[実施形態]
以下、図面を参照しながら、実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複する説明は必要に応じて行う。
(A) 第1の実施形態
図1乃至図11を参照して、第1の実施形態に係る抵抗変化型メモリについて、説明する。以下の実施形態に係る抵抗変化型メモリは、例えば、ReRAM(Resistive RAM)やPCRAM(Phase change RAM)などである。
(1) 全体構成
図1を用いて、第1の実施形態に係る抵抗変化型メモリの全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る抵抗変化型メモリのチップの構成例を示している。
メモリセルアレイ1は、複数のセルユニットCUを有している。各セルユニットCUは、少なくとも1つの抵抗変化型記憶素子10を含んでいる。メモリセルアレイ1内には、複数のビット線BL及び複数のワード線WLが設けられている。セルユニットCUは、ビット線(第1の制御線)BL及びワード線(第2の制御線)WLに接続される。ビット線BL及びワード線WLに対するセルユニットCUの接続関係は、メモリセルアレイ1の内部構成によって異なる。
カラム制御回路2は、ビット線BLの駆動状態、つまり、ビット線BLに対する電位の印加又は電流の供給を制御する。カラム制御回路2は、転送トランジスタやセンスアンプ、ラッチ回路又はバッファなどを、有する。カラム制御回路2は、外部から入力されたカラムアドレス信号が示すビット線を選択し、そのビット線を活性化する。
ロウ制御回路3は、ワード線WLの動作、つまり、ワード線WLに対する電位の印加又は電流の供給を制御する。ロウ制御回路3は、転送トランジスタやスイッチ素子などを、有する。ロウ制御回路3は、外部から入力されたロウアドレスが示すワード線を選択し、そのワード線を活性化する。
カラム制御回路2によるビット線BLの制御及びロウ制御回路3によるワード線WLの制御によって、ワード線WL及びビット線BLに接続された抵抗変化型記憶素子10に対して、データの書き込み、データの読み出し、又は、データの消去が実行される。
コマンドインターフェイス4は、例えば、ホスト装置など、外部装置からのコマンド信号CMDを受信して、そのコマンド信号CMDをステートマシン7に転送する。コマンド信号CMDは、例えば、データの書き込み命令、データの読み出し命令或いはデータの消去命令などを示す。
データ入出力バッファ5は、入力又は出力されるデータDTを一時的に保持する。データ入出力バッファ5は、外部から入力された書き込みデータDTを、例えば、カラム制御回路2を介して、メモリセルアレイ1に転送する。また、データ入出力バッファ5は、メモリセルアレイから読み出されたデータDTを、外部へ転送する。
アドレスバッファ6は、例えば、外部からアドレス信号ADRが入力される。アドレス信号ADRは、例えば、選択された抵抗変化型記憶素子(選択セルユニット)のアドレス(選択アドレス信号)を示している。アドレスバッファ6は、アドレス信号ADRが含むビット線のアドレス(カラムアドレス信号)を、カラム制御回路2に転送する。また、アドレスバッファ6は、アドレス信号ADRが含むワード線のアドレス(ロウアドレス信号)を、ロウ制御回路3に転送する。
ステートマシン(制御回路)7は、チップ全体の動作を管理及び制御する。ステートマシン7は、コマンドインターフェイス4から転送されたコマンド信号CMDを受け取り、そのコマンド信号CMDに基づいて、他の回路2〜8の動作を制御する。また、ステートマシン7は、例えば、ステータス情報を、チップ外部のホスト装置へ転送する。そのステータス情報に基づいて、ホスト装置が動作結果の適否を判断する。
チップ内には、パルス生成回路(パルスジェネレータ)8が、設けられる。パルス生成回路8は、ステートマシン7によって制御される。例えば、パルス生成回路8は、ビット線BL及びワード線WLに供給するパルスを生成する。
例えば、抵抗変化型メモリは、所定のパルス形状(電圧値及びパルス幅)の電圧(電圧パルスとよぶ)によって、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を切り替える。抵抗変化型記憶素子10にデータを書き込む場合、又は、抵抗変化型記憶素子10からデータを読み出す場合、パルス生成回路8は、生成したパルスを、カラム制御回路2又はロウ制御回路3を介して、選択ビット線及び選択ワード線に供給する。さらに、パルス生成回路8は、非選択ビット線及び非選択ワード線に供給するパルス(例えば、非選択電位)を生成する。
尚、電圧パルスの代わりに、所定のパルス形状(電流値及びパルス幅)の電流(電流パルスとよぶ)を、ビット線BL及びワード線WLに供給してもよい。
(2) メモリセルアレイ
図2乃至図6を用いて、図1に示される抵抗変化型メモリのメモリセルアレイ1の構成例について、説明する。
図2は、本実施形態の抵抗変化型メモリのメモリセルアレイ1の構造を示す鳥瞰図である。例えば、抵抗変化型メモリは、クロスポイント型のメモリセルアレイを有する。クロスポイント型メモリセルアレイ1は、例えば、基板58上に設けられる。
クロスポイント型メモリセルアレイ1は、例えば、複数のメモリセルアレイ(メモリセルレイヤーともよばれる)のスタック構造から形成される。
図2は、一例として、クロスポイント型メモリセルアレイ1が、z方向(基板58の主平面に対して垂直な方向)にスタックされた4つのメモリセルアレイM1,M2,M3,M4から形成される場合を示している。スタックされるメモリセルアレイの数は、2つ以上であればよい。但し、クロスポイント型メモリセルアレイ1は、1つのメモリセルアレイから形成されてもよい。また、スタックされた2つのメモリセルアレイ間に絶縁膜が設けられ、その絶縁膜によって、2つのメモリセルアレイが、電気的に分離されていてもよい。
図2のように、複数のメモリセルアレイM1,M2,M3,M4がスタックされている場合、アドレス信号ADRは、例えば、メモリセルアレイ選択信号、ロウアドレス信号及びカラムアドレス信号を含んでいる。カラム/ロウ制御回路2,3は、例えば、メモリセルアレイ選択信号に基づいて、スタックされた複数のメモリセルアレイのうちの1つを選択する。カラム/ロウ制御回路2,3は、スタックされた複数のメモリセルアレイのうちの1つに対してデータの書き込み/消去/読み出しを行うこともできるし、スタックされた複数のメモリセルアレイのうちの2つ以上又は全てに対して同時にデータの書き込み/消去/読み出しを行うこともできる。
メモリセルアレイM1は、x及びy方向にアレイ状に配置された複数のセルユニットCU1を含んでいる。これと同様に、メモリセルアレイM2は、アレイ状に配置された複数のセルユニットCU2を含み、メモリセルアレイM3は、アレイ状に配置された複数のセルユニットCU3を含み、メモリセルアレイM4は、アレイ状に配置された複数のセルユニットCU4を含んでいる。各セルユニットCU1,CU2,CU3,CU4は、抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子とを含んでいる。
基板58上には、z方向において基板58側から順に、制御線L1(j−1),L1(j),L1(j+1)、制御線L2(i−1),L2(i),L2(i+1)、制御線L3(j−1),L3(j),L3(j+1)、制御線L4(i−1),L4(i),L4(i+1)及び制御線L5(j−1),L5(j),L5(j+1)が、配置される。
基板58側から奇数番目の配線、即ち、制御線L1(j−1),L1(j),L1(j+1)、制御線L3(j−1),L3(j),L3(j+1)及び制御線L5(j−1),L5(j),L5(j+1)は、x方向に延びる。
基板58側から偶数番目の配線、即ち、制御線L2(i−1),L2(i),L2(i+1)及び制御線L4(i−1),L4(i),L4(i+1)は、x方向に交差するy方向に延びる。
これらの制御線は、ワード線WL又はビット線BLとして用いられる。
最下層の第1番目のメモリセルアレイM1は、第1番目の制御線L1(j−1),L1(j),L1(j+1)と第2番目の制御線L2(i−1),L2(i),L2(i+1)との間に配置される。第1番目の制御線と第2番目の制御線とが立体交差する箇所に、セルユニットCU1が配置されている。
メモリセルアレイM1に対するセット/リセット動作及び読み出し動作において、制御線L1(j−1),L1(j),L1(j+1)及び制御線L2(i−1),L2(i),L2(i+1)の一方がワード線WLとして用いられ、他方がビット線BLとして用いられる。
これと同様に、メモリセルアレイM2,M3,M4は、第2番目の制御線L2(i−1),L2(i),L2(i+1)、第3番目の制御線L3(j−1),L3(j),L3(j+1)、第4番目の制御線L4(i−1),L4(i),L4(i+1)、第5番目の制御線L5(j−1),L5(j),L5(j+1)の間にそれぞれ配置される。そして、積層された2つの制御線が立体交差する箇所に、セルユニットCU2,CU3,CU4がそれぞれ配置される。
尚、スタックされるメモリセルアレイが、絶縁膜によって各層毎に分離される場合、x及びy方向に延在する制御線はスタックされる2つのメモリセルアレイで共有されず、各層のメモリセルアレイ毎に、ワード線WL及びビット線BLとしての制御線が、設けられる。
図3は、本実施形態の抵抗変化型メモリの断面構造を模式的に示す図である。
例えば、抵抗変化型メモリが、クロスポイント型メモリセルアレイ1を有する場合、クロスポイント型メモリセルアレイ1は、半導体基板51上の層間絶縁膜58上に、設けられる。この場合、層間絶縁膜58が、クロスポイント型メモリセルアレイ1を形成するための基板58として、用いられる。
本実施形態において、クロスポイント型メモリセルアレイ1より下層の半導体基板51上の領域のことを、周辺領域20とよぶ。
周辺領域20において、上述のステートマシン7やパルス生成回路8のように、メモリセルアレイの動作を制御するための回路(以下、周辺回路とよぶ)が設けられている。周辺回路は、その構成素子として、電界効果トランジスタTr、抵抗素子、キャパシタ60などを含んでいる。
電界効果トランジスタTrは、素子分離絶縁膜59によって、定義されたアクティブ領域内に、形成される。
電界効果トランジスタTrは、ソース/ドレイン52a,53b及びゲート電極54Aを有する。ソース及びドレインとしての2つの拡散層52a,52bは、半導体基板51のウェル領域(アクティブ領域)内に設けられる。2つの拡散層52a,52b間の半導体基板51表面(チャネル領域)上に、ゲート絶縁膜53Aが設けられる。ゲート電極54Aは、ゲート絶縁膜53A上に設けられる。拡散層52bは、コンタクト55aを介して、配線55bに接続される。
キャパシタ60は、半導体基板51内に設けられた所定の領域内に形成される。
キャパシタ60は、キャパシタの一端としての半導体層61と、キャパシタの他端としての導電層63と、半導体層61及び導電層63に挟まれた絶縁膜(以下、キャパシタ絶縁膜とよぶ)62とを含んでいる。
半導体層61は、半導体基板内に設けられた不純物層(例えば、N型ウェル領域)である。半導体層61は、ウェル領域より高い不純物濃度を有した不純物層でもよい。キャパシタ絶縁膜62は、不純物層61上に設けられている。キャパシタ絶縁膜62は、例えば、シリコン酸化膜である。導電層63は、キャパシタ絶縁膜62上に設けられている。導電層63は、例えば、ポリシリコン、シリサイド又はポリシリコンとシリサイドとの積層構造などのように、トランジスタTrのゲート電極54Aと同じ材料を用いて、形成される。
不純物層61は、コンタクトプラグ65aを介して、配線65bに接続される。導電層63は、コンタクトプラグ66aを介して、配線66bに接続される。
キャパシタ60は、例えば、MOSキャパシタである。キャパシタ60は、例えば、パルス生成回路8の構成素子として用いられる。
半導体基板51上面及び周辺回路の構成素子は、層間絶縁膜58に覆われている。
上述したように、クロスポイント型メモリセルアレイ1は、層間絶縁膜(基板)58上に設けられる。x方向に延在する制御線L1,L3,L5とy方向に延在する制御線L2,L4との間に、セルユニットCUがそれぞれ設けられている。セルユニットCUは、抵抗変化型記憶素子と非オーミック素子30とを含んでいる。
クロスポイント型メモリセルアレイ1に隣接して、配線領域(フックアップ領域ともよばれる)25が、層間絶縁膜58上に設けられる。
制御線L1,L2,L3,L4,L5は、配線領域25内に引き出される。配線領域25において、制御線L1,L2,L3,L4,L5は、その線幅、隣接する配線間の配線ピッチ、及び、配線レイアウトが変換される。
配線領域25内の配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bは、例えば、メモリセルアレイ1から分断されずに、メモリセルアレイ1内から配線領域25内に延在している。但し、配線領域25内の配線LL1,LL3,LL5が配線領域25内に独立して設けられ、その配線が、メモリセルアレイ1から配線領域25内に引き出された制御線L1,L2に、配線領域25内で接続される場合もある。配線領域25内に設けられた制御線L1,L2,L3,L4,L5の部分は、配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bとよぶ。
メモリセルアレイ1に対してx方向に隣接する配線領域25において、配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bは、制御線L1,L3,L5と同じ配線レベルに位置している。配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bは、所定のレイアウトになるように、配線領域25内の各配線レベルにおいて、引き回されている。
配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bは、多層配線技術によって、メモリセルアレイ1と周辺回路とを接続する。
層間絶縁膜80内において、コンタクトプラグZCが埋め込まれている。コンタクトプラグZCは、例えば、複数の配線レベルにまたがって設けられる。コンタクトプラグZCは、異なる配線レベル内の複数の配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5Bを接続する。
周辺領域20内の電界効果トランジスタTrは、ビアプラグ57によって、層間絶縁膜58上の配線LL1Aに接続される。これと同様に、周辺領域20内のキャパシタ60は、ビアプラグ67によって、配線LL1Bに接続される。
これによって、半導体基板51上に形成された素子Tr,60が、配線領域25内の配線LL1A,LL1B,LL3A,LL3B,LL5A,LL5B及びコンタクトプラグZCを経由して、層間絶縁膜58上に形成されたメモリセルアレイ1に、接続される。
図3において、メモリセルアレイ1に対してx方向に隣接する配線領域のみが図示されているが、メモリセルアレイ1に対してy方向に隣接する配線領域が、層間絶縁膜(基板)58上に設けられているのはもちろんである。y方向に隣接する配線領域において、配線は、主に、制御線L2,L4と同じ配線レベルに設けられている。
尚、抵抗変化型メモリの配線レイアウトに応じて、y方向に延在する制御線L2,L4と同じ配線レベルの配線が、メモリセルアレイ1のx方向に隣接する配線領域内に、引き出されてもよいのはもちろんである。
図3に示されるように、メモリセルアレイ1の動作を制御する周辺回路は、層間絶縁膜58を介して、メモリセルアレイ1下方の半導体基板51上に形成される。このように、周辺回路(周辺領域20)上に、メモリセルアレイ1が積層されることによって、抵抗変化型メモリのチップサイズの縮小に貢献できる。
図4は、クロスポイント型メモリセルアレイ1の等価回路の一例を示している。
図4は、クロスポイント型メモリセルアレイ1が含む1つのメモリセルアレイM1の等価回路を示している。
メモリセルアレイM1内には、x方向(第1の方向)に延在する複数のワード線(第2の制御線)WLj−1,WLj,WLj+1が設けられる。複数のワード線WLj−1,WLj,WLj+1は、y方向に互いに隣接して、メモリセルアレイM1内に配置される。
また、メモリセルアレイM1内には、y方向(第2の方向)に延在する複数のビット線(第2の制御線)BLi−1,BLi,BLi+1が、設けられる。複数のビット線BLi−1,BLi,BLi+1は、メモリセルアレイM1内において、x方向に互いに隣接して配置されている。
そして、ビット線BLi−1,BLi,BLi+1とワード線WLj−1,WLj,WLj+1とが立体交差した箇所に、抵抗変化型記憶素子10を含むセルユニットCUが設けられる。
抵抗変化型記憶素子10は、電圧、電流又は熱などのエネルギーが与えられることによって、抵抗値(抵抗状態)が可逆的に変化する。この特性を利用して、その抵抗値に応じたデータが、抵抗変化型記憶素子に不揮発に記憶される。抵抗変化型記憶素子10は、例えば、一端及び他端を有する2端子素子である。
1つのセルユニットCUは、抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子30とを含んでいる。ビット線BLi−ワード線WLi間において、抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子30とは、直列接続されている。
非オーミック素子30は、メモリの動作時、動作の対象になっていない(選択されていない)セルユニットに対するクロストークを抑制するために、設けられている。
図4に示されるビット線BLi−1,BLi,BLi+1とワード線WLj−1,WLj,WLj+1とに対するセルユニットCUの接続関係の一例は、以下のとおりである。尚、本実施形態においては、非オーミック素子30に、ダイオード(整流素子)が用いられた場合について、説明する。
図4に示されるように、抵抗変化型記憶素子10の一端は、例えば、ビット線BLiに接続され、その接続点は接続ノードN1となっている。抵抗変化型記憶素子10の他端は、例えば、ダイオード30のアノードに接続され、その接続点は接続ノードN2となっている。ダイオード30のカソードは、例えば、ワード線WLjに接続され、その接続点は接続ノードN3となっている。
図4に示される接続関係において、ビット線BLiに対する供給電位(例えば、“H”レベル)がワード線WLjに対する供給電位より高い場合、ダイオード30に対して順バイアス方向の電圧が印加される。また、ビット線BLiに対する供給電位がワード線WLjに対する供給電位より低い場合、ダイオード30に対して逆バイアス方向の電圧が印加される。
ダイオード30は、非対称の電圧−電流特性を有する。ダイオードの定常の動作において、順バイアス時においてアノード側からカソード側の方向に流れる電流は大きく、逆バイアス時においてカソード側からアノード側の方向に流れる電流は、順バイアス時の電流に比較して、非常に小さい。
図5及び図6は、本実施形態に係る抵抗変化型メモリにおけるセルユニットの構造の一例を示している。
図5は、1つのセルユニットの断面構造の一例を示している。図5に示される例において、抵抗変化型記憶素子10は、非オーミック素子30上に積層される。これによって、抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子30とが、直列接続される。
抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子30とから構成される積層体が、1つのセルユニットCUとして、2つの制御線70,79に挟まれている。制御線79上に、セルユニットCUが設けられ、セルユニットCU上に、制御線70が設けられている。
抵抗変化型記憶素子10は、例えば、可変抵抗素子である。ここで、記憶素子10としての可変抵抗素子とは、電圧、電流、熱などのエネルギーが与えられることによって、可逆的に抵抗値が変化する材料からなる素子のことである。
本実施形態において、抵抗変化型記憶素子10としての可変抵抗素子は、金属酸化物(例えば、2元系又は3元系金属酸化物など)、金属化合物、有機物、カーボン、カーボンナノチューブなどから構成される。
抵抗変化型記憶素子10としての可変抵抗素子の抵抗値を変化させる方法として、バイポーラ動作とよばれる動作と、ユニポーラ動作とよばれる動作が存在する。
バイポーラ動作は、抵抗変化型記憶素子10に印加される電圧の極性を変えることにより、抵抗変化型記憶素子10の抵抗値を少なくとも第1値(第1レベル)と第2値(第2レベル)との間で可逆的に変化させる。
ユニポーラ動作は、記憶素子10に印加される電圧の極性を変えずに、電圧の大きさや電圧の印加時間(パルス幅)又はその両方を制御することにより、記憶素子の抵抗値を少なくとも第1値と第2値との間で可逆的に変化させる。
これらの動作原理に基づいて、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態は、高抵抗状態から低抵抗状態、又は、低抵抗状態から高抵抗状態に変化する。
抵抗変化型記憶素子10は、その一端及び他端に、電極層12,13を有する。z方向における抵抗変化型記憶素子10の底部には、電極層12が設けられ、z方向における抵抗変化型記憶素子10の上部には、電極層13が設けられる。電極層12,13は、例えば、抵抗変化型記憶素子の電極として用いられる。電極層12,13には、例えば、金属膜、金属化合物膜、導電性を有する半導体膜、又は、これら積層膜が用いられる。
本実施形態において、2つの電極層12,13に挟まれた部分を、抵抗変化膜11とよぶ。抵抗変化膜11は、例えば、電圧、電流、熱などのエネルギーの供給によって、その膜11内に電気経路(フィラメントとよばれる)が生成又は消滅することによって抵抗値が変化する材料から形成される。
抵抗変化膜11は、与えられたエネルギーによって、抵抗変化膜11と電極層12,13との界面特性の変化が引き起こされて、抵抗値が変化する性質を有する材料からなる場合もある。
尚、抵抗変化型記憶素子10の抵抗値が変化する性質は、抵抗変化膜11に用いられる材料と電極層25,26に用いられる材料との組み合わせを適宜設定することによって、安定に得られる。
電極層12,13は、拡散防止層としての機能を有していてもよい。拡散防止層は、下方の素子30や制御線70に起因する不純物が抵抗変化型記憶素子10に拡散するのを防止する、又は、抵抗変化型記憶素子10に起因する不純物が下層の素子や制御線70,79に拡散するのを防止する。電極層12,13は、抵抗変化型記憶素子10が下方の素子30や制御線から剥離するのを防止する接着層としての機能を有していてもよい。
非オーミック素子30は、その入出力特性(電圧−電流特性)に線形性を有さない、つまり、その入出力特性に非オーミック特性を有する素子である。
非オーミック素子30は、z方向(積層方向)の一端及び他端に、導電層38,39を有する。非オーミック素子30の底部には、導電層38が設けられ、非オーミック素子30の上部には、導電層39が設けられている。
導電層38,39は、例えば、非オーミック素子30の電極として用いられる。導電層38,39の材料は、シリサイド、金属、金属化合物、導電性の半導体などのいずれか1つが用いられる。また、導電層38,39は、これらの材料の積層体から形成されてもよい。
図5において、PINダイオードが、非オーミック素子の一例として、示されている。PINダイオードとは、P型半導体層(アノード層)とN型半導体層(カソード層)との間に真性半導体層(Intrinsic semiconductor layer)が挟まれたダイオードのことである。
図5に示される構造の場合、2つの層31,33に挟まれた層32が真性半導体層32であり、2つの層31,33のうち、一方の層33がP型半導体層であり、残りの他方の層31がN型半導体層である。尚、真性半導体層は、N型、又は、P型の不純物を全く含んでいない場合だけでなく、真性半導体層の不純物濃度がN型及びP型半導体層の不純物濃度よりも十分低い場合も含む。
非オーミック素子30は、図5に示されるPINダイオードに限定されず、PNダイオードやMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)ダイオードが、セルユニットに要求される動作に応じて、非オーミック素子30として適宜用いられてもよい。
図4に示される回路構成に基づくと、図5に示されるセルユニットにおいて、制御線79はワード線であり、制御線70はビット線である。また、PINダイオードにおいて、半導体層33が、アノードとしてのP型半導体層であり、半導体層31がカソードとしてのN型半導体層である。
例えば、クロスポイント型メモリセルアレイ1において、図6に示されるように、2つのセルユニットCUが、1つの制御線70を挟んで、積層方向(z方向)に対向している。2つのセルユニットCUは、例えば、制御線70を中心に、z方向においてミラー構造を有している。具体的には、制御線(例えば、ビット線)70は、z方向に積層された2つの抵抗変化型記憶素子10に挟まれ、その2つの抵抗変化型記憶素子10によって共通に接続されている。
制御線79(例えば、ワード線)は、z方向に積層された2つの非オーミック素子30に挟まれ、その2つの非オーミック素子30に、共通に接続されている。
但し、メモリセルアレイの正常な動作が可能であれば、制御線70,79に対する素子10,30の構造及び位置関係は、図5及び図6に示す構造に限定されない。また、ビット線及びワード線に対するセルユニットの接続関係は、1つのメモリセルアレイ内で、全て同じであることが好ましい。しかし、抵抗変化型メモリの正常な動作が可能であれば、ビット線及びワード線に対するセルユニットの接続関係は積層された複数のメモリセルアレイにおいて、メモリセルアレイ毎に異なっていてもよい。
(3) 動作
以下、図7乃至図10Bを用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリの動作について、説明する。
(a) 基本動作
図7は、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態とデータの対応関係を説明するための模式図である。図7において、横軸は抵抗変化型記憶素子の抵抗状態(抵抗値)を示し、縦軸はある抵抗状態における抵抗変化型記憶素子の存在確率(分布)を示している。
抵抗変化型記憶素子10は、その抵抗値の大きさに応じて、データが割り付けられ、2値メモリ又は多値メモリとして利用される。
図7に示されるように、2値メモリ(SLC : Single Level cell)は、抵抗変化型記憶素子の抵抗値の大きさに応じて、1ビットのデータ、つまり、“0”又は“1”の2値を記憶する。
図7に示される例では、抵抗変化型記憶素子の低抵抗状態の分布に対して、“0”データが割り付けられ、抵抗変化型記憶素子の高抵抗状態の分布に対して、“1”データが割り付けられる。例えば、“0”データが書き込み(program)レベルとして設定され、“1”データが消去(erase)レベルとして設定される。
そして、基準値(Read Level)と抵抗変化型記憶素子の抵抗値とを比較することによって、抵抗変化型記憶素子が記憶しているデータが判別される。
本実施形態において、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を、低抵抗状態(“0”データ)から高抵抗状態(“1”データ)に変化させる動作のことを、リセット動作とよび、高抵抗状態(“1”データ)から低抵抗状態(“0”データ)に変化させる動作のことを、セット動作とよぶ。
尚、図7において、“0”データに対応する抵抗値の範囲は、1kΩ〜10kΩに設定され、“1”データに対応する抵抗値の範囲は、100kΩ〜1MΩに設定されている。但し、これに限定されず、データに対応する抵抗値の範囲は、抵抗変化型記憶素子の抵抗値(抵抗状態)の可変範囲内で、適宜設定されてよく、データに対応づけられる抵抗値も抵抗変化型記憶素子に用いられる材料や素子の寸法によって異なるのは、もちろんである。
1つの抵抗変化型記憶素子が取り得る抵抗値の範囲において、その抵抗値の大きさに応じて、3以上の書き込みレベルが設定されてもよい。1つの抵抗変化型記憶素子が3値(2ビット)以上のデータを記憶するメモリは、多値メモリとよばれる。
図8を用いて、本実施形態に係る抵抗変化型メモリのデータの書き込み及び読み出しについて、説明する。以下では、ユニポーラ動作を用いた抵抗変化型メモリを例に挙げて、本実施形態の抵抗変化型メモリのリセット動作及びセット動作について、説明する。
抵抗変化型記憶素子(選択セルユニット)10に対するデータの書き込みは、抵抗変化型記憶素子の抵抗値が書き込まれるデータに対応する抵抗値の範囲内に収まるように、電圧や電流などのエネルギーが抵抗変化型記憶素子10に与えられることによって、実行される。これによって、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態が可逆的に変化し、抵抗変化型記憶素子10は、その抵抗状態に対応したデータを不揮発に記憶する。
本実施形態において、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を、高抵抗状態から低抵抗状態へ変化させるためのパルスのことをセットパルスとよび、低抵抗状態から高抵抗状態へ変化させるためのパルスのことをリセットパルスとよぶ。
図8は、セット動作時及びリセット動作時における各パルスPLSet,PLReset,PLRd,PLDmのパルス形状の一例を示している。
図8の(a)に示されるように、セットパルス(第1のパルス)PLSetは、所定の振幅(第1の振幅)VSetと所定のパルス幅(第1のパルス幅)WSetとを有する。
図8の(b)に示されるように、リセットパルス(第2のパルス)PLResetは、所定の振幅(第2の振幅)VResetと所定のパルス幅(第2のパルス幅)WResetとを有する。
セットパルスPLSetの振幅VSetは、リセットパルスPLResetの振幅VResetよりも大きい。
リセットパルスPLResetのパルス幅WResetは、例えば、セットパルスPLSetのパルス幅WSetより大きい。但し、抵抗変化型メモリの動作や抵抗変化型記憶素子10の種類に応じて、リセットパルスPLResetのパルス幅WResetがセットパルスPLSetのパルス幅WSetと同じ場合もあるし、リセットパルスPLResetのパルス幅WResetがセットパルスPLSetのパルス幅WSetより大きい場合もある。
抵抗変化型記憶素子10からのデータの読み出しは、読み出しパルスPLRdが抵抗変化型記憶素子10に供給された際に、その抵抗値の大小によって読み出しノードに流れる電流を検知することによって、又は、読み出しノードの電位レベルの変動を検知することによって、実行される。
読み出しパルス(第3のパルス)PLRdは、振幅(第3の振幅)VRdを有し、パルス幅(第3のパルス幅)WRdを有している。読み出しパルスPLRdの振幅VRdは、セットパルスPLSet及びリセットパルスPLResetの振幅VSet,VResetより小さい。例えば、読み出しパルスPLRdのパルス幅WRdは、セットパルスPLSet及びリセットパルスPLResetのパルス幅WSet,WResetより小さい。
読み出しパルスPLRdの振幅VRd及びパルス幅WRdは、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態を変化させない大きさに設定されている。但し、読み出しパルスPLRdの振幅VRd及びパルス幅WRdは、読み出しノードにおける電流値/電位変動を検知できる大きさに設定されることが好ましい。
図8に示されるように、本実施形態の抵抗変化型メモリは、セット動作時において、セットパルスPLSetが抵抗変化型記憶素子10に供給された後に、所定のパルス形状のパルスPLDm1が、セットパルスPLSetが印加された抵抗変化型記憶素子10に対して供給される。本実施形態において、このパルスPLDm1のことを、ダミーパルス(第4のパルス)PLDm1とよぶ。
ダミーパルスPLDm1のパルス形状は、セットパルスPLSet、リセットパルスPLReset及び読み出しパルスPLRdのパルス形状と異なる。
ダミーパルスPLDm1の振幅(第4の振幅)VDmは、セットパルスPLSetの振幅VSetより小さく、読み出しパルスPLRdの振幅VRdより大きい。
ダミーパルスPLDm1のパルス幅(第4のパルス幅)WDm1は、例えば、セットパルスPLSetのパルス幅WSet以上である。ダミーパルスPLDm1のパルス幅WDm1は、例えば、読み出しパルスPLRdのパルス幅WRd以上である。但し、ダミーパルスPLDm1のパルス幅WDm1は、セットパルス又は読み出しパルスのパルス幅より小さくてもよい。
ダミーパルスPLDmの振幅VDmは、例えば、リセットパルスPLResetの振幅VResetより小さい。ダミーパルスPLDm1のパルス幅WDm1は、リセットパルスPLResetのパルス幅WReset以上である。
但し、抵抗変化型メモリに用いられる抵抗変化型記憶素子の種類やメモリの回路構成に応じて、ダミーパルスPLDm1のパルス幅WDm1は、セットパルスPLSet、読み出しパルスPLRd、又はリセットパルスPLResetのパルス幅より小さくてもよい。
ダミーパルスPLDm1は、図1のパルス生成回路8内に設けられたダミーパルス生成部80によって、生成される。ダミーパルスPLDm1は、抵抗変化型記憶素子10に負荷を与える。
本実施形態において、メモリの動作に用いられるパルスは電圧パルスとして説明するが、各パルスは、上記の関係をそれぞれ満たしていれば、電流パルスであってもよい。但し、セットパルスとしての電流パルスは、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を高抵抗状態から低抵抗状態へ変える大きさを有することが必要である。これと同様に、リセットパルスとしての電圧パルスは、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を低抵抗状態から高抵抗状態へ変える大きさを有することが必要である。尚、本実施形態において、パルスの振幅(電位差)の大きさは、振幅の絶対値によって比較されている。
本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セットパルスPLSetによって低抵抗状態に遷移された抵抗変化型記憶素子に対して、ダミーパルスPLDm1が供給される。
ダミーパルスPLDm1による負荷が低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子に与えられることによって、データのリテンション特性の悪い抵抗変化型記憶素子の抵抗値は、変化する。この結果として、ダミーパルスPLDm1の供給によって、所定のスペックを満たさない(データ保持率の悪い)抵抗変化型記憶素子が、抽出される。
これによって、抵抗変化型記憶素子のデータ保持率の低下を改善でき、抵抗変化型メモリの動作の信頼性は向上する。
したがって、本実施形態の抵抗変化型メモリによれば、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
(b) セット動作及びリセット動作
図9を用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリのセット/リセット動作について、説明する。図9は、本実施形態の抵抗変化型メモリの動作例を示すフローチャートである。ここでは、図1、図4及び図8も用いて、抵抗変化型メモリの動作を説明する。
ここで、リセット動作及びセット動作の対象となるセルユニットは、図4のワード線WLj及びビット線BLiに接続されたセルユニットCUとする。動作の対象のセルユニットのことを選択セルユニットとよび、選択セルユニットが接続されたワード線及びビット線のことを、選択ワード線及び選択ビット線とよぶ。選択セルユニット以外のセルユニットのことを、非選択セルユニットとよぶ。選択ワード線以外のワード線のことを非選択ワード線とよび、選択ビット線以外のビット線のことを、非選択ビット線とよぶ。
抵抗変化型メモリのセット動作は、以下のように実行される。
図9に示されるように、コマンド信号CMDが、外部から図1のチップ内のコマンドインターフェイス4内に入力される(ステップST0)。この際、データDT及びアドレス信号ADRが、外部からデータ入出力バッファ5内及びアドレスバッファ6内に、それぞれ入力される。
入力された信号に基づいて、セット動作が要求されているとステートマシン7が判別すると、ステートマシン7は、セット動作に必要な制御を、チップ内の回路に対して行う(ステップST1S)。
ステートマシン7の制御下において、カラム制御回路2は、アドレス信号ADRが含むカラムアドレス信号に基づいて、ビット線BLi−1,BLi,BLi+1を駆動する。これと同様に、ロウ制御回路3は、アドレス信号ADRが含むロウアドレス信号に基づいて、ワード線WLj−1,WLj,WLj+1を駆動する。
また、パルス生成回路8は、ステートマシン7の制御下において、セット動作に用いられるパルス(例えば、電圧パルス)を順次生成する。
選択セルユニット内のダイオード30に順バイアスが印加されるように、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLjに、所定のパルスがそれぞれ印加される(ステップST2S)。
選択ビット線BLiに、セットパルスPLSetが供給される。例えば、選択ビット線BLiの電位レベルは、セットパルスPLSetの振幅(電位レベル)VSetに設定され、選択ワード線WLjの電位レベルは、グランド電位Vssに設定される。これによって、選択セルユニットCU内の抵抗変化型記憶素子10に、セットパルスPLSetが印加される。図8の(a)に示されるように、セットパルスPLSetは、パルス幅WSetを有し、振幅(電位差)VSetを有する。セットパルスPLSetの振幅VSetは、例えば、2V〜10Vの範囲内で設定される。電位差VSetは、セットパルスPLSetのパルス幅WSetに相当する期間において、選択ビット線BLi及び選択セルユニットCUに印加される。
セットパルスPLSetの供給によって、選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子の抵抗状態が、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態が変化するモデルの1つとしては、セットパルスPLSetが抵抗変化型記憶素子10に印加されることによって、抵抗変化型記憶素子10の抵抗変化膜11内に電流が流れ易いフィラメント(電気経路)が形成される。これによって、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態が、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
選択セルユニットCUにセットパルスPLSetが供給されている間において、非選択セルユニット内のダイオード30に対して逆バイアスが印加されるように、非選択ビット線及び非選択ワード線に、所定のパルスが印加される。例えば、非選択ビット線の電位レベルは、グランド電位Vss(0V)から0.5V程度に設定され、非選択ワード線の電位レベルは、所定の非選択電位(例えば、0V〜5V程度)に設定される。
但し、選択ビット線BLiと非選択ワード線WLj−1,WLj+1とに接続された非選択セルユニット(半選択セルユニットともよばれる)において、それらのセルユニットの端子間の電位差が、実質的に0(ゼロ)になるように、選択ビット線−非選択ワード線間の電位差(例えば、VSet−VSet)が、それぞれ制御される。
これと同様に、選択ワード線WLjと非選択ビット線BLi−1,WLi+1とに接続された非選択セルユニット(半選択セルユニット)において、それらのセルユニットの端子間の電位差が実質的に0(ゼロ)になるように、非選択ビット線−選択ワード線間の電位差(例えば、Vss−Vss)が、それぞれ制御される。
例えば、非選択ワード線に印加される非選択電位は、セットパルスの振幅PLSet以上の大きさ(但し、セットパルスと同じ極性)に設定される。また、非選択ビット線に印加される非選択電位は、0又はセットパルスに対して反対の極性の電位である。
このように、非選択セルユニット内のダイオードに逆バイアスが印加されることによって、或いは、非選択セルユニット(半選択セルユニット)に印加される電位差が小さいことによって、非選択セルユニットの抵抗変化型記憶素子の抵抗状態の変化が、防止される。
図8の(a)及び図9に示されるように、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セットパルスPLSetが選択セルユニットに供給された後に、ダミーパルスPLDm1が、選択セルユニットに供給される。ダミーパルスPLDm1は、セットパルスPLSetの立ち下がりから所定の期間T1を経過した後に、選択セルユニットに供給される。例えば、選択ビット線BLiの電位レベルは、ダミーパルスPLDmの振幅(電位レベル)VDmに設定され、選択ワード線WLjの電位レベルは、グランド電位Vssに設定される。
ダミーパルスPLDm1の振幅VDmは、セットパルスPLSetの振幅VSetより小さく、読み出しパルスPLRdの振幅VRdより大きい。また、ダミーパルスの振幅VDm1は、リセットパルスPLResetの振幅VResetより小さい。
ダミーパルスPLDm1が供給されることによって、選択セルユニットCU内の抵抗変化型記憶素子10に負荷が与えられる。ダミーパルスPLDm1が抵抗変化型記憶素子10に供給されると、リテンション特性が悪い抵抗変化型記憶素子は、その抵抗値が、例えば、高抵抗状態側へシフトする。
これに対して、十分なリテンション特性を有する抵抗変化型記憶素子は、ダミーパルスPLDm1が供給されても、その抵抗値(抵抗状態)が変化することはない。これは、その抵抗変化型記憶素子が、高いリテンション特性により、ダミーパルスPLDm1の負荷に対して耐性を有するためである。
尚、ダミーパルスPLDm1が選択セルユニットに供給されている期間WDm1において、非選択ビット線及び非選択ワード線の電位は、セットパルスPLSetが選択セルユニットに供給されている期間と実質的に同様に、0V又は逆バイアスが非選択セルユニットに印加されるように、制御される。
ダミーパルスPLDmが選択セルユニットCUに供給されてから所定の期間T2が経過した後、例えば、選択セルユニットに所定のデータ(ここでは、“0”データ)が書き込まれた否か判定するために、ベリファイが実行される(ステップST3S)。ベリファイは、選択セルユニットCUからのデータの読み出しによって行われる。そのため、図8の(a)に示されるように、ダミーパルスPLDm1が選択セルユニットに供給された後に、選択セルユニットに読み出しパルスPLRdが供給される。本実施形態において、ベリファイのためのデータの読み出しのことを、ベリファイ読み出しとよぶ。
読み出しパルスPLRdは、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態を変化させないパルス幅WRd及び振幅VRdに設定されている。それゆえ、読み出しパルスPLRdの振幅VRdは、リセットパルスPLSetの振幅VSetより十分小さい。例えば、読み出しパルスPLRdの振幅VRdは、1V〜2V程度、又は、1V以下である。
読み出しノードにおける電位変動又は電流値に基づいて、選択セルユニットCU内の抵抗変化型記憶素子10の抵抗値が、“0”データに対応する低抵抗状態の分布内に納まっていないと判定されたならば、ステップST2S〜ST4Sの動作が再び実行される。
即ち、選択セルユニットCUにセットパルスPLSetが供給され、その後、ダミーパルスPLDm1が選択セルユニットCUに供給される。そして、ベリファイ読み出しが実行される。
上記のように、ダミーパルスPLDm1が供給されたことによって、リテンション特性が悪い抵抗変化型記憶素子は、その抵抗値が、“0”データ(所定の低い抵抗値)を示さない値にシフトされている。それゆえ、セット動作中において、ステップST4Sにおけるベリファイ読み出しによって、リテンション特性(データ保持率)が悪い抵抗変化型記憶素子が、抽出される。
読み出しノードにおける電流値又は電位の変動に基づいて、選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子の抵抗値が、“0”データに対応する低抵抗状態の分布内に存在すると判定された場合、セット動作は終了する。
例えば、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セット動作は、図8の(a)及び図9のステップST2S〜ST4Sのように、セットパルスPLSetの印加、ダミーパルスPLDmの印加及びベリファイ読み出し(読み出しパルスPLDmの印加)を含むサイクルを、1つの動作サイクルとする。
本実施形態の抵抗変化型メモリのリセット動作は、以下のように実行される。
上述のセット動作と同様に、ステートマシン7が、入力された信号CMDに基づいて、リセット動作が要求されていると判別すると、リセット動作が実行される(ステップST0,ST1R)。ステートマシン7の制御に基づいて、カラム及びロウ制御回路2,3は、アドレス信号ADRのカラム及びロウアドレス信号が示すビット線BLi−1,BLi,BLi+1及びワード線WLj−1,WLj,WLj+1をそれぞれ駆動する。パルス生成回路8は、リセット動作に用いられるパルスを生成する。
選択セルユニットCU内のダイオード30に順バイアスが印加されるように、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLjに、所定のパルスがそれぞれ印加される(ステップST2R)。
選択ビット線BLiには、リセットパルスPLResetが供給される。選択ワード線WLjの電位レベルは、グランド電位Vssに設定される。選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子10に、セットパルスPLResetが印加される。これによって、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態が、低抵抗状態から高抵抗状態へ変化する。
図8の(b)に示されるように、リセットパルスPLSetは、パルス幅WResetを有し、振幅VResetを有する。上述のように、リセットパルスPLResetの振幅VResetは、セットパルスPLSetの振幅VSetより小さい。セットパルスPLSetの振幅VSetの大きさに応じて、リセットパルスPLResetの振幅VResetは、例えば、1V〜10V内の範囲内で設定される。
セット動作と同様に、選択セルユニットにリセットパルスPLResetが供給されている間、非選択セルユニット内のダイオード30に逆バイアスが印加されるように、非選択ビット線及び非選択ワード線に、所定のパルス(電位)が印加される。例えば、非選択ビット線の電位レベルは、グランド電位Vssから0.5V程度の値に設定され、非選択ワード線の電位レベルは、非選択電位(例えば、Vss)に設定される。
また、セット動作時と同様に、半選択セルユニットにおいて、それらのセルユニットの端子間の電位差が、実質的に0(ゼロ)になるように、選択ビット線−非選択ワード線間の電位差及び非選択ビット線−選択ワード線間の電位差が、それぞれ制御される。
リセット動作において、リセットパルスPLResetが選択セルユニットに供給されてから所定の期間T3が経過した後に、ダミーパルスの供給なしに、選択セルユニットに対するベリファイが実行される(ステップST3R)。
ベリファイ読み出しによって、選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子の抵抗値が、“1”に対応する高抵抗状態の分布内に存在しているか否か検証される。
選択セルユニットCU内の抵抗変化型記憶素子10が、“1”データに対応する抵抗値(或いは、読み出しノードにおける電位の変動又は電流値)を示していない場合には、リセットパルスPLResetの供給(ステップST2R)及びベリファイ読み出し(ステップST3R)が再び実行される。選択セルユニットCU内の抵抗変化型記憶素子10が、“1”データに対応する抵抗値を示している場合、リセット動作は終了する。
例えば、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、リセット動作は、図8の(b)及び図9のステップST2R〜ST3Rのように、リセットパルスPLResetの印加及びベリファイ読み出し(読み出しパルスPLDmの印加)を含むサイクルを、1つの動作サイクルとする。
以上のように、第1の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セット動作時、セット動作の対象の抵抗変化型記憶素子10に対して、セットパルスPLSetが供給された後、ダミーパルスPLDm1が供給される。そして、例えば、ダミーパルスPLDm1が供給された後に、読み出しパルスPLRdの供給によるベリファイが実行される。
ダミーパルスPLDm1の振幅(電位差)VDm1は、セットパルスPLSetの振幅VSetより小さく、読み出しパルスPLRdの振幅VRdより大きい。また、ダミーパルスPLDm1の振幅VDmは、リセットパルスPLResetの振幅VResetより小さい。
図10Aは、抵抗変化型メモリのデータ保持率(単位:[%])と時間との関係を示している。図10Aの横軸は、時間を示し、図10Aの縦軸は、抵抗変化型メモリのデータ保持率を示している。
図10Aにおいて、実線で示される特性線P1は、本実施形態の抵抗変化型メモリにおけるデータ保持率の変化を示している。図10Aにおいて、破線で示される特性線P2は、ダミーパルスが用いられない抵抗変化型メモリにおけるデータ保持率の変化を示している。尚、時間“0”は、セットパルスが供給された直後の時間を示している。データ保持率は、データに対して割り付けられた抵抗値に対して、相関関係を有している。つまり、データ保持率の変化は、セットパルスの供給後における抵抗変化型記憶素子の抵抗値の変動量に依存する。
抵抗変化型メモリにおいて、データ保持率が所定の値(以下、スペック値とよぶ)SV以下になると、所定のデータを保持していない記憶素子の個数が増加していると、判定される。例えば、スペック値SVは、読み出しレベルやデータに対応する抵抗値の下限/上限を基準として求められる値である。スペック値SVは、例えば、基準値の90%程度の値で設定される。
抵抗変化型メモリのデータ保持率は、記憶素子(抵抗変化膜)の抵抗値の経時変化によって、メモリの動作中においてスペック値SV以下に低減する可能性がある。例えば、低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子の抵抗値が、動作温度の変化や素子の不良などに起因して高抵抗状態側にシフトする不良が存在する。
図10Aの特性線P2は、ダミーパルスが供給されない通常のセット動作の場合における、抵抗変化型メモリのデータ保持率の時間変化を示している。
例えば、ある抵抗変化型メモリが、ある時間Txにおいて、スペック値SV以下になるとする。この素子に対してベリファイ読み出しが時間Txより前に実行された場合に関して、考える。
この場合、抵抗変化型メモリのデータ保持率がスペック値SV以下になる前に、ベリファイ読み出しが実行されるので、時間Txより前のベリファイ読み出しでは、要求されたスペック値を満たしていると判定される。しかし、時間Txにおいて、その抵抗変化型メモリのデータ保持率は、スペック値SV以下になる。この結果として、後の読み出し動作で、データの読み出しに不良が生じる。それゆえ、ダミーパルスを用いない通常のセット動作では、抵抗変化型メモリの信頼性が低下する。
また、時間Txにおいてスペック値SV以下になる可能性がある抵抗変化型記憶素子に対するデータの書き込み(セット動作)の信頼性を確保するために、時間Txより後に、セット動作に対するベリファイ読み出しを実行する必要がある。この場合において、抵抗変化型メモリの動作速度は、低下してしまう。
本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、図10Aの特性線P1に示されるように、ダミーパルスが供給された場合、リテンション特性が悪い抵抗変化型記憶素子は、ダミーパルスが供給されない場合よりも早い時間Taで、スペック値SV以下になる。これは、ダミーパルスに起因する負荷により、リテンション特性が悪い抵抗変化型記憶素子の抵抗値が変化するためである。これに対して、ダミーパルスの振幅(電圧値)がセット及びリセットパルスの振幅より小さいため、リテンション特性が良好な抵抗変化型記憶素子にダミーパルスが印加されても、その記憶素子のデータ保持率(抵抗値)が変化することはない。
そして、図10Aの期間Ta〜Tx内において、読み出しベリファイの実行及びセットパルスの再供給によって、抵抗変化型メモリのデータ保持率を改善できる。
また、ダミーパルスが供給される結果として、データ保持率が低下する可能性がある抵抗変化型メモリのデータ保持率がスペック値以下になる速度(時間Ta)は、通常の経時変化によるデータ保持率の低下速度(時間Tx)よりも、速くなる。そのため、例えば、データ保持率の経時変化を考慮してベリファイ動作を実行する場合に比較して、図8の(a)に示される動作例において、セットパルスの供給から短い期間TSetで、信頼性の高いベリファイ読み出しを実行できる。それゆえ、セット動作の動作サイクルに、ダミーパルスが追加されても、抵抗変化型メモリの動作速度の過剰な低減は、抑制される。
尚、抵抗変化型メモリのデータ保持率が、ダミーパルスの供給によりスペック値SV以下になる時間Taは、ダミーパルスの振幅及びパルス幅に依存する。
リセット動作は、抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態を低抵抗状態から高抵抗状態に変化させる動作である。抵抗変化型記憶素子の抵抗状態が高抵抗状態から低抵抗状態に遷移する不良は、低抵抗状態から高抵抗状態への経時変化に比較して、生じにくい。そのため、セット動作におけるデータ保持率の低下に比較して、抵抗変化型メモリに対するリセット動作におけるデータ保持率の低下の悪影響は、非常に小さい。
それゆえ、抵抗変化型メモリのリセット動作において、ダミーパルスを用いずとも、要求されるデータ保持率のスペックを、確保できる。但し、リセット動作時においても、リセットパルスが選択された抵抗変化型記憶素子に供給された後に、ダミーパルスがその抵抗変化型記憶素子に対して、供給されてもよい。
以上のように、本実施形態の抵抗変化型メモリは、セット動作の動作サイクルにおいて、セットパルスPLSetが選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子に供給された後、ダミーパルスPLDmが選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子に供給される。
これによって、セット動作において、動作速度が過度に低減することなしに、抵抗変化型記憶素子のデータ保持率の低下に起因する動作不良を、抑制できる。それゆえ、本実施形態において、抵抗変化型メモリの信頼性が向上する。
したがって、本実施形態の抵抗変化型メモリによれば、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
(4) ダミーパルスの振幅及びパルス幅
図10Bを用いて、本実施形態の抵抗変化型メモリにおけるダミーパルスPLDmの振幅VDm及びパルス幅WDmについて、述べる。
尚、ここで述べるダミーパルスPLDmの振幅VDm及びパルス幅WDmは、一例であって、抵抗変化型記憶素子10の抵抗変化膜11に用いられる材料や、セルユニット内の非オーミック素子(ダイオード)30の特性に応じて、異なるのはもちろんである。但し、素子に用いられる材料及び特性が異なっても、ほぼ同様の傾向が示される。
抵抗変化型メモリにおいて、低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子に流す電流の最大値が制限される。この制限電流(コンプライアンス電流ともよばれる)より高い電流が、低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子に流れると、抵抗変化膜内のフィラメントが切れ(又は消失し)、抵抗変化型記憶素子1が高抵抗状態に変化する。このコンプライアンス電流の大きさは、抵抗変化型記憶素子の材料/特性、及び、抵抗変化型メモリに要求されるスペックに応じて、異なる。それゆえ、本実施形態のダミーパルスの振幅/パルス幅の大きさは、コンプライアンス電流の大きさに依存する。
図10Bの(a)及び(b)は、抵抗変化型記憶素子が高抵抗状態から低抵抗状態に変化した後に、ダミーパルスが供給された場合における抵抗変化型記憶素子の存在確率の分布が示されている。
図10Bの(a)及び(b)において、グラフの横軸は、電流値を示している。この電流値は、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を変化させないパルス(例えば、読み出しパルス)がセルユニットに印加された場合において、抵抗変化型記憶素子(セルユニット)を流れた電流の電流値を示している。横軸に示される電流値は、抵抗変化型記憶素子の抵抗値に対して相関関係を有している。
図10Bの(a)及び(b)において、電流値ISetは、低抵抗状態(“0”データ)の抵抗変化型記憶素子の基準値に相当し、電流値IResetは、高抵抗状態(“1”データ)の抵抗変化型記憶素子の基準値に相当する。電流値ISetを基準値とした所定の許容範囲内に属しない電流値は、高抵抗状態の抵抗変化型記憶素子又はデータの判別が不可能な抵抗変化型記憶素子と見なされる。
図10Bの(a)及び(b)において、グラフの縦軸は、各電流値(抵抗値)におけるメモリセルアレイ内の抵抗変化型記憶素子(セルユニット)の存在確率を示している。
図10Bの(a)及び(b)において、特性線A1,A2は、セットパルスが抵抗変化型記憶素子に供給された直後の分布を示し、特性線B1,B2は、ダミーパルスが抵抗変化型記憶素子に供給された直後の分布を示している。また、特性線C1,C2は、ダミーパルスが抵抗変化型記憶素子に供給されてから10秒から100秒程度経過した後の分布を示している。
図10Bの(a)及び(b)において、ダミーパルスのパルス幅及び振幅を変化させて、それぞれ測定されている。図10Bの(b)におけるダミーパルスのパルス幅は、図10の(a)におけるダミーパルスのパルス幅の103倍から104倍程度に設定される。図10Bの(b)におけるダミーパルスの振幅は、図10Bの(a)におけるダミーパルスの振幅の10倍から102倍程度に設定されている。
図10Bの(a)に示される例において、例えば、ダミーパルスのパルス幅WDmは、10ns≦WDm<100nsに設定され、ダミーパルスの振幅VDmは0.1V≦VDm<1Vに設定されている。
図10Bの(a)の特性線A1に示されるように、セットパルスの供給の直後において、抵抗変化型記憶素子は、所定の電流値ISet以上の値を示している。即ち、セットパルスが供給された直後の抵抗変化型記憶素子は、低抵抗状態になり、所定のデータ(“0”データ)を保持している。
この後、上記の設定値(パルス形状)のダミーパルスが、低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子に供給される。ダミーパルスが供給された直後の特性線B1に示されるように、ダミーパルスの供給によって、電流値ISetと電流値IResetとの間における抵抗変化型記憶素子の存在確率が、増加する。つまり、ダミーパルスが抵抗変化型記憶素子に供給されることによって、リテンション特性が悪い抵抗変化型記憶素子の抵抗値は、低抵抗状態側から高抵抗状態側へシフトする。
一方、所定のリテンション特性が確保されている抵抗変化型記憶素子は、ダミーパルスが供給されても、低抵抗状態から高抵抗状態へ変化することはない。
図10Bの(a)の特性線C1に示されるように、ダミーパルスが供給されてから所定の期間(10s〜100s後)が経過した後、電流値ISetと電流値IResetとの間における存在確率は、ダミーパルスが供給された直後の分布(特性線B1)よりもさらに増加する。この結果として、ダミーパルスが供給されたとしても、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態を変化させるためのダミーパルスの負荷が小さいと、経時変化によって抵抗変化型記憶素子の抵抗値の変化が生じることが、わかる。
図10Bの(b)に示される例において、例えば、ダミーパルスのパルス幅WDmは、10μs≦WDm<100μsに設定され、ダミーパルスの振幅VDmは1V≦VDm<10Vに設定されている。
図10Bの(b)に用いられた設定条件のダミーパルスは、経時変化による特性線B1から特性線C1への変化も小さい。つまり、ダミーパルスのパルス幅及び振幅が、図10Bの(a)における設定条件であれば、経時変化(10s〜100s)よりも短い期間(10μ〜100μs)において、データ保持率の所定のスペックを満たさない可能性がある抵抗変化型記憶素子の大部分を、抽出できる。
また、図10Bの(b)におけるダミーパルスのパルス幅及び振幅のように、ダミーパルスのパルス幅及び振幅が図10Bの(a)の設定条件より大きくなっても、所定のリテンション特性が確保されている抵抗変化型記憶素子は、その記憶素子の抵抗値がダミーパルスの負荷によって大きく変化することはない。
したがって、図10Bの(b)に用いられたダミーパルスの設定条件によれば、セットパルスの供給後における、ダミーパルスの供給の効果が、図10Bの(a)の設定条件よりも、顕著になる。
但し、上述のように、本実施形態の抵抗変化型メモリに用いられるダミーパルスは、図10Bの(a)又は(b)に用いられたダミーパルスの振幅及びパルス幅に限定されるものではない。それゆえ、抵抗変化型メモリに要求される動作スペックに応じて、図10Bの(a)又は(b)に用いられたダミーパルスの設定値のいずれか一方が、抵抗変化型メモリに用いられてもよいし、図10Bの(a)及び(b)の中間の設定値が、抵抗変化型メモリに用いられてもよい。
以上のように、第1の実施形態の抵抗変化型メモリのように、セットパルスが抵抗変化型記憶素子に供給された後に、ダミーパルスが抵抗変化型記憶素子に供給されることで、抵抗変化型メモリのリテンション不良(データ保持率の低下)による動作特性の低減を抑制できる。
したがって、第1の実施形態の抵抗変化型メモリによれば、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
(5) 回路例
図11を用いて、ダミーパルスを生成するための回路構成の一例について、説明する。
図11は、パルス生成回路8の内部構成の一例を示している。
パルス生成回路8は、ビット線及びワード線にそれぞれ接続されるパルス供給部を有する。各ビット線BLi−1,BLi,BLi+1に対して、カラム用のパルス供給部80が接続される。
パルス生成回路8は、カラム選択スイッチ(例えば、電界効果トランジスタ)SCLを介して、ビット線BLiに接続される。カラム選択スイッチSCLがオン/オフされることによって、パルス生成回路8とビット線BLiとの接続状態が、制御される。カラム選択スイッチSCLは、例えば、カラム制御回路2内に設けられている。
パルス生成回路8は、1つの電圧源Vddを有している。電圧源Vddは、一定の電位Vddを出力する。
電圧源Vddとカラム選択スイッチSCLとの間に、複数の抵抗素子81A,81B,81Cが並列接続されている。抵抗素子81A,81B,81Cのそれぞれは、スイッチ素子としての電界効果トランジスタ82A,82B,82Cを介して、電圧源Vddとビット線BLiとの間に接続されている。
電界効果トランジスタ82A,82B,82Cがオン/オフされることによって、電圧源Vddと抵抗素子81A,81B,81Cとの接続状態が制御される。
電圧源Vddが出力する電圧値が、抵抗素子81A,81B,81Cによって降圧される。例えば、抵抗素子81Aは、電圧源Vddの電圧値からセットパルスPLSetの振幅VSetを生成するための抵抗値を有する。抵抗素子81Bは、電圧源Vddの電圧値からリセットパルスPLResetの振幅VResetを生成するための抵抗値を有する。抵抗素子81Cは、電圧源Vddの電圧値からダミーパルスPLDmの振幅VDmを生成するための抵抗値を有する。
このように、抵抗素子81A,81B,81Cによって、電圧源Vddからの電圧値を降圧することによって、所定の振幅(電圧値)を有するパルスが生成される。
各パルスのパルス幅は、例えば、電圧源Vddとビット線BLiとの間に接続された電界効果トランジスタ82A,82B,82C又は、カラム選択スイッチSCLがオンしている期間によって、制御される。これによって、所定のパルス幅を有するパルスが生成される。
尚、1つのパルスが1つの抵抗素子によって形成される場合には、その抵抗素子が接続された1つのトランジスタ82A,82B,82Cのみがオンし、1つの抵抗素子と電圧源Vddが電気的に接続される。そして、残りのトランジスタ82A,82B,82Cはオフし、残りの抵抗素子は電圧源Vddから電気的に分離される。
但し、並列接続された2以上の抵抗素子81A,81B,81Cを用いて、所定の振幅を有するパルスを生成するための抵抗値(合成抵抗)を形成する場合には、2以上の電界効果トランジスタ82A,82B,82Cが同時にオンしてもよい。
図11に示されるように、少なくとも1つの抵抗素子82Cと少なくとも1つのスイッチ素子82Cによって、ダミーパルス生成部80が形成される。
それゆえ、本実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セット/リセットパルス及び読み出しパルスとはパルス形状が異なるダミーパルスPLDmを、生成できる。
尚、ビット線及びワード線は、パルス生成回路8内のスイッチ素子(図示せず)を経由して、グランド端(図示せず)にも接続される。スイッチ素子のオン/オフが制御されることによって、抵抗変化型メモリの動作時において、所定のビット線及びワード線に、グランド電位が印加される。上述のように、0.5V程度の電位が非選択ビット線に印加される場合もある。非選択ビット線に0.5V程度の非選択電位を供給するために、電圧源の電圧(電位)を0.5V程度に降圧する抵抗素子と、その抵抗素子と電圧源との接続状態を制御するスイッチ素子とが、パルス生成回路8内にさらに設けられてもよい。
(B) 第2の実施形態
図12を参照して、第2の実施形態の抵抗変化型メモリについて、説明する。尚、本実施形態において、第1の実施形態との相違点について説明し、共通点に関しては、必要に応じて説明する。
図12は、第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セット動作時のセットパルスPLSet及びダミーパルスPLDm2のパルス形状の一例を、示している。
第1の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、ダミーパルスPLDm1は、1つの矩形状のパルスによって、形成されている。
一方、第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、図12に示されるように、1つのダミーパルスPLDm2は、複数の短パルスsPLを含んでいる。短パルスsPLは、パルス幅sWを有する。ダミーパルスPLDm2は、パルス幅WDm2を有する。
短パルスsPLのパルス幅sWは、セットパルスPLSetのパルス幅WSet、リセットパルスPLResetのパルス幅WReset及び読み出しパルスPLRdのパルス幅WRdより小さい。
短パルスsPLの振幅VDmは、第1の実施形態と同様に、セットパルスPLSetの振幅VSetより小さく、読み出しパルスPLRdの振幅VRdより大きい。短パルスsPLの振幅VDmは、リセットパルスPLResetの振幅VResetより小さい。
尚、本実施形態において、ダミーパルスPLDm2に含まれる複数の短パルスsPLの振幅VDmは、上記の他のパルスとの振幅の条件を満たす範囲内で、短パルスsPL毎に異なっていてもよい。
2つの短パルスsPLは、期間Tsで隣接している。1つの短パルスsPLの周期は、“sW+sT”で示される。
例えば、図11に示される回路が、ダミーパルスを生成するために用いられた場合、ダミーパルスPLDm2内に含まれる短パルスsPLは、ダミーパルス生成部80内のトランジスタ82Cのオン/オフを、短パルスsPLの周期(sW+sT)で切り替えることによって、生成される。
以上のように、第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、ダミーパルスPLDm2が、複数の短パルスsPLからなる短パルス群であっても、第1の実施形態と同様に、セット動作におけるデータ保持率の低下による動作特性の劣化を低減できる。
これに加えて、第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、短パルスsPLの周期(sW+sT)と1つのダミーパルスPLDm2内に含まれる短パルスsPLの個数との積が、図8に示されるダミーパルスPLDm1のパルス幅WDm1より小さくなるように設定される。これによって、第2の実施形態の抵抗変化型メモリは、第1の実施形態の抵抗変化型メモリに比較して、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDm2とを含むセット動作に要する時間を短縮できる。それに伴って、抵抗変化型メモリの消費電力の低減にも貢献できる。
以上のように、第2の実施形態の抵抗変化型メモリによれば、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
(C) 第3の実施形態
図13乃至図17を参照して、第3の実施形態の抵抗変化型メモリについて、説明する。本実施形態において、第1及び第2の実施形態との相違点について主に説明し、共通点に関しては、必要に応じて説明する。
図13は、第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セット動作時のセットパルスPLSet及びダミーパルスPLDmのパルス形状の一例を、示している。
第1及び第2の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、セットパルスPLSetが選択セルユニットに供給されてから所定の期間T1が経過した後に、ダミーパルスPLDm1が、選択セルユニットに供給される。
第3の実施形態において、図13に示されるように、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとの間に、所定の期間が設けられていない。ダミーパルスPLDmは、セットパルスPLSetに連続している。つまり、ダミーパルスPLDmの供給が開始する時間は、セットパルスPLSetの供給が終了する時間に実質的に同じに設定されている。
それゆえ、第3の実施形態の抵抗変化型メモリは、第1及び第2の実施形態の抵抗変化型メモリに比較して、セット動作に要する時間を短縮できる。
本実施形態のように、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/D(以下では、セット/ダミーパルスPLS/Dとよぶ)が、抵抗変化型メモリのセット動作に用いられた場合においても、セットパルスPLSetの電位差(振幅)VSetが抵抗変化型記憶素子10に所定の期間(パルス幅)WSetにおいて印加された後に、ダミーパルスPLDmの電位差VDmが、低抵抗状態の抵抗変化型記憶素子10に所定の期間WDmにおいて印加される。
それゆえ、第3の実施形態の抵抗変化型メモリにおいても、第1及び第2の実施形態の抵抗変化型メモリと同様に、セット動作におけるデータ保持率の低下による動作特性の劣化を低減できる。
したがって、第3の実施形態の抵抗変化型メモリによれば、第1及び第2の実施形態と同様に、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
以下、図14乃至図17を用いて、図13に示されるセット/ダミーパルスPLS/Dを生成するための回路及びその動作について、説明する。
(a) 回路例1
図14及び図15を用いて、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dを生成するための回路の一例について、説明する。
図14は、セット/ダミーパルスPLS/Dを生成するための回路の一例を示している。
図14に示されるように、セット/ダミーパルスPLS/Dは、キャパシタ(容量素子)60を含んでいる回路(以下、セット/ダミーパルス生成部とよぶ)80Aによって、生成される。セット/ダミーパルス生成部80Aは、パルス生成回路8内に設けられる。但し、セット/ダミーパルス生成部80Aは、カラム制御回路2内に設けられてもよい。
セット/ダミーパルス生成部80Aは、各ビット線BLi−1,BLi,BLi+1に対して、1つずつ設けられている。但し、メモリセルアレイの回路構成及び動作に応じて、セット/ダミーパルス生成部80Aは、2以上のビット線で共有されてもよい。
図14に示されるセット/ダミーパルス生成部80Aは、1つのキャパシタ60と2つのスイッチ素子SW1,SW2とを含む。
キャパシタ(第1のキャパシタ)60の一端(第1の端子)は、例えば、スイッチ素子SW1とビット線BLiとの接続ノードに接続される。キャパシタ60の他端(第2の端子)は、グランド端に接続される。
キャパシタ60は、図3に示されるように、半導体基板51上に形成される。キャパシタ60は、半導体基板51内の半導体層61と、半導体層61上の絶縁膜62と、絶縁膜62上の導電層63とからなる。
キャパシタ60は、例えば、1pF以下の静電容量を有する。キャパシタ60の静電容量が1pFの場合、半導体基板51上に形成されたキャパシタ60の面積は、例えば、10μm×20μm程度になる。尚、キャパシタ60は、層間絶縁膜58上の配線領域25内に、形成されてもよい。
スイッチ素子SW1は、例えば、電界効果トランジスタである。
電界効果トランジスタSW1の電流経路の一端は、ビット線BLiに接続される。電界効果トランジスタSW1の電流経路の他端は、例えば、抵抗素子(図示せず)を介して、電圧源Vddに接続される。電界効果トランジスタSW1のゲートには、制御信号SCが入力される。制御信号SCは、抵抗変化型メモリの動作クロック(グローバルクロック)CLKが、チップ内のロジック回路(以下、クロック変調部とよぶ)891を用いて変調されることによって、生成される。
電界効果トランジスタSW1がオンしている間、セットパルスPLSetが、電界効果トランジスタSW1を経由して、選択ビット線BLi及びキャパシタ60に供給される。電界効果トランジスタSW1のオン/オフによって、キャパシタ60の充電が制御される。以下では、電界効果トランジスタSW1のことを、充電スイッチとよぶ。
スイッチ素子SW2は、例えば、電界効果トランジスタである。
電界効果トランジスタSW2の電流経路の一端は、キャパシタ60の一端に接続される。電界効果トランジスタSW2の電流経路の他端は、グランド端に接続される。電界効果トランジスタSW2のゲートには、制御信号SDが入力される。制御信号SDは、制御信号SCと同様に、動作クロックCLKがクロック変調部892によって変調されることによって、生成される。
電界効果トランジスタSW2は、キャパシタ60にセットパルスPLSetが供給されている期間において、オフしている。電界効果トランジスタSW2がオンしたときに、キャパシタ60内の蓄積電荷が、電界効果トランジスタSW2を経由して、グランド端に放電される。電界効果トランジスタSW2のオン/オフによって、キャパシタ60の放電が制御される。以下では、電界効果トランジスタSW2のことを、放電スイッチとよぶ。
以下、図14及び図15を用いて、本回路例におけるセット/ダミーパルス生成部80Aの動作について説明する。尚、本例においても、選択ビット線は、ビット線BLiとし、選択ワード線は、ワード線WLjとする。
図15は、回路例1のセット/ダミーパルス生成部80Aを含む抵抗変化型メモリの動作のタイミングチャートを示している。
セット動作時、選択されたカラムスイッチ素子(図示せず)が、オンする。また、時間t1において、セット/ダミーパルス生成部80Aの充電スイッチSW1の制御信号SCが“L”レベルから“H”レベルに設定される。これによって、セットパルスPLSetは、オン状態の充電スイッチSW1及びカラム選択スイッチを経由して、選択ビット線BLiに供給される。例えば、充電スイッチ素子SW1は、カラム選択スイッチがオンされるのと実質的に同時にオンする。選択ワード線WLjの電位レベルは、グランド電位に設定される。
制御信号SDは“L”レベルに設定され、放電スイッチSW2はオフしている。
非選択セルユニット内のダイオードに逆バイアスが印加されるように、又は、非選択セルユニットの端子間の電位差がほぼ0になるように、非選択ビット線BLi−1,BLi+1及び非選択ワード線WLj−1,WLj+1の電位が制御される。尚、非選択セルユニットに逆バイアスを印加するための電位は、時間t0において、非選択ワード線に印加される。時間t0は、抵抗変化型メモリの動作が安定であれば、時間t1の前であっても、時間t1の後であってよい。非選択ビット線BLi−1,BLi+1の電位は、例えば、グランド電位から0.5V程度の範囲に設定される。
セットパルスPLSetは、選択ビット線(選択セルユニット)BLiに供給されるのと同時に、充電スイッチSW1を経由してキャパシタ60に供給される。キャパシタ60は、セットパルスPLSetによって、充電される。
所定の期間が経過した後、制御信号SCの信号レベルが“H”レベルから“L”レベルにされ、充電スイッチSW1がオフする。
これによって、電圧源VddからのセットパルスPLSetの供給は、停止する。
しかし、電圧源Vddがビット線BLiから電気的に分離されても、キャパシタ60が、セットパルスPLSetの大きさ(振幅Vset)程度の電位差に、充電されている。そのため、選択ビット線BLiがオフ状態のスイッチSW1によって電圧源Vddから電気的に分離されても、ビット線BLiの電位レベルが急峻に変化することは無い。
電位差VSetが選択セルユニットに印加されることによって、選択された抵抗変化型記憶素子10の抵抗状態が、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
セットパルスPLSetのパルス幅WSetに相当する期間が経過した後、時間t2において、制御信号SDの信号レベルが“L”レベルから“H”レベルにされる。これによって、放電スイッチSW2としての電界効果トランジスタSW2が、オンする。
すると、オンした放電スイッチSW2を経由して、キャパシタ60の電荷が、グランド端に放電する。キャパシタ60の放電に伴って、選択セルユニットに印加される電位差(パルスの振幅)が、減少し始める。尚、上述のように、選択ワード線WLiは、グランド電位に設定されているため、キャパシタ60の放電電流は、選択セルユニットにも流れる可能性はある。しかし、放電スイッチSW2としての電界効果トランジスタの電流転送能力が十分に高ければ、選択セルユニットに流れる放電電流は、微弱である。それゆえ、キャパシタ60の放電電流が、抵抗変化型記憶素子に悪影響を及ぼすことは無い。
時間t3において、キャパシタ60の放電によって、セット/ダミーパルスPLS/Dの振幅(選択ビット線の電位)が、“VDm”に達すると、放電スイッチSW2の制御信号SDが“L”レベルにされ、放電スイッチとしての電界効果トランジスタSW2はオフする。
それから、ダミーパルスPLDmのパルス幅WDmに相当する期間(例えば、時間t3から時間t4の期間)が経過した後、制御信号SDが“H”レベルに設定され、放電スイッチSW2がオンされる。このため、キャパシタ60に充電された電荷のほぼ全てが、放電スイッチSW2を経由して、グランド端に放電される。これによって、選択ビット線BLi及び選択ワード線WLj間の電位差は、ほぼ0Vになる。
キャパシタ60の放電が完了した後、時間t5において、制御信号SDが“L”レベルに設定され、放電スイッチSW2がオフする。
このように、キャパシタ60の充電及び放電によって、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dが、選択セルユニット内の抵抗変化型記憶素子に供給される。
この後、時間t7において、非選択ワード線に対する電位の供給が、停止される。そして、図9に説明した動作と同様に、ベリファイ読み出しが実行され、セット動作が終了する。
以上のように、第3の実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、図14に示されるキャパシタ60を含むパルス生成部80Aによって、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dが生成される。
それゆえ、本回路例の抵抗変化型メモリにおいて、選択セルユニットにセットパルスPLSetが供給されるのに続いて、ダミーパルスPLDmが供給されるのと実質的に同様の動作が実現される。
図14に示される回路において、ダミーパルスPLDmは、セットパルスPLSetの供給によるキャパシタ60の蓄積電荷が放電されることによって、形成される。つまり、セットパルスPLSetを用いて、ダミーパルスPLDmを生成できる。
それゆえ、本回路例は、セットパルスPLSetを利用して、ダミーパルスPLDmを生成できる。
したがって、図14に示されるパルス生成部80Aによれば、ダミーパルスを生成するための独立した電源を追加する必要がないため、ダミーパルスを生成する機能を実現した上で、抵抗変化型メモリの回路面積の縮小や消費電力の削減に貢献できる。
また、本回路例において、キャパシタ60が半導体基板上に形成されることによって、チップ面積の増大や記憶密度の低減が発生するのを防止できる。
(b) 回路例2
図16及び図17を用いて、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dを生成するための回路の一例について、説明する。尚、ここでは、図14及び図15を用いて説明した例に相違する点に関して、主に説明し、図14及び図15に示される例と共通する点に関しては、必要に応じて説明する。
図16に示されるように、本回路例においても、キャパシタ60A,60Bを含んでいるパルス生成部80Bによって、セット/ダミーパルスPLS/Dが生成される。
図16に示される回路例では、2つのキャパシタ60A,60Bのチャージ・シェアによって、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmが連続したセット/ダミーパルスPLS/Dが生成される。
図16に示されるように、セット/ダミーパルス生成部80Aは、2つのキャパシタ60A,60Bと3つのスイッチ素子(例えば、電界効果トランジスタ)SW1,SW2,SW3を含んでいる。
キャパシタ(第1のキャパシタ)60Aの一端(第1の端子)は、充電スイッチSW1とビット線BLiとの接続ノードに接続される。キャパシタ60Aの他端(第2の端子)は、グランド端に接続される。
キャパシタ(第2のキャパシタ)60Bの一端(第3の端子)は、スイッチ素子SW3を経由して、キャパシタ60Aの一端に接続される。キャパシタ60Bの他端(第4の端子)は、グランド端に接続される。
スイッチ素子SW3としての電界効果トランジスタSW3の電流経路の一端は、キャパシタ60Aの一端に接続される。電界効果トランジスタSW3の電流経路の他端は、キャパシタ60Bの一端に接続される。それとともに、電界効果トランジスタSW3の電流経路の他端は、放電スイッチSW2を経由して、グランド端に接続される。
電界効果トランジスタSW3のゲートには、制御信号SSが入力される。制御信号SSは、制御信号SC,SDと同様に、クロック変調部893によって、メモリの動作クロックCLKが変調されることによって、生成される。
放電スイッチ素子としての電界効果トランジスタSW2の一端は、キャパシタ60Bの一端に接続され、電界効果トランジスタSW2の他端は、グランド端に接続されている。
電界効果トランジスタSW3は、キャパシタ60Aが充電している期間において、オフしている。ダミーパルスPLDmが生成される際に、電界効果トランジスタSW3はオンする。これによって、キャパシタ60Aが蓄積している電荷の一部分が、オンした電界効果トランジスタSW3を経由して、キャパシタ60Bに移動する。即ち、電界効果トランジスタSW3がオンすることによって、キャパシタ60Aとキャパシタ60Bとの間に、チャージ・シェアが生じる。キャパシタ60Aからキャパシタ60Bへ電荷が移動している間、放電スイッチSW2はオフしている。
キャパシタ60Aの静電容量が“C1”で示され、キャパシタ60Bの静電容量が“C2”で示される場合、2つのキャパシタ60A,60B間のチャージ・シェア後において選択セルユニットに印加される電位VCellは、次式(式1)で示される。
VCell={C1/(C1+C2)}×VSet ・・・(式1)
この電位VCellが、ダミーパルスの振幅VDmとほぼ同じ大きさになるように、各キャパシタ60A,60Bの静電容量C1,C2の大きさがそれぞれ設定される。
このように、2つのキャパシタ60A,60B間のチャージ・シェアによって、選択セルユニットに供給されるパルスPLS/Dの振幅が、セットパルスPLSetの振幅VSetからダミーパルスPLDmの振幅VDmへ低減する。
このように、本回路例のセット/ダミーパルス生成部80Bは、キャパシタ間のチャージ・シェアによって、図14に示されるセット/ダミーパルス生成部80Aと同様に、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dを生成できる。
それゆえ、本回路例の抵抗変化型メモリにおいても、図14に示される回路と同様に、選択セルユニットにセットパルスPLSetが供給されるのに続いて、ダミーパルスPLDmが供給されるのと実質的に同様の動作が実現される。
以下、図16及び図17を用いて、回路例2のセット/ダミーパルス生成部80Bの動作について説明する。
図17は、回路例2におけるセット/ダミーパルス生成部80Bを含む抵抗変化型メモリの動作のタイミングチャートを示している。
図17に示されるように、時間t0において、選択ワード線の電位レベル、非選択ビット線の電位レベル及び非選択ワード線の電位レベルが、所定のレベルに設定される。
そして、時間t1において、制御信号SCが“L”レベルから“H”レベルになると、充電スイッチとしての電界効果トランジスタSW1がオンする。制御信号SS,SDは、“L”レベルに設定されている。
充電スイッチSW1がオンするのと実質的に同時に、カラム選択スイッチ(図示せず)がオンする。これによって、セットパルスPLSetが選択セルユニットに供給され、それとともに、セットパルスPLSetによって、キャパシタ60Aが充電される。この際、チャージ・シェアスイッチSW3は、オフされているので、キャパシタ60Bは充電されない。
セットパルスPLSetが選択セルユニットに供給されることによって、抵抗変化型記憶素子の抵抗状態は、高抵抗状態から低抵抗状態に変化する。
キャパシタ60Aが電圧VSet程度に充電された後、制御線号SCは“L”レベルに設定され、充電スイッチ(電界効果トランジスタ)SW1はオフする。
これによって、電圧源VddからのセットパルスPLSetが選択ビット線BLiに供給されることは、無くなる。但し、図14に示される回路例と同様に、キャパシタ60Aは、電圧VSet程度に充電されているため、選択ビット線BLiの電位レベルが急峻に低減することはない。
セットパルスPLSetのパルス幅WSetに相当する期間が経過した後、例えば、時間t2において、制御信号SSが“L”レベルから“H”レベルに設定される。それゆえ、チャージ・シェアスイッチとしての電界効果トランジスタSW3がオンする。オンしたトランジスタSW3を経由して、キャパシタ60Aの電荷は、キャパシタ60Bに移動し、2つのキャパシタ60A,60B間のチャージ・シェアが生じる。尚、放電スイッチSW2はオフしている。
この2つのキャパシタ60A,60B間のチャージ・シェアによって、ビット線BLiの電位は、上述の(式1)に示される関係に基づいて低下し、ダミーパルスPLDmの振幅VDm程度の電位差が、選択セルユニットに印加される。尚、チャージ・シェアが完了した後、チャージ・シェアスイッチSW3はオンしたままでもよいし、一度オフされてもよい。
ダミーパルスPLDmのパルス幅WDmに相当する期間において、キャパシタ60Aの充電電位VDmが選択セルユニットに印加された後、時間t4において、制御信号SDが“L”レベルから“H”レベルに設定される。放電スイッチとしての電界効果トランジスタSW2がオンし、2つのキャパシタ60A,60Bの放電が開始する。この際、制御信号SSは“H”レベルに設定され、チャージ・シェアスイッチSW3はオンしている。
これによって、キャパシタ60Aの電荷は、2つのオンした電界効果トランジスタSW2,SW3を経由して、グランド端に放電される。また、キャパシタ60Bの電荷は、電界効果トランジスタSW2を経由して、グランド端に放電される。
例えば、時間t5において、選択ビット線BLiに供給されるパルスPLS/Dの電位は、実質的に0になる。
尚、カラム選択スイッチ(図示せず)をオフすることによって、キャパシタ60A,60Bと選択セルユニットとを電気的に分離して、キャパシタ60A,60Bから選択ビット線BLiへの電位の供給を停止してもよい。
時間t6において、制御信号SC及び制御信号SDが、“H”レベルから“L”レベルに設定され、チャージ・シェアスイッチSW3及び放電スイッチSW2はオフする。
この後、時間t7において、非選択ワード線に対する電位の供給が、停止される。そして、図9に説明した動作と同様に、ベリファイ読み出しが実行され、セット動作が終了する。尚、チャージ・スイッチSW3、放電スイッチSW2及びワード線WLi−1,WLi,WLi+1が、非活性化(オフ)される順序は、上記の順序に限定されない。
図16に示されるパルス生成部80Bは、2つのキャパシタ60A,60Bとのチャージ・シェアによって、図14に示されるパルス生成部80Aと同様に、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLS/Dを生成できる。それゆえ、図16に示される抵抗変化型メモリは、図14に示される回路例と同様の効果が得られる。
以上のように、第3の実施形態において、図14及び図16に示される回路を含む抵抗変化がメモリによれば、第1及び第2の実施形態と同様に、セットパルスPLSetが印加された後に、ダミーパルスPLDmが印加されることによって、抵抗変化型メモリの動作特性を向上できる。
第3の実施形態の抵抗変化型メモリによれば、セットパルスPLSetとダミーパルスPLDmとが連続したパルスPLDmを用いて、セット動作を実行することによって、第1の実施形態に比較して、抵抗変化型メモリの動作を高速化できる。
[その他]
第1乃至第3の実施形態に係る抵抗変化型メモリにおいて、抵抗変化型記憶素子10と非オーミック素子(ダイオード)30とを含むセルユニットCUは、ビット線BLi−1,BLi,BLi+1及びワード線WLj−1,WLj,WLj+1に対して、図18に示される接続関係を有してもよい。
図18に示されるように、抵抗変化型記憶素子10の一端はワード線WLjに接続され、抵抗変化型記憶素子10の他端はダイオード30の一端(カソード)に接続され、ダイオード30の他端(アノード)はビット線BLiに接続されている。
この場合、抵抗変化型記憶素子10とダイオード30との積層関係が、図5に示されるセルユニットの構造に対して、反対になる。つまり、セルユニットCUの構造は、抵抗変化型記憶素子10が制御線79上に設けられ、ダイオード30が、抵抗変化型記憶素子10上に積層される。制御線70は、ダイオード30上に設けられている。
抵抗変化型記憶素子10及びダイオード30が、ビット線BLiとワード線WLjとに対して、図18に示される接続関係を有していても、第1乃至第3の実施形態に示される動作と同様に、選択された抵抗変化型記憶素子に対して、セットパルス及びダミーパルスを供給できる。
第1及び第3の実施形態において、選択されたビット線BLにセットパルス/ダミーパルスを印加し、選択されたワード線にグランド電位を印加する例について、説明した。これとは反対に、本実施形態の抵抗変化型メモリは、選択されたワード線にセットパルス、リセットパルス、読み出しパルス及びダミーパルスを印加し、選択されたビット線にグランド電位を印加することによって、上述の動作を実行してもよい。この場合、図11、図14及び図16に示されるダミーパルス生成部80,80A,80Bを有するパルス生成回路8は、ワード線WLに接続される。これに応じて、セルユニットとワード線/ビット線との接続関係が適宜変更される。すなわち、メモリセルアレイ1の内部構成は、図4及び図18に示される構成に限定されず、上述の各実施形態のメモリの動作と同様の動作が実行できれば、ビット線及びワード線に対する抵抗変化型記憶素子及びダイオードの接続関係は、適宜変更されてもよい。この接続関係の変更に伴って、メモリの動作時のビット線及びワード線の電位レベルに関係しても、適宜変更されてもよい。選択ワード線BLにセットパルス/ダミーパルスが印加される抵抗変化メモリにおいても、第1乃至第3の実施形態と同様の効果が得られる。
また、多値型の抵抗変化型メモリのように、データに対応する抵抗値の分布を3以上有するメモリに対しても、第1乃至第3の実施形態が適用できるのはもちろんである。
第1乃至第3の実施形態において、クロスポイント型メモリセルアレイを有するメモリを例示して、実施形態に係る抵抗変化型メモリについて、述べた。しかし、実施形態の抵抗変化型メモリにおいて、メモリセルアレイが、少なくとも1つの抵抗変化型記憶素子と少なくとも1つの電界効果トランジスタを含むメモリセルによって形成されてもよいのは、もちろんである。
第1乃至第3の実施形態において、ユニポーラ動作の抵抗変化型メモリを例示して、ダミーパルスを用いた抵抗変化型メモリの動作について説明したが、バイポーラ動作の抵抗変化型メモリの動作に、本実施形態で述べたダミーパルスが用いられてもよい。
第1乃至第3の実施形態は、可変抵抗素子を記憶素子に用いた抵抗変化型メモリ(例えば、ReRAM)について、述べた。但し、相変化素子を記憶素子に用いた抵抗変化型メモリ(PCRAM)に、本実施形態を適用できるのは、もちろんである。相変化素子とは、与えられたエネルギーによって、結晶相の相変化が生じ、その相変化により抵抗値やキャパシタンスなどの電気的特性が変化する材料からなる素子のことである。カルコゲナイド材(例えば、Ge−Sb−Te、In−Sb−Teなど)が、相変化素子(抵抗変化膜)の材料として、用いられている。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。