度Brを算出は、上記保磁力Hcの場合と同様に行うことが可能である。より具体的に説明すると以下の通りである。
上述の通り、磁気特性算出部103,203は、図2に示すような各磁化器10,20に応じたヒステリシスループL1,L2を算出する。このヒステリシスループL1,L2中、磁界H1,H2が0となるときの磁束密度B1,B2の絶対値が、各磁化器10,20に対応した残留磁束密度Br1,Br2を表す。そこで、磁気特性算出部103,203は、各磁化器10,20に対応した保磁力Hc1,Hc2に代えて、ヒステリシスループL1,L2から残留磁束密度Br1,Br2を算出する。
そして、平均磁気特性算出部303は、磁気特性算出部103,203が算出した2つの残留磁束密度Br1,Br2に基づいて、平均残留磁束密度Br0を算出する。
その後、磁気特性補正部304は、変位量算出部301が算出した変位量Δxに応じて、この平均残留磁束密度Br0を補正する。この場合、図4に示した変位量Δxと平均保磁力Hc0の誤差ΔHcとの間の補正関数の代わりに、図16に示すような、変位量Δxと平均磁束密度Br0の誤差ΔBr(%)との間の同様な補正関数を、予め実験等により測定及び算出して、補正データ記憶部305に記録しておく。そして、磁気特性補正部304は、変位量Δxと図16に示す補正関数とにより、上記同様に、平均残留磁束密度Br0の誤差ΔBrを算出し、その誤差ΔBrを平均残留磁束密度Br0に加算又は減算して、誤差を低減させた薄鋼板Fの残留磁束密度Brを算出することが可能である。
このように、磁気特性も、上記実施形態での例「保磁力Hc」に限定されるものではなく、ここで図13〜図15で例示した「残留磁束密度Br」であってもよい。もちろん、この磁気特性は、これら以外にも、例えば鉄損・最大磁束密度(飽和磁束密度)・透磁率などの磁気的な諸特性を意味するものであればよく、磁気特性測定装置1は、これらの様々な磁気特性を上記同様に測定可能であることは言うまでもない。この際、機械的性質を算出しないのであれば、磁気特性測定装置1は、磁気特性として機械的性質との間に相関関係が認められないような磁気測定をも測定可能である。
また、上記一実施形態で説明した一連の処理の少なくとも一部は、専用のハードウエアにより実行させてもよいが、ソフトウエアにより実行させてもよい。一連の処理をソフトウエアにより行う場合、汎用又は専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上記の一連の処理を実現することができる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)と、HDD(Hard Disk Drive)・ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)等の記録装置と、LAN(Local Area Network)・インターネット等のネットワークに接続された通信装置と、マウス・キーボード等の入力装置と、フレキシブルディスク、各種のCD(Compact Disc)・MO(Magneto Optical)ディスク・DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体等を読み書きするドライブと、モニタなどの表示装置・スピーカやヘッドホンなどの音声出力装置などの出力装置等と、を有してもよい。そして、このコンピュータは、記録装置・リムーバブル記録媒体に記録されたプログラム、又はネットワークを介して取得したプログラムを実行することにより、上記一連の処理を実行してもよい。
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
本発明の一実施形態に係る磁気特性測定装置の構成について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置が測定する磁気特性の一例を説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置によるパスラインの変位量の算出について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による磁気特性の補正について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による磁気特性の補正について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置の動作について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出結果の一例を説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出結果の一例における効果を説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置によるパスラインの変位量の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による機械的性質の算出の変更例について説明するための説明図である。 同実施形態に係る磁気特性測定装置による磁気特性の補正の変更例について説明するための説明図である。
符号の説明
1 磁気特性測定装置
10,20 磁化器
11,21 ヨーク
12,22 励磁コイル
13,23 検出コイル
31 発振器
32 励磁電源
101,201 磁界測定部
102,202 磁束密度測定部
103,203 磁気特性算出部
301 変位量算出部
302 相関データ記憶部
303 平均磁気特性算出部
304 磁気特性補正部
305 補正データ記憶部
306 機械的性質算出部
307 機械的性質データ記憶部
F 薄鋼板
H,H1,H2 磁界
Hm1,Hm2 最大磁界
Hc,Hc1,Hc2 保磁力
Hc0 平均保磁力
B1,B2 磁束密度
Bm1,Bm2 最大磁束密度
Br1,Br2 残留磁束密度
Yp 降伏点
Ts 引張強度
EL 伸び率

Claims (14)

  1. 移動する帯状又は板状の金属磁性体を交番磁界で磁化して該磁性体の、磁化された場合に示す磁気的な諸特性である磁気特性を測定する磁気特性測定装置であって、
    前記磁性体を磁化するための磁化器であって、ヨーク及び該ヨークの外側に巻かれた励磁コイルを有し、前記帯状又は板状の磁性体を挟んで互いに対向配置された第1の磁化器及び第2の磁化器と、
    前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器にそれぞれ配置され、前記第1の磁化器又は前記第2の磁化器により誘起される磁束を検出して検出電圧を出力する第1の検出コイル及び第2の検出コイルと、
    前記第1の検出コイル及び前記第2の検出コイルそれぞれから出力される検出電圧を入力信号として、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器により前記磁性体にそれぞれ誘起された磁束密度を測定する磁束密度測定部と、
    前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれの励磁コイルに流れる励磁電流の値からそれぞれ算出した磁界の大きさと、前記磁束密度測定部が測定した前記磁性体の磁束密度とに基づいて、前記第1の磁化器に対応する磁気特性と、前記第2の磁化器に対応する磁気特性との平均値である、前記磁性体の磁気特性を算出する磁気特性算出部と、
    前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量、および予め測定された前記変位量と前記磁気特性の誤差との相関関係を使用して、前記磁気特性算出部が算出した磁気特性を、前記変位量に起因した該磁気特性の誤差が低減するように補正する磁気特性補正部と、
    を有することを特徴とする、磁気特性測定装置。
  2. 前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量を算出する変位量算出部を更に有し、
    前記磁束密度測定部は、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器が発生させた磁界それぞれによる前記磁性体の磁束密度を検出し、
    前記磁気特性算出部は、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれの磁界の大きさと、該磁界それぞれによる前記磁束密度と、に基づいて、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性を算出し、
    前記変位量算出部は、前記磁気特性算出部が算出し前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性に基づいて、前記磁性体の通過位置の変位量を算出することを特徴とする、請求項1に記載の磁気特性測定装置。
  3. 前記磁気特性算出部は、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応し最大磁束密度を含む前記磁気特性を算出し、
    前記変位量算出部は、前記第1の磁化器に対応した前記最大磁束密度と、前記第2の磁化器に対応した前記最大磁束密度との比に基づいて、前記磁性体の通過位置の変位量を算出することを特徴とする、請求項2に記載の磁気特性測定装置。
  4. 前記磁気特性補正部は、前記磁気特性算出部が算出し前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性の平均値を補正することを特徴とする、請求項2又は3に記載の磁気特性測定装置。
  5. 前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量を測定する変位計を更に有し、
    前記磁気特性補正部は、前記変位計が測定した前記通過位置の変位量に応じて、前記磁気特性算出部が算出した磁気特性を補正することを特徴とする、請求項1に記載の磁気特性測定装置。
  6. 前記磁気特性算出部は、前記磁性体の保磁力を含む磁気特性を算出し、
    前記磁気特性補正部は、前記磁気特性算出部が算出した保磁力を補正することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気特性測定装置。
  7. 前記磁気特性補正部が補正した前記磁性体の磁気特性と、該磁性体の磁気特性と機械的性質との間の既知の相関関係と、に基づいて、前記磁性体の機械的性質を算出する機械的性質算出部を更に有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気特性測定装置。
  8. 移動する帯状又は板状の金属磁性体を交番磁界で磁化して該磁性体の、磁化された場合に示す磁気的な諸特性である磁気特性を測定する磁気特性測定方法であって、
    ヨーク及び該ヨークの外側に巻かれた励磁コイルを有し、前記帯状又は板状の磁性体を挟んで互いに対向配置された第1の磁化器及び第2の磁化器により、前記磁性体を磁化させる磁化ステップと、
    前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器にそれぞれ配置された第1の検出コイル及び第2の検出コイルにより、前記第1の磁化器又は前記第2の磁化器により誘起される磁束を検出して検出電圧を出力する磁束検出ステップと、
    前記磁束検出ステップで出力された検出電圧から、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器により前記磁性体にそれぞれ誘起された磁束密度を測定する磁束密度測定ステップと、
    前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれの励磁コイルに流れる励磁電流の値からそれぞれ算出した磁界の大きさと、前記磁束密度測定ステップで測定した前記磁性体の磁束密度とに基づいて、前記第1の磁化器に対応する磁気特性と、前記第2の磁化器に対応する磁気特性との平均値である、前記磁性体の磁気特性を算出する磁気特性算出ステップと、
    前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量、および予め測定された前記変位量と前記磁気特性の誤差との相関関係を使用して、前記磁気特性算出ステップで算出した磁気特性を、前記変位量に起因した該磁気特性の誤差が低減するように補正する磁気特性補正ステップと、
    を有することを特徴とする、磁気特性測定方法。
  9. 前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量を算出する変位量算出ステップを更に有し、
    前記磁束密度測定ステップでは、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器が発生させた磁界それぞれによる前記磁性体の磁束密度を検出し、
    前記磁気特性算出ステップでは、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれの磁界の大きさと、該磁界それぞれによる前記磁束密度と、に基づいて、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性を算出し、
    前記変位量算出ステップでは、前記磁気特性算出ステップで算出され前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性に基づいて、前記磁性体の通過位置の変位量を算出することを特徴とする、請求項8に記載の磁気特性測定方法。
  10. 前記磁気特性算出ステップでは、前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応し最大磁束密度を含む前記磁気特性を算出し、
    前記変位量算出ステップでは、前記第1の磁化器に対応した前記最大磁束密度と、前記第2の磁化器に対応した前記最大磁束密度との比に基づいて、前記磁性体の通過位置の変位量を算出することを特徴とする、請求項9に記載の磁気特性測定方法。
  11. 前記磁気特性補正ステップでは、前記磁気特性算出ステップで算出され前記第1の磁化器及び前記第2の磁化器それぞれに対応した磁気特性の平均値を補正することを特徴とする、請求項9又は10に記載の磁気特性測定方法。
  12. 前記第1の磁化器と前記第2の磁化器との間における前記磁性体の通過位置の変位量を測定する変位量測定ステップを更に有し、
    前記磁気特性補正ステップでは、前記変位量測定ステップで測定された前記通過位置の変位量に応じて、前記磁気特性算出ステップで算出された磁気特性を補正することを特徴とする、請求項8に記載の磁気特性測定方法。
  13. 前記磁気特性算出ステップでは、前記磁性体の保磁力を含む磁気特性を算出し、
    前記磁気特性補正ステップでは、前記磁気特性算出ステップで算出された保磁力を補正することを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の磁気特性測定方法。
  14. 前記磁気特性補正ステップで補正された前記磁性体の磁気特性と、該磁性体の磁気特性と機械的性質との間の既知の相関関係と、に基づいて、前記磁性体の機械的性質を算出する機械的性質算出ステップを更に有することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の磁気特性測定方法。
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