JP6607242B2 - 方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6607242B2
JP6607242B2 JP2017195775A JP2017195775A JP6607242B2 JP 6607242 B2 JP6607242 B2 JP 6607242B2 JP 2017195775 A JP2017195775 A JP 2017195775A JP 2017195775 A JP2017195775 A JP 2017195775A JP 6607242 B2 JP6607242 B2 JP 6607242B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
processing
grain
electrical steel
magnetic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017195775A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018124266A (ja
Inventor
敬弘 腰原
淳一 四辻
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Publication of JP2018124266A publication Critical patent/JP2018124266A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6607242B2 publication Critical patent/JP6607242B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Measuring Magnetic Variables (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Magnetic Means (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法に関する。
電磁鋼板の電磁気特性は、製品性能を左右する重要な特性の一つであり、その評価項目としては、鉄損、最大透磁率、磁歪等がある。ここで、鉄損とは、電磁鋼板に交流磁場を印加した際、磁気ヒステリシスや渦電流によって磁気エネルギーが熱エネルギーとして消費されるために、エネルギーの損失が生じる性質のことを意味する。従って、鉄損が小さい電磁鋼板は、エネルギー変換効率がより高くなるために鉄損が大きい電磁鋼板に比べて有利である。なお、方向性電磁鋼板については、鉄損を低減する技術が開発されており、その一つとして、物理的な手法によって表層に圧延方向に周期的に局所的な不均一性を導入することにより磁区の幅を細分化して鉄損を低減する磁区細分化加工プロセスがある。
この磁区細分化加工プロセスでは、表層に不均一性を導入すればよく、必ずしも穴や溝等の形状の変化を表層に設ける手法に限らず、表層に形状の変化を伴わない不均一性を導入する手法であればよい。これは、例えば、熱や圧力等を加える手法で実現することができる。より具体的には、レーザ、電子ビーム、プラズマジェット等を照射する方法によって表層に不均一性を加えることができる。方向性電磁鋼板には磁化容易軸に平行な圧延方向に磁化した磁区が形成されている。しかしながら、これらの磁区細分化加工プロセスによって加えられた表層の不均一部には、何らかの傷や形状の変化はなくとも、圧延方向とは異なる方向に磁化した磁区が局所的に形成されており、この磁化の不連続性が磁区細分化を生じさせている。
ところで、電磁鋼板の電磁気特性を測定する方法として、特許文献1,2に記載の方法が知られている。具体的には、特許文献1に記載の方法は、B−H曲線を測定することによって磁気ヒステリシスを求めると共に励磁信号に高周波成分を含ませることによって微分透磁率を求めている。また、特許文献2に記載の方法は、磁化容易軸方向に電磁鋼板を直流磁化すると共に磁化容易軸方向に対して垂直な方向に電磁鋼板を交流磁化することによって、交流磁化の影響度合いから電磁鋼板の電磁気特性を測定する。
特開2011−226840号公報 特開2010−54254号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では、B−H曲線を測定するために電磁鋼板を飽和状態まで磁化する必要がある。このため、特許文献1記載の方法によれば、B−H曲線の1ループ分の測定時間が最低でも必要であり、電磁鋼板の電磁気特性の測定に多くの時間を要する。一方、特許文献2記載の方法では、磁化容易軸方向に磁区を固定するために直流磁化を磁気飽和レベルに近づける必要がある。このため、特許文献2記載の方法によれば、電磁鋼板の電磁気特性の測定に多くの電力が必要となると共に、直流磁化と交流磁化とを行うために装置の大型化及び複雑化が避けられない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、多くの時間及びコストを要することなく簡素な構成で方向性電磁鋼板の電磁気特性を測定することによって方向性電磁鋼板の加工状態を評価可能な方向性電磁鋼板の加工状態評価方法及び加工状態評価装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、方向性電磁鋼板の製造歩留まりを向上可能な方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価方法は、磁化容易軸方向に対して垂直な方向に磁区細分化加工が施された方向性電磁鋼板に対して、前記磁区細分化加工が施されていない領域にある磁区の磁壁は移動するが前記磁区細分化加工が施された領域にある磁区の磁化方向が前記磁化容易軸方向に対して平行にならない大きさの直流又は交流の磁場を印加する磁化ステップと、前記磁場の印加に伴い前記方向性電磁鋼板に発生する漏洩磁束を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された漏洩磁束に基づいて前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価する処理ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価方法は、上記発明において、前記処理ステップは、複数のチャンネルの漏洩磁束の時系列信号に対して高速フーリエ変換演算処理を施すことにより各チャンネルの周波数分布を算出し、各チャンネルの周波数分布を加算し、加算された各チャンネルの周波数分布を用いて磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価装置は、磁化容易軸方向に対して垂直な方向に磁区細分化加工が施された方向性電磁鋼板に対して、前記磁区細分化加工が施されていない領域にある磁区の磁壁は移動するが前記磁区細分化加工が施された領域にある磁区の磁化方向が前記磁化容易軸方向に対して平行にならない大きさの直流又は交流の磁場を印加する磁化器と、前記磁場の印加に伴い前記方向性電磁鋼板に発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、前記磁気センサによって検出された漏洩磁束に基づいて前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価する信号処理部と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価方法による前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態の評価結果に基づいて前記磁区細分化加工の条件を変更し、変更した条件に従って前記磁区細分化加工を行うことにより方向性電磁鋼板を製造するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価方法及び加工状態評価装置によれば、多くの時間及びコストを要することなく簡素な構成で方向性電磁鋼板の電磁気特性を測定することによって方向性電磁鋼板の加工状態を評価することができる。また、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法によれば、方向性電磁鋼板の製造歩留まりを向上させることができる。
図1は、本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価装置の構成を示す模式図である。 図2は、磁区細分化加工状態の良い方向性電磁鋼板及び悪い方向性電磁鋼板から検出された漏洩磁束の2次元マップを示す図である。 図3は、磁区細分化加工状態の良い方向性電磁鋼板について、外部磁化レベルを強くした場合に得られた漏洩磁束の2次元マップを示す図である。 図4は、外部磁化によって磁壁が移動する様子を示す模式図である。 図5は、本発明の一実施形態である方向性電磁鋼板の加工状態評価装置の構成を示す模式図である。 図6は、磁区細分化加工が十分である方向性電磁鋼板及び不十分である方向性電磁鋼板について、磁気センサにより50mm×50mmの領域の漏洩磁束を検出した例を示す図である。 図7は、実施例における磁気センサの構成を示す模式図である。 図8は、チャンネル1及びチャンネル2の磁気センサの出力信号を時系列に示した図である。 図9は、図6に示した磁区細分化加工が十分である方向性電磁鋼板及び不十分である方向性電磁鋼板の漏洩磁束測定結果を磁化容易軸方向に高速フーリエ変換演算処理して4チャンネル分の値を加えた結果を示す図である。 図10は、高速フーリエ変換演算処理結果の強度レベルと鉄損との相関係数を漏洩磁束計測を実施する面積に対してプロットした図である。 図11は、本発明の一実施形態である加工状態評価処理の流れを示すフローチャートである。
本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価方法及び加工状態評価装置は、漏洩磁束法を利用して方向性電磁鋼板の漏洩磁束を非破壊、且つ、非接触で測定することによって方向性電磁鋼板の加工状態を評価する。方向性電磁鋼板の製造過程において、磁区細分化加工プロセスは、その原理的にも方向性電磁鋼板の磁性を局所的に変化させることを意味する。従って、磁区細分化加工が施された領域(以下、磁区細分化加工部と表記)を局所的な磁性の不連続部分と考えれば、磁区細分化加工部から漏洩する磁束(漏洩磁束)が存在するので、漏洩磁束法によって漏洩磁束を測定することによって方向性電磁鋼板の加工状態を評価することができる。
ところで、一般に、漏洩磁束を多く発生させることを主目的とする場合、外部磁化レベルを強くし、磁気飽和レベルに近いレベルまで方向性電磁鋼板を磁化させる。しかしながら、探傷試験等とは異なり、磁区細分化のための局所的な加工部には形状の変化がないため、このように外部磁化レベルが強すぎる場合、ほぼ全ての磁区が磁化容易軸方向に揃ってしまい、磁区細分化加工部から漏洩する磁束と磁区細分化加工部以外の領域から漏洩する磁束との間に差が無くなることにより、方向性電磁鋼板の加工状態を評価できなくなる。そこで、本発明では、磁化容易軸方向への磁化レベルを、磁化方向が磁化容易軸方向に平行な磁区の磁壁は移動するが、磁区細分化加工部における磁区の磁化方向が磁化容易軸方向に平行にならない程度の弱い外部磁化レベルとする。これにより、磁区細分化加工部から漏洩する磁束と磁区細分化加工部以外の領域から漏洩する磁束との間に差が生じるので、例えば磁区細分化加工部からの漏洩磁束量が小さければ磁区細分化加工が不十分であると判断する等して、方向性電磁鋼板の加工状態を評価することができる。
図1は、本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明に係る方向性電磁鋼板の加工状態評価装置1は、漏洩磁束検出部2及び信号処理部3を主な構成要素として備えている。漏洩磁束検出部2は、磁化容易軸方向に方向性電磁鋼板Sを磁化する電磁石等の磁化器2aと、磁気センサ2bと、を備えている。漏洩磁束検出部2は、方向性電磁鋼板S上に非接触で設置され、漏洩磁束検出部2の下方を通過する方向性電磁鋼板Sに対して外部磁化を印加すると共に方向性電磁鋼板Sの漏洩磁束を検出する。そして、信号処理部3は、漏洩磁束検出部2によって検出された漏洩磁束に基づいて方向性電磁鋼板Sの加工状態を評価する。
図2(a),(b)はそれぞれ、磁区細分化加工状態の良い方向性電磁鋼板及び悪い方向性電磁鋼板から検出された漏洩磁束の2次元マップを示す図である。図2(a)に示すように、磁区細分化加工状態の良い方向性電磁鋼板では、筋状の磁区細分化加工部が検出された。しかしながら、図2(b)に示すように、磁区細分化加工状態の悪い方向性電磁鋼板では、筋状の磁区細分化加工部をはっきりと確認することができなかった。なお、磁区細分化加工状態が良い方向性電磁鋼板の鉄損値は、磁区細分化加工状態が悪い方向性電磁鋼板の鉄損値よりも低い。従って、筋状の磁区細分化加工部の検出状況によって方向性電磁鋼板の鉄損値を推定することもできる。
ところが、磁区細分化加工状態が良い場合であっても、外部磁化レベルが強すぎる場合には図3に示すように筋状の磁区細分化加工部を検出することができない。図3は、磁区細分化加工状態の良い方向性電磁鋼板について、外部磁化レベルを強くした場合に得られた漏洩磁束の2次元マップを示す図である。従って、方向性電磁鋼板の加工状態を評価する際には適切な外部磁化レベルが必要となる。この現象は、次のように説明できる。図4(a)〜(c)は、外部磁化によって磁壁が移動する様子を示す模式図であり、磁壁の移動によって磁化容易軸方向の磁化状態が強まることを表している。なお、図4(a)〜(c)において、符号SPは磁区細分化加工部、符号MDは磁区、符号DWは磁壁を示している。
一般に、磁区細分化加工プロセスは、磁化容易軸方向に対して垂直な方向へ施工される。従って、図4(a),(b)に示すように、磁化容易軸方向の外部磁化レベルが強まると、磁化方向が磁化容易軸方向に平行な方向である磁区MDの磁壁DWは移動するが、磁区細分化加工部SPが磁化容易軸方向の磁束の妨げとなり、磁場が漏洩磁束として方向性電磁鋼板の外部に漏洩しやすくなる。よって、磁気センサ2bによって漏洩磁束を検出することができる。しかしながら、磁化容易軸方向の外部磁化レベルが強くなりすぎると、図4(c)に示すように、磁区細分化加工部SPの磁区MDの磁化方向が磁化容易軸方向に揃ってしまい、漏洩磁束が逆に小さくなってしまう。
このため、方向性電磁鋼板の加工状態を評価する際には、磁化方向が磁化容易軸方向に平行な磁区の磁壁は移動するが、磁区細分化加工部の磁区の磁化方向が磁化容易軸方向に平行にならない大きさの直流又は交流の磁場を印加する。具体的には、方向性電磁鋼板の加工状態を評価する際には、磁化方向が磁化容易軸方向に平行な磁区の幅が磁区細分化加工部の磁区の幅になる磁場より小さい磁場を印加する。なお、実運用上では、方向性電磁鋼板の成分や厚みに応じて印加する磁場の大きさを実験やシミュレーションにより予め定めておき、加工状態を評価する際には評価対象の方向性電磁鋼板の成分や厚みに対応する磁場を印加する。
そして、評価の結果、方向性電磁鋼板の加工状態が所望の状態にない場合、加工機へフィードバックして早期に加工状態を修正することにより、仕様の外れた方向性電磁鋼板を製造することを避けることができ、歩留まりも向上する。具体的には、レーザや電子線を用いて方向性電磁鋼板に歪みを導入することによって磁区細分化加工部を形成する場合には、レーザや電子線の出力、フォーカス、走査速度、長手方向の歪みの繰り返し間隔(線間隔)等を調整することにより、方向性電磁鋼板の加工状態を所望の状態に調整する。
以下、本発明の一実施形態である方向性電磁鋼板の加工状態評価装置の構成及び動作について説明する。
図5(a),(b)は、本発明の一実施形態である方向性電磁鋼板の加工状態評価装置の構成を示す模式図である。図5(a),(b)に示すように、本発明の一実施形態である方向性電磁鋼板の加工状態評価装置10は、漏洩磁束検出部12、信号処理部13、及び励磁電源14を主な構成要素として備えている。なお、本実施形態では、信号処理部13と励磁電源14とを別体で構成したが、信号処理部13と励磁電源14とを一体で構成してもよい。
漏洩磁束検出部12は、磁化器12a及び磁気センサ12bを備え、方向性電磁鋼板Sの上面に対向配置されている。
磁化器12aは、励磁電源14から供給される励磁電力(交流の場合は励磁周波数)を利用して方向性電磁鋼板Sに外部磁化を印加する。本実施形態では、磁区細分化加工が施されていない領域にある磁区の磁壁は移動するが、磁区細分化加工が施された領域にある磁区の磁化方向が磁化容易軸方向に対して平行にならない大きさの外部磁化として0〜100AT(100AT:1000巻きコイルに0.1Aの電流を通電することにより得られる外部磁化の大きさ)の範囲内とした。このとき、方向性電磁鋼板Sの磁束密度は0〜1.7mTであった。磁化器12aは、電磁石でもよいし、永久磁石を用いたものであってもよい。方向性電磁鋼板Sの板厚やリフトオフの微調整等を考慮すると、電磁石の方が調整が容易と考えられる。但し、永久磁石を用いたものであっても、磁気センサ12bと永久磁石との相対位置を別途調整可能な構造にすることにより適用可能である。
磁気センサ12bは、外部磁化が印加されることに伴い発生する方向性電磁鋼板Sの漏洩磁束を検出する。なお、方向性電磁鋼板Sに印加する外部磁化が交流である場合には、励磁周波数に従って検波することによって方向性電磁鋼板Sの漏洩磁束を検出する。また、その際、検出信号の位相を調整することが望ましい。本実施形態では、磁気センサ12bは、TMR(トンネル効果型)センサによって構成され、方向性電磁鋼板Sの表面に対して平行な漏洩磁束成分を検出する構成とした。なお、磁気センサ12bとしては、高感度のものを用いることが望ましく、SQUID、MI(磁気インピーダンス型)、ホール素子、GMR(磁気抵抗型)、E型の強磁性体コアにコイルを巻いたE型センサ等を用いることができる。
信号処理部13は、増幅器13a、複数チャンネルのバンドパスフィルタ(BPF)13b、及び情報処理部13cを備えている。増幅器13aは、磁気センサ12bの出力信号を増幅して複数チャンネルのBPF13bに出力する。各チャンネルのBPF13bは、増幅器13aの出力信号から設定された周波数帯の出力信号を抽出し、抽出した出力信号を情報処理部13cに出力する。情報処理部13cは、各チャンネルのBPF13bの出力信号を用いて方向性電磁鋼板Sの磁区細分化加工部の加工状態を評価する。
なお、表皮効果を利用して方向性電磁鋼板の厚さ方向に磁束分布を発生させる場合には、交流電流による交流漏洩磁束法も適用可能である。但し、この場合には、別途交流処理回路が必要である。交流処理回路としては、出力信号の振幅値のみの評価であれば、絶対値回路とローパスフィルタがあればよい。出力信号の振幅値と位相とを評価するのであれば、励磁周波数で検波を行う必要があるので、検波回路が必要となる。
磁化器と磁気センサとを方向性電磁鋼板に対して相対的に移動、走査することにより、方向性電磁鋼板の加工状態を評価した。図6(a),(b)はそれぞれ、磁区細分化加工が十分である方向性電磁鋼板及び不十分である方向性電磁鋼板について、磁気センサにより50mm×50mmの領域の漏洩磁束を検出した例を示す図である。図6(a)に示すように、磁区細分化加工が十分である方向性電磁鋼板では、筋状の磁区細分化加工部SPを確認することができた。これに対して、磁区細分化加工が不十分である方向性電磁鋼板では、筋状の磁区細分化加工部SPが不明確であった。なお、このような磁区細分化加工は、5〜10mm程度の間隔で行われるため、一定間隔で筋が見える特徴がある。本例では、磁区細分化加工部SPの間隔は8mmであった。
このような筋状の磁区細分化加工部SPを検出するにあたっては、磁気センサの出力信号を処理する必要がある。例えば図6(a),(b)に示すような漏洩磁束の2次元マップを測定するためには、磁化器及び磁気センサに対して方向性電磁鋼板が相対的に移動する必要があるが、本例では、図7に示すように複数の磁気センサ12bを基板12c上に固定し、方向性電磁鋼板が移動する場合を考える。具体的には、磁気センサ12bのリフトオフ量(磁気センサ12bと方向性電磁鋼板との間の距離)を0.3〜3mmの範囲内とし、方向性電磁鋼板の幅方向に4mm間隔で4個の磁気センサ12bを配置した。リフトオフの大きさは好ましくは0.5〜2mmの範囲内である。
加工状態が不安定になる兆候を捉える際には、方向性電磁鋼板の全幅について測定を行う必要はないと仮定し、方向性電磁鋼板の幅が1500mmである場合、例えば4mm間隔4チャンネルを1ユニット、ユニット間隔を100mmとして、14〜15ユニット配置することで対応可能と考えた。なお、全幅もれなく測定する場合には、磁気センサやユニットの間隔を細かくすることにより対応可能であるが、チャンネル数が増えると共に装置規模も大きくなるので、使い方に応じた規模設計が必要である。
図8(a),(b)はそれぞれ、チャンネル1(ch1)及びチャンネル2(ch2)の磁気センサの出力信号を時系列に示した図である。図8(a),(b)に示すように、方向性電磁鋼板の速度が1m/sであったため、8mm間隔の磁区細分化加工部が8msの間隔の信号変化として検出された。このような出力信号の評価指標例として周波数解析を使用する。具体的には、各チャンネルの一定時間内の時系列信号に対して高速フーリエ変換(FFT)演算処理を施すことにより各チャンネルの周波数分布を求め、各チャンネルの周波数分布を加算する。
通常は、演算量低減のため各チャンネルの時系列信号を加算してからFFT演算処理により各チャンネルの周波数分布を求める。しかしながら、加工によって生じる筋状の磁区細分化加工部SPが斜めになった場合には、先に時系列信号を加算すると磁区細分化加工部SPの位置が不明瞭になる。これに対して、本方式のように、先にFFT演算処理を行うことによって、加工によって生じる筋状の磁区細分化加工部SPが磁化容易軸方向に対して斜めになった場合であっても、精度を落とさずに磁区細分化加工部SPの位置を計測することができる。
図9は、図6(a),(b)に示した磁区細分化加工が十分である方向性電磁鋼板及び不十分である方向性電磁鋼板の漏洩磁束測定結果を磁化容易軸方向にFFT演算処理して4チャンネル分の値を加えた結果を示す図である。縦軸はFFT演算処理結果の複素数を絶対値で表した値(以下、強度レベルと呼称することがある)を示し、横軸はFFT演算処理の結果得られた周波数を波長に換算した値を示す。磁区細分化加工部が8mm間隔である場合、波長8mmの強度レベルを評価対象とする。図9に示すように、磁区細分化加工が不十分な方向性電磁鋼板では、波長8mmの強度レベルが小さく、磁区細分化加工が十分な方向性電磁鋼板では、波長8mmの強度レベルが大きくなり、この値を磁区細分化加工の指標とすることができる。
また、このFFT演算処理結果の強度レベルは、鉄損と高い相関をもつことが確認できた。図10は、FFT演算処理結果の強度レベルと鉄損との相関係数を漏洩磁束計測を実施する面積に対してプロットした図である。図10に示すように、5000mm以上の面積を計測すると相関係数が0.8以上と良い相関があり、7000mm以上の面積を計測すると相関係数が0.82以上となりより良い相関が得られることがわかる。このように、FFT演算処理結果の強度レベルを基準とすることにより、磁区細分化加工の状況の評価、ひいては鉄損の評価が可能になる。例えば強度レベル基準を3段階に分け、加工状態の健全・要注意・要補修を判断する。具体的な加工状態の評価処理の流れを図11に示す。図11は、本発明の一実施形態である加工状態評価処理の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、本発明の一実施形態である加工状態評価処理では、まず、方向性電磁鋼板の所定長さ区間、磁気センサの出力信号のデータを採取し(ステップS1)、採取したデータに対してFFT演算処理を施すことにより各チャンネルの周波数分布を求める(ステップS2)。次に、4チャンネル分の周波数分布を加算し、所定周波数における周波数の強度レベルに基づいて分類する(ステップS3)。そして、強度レベルが0〜0.4である場合(ステップS4)、赤ランプを警告情報として点灯し(ステップS5)、加工機をメンテナンスすることを促す(ステップS6)。一方、強度レベルが0.4〜1.0である場合には(ステップS7)、黄ランプを注意情報として点灯し(ステップS8)、カウントを注視して加工機の定期修理までの期間により対応を検討することを促す(ステップS9)。また、強度レベルが1.0より大きい場合には(ステップS10)、緑ランプを点灯して評価は合格であるとし(ステップS11)、オペレータは何もしない(ステップS12)。以後、同様の処理を繰り返し実行する。
なお、本例では、FFT演算処理を用いたが、同じ時刻の信号を加算し、所定のチャンネル数の合計値をその時刻の値とする方法を用いてもよい。但し、この場合には、磁区細分化加工部が各磁気センサを通過する時刻に合わせるために、磁気センサの並びを磁区細分化加工部と平行になるようにするか、データ測定後に各チャンネルのデータの時刻補正を行う必要がある。また、漏洩磁束信号を磁化容易軸方向に自己相関する、磁区細分化加工の周期の信号でフィルタリングする等、ほかの磁化容易軸方向の信号の周期性を評価する演算を用いても磁区細分化加工の状況を評価することができる。
また、オフラインでの評価であれば、磁化器及び磁気センサを移動させて方向性電磁鋼板を固定しておいてもよい。また、複数チャンネルでなくても、磁化器及び磁気センサを2次元に走査することによって図6(a),(b)に示すような漏洩磁束の2次元マップが得られる。信号処理及び評価方法は前述した方法と同じである。
また、方向性電磁鋼板の磁界の不連続部分を検出する方法であるために、結晶粒界や磁壁に反応する場合がある。しかしながら、結晶粒界や磁壁は一定間隔では存在しないため、繰り返し性を加味した評価方法であれば弁別できる。一方、磁区細分化加工部以外の反応が大きい部分を記録し、より広い範囲(5m毎等)での分布を評価することにより、磁区細分化加工前の材質評価に使用可能である。これらをより前工程にフィードバックすることにより、材質改善が可能となる。
また、磁気センサを方向性電磁鋼板に近接させる程、漏洩磁束の検出精度が上がるが、方向性電磁鋼板のばたつきによる接触等があるために、磁気センサと方向性電磁鋼板との間の距離(リフトオフ量)は実際には0.3〜3mm程度である。リフトオフ量の変動によって検出信号がばらつく場合には、リフトオフ量の補正が必要である。磁気センサと電磁鋼板との間の距離を測定する距離計(レーザや渦電流式)を併設することも漏洩磁束の検出精度の維持には重要である。
方向性電磁鋼板のばたつきが大きい場合には、搬送ロールを新設したり、既設のロールに磁化器を隣接させたり、既設のロールの中に磁化器を配置してもよい。また、方向性電磁鋼板に印加する磁化レベルは小さいので、磁化器として空芯コイルを用いてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 方向性電磁鋼板の加工状態評価装置
2 漏洩磁束検出部
2a 磁化器
2b 磁気センサ
3 信号処理部
S 方向性電磁鋼板
SP 磁区細分化加工部

Claims (4)

  1. 磁化容易軸方向に対して垂直な方向に磁区細分化加工が施された方向性電磁鋼板に対して、前記磁区細分化加工が施されていない領域にある磁区の磁壁は移動するが前記磁区細分化加工が施された領域にある磁区の磁化方向が前記磁化容易軸方向に対して平行にならない大きさの直流又は交流の磁場を印加する磁化ステップと、
    前記磁場の印加に伴い前記方向性電磁鋼板に発生する漏洩磁束を検出する検出ステップと、
    前記検出ステップにおいて検出された漏洩磁束に基づいて前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価する処理ステップと、
    を含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の加工状態評価方法。
  2. 前記処理ステップは、複数のチャンネルの漏洩磁束の時系列信号に対して高速フーリエ変換演算処理を施すことにより各チャンネルの周波数分布を算出し、各チャンネルの周波数分布を加算し、加算された各チャンネルの周波数分布を用いて磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の加工状態評価方法。
  3. 磁化容易軸方向に対して垂直な方向に磁区細分化加工が施された方向性電磁鋼板に対して、前記磁区細分化加工が施されていない領域にある磁区の磁壁は移動するが前記磁区細分化加工が施された領域にある磁区の磁化方向が前記磁化容易軸方向に対して平行にならない大きさの直流又は交流の磁場を印加する磁化器と、
    前記磁場の印加に伴い前記方向性電磁鋼板に発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、
    前記磁気センサによって検出された漏洩磁束に基づいて前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態を評価する信号処理部と、
    を備えることを特徴とする方向性電磁鋼板の加工状態評価装置。
  4. 請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板の加工状態評価方法による前記磁区細分化加工が施された領域の加工状態の評価結果に基づいて前記磁区細分化加工の条件を変更し、変更した条件に従って前記磁区細分化加工を行うことにより方向性電磁鋼板を製造するステップを含むことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2017195775A 2017-01-31 2017-10-06 方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法 Active JP6607242B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017015079 2017-01-31
JP2017015079 2017-01-31

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018124266A JP2018124266A (ja) 2018-08-09
JP6607242B2 true JP6607242B2 (ja) 2019-11-20

Family

ID=63109048

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017195775A Active JP6607242B2 (ja) 2017-01-31 2017-10-06 方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6607242B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6747627B1 (ja) * 2018-12-05 2020-08-26 Jfeスチール株式会社 方向性電磁鋼板およびその製造方法
CN115777062A (zh) 2020-07-03 2023-03-10 杰富意钢铁株式会社 灵敏度校正方法、检查装置以及磁传感器组

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63311165A (ja) * 1987-06-12 1988-12-19 Kawasaki Steel Corp 磁気探傷方法及び装置
JP3748852B2 (ja) * 2002-12-25 2006-02-22 株式会社前川製作所 磁気探傷装置
JP2006220610A (ja) * 2005-02-14 2006-08-24 Jfe Engineering Kk 欠陥検出装置
JP4764199B2 (ja) * 2005-09-07 2011-08-31 新日本製鐵株式会社 磁性体の粒形状観察装置
JP5262436B2 (ja) * 2008-08-27 2013-08-14 Jfeスチール株式会社 磁気測定方法および装置
JP5005004B2 (ja) * 2009-07-13 2012-08-22 中国電力株式会社 非破壊検査装置
JP2013185229A (ja) * 2012-03-09 2013-09-19 Jfe Steel Corp 方向性電磁鋼板の加工方法と方向性電磁鋼板
JP5987610B2 (ja) * 2012-09-28 2016-09-07 Jfeスチール株式会社 鋼板検査装置、鋼板検査方法、および鋼板製造方法
JP6149370B2 (ja) * 2012-09-28 2017-06-21 Jfeスチール株式会社 磁区不連続部検出方法
CN104330462B (zh) * 2014-11-07 2017-05-31 西红柿科技(武汉)有限公司 一种用于漏磁检测的双励磁单元

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018124266A (ja) 2018-08-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101941241B1 (ko) 전자기 센서 그리고 그 전자기 센서의 교정
JP5262436B2 (ja) 磁気測定方法および装置
JP6562055B2 (ja) 方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法
JP5332474B2 (ja) 磁気特性測定装置及び磁気特性測定方法
RU2759507C2 (ru) Способ и устройства для наблюдения за магнитным полем в объеме материала, а также применение этого устройства
JP5266695B2 (ja) 方向性電磁鋼板の磁気特性変動部位の検出方法および装置
JP6607242B2 (ja) 方向性電磁鋼板の加工状態評価方法、加工状態評価装置、及び製造方法
Cheng Nondestructive testing of back-side local wall-thinning by means of low strength magnetization and highly sensitive magneto-impedance sensors
JP2008122138A (ja) 薄鋼板の磁気特性及び機械的強度測定装置並びに測定方法
JP5550617B2 (ja) 漏洩磁束探傷装置
JP5544962B2 (ja) 漏洩磁束探傷方法及び漏洩磁束探傷装置
JP2007187551A (ja) 磁性体の複素磁気特性測定装置および結晶粒径測定方法
JP2011123081A (ja) 磁性体の複素透磁率測定装置およびこれを用いた磁性体の結晶粒径測定方法
JP3707547B2 (ja) 鋼材のSi濃度測定方法、及びおよび電磁鋼板の製造方法
JP4192708B2 (ja) 磁気センサ
KR20140117983A (ko) 강판 결함 탐상 장치
KR101143054B1 (ko) 강판의 강도 측정장치 및 측정방법
Wang et al. Displacement measurement for ferromagnetic materials based on the double-layer parallel-cable-based probe
JP2007064907A (ja) 漏洩磁束探傷装置
Aguila-Munoz et al. Crack detection in steel using a GMR-based MFL probe with radial magnetization
JPH08193980A (ja) 磁気探傷法及び、磁気探傷装置
JPH05264508A (ja) 焼入硬化範囲の非破壊測定方法及びその装置
JPH09166582A (ja) 電磁気探傷法
CN103940902A (zh) 利用涡流阻抗平面检测仪检测非金属材料不连续性方法
US6850056B2 (en) Flaw detection device for steel bar

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180824

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190830

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190924

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191007

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6607242

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250