JP5317950B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、横延伸後にシェアカッターを用いてフィルム両端部の切断を行う光学フィルムの製造方法に関する。
近年、液晶表示装置の大画面化及び使用環境が広がるにつれ、視認性(より明るく、より見易く、よりコントラスト良く、より高視野角、等)に対する要求が厳しくなっている。しかし、液晶セル本体の改良のみでは視認性向上への要求を十分満足することができないため、位相差フィルム等の光学フィルムの性能向上に依存するところが大きく、種々の光学フィルムの開発・実用化が進められている。
光学フィルムにおいては、製品形状にするため、あるいは、厚さや端面形状が不均一となる両端部を切り落とすため、製造時に切断を行うことがある。光学フィルムの切断方法としては板刃を用いた空中切りや丸刃によるスコアカット(押し切り)などが知られているが、このような光学フィルムの切断手法のひとつに、上刃と下刃を擦り合わせ連続回転(ハサミ切)により剪断で切断を行うシェアカッターを用いることが知られている(例えば特許文献1,2)。シェアカッターは切断面が滑らかなため、高い切り口精度を要求される部材などに好適に用いられている。
一方、光学フィルムの様々な要求特性を満たすために、熱可塑性重合体を含む樹脂フィルムなど多種多様な材料が検討されている。ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系重合体は高い光線透過率や低い屈折率の波長依存性などの優れた光学特性から、光学フィルムとして様々な開発が進められている(例えば特許文献3)。 また、ポリスチレンに代表されるスチレン系重合体は負の位相差を発現できることから、負の位相差フィルムに適用する検討がなされている(例えば特許文献4)。
しかし、アクリル系重合体やスチレン系重合体を含む樹脂をフィルムにした場合は、製造時に割れ等が生じ易く、機械的強度に改善の余地があった。 アクリル系重合体やスチレン系重合体などの光学フィルムの機械的強度を改善するために、延伸を行うことが行われており、延伸によってポリマー鎖が配向して、フィルムを延伸方向と直交する軸で折り曲げた場合の可とう性が改善されることが知られている。
特開2006−289601号公報 特開2009−154252号公報 特開平3−194503号公報 特開2007−72201号公報
しかしながら、アクリル系重合体やスチレン系重合体を含むフィルム機械的強度が不十分な光学フィルムは、延伸を行った場合にも延伸条件や方向によっては強度の改善は不足することがあり、その結果、製造工程でフィルムの破断が起きてしまうことがあった。
具体的には、テンターで横延伸を行った場合には、フィルムを加熱しながらテンターのクリップでフィルムの両端部を把持した状態で延伸を行い、その延伸後にはクリップ跡がフィルム両端部に発生するため、通常フィルムを巻き取るまでにフィルム両端部を切断する。横延伸ではフィルムの幅方向に延伸を行い、重合体のポリマー鎖がフィルムの幅方向に配向するため、フィルムの幅方向と直交するフィルムの流れ方向の引き裂き強度は高くなるが、フィルムの幅方向の引き裂き強度は改善されない。そこで、横延伸後にフィルムを切断する工程において、フィルムの幅方向に引き裂きが起こり、フィルムが破断してしまうという問題が見られることがあった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、横延伸後にフィルム両端部の切断を行う場合にも破断することなく、機械的強度が不十分な光学フィルムを長時間安定して連続的に製造することである。
本発明は、フィルムの幅方向の引き裂き強度が0.10N以下の光学フィルムの製造方法であって、横延伸後にシェアカッターを用いて横延伸時のフィルム搬送速度の99%以上100%未満の切断速度でフィルム両端部の切断を行う光学フィルムの製造方法である。
該横延伸の延伸倍率をT、該横延伸前に施す縦延伸の延伸倍率をM1とした場合、延伸倍率の比T/M1が0.70<T/M1<2.30であることが好ましい。
該光学フィルムを巻き取る前に保護フィルムを貼付することが好ましい。
該光学フィルムがアクリル系重合体および/またはスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
該光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthが−30nm以下であることが好ましい。
本発明によれば、機械的強度が不十分な光学フィルムを安定して連続的に製造することができる。
以下に本発明を詳述する。 これ以降の説明において特に記載がない限り、「部」は「質量部」を、それぞれ意味する。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。

《光学フィルム》
本発明における光学フィルムのフィルムの幅方向の引き裂き強度は0.10N以下である。好ましくは0.08N以下、より好ましくは0.07N以下、さらに好ましくは0.06N以下、特に好ましくは0.05Nである。フィルムの幅方向の引き裂き強度が0.10Nを超える光学フィルムにおいては、本発明の効果が十分発現されないことがある。
該光学フィルムの膜厚は、1μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上350μm以下、さらに好ましく10μm以上100μm以下である。膜厚が1μmよりも薄いと、強度に乏しいため好ましくない。
該光学フィルムのガラス転移温度は、110℃以上であることが好ましい。より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度が110℃以上であると、光学フィルムの可とう性が低下するため、製造時の破断が起こりやすくなり、本発明の効果が顕著に見られる。ここで、ガラス転移温度とは、ポリマー分子がミクロブラウン運動を始める温度であり、各種の測定方法があるが、本発明においては、示差走査熱熱量計(DSC)によって、JIS−K7121に準拠して、始点法で求めた温度と定義する。
該光学フィルムは、全光線透過率が好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上である。
該光学フィルムは、JIS P8115に準拠して測定した荷重200gの条件で折り曲げ方向が成膜時のフィルムの流れ方向に平行となるようにおこなったMIT耐折試験での耐折強度が、100回以上であることが好ましく、より好ましくは200回以上であり、さらに好ましくは300回以上であり、特に好ましくは400回以上である。耐折試験での耐折回数が100回未満の場合、フィルムの幅方向への破断よりもフィルムの流れ方向への引き裂きが発生し易くなり、横延伸操作自体が困難になる場合があるため好ましくない。
本発明における光学フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、表示装置に使用される液晶セルの種類や組み合わせるその他の光学補償層の性能に応じて、適宜設定することが可能である。
該光学フィルムの厚さ方向位相差Rthの絶対値は30nm以上が好ましい。より好ましくは、30nm以上1000nm以下、さらに好ましくは30nm以上500nm以下、とくに好ましくは30nm以上200nm以下である。また、該光学フィルムが負の位相差を示す場合、厚さ方向の位相差Rthは−30nm以下が好ましい。より好ましくは−1000nm以上−30nm以下、さらに好ましくは−500nm以上−30nm以下、特に好ましくは−200nm以上―30nm以下である。位相差の絶対値を30nm以上、すなわち、負の位相差を−30nm以下にするためには、横延伸の延伸倍率や温度などの延伸条件の範囲が狭くなるため、本発明の効果が顕著となる。
該光学フィルムの面内位相差Reは30nm以上が好ましい。より好ましくは、30nm以上1000nm以下、さらに好ましくは30nm以上500nm以下、とくに好ましくは30nm以上300nm以下である。
ここでいう面内位相差Reは、
Re=(nx−ny)×d
で、厚さ方向位相差Rthは、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
で、定義される。なお、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内でnxと垂直方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率が最大となる方向とする。
本発明における光学フィルムは、熱可塑性樹脂からなることが好ましい。熱可塑性樹脂としては公知の熱可塑性樹脂が可能である。加熱により軟化して塑性を示し、冷却すると固化する熱可塑性樹脂であれば、特には限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ノルボルネンポリマーなどのオレフィンポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;トリアセチルセルロースなどのセルロース類;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド等が挙げられ、これらを2種類以上含まれていてもよい。光学用途には非晶性熱可塑樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー(オレフィン樹脂)が挙げられる。
本発明における光学フィルムは、アクリル系重合体および/またはスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなることが好ましい。アクリル系重合体および/またはスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなる光学フィルムは脆いため、製造時の破断が起きやすく、本発明の効果が顕著となる。
該熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、110℃以上であることが好ましい。より好ましくは110℃以上300℃以下、さらに好ましくは115℃以上250℃以下、特に好ましくは120℃以上200℃以下である。ガラス転移温度が110℃以上であると、光学フィルムの可とう性が低下するため、製造時の破断が起こりやすくなり、本発明の効果が顕著に見られる。
該光学フィルムがアクリル系重合体を含む場合、光学フィルムにおけるアクリル系重合体の含有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。アクリル系重合体は高い光線透過率や低い屈折率の波長依存性などの優れた光学特性を有するため、光学フィルムとして好適である。
また、該光学フィルムがスチレン系重合体を含む場合、光学フィルムにおけるスチレン系重合体の含有率は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。スチレン系重合体は負の固有複屈折を有するため、光学フィルムに負の位相差を付与することが可能となり、得られる光学フィルムの位相差を負とすることが出来る。
なお、重合体の固有複屈折の正負は、重合体の分子鎖が一軸配向した層(例えば、シートあるいはフィルム)において、当該層の主面に垂直に入射した光のうち、当該層における分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な振動成分に対する層の屈折率n1から、配向軸に垂直な振動成分に対する層の屈折率n2を引いた値「n1−n2」に基づいて判断できる。固有複屈折の値は、各々の重合体について、その分子構造に基づく計算により求めることができる。また、樹脂の固有複屈折は、当該樹脂が含む各重合体や添加剤の固有複屈折の兼ね合いにより決定される。
さらに、該光学フィルムがアクリル系重合体およびスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からな場合、該光学フィルムにおけるアクリル系重合体とスチレン系重合体の含有率の合計は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。該フィルムがアクリル系重合体とスチレン系重合体を含むことにより、アクリル系重合体の優れた光学特性とスチレン系重合体は負の固有複屈折を共に備えた熱可塑性樹脂となり、負の位相差を有する光学フィルム、特に、位相差フィルムに好適に使用できる。
該アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含む公知のアクリル系重合体を使用できる。アクリル系重合体の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有率の合計は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに特に好ましくは50質量%以上、さらに特に好ましくは70質量%以上である。また、アクリル系重合体は、環構造を有する単量体との共重合や重合後の環化反応などにより主鎖に環構造を導入してもよい。この場合、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位および環構造の合計が全構成単位の50質量%以上であれば、アクリル系重合体とする。
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルおよび2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどのα−ヒドロキシアクリル酸メチルなどの各単量体に由来する構成単位である。アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸メチル単位を有することが特に好ましく、この場合、成形品の光学特性と熱安定性が向上する。アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
該アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単位以外の構成単位を有していてもよい。環化反応により主鎖に環構造を導入する場合、アクリル系重合体は重合時に水酸基やカルボン酸基を有する単量体を共重合することが好ましい。具体的には、水酸基を有する単量体として、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、また、カルボン酸基を有する単量体として(メタ)アクリル酸単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの単量体に由来する構成単位が挙げられる。これらの単量体を2種類以上共重合有していてもよい。水酸基やカルボン酸基を有する単量体は環化反応により環構造へと変化するが、主鎖に環構造を有するアクリル系重合体に未反応の水酸基やカルボン酸基を有する単量体由来の構成単位が含まれていてもよい。
該アクリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000である。
該スチレン系重合体としては特に限定されず、スチレン系単量体に由来する構成単位を含む公知のスチレン系重合体を使用できる。スチレン系単量体としては特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、クロロスチレンなどが挙げられる。スチレン系重合体のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに特に好ましくは70質量%以上である。また、スチレン系重合体は、環構造を有する単量体との共重合や重合後の環化反応などにより主鎖に環構造を導入してもよい。この場合、スチレン系単量体由来の構成単位および環構造の合計が全構成単位の50質量%以上であれば、スチレン系重合体とする。
スチレン系重合体の具体的な種類は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などであってもよい。アクリル系重合体との相容性に優れることから、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体に由来する構成単位を含むスチレン系重合体が好ましく、アクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体がより好ましく、アクリロニトリル−スチレン共重合体やアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体が特に好ましい。
なお、スチレン系重合体がアクリル系重合体と相容性を有するか否かは、両者を混合して得た樹脂のTgを後述する方法によって測定することにより確認できる。一般的には、当該樹脂のTgが1点のみ確認されれば、スチレン系重合体はアクリル系重合体と相容性を有しているといえる。
スチレン系重合体が、アクリロニトリル−スチレン共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、60〜80質量%程度の範囲であればよい。
スチレン系重合体がアクリロニトリル−スチレン−マレイミド共重合体である場合、当該共重合体の全構成単位におけるスチレン単位が占める割合は特に限定されないが、通常、55〜80質量%程度の範囲であればよい。
スチレン系重合体はグラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体を含んでいてもよい。グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体は、特に限定されないが、例えば、微粒子のアクリルゴムやブタジエンゴムなどの存在下にスチレン系単量体を含む単量体を重合することによって製造が可能である。
グラフト鎖にスチレン系重合体を有するゴム質重合体としては、グラフト鎖にアクリロニトリルに由来する構成単位を含むスチレン系重合体を有するゴム質重合体が好ましい。グラフト鎖がアクリロニトリルに由来する構成単位を含むと、アクリル重合体との相容性が向上するため、樹脂中でゴム質重合体が均一に分散し、得られる位相差フィルムの全光線透過率が向上する。具体的には、アクリルゴムやブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトしたASA樹脂やABS樹脂、AES樹脂が挙げられ、スチレン系重合体の負の固有複屈折を低下させないことから、ASA樹脂が特に好ましい。
スチレン系重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは50,000〜300,000である。
該光学フィルムが(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位およびスチレン系単量体に由来する構成単位を有する重合体を含む場合、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位とスチレン系単量体に由来する構成単位の含有率の合計は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに特に好ましくは70質量%以上である。この場合、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位が、スチレン系単量体に由来する構成単位と同量かスチレン系単量体に由来する構成単位より多い場合は、該重合体はアクリル系重合体とする。また、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位が、スチレン系単量体に由来する構成単位より少ない場合は、該重合体はスチレン系重合体とする。
また、該アクリル系重合体は、特に限定されず、その他の構成単位を有していてもよい。また、該スチレン系重合体も、特に限定されず、その他の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどの単量体に由来する構成単位である。アクリル系重合体およびスチレン系重合体は、これらの構成単位を2種以上有していてもよい。
アクリル系重合体は、特に限定されないが、主鎖に環構造を有することが好ましい。スチレン系重合体も、特に限定されないが、主鎖に環構造を有することが好ましい。主鎖が環構造を有することにより、得られる光学フィルムの耐熱性が向上する。主鎖の環構造としては、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのN−置換マレイミド、または、無水マレイン酸を共重合してN−置換マレイミド由来の環構造や無水酸無水物由来の環構造を導入してもよいし、重合後の環化反応により、主鎖にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド由来の環構造などを導入してもよい。耐熱性からは、ラクトン環構造、環状イミド構造(N−アルキル置換マレイミド由来の環構造やグルタルイミド環など)および環状酸無水物構造(無水マレイン酸由来の環構造やグルタル酸無水物など)を有するものが好ましい。樹脂に正の固有複屈折を付与し、結果として、得られる光学フィルムに正の位相差を付与できることから、ラクトン環構造、グルタルイミド環構造およびグルタル酸無水物構造が好ましい。この中では、波長依存性などの光学特性から、主鎖にラクトン環構造を持つものが特に好ましい。
主鎖のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、6員環が更に好ましい。また、主鎖のラクトン環構造が6員環である場合、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成する上において重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を得易い点、更にメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、下記一般式(1)で表される構造であることが好ましい。
Figure 0005317950
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数が1〜20の範囲のアルキル基;エテニル基、プロペニル基などの炭素数が1〜20の範囲の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数が1〜20の範囲の芳香族炭化水素基;前記アルキル基、前記不飽和脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、水素原子の一つ以上が水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基;である。)
アクリル系重合体やスチレン系重合体が主鎖に環構造を有する場合、環構造の含有率は特に限定されないが、通常、5〜90質量%であり、10〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。前記含有率が過度に小さくなると、樹脂を成形して得た樹脂成形品の耐熱性が低下したり、耐溶剤性および表面硬度が不十分となることがある。一方、前記含有率が過度に大きくなると、樹脂の成形性、ハンドリング性が低下する。
本発明における光学フィルムは、特に限定されないが、正の固有複屈折を有するアクリル系重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなることが好ましい。この場合、正の固有複屈折を有するアクリル系重合体の含有率と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体の含有率の比は、5/95〜95/5が好ましく、より好ましくは、10/90〜90/10、さらに好ましくは、20/80〜80/20、特に好ましくは50/50〜80/20である。正の固有複屈折を有するアクリル系重合体と負の固有複屈折を有するスチレン系重合体の含有率を変えることにより、正から負の広い範囲で光学フィルムの位相差の制御が可能となる。
該アクリル系重合体や該スチレン系重合体は、特に限定されず、公知の製法で製造することが出来る。例えば、アクリル重合体は上述したアクリル酸エステルを含む単量体群を重合して形成でき、スチレン系重合体は上述したスチレン系単量体を含む単量体群を重合して形成できる。
重合方法としては特に限定されず、ラジカル性やイオン性の開始剤による重合が可能である。重合形態としても特に限定されず、バルク重合や溶液重合、エマルジョン重合や懸濁重合を行うことが可能である。また、重合後は必要に応じて、乾燥や脱揮などの処理を行い、粉体やペレットとすることも出来る。
主鎖に環構造を有するアクリル系重合体やスチレン系重合体は公知の方法により製造できる。環構造が無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造であるアクリル系重合体は、例えば、WO2007/26659号公報あるいはWO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。環構造が無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド由来の構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。環構造がラクトン環構造であるアクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報あるいは特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
本発明における熱可塑性樹脂は、前記したアクリル系重合体やスチレン系重合体以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらのその他の熱可塑性樹脂は、特に種類は問わないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール:ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド:ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン:ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリルゴムやブタジエンゴムなどを配合したゴム質重合体;などが挙げられる。その他の熱可塑性樹脂の添加量は好ましくは50質量%未満、より好ましくは20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満、とくに好ましくは3質量%未満である。
その他の熱可塑性樹脂がゴム質重合体を含む場合、光学フィルムも含めたフィルムの耐折り曲げ性の向上が期待できる。ゴム質量体を含む場合、光学フィルム中のゴム質重合体の含有割合は、好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下ある。ゴム質重合体としては、アクリル系重合体やスチレン系重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有しているため、ゴム質量体が光学フィルム中に均一に分散することが可能となる。また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルムとした際の透明性向上の観点から、300nm以下である事が好ましく、150nm以下である事が更に好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤は、例えば、位相差上昇剤、位相差低減剤などの位相差調整剤;位相差安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;酸化防止剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に代表される帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;ASAやABSなどのゴム質量体などである。その他の添加剤の添加量は、例えば0〜5質量%であり、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0〜0.5質量%である。
本発明における熱可塑性樹脂の製造方法は特に限定されず、必要に応じて、上述した重合体や樹脂と公知の添加剤とを公知の方法により混合して製造できる。例えば、重合体や樹脂と添加剤を溶剤に溶解してから混合した後、溶液キャスト法により成膜、乾燥することで、フィルム状の熱可塑性樹脂が製造可能である。また、重合体や樹脂と添加剤を押出機などで溶融させて混合してもよく、必要に応じて、ペレタイザーなどによりペレット化してもよい。
本発明における光学フィルムには、目的に応じて、帯電防止層、粘接着剤層、接着層、易接着層、防眩(ノングレア)層、光触媒層などの防汚層、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮蔽層、熱線遮蔽層、電磁波遮蔽層、光拡散層、ガスバリヤー層等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、光学フィルムに各々の単独の機能性コーティング層が塗工された部材を粘着剤や接着剤を介して積層した積層体であってもよい。なお、各層の積層順序は特に限定されるものではなく、積層方法も特に限定されない。
本発明における光学フィルムは、特に限定されるものではないが、光学用途に用いることが好適である。好ましくは、液晶表示装置用の偏光板に用いる偏光子保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルム、各種光ディスク(VD、CD、DVD、MD、LD等)基板の保護フィルム、拡散板、導光体、位相差板、プリズムシート等が挙げられ、この中でも、位相差フィルムであることが特に好ましい。例えば、STN型LCD、TFT−TN型LCD、OCB型LCD、VA型LCD、IPS型LCDなどの各種LCDの位相差フィルム、偏光子保護フィルムの機能を有する位相差フィルム、偏光板との積層フィルム、光学補償フィルム、偏光板光学補償フィルムに好適に使用できる。特に、位相差フィルムにおいては、市場で要望される位相差の要求性能を満たすために、温度や倍率などの延伸条件の制限が多く、本発明の効果が特に顕著に発現される。

《光学フィルムの製造方法》
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されず、公知の製法が可能である。
延伸前のフィルム成形の方法としては、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法など、公知のフィルム成形方法が挙げられる。これらの中でも、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が好ましい。
溶融押出法の具体的な例としては、押出混練に用いる混練機は特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、あるいは加圧ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。また、熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加剤を添加し、オムニミキサーなどの混合機でプレブレンドした後、得られた混合物を混練機から押出混練してもよい。
溶融押出法には、例えば、Tダイ法、インフレーション法などがあり、その際の成形温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃、さらに好ましくは255〜300℃、特に好ましくは260〜300℃である。
Tダイ法を用いる場合、押出機の先端部にTダイを取り付け、このTダイから押し出したフィルムを巻き取ることで、ロール状に巻回させた樹脂フィルムを得ることができる。このとき、巻き取りの温度および速度を制御して、フィルムの押し出し方向に延伸(一軸延伸)を加えることも可能である。また、押し出し方向と垂直な方向にフィルムを延伸して、逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸などを実施してもよい。
押出成形に押出機を用いる場合、その種類は特に限定されず、単軸であっても二軸であっても多軸であってもよいが、そのL/D値は(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dはシリンダー内径)、熱可塑性樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得るために、好ましくは10以上100以下であり、より好ましくは15以上80以下であり、さらに好ましくは20以上60以下である。L/D値が10未満の場合、熱可塑性樹脂を十分に可塑化できず、良好な混練状態が得られないことがある。一方、L/D値が100を超えると、熱可塑性樹脂に対して過度に剪断発熱が加わることで、樹脂中の樹脂が熱分解する可能性がある。
またこの場合、シリンダーの設定温度は、好ましくは200〜350℃以下であり、より好ましくは250〜300℃以下である。設定温度が200℃未満では、熱可塑性樹脂の溶融粘度が過度に高くなって、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、設定温度が350℃を超えると、熱可塑性樹脂中の樹脂が熱分解する可能性がある。
押出成形に押出機を用いる場合、その形状は特に限定されないが、押出機が1個以上の開放ベント部を有することが好ましい。このような押出機を用いることによって、開放ベント部から分解ガスを吸引することができ、得られた樹脂フィルムに残存する揮発成分の量を低減できる。開放ベント部から分解ガスを吸引するためには、例えば、開放ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、開放ベント部の圧力にして、931〜1.3hPaの範囲が好ましく、798〜13.3hPaの範囲がより好ましい。開放ベント部の圧力が931hPaより高い場合、揮発成分、あるいは樹脂の分解により発生する単量体成分などが、熱可塑性樹脂中に残存しやすい。一方、開放ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
延伸前のフィルムを製造する場合、ポリマーフィルターで濾過するなどの濾過工程を取り入れることが好ましい。濾過工程を取り入れることにより、熱可塑性樹脂中に存在する異物を除去できるため、得られたフィルムの外観上の欠点を低減できる。なお、ポリマーフィルターによる濾過時には、熱可塑性樹脂は高温の溶融状態となる。このため、ポリマーフィルターを通過する際に熱可塑性樹脂が劣化し、劣化により形成されたガス成分や着色劣化物が樹脂中に流れだして、得られたフィルムに、穴あき、流れ模様、流れスジなどの欠点が観察されることがある。この欠点は、特にフィルムの連続成形時に観察されやすい。このため、ポリマーフィルターで濾過した熱可塑性樹脂を成形する際には、その成形温度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度を低下させ、ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間を短くするために、例えば255〜350℃であり、260〜320℃が好ましい。
ポリマーフィルターの構成は特に限定されないが、ハウジング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターを好適に用いることができる。リーフディスク型フィルターの濾材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
ポリマーフィルターによる濾過精度は特に限定されないが、通常15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度が1μm以下になると、熱可塑性樹脂の滞留時間が長くなることで当該樹脂の熱劣化が大きくなる他、樹脂フィルムの生産性が低下する。一方、濾過精度が15μmを超えると、熱可塑性樹脂中の異物を除去することが難しくなる。
ポリマーフィルターにおける、時間あたりの樹脂処理量に対する濾過面積は特に限定されず、熱可塑性樹脂の処理量に応じて適宜設定できる。前記濾過面積は、例えば、0.001〜0.15m/(kg/時間)である。
ポリマーフィルターの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてリーフディスクフィルタの内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;などがある。特に、樹脂の滞留箇所の少ない外流型を用いることが好ましい。
ポリマーフィルターにおける熱可塑性樹脂の滞留時間に特に制限はないが、好ましくは20分以下であり、より好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは5分以下である。また、濾過時におけるフィルター入口圧およびフィルター出口圧は、例えば、それぞれ、3〜15MPaおよび0.3〜10MPaであり、圧力損失(フィルターの入口圧と出口圧の圧力差)は、1MPa〜15MPaの範囲が好ましい。圧力損失が1MPa以下になると、熱可塑性樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、得られた樹脂フィルムの品質が低下する傾向がある。一方、圧力損失が15MPaを超えると、ポリマーフィルターの破損が起こり易くなる。
ポリマーフィルターに導入される熱可塑性樹脂の温度は、その溶融粘度に応じて適宜設定すればよく、例えば250〜300℃であり、好ましくは255〜300℃であり、さらに好ましくは260〜300℃である。
ポリマーフィルターを用いた濾過処理により、異物、着色物の少ない樹脂フィルムを得る具体的な工程は、特に限定されない。例えば、(1)クリーン環境下で熱可塑性樹脂の形成および濾過処理を行い、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(2)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理した後、引き続いてクリーン環境下で熱可塑性樹脂の成形を行うプロセス、(3)異物または着色物を有する熱可塑性樹脂を、クリーン環境下で濾過処理すると同時に成形を行うプロセス、などが挙げられる。それぞれの工程毎に、複数回、ポリマーフィルターによる熱可塑性樹脂の濾過処理を行ってもよい。
ポリマーフィルターによって熱可塑性樹脂を濾過する際には、押出機とポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置して、フィルター内の熱可塑性樹脂の圧力を安定化することが好ましい。
熱可塑性樹脂は、その製造後、そのまま押出成形して樹脂フィルムとすることが好ましい。熱可塑性樹脂をペレット化した後に、得られたペレットを再溶融して光学フィルムを成形する場合に比べて、熱履歴を少なくできるため、熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制できる。また、この手法では、環境からの異物の混入を抑制できるため、得られた光学フィルムに異物が存在したり、得られた光学樹脂フィルムが着色することを抑制できる。なお、押出機とTダイの間に、ギアポンプおよびポリマーフィルターを配置することが好ましい。
次に本発明の光学フィルムの製造方法に用いられる延伸方法について述べる。該延伸方法としては、横延伸の工程を含む限り、従来公知の延伸方法が適用できる。大きな面内位相差Reや厚さ方向位相差Rthを発現させるという面からは、横一軸延伸が好ましい。また、必要な面内位相差Reや厚さ方向位相差Rthを発現させる点で、逐次二軸延伸も好ましい形態のひとつである。さらに、横延伸後のフィルムの幅方向の引き裂き強度を改善するためには、縦横の逐次二軸延伸にさらに縦方向の延伸を行う、縦横縦延伸も好ましい形態のひとつである。各延伸工程は押出製膜工程から連続して実施しても良いし、個別に行っても良い。なお、所望の位相差、所望の耐折れ曲げ性に応じて、延伸倍率、延伸温度、延伸速度等の延伸条件を適宜設定すればよく、特に限定はされない。
延伸温度としては、フィルム原料の重合体、若しくは延伸前のフィルムのガラス転移温度近辺で行うことが好ましい。具体的には、(ガラス転移温度−30)℃〜(ガラス転移温度+50)℃で行うことが好ましく、より好ましくは(ガラス転移温度−20)℃〜(ガラス転移温度+20)℃、さらに好ましくは(ガラス転移温度−10)℃〜(ガラス転移温度+10)℃である。(ガラス転移温度−30)℃よりも低いと、十分な延伸倍率が得られないために好ましくない。(ガラス転移温度+50)℃よりも高いと、樹脂の流動(フロー)が起こり安定な延伸が行えなくなるために好ましくない。
面積比で定義した延伸倍率は、好ましくは1.1〜25倍の範囲、より好ましくは1.2〜10倍の範囲、さらに好ましくは1.3〜5倍の範囲で行われる。1.1倍よりも小さいと、延伸に伴う位相差性能の発現や靭性の向上につながらないために好ましくない。25倍よりも大きいと、延伸倍率を上げるだけの効果が認められない。
延伸速度(一方向)としては、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分よりも遅いと、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、製造コストが高くなるために好ましくない。20000%/分よりも早いと、延伸フィルムの破断等が起こるおそれがあるために好ましくない。
延伸等を行う装置としては、例えば、ロール延伸機、テンター型延伸機、オーブン延伸機、小型の実験用延伸装置として引張試験機、一軸延伸機、逐次二軸延伸機等が挙げられ、これら何れの装置を用いても、本発明の位相差フィルムを得ることができる。縦延伸工程は通常、ロール延伸機やオーブン延伸機で行い、横延伸工程はテンター型延伸機を用いることが多い。
縦延伸は、周速差のあるニップロール間で延伸され、分子配向する事により縦方向の力学的特性が向上する。縦延伸には、ロール延伸機を用いて、多数のロールに連続接触しながら延伸する温度まで予熱し、(場合によっては補助加熱ヒーターなどを用いて)短区間のニップロール間で延伸する方法と、オーブン延伸機を用いて、オーブンの入口と出口にニップロールが配置され、そのオーブン内で予熱から延伸、冷却までを行う方法がある。縦延伸の倍率は、1.2〜4.0倍が好ましく、1.5〜3.0倍がより好ましい。
テンター型の横延伸機は、例えば、予熱、延伸、熱処理の各ゾーンからなるオーブンと横延伸用のクリップ走行装置とから構成される。横延伸行程では、走行するフィルムの横端部をクリップで掴み、オーブン内の予熱ゾーンで延伸温度まで加熱してから延伸ゾーンで横方向に引張って延伸し、その後必要により熱処理ゾーンで熱処理を行った後に冷却される。横方向への引張りは、クリップ走行装置のガイドレールを開いて左右2列のクリップ間の距離を広げることによりなされる。予熱および延伸の各ゾーンの温度は、光学フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、より好ましくはTg−5℃〜Tg+30℃である。熱処理ゾーンの温度は、延伸ゾーンの温度より−40℃〜−2℃が好ましく、−35℃〜−5℃がより好ましい。冷却は、冷却ゾーンを設け強制的になされる場合もあるが、フィルム走行と共に温度低下させることも出来る。冷却後に、フィルムは、掴んでいたクリップから開放され、下流の引き取りロールで引張られる事になる。横延伸の倍率は、1.2〜4.0倍が好ましく、1.5〜3.5倍がより好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、該横延伸の延伸倍率をT、該横延伸前に施す縦延伸の延伸倍率をM1とした場合、延伸倍率の比T/M1が0.70<T/M1<2.30であることが好ましい。T/M1が0.70未満の場合、フィルムの流れ方向と幅方向の強度バランスが崩れ、流れ方向の引き裂きが頻発する恐れがあり、T/M1が2.30を超える場合、横延伸装置の出口幅などの制約も加わって光学物性のコントロールが困難となる場合がある。
特に限定されないが、図1は本発明の実施形態の一例を、横延伸後のフィルム上部から見た概略図であり、図2は本発明の実施形態の一例を、押出機から巻取装置までを横から見た概略図である。横延伸後のフィルムは横延伸機のテンタークリップWから開放された後、ガイドロールGを経て、シェアカッターSでフィルム両端部の切断を行う。さらに、該フィルムはフィルムの走行を安定させるためのニップロールNを経て、切断部分(耳)Dと離れた後、保護フィルムPを貼合し巻取装置Rで巻き取ってロール状の光学フィルムとなる。
ガイドロールGは切断する前に、横延伸工程部分の振動を抑える目的で、複数、好ましくは2〜5、より好ましくは、2〜3のロールを用いることが好適である。また、複数のガイドロールの内、横延伸後に一番初めに接触する第1ガイドロールは、横延伸する前のフィルム原反の幅や、横延伸倍率の変更にも対応する為、分割式ロールであってもよい。
本発明の光学フィルムの製造方法では、横延伸後にフィルムの両端部の切断を行う。横延伸工程ではクリップの掴み跡部分は、延伸されておらず非常に脆いため、両端部を切断(以下トリミングと記載する事がある)する事により、安定したフィルム走行が得られる。切断する工程は、横延伸後にフィルムがクリップから開放された後、下流の巻き取り工程までの間に行うことが出来る。
本発明の光学フィルムの製造方法では、フィルムの両端部の切断にはシェアカッターを用いる。シェアカッターとは、上刃と下刃を擦り合わせ連続回転(ハサミ切)により剪断で切断を行う装置であり、切断面が滑らかなため、高い切り口精度を要求される部材などに好適に用いられている。図2の場合、シェアカッターSの上刃は反時計方向に、下刃は時計方向に回転してフィルムの切断を行うのが一般的である。上刃と下刃の両方を駆動ロールで回転駆動させてもよいし、どちらか一方の刃のみを回転駆動させ、もう一方の刃はフィルムの搬送に従って受動的に回転させてもよい。
本発明の光学フィルムの製造方法では、シェアカッターの切断速度は横延伸時のフィルム搬送速度の99%以上100%未満である。好ましくは99.0%以上99.8%以下、より好ましくは99.0%以上99.5%以下である。なお、シェアカッターの切断速度とは、シェアカッターの刃の回転速度と一致し、シェアカッターの駆動ロールの回転速度により調整できる。シェアカッターの切断速度を横延伸時のフィルム搬送速度の99%未満、または、100%以上にすると、製造中にフィルムが破断し、安定してロールを取得することが出来ない。また、上刃と下刃の回転速度が異なる場合は、本発明においては、遅い方の刃の回転速度をシェアカッターの切断速度とする。
特に限定されないが、図3は本発明の実施形態であるシェアカッター切断部付近の一例を、流れ方向(図1のフィルム走行方向)真正面から見た概略図である。シェアカッターは上刃S1と下刃S2を擦り合わせた剪断でにより切断を行うが、例えば、下刃S2の側面に傾きを持たせた上刃を摺り合わせる構造が一般的である。したがって、横から見ると上刃S1と下刃S2が重なる部分、すなわち噛み込みが存在する。上刃と下刃の噛み込み深さd1は、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜2mmである。噛み込み深さd1が0.5mm未満では切断不良が起こり易くなるため、切り口が滑らかな仕上がりにならない場合があり、3mmを超えると刃先の磨耗が著しくなり、装置の不具合並びに安定生産の妨げとなる恐れがある。また、上刃S1と下刃S2は平行ではなく、例えば、フィルム流れ方向真正面から見て下刃S2に対して上刃S1がわずかに傾きを持つように設定するのが一般的であるが、上刃と下刃がなす角θは0.1〜1.5°が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3°である。上刃と下刃がなす角θが0.1°未満では切り口が滑らかに仕上がらない場合があり、1.5°を超えると、刃先の磨耗が著しくなり切断不良となる恐れがある。
上刃及び下刃としては、いわゆる皿型刃や椀型刃、その他の形状の円形刃のいずれでもよい。上刃及び下刃の素材としては、金属製でもセラミック製でもよいが、超硬合金やハイス鋼を用いることが好ましい。切粉の発生量及び切断面の滑らかさの観点からは、超硬合金からなる超硬刃を用いることが好ましい。上刃の直径は90mm〜150mm程度、厚さは1mm〜5mm程度である。また、下刃の直径は90mm〜150mm程度、厚さは1mm〜10mm程度である。
本発明の光学フィルムの製造方法では、特に限定されず、切断したフィルムをそのままロールに巻き取ったり、ナーリングなどの処理を行った後に巻き取ることも可能であるが、光学フィルムを巻き取る前に、該光学フィルムに保護フィルムを貼付することが好ましい。保護フィルムを貼付することにより、貼付後のフィルムは破断やひび割れを抑制して運搬等を行うことができる。
本発明に用いることが出来る保護フィルムとしては、基材の上に粘着層がコーティング若しくは共押出されたフィルムが挙げられる。基材としては、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。粘着層は、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、メタロセンL−LDPE(メタロセン触媒を用いて重合した、直鎖状低密度ポリエチレン)等が好ましい。該保護フィルムの膜厚は、10〜100μmの範囲内であることが好ましく、20〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
該粘着層の初期粘着力は、0.02N/50mm幅以上0.15N/50mm幅未満の範囲内が好ましい。なお、初期粘着力は、JIS Z−0237に準拠した180°剥離試験で測定した値を意味する。具体的には、ステンレス板の上に、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)を載せ、PMMA上に試験片(保護フィルム)を貼り付け、当該試験片を180°方向に速度300mm/minで引き剥がし、20mm間隔で4箇所の荷重を測定し、その平均値を初期粘着力とする。初期粘着力が0.15N/50mm幅を大きく越えるような高い粘着力を有する保護フィルムを使用すると、横延伸後の次工程において該保護フィルムを剥離する際、横裂けが発生する場合があり好ましくない。
上記保護フィルムにおける粘着層は、本発明の光学延伸フィルムに保護フィルムを安定的に貼り付けることができれば、光学フィルムと接する面全体に設けられていてもよいし、一部のみに設けられていてもよい。又、光学フィルムの片面でも両面でも良い。
保護フィルム貼り付け工程では、横延伸後に得られた光学フィルムに、上述した保護フィルムを貼り付ける。保護フィルムを貼り付ける方法は、例えば、走行しているフィルムラインの下側若しくは上側に設置された繰り出し機(又は巻き出し機)等のモーターを有する駆動軸に保護フィルムロールをセットし、走行する光学フィルムと保護フィルムとを2つのゴムロールにより押し付けることにより貼り合わせる等の方法が挙げられる。
次の巻取装置で行われる巻取工程では、該光学フィルム(フィルム積層体)をロール状に巻き取る。より具体的には、巻取機に巻き芯をセットし、当該巻き芯に上記フィルム積層体を巻きつけ、フィルムのラインスピードとほぼ同じ速度になるように、巻取速度を調整する。ここで、張力テーパーを5%以上30%以下の範囲内の割合とし、ロール径の増加に従って張力を減少させることにより、該光学フィルムをロール状に巻き取ることが好ましい。
また、上記巻取時における初期張力は、巻き取るフィルムの膜厚等により適宜設定されるが、例えば、2Nを超え100N未満の範囲内に設定することができる。更には、上記巻取速度は、例えば、1〜100m/分の範囲内に設定することができる。
以下に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。以下の説明では、便宜上、「質量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
<ガラス転移温度>
各サンプルのガラス転移温度(Tg)はJIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温して得られたDSC曲線から始点法により算出した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
<重量平均分子量>
アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で求めた。
システム:東ソー社製GPCシステム HLC−8220
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)、流量:0.6ml/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製、PS−オリゴマーキット)
測定側カラム構成:ガードカラム(東ソー社製、TSKguardcolumn SuperHZ−L)、分離カラム(東ソー社製、TSKgel SuperHZM−M)2本直列接続
リファレンス側カラム構成:リファレンスカラム(東ソー社製、TSKgel SuperH−RC)
<引き裂き強度>
フィルムの幅方向の引き裂き強度は、JIS K7128−1に準拠して、長手方向がフィルムの幅方向となる長さ150mm、幅50mmの試験フィルムを用意し、引き裂き試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製:MODEL1185)を用いて、23℃下、200mm/min.の条件で引き裂き線が製膜時のフィルムの幅方向に平行となるように試験を行い、5枚のサンプルの平均値を測定結果とした。
<耐折強度>
フィルムの耐折強度は、JIS P8115に準拠して、長手方向がフィルムの幅方向となる長さ90mm、幅15mmの試験フィルムを23℃、50%RHの状態に1時間以上静置させてから使用し、MIT耐折度試験機(テスター産業製、BE−201型)を用いて、荷重200gの条件で折り曲げ線が製膜時のフィルムの流れ方向に平行となるように試験を行い、5枚のサンプルのフィルムが破断するまでの回数の平均値を測定結果とした。
<位相差>
光学フィルムの面内位相差Reおよび厚さ方向の位相差Rthは、位相差測定装置(王子計測機器製、KOBRA−WR)を用いて測定波長589nmで測定した。厚さ方向の位相差Rthは、遅相軸を傾斜軸として40°傾斜して測定した値を基に算出した。
(製造例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した反応釜に、MMA40部、MHMA10部、トルエン50部、アデカスタブ2112(ADEKA製)0.025部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、開始剤としてターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.05部を添加すると同時に、ターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート0.1部を3時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学製、商品名:Phoslex A−8)0.05部を加え、90〜105℃の還流下で2時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、バレル温度240℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルター(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、樹脂量換算で65部/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。
その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.05部/時の投入速度で第1ベントの後ろから、イオン交換水を1.05部/時の投入速度で第2および第3ベントの後ろから、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、5部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガノックス1010)と、失活剤として46部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6質量%)とを、トルエン54部に溶解させた溶液を用いた。また、上記サイドフィーダーから、スチレン−アクリロニトリル共重合体(スチレン/アクリロニトリルの比率は73質量%/27質量%、重量平均分子量22万)のペレットを投入速度35部/時で投入した。
上記脱揮操作により、スチレン系重合体の含有割合が35質量%である負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂(A)のペレットを得た。熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は120℃、重量平均分子量は16.3万であった。
(実施例1)
製造例1で得られた樹脂ペレット(A)を温度270℃で溶融押出して、厚み180μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度150℃まで加熱して縦方向に2.5倍に延伸を行った。次に、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、温度133℃で横方向に2.4倍に延伸した。クリップから開放されたフィルムをトリミング装置へ導入し、切断速度がテンター内のフィルム搬送速度の99.4%になるように駆動ロールの回転速度を調整した。ここで上刃と下刃が1.5mmの深さで噛み合い、下刃に対する上刃の角度が0.3°に調整されたシェアカッターでフィルム両端部を切断し、厚さ方向の位相差Rthが−90nmであるフィルム幅500mmの光学フィルムを得た。光学フィルムの幅方向の引き裂き強度は0.05Nであり、ガラス転移温度は120℃、MIT試験による耐折強度は450回であった。その後、光学フィルムに膜厚30μmのポリエチレン製保護フィルム(商品名:トレテック7332、東レフィルム加工(株)社製、23℃での初期粘着力:0.07N/50mm幅)を貼り付けた。そして、巻取装置(最大巻取幅:Φ600mm)を用い、初期張力を80N、張力テーパーを15%に設定して巻き取ることで連続して500mのフィルムロールを取得した。その間、フィルム破断などの不具合は全く起こらなかった。
(実施例2)
製造例1で得られた樹脂ペレット(A)を温度270℃で溶融押出して、厚み200μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度125℃まで加熱して縦方向に1.8倍に延伸を行った。次に、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、温度130℃で横方向に2.8倍に延伸した。クリップから開放されたフィルムをトリミング装置へ導入し、切断速度がテンター内のフィルム搬送速度の99.2%になるように駆動ロールの回転速度を調整した。ここで、上刃と下刃が1.5mmの深さで噛み合い、下刃に対する上刃の角度が0.3°に調整されたシェアカッターでフィルム両端部を切断し、厚さ方向の位相差Rthが−125nmであるフィルム幅500mmの光学フィルムを得た。光学フィルムの幅方向の引き裂き強度は0.04Nであり、ガラス転移温度は120℃、MIT試験による耐折強度は820回であった。その後、膜厚30μmのポリエチレン製保護フィルム(商品名:トレテック7332、東レフィルム加工(株)社製、23℃での初期粘着力:0.07N/50mm幅)を貼り付けた。そして、巻取装置(最大巻取幅:Φ600mm)を用い、初期張力を80N、張力テーパーを15%に設定して巻き取ることで連続して500mのフィルムロールを取得した。その間、フィルム破断などの不具合は全く起こらなかった。
(実施例3)
製造例1で得られた樹脂ペレット(A)を温度270℃で溶融押出して、厚み180μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度160℃まで加熱して縦方向に1.8倍に延伸を行った。次に、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、温度155℃で横方向に2.2倍に延伸した。クリップから開放されたフィルムをロール回転速度がテンター内のフィルム搬送速度の99.4%に調整されたトリミング装置へ導入してフィルム両端部をシェアカッターで切断し、更に温度125℃で縦方向に1.8倍に延伸を行うことで、厚さ方向の位相差Rthが−50nmであるフィルム幅400mmの光学フィルムを得た。光学フィルムの幅方向の引き裂き強度は0.05Nであり、MIT試験による耐折強度は260回であった。光学フィルムにポリエチレン製の保護フィルムを貼付、巻き取ることで連続して500mのフィルムロールを取得した。その間、フィルム破断などの不具合は全く起こらなかった。
(比較例1)
切断速度がテンター内のフィルム搬送速度と同じになるように駆動ロールの回転速度を調整した以外は実施例1と同様の操作を行ったが、フィルムが張力に耐え切れずに破断し、安定してフィルムロールを取得することができなかった。
(比較例2)
切断速度がテンター内のフィルム搬送速度の98.0%になるように駆動ロールの回転速度を調整した以外は実施例1と同様の操作を行ったが、搬送されたフィルムの弛みにより切断部分にしわが発生し、トリミング不良が起こった。更には、トリミング不良端部から破断が起こり、安定してフィルムロールを取得することができなかった。
上述したように、本発明の光学フィルムの製造方法を用いることにより、光学特性に優れた光学フィルムを安定的に製造することができる。従って、本発明は、液晶表示装置等のフラットパネル表示装置に用いられる、保護フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム等の各種光学フィルムの製造に好適に用いることができる。
本発明の実施形態の一例を、横延伸後のフィルム上部から見た概略図である。図の下方がフィルムの進行方向である。 本発明の実施形態の一例を、横延伸後から巻取装置までを横から見た概略図である。図の右方がフィルムの進行方向である。 本発明の実施形態であるシェアカッター切断部付近の一例を、流れ方向(図1のフィルム走行方向)真正面から見た概略図である。
G:ガイドロール
S:シェアカッター
F:光学フィルム
N:ニップロール
D:切断部分(耳)
W:横延伸機のテンタークリップ
R:巻取装置
P:保護フィルム
S1:シェアカッター上刃
S2:シェアカッター下刃
θ:上刃と下刃がなす角
d1:上刃と下刃の噛み込み深さ

Claims (5)

  1. フィルムの幅方向の引き裂き強度が0.10N以下の光学フィルムの製造方法であって、横延伸後にシェアカッターを用いて横延伸時のフィルム搬送速度の99%以上100%未満の切断速度でフィルム両端部の切断を行う光学フィルムの製造方法。
  2. 該横延伸の延伸倍率をT、該横延伸前に施す縦延伸の延伸倍率をM1とした場合、延伸倍率の比T/M1が0.70<T/M1<2.30である請求項1に記載の光学延伸フィルムの製造方法。
  3. 該光学フィルムを巻き取る前に保護フィルムを貼付する請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 該光学フィルムがアクリル系重合体および/またはスチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 該光学フィルムの厚さ方向の位相差Rthが−30nm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。

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