JP5267048B2 - 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法 - Google Patents

溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5267048B2
JP5267048B2 JP2008277842A JP2008277842A JP5267048B2 JP 5267048 B2 JP5267048 B2 JP 5267048B2 JP 2008277842 A JP2008277842 A JP 2008277842A JP 2008277842 A JP2008277842 A JP 2008277842A JP 5267048 B2 JP5267048 B2 JP 5267048B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ductility
thickness direction
less
weldability
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2008277842A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2010106298A (ja
Inventor
圭治 植田
伸一 鈴木
伸夫 鹿内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2008277842A priority Critical patent/JP5267048B2/ja
Publication of JP2010106298A publication Critical patent/JP2010106298A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5267048B2 publication Critical patent/JP5267048B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、建築、橋梁、造船、海洋構造物、タンク等に用いられる溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法に関し、特に、板厚60mm以上の厚鋼板の製造方法として好適なものに関する。
建築,橋梁、造船、海洋構造物、タンク等の各分野で鋼材が使用される場合には、鋼構造物の形状に応じて、溶接接合によって所望形状に仕上げられる。近年、鋼構造物の大型化や、形状が多様化しており、使用される鋼材の高強度化や厚肉化が進んでいる。
鋼材が高強度化するに従って、添加される合金元素量が増加することが一般的であり、溶接部の低温割れ性の劣化を招くことが知られている。
特に、使用される鋼材が厚肉化すると、溶接部に負荷される引張応力が増大するだけでなく、合金元素の濃化した中心偏析部が鋼材に残存し、見かけ上の合金元素量が増加した中心偏析部に溶接熱サイクルが付与された場合には、焼入れ硬化性が顕著に増大することにより、溶接部の低温割れ性が劣化することが問題となる。
また、複雑な形状に溶接施工された鋼構造物においては,鋼材の板厚方向に対して引張応力が作用することがあり、安全性の観点から,使用される鋼材の板幅方向や板長手方向の機械的特性は勿論のこと,板厚方向の機械的特性についても優れることが要求される。
特に、鋼構造物の破壊防止の観点から、板厚方向への引張荷重に対する延性が重要である。
しかしながら、鋼材が厚肉化した場合には、鋼素材の段階で生成したセンターポロシティーや凝固偏析が、最終製品にまで残存し、板厚方向の延性低下を招くことがある。
鋼材が高強度化するにしたがって、添加される合金元素量が増加すると、合金元素の偏析や介在物の生成が増大し、板厚方向の延性を確保することがより困難となるため、溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板が要望されている。
特許文献1は500N/mm級鋼の板厚方向の引張および圧縮変形性能の改善手法として、鋼素材を連続鋳造する際に、電磁攪拌するとともに、鋳片をバルジングさせ、さらに未凝固部を含む鋳片を圧下する連続鋳造方法が記載されている。
特許文献2は、連鋳スラブにクロス鍛造を実施した後、成形圧延することにより、センターポロシティーと中心偏析の改善を達成することが記載されている。特許文献3は、鋼素材の溶体化熱処理を実施した後、圧延および熱処理を実施し、強度と靭性に優れた鋼板の製造方法が記載されている。
特開2005−103604号公報 特開2000−263103号公報 特開平2−205629号公報

しかしながら、特許文献1に記載された製造方法では、圧下量や歪速度制御の制約が大きく、極厚の高強度鋼では溶接性や板厚方向の延性向上効果が十分に得られず、更に処理能力が連続鋳造の引き抜き速度に律速されるため、製造効率が低下することが懸念される。
特許文献2に記載された技術では、溶接性や板厚方向の延性向上効果が十分に得られず、更に、鍛造工程を2工程に分ける必要があるため、製造効率の低下と製造コストの上昇が懸念される。
特許文献3に記載された技術では、圧延前に高温長時間の溶体化熱処理が必要であるため、製造効率の低下と製造コストの上昇が懸念されるとともに、溶接性および板厚方向の延性向上効果が十分に得られない。
そこで、本発明は、優れた溶接性を満足するとともに、板厚方向の引張荷重に対して優れた延性を安定して達成する厚鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため,厚鋼板を対象に、板厚中心部における溶接低温割れ性と板厚方向の延性を決定する各種要因のうち、鋼板内部のミクロ組織制御因子について鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
1.鋼材の優れた溶接性を達成するためには、鋼組成を適切に選定して厳格に管理することが必要である。
2.溶接部の低温割れを助長する水素の集積サイトを極力抑制するとともに、厚鋼板の板厚方向引張試験において優れた延性を安定して達成するためには、鋼素材中央部に生成するMnSを極力抑制することが不可欠である。MnSを完全に抑制できない場合には、Caの添加量を厳格に調整して、板厚中央部における硫化物を微細に制御することが重要である。
3.更に、優れた溶接施工性と板厚方向の延性を達成するためには、熱間加工の総圧下量の下限と、加工温度の下限を厳格に管理して、センターポロシティーを完全に消失することが重要である。
4.更に、優れた溶接性と板厚方向の延性を達成するためには、熱間加工の総圧下量と加工温度の管理とともに、歪速度を厳格に調整して,鋼素材中央部の中心偏析を解消することが最も重要である。
加工温度、加工量および歪速度を厳格に管理することにより、熱間加工中にオーステナイトの動的再結晶を発現させて、結晶粒界の移動を促進することにより、Fe中に固溶した各種合金元素を効率的に拡散させて、偏析の無い均一な組成の鋼板を得ることができる。
上記の組み合わせにより、厚鋼板の板厚中央部に、センターポロシティー、粗大なMnS等の非金属介在物および中心偏析の存在しない鋼板が得られ、優れた、溶接性と板厚方向の延性を安定して達成することができる。
5.熱間加工後の金属組織の平均結晶粒径が300μmを超えると、靭性の低下を招くとともに、熱間加工中の動的再結晶が不十分となるため、偏析が解消しない。その結果、引張試験時には、結晶粒界への応力が集中しやすくなるため、空隙の発生起点となり、顕著な延性低下を招く。従って、熱間加工後の金属組織の平均結晶粒径が300m以下となるようにすることが望ましい。
本発明は、得られた知見に、さらに検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.鋼組成が、質量%で、
C:0.01〜0.20%
Si:0.05〜0.50%
Mn:0.3〜3.0%
P:0.03%以下
S:0.005%以下
Al:0.1%以下
N:0.02%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とする熱間加工を施すことを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
2.1に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
Ca:0.005%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とする熱間加工を施すことを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
3.1または2に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
Cu:0.01〜2.0%
Ni:0.01〜3.0%
Cr:0.01〜3.0%
Mo:0.01〜3.0%
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下、
Ti:0.05%以下、
B:0.005%以下
REM:0.02%以下
Mg:0.005%以下
の一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における熱間加工の歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とすることを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
4.熱間加工後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
5.熱間加工後、更に1000〜1250℃に再加熱することを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
6.再加熱後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする5記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
7.熱間加工後、更に1000〜1250℃に再加熱し、圧延終了温度が750℃以上となる熱間圧延を行うことを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
8.熱間圧延後、更にAc変態点以上に再加熱することを特徴とする7記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
9.再加熱後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする8記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、溶接性と板厚方向の延性に優れた板厚60mm以上の厚鋼板の製造方法が得られ、鋼構造物の大型化、鋼構造物の安全性の向上および施工効率の向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
本発明では成分組成、製造条件を規定する。
[成分組成]説明において%は質量%とする。
C:0.01〜0.16%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するために必要な元素で、その効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。
一方、0.16%を超える含有は、母材および溶接部の靭性を顕著に劣化させる。また,溶接部の低温割れ性を劣化させるため、0.01〜0.16%の範囲に限定する。好ましくは、0.02〜0.15%である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸材として作用し、製鋼上、少なくとも0.05%必要であるが、0.50%を超えて含有すると、母材および溶接部の靭性を劣化するだけでなく、溶接部の低温割れ性が劣化するため、0.05〜0.50%の範囲に限定する。好ましくは、0.10〜0.40%である。
Mn:0.3〜3.0%
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有しており、0.3%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて含有すると、母材の靭性が劣化するだけでなく、溶接部の低温割れ性が著しく劣化するとともに、中心偏析が顕著になり板厚方向の延性を劣化させるため、0.3〜3.0%の範囲に限定する。好ましくは、0.4〜1.8%である。
P:0.03%以下
Pは、鋼の強度を増加させ靭性を劣化させる元素であるだけでなく、中心偏析により板厚方向の延性を劣化させるので、0.03%を上限とし、可能なかぎり低減することが望ましい。尚、過度のP低減は精錬コストを高騰させ経済的に不利となるため、0.001%以上とすることが望ましい。
S:0.005%以下
Sは母材の低温靭性を劣化させるだけでなく、MnSを生成して板厚方向の延性を劣化させるため、0.005%を上限として可能なかぎり低減することが望ましい。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用し、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスに於いて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与するが、0.1%を超える含有は、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して、靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定した。
N:0.02%以下
Nは不可避的不純物として鋼中に含まれ、0.02%を超えて含有すると、母材および溶接部靭性が著しく低下するため、0.02%以下に限定する。
本発明では、更に、特性を向上させる場合、上記基本成分系に加えて、Ca、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、B、REM、Mgの一種または二種以上を含有することができる。
Ca:0.005%以下
Caは、酸硫化物の形態制御に有効であり、延性に悪影響を及ぼす粗大なMnS等の生成を抑制して、微細なCa酸硫化物を形成するとともに靭性を向上させる有用な元素である。
0.005%を越えると、Ca酸硫化物が粗大化し靭性に悪影響を及ぼすため、0.005%以下に限定する。上記効果を得るため、0.0005%以上を添加することが好ましく、0.0005〜0.0045%とすることが好ましい。
Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜3.0%の1種または2種以上
CuおよびNiは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、HAZ靭性への影響も小さいため、高強度化のために有用な元素であり、必要に応じ選択して含有できる。
Cuを添加する場合は、0.01%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて含有すると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状を劣化させるため、0.01〜2.0%とする。尚、好ましくは、0.05〜0.7%である.
Niを添加する場合は、0.01%以上含有することが好ましいが、3.0%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になるため、0.01〜3.0%とする。尚、好ましくは0.05〜1.7%である。
Cr:0.01〜3.0%、Mo:0.01〜3.0%、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Ti:0.05%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上
Cr、Mo、Nb、V、Ti、Bは、いずれも鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて一種または二種以上を含有できる。
Crを添加する場合は、0.01%以上含有することが好ましいが、3.0%を超えて含有すると、溶接部の低温割れ性およびHAZ靭性を劣化させるため、0.01〜3.0%に限定することが望ましい。
Moを添加する場合は、0.01%以上含有することが好ましいが、3.0%を超えて含有すると、溶接部の低温割れ性、母材靭性およびHAZ靭性に悪影響を及ぼすため、0.01〜3.0%に限定することが望ましい。
Nbを添加する場合は、0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて含有すると、母材靭性およびHAZ靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定することが望ましい。
Vを添加する場合は、0.01%以上含有することが好ましいが、0.1%を超えて含有すると、HAZ靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定することが望ましい。
Tiは、強度向上に寄与し、また、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、HAZでのオーステナイト粒の粗大化抑制してHAZの高靭化に寄与するが0.05%を超えて含有すると、母材靭性を劣化させるため、添加する場合、0.05%以下に限定することが望ましい。上記効果を得るためには、0.005%以上含有させる。
Bは、焼入れ性を向上させて、鋼の強度を増加させる作用を有するが、0.005%を超えて含有すると、焼入れ性を著しく増加させ、溶接部の低温割れ性、母材の靭性および延性の劣化をもたらすため、含有させる場合は0.005%以下とする。
REM:0.02%以下、Mg:0.005%以下の一種または二種
REM、Mgは、いずれも靭性向上に寄与し、所望する特性に応じて添加する。REMを添加する場合、0.02%を超えても効果が飽和するため、0.02%を上限とする。上記効果を得るため、0.002%以上とすることが好ましい。
Mgを添加する場合、0.005%を超えても効果が飽和するため、0.005%を上限とする。上記効果を得るため、0.001%以上とすることが好ましい。上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
[製造条件]
説明において、温度「℃」は、板厚の1/2における温度を意味するものとする。
本発明に係る厚鋼板の製造方法では、鋼素材中のセンターポロシティーなどの鋳造欠陥を消失させるため、鋼素材に熱間加工を施すことを必須とする。
1.鋼素材の熱間加工条件
加熱温度:1100℃〜1350℃
上述した組成の鋳片または鋼片の鋼素材を転炉,電気炉,真空溶解炉等,通常公知の方法による溶鋼から作成し、1100℃〜1350℃に再加熱する。再加熱温度が1100℃未満では,所定の熱間加工の累積圧下量と温度下限を確保できず、熱間加工での変形抵抗が高く,1パス当たりの圧下量を十分取れない。
その結果、パス数が増加し,製造能率の低下を招くとともに,鋼素材中のセンターポロシティーなどの鋳造欠陥を圧着することができないので、1100℃以上とする。
一方,再加熱温度が1350℃を超えると,加熱時のスケールによって表面疵が生じやすく,熱間加工後の手入れ負荷が増大するため,1100〜1350℃とする。
熱間加工の加工温度:1000℃以上
熱間加工の加工温度が1000℃未満の場合,熱間加工中のオーステナイトの動的再結晶による合金元素の拡散効果が十分に得られないため、中心偏析が解消されず、溶接部の低温割れ性、および板厚方向の延性低下を招く。また、変形抵抗が高くなるため,負荷すべき荷重が増大し,熱間加工機への負担が大きくなるため、1000℃以上とする。
熱間加工の累積圧下量:15%以上
熱間加工の累積圧下量が15%未満の場合、鋼素材中のセンターポロシティーなどの鋳造欠陥を圧着することができない。さらに、熱間加工中のオーステナイトの動的再結晶による合金元素の拡散効果が十分に得られないため、中心偏析が解消されず、溶接部の低温割れ性、板厚方向の延性低下を招く。
なお,板厚が80mmを超える極厚鋼板の場合には、センターポロシティー圧着のために1パスあたりの圧下率が5%以上となるパスを少なくとも1パス以上確保することが望ましい。
熱間加工の歪速度:0.05〜3/s
熱間加工の歪速度が0.05/s未満では、熱間加工中の温度低下により、所定の累積圧下量と温度下限を確保できず、さらに、製造能率の低下を招く。
一方、3/sを超えると、熱間加工中のオーステナイトの動的再結晶による合金元素の拡散効果が十分に得られないため、中心偏析が解消されず、溶接部の低温割れ性、板厚方向の延性低下を招くため、熱間加工の歪速度は0.05〜3/sとする。
尚、溶鋼から鋼素材を製造する際の鋳造条件は、金属組織中の粗大な非金属介在物は、溶接部の低温割れ性および板厚方向の延性低下を招くため、極力低減することが好ましく、面積分率で5%以下、最大円相当径100μm以下となるように調整することが望ましい。
なお、熱間加工には熱間鍛造、熱間圧延等、通常公知の方法を利用できるが、経済性、制御性等を考慮すると、熱間鍛造が好ましい。
熱間加工後、所望する機械的特性に応じて再加熱処理や焼戻しを単独または組み合わせて実施する。再加熱処理を行う場合は、Ac変態点以上の温度域に加熱する。加熱温度の上限については規定しないが,1100℃超えになると鋼板表面性状が劣化するため,好ましくは1100℃以下とする。
また,保持時間についても規定しないが,1hr超えになるとオーステナイト粒の粗大化により,母材の靭性が劣化するので1hr以内が望ましく,熱処理炉内の均熱が良ければ,短時間の保持でも良い。なお、Ac点(℃)は、化学組成との相関が概ね以下の式で整理できる。
Ac点(℃)=854−180C+44Si−14Mn−17.8Ni−1.7Cr
(ただし,C,Si,Mn,Ni,Cr:各合金元素の含有量(mass%))
熱間加工後、または再加熱後に焼もどし処理を施す場合は、400℃以上650℃以下に加熱する。母材の靭性および延性を向上させる効果を得るため,加熱温度は400℃以上とし、650℃を超えると母材強度が大幅に低下するため、400℃以上650℃以下とする。
尚、熱間加工終了後の冷却は、所望する機械的特性に応じて,空冷、加速冷却、水冷など、適宜選定する。
本発明では,熱間加工後に熱間圧延して所望の板厚の鋼板とし、得られた鋼板は所望する機械的性質に応じて、熱間圧延ままとしたり、再加熱処理や焼戻し処理を単独または組み合わせて施すことが可能である。
2.熱間圧延条件
再加熱温度:1000℃〜1250℃
熱間圧延のため、熱間加工後に1000℃〜1250℃で再加熱する。再加熱温度が1000℃未満では,熱間圧延での変形抵抗が高く,1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなることから,圧延パス数が増加し,圧延能率の低下を招くとともに,鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合が生じる。
一方,再加熱温度が1250℃を超えると,加熱時のスケールによって表面疵が生じやすく,圧延後の手入れ負荷が増大するため,1000〜1250℃とする。
圧延終了温度:750℃以上
圧延終了温度が750℃未満の場合,変形抵抗が高くなるため,圧延荷重が増大し,圧延機への負担が大きくなる。また,厚肉材を750℃未満の圧延温度まで低下させるためには,圧延途中で待機する必要があり,生産性を大きく阻害する。このため,圧延終了温度を750℃以上とする。
圧延ままとする場合、圧延終了後の冷却速度が60℃/sを超えると,鋼板位置による温度制御が困難となり,材質ばらつきが生じやすくなるため、60℃/s未満とすることが望ましい。冷却速度は板厚方向の各位置における冷却速度を平均した平均冷却速度とする。
3.熱処理条件
圧延終了後の熱処理は、1.Ac変態点以上の温度域に再加熱後、焼きならし、2.Ac変態点以上の温度域に再加熱後、焼入れ、または、3.圧延終了後の直接焼入れのいずれかとする。これらのいずれかの熱処理後、熱間加工後の焼戻し条件に準じて、適宜焼戻しを行う。
尚、熱間加工後に熱間圧延して得られた鋼板のミクロ組織は、所望する機械的特性に応じて施した熱処理によって,フェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイト等のいずれか、あるいは複相の混合組織が得られる。
転炉-取鍋精錬-連続鋳造法で、種々の成分組成に調製した厚さ310mmの鋼スラブ(鋼素材)を,種々の条件で熱間鍛造して鋼板とし、一部の鋼板には、熱間鍛造後、熱間圧延および/または熱処理を施した。表1に鋼板の成分組成を、表2に熱間鍛造、熱間圧延および熱処理条件を示す。
得られた鋼板の板厚1/2位置のC方向から,JIS4号引張試験片を採取し,JIS Z 2241(1998年)の既定に準拠して引張試験を実施し、引張特性を調査した。
母材靭性は各鋼板の板厚1/4位置のC方向から,JIS Z 2202(1998年)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242(1998年)の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギー(vE)を求めて評価した。
板厚方向の延性は各鋼板の板厚方向から,JIS G 3199(1992年)の規定に準拠して厚さ方向引張試験片(タイプb)を採取し、JIS Z 2241(1998年)の規定に準拠して引張試験を実施し、絞り値(R.A.)を求めて評価した。
さらに、各鋼板について,JIS Z 3158(1993年)に準拠して,y形溶接割れ試験を実施し,室温(25℃)におけるルート部割れ発生率を求めて溶接性を評価した。なお,供給ワイヤは,JIS Z 3212相当を使用した。
得られた結果を、表3に示す。発明例はいずれも,0℃でのシャルピー衝撃試験による吸収エネルギーが100J以上の高い靭性、板厚方向引張試験による絞り値がいずれも60%以上の高い延性が得られることが認められる。さらに、y形溶接割れ試験において,ルート部での割れは発生しない.
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、靭性、あるいは板厚方向の延性が目標値を満足しないか、y形溶接割れ試験において,ルート部で割れが発生する。
Figure 0005267048
Figure 0005267048
Figure 0005267048

Claims (9)

  1. 鋼組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.20%
    Si:0.05〜0.50%
    Mn:0.3〜3.0%
    P:0.03%以下
    S:0.005%以下
    Al:0.1%以下
    N:0.02%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とする熱間加工を施すことを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  2. 請求項1に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
    Ca:0.005%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とする熱間加工を施すことを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載した鋼組成に、質量%でさらに、
    Cu:0.01〜2.0%
    Ni:0.01〜3.0%
    Cr:0.01〜3.0%
    Mo:0.01〜3.0%
    Nb:0.1%以下、
    V:0.1%以下、
    Ti:0.05%以下、
    B:0.005%以下
    REM:0.02%以下
    Mg:0.005%以下
    の一種または二種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100〜1350℃に再加熱後、1000℃以上における熱間加工の歪速度を0.05〜3/s、累積圧下量15%以上とすることを特徴とする溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  4. 熱間加工後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  5. 熱間加工後、更に1000〜1250℃に再加熱することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  6. 再加熱後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする請求項5記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  7. 熱間加工後、更に1000〜1250℃に再加熱し、圧延終了温度が750℃以上となる熱間圧延を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  8. 熱間圧延後、更にAc変態点以上に再加熱することを特徴とする請求項7記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
  9. 再加熱後、更に400〜650℃で焼戻すことを特徴とする請求項8記載の溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法。
JP2008277842A 2008-10-29 2008-10-29 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法 Active JP5267048B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008277842A JP5267048B2 (ja) 2008-10-29 2008-10-29 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008277842A JP5267048B2 (ja) 2008-10-29 2008-10-29 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010106298A JP2010106298A (ja) 2010-05-13
JP5267048B2 true JP5267048B2 (ja) 2013-08-21

Family

ID=42296038

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008277842A Active JP5267048B2 (ja) 2008-10-29 2008-10-29 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5267048B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111020397A (zh) * 2020-01-16 2020-04-17 五矿营口中板有限责任公司 焊接性能良好的高强度高韧性正火q370桥梁钢板及生产方法

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102127719B (zh) * 2011-03-10 2012-11-14 东北大学 屈服强度500MPa级海洋平台结构用厚钢板及制造方法
JP5687946B2 (ja) * 2011-04-12 2015-03-25 株式会社神戸製鋼所 靭性に優れた高強度厚鋼板
JP5958113B2 (ja) * 2012-06-25 2016-07-27 Jfeスチール株式会社 スケール密着性に優れた厚鋼板の製造方法
WO2014141697A1 (ja) 2013-03-15 2014-09-18 Jfeスチール株式会社 厚肉高靭性高張力鋼板およびその製造方法
JP6086086B2 (ja) * 2014-03-19 2017-03-01 Jfeスチール株式会社 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
EP3120941B1 (en) 2014-03-20 2018-03-28 JFE Steel Corporation High toughness and high tensile strength thick steel plate and production method therefor
WO2015162939A1 (ja) * 2014-04-24 2015-10-29 Jfeスチール株式会社 厚鋼板及びその製造方法
CA2966476C (en) 2014-11-18 2020-05-12 Jfe Steel Corporation High toughness and high tensile strength thick steel plate with excellent material homogeneity and production method for same
KR101899682B1 (ko) * 2016-12-22 2018-09-17 주식회사 포스코 강도 및 저온 충격인성이 우수한 강재 및 그 제조방법
EP3633057B1 (en) * 2017-05-22 2022-05-04 JFE Steel Corporation Steel plate and method of producing same
CN109182916B (zh) * 2018-11-06 2020-02-18 鞍钢股份有限公司 一种风电用高性能特厚钢板及其生产方法
CN109338219B (zh) * 2018-11-06 2020-01-07 鞍钢股份有限公司 一种风电法兰用特厚钢板及其生产方法
CN111500926B (zh) * 2020-04-24 2021-07-13 建龙北满特殊钢有限责任公司 一种船用钢材料及其制造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3462922B2 (ja) * 1995-02-16 2003-11-05 新日本製鐵株式会社 強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP3383148B2 (ja) * 1996-04-10 2003-03-04 新日本製鐵株式会社 靱性に優れた高張力鋼の製造方法
JP2001081516A (ja) * 1999-09-17 2001-03-27 Nkk Corp 表面性状に優れたNi含有鋼の熱間圧延方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111020397A (zh) * 2020-01-16 2020-04-17 五矿营口中板有限责任公司 焊接性能良好的高强度高韧性正火q370桥梁钢板及生产方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2010106298A (ja) 2010-05-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5267048B2 (ja) 溶接性と板厚方向の延性に優れた厚鋼板の製造方法
JP5928654B2 (ja) 厚肉高靭性高張力鋼板およびその製造方法
JP5655984B2 (ja) H形鋼及びその製造方法
JP5573265B2 (ja) 引張強度590MPa以上の延靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5476763B2 (ja) 延性に優れた高張力鋼板及びその製造方法
JP5130796B2 (ja) 大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP6149368B2 (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP4730088B2 (ja) 低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5439973B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、pwht後の落重特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
WO2018199145A1 (ja) 高Mn鋼およびその製造方法
JP5659758B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、PWHT後の落重特性に優れたTMCP−Temper型高強度厚鋼板の製造方法
JP6183545B2 (ja) H形鋼及びその製造方法
JPWO2015093321A1 (ja) H形鋼及びその製造方法
CN111172464A (zh) 一种690MPa级建筑结构用耐火耐候钢板及其制造方法
JP5407478B2 (ja) 1層大入熱溶接熱影響部の靭性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP6056235B2 (ja) 溶接性および耐遅れ破壊特性に優れた引張強さ950MPa以上の高張力鋼板の製造方法
JP5200600B2 (ja) 高強度低降伏比鋼材の製造方法
JP2013108168A (ja) 溶接性および耐遅れ破壊特性に優れた引張強さ780MPa以上の高張力鋼板の製造方法
JP4770415B2 (ja) 溶接性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法
JP4924047B2 (ja) 表面残留応力の絶対値が150N/mm2以下の耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JP5477457B2 (ja) 板厚40mm以下の鋼構造用高強度低降伏比鋼材
JP5008879B2 (ja) 強度および低温靭性の優れた高張力鋼板および高張力鋼板の製造方法
JP5360185B2 (ja) 耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法
JPWO2019050010A1 (ja) 鋼板およびその製造方法
JP4144123B2 (ja) 母材および溶接熱影響部靱性に優れた非調質高張力鋼材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110824

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20120321

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20120327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130409

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130422

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5267048

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250