JP5285300B2 - 光学部材 - Google Patents
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Description
また、視感反射率が小さく、視感透過率が高いという優れた反射防止膜を有するだけでなく、プラスチック基材上における、耐衝撃性、密着性、耐熱性、耐スクラッチ性及び耐アルカリ性に優れた良好な光学部材として、プラスチック基材と、真空蒸着法で形成された反射防止膜とを有する光学部材の少なくとも1層の反射防止膜中に、無機物質及び有機物質よりなるハイブリッド層を有する反射防止膜を有する光学部材が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、さらなる耐スクラッチ性の改善された光学部材が求められている。
すなわち、本発明の光学部材は、プラスチック基材と、真空蒸着法で形成された反射防止膜とを有する光学部材であって、この反射防止膜の少なくとも1層に、SiO2とAl2O3とからなる、成膜原料を用いた層を具備し、その層がナノインデンテーション測定法での測定において、押し込み荷重0.98mNのときの押し込み深さが70〜95nmである、低屈折率層を有することを特徴とする。
本発明の光学部材は、真空蒸着法によって形成される反射防止膜中に、SiO2とAl2O3とからなる、成膜原料を用いた層を有し、その層はナノインデンテーション測定法での測定において、押し込み荷重0.98mNのときの押し込み深さが70〜95nmである低屈折率層であり、該層を形成することで、反射防止膜の膜内応力低減を図ることが可能となり、耐衝撃性を損なうことなく、さらに、耐スクラッチ性が向上した反射防止膜を有する光学部材を提供することができる。
さらに、本発明では、イオンアシスト法における出力を高くすることにより、SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いた膜密度の高い層が形成され、さらに耐スクラッチ性の高い薄膜となる。また、プライマー液を大気中にて、塗布、加熱してなるプライマー層を設ける必要がないので、硬化を行う時間を必要とせず、異物の混入を防ぎ、さらに、反射防止膜の膜厚をより正確に制御することもできる。
下地層を介して形成する場合には、プラスチック基材と下地層との密着性確保及び蒸着物質の初期膜形成状態の均一化を図るために、下地層を形成する前にイオン銃前処理を行ってもよい。イオン銃前処理におけるイオン化ガスは、酸素、アルゴン(Ar)などを用いることができ、出力で好ましい範囲は、特に良好な密着性、耐スクラッチ性を得る観点から、加速電圧が50〜200V、加速電流が50〜150mAである。
本発明の反射防止膜の低屈折率層以外の膜構成層に関しては、必要に応じて、物理的蒸着法(PVD法)、化学的蒸着法(CVD法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等で形成することもできる。これらの層は特に限定されないが、良好な反射防止効果等の物性を得るため、低屈折率層として、SiO2層、SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いた層、SiO2とAl2O3との混合層、高屈折率層として、Nb2O5層、Ta2O5層、ZrO2層、ITO層、TiN層及びTiO2層の中から選ばれる少なくとも1種類の層を有することが好ましい。
このとき、該出力を上げすぎるとSiO2やAl2O3が、例えば高屈折率層の内部に入ってしまい、アバタ等の光学的欠陥が生じ、また、出力が足りないと耐スクラッチ性等眼鏡に必要な膜硬度が確保できないといった弊害が生じる。
例1
第1層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 10〜180nm)、
第2層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚 1〜25nm)、
第3層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚10〜500nm)、
第4層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜55nm)、
第5層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚 10〜50nm)、
第6層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜120nm)、
第7層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 70〜100nm)。
上記層厚範囲は、プラスチック基材上に反射防止膜を有した光学部材の耐衝撃性、密着性、耐熱性及び耐スクラッチ性において好ましい範囲である。
ここで、第1層がプラスチック基材側である。
例2
第1層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 10〜180nm)、
第2層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 1〜25nm)、
第3層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚10〜500nm)、
第4層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜55nm)、
第5層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚 10〜50nm)、
第6層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜120nm)、
第7層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 70〜100nm)。
上記層厚範囲は、プラスチック基材上に反射防止膜を有した光学部材の耐衝撃性、密着性、耐熱性及び耐スクラッチ性において好ましい範囲である。
ここで、第1層がプラスチック基材側である。
例3
下地層:Nb層(層厚 1〜5nm)、
第1層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 10〜180nm)、
第2層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚1〜25nm)、
第3層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚10〜500nm)、
第4層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜55nm)、
第5層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚 10〜50nm)、
第6層:Nb2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜120nm)、
第7層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 70〜100nm)。
ここで、第1層がプラスチック基材側である。
例4
下地層:Nb層(層厚 1〜5nm)、
第1層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 10〜180nm)、
第2層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 1〜25nm)、
第3層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚10〜500nm)、
第4層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜55nm)、
第5層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる通常の低屈折率層(層 厚 10〜50nm)、
第6層:Ta2O5からなる高屈折率層(層厚 10〜120nm)、
第7層:SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる本発明に係る低屈折率 層(層厚 70〜100nm)。
ここで、第1層がプラスチック基材側である。
(R1)a(R2)bSi(OR3)4-(a+b)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜8のアシル基、ハロゲン原子、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基の中から選ばれる有機基を示し、R3は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8アシル基及び炭素数6〜10のアリール基の中から選ばれる有機基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0又は1の整数である)で表される有機ケイ素化合物とからなる組成物が使用される。
プラスチックレンズの表面にスチールウールにて19.6N/cm2、29.4N/cm2の荷重をかけ、10ストローク擦り、表面状態により以下の基準で評価した。この試験を3回行なった。
○:殆ど傷なし、
×:傷あり
得点:荷重19.6N/cm2で○のときを2点、29.4N/cm2、で○のときを3点、とし、その合計点で示した。
ガラス板に、光学部材のSiO2とAl2O3からなる成膜原料を用いてなる低屈折率層の単層薄膜を200nmの厚みで形成し、ナノインデンテーション測定法の測定装置((株)エリオニクス 超微小押し込み硬さ試験機 ENT−2100)を用いて押込み試験を行った。測定には、稜間隔115度の三角錐ダイヤモンド圧子を用いた。測定は圧子が0.2mgf/secの荷重速度で負荷をし、最大荷重0.98mNを1秒間保持した後、同様の荷重速度で除荷をするよう設定した。この測定から得られる圧子押込み深さ−荷重曲線から、最大荷重に到達した時の押込み深さを読み取った。
また、インデンテーション硬さHは次の式を用いて求めた。
H=Pmax/A(hA)・・・・・(1)
ナノインデンテーション測定法から得られる、荷重−変位曲線を図1に示す。
ここで、Pmaxは最大荷重、A(hA)は圧子の接触投影面積である。A(hA)はまず、hAを最大押込み深さhmaxおよび除荷曲線勾配と変位軸の交点hSから求めた後で、ダイヤモンドからなる正三角錐(バーコビッチ型)圧子の幾何学形状(対頂角65.03°)から求めた。hA、A(hA)はそれぞれ以下の式で表される。
hA=hmax−0.75(hmax−hS)・・・・・・・・(2)
A(hA)=3√3tan2(65.03°)hA 2・・・(3)
(ここで、(2)式の0.75はバーコビッチ型圧子の定数である。)
さらに、複合ヤング率E*は、荷重−変位曲線の、除荷曲線の傾き(接触剛性)S、および圧子との接触投影面積Aを用い、以下の式より求めた。
S=(2/π1/2)E*A1/2・・・・・(4)
視感反射率は、分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ)を用い、視感反射率Y%を測定した。
視感透過率は、分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ)を用い、視感反射率Yt%を測定した。
イオンアシストは、(株)シンクロン製、真空蒸着装置、CES−1050−HP型に設置のイオン銃 RIS−120−Dを使用して行った。
また、蒸着物質成膜中は常時イオンアシスト状態で使用した。
単層膜は、前記真空装置、イオンアシスト装置を用いて成膜を実施した。
使用原料は、SiO2とAl2O3を96:4で混合している市販のL5(商品名:メルク(株)製)で、ガラス基板上に200nmの厚さで膜を形成した。イオンアシストは、350V/170mA、イオン化ガスはArとO2を50:50で導入した。
ナノインデンテーション測定法による押し込み深さの測定(4回測定と、平均値表示)を表1に示した。なお、その測定チャートを図2に示した。
表記した様に、押込み深さは95nm以下である。又、複合弾性係数E*は73.6GPaを示している。
実施例1に記載の単層膜の条件を使用して作成した単層膜(低屈折率層)を最外層とする7層からなり、高屈折率層にはTa2O5を使用した反射射防止膜を基材A、基材B上にそれぞれ形成し、得られた反射防止膜の視感反射率、視感透過率および耐スクラッチ性を測定し、その膜性能評価結果を表2に示した。
基材A:EYNOA基材(商品名、HOYA(株)製造、ポリチオウレタン樹脂)、屈折率1.67、中心厚1.0mm、レンズ度数0.00
基材B:EYRY基材(商品名、HOYA(株)製、エピスルフィド化合物)、屈折率1.70、中心厚1.0mm、レンズ度数0.00
前記硬化膜上に真空蒸着法(真空度2.67×10-3Pa(2×10-5Torr))と、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるL5からなる層〔屈折率1.48、膜厚0.10λ(λは550nmである)〕を形成し、次に酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られる二酸化タンタルからなる層(膜厚0.06λ)、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるL5からなる層〔屈折率1.48(膜厚0.50λ)〕を設けた。さらに、イオンビームアシスト法で得られる二酸化タンタルからなる層よりなる3層等価高屈折率層の第1層〔屈折率2.20、膜厚0.2λ〕を形成した。この第1層の上に、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるL5からなる、第2層〔屈折率1.48(膜厚0.12λ)〕を設けた。さらに、イオンビームアシスト法により二酸化タンタルからなる第3層(屈折率2.20、膜厚0.22λ)を形成し、3層等価高屈折率を設けた。その次に、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるL5からなる層〔屈折率1.48(膜厚0.25λ)〕を形成し反射防止膜付きプラスチックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%、視感透過率は99.1%であった。
単層膜を、前記真空装置、イオンアシスト装置を用いて成膜を実施した。
使用原料は、エマロンL(商品名:(株)東京製品開発研究所製)で、ガラス基板上に200nmの厚さで膜を形成した。イオンアシストは、350V/170mA、イオン化ガスは、ArとO2を50:50で導入した。
ナノインデンテーション測定法による押し込み深さの測定を表1に示した。なお、その測定チャートを図3に示した。
押込み深さは100nm以上で、又、複合弾性係数E*は64.1GPaであった。
測定結果を表1に示す。
比較例1に記載の単層膜の条件を使用して作成した単層膜(低屈折率層)を最外層とする7層からなり、高屈折率層にはTa2O5を使用した反射防止膜を基材A、基材B上にそれぞれ形成した。得られた反射防止膜の視感反射率、視感透過率および耐スクラッチ性を測定し、その膜性能評価結果を表2に示した。
前記硬化膜上に真空蒸着法(真空度2.67×10-3Pa(2×10-5Torr))と、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるSio2からなる層〔屈折率1.468、膜厚0.11λ(λは550nmである)〕を形成し、次に酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られる二酸化タンタルからなる層(膜厚0.06λ)、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるSiO2からなる層〔屈折率1.468(膜厚0.50λ)〕を設けた。さらにイオンビームアシスト法で得られる二酸化タンタルからなる層よりなる3層等価高屈折率層の第1層〔屈折率2.20(膜厚0.2λ)〕を形成した。この第1層の上に、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるSiO2からなる、第2層〔屈折率1.468(膜厚0.12λ)〕を設けた。さらに、イオンビームアシスト法により二酸化タンタルからなる第3層〔屈折率2.20(膜厚0.22λ)〕を形成し、3層等価高屈折率を設けた。その次に、酸素、アルゴン混合イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られるSiO2からなる層〔屈折率1.68(膜厚0.25λ)〕を形成し反射防止膜付きプラスチックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%、であった。
反射防止膜の視感反射率、視感透過率および耐スクラッチ性を測定し、その膜性能評価結果を表2に示す。
また、ナノインデンテーション測定法での、押し込み深さの測定結果より、実施例2の膜は、比較例2の膜より、押込み変化量が少なく、又、縦弾性係数値が高いことにより、変形しにくい膜質であることが分かった。
従って、ナノインデンテーション測定法での押し込み深さの測定値は、膜の耐スクラッチ性を示す数値として有効であることが示された。
Claims (4)
- プラスチック基材と、真空蒸着法で形成された反射防止膜とを有する光学部材であって、反射防止膜中の低屈折率層の少なくとも1層が、SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いた、イオンアシスト法で形成されてなる光学薄膜であり、かつ前記低屈折率層に用いられる前記SiO 2 と前記Al 2 O 3 の混合比率が、SiO 2 に対してAl 2 O 3 が1〜10質量%であり、さらに前記光学薄膜が、ナノインデンテーション測定法での測定において、押し込み荷重0.98mNのときの押し込み深さが70〜95nmの低屈折率層である反射防止膜を有する光学部材。
- 前記SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いた低屈折率層が、アルゴンと酸素の混合ガスを用いたイオンアシスト法によって形成されてなる請求項1に記載の反射防止膜を有する光学部材。
- 前記SiO2とAl2O3とからなる成膜原料を用いてなる低屈折率層が、加速電圧250〜450V、加速電流160〜220mAの出力で実施されるイオンアシスト法で形成されてなる請求項1又は2に記載の反射防止膜を有する光学部材。
- 反射防止膜の少なくとも最外層が請求項1に記載の低屈折率層で形成された反射防止膜を有する光学部材。
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