JP5297619B2 - レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版、レリーフ印刷版およびレリーフ印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
感光性エラストマー組成物は、担体として例えば合成ゴムのようなエラストマー性ポリマーを含有しており、得られるレリーフ版は柔軟であることからフレキソ版と称される。
アナログ製版に伴う課題を解決する手法として、感光性エラストマー層あるいは感光性樹脂層上に、その場で(in situ)画像マスク形成可能なレーザー感応式のマスク層要素を設けたフレキソ印刷版原版あるいは樹脂凸版印刷版原版が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの原版の製版方法は、デジタルデバイスで制御された画像データに基づいてレーザー照射を行い、マスク層要素から画像マスクをその場で形成し、その後はアナログ製版と同様に、画像マスクを介して紫外光で露光し、感光性エラストマー層(あるいは感光性樹脂層)および画像マスクを現像除去する製版方法で、フレキソ版や樹脂凸版の業界では「マスクCTP方式」と称されている。マスクCTP方式は、上述した原画フィルムの製造工程に関わる課題を解決しているが、感光性エラストマー層や感光性樹脂層の現像で発生する廃液の処理に関する課題がある。さらにフレキソ版の場合、現像にはトリクロロエチレンなどの塩素系溶媒を用いることが多く、作業衛生面でも不利がある。
現像工程および現像廃液に関する課題を解決する別の手段として、レーザーによる直接彫刻製版、いわゆる「直彫りCTP方式」が多く提案されている。直彫りCTP方式は、文字通りレーザーで彫刻することにより、レリーフとなる凹凸を形成する方法で、原画フィルムを用いたレリーフ形成と異なり、自由にレリーフ形状を制御することができるという利点がある。例えば、抜き文字部分を印刷物に再現する部位を深く彫刻したり、微細網点を再現する部分では印圧に負けて網点が倒れないようにショルダーをつけた彫刻をすることができる。
直彫りCTP方式の課題として、レーザー彫刻の速度が遅いことが挙げられる。これはマスクCTP方式ではアブレーションすべき対象のマスク層要素の厚さが1〜10μm程度であるのに対し、直彫りCTP方式では直接レリーフを形成する機能上、少なくとも100μmは彫刻する必要があるためである。そのため、レーザー彫刻感度の向上を図った提案がいくつかなされている。
例えば、エラストマー発泡体を含むレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版が提案されている(特許文献7)。密度の低い発泡体を用いることで、彫刻感度の向上を図っているが、低密度の材料であるため印刷版としての強度が不足し、耐刷性が著しく損なわれるという問題がある。
例えば、炭化水素系の気体を封入したマイクロスフィアを含有するレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版が提案されている(特許文献8)。レーザーで発生する熱によりマイクロスフィア内の気体が膨張して、被彫刻材料を崩壊させるシステムにより、彫刻感度の向上を図っている。気泡を含む材料系なので、印刷版としての強度は不足しやすいという問題がある。また、気体は固体に比べて熱で膨張しやすい性質があり、熱変形開始温度の高いマイクロスフィアを選択しても、外温の変化による体積変化はさけられず、厚み精度の安定性が要求される印刷版に用いるには適していない。
例えば、天井温度が600度K未満の高分子充填剤を含有するレーザー彫刻用樹脂凸版印刷版が提案されている(特許文献9)。解重合温度の低い高分子充填剤を添加する事で彫刻感度の向上を図っているが、このような高分子充填剤を用いると、印刷版原版の表面に凹凸がついてしまい、印刷品質に重大な影響を与える。
アセタール部位を1つ以上有する重合性モノマー(A)、およびバインダーポリマー(B)としてヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーを少なくとも含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔2〕
700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(C)を含有することを特徴とする〔1〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔3〕
前記光熱変換剤(C)は、カーボンブラックであることを特徴とする〔2〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔4〕
前記光熱変換剤(C)は、シアニン系化合物および/またはフタロシアニン系化合物であることを特徴とする〔2〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔5〕
硫黄原子含有重合性化合物を更に含有する、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔6〕
前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)誘導体であることを特徴とする〔5〕に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
〔8〕
〔7〕に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
〔9〕
前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする〔8〕に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
〔10〕
〔8〕または〔9〕に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
〔11〕
〔8〕または〔9〕に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする〔10〕に記載のレリーフ印刷版。
〔12〕
〔8〕または〔9〕に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする〔10〕または〔11〕に記載のレリーフ印刷版。
本発明は、前記〔1〕〜〔12〕に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記1)〜12))についても記載している。
1)アセタール部位を1つ以上有する重合性化合物(A)、およびバインダーポリマー(B)を少なくとも含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
2)700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(C)を含有することを特徴とする上記1)に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
3)前記光熱変換剤(C)は、カーボンブラックであることを特徴とする上記2)に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
4)前記光熱変換剤(C)は、シアニン系化合物および/またはフタロシアニン系化合物であることを特徴とする上記2)に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
5)前記バインダーポリマー(B)として、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーを含有することを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
6)前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)誘導体であることを特徴とする上記5)に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
7)上記1)〜6)のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
8)上記7)に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
9)前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする上記8)に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
10)上記8)または9)に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
11)上記8)または9)に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする上記10)に記載のレリーフ印刷版。
12)上記8)または9)に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする上記10)または11)に記載のレリーフ印刷版。
[レーザー彫刻用樹脂組成物]
本発明におけるレーザー彫刻用樹脂組成物は、アセタール部位を1つ以上有する重合性化合物(A)とバインダーポリマー(B)を少なくとも含有する。以下、レーザー彫刻用樹脂組成物の要素について説明する。以下、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を本発明の樹脂組成物ともいう。
本発明ではレーザー彫刻感度を大幅に向上させる手段としてアセタール部位を有する重合性化合物を用いる。アセタール部位を有していればどのような重合性化合物でも限定無く使用できる。
本発明において、アセタール部位とは、アセタール結合を含んだ部分を意味する。
本発明における(A)としては、下記一般式(A−1)または(A−2)で表されるアルコールを原料にして、重合性基含有化合物を(A−1)または(A−2)のOHと反応させて得られたものが好ましい。
本発明では、レーザー分解性と、上記ジオールを原料にして得られたポリウレタン(詳細はバインダーポリマー(B)の項で後述される)の皮膜性の点で(A−2)が好ましい。
(A)の本発明の樹脂組成物中における好ましい含有量は、レーザー分解感度とパターン形成時の膜を構成するバインダーポリマーとの相溶性を高める観点で、本発明の樹脂組成物の質量合計を100質量%とした場合に1〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜85質量%、特に好ましくは10〜65質量%の場合である。
(A)の重合性基はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビング重合のいずれかの重合を生起しうる基であれば何でもよい。パターン形成材料として使用する際に、湿度等の周囲の環境に重合が影響を受けにくいという点でラジカル重合性基であることが好ましい。
好ましいラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。化合物合成の簡便さから(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基がより好ましく、適度な柔軟性を付与する点で(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基がさらに好ましい。本発明において、(メタ)アクリロイル基との表記は、アクリロイル基および/またはメタクロイル基を総称するものである。なお、他の(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらの誘導体に(メタ)を付加する表記もこれと同様である。
(A)の重合性基の数としては同一分子中に1〜10個であることが効率的な重合を生起する点で好ましく、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個の場合である。
(A)アセタール部位を1つ以上有する重合性化合物は、(B)バインダーポリマーに対して比較的低温(300℃未満)で熱分解する。その結果、先に(A)が分解することになり、(A)が熱分解して気化する際に発生するガス(二酸化炭素など)が、共存する(B)の熱分解物の飛散をアシストする。即ち、本願の(A)は熱分解しやすく(=レーザー分解しやすく)、かつバインダーの熱分解・除去をアシストするという2つの特性により彫刻感度を向上させている。
結果的に、(A)を含む膜はアセタール部位を分子中に持たない重合性化合物や(B)バインダーポリマーのみに比べてレーザー分解性や彫刻感度が向上したと推定される。
特に後述されるバインダーポリマー(B)として特定のポリウレタンと組み合わせた場合、特定のポリウレタンも比較的低温で熱分解するので、上記の(A)の効果が相乗的に発現し、劇的にレーザー彫刻感度が高まるものと推定される。また、同様に後述されるバインダーポリマー(B)としてヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー(例えばポリビニルアルコール(PVA)誘導体)と組み合わせた場合は、バインダー中の多数のOH基と(A)のアセタール部位が有効に相互作用するがゆえに相溶性が良くなり、バインダーの熱分解・除去をアシストする機能が格段に活かされる。その結果、彫刻感度が高くなる。
本願では、バインダーポリマー(B)としてヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーと組み合わせた場合がより好ましく、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーがPVA誘導体である場合が特に好ましい。
以下に、併用可能な重合性化合物として付加重合性化合物を用いた場合を例に挙げ、より詳しく述べる。
本発明に使用される好ましい重合性化合物としては、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物が挙げられる。この付加重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれることが好ましい。このような化合物群は当産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に制限なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体、ならびにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R及びR'は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
レーザー分解の前および/または後で、重合性化合物を含有するレーザー彫刻用樹脂組成物は、光、熱などのエネルギーにより重合、硬化させることができる。
即ち、架橋ネットワーク中にS原子を含んでいることが好ましい。
また、特性の異なるS含有重合性化合物を複数併用することにより、膜の柔軟性の調節等に寄与することも可能である。
S原子を含む重合性化合物として、以下の化合物を挙げることができる。
本発明のレーザー分解性樹脂組成物が含有するバインダーポリマー(B)としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。以下、バインダーポリマー(B)をバインダー(B)とも記す。
ポリウレタン樹脂は特開2005-250438号公報に記載のポリウレタンをはじめとするものが皮膜性良好である点で好ましい。
一方、アクリル樹脂としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などの分子中に1つのエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を重合して得られる線状のアクリル樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、アセタール部位を1つ以上有する重合性化合物(A)と同じアセタール部位を有するものが、造膜・成形時の相溶性の観点で好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、中でも好ましいのは、以下の一般式(1)で表されるポリウレタン樹脂(以下、特定ポリウレタン樹脂ともいう)が好ましい。
OCN−X0−NCO (4)
HO−Y0−OH (5)
上記一般式(4)で表されるジイソシアネート化合物としては、X0で表される有機残基がNCO基に直接結合した芳香族基をもっていることが好ましい。
好ましいジイソシアネート化合物は、下記一般式(6)で表されるジイソシアネート化合物である。
特に熱分解性の観点で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートが好ましい。
例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のような脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のような脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等のようなジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物;等が挙げられる。
また、トリイソシアネートの3つのNCOのうちの1つに単官能アルコールを付加させて得たジイソシアネートを用いることもできる。
ジオール化合物としては、特にY0で表される有機残基がOH基に直接結合した芳香族基をもっていることが好ましい。
具体的には以下の一般式(A−1)〜(A−3)で表されるジオール化合物が好ましい。
HO−(Ar1−Ar2)m−OH 一般式(A−2)
HO−Ar1−X−Ar2−OH 一般式(A−3)
原料入手のしやすさの観点から、好ましくは、ベンゼン環とナフタレン環である。膜形成性も考慮するとベンゼン環が特に好ましい。
Xは2価の有機残基である。mは膜形成性の観点から1〜3が好ましい。特に好ましくは1である。
一般式(A−2)で表されるジオール化合物の好ましい例としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ヒドロキシビナフチルがある。
一般式(A−3)で表されるジオール化合物の好ましい例としては、ビスフェノールA、4,4’-ビス(ヒドロキシフェニル)メタンがある。
特定ポリウレタン樹脂がカーボネート部位を有する場合、主鎖中のウレタン結合の熱分解と同時に、カーボネート部位の熱分解に由来した二酸化炭素ガスが発生し、この二酸化炭素ガスが特定ポリウレタン樹脂の熱分解や熱分解物の飛散・除去を補助し、その結果、
レーザー分解感度が向上し、レーザー彫刻深さが増大すると推定される。
カーボネート部位は主鎖、側鎖のいずれか片方に有していればよく、上記レーザー分解感度の向上という観点で主鎖に有しているほうが好ましい。より好ましいのは主鎖及び側鎖に有している場合である。
カーボネート部位を含有する特定ポリウレタン樹脂の製造には、原料のジイソシアネートがカーボネート部位を含んでいる形態、原料のジオールがカーボネート部位を含んでいる形態の2通りが考えられ、本願ではいずれの形態を用いてもよい。原料の合成しやすさの観点から、ジオールがカーボネート部位を含んでいる形態のほうが好ましい。
特定ポリウレタン樹脂中、カーボネート部位を含む繰り返し単位の好ましい含有量は、レーザー分解感度と皮膜性を良好に保つ観点から、特定ポリウレタン樹脂を構成する原料の総モル数に対して、0.1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜50モル%、特に好ましくは20〜50モル%である。
特定ポリウレタン樹脂の中で、一般式(1)のR1とR2が共に芳香族基(ウレタン結合の両隣が共に芳香族基)であるウレタン結合を含み、かつカーボネート部位を主鎖に有しているものが特に好ましい。
カーボネート部位を有する特定ポリウレタン樹脂の原料の好ましい例としては、上記ポリカーボネートジオール化合物が挙げられる。
アセタール部位はレーザー分解性の観点で主鎖に導入されているほうが好ましい。アセタール部位を含有する特定ポリウレタン樹脂の製造には、原料のジイソシアネートがアセタール部位を含んでいる形態、原料のジオールがアセタール部位を含んでいる形態の2通りが考えられ、本願ではいずれの形態を用いてもよい。原料の合成しやすさの観点から、ジオールがアセタール部位を含んでいる形態のほうが好ましい。
特定ポリウレタン樹脂中、アセタール部位を含む繰り返し単位の好ましい含有量は、レーザー分解感度と皮膜性を良好に保つ観点から、特定ポリウレタン樹脂を構成する原料の総モル数に対して、0.1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは5〜50モル%、特に好ましくは20〜50モル%である。
特定ポリウレタン樹脂の中で、一般式(1)のR1とR2が共に芳香族基(ウレタン結合の両隣が共に芳香族基)であるウレタン結合を含み、かつアセタール部位を主鎖に有しているものが特に好ましい。
原料として用いるカーボネート部位含有ジオールは鎖状であっても環状であってもよい。
カーボネート部位を有する特定ポリウレタン樹脂の原料の好ましい例としては、アセタールジオール化合物が挙げられる。
ポリウレタン樹脂の側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法としては、ポリウレタン樹脂製造の原料として、側鎖にエチレン性不飽和結合を含有するジオール化合物を用いる方法も好適である。そのようなジオール化合物は、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルのように市販されているものでもよいし、ハロゲン化ジオール化合物、トリオール化合物、アミノジオール化合物と、エチレン性不飽和結合を含有するカルボン酸、酸塩化物、イソシアネート、アルコール、アミン、チオール、ハロゲン化アルキル化合物との反応により容易に製造される化合物であってもよい。
O基になるので、ここにエチレン性不飽和結合を有するアルコール(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブレンマーPME200(日本油脂製)等)を別途加えて付加させることにより、主鎖末端にエチレン性不飽和結合を導入できる。側鎖以外に主鎖末端にも本願ではエチレン性不飽和基を有してもよい。
中でも、ビスマス触媒を用いた合成である方が、従来よく用いられてきたスズ触媒よりも環境および重合速度の観点で好ましい。このようなビスマス触媒としては、ネオスタンU−600(商品名)(日東化成製)が特に好ましい。
ポリマー末端に不飽和基を導入する方法としては、以下に示す方法がある。すなわち、前述のポリウレタン樹脂合成の工程での、ポリマー末端の残存イソシアネート基と、アルコール類またはアミン類等で処理する工程において、不飽和基を有するアルコール類またはアミン類等を用いればよい。
導入されるエチレン性不飽和結合基としては、架橋硬化膜形成性の観点から、メタクリロイル基、アクリロイル基、スチリル基が好ましく、より好ましくはメタクリロイル基、アクリロイル基である。架橋硬化膜の形成性と生保存性との両立の観点からは、メタクリロイル基がさらに好ましい。
本発明に係る特定ポリウレタン樹脂の分子量としては、好ましくは重量平均分子量で10、000以上であり、より好ましくは、40、000〜200、000の範囲である。
特に、本発明のレーザー分解性樹脂組成物をパターン形成材料の画像記録層に用いた場合には、重量平均分子量がこの範囲内において画像部の強度に優れる。
本願では、バインダー(B)としてヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーと(A)を組み合わせた場合がより好ましく、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーがPVA誘導体である場合が特に好ましい。
親水性ポリマー(B)は油性インキに耐性のあるものを使用する。親水性ポリマーとは、水に溶解または膨潤するポリマーを意味する。親水性の樹脂は概して油性インキに対して耐性があり、好ましく使用される。このような樹脂として、例えばヒドロキシエチレンを含むポリマー、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンオキサイドの如き親水性基を導入したポリアミド樹脂などが挙げられる。
良好な親水性を示す点で、ヒドロキシエチレンを含むポリマー、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有セルロース樹脂、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有の、アクリル樹脂やポリアミド樹脂が好ましい。
より好ましくは、ヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマー、アミノ基またはカルボン酸基/スルホン酸基/硫酸基およびこれらが中和された塩構造などの極性基含有の、アクリル樹脂やポリアミド樹脂が好ましく、特に好ましくはポリビニルアルコール類、上記ポリアミド樹脂である。
PVA誘導体としては、特に好ましくはポリビニルアルコールおよびビニルアルコール/酢酸ビニル共重合体(部分鹸化ポリビニルアルコール)を例示することができ、これらの変性体もこれに該当する。
親水性ポリマー(B)として単独のポリマーを用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
親水性ポリマー(B)として、特にPVA誘導体とヒドロキシエチレン単位を含まない親水性ポリマーを併用することが好ましい。上記ヒドロキシエチレン単位を含まない親水性ポリマーを非PVA誘導体とも記す。
アジピン酸や1,6−ヘキサンジアミン、ε−カプロラクタムのみの重合によって得られるポリアミドは非水溶性で、PVA誘導体と明らかに極性が異なる。このような非水溶性ポリアミドにポリエチレングリコールやピペラジンのような親水性基を導入した親水性ポリアミドは、その親水性基の働きでPVA誘導体との相溶性が発現するため、非PVA誘導体として用いるのに好適である。つまり、非PVA誘導体として用いる親水性ポリア
ミドはPVA誘導体と相溶性があるため、PVA誘導体の分子間に容易に入り込むことができ、親水性ポリアミドの疎水性部分の作用でPVA誘導体と非PVA誘導体の両分子間の分子間力が弱められ、結果としてポリマーの柔軟化がなされるのである。
ε−カプロラクタムおよび/またはアジピン酸を、両末端アミン変性のポリエチレングリコールと反応させることでポリエチレングリコール単位を有するポリアミドが得られ、ピペラジンと反応させることでピペラジン骨格を有する親水性ポリアミドが得られる。また、親水性ポリアミドのアミド基とグリシジルメタクリレートのエポキシ基とを反応させることで、架橋性の官能基がポリマー中に導入された親水性ポリアミドが得られる。これら非PVA誘導体は単独で用いても良いし、複数種を混合して用いても良い。
当該水酸基の少なくとも一部をカルボキシル基に変性したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと、例えばコハク酸、マレイン酸やアジピン酸のような多官能カルボン酸とでエステル化することによって得ることができる。カルボキシル基の導入量は、当該水酸基1モルに対して 0.01〜1.00モルが好ましく、0.05〜0.80モルが更に好ましい。
当該水酸基の少なくとも一部を(メタ)アクロイル基に変性したポリマーは、上記カルボキシル基変性ポリマーにグリシジル(メタ)アクリレートを付加することによって、またはポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと(メタ)アクリル酸とでエステル化することによって得ることができる。(メタ)アクロイル基の導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜1.00モルが好ましく、0.03〜0.50モルが更に好ましい。
当該水酸基の少なくとも一部をアミノ基に変性したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールと、例えばカルバミン酸のようなアミノ基を含有するカルボン酸とでエステル化することによって得ることができる。アミノ基の導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜1.00モルが好ましく、0.05〜0.70モルが更に好ましい。
当該水酸基の少なくとも一部にエチレングリコールやプロピレングリコールおよびこれらの複量体を導入したポリマーは、ポリビニルアルコールあるいは部分鹸化ポリビニルアルコールとグリゴール類を硫酸触媒のもと加熱し、副生成物である水を反応系外に取り除くことによって得ることができる。エチレングリコールやプロピレングリコールおよびこれらの複量体の総導入量は、当該水酸基1モルに対して0.01〜0.90モルが好ましく、0.03〜0.50モルが更に好ましい。
親水性ポリマー(B)の質量平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算)は0.5万〜50万が好ましい。質量平均分子量が0.5万以上であれば、単体樹脂としての形態保持性に優れ、50万以下であれば、水など溶媒に溶解しやすくレーザー彫刻用樹脂組成物を調製するのに好都合である。より好ましくは1万〜40万、特に好ましくは1.5万〜30万である。
い。親水性ポリマー(B)の含有量を15質量%以上とすることで、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、79質量%以下とすることで、他成分が不足することがなくフレキソ印刷版として使用するに足る柔軟性が得られるためである。
レーザー彫刻用樹脂組成物中のPVA誘導体と非PVA誘導体併用時の合計の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し30質量%〜80質量%が好ましく、40質量%〜70質量%がより好ましい。PVA誘導体および非PVA誘導体の合計の含有量を30質量%以上とすることで原版のコールドフローを防止することが可能で、80質量%以下とすることで他の成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
レーザー彫刻用樹脂組成物中のPVA誘導体と非PVA誘導体併用に際して、PVA誘導体の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し15質量%〜79質量%が好ましく、30質量%〜65質量%がより好ましい。PVA誘導体の含有量を15質量%以上とすることで、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、79質量%以下とすることで、他成分が不足することがなくフレキソ印刷版として使用するに足る柔軟性が得られるためである。一方、非PVA誘導体の含有量は、該樹脂組成物固形分全質量に対し1質量%〜15質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。非PVA誘導体の含有量を1質量%以上とすることで、PVA誘導体の柔軟化が効率的になされてフレキソ版として使用するに足る柔軟性が得られ、かつ非PVA誘導体の強靱な特性からレリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、15質量%以下とすることで、非PVA誘導体が発生源となる粘着質の彫刻カスの発生量を低減することができる。
本願では、親水性ポリマー(B)を用いているため、彫刻カスも親水的となり、結果的に彫刻後に水道水で洗い流すだけという簡便な操作で彫刻カスを除去可能である。SB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)のような疎水的なポリマーやエラストマー、ポリウレタン、アクリル樹脂を主成分のバインダーとして用いると彫刻カスが疎水的であるため水洗による彫刻カスの除去が困難なケースも発生することがある。
また、例えばPVA誘導体を親水性ポリマー(B)(特にガラス転移温度が室温以上)として用いる場合、上記の疎水性ポリマーやエラストマー(ほとんどがガラス転移温度が室温以下)に比べて、ガラス転移温度が低いことに起因する彫刻時のレリーフのエッジ溶融が抑制傾向にあり好ましい。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アク
リレート、クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリルアミド類、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、などのエチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物などが挙げられる。本発明においては、これらを単独で、もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
主鎖にオレフィンおよび炭素−炭素三重結合の少なくともいずれかを含むポリマーが挙げられ、例えばSB(ポリスチレン−ポリブタジエン)、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等が挙げられる。
親水性ポリマー(B)と併用してもよいバインダーポリマーは、彫刻感度を低下させずに膜性を向上させる程度に含有させることが好ましく、全バインダーポリマー中、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが最も好ましい。
されるべきPVA誘導体への熱伝達が効率良くなされるために高感度になっていると思われる。
本発明の光熱変換剤(C)は、700〜1300nmに極大吸収波長を有する。本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物において、700から1300nmの赤外線を発するレーザー(YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等)を光源としてレーザー彫刻に用いる場合に、赤外線吸収剤として光熱変換剤(C)が用いられる。光熱変換剤(C)は、レーザー光を吸収し、発熱して該樹脂組成物の熱分解を促進する。本発明において使用される光熱変換剤(C)は、波長700nmから1300nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、ジインモニウム化合物、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましい。
本発明において、好適に用いることのできるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号の段落番号[
0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
下記一般式(d)または一般式(e)で表される色素は光熱変換性の観点から好ましい。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
本願で用いられる光熱変換剤の具体例としては、ヘプタメチンシアニン色素等のシアニン系色素、ペンタメチンオキソノール色素等のオキソノール系色素、インドリウム系色素、ベンズインドリウム系色素、ベンゾチアゾリウム系色素、キノリニウム系色素、顕色剤と反応させたフタリド化合物等を挙げることができる。全てのシアニン系色素が、前述した光吸収特性を有するものではない。置換基の種類および分子内での位置、共役結合の数、対イオンの種類、色素分子の存在する周囲の環境などにより、光吸収特性が極めて大きく変化する。また、一般に市販されているレーザー色素、過飽和吸収色素、近赤外線吸収色素を使用することもできる。例えば、レーザー色素として、アメリカン・ダイ・ソース社(カナダ国)の商標「ADS740PP」、「ADS745HT」、「ADS760MP」、「ADS740WS」、「ADS765WS」、「ADS745HO」、「ADS790NH」、「ADS800NH」、株式会社林原生物化学研究所社製の商標「NK−3555」、「NK−3509」、「NK−3519」を挙げることができる。また、近赤外線吸収色素として、アメリカン・ダイ・ソース社(カナダ国)商標「ADS775MI」、「ADS775MP」、「ADS775HI」、「ADS775PI」、「ADS775PP」、「ADS780MT」、「ADS780BP」、「ADS793EI」、「ADS798MI」、「ADS798MP」、「ADS800AT」、「ADS805PI」、「ADS805PP」、「ADS805PA」、「ADS805PF」、「ADS812MI」、「ADS815EI」、「ADS818HI」、「ADS818HT」、「ADS822MT」、「ADS830AT」、「ADS838MT」、「ADS840MT」、「ADS845BI」、「ADS905AM」、「ADS956BI」、「ADS1040T」、「ADS1040P」、「ADS1045P」、「ADS1050P」、「ADS1060A」、「ADS1065A」、「ADS1065P」、「ADS1100T」、「ADS1120F」、「ADS1120P」、「ADS780WS」、「ADS785WS」、「ADS790WS」、「ADS805WS」、「ADS820WS」、「ADS830WS」、「ADS850WS」、「ADS780HO」、「ADS810CO」、「ADS820HO」、「ADS821NH」、「ADS840NH」、「ADS880MC」、「ADS890MC」、「ADS920MC」、山本化成株式会社製、商標「YKR−2200」、「YKR−2081」、「YKR−2900」、「YKR−2100」、「YKR−3071」、有本化学工業株式会社製、商標「SDO−1000B」、株式会社林原生物化学研究所社製、商標「NK−3508」、「NKX−114」を挙げることができる。ただし、これらのみに限定されるものではない。また、顕色剤と反応させたフタリド化合物は、特許第3271226号公報に記載されているものを用いることもできる。また、リン酸エステル金属化合物、例えば特開平6−345820号公報、WO99/10354号パンフレットに記載のあるリン酸エステルと銅塩との複合体を用いることもできる。更に、近赤外線領域に光吸収特性を有する数平均粒子径が好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.08μm以下の超微粒子を用いることもできる。例えば、酸化イットリウム、酸化錫および/または酸化インジウム、酸化銅、酸化鉄等の金属酸化物、あるいは金、銀、パラジウム、白金等の金属などを挙げることもできる。更に、数平均粒子径が5μm以下、より好ましくは1μm以下の、ガラス等の微粒子中に銅、錫、インジウム、イットリウム、クロム、コバルト、チタン、ニッケル、バナジウム、希土類元素のイオン等の金属イオンを添加したものを用いることもできる。また、感光性樹脂組成物と反応し光吸収波長が変化するような色素の場合、マイクロカプセル中に含有させることもできる。その場合、カプセルの数平均粒子径は、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。イオン交換体微粒子に銅、錫、インジウム、イットリウム、希土類元素等の金属イオンを吸着させたものを用いることもできる。イオン交換体微粒子としては、有機系樹脂微粒子であっても無機系微粒子であっても構わない。無機系微粒子としては、例えば非晶質リン酸ジルコニウム、非晶質ケイリン酸ジルコニウム、非晶質ヘキサメタリン酸ジルコニウム、層状リン酸ジルコニウム、網状リン酸ジルコニウム、タングステン酸ジルコニウム、ゼオライト等を挙げることができる。有機系樹脂微粒子としては、通常使用されているイオン交換樹脂、イオン交換セルロース等を挙げることができる。
本願では、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。
好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
本願では、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも150m2/g及びDBP数が少なくとも150ml/100gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
この比表面積は好ましくは、少なくとも250、特に好ましくは少なくとも500m2/gである。DBP数は好ましくは少なくとも200、特に好ましくは少なくとも250ml/100gである。上述したカーボンブラックは酸性の又は塩基性のカーボンブラックであって良い。カーボンブラック(a2)は好ましくは塩基性のカーボンブラックである。異なるバインダーの混合物も当然に、使用され得る。
約1500m2/gにまで及ぶ比表面積及び約550ml/100gにまで及ぶDBP数を有する適当な伝導性カーボンブラックが、例えば、Ketjennlack(登録商標)EC300J、Ketjennlack(登録商標)EC600J(Akzoより)、Prinrex(登録商標)XE(Degussaより)又はBlack Pearls(登録商標)2000(Cabotより)、ケッチェンブラック(ライオン(株)製)の名称で、商業的に入手可能である。
重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue, 93, 435 (1993) やR.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A:Chemistry,73.81 (1993); J.P.Faussier, "Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications":Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology(1998); M.Tsunooka et al., Prog.Polym.Sci., 21, 1 (1996)等に多く記載されている。また、F.D.Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990); G.G.Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993); H.B.Shuster et al,JACS, 112,
6329 (1990); I.D.F.Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980)等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.Fouassier,J.F.Rabek(1993),p77−117記載のベンゾフェノン骨格あるいはチオキサントン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、下記の化合物が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(b)オニウム塩化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリーカーボネート、3,3′4,4′−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′4,4′−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
本発明で用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(d)チオ化合物としては、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物が挙げられる。
上記一般式(4)で示されるチオ化合物の具体例としては、下記に示すような化合物が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号、特公昭44−86516号記載のロフィンダイマー類、例えば2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o,o′−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メチルフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(f)ケトオキシムエステル化合物としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(g)ボレート化合物の例としては、下記一般式(5)で表される化合物を挙げることができる。
一般式(5)で示される化合物例としては具体的には米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物および以下に示すものが挙げられる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(h)アジニウム塩化合物としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号記載のN−O結合を有する化合物群をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(i)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(j)活性エステル化合物としては、特公昭62−6223記載のイミドスルホネート化合物、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号記載の活性スルホネート類をあげることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物としては、下記一般式(6)から(12)のものを挙げることができる。
R51は水素原子又はCH3-vX6 v基であり、R52はu価の置換されていてもよい不飽和有機基である。)
このような炭素−ハロゲン結合を有する化合物の具体例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、たとえば、2−フェニル4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2′,4′−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号記載の化合物、たとえば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン)、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許3337024号明細書記載の化合物、例えば、下記化合物等を挙げることができる。あるいはさらにM.P.Hutt、E.F.ElslagerおよびL.M.Herbel著「Journalof Heterocyclic chemistry」第7巻(No.3)、第511頁以降(1970年)に記載されている合成方法に準じて、当業者が容易に合成することができる次のような化合物群、例えば、下記化合物等を挙げることができる。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明における重合開始剤は単独もしくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、メチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等がある。また、可塑剤として、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)、ポリプロピレングリコール(モノオール型やジオール型)がある。
可塑剤は、レリーフ形成層を柔軟化する作用を有するものであり、バインダー(B)に対して相溶性の良いものである必要がある。一般に、バインダー(B)に対しては、親水性の高い化合物が相溶性が良好である。親水性の高い化合物の中でも、例えば、直鎖にヘテロ原子を含むエーテル化合物や2級アミンなどの親水性基と疎水性基が交互に続く構造をとるものが好ましく用いられる。−O−や−NH−のような親水性基の存在がPVA誘導体との相溶性を発現し、それ以外の疎水性基がPVA誘導体の分子間力を弱めて柔軟化に働くためである。また、PVA誘導体との間に水素結合を形成しうる水酸基の少ないものが好ましく用いられる。このような化合物に該当するのは、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびこれらの二量体、三量体、および四量体以上の単独多量体や共多量体、ジエタノールアミン、ジメチロールアミンのような2級アミン類である。これらの中でも、立体障害が小さく相溶性にすぐれ、毒性が低いエチレングリコール類(単量体、二量体、三量体、多量体)が可塑剤として特に好ましく用いられる。
エチレングリコール類は、その分子量により3種類に大別される。第一に単量体であるエチレングリコール、第二に二量体であるジエチレングリコールと三量体であるトリエチレングリコール、第三に四量体以上のポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、語尾に平均分子量をつけた名称で市販されていることが多く、分子量200〜700の液状ポリエチレングリコールと分子量1000以上の固体ポリエチレングリコールに大別される。
鋭意検討の結果、可塑剤の分子量が低分子であるほど、樹脂を柔軟化する効果が高いことが明らかになった。このことから特に好ましく用いられるのは第一のグループであるエチレングリコール、第二のグループであるジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール、第三のグループに含まれるテトラエチレングリコール(四量体)であるが、中でも、毒性が低く、樹脂組成物中からの抽出がなく取り扱い性に優れる点で、より好ましく用いられる可塑剤は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールである。また、これらの2種以上の混合物も好ましく用いられる。
可塑剤は、レーザー彫刻用樹脂組成物固形分全質量に対し10質量%以下添加することができる。
彫刻感度向上のための添加剤としてニトロセルロースを加えることがより好ましい。ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
ニトロセルロースの種類は、熱分解可能である限り特に制限されず、RS(regular soluble)タイプ,SS(spirit soluble)タイプ及びAS(alcohol soluble)タイプのいずれであってもよい。前記ニトロセルロースの窒素含量は、通常、10〜14質量%程度、好ましくは11〜12.5質量%、さらに好ましくは11.5〜12.2質量%程度である。ニトロセルロースの重合度も、例えば、10〜1500程度の広い範囲で選択できる。好ましいニトロセルロースの重合度は、例えば、10〜900、特に15〜150程度である。好ましいニトロセルロースには、JIS K6703「工業用ニトロセルロース」(ハーキュレスパウダー社の粘度表示法)による溶液粘度が20〜1/10秒、好ましくは10〜1/8秒程度のニトロセルロースが含まれる。ニトロセルロースとしては、溶液粘度5〜1/8秒、特に1〜1/8秒程度のニトロセルロースを用いる場合が多い。なお、レーザー彫刻用樹脂組成物を形成するためのニトロセルロースとしては、酢酸エチルなどのエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンやセロソルブなどのエーテル類に可溶なRSタイプのニトロセルロース(例えば、窒素含量11.7〜12.2%程度のニトロセルロース)を用いる場合が多い。ニトロセルロースは、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
ニトロセルロースの使用量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の感度を低下させない範囲で選択でき、例えば、バインダー(B)及び重合性化合物(A)100質量部に対して、5〜300質量部、好ましくは20〜250質量部、さらに好ましくは50〜200質量部程度であり、40〜200質量部程度である場合が多い。
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度をさらに向上させる事ができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、光重合開始剤により開始される光反応とそれに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するものに分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては通説がない場合も多い。
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂して、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
リールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。フエロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂して、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンゾオキサゾール類、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
また、本発明においては以上の成分の他に組成物の製造中あるいは保存中において重合性化合物(A)の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。また、重合禁止剤としては、本発明に係る樹脂組成物を用いてレリーフ形成層を有するレーザー彫刻用樹脂印刷版原版を作成し、これを保存する際の安定性に非常に優れるという点で、Q-1301(10%トリクレジルホスフェート溶液)(和光純薬製)が好ましい。これを前記重合性化合物(A)と組み合わせて用いると、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版の保存安定性が格段に優れ、また良好なレーザー彫刻感度が得られ
る。熱重合禁止剤の添加量は、全レーザー彫刻用樹脂組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を禁止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
さらに、レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料もしくは顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させる事ができる。着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。着色剤の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
さらに、レーザー彫刻用樹脂組成物の硬化皮膜の物性を改良するために充填剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
本発明におけるレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、支持体上に、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。レーザー彫刻用樹脂組成物として架橋性樹脂組成物を用いると、架橋性のレリーフ形成層が得られる。レーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、必要により更に、支持体とレリーフ形成層との間に接着層を、また、レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、レリーフ形成層を架橋させ、次いでレーザー彫刻することによりレリーフ印刷版を作製することができる。レリーフ形成層を架橋することにより、印刷時におけるレリーフ形成層の摩耗を防ぐことができるし、レーザー彫刻後にシャープな形状を有するレリーフ印刷版を得ることができる。
レリーフ形成層中の重合開始剤の含有量は、レリーフ形成層の固形分全質量に対し0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。重合開始剤の含有量を0.01質量%以上とすることで架橋性レリーフ形成層の架橋が速やかに行われ、10質量%以下とすることで他成分が不足することがなく、レリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られるためである。
レリーフ形成層中の重合性化合物(A)の含有量は、レリーフ形成層の固形分全質量に対し10〜60質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。重合性化合物(A)の含有量を10質量%以上とすることでレリーフ印刷版として使用するに足る耐刷性が得られ、60質量%以下とすることでレリーフ印刷版として使用するに足る強度が得られるためである。
レリーフ形成層は、前記樹脂組成物をシート状あるいはスリーブ状に成形することで得
ることができる。
レリーフ形成層と支持体の間に、両層間の接着力を強化する目的で接着層を設けても良い。接着層に使用される材料は、レリーフ形成層が架橋された後において接着力を強固にするものであれば良いが、レリーフ形成層が架橋される前も接着力が強固であることが好ましい。ここで、接着力とは支持体/接着層間および接着層/レリーフ形成層間の接着力の両者を意味する。
支持体/接着層間の接着力は、支持体/接着層/レリーフ形成層からなる積層体から接着層およびレリーフ形成層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上または剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上または剥離不能であることがより好ましい。
接着層/レリーフ形成層の接着力は、接着層/レリーフ形成層から接着層を400mm/分の速度で剥離する際、サンプル1cm幅当たりの剥離力が1.0N/cm以上または剥離不能であることが好ましく、3.0N/cm以上または剥離不能であることがより好ましい。
保護フィルムは、薄すぎると傷・凹み防止の効果が得られず、厚すぎると取り扱いが不便になり、コスト高にもなる。よって、保護フィルムの厚さは25μm〜500μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。
レリーフ形成層上に保護フィルムを設ける場合、保護フィルムは剥離可能でなければならない。保護フィルムが剥離不可能な場合や、逆にレリーフ形成層に接着しにくい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解または分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、鹸化度60〜99モル%の部分鹸化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースが特に好ましく用いられる。
が好ましく、10〜150mN/cmがさらに好ましい。5mN/cm以上であれば、作業中に保護フィルムが剥離することなく作業でき、200mN/cm以下であれば無理なく保護フィルムを剥離することができる。
次に、レーザー彫刻用樹脂印刷版原版の作製方法について説明する。作製方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物の溶液を調製し、この溶液から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいはレーザー彫刻用樹脂組成物の溶液を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶液から溶媒を除去する方法でも良い。
その後、必要に応じてレリーフ形成層の上に保護フィルムをラミネートしても良い。ラミネートは、加熱したカレンダーロールなどで保護フィルムとレリーフ形成層を圧着することや、表面に少量の溶媒を含浸させたレリーフ形成層に保護フィルムを密着させることよって行うことができる。
保護フィルムを用いる場合には、先ず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採っても良い。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
本願のレリーフ形成層は架橋前後で0.05mm以上の厚みを有することが好ましい。耐磨耗性やインキ転移性のような種々のフレキソ印刷適性を満たす観点で、0.05〜10mmが好ましく、より好ましくは0.05〜7mm、特に好ましくは0.05〜0.3mmである。
以上のようにして得られたレーザー彫刻用樹脂印刷版原版は、下記の工程を順次経て、レリーフ印刷版を製造することができる。
第1の例は、(1a)レーザー彫刻用樹脂印刷版原版に活性光線を照射してレリーフ形成層を架橋する工程、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程からなる。
第2の例は、(1b)レーザー彫刻用樹脂印刷版原版を加熱してレリーフ形成層を架橋する工程、(2)架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程からなる。
上記(1a)と(1b)は併用してもよく、互いに同時工程でも別時工程としてもよい。
さらに、必要に応じて下記工程を含んでも良い。工程(2)に次いで、(3)水または水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程、(4)彫刻されたレリーフ形成層を乾燥する工程、(5)レリーフ形成層をさらに架橋する工程、である。
合開始剤と熱重合開始剤に大別される。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる活性光線をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。活性光線の照射は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。活性光線としては可視光、紫外光あるいは電子線が挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体側を裏面とすれば、表面に活性光線を照射するだけでも良いが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムならば、さらに裏面からも活性光線を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行っても良いし、保護フィルムを剥離した後に行っても良い。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、架橋性レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行っても良い。
光を利用する工程(1a)は、活性光線を照射する装置が比較的高価であるものの、印刷版原版が高温になる事がないので、印刷版原版の原材料の制約がほとんどない。熱を利用する工程(1b)には特別高価な装置を必要としない利点があるが、印刷版原版が高温になるので、高温で柔軟になる熱可塑性ポリマーは加熱中に変形する可能性がある等、使用する原材料は慎重に選択する必要がある。
熱架橋の際には、熱重合開始剤が加えられ得る。原則として、遊離基重合(free radical polymerization)用の商業的な熱重合開始剤が重合開始剤、例えば、適当な過酸化物、ヒドロペルオキシド又はアゾ基を含む化合物、として使用され得る。代表的な加硫剤も架橋用に使用される。
熱架橋性(heat−curable)の樹脂、例えばエポキシ樹脂、を架橋成分として層に加えることにより熱架橋も実施され得る。
レリーフ形成層を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋のレリーフ形成層をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融、変形しやすく、シャープなレリーフが得られない場合がある。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる傾向がある。レリーフ形成層を彫刻する際に発生する彫刻カスは、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる傾向がある。低分子である重合性化合物(A)は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻カスは粘着性が少なくなる傾向がある。
なかでも光熱変換剤(C)の極大吸収波長に対応した赤外レーザーで彫刻する場合に、より高感度かつシャープなレリーフが得られる。
彫刻表面をリンスする工程(3)を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる工程(4)を追加することが好ましい。
さらに、必要に応じてレリーフ形成層をさらに架橋させる工程(5)を追加しても良い。追加の架橋工程(5)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
本発明の方法で製造されたレリーフ印刷版は、凸版用印刷機による油性インキやUVインキでの印刷が可能であり、また、フレキソ印刷機によるUVインキでの印刷も可能である。
<実施例1>
撹拌羽および冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、バインダー(B)として「ゴーセナールT−215(日本合成化学工業(株)製、PVA誘導体)54質量部、光熱変換剤(C)として「D99−009」(フタロシアニン系化合物、山本化成製)を1質量部、可塑剤としてジエチレングリコール20質量部、溶媒として水35質量部およびエタノール12質量部を入れ、撹拌しながら70℃で120分間加熱しポリマーを溶解させた。さらに重合性化合物としてエチレン性不飽和モノマーのサートマーCD536(サートマー製)25質量部、重合開始剤として“イルガキュア”184(α−ヒドロキシケトン、チバ・ガイギー(株)製)を1.6質量部添加して30分間撹拌し、流動性のある架橋性レリーフ形成層用のレーザー彫刻用架橋性樹脂組成物の溶液を得た。
成層を熱架橋した。
レリーフ形成層には、炭酸ガスレーザー彫刻機として、最大出力30Wの炭酸ガスレーザーを装備した“CO2レーザーマーカーML−Z9500”((株)キーエンス製)を用いた。彫刻条件は、レーザー出力:15W、走査速度:100mm/秒、ピッチ間隔:0.15mmに設定し、2cm四方のベタ部分を彫刻しレリーフ印刷版を作製した。
上記実施例1において、重合性化合物としてサートマーCD536(例示化合物のM-1)に代えて先の例示化合物M-2〜M-10を同じ添加量で用いた以外は全て同様に実施した。
上記実施例1において、重合性化合物(A)の25質量部のうち、10質量部を下記の化合物で置き換えた以外は全て同様に実施した。
上記実施例1において、光熱変換剤をカーボンブラック(三菱化学製、ダイアブラックSA)に変更した以外は全て同様に実施した。
<実施例13〜24> 実施例1〜12において、彫刻用のレーザーを半導体レーザーからCO2レーザーに変更し、実施例13〜24とした。
実施例1において、重合性化合物をDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(東亞合成製)に置換えた以外は全て同様に実施した。
<比較例2>
比較例1の彫刻用のレーザーを半導体レーザーからCO2レーザーに変更した。
以下に彫刻感度の評価結果を示す。
Claims (12)
- アセタール部位を1つ以上有する重合性モノマー(A)、およびバインダーポリマー(B)としてヒドロキシエチレン単位を含む親水性ポリマーを少なくとも含んでなることを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 700〜1300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤(C)を含有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記光熱変換剤(C)は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記光熱変換剤(C)は、シアニン系化合物および/またはフタロシアニン系化合物であることを特徴とする請求項2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 硫黄原子含有重合性化合物を更に含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 前記親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)誘導体であることを特徴とする請求項5に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂印刷版原版。
- 請求項7に記載のレリーフ形成層を光および/または熱により架橋する工程1)、および架橋されたレリーフ形成層をレーザー彫刻する工程2)を含むことを特徴とするレリーフ印刷版の製造方法。
- 前記工程1)は、レリーフ形成層を熱により架橋する工程であることを特徴とする請求項8に記載のレリーフ印刷版の製造方法。
- 請求項8または9に記載の方法で製造されたレリーフ印刷版。
- 請求項8または9に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層の厚みが0.05mm以上であることを特徴とする請求項10に記載のレリーフ印刷版。
- 請求項8または9に記載の方法で架橋されたレリーフ形成層のショアA硬度が50〜90°であることを特徴とする請求項10または11に記載のレリーフ印刷版。
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