===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
即ち、(1)媒体に液体を吐出するヘッドであって、保守用液体と記録用液体が選択的に充填されるヘッドと、(2)前記ヘッドに充填する液体を切り替える切り替え機構と、(3)前記切り替え機構によって前記ヘッドに前記保守用液体を充填する第1の状態から前記ヘッドに前記記録用液体を充填する第2の状態に切り替えてから、前記ヘッドから所定量の液体が吐出されるまでの期間において、前記第2の状態に切り替えてから前記ヘッドから第1の量の液体が吐出された時に媒体上に定めた単位領域に対して前記ヘッドから吐出する第1の液体量よりも、前記第2の状態に切り替えてから前記ヘッドから前記第1の量よりも多い第2の量の液体が吐出された時に前記単位領域に対して前記ヘッドから吐出する第2の液体量を少なくする制御部と、(4)を有することを特徴とする液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、液体消費量を抑制することができ、画像劣化を抑制できる。
かかる液体吐出装置であって、前記第2の液体量は、前記期間の経過後に前記単位領域に対して前記ヘッドから吐出する液体量よりも多いこと。
このような液体吐出装置によれば、画像劣化を抑制できる。
かかる液体吐出装置であって、前記期間は、前記第1の状態の前記ヘッドにおける前記保守用液体と前記記録用液体の混合率に応じて定められた期間である。
このような液体吐出装置によれば、液体の吐出に伴って単位領域あたり液体吐出量を少なくする期間を決定することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記制御部は、前記ヘッドを移動方向の一方側から他方側へ移動させつつ前記ヘッドから液体を吐出させる第1動作と、前記ヘッドを前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動させつつ前記ヘッドから液体を吐出させる第2動作と、を制御し、前記期間では、前記第1動作時に前記ヘッドから吐出された液体によるドットと、前記第2動作時に前記ヘッドから吐出された液体によるドットとを重ねて形成すること。
このような液体吐出装置によれば、画像劣化を抑制できる。
===プリンター1の構成について===
以下、液体吐出装置として、インクジェットプリンター(プリンター1)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて説明する。
図1は、プリンター1の全体構成のブロック図である。図2および図3は、プリンター1の概略を示す斜視図である。プリンター1には、図2及び図3に示すようにロール紙S(媒体)が備えられている。プリンター1は、図1に示すように、搬送ユニット20、クリーニングユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及び、コントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データ(印刷指令)を受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニットを制御し、ロール紙Sに画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。
コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、コンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、揮発性のメモリーであるRAM、不揮発性のメモリーであるEEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、ロール紙Sを搬送方向に搬送するためのものである。この搬送ユニット20は、紙送りモーター31と、紙送りモーター31により駆動されロール紙Sを搬送方向(以下、副走査方向とも呼ぶ)へ送るスマップローラー24と、ロール紙Sをセットするためのロール紙ホルダ27と、ロール紙Sをスマップローラー24に押圧するための紙押さえローラー29と、ロール紙Sを支持するプラテン26と、を有している。ロール紙Sは、紙押さえローラー29によりスマップローラー24に押圧され、スマップローラー24が回転することでプラテン26の表面上を搬送方向へ送られる。なお、図2に示すプリンター1と、図3に示すプリンター1とでは、キャリッジ48の位置が異なっている。
クリーニングユニット30(詳細は後述)、ヘッド41が有するノズルの状態を正常に保守するためのものである。クリーニングユニット30によって、インク吸引とフラッシングが行われる。
ヘッドユニット40は、ロール紙Sにインク(インクとは、水性インク及び油性インクの双方を含む概念である。本実施形態においては、水性インク)を吐出するためのものである。このヘッドユニット40は、ヘッド41と、ヘッド41へ供給するためのインクを収容するインクカートリッジ42と、ヘッド41を支持しヘッド41を移動方向(以下、主走査方向とも呼ぶ)に移動させるためキャリッジ48と、キャリッジモーター49と、キャリッジモーター49によって駆動されキャリッジ48を移動させる牽引ベルト46と、キャリッジ48を案内するためのガイドレール47と、を有している。
図4は、ヘッド41に形成されたノズル列を示した概念図である。ヘッド41の下面には5色のインク毎に(色毎に)、インクの吐出口であるノズルが360個ずつ設けられている。具体的には、白インクが吐出されるノズル、シアンインクが吐出されるノズル、マゼンタインクが吐出されるノズル、イエローインクが吐出されるノズル、ブラックインクが吐出されるノズルが、それぞれ360個(合計で、360×5=1800個)備えられている。そして、それぞれの360個のノズルは、副走査方向に沿って列状に並んでおり、ホワイトノズル列W、シアンノズル列C、マゼンタノズル列M、イエローノズル列Y、ブラックノズル列Kを形成している。
このようなプリンター1では、キャリッジモーター49により駆動される牽引ベルト46により牽引されて、キャリッジ48がガイドレール47に沿って主走査方向に移動する。そして、キャリッジ48が主走査方向に移動しながらヘッド41がインクを吐出するドット形成動作と、搬送ユニット20がロール紙Sを搬送方向に送る動作とが繰り返されることにより、ロール紙Sに画像が印刷される。
<インク供給路について>
本実施形態のプリンター1では、通常のモノクロ印刷及びカラー印刷の他に、白色印刷(白インクによる印刷)を実行することが可能となっている。なお、白インクは、例えば透明媒体(フィルムなど)に印刷を行う時に、カラー画像の背景色(白色)を印刷するために使用される。このように、背景を白色にすることで、カラー画像が見易くなる。白インクは、例えば、特開2003−313481号公報に記述されているものであり、中空樹脂を供えた水性顔料インクが挙げられる。
図5Aは、ヘッド41の充填室70とインクカートリッジ42を示した概念図である。図5Bは、ヘッド41の白インクの充填室70を示した概念図である。なお、図5Bでは、説明の容易のため、ノズル72、圧力室74、及び、ピエゾ素子78の数が実際の数(360個)より少ない数(7個)とする。ヘッド41には、図5Aに示すように、インクが充填される室(以下、充填室70と呼ぶ)が5色のインク毎に(色毎に)設けられている。この充填室70は、ノズル72、圧力室74、リザーバー76等から構成されている。
圧力室74は、ノズル72に連通した室である。この圧力室74と隣接する位置には、インクを吐出させるための駆動素子(ピエゾ素子78)が設けられている。そして、印刷が行われる際には、ピエゾ素子78が、ユニット制御回路64から出力される駆動信号に含まれる駆動波形に基づいて伸縮動作を行う。すると、当該伸縮動作により、圧力室74の容量が変化して、ノズル72からインクが吐出されるようになっている。なお、圧力室74は(ピエゾ素子78も)、ノズル72毎に設けられている。
リザーバー76は、圧力室74に供給路75を介して連通した室である。このリザーバー76は、インクを貯留するためのものであり、5色のインク毎に1つずつ設けられている。リザーバー76にはインクカートリッジ42が着脱可能に連結されており、インクカートリッジ42内のインクがリザーバー76から圧力室74やノズル72などに供給される。本実施形態のプリンター1では、図5Aからも明らかなように、シアンインク充填室、マゼンタインク充填室、イエローインク充填室、ブラックインク充填室の各々には、一つのインクカートリッジ42のみが連結されているのに対し、白インク充填室には、二つのインクカートリッジ42が連結されている。
ところで、白インクは、その他のインク(ブラック・シアン・マゼンタ・イエロー)に比べて、充填室70内に長時間放置されると増粘・固化しやすく、ノズル72の目詰まりの原因となる。そこで、本実施形態では、白インク充填室に、白インク(記録用液体に相当)だけでなくクリアインク(保守用液体に相当)も充填可能とする。クリアインク(無色透明のインク)は、固形成分を含まず、その分、グリセリン等の保湿成分や水分含有量を増やしているので、白インクに比べて、増粘・固化しにくい。そのため、白インクを長時間使用しない場合(例えばプリンター1の電源オフ時)には、白インク充填室に、白インクの代わりにクリアインクを充填する(詳細は後述)。即ち、白インク充填室に連結されている二つのインクカートリッジ42とは、白インクが収容された白インク用カートリッジ44とクリアインクが収容されたクリアインク用カートリッジ44である。
白インクとクリアインクが選択的に充填されるヘッド41(充填室70)を実現するために、白インク充填室には、白インク用カートリッジ及びクリアインク用カートリッジが、切り替えスイッチ80(切り替え機構に相当)を介して連結されている。切り替えスイッチ80の切り替えによって、白インク充填室と白インク用カートリッジ44を連通した際には白インク充填室に白インクが充填され(第2の状態)、白インク充填室とクリアインク用カートリッジを連通した際には白インク充填室にクリアインクが充填される(第1の状態)。なお、ヘッド41が有する複数のノズル列(WCMYK)のうち、少なくとも1つのノズル列に対応する充填室70(ここでは白インク充填室)において2種類の液体を選択的に充填可能であれば、そのヘッド41は「保守用液体と記録用液体が選択的に充填されるヘッド」に相当する。
<クリーニング動作について>
プリンター1による印刷が進むにつれて、ヘッド41のノズル面に紙粉などが付着したり、使用頻度の低いノズルでは乾燥によりインクが増粘したりして、インクを吐出すべき時にインクが吐出されない不良ノズルが発生する場合がある。このような不良ノズルが発生した場合に、ヘッド41のクリーニング動作によって不良ノズルから正常にインクが吐出されるようにする。本実施形態のプリンター1では、クリーニング動作として、「インク吸引」と「フラッシング」を行う。
図6は、インク吸引ユニット32を示した概念図である。インク吸引ユニット32によって、ヘッド41のノズル72から充填室70のインクを強制的に吸引する動作を「インク吸引」と呼ぶ。そうすることで、増粘したインクや紙粉などの異物を排出でき、ノズルから正常にインクが吐出されるように回復することができる。なお、図6では、5つの吸引ポンプ35のうちの一つのみを表している。
インク吸引ユニット32は、図3に示すように、キャリッジ48が主走査方向右端部のホームポジションに位置する際に、ヘッド41が対向する位置に設けられている。そして、インク吸引ユニット32は、図6に示すように、ヘッドキャップ33とホース34と吸引ポンプ35とを備えている。
また、ヘッドキャップ33においては、その内部空間が5つの吸引室33aに区画されている。そして、ヘッドキャップ33が上昇すると、ヘッドキャップ33はヘッド41の下面に密着し、このとき、5つの吸引室33aの各々は前述した5つのノズル列のうちの対応するノズル列を覆う閉塞空間を形成する。すなわち、ヘッドキャップ33は、上昇することにより、ヘッド41の下面(ノズル面)を封止するようになっている。
吸引ポンプ35は、その周縁部近傍に2つの小ローラー35aを有しており、これら2つの小ローラー35aの周囲には、ホース34が巻回されている。そして、不図示のモーターに駆動されて吸引ポンプ35が矢印方向に回転すると、小ローラー35aによってホース34内の空気が押され、これによってヘッドキャップ33内の閉塞空間において排気がなされるようになっている。そして、当該閉塞空間において排気が成されると、当該閉塞空間が負圧となり、ヘッド41の充填室70(ノズル72)からインクが吸引されることとなる。吸引されたインクはホース34を介して不図示の廃インク排出部に排出される。なお、ヘッドキャップ33は、プリンター1が印刷を行わないときには上昇してヘッド41の下面に密着する。そして、ノズル72からのインクの蒸発を抑制する。
また、「フラッシング」とは、強制的にノズル72からインク滴を吐出させようとするクリーニング動作である。ノズルが目詰まりしていて、インク滴が吐出されなくても、圧力室74が膨張したり、収縮したりすることで、ノズル72のメニスカス(ノズルで露出しているインクの自由表面)が駆動する。この結果、ノズル72の目詰まりが解消し、正常にインク滴が吐出される。図3に示すように、インク吸引ユニット32の隣には、フラッシングボックス37が設けられている。フラッシングが行われる際には、ヘッド41がフラッシングボックス37と対向する位置にキャリッジ48が移動する。そして、ノズル72からインクがフラッシングボックス37に向けて吐出される。
===白インクとクリアインクの切り替えについて===
本実施形態のプリンター1では、白インクとクリアインクを選択的に白インク充填室に充填させることができる。これは、前述のように、ヘッド41のホワイトノズル列W(白インク充填室)における目詰まりを防止するためである。白インクとクリアインクを比較した場合に、白インクの方が増粘・固化し易く、白インクの方が目詰まりを生じさせ易い。即ち、白インクが白インクの充填室70に長い時間放置された場合には、白インクの増粘等が促進されて、ヘッド41(特にノズル72)において目詰まりが発生する可能性が高い。そこで、本実施形態では、プリンター1の電源がオフされてプリンター1が長時間放置されるような場合や白色印刷が長時間行われない場合などに、白インクの代わりに目詰まりを生じさせ難いクリアインクを白インク充填室に充填する。
<<クリアインクへの切り替えについて>>
コントローラー60は、プリンター1の電源がオフされる場合や白色印刷の終了後に新たな白色印刷のジョブを受信していない場合など、白色印刷が長時間行われないと予想される時に(以下、白色印刷の休止開始時とも言う)、白インク充填室に充填するインクを白インクからクリアインクに切替える。
白色印刷の休止開始時に、コントローラー60は、まず、ヘッド41がインク吸引ユニット32のヘッドキャップ33と対向しているかを確認し、対向していない場合にはヘッド41とヘッドキャップ33を対向させる。その後、コントローラー60は、ヘッドユニット40を制御して、図5に示す切り替えスイッチ80の切り替えを行う。その結果、白インク充填室と白インク用カートリッジとが連通した状態から、白インク充填室とクリアインク用カートリッジとが連通した状態へと移行する。即ち、白インク充填室に白インクを充填する状態(第2の状態に相当、以下「白インク充填状態」とも言う)から、白インク充填室にクリアインクを充填する状態(第1の状態に相当、以下、「クリアインク充填状態」とも言う)。
次に、コントローラー60は、クリアインク充填状態において、ヘッド41のクリーニングにも使用されるインク吸引ユニット32を制御し、白インク充填室からインクを吸引する。これにより、白インク充填室に充填されていた白インクがインク排出部(不図示)に排出され、白インクと置き換わるように、クリアインク用カートリッジからのクリアインクが白インク充填室に充填される。この状態で白印刷が行われずに長時間放置されたとしても、目詰まりを生じさせ難くすることが出来る。
なお、白インク充填室に少しでもクリアインクが混入されることによって、白インク充填室に白インクのみが充填される場合に比べて、目詰まりを発生し難くすることが出来る。そのため、インク吸引ユニット32による吸引量を調整して、白インク充填室から完全に白インクを排出してもよいし、白インク充填室に一部の白インクを残留させてもよい。なお、インク吸引ユニット32により白インク充填室から吸引するインク量は、プリンター1の設計工程等において、使用する白インクの粘度や白インク充填室の容量に応じて決定するとよい。そして、クリアインクへの切り替え時に吸引するインク量は、プリンター1のメモリー63に記憶させておくとよい。
また、白インク充填室に混入されるクリアインクの量が多いほど(即ち、白インク充填室からの白インクの排出量が多いほど)、目詰まりを発生し難くすることが出来る。そのため、クリアインクへの切り替え時に、インク吸引ユニット32によって白インク充填室から吸引するインク量を一定にするに限らず、可変にしてもよい。例えば、クリアインクへの切り替え時(例えば、1日の作業終了の際にプリンター1の電源をオフする時など)に、コントローラー60は、ユーザーにどの位の時間プリンター1の電源をオフするのか(放置時間)を入力してもらえるように、放置時間の入力画面をコンピューター110のディスプレイ等に表示する。そして、プリンター1のメモリー63には、複数の放置時間に応じたインク吸引量を示すテーブルを記憶させておく。このテーブルでは、放置時間が短いほど目詰まりが発生し難いため吸引量を少なくし(クリアインクの混入量を少なくし)、放置時間が長いほど目詰まりが発生し易いため吸引量を多くする(クリアインクの混入量を多くする)。そして、コントローラー60は、ユーザーから入力された放置時間に基づいて、メモリー63に記憶されているテーブルを参照し、クリアインクへの切り替え時におけるインク吸引量を決定する。そして、インク吸引ユニット32は、決定したインク吸引量を白インク充填室から吸引する。こうすることで、放置時間が短く目詰まりし難い場合には、白インクやクリアインクの消費量を削減でき、また、インク吸引時間も短縮できる。逆に、放置時間が長く目詰まりし易い場合には、白インク充填室に多くのクリアインクを混入することができ、確実に目詰まりを防止することができる。
<<白インクへの切り替えについて>>
プリンター1の電源をオンする時や白色印刷を再開する時に(白色印刷の休止状態から復帰する時に)、コントローラー60は、白インク充填室に充填するインクをクリアインクから白インクに切替える。以下、比較例の切り替え方法と本実施形態の切り替え方法について説明する。
<比較例の切り替え方法>
まず、コントローラー60は、白インクへの切り替えの際に、ヘッド41とインク吸収ユニット32のヘッドキャップ33とが対向しているかを確認し、対向していなければ、ヘッド41とヘッドキャップ33を対向させる。次に、コントローラー60は、ヘッドユニット40を制御し、切り替えスイッチ80の切り替えを行って、白インク充填室とクリアインク用カートリッジとが連通した状態から、白インク充填室と白インク用カートリッジとが連通した状態へと移行させる。その後、コントローラー60は、インク吸引ユニット32を制御して、白インク充填室から完全にクリアインクが排出されるまで、白インク充填室のインクを吸引する。そうすることで、白インク充填室には白インクのみが充填される。
ところで、白インク充填室と白インク用カートリッジを連通させた後に白インク充填室からインクを排出すると(吸引すると)、始めは、クリアインクのみや、クリアインクと白インクが混ざった淡い白インクが排出される。そうして、白インク充填室からのインク排出量が増えるに従って、白インク充填室における白インクの割合が増え、徐々に白色の濃度の高いインクが排出されることになる。最終的に、クリアインクが完全に排出され、白インク充填室に白インクのみが充填されることになる。
つまり、比較例では、インク吸引ユニット32によって白インク充填室からクリアインクを完全に排出し、白インク充填室(ホワイトノズル列W)から白インクのみが吐出される状態にする。この状態で白色印刷を再開することで、クリアインクと混ざった淡い白インクにて画像が印刷されて画質劣化を引き起こしてしまうことを防止できる。
ただし、比較例では、切り替えスイッチ80を切り替えて白インク充填室と白インク用カートリッジを連通させてから、白インク充填室からクリアインクを完全に排出するために、クリアインクと共に多くの白インクが排出されてしまう。即ち、比較例では、印刷以外の為に、多くの白インクが無駄に消費されてしまう。
そこで、本実施形態では、クリアインクから白インクに切り替える際に、無駄な白インクの消費量を出来る限り抑えることを目的とする。
<本実施形態の切り替え方法>
図7は、本実施形態の白インクへの切り替え方法および切り替え後の印刷方法のフローである。コントローラー60は、白色印刷の休止状態から白色印刷の指令を受信すると(S1)、白色インク充填室に充填するインクをクリアインクから白インクに切り替える。なお、白色印刷の指令を受信した時に限らず、例えば、プリンター1の電源がオンされた時に、白色インク充填室に充填するインクを切り替えてもよい。まず、コントローラー60は、白インクへの切り替えの際に、ヘッド41とインク吸収ユニット32のヘッドキャップ33とが対向しているかを確認し、対向していなければ、ヘッド41とヘッドキャップ33を対向させる。次に、コントローラー60は、ヘッドユニット40を制御し、切り替えスイッチ80の切り替えを行って、白インク充填室とクリアインク用カートリッジとが連通した状態から、白インク充填室と白インク用カートリッジとが連通した状態へと移行させる。
その後、コントローラー60は、インク吸引ユニット32に白インク充填室のインクを吸引させて、白インク充填室内のクリアインクの一部を排出する(S2)。即ち、白インク充填室(ホワイトノズル列W)から淡い白インク(クリアインクと白インクが混ざったインク)が吐出される状態で、インク吸引を終了する。つまり、本実施形態では、比較例に比べて、切り替えスイッチ80の切り替え後にインク吸引ユニット32によって白インク充填室から吸引するインク量を少なくする。なお、インク吸引ユニット32を使用するに限らず、ホワイトノズル列W(白インク充填室)からフラッシングボックス37に向けて、白インク充填室内のクリアインクの一部を排出してもよい。
例えば、比較例では、白インク充填室からクリアインクを完全に排出する為、ホワイトノズル列Wから吐出されるインク(白インク)の白色の濃度に関する値(例えば媒体に着弾したインクを計測した輝度や明度)が所定値であるとする。一方、本実施形態では、白インク充填室から一部のクリアインクしか排出しない為、ホワイトノズル列Wから吐出されるインク(クリアインクと白インクの混合インク)の白色の濃度に関する値が、所定値よりも淡い濃度を示す値となる。
このように、本実施形態では、比較例に比べて、クリアインクから白インクに切り替える際に白インク充填室から排出するインク量を少なくし、ホワイトノズル列Wから淡い白インク(クリアインクと白インクの混合インク)が吐出される状態で白色印刷を開始する。そうすることで、インク吸引ユニット32により排出される白インクの量を少なくすることができ、白インクの消費量を抑えることができる。また、インク吸引ユニット32により排出するインク量を少なくするということは、インク吸引時間を短縮でき、白色印刷を早く再開することが出来る為、全体の印刷時間を短縮できる。ただし、ホワイトノズル列Wから淡い白インクが吐出される状態で白印刷が再開するため、切り替え直後の印刷方法を通常の印刷時と異ならせる必要がある(詳細は後述)。
なお、白インク充填室内を白インクからクリアインクへ切替える際に、クリアインクと白インクを混合させた状態にしてもよいと前述している。白色印刷休止期間(クリアインクの充填期間)の白インク充填室において、クリアインクに対する白インクの混合率が高い場合、インク吸引ユニット32によってインクを吸引しなくとも、比較的に白色濃度の高いインクが吐出される。そのため、白色印刷の休止期間におけるクリアインクと白インクの混合率に応じて、インク吸引ユニット32によるインク吸引(図7のS2)を行わずに、切り替えスイッチ80を切り替えただけで、白色印刷を再開してもよい。そうすることで、更に、白インクの消費量を抑え、印刷時間を短縮することができる。
このように、白色印刷休止期間の白インク充填室におけるクリアインクと白インクの混合率によって、切り替えスイッチ80の切り替え後に吐出されるインクの白色の濃度が異なる。例えば、同じ淡い白インク(クリアインクと白インクの混合インク)であっても、クリアインクの混合率が高く、白色の濃度に関する値(輝度や明度)が第1の閾値未満であるインクは、白色印刷には使用しないとし、白色の濃度に関する値が第1の閾値以上であるインクは、白色印刷に使用するとした。この場合、切り替えスイッチ80を切り替えてから、白色の濃度に関する値が第1の閾値以上であるインクが吐出されるまでの期間に吐出されるインク量(即ち、インク吸引すべきインク量)を、プリンター1の設計工程などで測定するとよい。具体的には、既定の混合率で白インク充填室にクリアインクと白インクを混入し、白色の濃度に関する値が第1の閾値以上であるインクが吐出されるまでに、ホワイトノズル列から吐出されるインク量を計測する。そうして、インク吸引すべきインク量(計測したインク量)をプリンター1のメモリー63に記憶する。そうすることで、コントローラー60はメモリー63を参照してインク吸引ユニット32を制御することができる。
また、前述のように、白色印刷の休止時間(例えば電源オフ時間)をユーザーに入力させて、その時間に応じて白インク充填室におけるクリアインクと白インクの混合率を異ならせる場合がある。この場合、プリンター1のメモリー63に、クリアインクと白インクの種々の混合率にインク吸引量が対応したテーブルを記憶させる。そして、コントローラー60は、クリアインクから白インクへ切替える際に、メモリー63に記憶しているテーブルを参照し、白インク充填室におけるクリアインクと白インクの混合率に応じたインク量をインク吸引ユニット32に吸引させる。
===白インクへの切り替え直後の印刷方法について===
本実施形態の白インクへの切り替え方法によれば、ホワイトノズル列Wから淡い白インクが吐出される状態で白色印刷を再開する。仮に、淡い白インクが吐出される期間と、クリアインクが吐出され終わり白インクのみが吐出される期間とにおいて、同じ印刷方法を行ったとする。そうすると、白色印刷の再開直後には淡い白インクで画像が形成されるため、白インクのみで形成される画像に比べて、画質が劣化してしまう。
また、白色印刷の再開後、印刷が進むにつれて(白インク充填室から吐出されるインク量が増えるに従って)、ホワイトノズル列Wから吐出されるインクの白色の濃度は徐々に高くなる(吐出されるインクにおいてクリアインクの混合率が低くなる)。そのため、仮に、淡い白インクが吐出される期間(クリアインクが吐出され終わるまでの期間)において、同じ印刷方法を行ったとすると、印刷される画像の白色濃度が徐々に濃くなり、均一な濃度の画像を形成することが出来ない(画像にグラデーションが発生してしまう)。
そこで、本実施形態では、白インク充填室に充填するインクをクリアインクから白インクへ切り替えた直後(白色印刷の再開直後)であって、淡い白インクが吐出される期間(以下、混合印刷期間とも呼ぶ)は、白インクのみを使用して印刷する期間(以下、通常印刷期間とも呼ぶ)に比べて、ホワイトノズル列Wから吐出するインク量を多くする。つまり、混合印刷期間では、通常印刷期間に比べて、印刷データ上の画素の示す濃度(階調値など)が同じであったとしても、画素に対応する媒体上の画素領域に吐出するインク量を多くする。言い換えれば、混合印刷期間では、通常印刷期間に比べて、ドットサイズを大きくする。そうすることで、混合印刷期間は、通常印刷期間よりも淡い白インクが吐出されたとしても、画像濃度(白色濃度)が淡くなってしまうことを防止できる。
また、混合印刷期間に吐出されるインクの白色の濃度は徐々に高くなるため、印刷が進むにつれて(白インク充填室から吐出されるインク量が増えるに従って)、媒体上の画素領域に吐出するインク量も徐々に少なくする(ドットサイズを小さくする)。言い換えれば、混合印刷期間では通常印刷期間に比べて画素領域あたりのインク吐出量を多くするが、印刷が進むにつれて、通常印刷期間の画素領域あたりのインク吐出量に戻していく(通常印刷期間のドットサイズに戻していく)。そうすることで、混合印刷期間に吐出される淡い白インクの濃度が徐々に高くなったとしても、均一な濃度の画像を印刷することができる(画像にグラデーションが発生してしまうことを防止できる)。
つまり、本実施形態では、白インク充填室に充填するインクを切り替えスイッチ80によってクリアインクから白インクに切り替えてから、白インクのみが吐出されるまでの期間において、切り替えスイッチ80を切り替えてからホワイトノズル列W(ヘッド)から所定の量(第1の量に相当)のインクが吐出された時に、画素領域(単位領域)に対して吐出するインク量(第1の液体量に相当)よりも、切り替えスイッチ80を切り替えてからホワイトノズル列Wから当該所定の量よりも多いインク量(第2の量に相当)が吐出された時に(即ち、印刷が進んだ時に)、画素領域に対して吐出するインク量(第2の液体量に相当)を少なくする。
また、本実施形態では、図7のフローに示すように、白インク充填室内にクリアインクが存在する期間は(S4→N)、ドットサイズを通常印刷時よりも大きくし、印刷が進むにつれてドットサイズを徐々に小さくする(S3:混合印刷を行う)。一方、白インク充填室内のクリアインクが排出された後は(S4→Y)、通常の印刷を行う(S5)。
なお、前述の説明では、白色の濃度に関する値(輝度や明度)が第1の閾値未満であるインクは白色印刷には使用しないとし、白色の濃度に関する値が第1の閾値以上であるインクは白色印刷に使用するとした。また、白インク充填室から完全にクリアインクが吐出された時にホワイトノズル列Wから吐出されるインク(即ち白インクのみ)の白色の濃度に関する値が第2の閾値以上であるとする。この場合、「混合印刷期間」とは、ホワイトノズル列Wから、白色の濃度に関する値が第1の閾値以上であるインクが吐出され始めてから、白色の濃度に関する値が第2の閾値未満であるインクが吐出されるまでの期間に相当する。一方、「通常印刷期間」とは、ホワイトノズル列Wから、白色の濃度に関する値が第2の閾値以上であるインクが吐出される期間に相当する。
また、クリアインク充填状態における白インク充填室のクリアインクと白インクの混合率に応じて、白インク充填室から白インクのみが吐出されるまでに、白インク充填室から吐出するインク量(所定量に相当)が異なってくる。例えば、白インクの混合率が高く、クリアインクの混合率が低ければ、クリアインクの吐出が直ぐに終了し、白インクのみが吐出されるまでのインク吐出量(所定量)が少なくなる。逆に、白インクの混合率が低く、クリアインクの混合率が高ければ、白インクのみが吐出されるまでのインク吐出量(所定量)が多くなる。
そこで、切り替えスイッチ80を切り替えてから白インクのみ(白色の濃度に関する値が第2の閾値以上であるインク)が吐出されるまでの期間(即ち、通常印刷が開始するまでの期間)に、白インク充填室から吐出されるインク量(所定量)を、プリンター1の設計工程などで計測するとよい。具体的には、既定の混合率で白インク充填室にクリアインクと白インクを混入し、白色の濃度に関する値が第2の閾値以上であるインク(白インクのみ)が吐出されるまでに、ホワイトノズル列から吐出されるインク量を計測する。そうして、計測したインク量(所定量)をプリンター1のメモリー63に記憶する。そうすることで、プリンター1とコンピューター110が接続された印刷システムは、混合印刷を終了させるタイミング、即ち、混合印刷から通常印刷に切替えるタイミングを把握することができる。なお、メモリー63には、通常印刷が開始するまでにホワイトノズル列Wから吐出するインク量(所定量)を記憶するに限らず、ショット数(形成するドット数)で記憶してもよい。
また、前述のように、白色印刷の休止時間(例えば電源オフ時間)をユーザーに入力させて、その時間に応じて白インク充填室のクリアインクと白インクの混合率を異ならせる場合がある。この場合、クリアインクと白インクの種々の混合率に、切り替えスイッチ80を切り替えてから通常印刷を開始するまでに吐出するインク量(所定量)を対応させたテーブルを、プリンター1のメモリー63に記憶させる。そうすることで、プリンター1とコンピューター110が接続された印刷システムは、混合印刷を終了させるタイミング、即ち、混合印刷から通常印刷に切替えるタイミングを把握することができる。
図8は、通常印刷期間にて使用する駆動信号COM(A)と混合印刷期間にて使用する駆動信号COM(B)を示す図である。前述のように、混合印刷期間では、通常印刷期間に比べて、ドットサイズを大きくする。そのために、混合印刷期間と通常印刷期間とで使用する駆動信号COMを異ならせる。通常印刷期間では、駆動信号COM(A)を用いて、「大ドット・中ドット・小ドット」を形成する。混合印刷期間では、駆動信号COM(B)を用いて、大ドットよりも大きい「第1ドット・第2ドット・第3ドット」を形成する。また、第3ドットよりも第2ドットが大きく、第2ドットよりも第1ドットが大きいとする。
通常印刷期間の駆動信号COM(A)は、繰り返し周期T内に第1波形W1と第2波形W2を有する。第1波形W1と第2波形W2とが図5に示すピエゾ素子78に印加されることによって大ドットが形成される。そして、第1波形W1がピエゾ素子78に印加されることによって中ドットが形成され、第2波形W2がピエゾ素子78に印加されることによって小ドットが形成される。
一方、混合印刷期間の駆動信号COM(B)は、繰り返し周期T内に第3波形W3と第4波形W4を有する。第3波形W3と第4波形W4がピエゾ素子78に印加されることによって第1ドットが形成され、第3波形W3がピエゾ素子78に印加されることによって第2ドットが形成され、第4波形W4がピエゾ素子78に印加されることによって第3ドットが形成される。第3波形W3や第4波形W4は、大ドットよりも大きいドットを形成するために(ノズルからのインク吐出量を多くするために)、第1波形W1や第2波形W2に比べて、最高電位を高くしたり(Vh1<Vh2)、上昇電位の角度(θ1>θ2)を急にしたりするとよい。
なお、これに限らず、波形の形状や数を異ならせたり、波形の組み合わせを異ならせたりすることによって、混合印刷期間に大ドットよりも大きいドットを形成させるようにしてもよい。また、ここでは説明の便宜上、通常印刷期間も混合印刷期間も共に形成可能なドットの種類を3種類としているがこれに限らない。例えば、混合印刷期間に形成可能なドットの種類を通常印刷期間に形成可能なドットの種類よりも多くしてもよい。また、完全な白インクに比べて、クリアインクの混ざった淡い白インクは粘度が低く、同じ駆動波形Wをピエゾ素子78に印加したとしても、完全な白インクよりも淡い白インクの方が、ノズルからの吐出量が多くなる。そのため、混合印刷期間のドットサイズを大ドットよりも大きくし、段階的にドットサイズを小さくできるのであれば、混合印刷期間と通常印刷期間とで使用する駆動信号COMを異ならせなくともよい。以下、具体的な印刷方法について説明する。
<印刷方法1>
図9は、印刷方法1におけるドット形成の様子を示す図である。説明の便宜上、1ノズル列のノズル数を5個とする。また、実際のプリンター1ではヘッド41に対して用紙が搬送方向に搬送されるが、図中では用紙に対してヘッド41を移動させて描いている。また、白インクはカラー画像の背景画像として印刷されることが多い。その場合、この実施例の通常印刷では、大ドットのみで対応するため(所謂ベタ塗り印刷)、図9においても、元の印刷データ上では全ての画素が大ドットを形成するように示しているとする。
この印刷方法1では、混合印刷期間において、パスごとにドットサイズを変更する。また、混合印刷期間はパス1からパス3までとし、パス4以降は通常印刷期間とする。即ち、パス1からパス3までは淡い白インク(クリアインクと白インクの混合インク)が吐出され、白インクの濃度が徐々に高くなる。そして、パス4以降では、白インク充填室のクリアインクが全て排出され、白インクのみ(白色の濃度を示す値が第2閾値以上であるインク)が吐出される。なお、切り替えスイッチ80の切り替え後に、インク吸引を行わずに白色印刷を再開した場合、パス1からパス3に吐出したインク量が所定量に相当する。一方、切り替えスイッチ80の切り替え後に、インク吸引を行った場合、インク吸引ユニット32によるインク吸引量とパス1からパス3に吐出したインク量との合計量が所定量に相当する。
印刷方法1では、パス1において、ヘッド41の移動方向への移動時に、割り当てられた全ての画素領域に対して、最も大きい第1ドットを形成する。次のパス2では、割り当てられた全ての画素領域に対して、第1ドットよりも小さいが大ドットよりも大きい第2ドットを形成する。このように、パス1とパス2に割り当てられた画素(元の印刷データ)が同じ濃度(大ドット形成)を示していたとしても、パス1で形成するドットをパス2で形成するドットよりも大きくする。ただし、パス1の印刷時にはパス2の印刷時に比べて、より淡い白インクが吐出される。そのため、パス1にて形成された画像とパス2にて形成された画像を巨視的に見ると、同じ濃度の画像に見えるため、画質劣化を抑制できる。また、パス1とパス2で形成されるドットは大ドットよりも大きい為、パス1とパス2で吐出される白インクの濃度が淡くとも、白画像が淡く印刷されてしまうことを防止できる。
そして、パス3では、割り当てられた全ての画素領域に対して、第2ドットよりも小さく、大ドットよりも大きい第3ドットを形成する。パス3ではパス2に比べて、完全な白インク(白色の濃度に関する値が第2の閾値以上であるインク)に近い濃度の白インクが吐出される。そのため、パス3に形成するドットサイズをパス2に形成するドットサイズよりも小さくしたとしても、パス2とパス3とでそれぞれ形成される画像の濃度を同じにすることができる。そして、パス4以降は、完全な白インクが吐出されるため、割り当てられた全ての画素領域に大ドットを形成する。
このように印刷方法1では、全画素領域が大ドットを形成するように示していたとしても、混合印刷期間(パス1〜3)に形成するドットサイズを、通常印刷期間(パス4)に形成するドットサイズよりも大きくする。そうすることで、白インクの消費量を削減するために、クリアインクから白インクへの切り替え中に淡い白インクが吐出される状態(クリアインクが完全に排出されていない状態)で白色印刷を再開したとしても、画像の濃度が淡くなってしまうことを防止できる。
また、混合印刷期間(パス1〜3)では、印刷が進むにつれて(ホワイトノズル列Wからの総インク吐出量が増えるに従って)、パスごとにドットサイズを小さくする。言い換えれば、混合印刷期間では、印刷が進むにつれて(パスごとに)、ドットサイズを通常印刷期間のドットサイズに近づける。そうすることで、クリアインクから白インクの切り替え中に、淡い白インクの濃度が徐々に高くなったとしても、画像濃度を一定にすることができる。即ち、混合印刷期間に吐出される淡い白インクの濃度に応じてドットサイズを補正することで、画像にグラデーションが発生してしまうことを防止できる。
なお、本実施形態では、プリンター1に接続したコンピューター110にプリンタードライバーをインストールし、プリンタードライバーが印刷データを作成する。具体的に説明すると、プリンタードライバーは、まず、各種アプリケーションソフトから出力された画像データを、用紙に印刷する際の印刷解像度に変換する。次にプリンタードライバーは、プリンター1のインクに対応した色データに変換する。その後、ハーフトーン処理にて、高い階調数(例えば256階調)のデータをプリンター1が形成可能な低い階調数のデータに変換する。このプリンター1は通常印刷期間に3種類のドットを形成可能とするため4階調のデータに変換する(元の印刷データ)。
プリンタードライバーは、白色印刷用のデータであって、ハーフトーン処理したデータのうちの混合印刷期間に割り当てられるデータ(図9ではパス1〜パス3に割り当てられるデータ)を補正する。なお、プリンタードライバーは、混合印刷期間に割り当てられるデータを決定するために、切り替えスイッチ80を切り替えてから白インクのみが吐出されるまでに吐出されるインク量(所定量に相当)のデータを、プリンター1のメモリー63から取得する。そうして、プリンタードライバーは、パス1からパス3が混合印刷期間に相当すると判断する。そして、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後の画素が「大ドット形成」を示したとしても、パス1に割り当てられた画素を「第1ドット形成」に補正し、パス2に割り当てられた画素を「第2ドット形成」に補正し、パス3に割り当てられた画素を「第3ドット形成」に補正する。
つまり、プリンタードライバーは、白色印刷の混合印刷期間に割り当てられた画素の示すデータを、通常印刷時に形成するドットよりも大きいドットが形成されるデータであり、徐々にサイズの小さいドットが形成されるデータに補正する。その後、プリンタードライバーは、ラスタライズ処理にて、マトリクス状の画像データをプリンター1に転送すべき順にデータごとに並べ替え、コマンドデータと共にプリンター1に送信する。この場合、プリンタードライバーがインストールされたコンピューター110とプリンター1のコントローラー60が「制御部」に相当する。なお、これに限らず、プリンター1のコントローラー60が、混合印刷期間に対応する画素の補正処理(例:パス1の画素を第1ドット形成に補正する処理)を行ってもよい。この場合、プリンター1のコントローラー60が「制御部」に相当する。
なお、図9では説明の便宜上、白色印刷では全画素領域に対して大ドットを形成するとしている(ベタ塗り印刷)。そのため、混合印刷期間に相当するパス1〜3では、大ドットよりも大きいドット(第1ドット〜第3ドット)を形成している。しかし、白色印刷時にも中ドットや小ドットが形成される場合がある。この場合にも、混合印刷期間に割り当てられた画素では、元の印刷データ(画素)の示すドットサイズよりも大きいドットを形成する。そして、画素の示すドットサイズよりも大きいドットに補正する度合いをパスごとに小さくするとよい。例えば、パス1では、画素の示すドットサイズよりも3段階大きいドットに補正する(大ドットは第1ドットに、中ドットは第2ドットに、小ドットは第3ドットに補正する)。次のパス2では、画素の示すドットサイズよりも2段階大きいドットに補正する(大ドットは第2ドットに、中ドットは第3ドットに、小ドットは大ドットに補正する)。そして、最後のパス3では、画素の示すドットサイズよりも1段階大きいドットに補正する(大ドットは第3ドットに、中ドットは大ドットに、小ドットは中ドットに補正する)。そうすることで、混合印刷期間に形成される画像の濃度が淡くなることを防止でき、また、画像にグラデーションが発生してしまうことを防止できる。
また、図9では混合印刷期間のパス数と混合印刷期間の駆動信号COM(B)にて形成可能なドット数とを等しくしている。そのため、パスごとにドットサイズを小さく出来ている。ただし、混合印刷期間のパス数の方が、混合印刷期間の駆動信号COM(B)にて形成可能なドット数よりも大きい場合がある。この場合には、例えば、2つのパスごとにドットサイズを小さくしてもよい。逆に、混合印刷期間のパス数よりも、混合印刷期間の駆動信号COM(B)にて形成可能なドット数よりも小さい場合もある。この場合には、例えばパスごとにドットサイズを2段階ずつ小さくしてもよい。
<印刷方法2>
図10は、印刷方法2におけるドット形成の様子を示す図である。前述の印刷方法1では、淡い白インクが吐出される混合印刷期間において、パスごとにドットサイズを変更しているが、これに限らない。この印刷方法2では、同じパス内においても、ドットサイズを変更する。なお、図10ではパス1の途中で混合印刷期間が終了するとした。即ち、パス1の途中で、淡い白インクが吐出される状態から完全な白インクが吐出される状態に変化する。また、パス1では、ヘッド41が移動方向の左から右へ移動する。また、元の印刷データでは全ての画素が同じ濃度(大ドット形成)を示していたとする。
図10では、左から9つの画素領域を混合印刷期間の画素領域とし、それ以降の画素領域は通常印刷期間の画素領域とする。そのため、印刷方法2では、パス1に割り当てられた画素領域のうちの左端の3画素には、最も大きい第1ドットを形成する。そして、第1ドットが形成された画素領域の右隣の3画素には、第1ドットよりも小さいが大ドットよりも大きい第2ドットを形成する。ただし、ホワイトノズル列Wから混合印刷期間に吐出される淡い白インクの濃度は徐々に濃くなるため、第1ドットと第2ドットが形成された画素領域を巨視的に見ると画像の濃度が均一となる。
そして、第2ドットが形成された画素領域の右隣の3画素には、第2ドットよりも小さいが大ドットよりも大きい第3ドットを形成する。第2ドットは第3ドットよりも淡い白インクで形成される為、画像濃度を均一にすることが出来る。そして、第3ドットが形成された画素領域よりも後にドットが形成される画素領域には、大ドットが形成される。
このように、混合印刷期間に割り当てられた画素領域では、同じパスに割り当てられた画素領域であっても、先にインクが吐出される画素領域と後にインクが吐出される画素領域とでは、吐出される淡い白インクの濃度が異なる。そのため、印刷方法2のように同じパス内であっても、淡い白インクの吐出が進むにつれて、ドットサイズを小さくすることで、より画像劣化を抑制できる。
<印刷方法3>
図11は、印刷方法3におけるドット形成の様子を示す図である。印刷方法1および印刷方法2では、1つの画素領域に対して1つのドットを形成しているが、これに限らない。例えば、混合印刷期間に割り当てられる画素の元データが、1画素領域に1ドットを形成するように示したとしても、印刷方法3では、1画素領域に2つのドットを形成する。つまり、混合印刷期間に吐出される白インクの淡さを緩和するために、印刷方法3では1画素領域に対してドットを重ねて形成する。図11の上図では、媒体上の或る領域に対して、移動方向の左側から右側へ移動するヘッド41によりドットが形成される様子を示す(パス1)。そして、図11の下図では、同じ或る領域に対して、移動方向の右側から左側へ移動するヘッド41によりドットが形成される様子を示す(パス2)。即ち、パス1とパス2の間で用紙は搬送方向に搬送されない。
なお、図11では、ヘッド41が移動方向の異なる方向に移動しながらインクを吐出する(所謂、双方向印刷を行う)。また、図11では、説明のため、大ドットよりも大きいドットを6種類(第4ドット〜第9ドット)形成可能とする。図示するように、第4ドット〜第9ドットはそれぞれサイズが異なり、第4ドットが最も大きく、第9ドットが最も小さいとする。
まず、パス1(第1動作に相当)に割り当てられた画素領域のうち、移動方向の左端の4画素領域に最も大きい第4ドットを形成する。そして、第4ドットが形成された画素領域の右隣の4画素領域に、第4ドットよりも1段階小さい第5ドットを形成する。第5ドットが形成された画素領域の右隣の4画素領域に、第5ドットよりも1段階小さい第6ドットを形成する。パス1にてヘッド41が左側から右側へ移動する際に、ヘッド41から吐出される淡い白インクの濃度は徐々に濃くなる。そのため、パス1にて形成するドットサイズを徐々に小さくすることで、パス1にて形成される画像の濃度を均一にできる。
次に、パス2(第2動作に相当)に割り当てられた画素領域のうち、移動方向の右端の4画素領域に、第6ドットよりも1段階小さい第7ドットを形成する。即ち、第6ドットと第7ドットが重ねて形成する。同様に、第7ドットよりも1段階小さい第8ドットを第5ドットに重ねて形成し、第8ドットよりも1段階小さい第9ドットを第4ドットに重ねて形成する。パス2にて形成するドットサイズも徐々に小さくすることで、パス2にて形成される画像の濃度を均一にできる。即ち、パス1とパス2でドットが重ねて形成された画像も濃度が均一となる。
つまり、印刷方法3によれば、混合印刷期間において、最も淡い白インクで形成された最も大きい第4ドットと最も濃い白インクで形成された最も小さい第9ドットが重なり、中間濃度の白インクで形成された中間サイズの第6ドットと第7ドットが重なる。その結果、1つの画素領域に吐出される白色の顔料成分を同量にすることができ、移動方向の左右において画像濃度を均一にすることが出来る。また、双方向印刷にて、ドットを重ねて形成することで、最大の第4ドットと最小の第9ドットを重ねて形成し、中間サイズの第6ドットと第7ドットを重ねて形成することができる。そのため、画素領域に吐出するインク量(特に水などの溶媒量)を一定にすることが出来る。そのため、滲みによるドットの広がりなどを抑えることができ、画質劣化を抑制できる。
なお、双方向印刷に限らず、ヘッド41が移動方向の一方側に移動する時にのみドットを形成する場合であっても、1つの画素領域にドットを重ねて形成してもよい(不図示)。例えば、ヘッド41が移動方向の左側から右側へ移動する時にのみドットを形成する場合、最大の第4ドットと中間サイズの第7ドットが重なり、中間サイズの第6ドットと最小の第9ドットが重なる。印刷が進むにつれて淡い白インクの濃度が徐々に濃くなるため、各画素領域に吐出される白色の顔料成分は同量となり、画像濃度を均一にすることができる。ただし、移動方向の左側の方が右側に比べて、画素領域に吐出されるインク量(水などの溶媒量)が多くなってしまう。
また、図11では、同じパス内においてドットサイズを変更しているが、これに限らない。パスごとにドットサイズを変更してもよい。例えば、用紙上の或る領域において、パス1で形成する第4ドットとパス2で形成する第5ドットを重ねる。そして、用紙上の或る領域よりも搬送方向下流側の別の領域において、パス3で形成する第6ドットとパス4で形成する第7ドットを重ねる。このように、混合印刷期間では、パスごとにドットサイズを小さくし、2回のパスでドットを重ねて画像を形成してもよい。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主としてプリンターについて記載されているが、インク切り替え後の印刷方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<液体吐出装置について>
前述の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。液体吐出装置であれば、インクジェットプリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、液体の吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式に限らず、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
<その他のプリンターについて>
前述の実施形態では、印刷領域に位置する連続用紙に対して、ヘッド41を移動方向に移動する動作と、連続用紙を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、単票紙に印刷を行うプリンターでもよい。また、ヘッド41の下面に紙幅長さに亘ってノズルが並んだノズル列であって、停まっているノズル列の下を、紙幅方向と交差する方向に用紙を搬送することによって、画像を形成する所謂ラインプリンターでもよい。この時にも、白インクに切替えた後に、淡い白インクを使用して印刷を行う際には、通常よりも大きいドットを形成し、淡い白インクの消費と共に、通常のドットサイズに戻すとよい。
<インクについて>
前述の実施形態では、プリンターの実施形態であったため、ノズルからインクを吐出しているが、インクに限らず他の液体(例えば、金属材料・有機材料などを含む液体)をノズルから吐出してもよい。また、前述の実施形態では、記録用液体として白インクを、保守用液体としてクリアインクを用いたが、これに限定されない。例えば、シアンノズル列Cの充填室に充填するインクをシアンとLシアンで切り替えられたとする。この場合、シアンノズル列Cの保守用液体としてLシアン(淡シアン)を用い、記録用液体としてシアン用いるとよい。つまり、記録用液体(例:白インク)に比べて、低粘度の液体を保守用液体とすればよい。また、前述の実施形態では(図5)、白インク充填室のみ、白インク用カートリッジとクリアインク用カートリッジの切り替えを可能としているが、これに限らない。例えば、他の色(ブラック)の充填室も、2つのカートリッジと切り替え可能とし、プリンターの休止時には、その充填室にクリアインクを充填してもよい。