本発明の実施例は、ハードディスクドライブに搭載されて磁気記録ディスクを駆動するためのディスク駆動装置であり、その回転数は例えば5400回/分である。以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施例を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
図1は、本発明の実施例に係るディスク駆動装置100の構成を示す上面図である。ディスク駆動装置100は、ハブ20を含む。ハブ20は、円形に形成されている。また、ハブ20の中心部分に中心孔20aが形成され、ハブ20の外周部分にハブ外延部20dが形成されている。ここで、ハブ20は、中心孔20aを中心にして回転する。ディスク50は、ドーナツ型に形成されている。また、ディスク50の内周部分がハブ20に固定されている。その結果、ハブ20が回転することによって、ディスク50も回転する。
図2は、ディスク駆動装置100の構成を示すA−A’線断面図である。ディスク駆動装置100は、固定体S、回転体Rを含む。固定体Sは、ベース部材10、ステータコア12、ハウジング部材14、スリーブ16を含み、回転体Rは、ハブ20、シャフト22、スラスト部材26を含む。また、ベース部材10は、円筒部10aを含み、ハウジング部材14は、溝14a、底部14b、円筒部14c、上端面部14dを含み、スリーブ16は、円筒部内周面16a、フランジ部16b、円筒部16cを含み、ステータコア12には、コイル18が巻きつけられている。また、ハブ20は、中心孔20a、第1円筒部20b、第2円筒部20c、ハブ外延部20d、台座部20fを含み、シャフト22は、段部22a、先端部22b、外周面22cを含み、スラスト部材26は、下垂部26c、リング部26eを含む。なお、以下の説明では、全体として、便宜上説明図に示された下方を下と、上方を上と表現する。
ベース部材10は、中心部分の孔と、当該中心部分の孔を囲むように設けられた円筒部10aとを有する。また、ベース部材10は、中心部分の孔によってハウジング部材14を保持するとともに、ハウジング部材14を環囲する円筒部10aの外周側にステータコア12を固着する。なお、ハウジング部材14の外周側と、円筒部10aの内周側との間に環状の第2領域部42が形成されている。第2領域部42は、ベース部材10の中心部分の孔を囲むような形状を有する。ここで、ベース部材10は、アルミダイキャストを切削加工するか、アルミ板またはニッケルメッキを施した鉄板をプレス加工して形成される。
ステータコア12は、円筒部10aの外周面に固着される。ステータコア12は、ケイ素鋼板等の磁性材が積層された後、表面に電着塗装や粉体塗装等による絶縁コーディングが施されて形成される。また、ステータコア12は、外方向に突出する複数の突極(図示せず)を有するリング状を呈し、各突極にはコイル18が巻回されている。突極数は、例えばディスク駆動装置100が3相駆動であれば9極とされる。コイル18の巻き線端末は、ベース部材10の底面に配設されたFPC(フレキシブル基板)上に半田付けされている。
ハウジング部材14は、円筒部10aの内周面に接着または圧入により固着される。また、ハウジング部材14は、スリーブ16を環囲する円筒部14cと、ハブ20側端部に設けられアキシャル方向の面を有する上端面部14dと、円筒部14cのうちの上端面部14dとは反対側の端部を密閉する底部14bとを結合した略カップ状をなす。このような形状によって、ハウジング部材14は、スリーブ16の下端を塞ぎ、かつスリーブ16の上端を突出させるように配置される。ここで、底部14bと円筒部14cとが一体に形成されてもよく、底部14bと円筒部14cとが別の部材として固着して形成されてもよい。ハウジング部材14は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレスのほか、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によっても形成される。ハウジング部材14にプラスチック材料を用いる場合は、ディスク駆動装置100の静電気除去性能を確保するため、固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料にカーボン繊維を含ませて構成する。
ここで、ハウジング部材14の内周面について図3を使用しながら説明する。図3は、ディスク駆動装置100の連通路を示す上面図である。図示のごとく、ハウジング部材14の内周面には、アキシャル方向に延在する溝14aが形成されている。この溝14aは、円筒部14c内にスリーブ16を嵌合させた際、ハウジング部材14の両端面側を連結する連通孔となる。この連通孔は、潤滑剤28が充填されることによって連通路Iとなるもので、その詳細は後述する。溝14aの断面形状は、図3において円弧状としてあるが、この円弧状に限定されるものではなく、内周面から凹んだ凹部であればよい。図2に戻る。
スリーブ16は、ハウジング部材14の内周面に接着または圧入により固着され、ベース部材10の中心部分の孔と同軸に固定されている。また、スリーブ16は、シャフト22を収納することによって、シャフト22を支承する環状の円筒部16cと、円筒部16cのハブ20側端部において外径方向に延在されたフランジ部16bとを結合した形状を有する。また、円筒部16cの内部に、円筒部内周面16aが形成されており、円筒部内周面16aがシャフト22を囲む。ここで、フランジ部16b部と円筒部16cとが一体に形成されてもよく、フランジ部16bと円筒部16cとが別の部材として固着して形成されてもよい。なお、フランジ部16bと、円筒部14cとの間に環状の第1領域部40が形成されている。スリーブ16は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレスのほか、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によっても形成される。スリーブ16にプラスチック材料を用いる場合は、ディスク駆動装置100の静電気除去性能を確保するため、固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料にカーボン繊維を含ませて構成する。
ハブ20は、中心部分に設けられた中心孔20aと、中心孔20aを囲むように設けられた第1円筒部20bと、第1円筒部20bの外側に配設される第2円筒部20cと、第2円筒部20cの下端に外延するハブ外延部20dとを有して構成される。また、ハブ20は、略カップ状の形状を有する。第1円筒部20bの内周面にスラスト部材26が固着され、第2円筒部20cの内周面にリング状マグネット24が固着される。ここで、リング状マグネット24は、ベース部材10に固着されたステータコア12に対向するように、シャフト22と同心の環状部に固着される。このような構成によって、ハブ20は、シャフト22と一体的に回転して、図示しないディスク50を駆動させる。また、ハブ20は、磁性を有するステンレス材で形成され、図示しないディスク50はその中心孔が前記第2円筒部20cの外周面に契合してハブ外延部20dに載置される。
シャフト22は、中心孔20aに固着される。ここで、シャフト22の上端部には段部22aが設けてあり、組み立ての際、中心孔20aにシャフト22が圧入される。その結果、ハブ20は、段部22aによりアキシャル方向の移動を規制されるとともに、所定の直角度でハブ20に一体化される。また、先端部22b側は、円筒部16cの内周に収納される。なお、シャフト22はステンレス材により形成されている。
スラスト部材26は、スリーブ16を環囲するリング部26eと、ハウジング部材14を環囲する下垂部26cとを有する。ここで、リング部26eは、第1円筒部20bの内壁に接着剤で固着され、下垂部26cは、リング部26eの外縁部分に結合されるとともに第1円筒部20bの内壁に接着剤で固着される。つまり、下垂部26cの外周面は第1円筒部20bの内周面に接着により固着されている。このようにして、リング部26eは、円筒部16cの外周を、隙間を介して囲み、かつフランジ部16bの下面に狭い隙間を介して配置される。さらに、スラスト部材26は、ハブと一体的に回転するが、その際、リング部26eは、第1領域部40内で回転し、下垂部26cは、第2領域部42内で回転する。
図4は、スラスト部材26を示す拡大断面図である。リング部26eは、スラスト上面26aとスラスト下面26bとを有するアキシャル方向に薄い形状を有する。また、下垂部26cは、リング部26eの外周側下面にアキシャル方向に延びる。さらに、スラスト部材26は、リング部26eと下垂部26cとを結合しており、アルファベットのLの大文字を上下逆にしたいわば逆L字形状の断面を有する。ここで、下垂部26cのアキシャル方向の長さはリング部26eのアキシャル方向の長さよりも長い。また、下垂部26cの内周面26dは、リング部26eと逆側に向かって半径が小さくなるテーパー状を有しており、後述するキャピラリーシールを構成する。このような形状にすることによって、スラスト部材26の加工が、容易で安価になる。また、スラスト部材26が小型で薄くなっても、良好な寸法精度で作成される。その結果、ディスク駆動装置100の小型化や軽量化に効果がある。図2に戻る。
スラスト部材26は、回転体Rが固定体Sから抜けることを防止している。衝撃によって、回転体Rと固定体Sとが相対的に移動すると、リング部26eはフランジ部16bの下面に衝突する。その結果、スラスト部材26は、第1円筒部20bから外れる方向に応力を受ける。下垂部26cと第1円筒部20bの接合距離が短いと、接合強度が弱くなるので、小さな衝撃でも、接合が破壊される可能性が高くなる。つまり、下垂部26cと第1円筒部20bとの接合距離を長くするほど、衝撃に強くなる。
一方、リング部26eが厚くなると、キャピラリーシール部が短くなり、キャピラリーシールにおいて保持可能な潤滑剤28の容量が小さくなる。そのため、衝撃によって、潤滑剤28が飛散すると直ちに潤滑剤不足となる可能性がある。このような潤滑剤不足によって、流体動圧軸受は機能を低下させ焼き付きなどの機能不全を生じやすくなる。このような課題に対応するために、ディスク駆動装置100は、リング部26eを薄くすることによって、キャピラリーシール部を上下方向に長くする。その結果、保持可能な潤滑剤28の量が大きくなり、衝撃によって、大量に潤滑剤28が飛散しても容易には潤滑剤不足とならないように構成される。つまり、スラスト部材26のアキシャル方向の距離は、下垂部26cに対して長く、リング部26eに対して短くなるように設計される。
下垂部26cの外周面は第1円筒部20bの内周面に圧入により固着する方法があるが、下垂部26cが圧入により応力を受けると、下垂部26cの内周面に変形を生じ、この変形のためキャピラリーシール部の機能が損なわれるおそれがある。これに対応するために、前述のごとく、下垂部26cの外周面は、第1円筒部20bの内周面より小径とし、両者を接着により固着する。その結果、下垂部26cの変形が防止され、キャピラリーシールの機能は十分に発揮される。
リング状マグネット24は、第2円筒部20cの内周に固着されて、ステータコア12の外周に狭い隙間を介して対向するように設けられる。また、リング状マグネット24は、Nd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)系の材料で形成され、表面には電着塗装やスプレー塗装が施され、内周側は12極に着磁されている。
これまでの説明をまとめると、回転体Rのシャフト22が、固定体Sにおける円筒部内周面16aに挿入され、回転体Rは、後述の動圧軸受を介して固定体Sに回転自在に支持される。この状態で、先端部22bは、底部14bと所定の間隙を介して対向するように寸法が設定されている。さらに、ハブ20は、ステータコア12およびリング状マグネット24と共に磁気回路を構成し、外部からの制御により各コイル18に順次通電がなされて、回転体Rは、回転駆動される。
次に、これまで説明したディスク駆動装置100の構成における動圧軸受について詳述する。図5は、ディスク駆動装置100の中央部分を示す拡大断面図である。ラジアル方向の動圧軸受は、外周面22cと、円筒部内周面16aと、両者の間隙に充填されたオイル等の潤滑剤28とを含んで構成される。また、ラジアル方向の動圧軸受は、アキシャル方向に離隔して、ハブ20から遠い方に第1ラジアル動圧軸受RB1が配置され、ハブ20から近い方に第2ラジアル動圧軸受RB2が配置される。第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2は、円筒部内周面16aと外周面22cとの隙間に設けられて、ラジアル方向の動圧を発生して回転体Rを支持する。第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2には、対向する外周面22cと円筒部内周面16aとの少なくとも一方に、動圧を発生させるための動圧溝が形成されている。この動圧溝は、例えばヘリングボーン状に形成される。
回転体Rが回転すると、動圧溝が動圧を発生させ、当該動圧によりシャフト22はスリーブ16に対してラジアル方向に所定の間隙を有して支持される。ここで、第1ラジアル動圧軸受RB1における動圧溝のアキシャル方向の形成幅が、第2ラジアル動圧軸受RB2における動圧溝のアキシャル方向の形成幅よりも狭く形成されている。これにより、シャフト22のアキシャル方向で異なる強さの側圧に対応した動圧が、第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2において発生するので、高いシャフト剛性と低いシャフトロスとの最適バランスが得られる。
一方、スラスト方向の動圧軸受は、第1スラスト動圧軸受SB1、第2スラスト動圧軸受SB2、第3スラスト動圧軸受SB3のうちの少なくともひとつを含む。ここで、第1スラスト動圧軸受SB1は、ハブ20に固着したスラスト部材26のスラスト上面26aと、フランジ部16bの下面とのアキシャル方向の間隙に充填された潤滑剤28によって形成される。また、第2スラスト動圧軸受SB2は、スラスト下面26bと、上端面部14dとのアキシャル方向の間隙に充填された潤滑剤28によって形成される。また、第3スラスト動圧軸受SB3は、下面20eと、フランジ部16bの上面とのアキシャル方向の間隙に充填された潤滑剤28によって形成される。なお、以下の説明において、第1スラスト動圧軸受SB1から第3スラスト動圧軸受SB3のうちの少なくともひとつは、スラスト動圧軸受SBと総称される。
これらのアキシャル方向の間隙の一方の対向面に、動圧を発生させるためのスラスト動圧溝(図示せず)が形成されている。このスラスト動圧溝は、例えばスパイラル状またはヘリングボーン状に形成されており、ポンプインの動圧を発生させる。スラスト動圧軸受SBは、回転体Rの回転にともなって、動圧によりポンプインの動圧を発生し、この圧力によりアキシャル方向の力を回転体Rに作用させる。また、第1ラジアル動圧軸受RB1、第2ラジアル動圧軸受RB2、スラスト動圧軸受SBにおける間隙に充填された潤滑剤28は、互いに共用されるとともに、以下に説明するキャピラリーシール部によりシールされて外部への漏出が防止されている。
キャピラリーシール部TSは、スリーブ16またはハウジング部材14などの固定体Sを構成する部材の外周面(以下、「固定体外周面」という)とスラスト部材26の内周面26dとによって構成されている。固定体外周面は、上面側から下面側へ向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。この傾斜面は、シャフト22の回転中心線に対して傾斜角θisで形成されている。一方、これに対向する内周面26dも、上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。この傾斜面は、シャフト22の回転中心線に対して傾斜角θhで形成されており、傾斜角θhは、0度より大きく傾斜角θisよりも小さくなるように設定されている。つまり、0<θh<θisの関係が成立している。
このような構成によって、固定体外周面および内周面26dは、それらの隙間が上面側から下面側に向かうにしたがって拡がるような、キャピラリーシール部TSを形成する。ここで、キャピラリーシール部TSの途中に、潤滑剤28と外気との境界面(液面)が位置するように、潤滑剤28の充填量が設定されているので、毛細管現象により潤滑剤28は、このキャピラリーシール部TSによりシールされる。その結果、潤滑剤28の外部への漏出が防止されている。つまり、潤滑剤28は、ハウジング部材14とスラスト部材26との間と、フランジ部16bとハブ20との間に、充填されている。
また、前述のごとく、キャピラリーシール部TSは、外側の傾斜面である内周面26dが上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるように設定されている。そのため、回転体Rの回転にともない、潤滑剤28には、それが充填された部分の内部方向に移動させる方向の遠心力が作用するので、外部への漏出がより確実に防止される。また、連通路Iは、ハウジング部材14の内周面にアキシャルに沿う方向に形成された溝14aにより確保される。連通路Iにより、第1ラジアル動圧軸受RB1および第2ラジアル動圧軸受RB2の両側が連通されているので、ラジアル動圧軸受の単独の圧力バランスが崩れても、全体の圧力バランスが良好に維持される。また、シャフト22や回転体Rに外部から力が加わるなどの外乱によって、第1ラジアル動圧軸受RB1、第2ラジアル動圧軸受RB2、スラスト動圧軸受SBにおける動圧のバランスが崩れても、即座に圧力が平均化してバランスが維持される。その結果、固定体Sに対する回転体Rの浮上量が安定し、信頼性の高いディスク駆動装置100が得られる。
この実施例のディスク駆動装置100を組み立てる際は、例えば、まず、スラスト部材26を挟み込むように、スリーブ16とハウジング部材14とを接着などにより一体化させる。次に、この組立体のスリーブ16へ、ハブ20に固着されたシャフト22を挿入するときに、スラスト部材26をハブ20に接着や圧入などにより固着すればよい。
次に、ディスク駆動装置100の構成をさらに詳細に説明する。なお、以下では、各項目を(1)から(13)として説明するが、これらは任意に組み合わせて使用されればよい。
(1)上述したスラスト部材26を形成するために、例えば、金属材料を切削加工する場合、加工に手間がかかる上、細かなバリが表面や角部に多く残るという課題がある。細かなバリは、衝撃等により剥がれてしまうと、狭い隙間に入り込んで、回転精度を悪化させてしまう。さらに、細かなバリは、狭い隙間に入り込むことによって、軸受部などの摩耗を促進し短時間で焼き付きなどの機能不全を生じさせてしまう。このような課題を解決するために、スラスト部材26は、金属材料のプレス加工により形成される。その結果、加工の手間が省略され、問題となるバリの発生が低減される。例えば、厚み0.6(mm)のSUS304などのステンレス板材からドーナツ状の母材が切り出され、プレス加工により外周が絞られることによって、中心に孔の開いた略カップ形状のスラスト部材26が形成される。この際、下垂部26cの上面はリング部26eの上面よりわずかに低くなるようにすることによって、リング部26eの厚さ寸法が、ハイトゲージなどで容易に精度よく計測される。なお、必要がある場合は、バレルなどによる研磨が適宜施されてもよい。
(2)スラスト動圧溝は、転造加工や切削加工によっても形成されるが、これらの加工は手間がかかる上、細かなバリが表面や角部に残るという課題がある。細かなバリは、衝撃等により剥がれて狭い隙間に入り込んで回転精度を悪化させるばかりでなく、軸受部などの摩耗を促進し短時間で焼き付きなどの機能不全を生じさせる。これに対応するために、リング部26eでは、フランジ部16bに対向した壁と、上端面部14dに対向した壁とに、スラスト動圧を発生させるためのスラスト動圧溝がプレス加工によって形成されている。その結果、加工の手間が低減され、問題となるバリの発生も低減される。
(3)スラスト部材26は、プラスチック材料により形成されてもよい。その結果、金型で作成するので精度よく短時間で生産される。ここで、プラスチック材料として、特別の限定はないが、同様の効果を奏するものとして、精度や機械的強度などの特性からポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリイミドなどがより好ましい。
(4)下垂部26cの外周面と第1円筒部20bの内周面とを接着剤で固着した場合に接着強度を強くしようとすれば、接着剤の塗布量を多くすることが必要になる。しかしながら、接着面から漏れ出した接着剤が下垂部26cの先端部を越えて、キャピラリーシール部TSへ侵入することによって、キャピラリーシールの機能が低下するという課題がある。これに対応するために、スラスト部材26の下垂部26cのベース側端は、第1円筒部20bのベース側端よりも突出するように、形成されている。より具体的に説明すると、スラスト部材26の下垂部26cの先端部が、ハブ20の第1円筒部20bの先端部よりも下方に出延されて形成される。その結果、両者の接着面から漏れ出した接着剤が、下垂部26cの先端を越えてキャピラリーシール部TSに侵入することを抑制する。これにより十分な量の接着剤を塗布でき、必要な接着強度を確保できる。
(5)下垂部26cの外周面と、第1円筒部20bの内周面とを接着剤で固着した場合、接着剤の塗布量は個々にばらつき、これが接着強度のばらつきになる。個々の接着剤の塗布状況は容易には観察できず、接着剤の塗布量が不十分で接着強度の低いものが発見されずに市場に出荷される課題がある。これに対応するために、下垂部26cの外壁と、第1円筒部20bのベース側端における内壁との境界部分には、下垂部26cの外壁と、第1円筒部20bのベース側端における内壁とを固着した接着剤の余剰成分が貯留するように、凹型の領域部が形成される。つまり、下垂部26cと第1円筒部20bとの境界部分に凹部を設けて、かつ両者の間に接着剤を充填することによって、凹部に接着剤が十分に充填されている様子が目視にて容易に確認される。その結果、接着剤の塗布状況が不十分な場合に、追加で接着剤を塗布すれば、接着強度のばらつきを抑え、耐衝撃性を高める効果がある。
(6)前述のごとく、下垂部26cの外周面と、第1円筒部20bの内周面とを接着剤で固着した場合に接着強度を強くしようとすれば、接着剤の塗布量を多くすることが必要になる。しかしながら、両者の接着面から漏れ出した接着剤が、下垂部26cの先端を越えてキャピラリーシール部TS内へ侵入することによって、キャピラリーシールの機能を低下させる課題がある。これに対応するために、下垂部26cのベース側端において、外径方向に延在された突起が形成されている。つまり、下垂部26cの先端には、外側に出延した凸部が設けられる。その結果、この部分に漏れ出した接着剤は塞き止められることによって、接着剤がキャピラリーシール部TS内に侵入することを抑制できる。これにより十分な量の接着剤を塗布して、必要な接着強度を確保できる。
(7)キャピラリーシール部TS内において潤滑剤28は、表面張力と遠心力とにより保持されている。図6(a)−(b)は、ディスク駆動装置100のキャピラリーシールを示す部分断面図である。図6(a)は、本実施例に係るディスク駆動装置100の比較対象のディスク駆動装置の構成を示す。スラスト部材126の下垂部126cの内周面126dの表面粗度が悪いと、その表面の接触角(Contact angle)が大きくなる。その結果、潤滑剤の気液境界128aは、図6(a)のようなフィレット形状になる。この形状で、落下飛散によりキャピラリーシール部TS内の潤滑剤が不足すると、短時間で潤滑剤不足に陥り、焼き付き等の障害を生じる課題がある。これに対応するために、内周面26dは、Ry1.6以下の表面粗度になるように形成される。その結果、接触角が小さくされ、気液境界28aは、図6(b)のようなフィレット形状になる。これによって、潤滑剤28に衝撃加速度が加わっても落下飛散を最小限に防止する効果がある。なお、下垂部26cの先端を磨き加工するほか、プレス加工時の金型表面粗度をよくしておき複数回しごくことにより必要な表面粗度を得ることもできる。さらに、より好ましくはRy0.8以下とすれば一層衝撃に強くなる。
(8)キャピラリーシール部TSの容量が小さいと、衝撃により潤滑剤28が飛散した場合に容易に潤滑剤不足に陥り、焼き付き等の障害を生じる課題がある。これに対応するために、下垂部26cの内周面26dと、リング部26eとの結合部分には、凹状の領域部が形成される。その結果、その凹部の空間はキャピラリーシール部TSの一部となってその容量を大きくする効果があり、衝撃により潤滑剤28が飛散した場合でも潤滑剤不足になりにくく、耐衝撃性が向上する。
(9)ディスク駆動装置100の薄型化の要求にともない、ハウジング部材14にも薄型化が要求される。しかしながら、ハウジング部材14が薄くなると剛性が低下し、外部からの衝撃により弾性変形し、ハウジング部材14が、先端部22bに接触する。回転物と固定物が接触することにより摩耗粉が発生し、これが狭い隙間に入り込み、摩耗の加速や軸受の焼き付きなどの原因となる課題がある。これに対応するために、ハブ20は、シャフト22の一端をスリーブ16側に向けて固着し、スリーブ16は、筒状端面の内側にシャフト22を収納する。つまり、スリーブ16の下端は先端部22bより突出させられる。その結果、ハウジング部材14が弾性変形をしても、スリーブ16の下端で遮り、先端部22bへの接触が防止される。この構成によって、衝撃による摩耗粉を発生させずに、かかる課題が抑制される。
(10)シャフト22はハブ20の中心孔に圧入や接着により固着されるが、ディスク駆動装置100の薄型化のために、ハブ20のシャフト22に嵌合する部分の長さが短くなって、衝撃に対して十分な強度を確保するのは難しくなる。また、強度を高めるために接着剤を多く塗布すると、これがしみ出して軸受部に侵入し、機能障害を生じる課題がある。さらに、ハブ20の外周にはディスク50が載置されるので、その質量も相まって、衝撃時には、ハブ20とシャフト22の嵌合部に大きな応力がかかり、変形等の障害を生じやすくなる。例えば衝撃によりハブ20がシャフト22に対して傾くように変形をすると、ハブ20の下面とフランジ部16bの上面とが接触して、機能障害を生じる課題がある。これらに対応するために、ハブ20は、シャフト22を圧入するための中心孔20aを有し、シャフト22のうち、中心孔20aに圧入される部分が非圧入部分よりも小径となるように、段部22aが形成されている。その結果、傾きを抑え強度を増すと共に、接着剤のしみ出しがあっても軸受部への侵入を防止するからより多くの接着剤を塗布でき、耐衝撃性を大きく向上することができる。例えば、シャフト22の直径は2.5(mm)で、段部22aの直径は2.1(mm)とし、片側0.2(mm)の座部が設けられている。
(11)これまで、ディスク駆動装置はモバイル用途であっても、直径3.0(mm)のシャフトが使用されており、ハブからのシャフトの抜去力は300N程度で構成されていた。しかしながら、電流を低減するために、シャフトの直径を2.5(mm)以下に細くして構成せざるを得ない。一方、ディスク駆動装置が実使用されている際に障害を生じさせないために、耐衝撃性として、例えば、1(ms)のような短時間の最大衝撃で1300G以上が望ましい。このような課題を解決するために、ハブ20の中心孔20aに圧入されたシャフト22を引き抜く際の抜去力が、シャフト22の直径が2.5mm以下である場合に、600N以上となるように構成される。このような構成によれば、例えば、1(ms)のような短時間の最大衝撃であっても1300G以上にも耐え得る。
以下では、ひとつの具体例を示す。まず、ステンレス製のシャフト22の直径は2.5(mm)で、小径とした段部22aの直径は2.1(mm)で、この部分の表面粗度はRa0.15以下とされる。さらにこのような構成において、強度をさらに向上させるために、段部22aの根本の径方向のレセス(凹み部)をなくし、Ra0.07以下のR部を備えた構成とされる。一方、ステンレス製のハブ20の中心孔20aの直径も2.1(mm)として、寸法公差を調整して圧入代が15(μm)〜20(μm)である軽圧入と接着とを併用した構成とされる。また、シャフト22と中心孔20aとの嵌合部分のアキシャル方向長さは1.4(mm)とされる。さらに組立は、シャフト22の小径とした段部22aに接着剤を塗布した後に、中心孔20aへゆっくりと圧入して嵌合することで円滑に所定の位置に組み立てられる。これはシャフト22の表面粗度がRa0.15以下と小さく、この部分に塗布した接着剤が圧入時に潤滑剤として作用するため、円滑な圧入が可能となっている。かかる構成とすることで、ハブ20からのシャフト22の抜去力は600N以上となり、例えば、1(ms)のような短時間の最大衝撃で1300G以上にも耐え得るディスク駆動装置100が構成される。なお、生産時に抜き取り検査でこの抜去力を確認することにより、容易に部材や工程が管理される。
(12)ディスク駆動装置において、ハブの内面をバイトによる切削で加工する場合、角部の内側には、加工するバイトの先端の半径Rb分の削り残しが生じる。バイトの先端の半径Rbは小さくしても実用上0.2(mm)程度が限界であり、ゼロになることはなく、またRbを小さくすると一回転で削れる量が減り、全体の切削にかかる時間は反比例して増大するうえ、バイトの摩耗も激しくなる。内周面の角部にバイトの先端の半径Rb分の削り残しがあると、かかる箇所にリング状マグネットを固着する場合にマグネットの外周角部と干渉して浮いてしまう。これを避けるために、一般的に、第2円筒部の角部に半径方向の凹部が設けられるが、第2円筒部の強度が低下してしまう。
また、ハブの外周には質量の大きなディスクが載置されるので、例えば1300Gなどの大きな衝撃加速度を受けると、その質量と相まって大きな応力が半径方向に加わり、ハブが変形されやすくなる。かかる箇所が変形すると、リング状マグネットの内周が変形し、狭い隙間を介して対向しているステータコアの外周との同軸度が悪化し、回転ムラが発生することによって、ディスク駆動装置の機能に障害が生じてしまう。最悪の場合にはリング状マグネットの内周がステータコアの外周に部分的に接触して、深刻な機能障害を生じる課題がある。
これに対応するために、図2のごとく、ハブ20は、第2円筒部20cの内周壁と、当該内周壁からハブ20の中心方向に離間した位置に形成された突出の台座部20fとを有する。さらに、リング状マグネット24は、台座部20fと、第2円筒部20cの内周壁とで固着される。バイトで切削加工するようにしたハブ20と、リング状マグネット24の上面の外周角部とが接する部分に、円周状の台座部20fが設けられることによって、耐衝撃性が向上される。ハブ20の上下方向の厚さは、第2円筒部20cの円周方向の厚さよりも厚いので、台座部20fを設けても強度の低下は少なく、かつ形状的にも変形を生じにくい。さらに、仮に変形することがあってもアキシャル方向への変形であるので、リング状マグネット24とステータコア12との隙間に対する影響は小さい。そのため、大きな衝撃加速度を受けてもディスク駆動装置100の機能障害の発生確率が小さくなる。
(13)これまで、ディスク駆動装置において、ハブの外周にディスクが載置されると、ハブは大きな質量を支持することになる。そのような状態において、衝撃加速度が加わると、大きな質量と相まってハブには大きな応力が加わる。ディスクを載置した状態において、リング状マグネットなどハブと一体的に回転する回転体の重心が、回転中心線上でハブとシャフトの嵌合部付近にある場合に、アキシャル方向の衝撃加速度が加わると、ハブとシャフトの嵌合部分を支点にして、ハブとディスクが傾くような変形が発生する。わずかでもこのような変形が発生すると、リング状マグネット内周とステータコアの外周との隙間が不均一となる。また、このような不均一が、回転ムラの原因となり、最悪の場合、両者の接触によって、削れ粉が生じる。また、削れ粉は隙間を移動し、回転の障害となるという課題がある。
このような課題を解決するために、リング状マグネットの内周とステータコアの外周との隙間を広くすることも考えられるが、磁気抵抗が増えて、磁束が減ることによって、トルクが低下するうえに、漏れ磁束が増えて磁気ヘッドに悪影響を及ぼす弊害がある。また、ハブの外周の直径を小さくして、回転体の傾きに対するリング状マグネット内周とステータコアの外周との隙間への影響を小さくすることも考えられるが、トルクが低下し電流が増大してしまう。そのため、これらの対応策は採用されない。
これに対応するために、ハブ20にディスク50を搭載した場合の回転体Rの重心Gが、ハブ20とシャフト22の固着部分近傍に存在する場合、ディスク駆動装置100は、次のように構成される。つまり、ベース部材10からハブ20への方向におけるステータコア12の中心位置と、当該方向における回転体Rの重心G位置との距離が、1.8mm以下となるように構成される。このような構成によって、耐衝撃性が向上される。例えば、公知の技術において、ステータコアのアキシャル方向の中心位置と、回転体の重心との間のアキシャル方向の距離は、2.0(mm)以上であり、耐衝撃性は不十分であった。
図7は、ディスク駆動装置100における回転体Rの重心とステータコアの中心位置を説明するための部分断面図である。図7において、Gは、ディスク50を含む回転体Rの重心の位置を示し、回転中心線上でハブ20とシャフト22の嵌合部付近に存在する。例えば、ハブ20の外周の直径が15〜25(mm)に設計され、リング状マグネット24の内周とステータコア12の外周との隙間が0.1〜0.3(mm)に設計される。また、ベース部材10のコイル18直下の部分の厚みを厚くして、ステータコア12の位置を上方に移動し、ステータコア12のアキシャル方向の中心の位置Cは、回転体Rの重心から、アキシャル方向の距離1.8(mm)以下になるように設計される。図7において、アキシャル方向の距離はDとして示される。
その結果、1300Gの衝撃が加わってもリング状マグネット24の内周とステータコア12の外周が接触する可能性が低くなり、耐衝撃性が向上される。なお、アキシャル方向の距離を小さく設定すると、その分だけベース部材10を厚く構成でき、剛性が高まり耐衝撃性が向上する。さらに好適には、かかるアキシャル方向の距離Dを1.6(mm)以下にすることによって、耐衝撃性がさらに向上される。ただし、ステータコア12のアキシャル方向位置を高くしていくと、ステータコア12に巻かれたコイル18がハブ20の下面に接触してしまうので、アキシャル方向の距離Dは1.2(mm)が下限になる。さらに、ベース部材10のコイル18直下の部分の厚みをハブ20のコイル18直上の部分の厚みの150%以上とすることで、ベース部材10の剛性は高くなり、回転体の質量が低減されるから、耐衝撃性が向上する。具体例では、ベース部材10のコイル18直下の部分の厚みは1.5(mm)、ハブ20のコイル18直上の部分の厚みを1.0(mm)としている。なお、当該厚み寸法は、孔や凹凸などは除外して計測する。なお、ハブ20のコイル18直上の部分の厚みを0.5(mm)以下とするとハブ20の剛性が不十分となることがあり、400%が上限となる。
なお、前述したスラスト動圧軸受SBは、第1スラスト動圧軸受SB1、第2スラスト動圧軸受SB2、第3スラスト動圧軸受SB3のいずれかのアキシャル方向の間隙にて構成されていると説明した。しかしながら、これらのアキシャル方向の間隙の2カ所または3カ所で動圧を発生させ、互いに作用が補い合うよう構成することも可能であり、本発明の要旨を逸脱するものではない。
次に、変形例を説明する。変形例は、実施例と同様のディスク駆動装置100に関する。実施例において、スラスト部材26には、リング部26eと下垂部26cとが含まれている。一方、変形例において、スラスト部材は、下垂部のみを含む。なお、このような下垂部をリング部としてもよいが、ここでは、下垂部として説明する。図8は、本発明の変形例に係るディスク駆動装置100を示す拡大断面図である。図8において、図2等と共通の部材には、同一の符号を付与するとともに、説明を省略する。第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2は、これまでと同様に、外周面22cと円筒部内周面16aとの間隙において、外周面22cと円筒部内周面16aとの少なくとも一方に、動圧を発生させるためのヘリングボーン状動圧溝が例えば形成されている。一方、スラスト動圧軸受SBは、下面20eとフランジ部16bの上面とのアキシャル方向の間隙において、下面20eとフランジ部16bの上面との一方の対向面に動圧を発生させるスパイラル状スラスト動圧溝(図示せず)が例えば形成されている。
スラスト部材30は、上端部30a、下垂部30b、外周面30c、内周面30dを含む。つまり、スラスト部材30は、リング部26eを含まず、下垂部26cに対応した下垂部30bのような略リング状の形状をしている。上端部30aは、スリーブ16のフランジ部16bの下面に狭い隙間で対向し、抜け止めの機能を果たす。下垂部30bの外周面30cは、ハブ20の第1円筒部20bの内周面に固着されている。接着剤によって固着して構成する場合、ハブ20の第1円筒部20bの内周面に、図8で示すような凹部を設けて接着剤の溜まり部として機能させ、接着強度の向上と余分な接着剤のはみ出しを防止してもよい。
キャピラリーシール部TSは、スリーブ16またはハウジング部材14などの固定体Sを構成する部材の外周面(以下、「固定体外周面」という)と、スラスト部材30の下垂部30bの内周面30dとにて構成されている。スラスト部材30のラジアル方向の寸法(図上で横方向寸法)は、0.3〜0.5(mm)と短くして、ラジアル方向の空間を無駄に占有せず、軸受部分やステータコア12部分の寸法を大きくし得るようにされている。一方、スラスト部材30のアキシャル方向の寸法(図上で縦方向寸法)は、1.5〜3.0mmと長くすることによって、内周面のキャピラリーシール部TSの容量を拡大するとともに、第1円筒部20bの内周面に対する固着強度を高めている。
また、図示しない連通路Iは、ハウジング部材14の内周面にアキシャルに沿う方向に形成された溝14aと、ハウジング部材14の上面のうち、フランジ部16bの上面と接する部分に形成された溝とによって確保される。連通路Iにより、第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2の両側が連通されているので、ラジアル動圧軸受の単独の圧力バランスが崩れても、全体の圧力バランスが良好に維持される。
スラスト部材30についても、金属材料のプレス加工により形成すること、プラスチック材料により形成すること、下垂部30bの先端は第1円筒部20bの先端よりも下方に出延していること、下垂部30bの外周面と第1円筒部20bの先端との境界部分に凹部を設けて接着剤を充填すること、下垂部30bの先端は外側に出延した凸部を設けること、内周面30dの表面粗度はRy1.6以下であることは、実施例と同様に任意に適用されてもよい。また、それによる作用効果は、実施例の場合と同様であることは説明するまでもなく明白である。
スリーブ16の下端をシャフト22の下端より突出させること、シャフト22のうち、中心孔20aと嵌合する部分を他の部分より小径として段部22aを設けること、シャフト22の直径が2.5mm以下である場合に、中心孔20aからのシャフト22の抜去力を600N以上とすること、バイトで切削加工するようにしたハブ20に台座部20fを設けて、台座部20fとリング状マグネット24とを接するように構成すること、ステータコア12のアキシャル方向の中心位置と回転体Rの重心とのアキシャル方向位置の距離を1.8mm以下とすること、ベース部材10のコイル18直下の部分の厚みをハブ20のコイル18直上の部分の厚みの150%以上とすることは、実施例と同様に任意に適用されてもよい。また、それによる作用効果は、実施例の場合と同様であることは説明するまでもなく明白である。
本発明の実施例によれば、スラスト部材は、リング部に加えて下垂部を有するので、ハブとの固着面積を拡大できる。また、ハブとの固着面積が拡大されるので、耐衝撃性を向上できる。また、リング部に加えて下垂部を有するので、キャピラリーシールの容量を拡大できる。また、キャピラリーシールの容量が拡大されるので、潤滑剤の量を拡大できる。また、潤滑剤の量が拡大されるので、耐衝撃性を向上できる。また、スラスト部材をハブに接着剤にて固着させるので、下垂部の変形を抑制できる。また、下垂部の変形が抑制されるので、キャピラリーシールの機能を確保できる。また、キャピラリーシールの機能が確保されるので、耐衝撃性を向上できる。また、大きな衝撃を受けても障害や短時間での機能不全を生じることがないディスク駆動装置を提供できる。また、モバイル機器でもより大きな衝撃の加わる用途にも使用範囲が拡大できる。また、同じ耐衝撃性であれば小型・薄型・軽量化を容易に実現できる。
本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
本発明の実施例において、スラスト部材26は、ハブ20に接着剤で固着されている。しかしながらこれに限らず、スラスト部材26は、ハブ20に接着剤で固着されていなくてもよく、固着のために他の手段が使用されてもよい。本変形例によれば、固着の方法の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、スリーブ16とハウジング部材14とが別部材として構成されている。しかしながらこれに限らず例えば、スリーブ16とハウジング部材14とが一体として形成してもよい。また、その際に、連通路Iは、スリーブ16の下面からフランジ部16bの上面にかけて貫通するような孔であってもよい。本変形例によれば、ディスク駆動装置100の設計の自由度を向上できる。