JP5258283B2 - 金属箔付基板、及びその作製方法 - Google Patents
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Description
このような金属パターンの作製方法としては、例えば、基板表面に接着剤層を形成し、この接着剤層の表面を粗化した後、貴金属イオンとアミノ系錯化剤とからなる錯体を触媒核として含有する触媒核含有処理液にて、触媒核の付与量を制御しつつ活性化処理を行い、次いで無電解めっきを施すことによって導体パターンを形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、導体パターンの密着性及び絶縁性を維持しつつ触媒付与工程の時間短縮化を図ることができる。
即ち、本発明の目的は、平滑性の高い樹脂層に対して密着性に優れためっき膜を有する金属箔付基板、及び、めっきを容易に行うことができ、平滑性の高い樹脂層との密着性に優れめっき膜が得られる金属箔付基板の作製方法を提供することにある。
即ち、本発明の金属箔付基板は、基板上に、下記条件1を満たす、下記式(1)で表されるユニットと下記式(2)で表されるユニットとを有する共重合体及びめっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層と、該樹脂層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有することを特徴とする。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
(上記式(1)及び式(2)中、R 1 〜R 5 は、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L 1 及びL 2 は、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
・金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面の、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下である態様。
・金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面構造がフラクタル状であり、ボックスサイズ(δ)を50nm〜5μm、ピクセル・サイズをボックスサイズの大きさの1/100以下に設定したボックスカウント法を適用して算出した該界面構造のフラクタル次元が1.05以上1.50以下である態様。
・めっき触媒又はその前駆体の金属元素が、Pd、Ag、Cu、Cr、Pt、Rh、Sn、及びNiからなる群より選択される1種である態様。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
・めっき触媒又はその前駆体の金属元素が、Pd、Ag、Cu、Cr、Pt、Rh、Sn、及びNiからなる群より選択される1種である態様。
<金属箔付基板、及びその作製方法>
本発明の金属箔付基板は、基板上に、下記1の条件を満たす、前記式(1)で表されるユニットと前記式(2)で表されるユニットとを有する共重合体及びめっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層と、該樹脂層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有することを特徴とする。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
このような金属箔付基板は、以下の本発明の金属箔付基板の作製方法により得られる。
以下、本発明の金属箔付基板の作製方法の各工程について詳細に説明する。
(a)工程では、基板上に、下記1の条件を満たす、めっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層を形成する。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
上記1の条件を満たすことで、後述の(b)工程で行われるめっきが効率よく行われ、更に、樹脂層表面に極微細な凹凸が形成され、(b)工程で形成されるめっき膜との間の密着性を高めることができる。
ここで、樹脂層表面に形成される極微細な凹凸としては、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上85nm以下であることがより好ましく、15nm以上60nm以下であることが更に好ましい。
条件2:樹脂層表面から深さ50nmの範囲内に、金属元素量換算で6×10−20mol/nm3〜60×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
条件3:樹脂層表面から深さ100nmの範囲内に、金属元素量換算で12×10−20mol/nm3〜120×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
上記条件2、3を満たすことで、金属(めっき膜)と樹脂(樹脂層)との界面の表面粗さRaを〜約100nmの範囲内で制御することが可能となる。Ra=5nm以上ならば充分な密着力を発現でき、Raが高いほうがより強密着となる。本発明の金属箔付基板は、充分に平滑であり、極めて低粗化なこと(10nm以下)を重視するのか、或いは、低粗化且つ強密着を重視するのか、など、プリント基板に適用した際の仕様に応じた選択が可能となる。
即ち、形成された樹脂層を有する試料(50mm角サイズ)を用意し、RBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)により、樹脂層中のめっき及びその前駆体の含有量を求める。RBSは、エネルギー2.0MeVのHe+イオンを試料面の法線に対し0°の角度で照射し、散乱されたHe+イオンを散乱角160°の位置で半導体検出器により検出する方法である。
なお、試料へのダメージを避けるため、1μCごとに照射位置をずらしながら測定を行い、シミュレーションフィッティングにより深さ方向分布量を求めた。
即ち、基板に化学結合した樹脂による樹脂層は、例えば、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いることで形成される。グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
これらの方法の中でも、より多くのグラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光による光グラフト重合法を用いて樹脂層を形成することが好ましい。
本発明における基板は、樹脂層が形成される程度の形状保持性を有していれば、特に制限なく用いることができ、作製される金属箔付基板の用途に応じて、適宜、決定すればよい。
また、(a)工程において、基板に化学結合した樹脂による樹脂層を形成する場合には、基板の表面が、樹脂が化学結合した状態を形成しうる機能を有するものであることが好ましく、基板自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、別途中間層(例えば、後述する重合開始層や密着補助層)を設け、該中間層がこのような特性を有する基板であってもよい。
本発明に使用される基板には、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が好ましく用いられる。本発明に使用される基板としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
ここに記載の基板は、中間層や重合開始層が形成される場合の基材として用いることもできる。また、基板が樹脂から構成される場合、形成される樹脂層と同素材であってもよい。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に樹脂層が形成された場合には、更に、後述する(b)工程を行うことで、両面にめっき膜が形成された金属箔付基板を得ることができる。
この重合開始層が形成される基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
密着補助層としては、基板及び形成される樹脂層との密着性が良好な樹脂組成物を用いて形成されることが好ましい。また、この密着補助層は、基板に化学結合した樹脂による樹脂層を形成する際の活性点を発生させる化合物を含んでいてもよいし、また、そのような活性点を発生させる部位と、基板と化学的な結合を形成しうる部位とを有する化合物を添加していてもよい。このような化合物を含むことで、密着補助層は、上記の重合開始層として機能することになる。
以下、基板が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
活性種を発生させる化合物の例としては、例えば、特開2007−154306公報の段落番号〔0043〕、〔0044〕に記載されている熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
ここで、密着補助層に含有させる重合開始剤の量は、固形分で0.1〜50質量%であることが好ましく、1.0〜30質量%であることがより好ましい。
この樹脂組成物を塗布液とする際に用いる溶媒は、密着補助層を構成する成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、特開2007−154306公報の段落番号〔0045〕に記載されている、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
上記のような硬化処理は密着補助層の形成後すぐにおこなってもよく、密着補助層形成後に5〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
なお、転写法を適用する場合には、樹脂層形成用塗布液から得られた層と、密着補助層との2層構成を有する転写積層体を作製し、ラミネート法によって一度に基板の表面に転写してもよい。
(a)工程において、基板に化学結合した樹脂による樹脂層を形成する方法としては、前述した如く、基板表面に存在する官能基と、高分子化合物がその末端又は側鎖に有する反応性官能基とのカップリング反応を利用する方法や、表面グラフト重合法を用いることができる。
また、本発明における樹脂層は、樹脂層中に触媒又は前駆体を固定化し、安定なめっき膜を形成するといった観点から、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基を有する樹脂を含有することが好ましく、中でも、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び重合性基を有する化合物を含む組成物により形成されることが好ましい。
以下、この好ましい態様の樹脂層について説明する。
なお、樹脂フィルムの両面に対して樹脂層を形成する場合にも、樹脂層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
本発明における相互作用性基及び重合性基を有する化合物中の重合性基は、エネルギー付与により、相互作用性基及び重合性基を有する化合物同士が反応する、及び/又は、相互作用性基及び重合性基を有する化合物と基板とが結合する官能基であり、具体的には、ビニル基である。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH2)n−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
また、本発明における相互作用性基としては、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒等への吸着性の点で好ましい。
相互作用性基及び重合性基を有するポリマーとしては、相互作用性基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーであることが好ましく、この相互作用性基及び重合性基を有するポリマーは、少なくとも主鎖末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
以下、相互作用性基として非解離性官能基を有する相互作用性基及び重合性基を有する化合物について詳細に説明する。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜、2−(3−ブロモ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体である。
なお、R1としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
R2としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
R3としては、水素原子が好ましい。
R4としては、水素原子が好ましい。
R5としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH2)n−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH2−である。
L1の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
また、式(3)におけるL1も、前記式(1)におけるL1と同義であり、好ましい例も同様である。
また、前記式(3)及び式(4)において、L1は、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
特に、式(5)においては、L2中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5)におけるL2中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合と、でその合成方法が異なる。
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合は、1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様と、1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様と、がある。
本発明において、ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様で用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
本態様に用いられる重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルブタンビニルエーテル、2−(メタ)アクリロイルエタンビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルプロパンビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシジエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイル1stテルピオネール、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−メチル−2−プロペン、1−(メタ)アクリロイロキシ−3−メチル−3−ブテン、3−メチレン−2−(メタ)アクリロイロキシ−ノルボルナン、4,4’−エチリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、メタクロレインジ(メタ)アクリロイルアセタール、p−((メタ)アクリロイルメチル)スチレン、アリル(メタ)アクリレート、2−(ブロモメチル)アクリル酸ビニル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アリル等が挙げられる。
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、2−シアノエチルビニルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、3−シアノプロピルビニルエーテル、4−シアノブチルビニルエーテル、1−(p−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(o−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(m−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(p−シアノフェノキシ)−3−ビニロキシ−プロパン、1−(p−シアノフェノキシ)−4−ビニロキシ−ブタン、o−シアノベンジルビニルエーテル、m―シアノベンジルビニルエーテル、p―シアノベンジルビニルエーテル、アリルシアニド、アリルシアノ酢酸や、以下の化合物等が挙げられる。
具体的には、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、塩化アルミ、臭化アルミ、四塩化チタン、四塩化スズ、臭化スズ、5フッ化リン、塩化アンチモン、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化鉄、ジクロロエチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム、クロロジメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリメチル亜鉛、メチルグリニアが挙げられる。
本発明において、ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
上記1−1)の態様で挙げた重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、7−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(3−(ブロモメチル)アクリルレート)、2−シアノエチル−(3−(ヒドロキシメチル)アクリルレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、1−ジメチル−1−エチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1―シアノシクロヘプチルアクリレート、2―シアノフェニルアクリレート、3―シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N―ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o―シアノエチルエーテル、アリル−m―シアノベンジルエーテル、アリル−p―シアノベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、上記モノマーの水素の一部を、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などで置換した構造を持つモノマーも使用可能である。
通常開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビル−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合は、2−1)両者がカチオン重合の態様と、2−2)両者がラジカル重合である態様と、がある。
両者がカチオン重合の態様には、シアノ基を有するモノマーとして、前記1−1)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
なお、重合中のゲル化を防止する観点から、シアノ基を有するポリマーを予め合成した後、該ポリマーと、カチオン重合性の重合性基を有する化合物(以下、適宜、「反応性化合物」と称する。)と、を反応させ、側鎖にカチオン重合性の重合性基を導入する方法を用いることが好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーと反応性化合物とは、以下のような官能基の組み合わせとなるように、適宜、選択されることが好ましい。
具体的な組み合わせとしては、(ポリマーの反応性基、反応性化合物の官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
即ち、アリルアルコール、4−ヒドロキシブタンビニルエーテル、2−ヒドロキシエタンビニルエーテル、3−ヒドロキシプロパンビニルエーテル、ヒドロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、1stテルピオネール、2−メチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチレン−2−ヒドロキシ−ノルボルナン、p−(クロロメチル)スチレンである。
両者がラジカル重合である態様では、合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
水酸基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH2=CRCOOCH2CH2[OC(=O)C5H10]nOH
(R=H又はMe、n=1〜5)
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
即ち、本発明における合成方法Aは、少なくとも溶媒中で、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL1中のウレタン結合を形成することを特徴とする。
CH2=CRCOOCH2CH2[OC(=O)C5H10]nOH (R=H又はMe、n=1〜5)
なお、合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
前記(I)の工程では、この市販品(混合物)を水に溶解して、水溶液を得る。
その後、水溶液(水層)から、この第1の有機溶剤と2官能アクリレートとを含む層(油層)を分離する。
ここで用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などの無機塩等が用いられる。
ここで用いられる第2の有機溶剤としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。この第2の有機溶剤は、前述の第1の有機溶剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(IV)の工程における濃縮には、無水硫酸マグネシウムによる乾燥や、減圧留去等が用いられる。
2官能アクリレートの含有量のより好ましい範囲は、単離物の全質量中に0.05質量%以下であり、少なければ少ないほどよい。
このように精製されたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることで、不純物である2官能アクリレートが重合反応に影響を及ぼし難くなるため、重量平均分子量が20000以上のニトリル基含有重合性ポリマーを合成することができる。
中でも、高分子量体を合成する観点から、エステル系溶媒であることがより好ましく、特に、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等のジアセテート系溶媒や、ジメチルカーボネートが更に好ましい。
ここで、本発明における溶媒のSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合成分全体に対し5〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10〜95mol%である。
他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、具体的には、アクリル樹脂骨格、スチレン樹脂骨格、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)骨格、メラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ポリエステル樹脂骨格、ポリウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリオレフィン骨格、ポリシクロオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル骨格、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの重合体)骨格、ポリアミド骨格、ポリアセタール骨格、ポリカーボネート骨格、ポリフェニレンエーテル骨格、ポリフェニレンスルファイド骨格、ポリスルホン骨格、ポリエーテルスルホン骨格、ポリアリレート骨格、ポリエーテルエーテルケトン骨格、ポリアミドイミド骨格などの主鎖骨格を形成しうるモノマーが挙げられる。
また、これらの主鎖骨格は、シアノ基含有ユニットや、重合性基含有ユニットの主鎖骨格であってもよい。
具体的には、ラジカル重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリルロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
ここに記載されている分子量及び重合度の好ましい範囲は、本発明において用いられるシアノ基含有重合性ポリマー以外の相互作用性基及び重合性基を有するポリマーに関しても好適な範囲である。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
また、例えば、前記具体例の化合物2−2−19は、以下のモノマーと、p−シアノベンジルアクリレートを、N、N−ジメチルアクリルアミドのような溶媒に溶解させ、アゾイソ酪酸ジメチルのような重合開始剤を用いてラジカル重合を行い、その後、トリエチルアミンのような塩基を用いて脱塩酸を行うことで合成することができる。
極性基を有していることによって、後述の(b)工程によりめっき膜が形成された後、例えば、保護層を設ける場合には、樹脂層と保護層との接触領域において密着力を向上させることができる。
なお、相互作用性基及び重合性基を有する化合物の組成物中の含有量は、組成物全体に対して、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤などが挙げられる。
この中でも、シアノ基含有重合性ポリマーを用いた組成物とする場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、シアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
また、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を、基板や重合開始層上に塗布する場合、基板や重合開始層の膨潤率が10〜45%となる溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、基板や、重合開始層を形成した基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の厚さの変化から求めることができる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BF3モノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
得られた樹脂層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
なお、基板上に、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を塗布し、乾燥させて、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
基板表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
また、相互作用性基及び重合性基を有する化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
なお、得られた樹脂層が、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該樹脂層に対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
第1の方法として、例えば、基板表面に化学結合した樹脂による樹脂層に、触媒元素(めっき触媒又はその前駆体)と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する方法がある。
このめっき触媒液を、樹脂層に対して付与することにより、樹脂層表面に、相互作用性基が存在していれば、その相互作用性基に対し触媒元素が付着(吸着)する。
触媒元素としては、活性核になるものや、電極として機能しうるものであれば、特に制限されず、例えば、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
触媒元素のめっき触媒液中の存在形態である金属コロイドは、一般に、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
めっき触媒液中における水と有機溶剤との含有割合は、水:有機溶剤=0:100〜95:5の範囲であることが好ましく、特に、触媒元素が樹脂層に対して付着する速度が速くなるといった観点から、水に対して有機溶剤を多くした方がよく、具体的には、水:有機溶剤=0:100〜20:80の範囲がより好ましく、0:100〜40:60の範囲が更に好ましい。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、めっき触媒液中の触媒元素濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
本発明においては、所定の濃度のめっき触媒又はその前駆体と、樹脂と、を含む塗布液を調製し、この塗布液を、基板上に塗布・乾燥することで樹脂層を形成してもよい。
この塗布液に用いられる樹脂としては、特に制限されないが、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基であるシアノ基を有するものである。
また、塗布液に用いられるめっき触媒又はその前駆体としては、前述のめっき触媒液に用いられるものと同様のものが挙げられる。このめっき触媒又はその前駆体の含有量は、前記条件1を満たすような量であればよい。
更に、塗布液を調製する際に用いられる溶剤としては、アセトン、MEK、アセトニトリル、プロピオニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
また、塗布方法に制限されないが、例えば、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法などが挙げられる。
ここで、形成される樹脂層の厚みは前記条件1のために25nm以上であればよいが、膜強度及び複合材料としての機械的強度を保持するという観点から、0.1μm〜10μmの範囲であることが好ましく、0.2μm〜5μmの範囲であることがより好ましい。
(b)工程では、前述の(a)工程で形成された、めっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層に対してめっきを行う。これにより、樹脂層内部及び上部にめっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(a)工程において形成された樹脂層中のめっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、樹脂層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき膜を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、(a)工程で得られた樹脂層を有する基板を、水洗して余分な触媒元素(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、樹脂層中に触媒元素が金属イオン状態で含有されている場合には、還元剤を含有する無電解めっき浴が用いられる。このような無電解めっき浴を用いることで、金属イオンの還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。
なお、金属イオンの還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、金属イオンを0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
なお、本発明においては、環境負荷を抑制する観点から、水系の無電解めっき浴を用いることが好ましい。ここで、本発明における水系の無電解めっき浴とは、液状成分として水(蒸留水)を50質量%以上含むものを示す。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO4、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH3)4)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
本工程おいては、(a)工程において、樹脂層中に含有される触媒元素が電極としての機能を有する場合、その樹脂層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板(樹脂層)との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、得られた金属箔付基板を種々の応用に適用することができる。
即ち、金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面の、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下であることが好ましい。また、低粗化と強密着の双方を重視する場合、算術平均粗さRaは10nm以上80nm以下がより好ましく、15nm以上60nm以下が更に好ましい。
なお、この方法では、視野の大きさに相当するボックスサイズ及び分解能に相当するピクセル・サイズの相違により、算出されるフラクタル次元に変動が生じるが、本発明においては、樹脂層表面に必要とされる、微細な表面凹凸形状と高周波特性に影響を与えない平滑性とを考慮して、フラクタル次元を求めるに際してボックスサイズ(δ)を50nm〜5μm、ピクセル・サイズをボックスサイズの大きさの1/100以下の範囲に規定している。
この(c)エッチング工程について以下に説明する。
(c)工程では、本発明の金属箔付基板の作製方法により得られためっき膜(金属箔)をパターン状にエッチングすることで、めっき膜の不要部分が取り除かれ、所望の金属パターンを得ることができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
樹脂層をパターン状に形成する方法としては、表面グラフト法を用いて樹脂層を形成した場合には、樹脂層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状の樹脂層を形成することができる。
なお、現像方法としては、樹脂層を形成するために用いられる材料(例えば、相互作用性基及び重合性基を有する化合物など)を溶解しうる溶剤に浸漬することで行われる。浸漬する時間は1分〜30分が好ましい。
また、パターン状の樹脂層は、グラビア印刷法、インクジェット法、マスクを用いたスプレーコート法など公知の塗布方法で直接パターニングした後、エネルギー付与し、その後、現像することで形成してもよい。
更に、めっき触媒又はその前駆体と樹脂とを含有する塗布液を用いて、パターン状の樹脂層を形成する場合には、グラビア印刷法、インクジェット法、マスクを用いたスプレーコート法など公知の塗布方法で直接パターニングし、その後、乾燥させることで形成することができる。
パターン形成した樹脂層上にめっき膜を形成するための(b)工程は、前述の方法と同じである。
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材を得た。
ついで、基材の上に、下記組成の重合開始剤を含有する絶縁性組成物を厚さ3ミクロンになるようにスピンコート法で塗布し、30℃にて1時間放置して溶剤を除去した後、140℃で30分乾燥して重合開始層(絶縁性の重合開始層)を形成した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828)20質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−673)45質量部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、大日本インキ化学工業(株)製フェノライト)30質量部を、エチルジグリコールアセテート20部、及びソルベントナフサ20部に、攪拌しながら加熱溶解させ室温まで冷却した後、そこへ前記エピコート828とビスフェノールSとからなるフェノキシ樹脂のシクロヘキサノンワニス(油化シェルエポキシ(株)製YL6747H30、不揮発分30質量%、重量平均分子量47000)30質量部、2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール0.8質量部、微粉砕シリカ2質量部、シリコン系消泡剤0.5質量部を添加し、更にこの混合物中に、下記の方法で合成した重合開始ポリマーPを10部添加し、重合開始剤を含有する絶縁性組成物を得た。
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75度に加熱した。そこに、[2−(Acryloyloxy)ethyl](4−benzoylbenzyl)dimethyl ammonium bromide8.1gと、2−Hydroxyethylmethaacrylate9.9gと、isopropylmethaacrylate13.5gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.43gと、MFG30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80度に上げ、更に2時間反応させ、重合開始基を有するポリマーPを得た。
(相互作用性基及び重合性基を有するポリマーAの合成)
まず、下記のようにして、相互作用性基及び重合性基を有するポリマーAを合成した。
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、V−601(和光純薬製)0.65gのN,N−ジメチルアセトアミド35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、N,N−ジメチルアセトアミド19gを加え、55℃、4時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1で再沈を行い、固形物を取り出し、相互作用性基及び重合性基を有するポリマーA(重量平均分子量1.5万)を32g得た。
相互作用性基及び重合性基を有するポリマーA:10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、及びN,Nジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
調製された塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、660秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面にグラフトポリマーを生成させた。ここで、積算露光量は990mJであった。
これにより、厚さ1.0μmの樹脂層を有する基板A2を得た。
アセトン100gに硝酸パラジウム0.05gを添加し、常温にて30分攪拌した。得られた硝酸パラジウム分散液の粗大粒子を除去するために、0.75μmPTFEフィルター(Advatec社製)に通し、粗大粒子を除去した。これにより、平均粒径6.8nmの硝酸パラジウム溶液を得た。なお、粒径測定はナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)社製)にて測定した。
樹脂層を有する基板A2を、前述の硝酸パラジウム溶液に20分間浸漬した後、アセトンに3分間浸漬し、更に蒸留水に3分浸漬し、洗浄を行なった。
上記のようにしてめっき触媒が付与された樹脂層中のめっき触媒の含有量について、50mm角サイズの試料を作製し、前述のようにRBSを用いて測定した。
測定結果を表1に示す。
上記のようにして、めっき触媒が付与された樹脂層を有する基板A2に対し、スルカップPGT(上村工業(株) 製;スルカップPGT−A液、B液、C液)を使用した、下記組成の無電解めっき浴を用い、26℃で10分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは約0.2μmであった。
・蒸留水 79.2vol%
・スルカップPGT−A液(上村工業(株) 製) 9.0vol%
・スルカップPGT−B液(上村工業(株) 製) 6.0vol%
・スルカップPGT−C液(上村工業(株) 製) 3.5vol%
・ホルマリン液(和光純薬(株)社製 特級品) 2.3vol%
以上の組成のめっき浴のpHを、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.6(25℃)に調整した。
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dm2の条件で、電気めっきを18分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは10μmであった。
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・蒸留水 500g
(引き剥がし強度)
得られためっき膜に対して、JIS C 6481(1996年)のプリント配線板用銅張積層板試験に記載の方法にて、90°引き剥がし試験を行なった。試験機は(株)島津製作所製のオートグラフAGS−Jを使用し、引き剥がす銅箔の幅は10mm、引き剥がし速度は毎分50mmとした。
結果を下記表1に示す。
金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面の、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さRa、及び、フラクタル次元について、以下のようにして測定した。
金属箔付基板の断面構造写真を取るために、Dual−Beam FIB装置(FEI製、Dual Beam Nova200 Nanolab、加速電圧30kV)を用いてサンプル加工し、銅めっき膜と樹脂層との界面の断面出しを行なった。その断面を集束イオンビーム装置(セイコーインスツルメンツ社製、SMI9200)にて観察し、1ピクセルの大きさが5nmのビット・マップデータとして得た。画像処理により、断面写真の銅めっき膜と樹脂層との界面部分(線分)を抽出した。算術平均粗さRaは、JIS B 0633(1994年)をもとに、フラクタル次元(ボックスカウント次元)はボックスカウント法を用いて算出し、微細領域での構造の複雑さを評価できるよう、領域のサイズを640nm×640μm(128pixel×128pixel)とした。
測定結果を下記表1に示す。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、ポリマー層を有する基板A2を、前述の硝酸パラジウム溶液に5分間浸漬した後、アセトンに3分間浸漬し、更に蒸留水に3分浸漬し、洗浄を行なった以外は、実施例1と同様にして、めっき触媒が付与された樹脂層を形成した。得られた樹脂層中のめっき触媒の含有量を、実施例1と同様にして測定した結果を下記表1に示す。
また、得られた樹脂層に対して、実施例1と同様にて無電解めっき及び電気めっきを行ない、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
得られた金属膜付基板について、実施例1と同様にして、引き剥がし強度、算術平均粗さRa、及び、フラクタル次元を測定した。これらの結果も下記表1に示す。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、アセトン100gに対する硝酸パラジウムの割合を0.20gに変えた以外は、実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、水/アセトンを質量比50/50で混合した液100gに、硝酸パラジウム0.20gを添加した以外は、実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、水/アセトンを質量比70/30で混合した液100gに、硝酸パラジウム0.20gを添加した以外は、実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、アセトン100gにベンゾニトリルジクロロパラジウム0.05gを添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、アセトン100gに硫酸パラジウム0.05gを添加した以外は、実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]において、アセトン100gに対する硝酸パラジウムの割合を1.0gに変えた以外は実施例1と同様にして、厚み10μmの銅めっき膜を有する金属箔付基板を得た。
実施例1の[めっき触媒の付与]で、水/アセトンを質量比70/30で混合した液100gに硝酸パラジウム0.02gを添加したものを用いた以外は、実施例1と同様にしたが、無電解めっきによるめっき膜の析出が確認できなかった。
なお、これは、樹脂層に付着した硝酸パラジウム量が極少量であることから、めっき成長速度(めっき核の生成速度)が著しく遅くなったためと考えられる。そのため、無電解めっき時間を、例えば、30分以上と長くすれば、実施例ほどの均一性には欠けるがめっき膜が得られる。
また、実施例3〜実施例7、及び比較例1で得られた金属膜付基板について、実施例1と同様にして、引き剥がし強度、算術平均粗さRa、及び、フラクタル次元を測定した。
これらの測定結果も下記表1に併記する。
比較例1は、めっき触媒の樹脂層中の含有量が多すぎて、算術平均粗さRaが小さくなり、引き剥がし強度が著しく低下していることが分かる。
Claims (6)
- 基板上に、下記条件1を満たす、下記式(1)で表されるユニットと下記式(2)で表されるユニットとを有する共重合体及びめっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層と、該樹脂層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有することを特徴とする金属箔付基板。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
(上記式(1)及び式(2)中、R 1 〜R 5 は、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L 1 及びL 2 は、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。) - 金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面の、JIS B 0601(2001年)に規定される算術平均粗さRaが5nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔付基板。
- 金属箔付基板をその法線方向に割断した際に現れる樹脂層とめっき膜の界面構造がフラクタル状であり、ボックスサイズを50nm〜5μm、且つ、ピクセル・サイズをその1/100以下に設定したボックスカウント法を適用して算出した該界面構造のフラクタル次元が1.05以上1.50以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属箔付基板。
- 前記めっき触媒又はその前駆体の金属元素が、Pd、Ag、Cu、Cr、Pt、Rh、Sn、及びNiからなる群より選択される1種であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属箔付基板。
- (a)基板上に、下記条件1を満たす、下記式(1)で表されるユニットと下記式(2)で表されるユニットとを有する共重合体及びめっき触媒又はその前駆体を含む樹脂層を形成する工程と、
(b)該樹脂層に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とする金属箔付基板の作製方法。
条件1:樹脂層表面から深さ25nmの範囲内に、金属元素量換算で3×10−20mol/nm3〜30×10−20mol/nm3の範囲でめっき触媒又はその前駆体を含むこと
(上記式(1)及び式(2)中、R 1 〜R 5 は、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L 1 及びL 2 は、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。) - 前記めっき触媒又はその前駆体の金属元素が、Pd、Ag、Cu、Cr、Pt、Rh、Sn、及びNiからなる群より選択される1種であることを特徴とする請求項5に記載の金属箔付基板の製造方法。
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