織機運転の高速化に伴って、遊星耳組装置による耳経糸の開口運動およびキャッチコード開口装置によるキャッチコードの開口運動は、安定した織機運転を実現するために、より正確な開口運動のタイミングが要求される。詳説すると、織機運転が高速化し、緯糸の飛走速度がより高速化されるのに伴って、同一糸種であっても緯糸の物性の変化等が大きく影響するため、緯糸の飛走速度は緯入毎にバラツキが大きくならざるを得ない。
そのため、例えば、キャッチコードの開口運動の閉口タイミングは、織機主軸回転角350°が最適タイミングであり、今まで織機主軸回転角350°±5°の範囲に設定されていれば、緯糸はキャッチコードによって把持され適度な張力が付与されていたのが、緯糸の飛走速度は織機の高速化に伴って緯入毎のバラツキが大きくなり、織機主軸回転角350°±3°の範囲に設定される必要がある。即ち、緯糸の飛走速度のバラツキが大きくなって緯糸の飛走速度の低い緯入では、キャッチコードの開口運動の閉口タイミングが、織機主軸回転角345°に設定されていると、早すぎて、緯糸はキャッチコードによって飛走が妨げられ、緯入ミスを生じる場合がある。従って、キャッチコードの閉口タイミングは、織機の軸回転角345°よりも遅い時期に設定される必要がある。また緯糸の飛走速度が高い緯入では、織機主軸回転角355°に設定されていると、遅すぎて、キャッチコードは飛走終了から時間が経過して弛んだ状態の緯糸を把持するので、緯糸に十分な張力が付与されず弛んだ端部の織布となる場合がある。従って、キャッチコードの閉口タイミングは、織機主軸回転角355°よりも早い時期に設定される必要がある。
同様に、耳経糸の開口運動においても、閉口タイミングの高精度化が要求される。例えば、耳経糸の開口運動の閉口タイミングは、今まで織機主軸回転角20°が最適タイミングであり、織機主軸回転角20°±5°の範囲に設定されていれば、適度に締まった耳が織布端部に形成されていたのが、織機運転の高速化に伴って、織機主軸回転角20°±3°の範囲に設定される必要がある。耳経糸の開口運動の閉口タイミングが織機主軸回転角15°に設定されていると、早すぎることになり、キャッチコードが十分に把持する前に耳経糸が緯糸を把持する場合がある。そのため、その後のキャッチコードの緯糸把持によって緯糸が引っ張られて織布に所謂緯ヒケが生じることがある。また、耳経糸の開口運動の閉口タイミングが織機主軸回転角25°に設定されていると、遅すぎることになる。キャッチコードによる屈曲によって生ずる摩擦力は緯糸端がフリー状態であるため弱く、緯糸は摩擦力に抗してキャッチコードを容易に滑って弛んだ状態となる。そのため、耳経糸による把持が遅れると、耳経糸は弛んだ状態の緯糸を把持することになる。その場合、弛んだ耳が織布端部に形成されることになり、好ましくない。
また、織機運転の高速化に対応して、開口運動量をできるだけ小さくし、それにより開口運動の負荷を抑えること、迅速な開口運動を実現することが求められている。開口運動量をできるだけ小さくし織機運転の高速化に対応するためにも、遊星耳組装置による耳経糸の開口運動およびキャッチコード開口装置によるキャッチコードの開口運動は、より正確に最適タイミングに設定されることが求められる。
特許文献1に記載される流体噴射式織機では、遊星耳組装置の開口運動のタイミングは、小径歯車と大径歯車とを噛み合わせた状態で、駆動軸を静止状態に維持しながら小径歯車を回転させ、駆動軸に対する小径歯車の位相を調整することにより調整される。これにより、織機の主軸に連動して回転する駆動軸と支持体との位相、即ち小径歯車と大径歯車とを含む回転伝達機構を介して互いに連結される駆動軸と支持体との連結位相が調整され、耳経糸の開口運動のタイミングが、織機の主軸回転角を基準として調整される。また、キャッチコード開口装置におけるキャッチコードの開口運動のタイミングは、支持体の一方の側面にボルトによって固定されているカムを支持体に対して回転させ、再度、カムを支持体に固定することにより変更される。これにより、カム、カムボール、第1のレバー、第2のレバー、連結リンク、第1の軸および第2の軸を含む運動変換機構を介して互いに連結される駆動軸と第1のレバーとの連結位相、および駆動軸と第2のレバーとの連結位相が変更される。
上記のように、特許文献1に記載される流体噴射式織機では、キャッチコード開口装置におけるキャッチコードの開口運動のタイミングは、カムを支持体に対して回転させて再度、支持体に固定することにより変更される。キャッチコード開口装置は、カムが支持体の一方の側面に固定されており、基になる遊星耳組装置の耳経糸の開口運動のタイミングが変更されると、キャッチコードの開口運動のタイミングが変更されてしまう。従って、製織条件の変更に伴い、遊星耳組装置とキャッチコード開口装置とのうち、遊星耳組装置の耳経糸の最適開口運動のタイミングのみが変化した場合、また両開口運動のタイミングを変更したが良くなく、更に耳経糸の開口運動のタイミングのみを微調整する必要がある場合等、耳経糸の開口運動のタイミングのみを変更したい場合には、開口運動のタイミングの変更は面倒な作業となる。即ち、耳経糸の開口運動のタイミングの調整後に、更に、キャッチコードの開口運動のタイミングを調整する必要がある。
また、支持体の大径歯車は駆動軸に固定される小径歯車と噛み合っており、支持体は駆動軸に対し減速回転されている。そのため、駆動軸は、減速比に対応し、織機の主軸の1/2回転速比を大巾に上回る回転速度、例えば、減速比が1/2の場合は支持体の回転速度の2倍の回転速度、即ち織機の主軸と同一回転速度で、織機モータまたは駆動軸用の専用モータによって駆動される。一方、織布幅の変更に伴って遊星耳組装置、キャッチコード開口装置は織り幅方向位置を変更する必要があるため、両装置の織り幅方向位置の変更に対応して、駆動軸は織り幅方向に延在する長尺物であり、慣性モーメントが大きい。慣性モーメントの大きい駆動軸が、上述のように、高速回転する、例えば織機の主軸と同一回転速度で回転するため、織機起動時の加速や製織中に織機回転数が変更されて加減速される場合には、低速回転する場合と比較し、回転数が高い分、急激な加減速となるため、駆動軸は捩れが大きくなる。そのため、耳経糸の開口運動のタイミング、およびキャッチコードの開口運動のタイミングは、織機主軸回転角を基準として、最適タイミングから外れることになり、緯入ミス等が生じて、織機運転は不安定とならざるを得ない。
以上の従来技術の問題点を鑑み、本発明の目的は、織機の高速運転に対応可能な遊星耳組装置とキャッチコード開口装置とを有する流体噴射式織機を提供する。
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、織機の反緯入側において織り幅方向位置を調整可能にそれぞれ支持される遊星耳組装置とキャッチコード開口装置とを有し、遊星耳組装置は、フレームと、遊星歯車を支持する支持体が固定される回転軸であって太陽歯車と同軸にフレームに回転可能に設けられる回転軸とを備え、キャッチコード開口装置は、キャッチコードが挿通される挿通孔を先端に有し互いに逆方向に揺動する第1および第2のスイングレバーを備える流体噴射式織機において、織り幅方向に延在し織機の主軸の1/2回転速比で回転する駆動軸を設け、回転伝達機構を介し前記駆動軸によって前記回転軸を回転させると共に、運動変換機構を介し前記駆動軸によって前記スイングレバーを揺動させ、前記回転伝達機構は、前記駆動軸の軸線方向に位置変更可能に前記駆動軸に固定される第1の歯付回転部材と、該第1の歯付回転部材と同一歯数に形成され前記回転軸に固定される第2の歯付回転部材とを含むと共に、前記回転軸の前記駆動軸に対する連結位相を変更可能に設けられ、前記運動変換機構は、前記スイングレバーを揺動させるための回転部材であって前記軸線方向に位置変更可能に前記第1の歯付回転部材とは互いに独立して前記駆動軸に固定される回転部材を含むと共に、前記スイングレバーの前記駆動軸に対する連結位相を変更可能に設けられる。
連結位相とは、駆動伝達機構によって機械的、または電気的に互いに連結される2つの部材の位相関係を言う。即ち、遊星耳組装置においては、回転伝達機構を介して駆動軸と回転軸とが機械的に互いに連結されており、この駆動軸と回転軸との位相関係を言う。また、キャッチコード開口装置においては、運動変換機構を介して駆動軸とスイングレバーとが機械的に互いに連結されており、この駆動軸とのスイングレバーとの位相関係を言う。以下詳説する。
駆動軸は、織機の主軸の1/2回転速比で回転し、織機の主軸が2回転する間に1回転する。そして、遊星耳組装置においては、回転軸は回転伝達機構として同一歯数の第1および第2の歯付回転部材を介して駆動軸によって回転されており、回転軸は駆動軸が1回転する間に1回転して耳経糸を保持する支持体を1回転させる。一方、キャッチコード開口装置においては、各スイングレバーは運動変換機構を介し駆動軸によって上下方向に揺動し、駆動軸が1回転すると各スイングレバーはそれぞれ1往復揺動する。
遊星耳組装置においては、駆動軸が1回転し、それに伴って回転軸および支持体が1回転することにより、各耳経糸が1往復して開口運動を行う。従って、駆動軸および回転軸については、その1回転が1周期とみなすことができ、所定の基準時(例えば、織機の主軸の回転角が0°のとき)を起点とした1回転(1周期)中の回転角をそれぞれの位相とみなすことができる。そして、駆動軸の位相がα1のときの回転軸の位相をβ1、駆動軸の位相がα2のときの回転軸の位相をβ2とすると、この位相α1とβ1、位相α2とβ2の関係が駆動軸と回転軸との連結位相となる。なお、前述のように、駆動軸と回転軸とは機械的に互いに連結されて同じ回転数で回転するため、連結状態では両者の連結位相は一定の関係に維持される。
また、キャッチコード開口装置におては、駆動軸が1回転するのに伴って各スイングレバーが1往復する。従って、スイングレバーは、駆動軸の1周期中に1往復するものであり、1往復を1周期とみなし、その1周期中の前記基準時からの変位量を位相とみなすことができる。そして、駆動軸の位相がα1のときのスイングレバーの位相をγ1、駆動軸の位相がα2のときのスイングレバーの位相をγ2とすると、この位相α1とγ1、位相α2とγ2との関係が駆動軸とスイングレバーとの連結位相となる。また、回転軸の場合と同様に、駆動軸とスイングレバーとは機械的に互いに連結されており、駆動軸が1回転することでスイングレバーが1往復するものであるため、連結状態では両者の連結位相は一定の関係に維持される。
また、遊星耳組装置における回転軸の駆動軸に対する連結位相の変更とは、前記のように駆動軸と回転軸との連結位相(位相関係)がα1:β1、α2:β2となっているものを、駆動軸の位相を維持したまま一方の連結位相、例えばα1:β1をα1:β1’(≠β1)に変更ことや、回転軸の位相を維持したまま、一方の連結位相、例えばα1:β1をα1’(≠α1):β1に変更することをいう。駆動軸の位相を維持したまま一方の連結位相を変更するのに伴い、他方の連結位相はα2:β2’(≠β2)に変更される。また、回転軸の位相を維持したまま一方の連結位相を変更するのに伴い、他方の連結位相はα2’(≠α2):β2に変更される。そして、その変更に伴い、耳経糸の開口運動のタイミングが調整される。なお、その変更について具体的には、例えば、次のような方法によって実現できる。
駆動軸を静止状態とし、駆動伝達機構による駆動軸と回転軸との連結状態を解除して回転軸を回転可能とした上で、回転軸を回転して位相を変更することにより、駆動軸と回転軸との連結位相を変更する。その際、回転軸の位相を進める、即ち織機運転時の回転方向に回転軸を回転させると、耳経糸の開口運動のタイミングが早くなる方に、駆動軸と回転軸との連結位相は変更される。また回転軸の位相を遅らせる、即ち回転軸を上記方向の逆方向に回転させると、耳経糸の開口運動のタイミングが遅くなる方に、連結位相は変更される。
一方、キャッチコード開口装置におけるスイングレバーの駆動軸に対する連結位相の変更とは、前記のように駆動軸とスイングレバーとの連結位相(位相関係)がα1:γ1、α2:γ2となっているものを、駆動軸の位相を維持したまま一方の連結位相、例えばα1:γ1をα1:γ1’(≠γ1)に変更ことや、スイングレバーの位相を維持したまま、一方の連結位相、例えばα1:γ1をα1’(≠α1):γ1に変更することをいう。駆動軸の位相を維持したまま一方の連結位相を変更するのに伴い、他方の連結位相はα2:γ2’(≠γ2)に変更される。また、スイングレバーの位相を維持したまま一方の連結位相を変更するのに伴い、他方の連結位相はα2’(≠α2):γ2に変更される。そして、その変更に伴い、キャッチコードの開口運動のタイミングが調整される。なお、その変更について具体的には、例えば、次のような方法によって実現できる。
駆動軸を静止状態とし、運動変換機構による駆動軸と各スイングレバーとの連結を解除して各スイングレバーを揺動可能とした上で、スイングレバーを揺動して各スイングレバーの位相を変更することにより、駆動軸と各スイングレバーとの連結位相を変更する。その際、各スイングレバーの前記挿通孔がワープライン上、またはワープライン近傍に位置させた状態で、スイングレバーを揺動して各スイングレバーの位相を進める、即ち織機運転時の揺動方向にスイングレバーを揺動させると、キャッチコードの開口運動のタイミングが早くなる方に、駆動軸と各スイングレバーとの連結位相は変更される。また各スイングレバーの位相を遅らせる、即ちイングレバーを上記方向の逆方向に揺動させると、キャッチコードの開口運動のタイミングが遅くなる方に、連結位相は変更される。
また、好適な実施形態においては、第1の歯付回転部材が前記駆動軸に対する位相を変更可能に設けられることにより、前記回転伝達機構は前記回転軸の前記駆動軸に対する連結位相を変更可能に設けられる。
さらに、好適な実施形態においては、前記回転部材が前記駆動軸に対する位相を変更可能に設けられることにより、前記運動変換機構は前記スイングレバーの前記駆動軸に対する連結位相を変更可能に設けられる。
回転伝達機構に含まれる第1の歯付回転部材と、運動変換機構に含まれスイングレバーを揺動させるための回転部材とは、互いに独立して前記駆動軸に固定される。また、耳経糸およびキャッチコードの開口運動のタイミング調整作業は、駆動軸を静止状態に維持してそれぞれ行われる。従って、タイミング調整作業の際、耳経糸の開口運動のタイミング調整によって回転部材が回転して、そのためキャッチコードの開口運動のタイミングが変化すること、およびキャッチコードの開口運動のタイミング調整によって第1の歯付回転部材が回転して、そのため耳経糸の開口運動のタイミングが変化することが、共に避けられる。よって、耳経糸およびキャッチコードの開口運動の各タイミング調整は、織機の高速運転に対応して、最適タイミングに精度良く、かつ容易に調整することが可能となる。
また、駆動軸は織布幅の変更に対応するために織り幅方向に延在して長尺物であり、慣性モーメントが大きくならざるを得ない。駆動軸は、遊星耳組装置とキャッチコード開口装置とで共通で1つのみ設けられ、しかも従来と異なり織機の主軸の1/2回転速比で回転し従来よりも格段に低速回転する。そのため、駆動軸は、織機起動時の加速や製織中に織機回転数を変更され加減速される場合には、従来のように高速回転する場合と比較し、回転数が低い分、緩やかな加速や加減速となるため、駆動軸は捩れが抑えられる。そのため、耳経糸の開口運動のタイミング、およびキャッチコードの開口運動のタイミングは、織機主軸回転角を基準として、最適タイミングに維持されることになり、安定した織機運転が可能となる。
また、織機起動時、織機モータまたは駆動軸用の専用モータは、定常運転時の出力を大きく上回る出力容量が必要であり、織機運転の高速化に伴って、モータは大型化せざるを得ない。しかし、駆動軸は織機の主軸の1/2回転速比であり、従来よりも格段に低速回転されるので、長尺物であり慣性モーメントが大きい駆動軸は、織機起動時の負荷が軽減される。従って、駆動軸を織機の主軸の1/2回転速比で回転させることは、織機運転の高速化に伴うモータの大型化を抑える手段の1つとなる。
また、好適な実施例においては、第1の歯付回転部材が駆動軸に対する位相を変更可能に設けられていれば、織布幅の変更に伴う作業を効率よく実行できる。詳説すると、織布幅の変更に伴って、第1の歯付回転部材は、駆動軸の軸線方向に位置変更されて駆動軸に固定される。織布幅の変更に伴って、緯入長さの変更のほか織機回転数の変更等、製織条件が変更されるため、耳経糸の開口運動の最適タイミングは変化し調整が必要となる。このように、第1の歯付回転部材が駆動軸に対する位相を変更可能に設けられていれば、駆動軸に対し、第1の歯付回転部材は軸線方向位置調整と連結位相変更による耳経糸の開口運動のタイミング調整とが、同時に可能となり、作業効率が向上する。また、第1の歯付回転部材は、両調整作業の途中で駆動軸に固定されたり固定を解除されたりする必要がなく、両調整作業が終了する際に初めて駆動軸に固定されるので、この点からも作業効率が向上する。
さらに、好適な実施例においては、回転部材が駆動軸に対する位相を変更可能に設けられていれば、織布幅の変更に伴う作業が効率よく実行できる。詳説すると、織布幅の変更に伴って、回転部材は、駆動軸の軸線方向に位置変更されて駆動軸に固定される。織布幅の変更に伴って、緯入長さの変更のほか織機回転数の変更等、製織条件が変更されるため、キャッチコードの開口運動の最適タイミングは変化し調整が必要となる。このように、回転部材が駆動軸に対する位相を変更可能に設けられていれば、駆動軸に対し、回転部材は軸線方向位置調整と位相変更によるキャッチコードの開口運動のタイミング調整とが、同時に可能となり、作業効率が向上する。また、回転部材は、両調整作業の途中で駆動軸に固定されたり固定を解除されたりする必要がなく、両調整作業がする際に初めて駆動軸に固定されるので、この点からも作業効率が向上する。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の流体噴射式織機は、水噴射式織機または空気噴射式織機であり、織機の両側、即ち緯入側と反緯入側とに遊星耳組装置110がそれぞれ配設される。反緯入側には、遊星耳組装置110に隣接してキャッチコード開口装置100が配設される。
図1は、織機の中央から織り幅方向に反緯入側に視た遊星耳組装置110、キャッチコード開口装置100の立面図を示し、遊星耳組装置110、キャッチコード開口装置100のほか、筬50、キャッチコードCに把持されている緯糸Yを切断する緯糸カッター装置25、およびキャッチコードCを仮撚する仮撚スピンドル装置26を示す。キャッチコード開口装置100は、経糸列Wに隣接して外側に設けられ、織布Tの織前CFよりも送出側に設けられる。図2は図1に描かれる装置の平面図を示す。図3は、図1に描かれる装置の平面図を示し、遊星耳組装置110は一部を削除して示される。図3では、キャッチコード開口装置100は、重なって見えない部材を示すため、ピン34と第2の軸2との間において、上下方向長さ位置が経糸方向長さ位置に変換されて描かれる等、図3は図1に対し寸法長さが必ずしも整合しない。図4は、キャッチコード開口装置100の第1のスイングレバー41、42の平面図であり、図5は、キャッチコード開口装置100の第2のスイングレバー43、44の平面図である。図6はキャッチコード開口装置100の立面図であり、スイングレバー41、42、43、44の揺動位置は図1と同一である。
図1に示すように、キャッチコード開口装置100は、第1のスイングレバー41、42を支持する第1の軸1、および第2のスイングレバー43、44を支持する第2の軸2が、遊星耳組装置110のフレーム3に支持されている。以下、織機の反緯入側に設けられる遊星耳組装置110について説明する。
図示しない左右のサイドフレーム間にビーム4が架設され、該ビーム4の上面にはレール5が図示しないボルトで固定される。レール5の上面にはフレーム3が載置されて図示しないボルトによってレール5に固定され、遊星耳組装置110は、織布幅の変更に対応して織り幅方向位置を調整可能に、レール5を介してビーム4に支持される。また、レール5よりも送出側には、織り幅方向に延在する駆動軸6が、レール5に対して平行に設けられる。フレーム3は、駆動軸6が挿通される挿通孔3bが設けられ、挿通孔3bには含油メタル7が圧入される。駆動軸6は、含油メタル7によってフレーム3に回転可能に支持されると共に、サイドフレームの一方に設けられる図示しない回転伝達装置によって、織機の主軸の1/2回転速比、即ち、織機の主軸の回転速度の1/2の回転速度で回転される。
駆動軸6には固定部材8が嵌合される。固定部材8には、駆動軸6に嵌合される孔の内周面から半径方向に貫通して外周面に達すると共に駆動軸6の軸線方向に延在する1つのスリットが設けられると共に、該スリットを挟んでボルト挿通孔とメネジとが設けられる。固定部材8は、ボルト61の締め付け力によってスリットの間隔が縮小して孔が縮径し、固定部材8は、所謂割締めによって、駆動軸6の軸線方向位置および位相において、無段階で位置調整可能に駆動軸6に固定される。固定部材8のフランジには、駆動タイミングプーリ9がボルト62で固定される。これにより、固定部材8と駆動タイミングプーリ9とによって、第1の歯付伝達部材が形成され、固定部材8の前記スリットはボルト61の締め付け力によって間隔が縮小することにより、第1の歯付伝達部材は駆動軸6に固定される。
フレーム3は、支持体10が固定される回転軸14の取付基準孔として、挿通孔3bよりも上方かつ巻取側に、挿通孔3bと軸線同士が平行な挿通孔3aを有し、挿通孔3aにはベアリングケース12のフランジの外周面が嵌合される。ベアリングケース12は、前記フランジのほか、胴部外周面、太陽歯車12a、軸線方向に貫通する内周面を有し、それらはフランジの外周面と同軸に設けられる。詳説すると、前記胴部外周面にはケース11が嵌合され、該ケース11は、前記フランジの経糸列側面にボルト63によって固定さる。太陽歯車12aは、ベアリングケース12の経糸列側端部に設けられる。ベアリングケース12の前記内周面には、軸線方向に沿って2つのボールベアリング13の外輪が嵌合され、該ボールベアリング13の内輪には、回転軸14が嵌合される。これにより、回転軸14と太陽歯車12aとは、ボールベアリング13を介して互い同軸に設けられる。また、ケース11が図示しないボルトによってフレーム3に固定されることにより、太陽歯車12aはケース11を介してフレーム3に固定され、回転軸14はボールベアリング13を介してフレーム3に回転可能に支持される。
回転軸14は、2つのボールベアリング13を挟んで、経糸列側端部には、支持体10がボルト64、キー66によって固定され、反経糸列側端部には、従動タイミングプーリ15が、回転軸14に固定される第2の歯付伝達部材として、ボルト65、キー67によって固定される。従動タイミングプーリ15は駆動タイミングプーリ9と同一歯数である。駆動タイミングプーリ9と従動タイミングプーリ15との間には、タイミングベルト16が掛け渡され、タイミングベルト16の弛み側には、図示しないテンショナーがスプリングによって付勢されて当接する。これにより、第1の歯付伝達部材を構成する固定部材8と駆動タイミングプーリ9、第2の歯付伝達部材を構成する従動タイミングプーリ15、タイミングベルト16、および図示しないテンショナーによって回転伝達機構130が構成され、駆動軸6の回転が回転軸14に伝達される。
支持体10は、回転軸14に固定されることにより、駆動タイミングプーリ9、従動タイミングプーリ15、タイミングベルト16を介して、駆動軸6によって織機の主軸の1/2回転速比で回転される。支持体10の反経糸列側面には、2つの中継歯車軸19が、支持体10の軸心を対称点として点対称に立設され、中継歯車軸19および中継歯車軸19に嵌合されるボールベアリング21を介して、2つの中継歯車17が支持体10に回転可能に支持される。各中継歯車17は太陽歯車12aと互いに噛み合う。また、支持体10には、遊星歯車軸20が挿通される2つの挿通孔が、支持体10の軸心を対称点として点対称に設けられ、各挿通孔には、ボールベアリング22の外輪が嵌合される。該ボールベアリング22の内輪には、遊星歯車軸20が嵌合される。各遊星歯車軸20は、反経糸列側端部に、遊星歯車18がナット68によって固定され、経糸列側端部に、回転ボビン装置120が取り付けられる。各回転ボビン装置120は、給糸ボビン23とヤーンガイド24とを備える。遊星歯車18は、太陽歯車12aの歯数の1/2の歯数に形成され、中継歯車17と互いに噛み合う。
駆動軸6が、例えば図1において左方向に1/2回転すると、駆動タイミングプーリ9、従動タイミングプーリ15、タイミングベルト16を介して、支持体10が左方向に1/2回転する。支持体10が1/2回転するのに伴って、遊星歯車18は、太陽歯車12aと噛み合う中継歯車17を介して、右方向に1回転する。即ち、遊星歯車18は、右方向に1回転だけ自転する間に、太陽歯車12aの周りを左方向に1/2回転だけ公転する。従って、遊星歯車18に固定される回転ボビン装置120のヤーンガイド24は、織機の1回転毎に、支持体10の軸心を中心に一方向に1/2回転すると共に、支持体10に支持されている遊星歯車軸20を中心に、他方向に1回転する。これにより、ヤーンガイド24は、図示しない綜絖による経糸の開口運動に連動して、各給糸ボビン23から引き出される一対の耳経糸に開口運動を行わせ、緯糸とで織布端にもじり耳を形成させる。
次に、キャッチコード開口装置100について説明する。駆動軸6には、駆動タイミングプーリ9よりも経糸列側に、内周面の軸心と外周面の軸心とが互いに異なる偏心ブッシュ27が嵌合され、該偏心ブッシュ27のスリーブには、駆動軸6に嵌合される孔の内周面から半径方向に貫通してスリーブの外周面に達すると共に駆動軸6の軸線方向に延在するスリットが、割り締め用に1つ以上形成される。スリーブの外周面には、固定部材28が嵌合される。固定部材28は、スリーブに嵌合される孔の内周面から半径方向に貫通して外周面に達すると共に駆動軸6の軸線方向に延在するスリットを1つ有し、固定部材28は、前記スリットを挟んでボルト挿通孔とメネジとを有する。
ボルト69を締め付けることにより、固定部材28はスリットの間隔が縮小して孔が縮径する。固定部材28の孔の縮径により、偏心ブッシュ27のスリーブのスリットの間隔が縮小し、スリーブの孔が縮径する。これにより、偏心ブッシュ27と固定部材28とは、後述する運動変換機構140の回転部材として、駆動軸6の軸線方向および位相において無段階で調整可能に駆動軸6に固定される。経糸方向に延在する揺動アーム30が設けられ、該揺動アーム30の送出側端に、偏心ブッシュ27が挿通される挿通孔が設けられる。ボールベアリング29が設けられて、偏心ブッシュ27の外周面にはボールベアリング29の内輪が嵌合され、揺動アーム30の前記挿通孔にはボールベアリング29の外輪が嵌合される。
フレーム3の織前側には、ワープラインWLを挟んで対向すると共に、互いに平行に織り幅方向に延在する第1の軸1と第2の軸2とが、押しネジ70によって固定される。第1の軸1および第2の軸2の外周面には、それぞれ2つのボールベアリング31が互いに離間して嵌合される。ワープラインWLの下方に配設される第1の軸1には、第1の軸1の軸心を中心に分岐して3つの端部を有する第1のスイングレバーホルダ32が、2つのボールベアリング31を介して揺動可能に支持される。また、ワープラインWLの上方に配設される第2の軸2には、第2の軸2の軸心を中心に分岐して2つの端部を有する第2のスイングレバーホルダ33が、ボールベアリング31を介して揺動可能に支持される。
第1のスイングレバーホルダ32は、3つの端部のうち下方に位置する第1の端部に、ピン34が立設される。揺動アーム30の他端にはピン34の挿通孔が設けられて、該挿通孔には含油メタル35が圧入される。これにより、揺動アーム30と第1のスイングレバーホルダ32とは、それぞれリンクとしてピン34を介して互いに連結される。
図4に示すように、第1のスイングレバーホルダ32は、中間に位置する第2の端部に、L字状の第1のスイングレバープレート36がボルト71によって固定される。また図1および図3に示すように、第1のスイングレバーホルダ32は、上方に位置する第3の端部にメネジが形成されており、該メネジにネジ込まれてピン37が立設される。
第2のスイングレバーホルダ33は、図1および図3に示すように、下方に位置する第1の端部には、第1のスイングレバーホルダ32の第3の端部と同様にして、ピン37が立設される。また図5に示すように、第2のスイングレバーホルダ33は、上方に位置する第2の端部に、L字状の第2のスイングレバープレート38がボルト71によって固定される。第1の軸1、第2の軸2の間には、両端にピン37が挿通される挿通孔を有する連結リンク39が設けられ、ピン37の挿通孔には含油メタル40が圧入される。
これにより、第1のスイングレバーホルダ32と第2のスイングレバーホルダ33とは、第1の軸1、第2の軸2によってそれぞれ揺動可能に支持されると共に、第1のスイングレバーホルダ32の前記第3の端部と第2のスイングレバーホルダ33の前記第1の端部とが、連結リンク39と2つのピン37とを介して互いに連結される。
図4に示すように、第1のスイングレバープレート36には、巻取側に平板状に延在する2つの第1のスイングレバー41、42が、第1の軸1の軸線方向に互いに離間して厚み方向に配置され、ボルト72によって共締めで固定される。第1のスイングレバー41、42の各先端部は、第1のスイングレバー41、42の配列の外側に向かって互いに逆方向に屈曲する。第1のスイングレバープレート36と同様に、図5に示すように、第2のスイングレバープレート38には、巻取側に平板状に延在する2つの第2のスイングレバー43、44が、第2の軸2の軸線方向に互いに離間して固定される。第1のスイングレバー41、42と同様に、第2のスイングレバー43、44の各先端部は、第2のスイングレバー43、44の配列の外側に向かって互いに逆方向に屈曲する。
第1のスイングレバー41、42と第2のスイングレバー43、44とは、図2および図3に示すように、第1のスイングレバーの先端部と第2のスイングレバーの先端部とが、織り幅方向に交互に配置されるように、第1の軸1の軸線方向および第2の軸2の軸線方向にそれぞれ配置される。詳説すると、第1のスイングレバー41、42と第2のスイングレバー43、44とは、第1のスイングレバー41、42の先端部間に第2のスイングレバー43の先端部が配置され、また第2のスイングレバー43、44の先端部間に第1のスイングレバー42が配置される。
また、図4に示すように、2つの第1のスイングレバー41、42は、中間部分で間にディスタンス部材45が設けられボルト72によって互いに連結される。同様に、図5に示すように、2つの第2のスイングレバー43、44は、中間部分で間にディスタンス部材45が設けられボルト72によって互いに連結される。これにより、2つの第1のスイングレバー41、42は、先端部間にスイングレバーの揺動に伴う第2のスイングレバー43の先端部の進出空間が形成される。同様に、第2のスイングレバー43、44は、先端部間にスイングレバーの揺動に伴う第1のスイングレバー42の先端部の進出空間が形成される。
2つの第1のスイングレバー41、42の共締めにおいて、および2つの第2のスイングレバー43、44の共締めにおいて、第1のスイングレバー41と第1のスイングレバープレート36との間、および第2のスイングレバー43と第2のスイングレバープレート38との間には、スペーサ46が設けられ、スイングレバー間隔をスイングレバープレート取付部と先端部とで一致させる。
各スイングレバー41、42、43、44の先端部には、キャッチコードCが挿通される挿通孔がそれぞれ設けられ、挿通孔にはガイド孔を有するヤーンガイド47が接着される。各キャッチコードCは、図示しない給糸装置から引き出されて、4以上のガイド溝を有しフレーム3に固定されるヤーンガイド48を経て、各ヤーンガイド47に挿通される。
織機の主軸の1/2回転速比で駆動軸6が回転して、回転部材である偏心ブッシュ27が回転すると、偏心ブッシュ27の外周面の軸心、即ちボールベアリング29の軸心O2は、駆動軸6の軸心O1周りを移動し、揺動アーム30はクランクリンクとなって、前記一端がボールベアリング29と共に駆動軸6の軸心O1周りを移動する。第1の軸1に揺動可能に支持される第1のスイングレバーホルダ32は、前記第1の端部が揺動アーム30の前記他端と連結されているので、揺動アーム30の前記一端の軸心O1周りの移動に伴って、揺動する。
図6に示すように、連結リンク39と第1のスイングレバーホルダ32との連結位置、および連結リンク39と第2のスイングレバーホルダ33との連結位置は、第1の軸1と第2の軸2との間に位置すると共に、第1の軸1と第2の軸2とを結ぶ線を挟んで互いに反対側に位置するので、第2の軸2に揺動可能に支持される第2のスイングレバーホルダ33は、第1のスイングレバーホルダ32の揺動に伴って、第1のスイングレバーホルダ32の揺動方向とは逆方向に揺動すると共に、第1のスイングレバーホルダ32とは、ほぼ同一角度だけ揺動する。これにより、第1のスイングレバーホルダ32と第1のスイングレバープレート36とを介し第1の軸1に支持される第1のスイングレバー41、42と、第2のスイングレバーホルダ33と第2のスイングレバープレート38とを介し第2の軸2に支持される第2のスイングレバー43、44とは、互いに逆方向にほぼ同一角度だけ揺動する。
従って、駆動軸6の回転運動が、回転部材を構成する偏心ブッシュ27と固定部材28、ボールベアリング29、揺動アーム30、ピン34、第1のスイングレバーホルダ32、第2のスイングレバーホルダ33、連結リンク39、2つのピン37、第1の軸1、第2の軸2、第1のスイングレバープレート36、および第2のスイングレバープレート38を介して、第1のスイングレバー41、42と第2のスイングレバー43、44との互いに逆方向の揺動運動に変換される。よって、回転部材を構成する偏心ブッシュ27と固定部材28、ボールベアリング29、揺動アーム30、ピン34、第1のスイングレバーホルダ32、第2のスイングレバーホルダ33、連結リンク39、2つのピン37、第1の軸1、第2の軸2、第1のスイングレバープレート36、および第2のスイングレバープレート38は、運動変換機構140を構成し、駆動軸6の回転運動を、第1のスイングレバー41、42および第2のスイングレバー43、44の互いに逆方向の揺動運動に変換する。
図6は、第1のスイングレバーホルダ32と揺動アーム30とを連結するピン34の軸心を連結点O3として、ボールベアリング29の軸心O2が、駆動軸6の軸心O1と連結点O3との間に位置すると共に、軸心O1、軸心O2、連結点O3が、ほぼ一直線上に位置する状態を示し、連結点O3が図の最も右側、即ち最も巻取側に位置した状態を示す。第1のスイングレバー41、42は、ワープラインWLを越えてヤーンガイド47が上死点位置に在り、また、第2のスイングレバー43、44は、ワープラインWLを越えてヤーンガイド47が下死点位置に在る。駆動軸6は一方向に回転し、例えば、図6において矢印方向に回転して反時計方向に回転すると、この状態からスイングレバー41、42、43、44は揺動する。これにより、第1のスイングレバー41、42の各ヤーンガイド47に挿通されるキャッチコードCをそれぞれ41C、42Cとし、第2のスイングレバー43、44の各ヤーンガイド47に挿通されるキャッチコードCをそれぞれ43C、44Cとすると、キャッチコード41C、42C、43C、44Cは、ワープラインWLに向かってそれぞれ矢印方向に移動する。
図7は、図6の状態から駆動軸6が偏心ブッシュ27と共に反時計方向に90°回転して、ボールベアリング29の軸心O2が、駆動軸6の軸心O1周りを反時計方向に90°移動した状態を示す。偏心ブッシュ27の外周面の軸心、即ちボールベアリング29の軸心O2は、駆動軸6の軸心O1と連結点O3とを結ぶ直線に対し、駆動軸6の軸心O1を通って直交する線上に在り、かつ、上方に位置する。
キャッチコード開口装置100は、この状態、即ち、ボールベアリング29の軸心O2が、駆動軸6の軸心O1と連結点O3とを結ぶ直線に対し、駆動軸6の軸心O1を通って直交する線上に在り、かつ、上方に位置すると共に、スイングレバー41、42、43、44の各ヤーンガイド47が、ワープラインWL上に位置する状態を、キャッチコード開口装置100の駆動軸6に対する基準取付位相とし、標準取付けでは綜絖による経糸の開口運動の閉口に一致させる。
詳説すると、図3に示すように、固定部材28は反経糸列側の端面にピン49が立設され、該ピン49は偏心ブッシュ27の経糸列側の面に開口するピン孔に挿入される。該ピン孔は偏心ブッシュ27の内周面の軸心、即ち駆動軸6の軸心O1と偏心ブッシュ27の外周面の軸心、即ちボールベアリング29の軸心O2とを結ぶ線の延長上に設けられる。これにより、固定部材28と偏心ブッシュ27とは相対回転不能となる。固定部材28は、ピン49が立設されるほか、ピン49と同位相で外周面に軸線方向に延在する溝28aが設けられる。また、揺動アーム30の前記一端の経糸列側の端面には、溝30aが設けられている。図7に示すように、溝30aは、軸心O2が軸心O1と連結点O3とを結ぶ直線の上方に位置した状態で、第1のスイングレバー41、42、第2のスイングレバー43、44の各ヤーンガイド47が、ワープラインWL上に位置し、その状態で駆動軸6の円周方向位置において、溝30aと溝28aとが互いに一致するように設けられる。
溝30aと溝28aとを互いにずらして、偏心ブッシュ27および固定部材28の駆動軸6に対する取付位相を、基準取付位相に対し位相差を設けることにより、綜絖による経糸開口の閉口タイミングに対し、キャッチコード開口装置100の閉口タイミングを調整し、織機主軸の回転角に対する開口運動のタイミングを調整する。例えば、駆動軸6が図7において反時計方向に回転する場合、ボルト69を緩めて偏心ブッシュ27を駆動軸6に対し時計方向に回転させ、溝30aに対し溝28aが右側に位置するように固定すれば、開口運動のタイミングが織機主軸の回転角に対して遅れ、キャッチコード開口装置100の閉口タイミングは遅れる。逆に、溝30aに対し溝28aが左側に位置するように偏心ブッシュ27を固定すれば、キャッチコード開口装置100の閉口タイミングは早くなる。
図7の状態では、図2に示すように、第1のスイングレバー41、42の先端部間に第2のスイングレバー43の先端部が進出し、第2のスイングレバー43、44の先端部間に第1のスイングレバー42の先端部が進出して、第1のスイングレバー41、42の先端部と第2のスイングレバー43、44の先端部とは、織り幅方向に交互に配置される。第1のスイングレバー41、42、第2のスイングレバー43、44は、それぞれ矢印方向に移動して、キャッチコード41C、43C、42C、44Cによる緯糸Yの屈曲が開始され、飛走終了後の緯糸Yに張力が付与される。
図8は、図7の状態から駆動軸6が反時計方向に90°回転して、ボールベアリング29の軸心O2が、駆動軸6の軸心O1周りを更に反時計方向に90°移動した状態を示す。ボールベアリング29の軸心O2が、連結点O3と駆動軸6の軸心O1とを結ぶ線の延長上に在り、連結点O3が最も左側、即ち最も送出側に位置した状態を示す。第1のスイングレバー41、42のヤーンガイド47が下死点位置に在り、また、第2のスイングレバー43、44のヤーンガイド47が上死点位置に在り、各スイングレバー41、42、43、44は、ワープラインWLを跨がない。この状態から、各キャッチコード41C、42C、43C、44Cは、ワープラインWLに向かってそれぞれ矢印方向に移動する。
図9は、図8の状態から駆動軸6が反時計方向に90°回転して、ボールベアリング29の軸心O2が、駆動軸6の軸心O1周りを更に反時計方向に90°移動した状態を示す。図7の状態と同様、第1のスイングレバー41、42の先端部と第2のスイングレバー43、44の先端部とは、織り幅方向に交互に配置され、スイングレバー41、42、43、44の各ヤーンガイド47は、ワープラインWL上に在る。第1のスイングレバー41、42、第2のスイングレバー43、44は、それぞれ矢印方向に移動して、図7と同様に、キャッチコード41C、43C、42C、44Cによる緯糸Yの屈曲が開始され、飛走終了後の緯糸Yに張力が付与される。
織布幅の変更に対応して、遊星耳組装置110およびキャッチコード開口装置100の織り幅方向位置は、次記のように調整される。織機は、綜絖がワープラインWL上に位置するように、自動または手動で停止される。ボルト61およびボルト69を緩め、固定部材8および固定部材28を介し、それぞれ互いに独立して駆動軸6に固定される駆動タイミングプーリ9および偏心ブッシュ27を、駆動軸6に対し軸線方向に移動可能および位相を変更可能な状態にする。図示しないボルトを緩めて、または取り外して、フレーム3のレール5への固定位置を変更した後、図示しないボルトによってフレーム3をレール5に固定することにより、フレーム3のビーム4への固定位置が織り幅方向に変更される。
フレーム3の固定位置の織り幅方向変更に伴って、フレーム3に支持される第1の軸1および第2の軸2は織り幅方向に移動する。第1の軸1および第2の軸2の織り幅方向の移動に伴って、スイングレバーホルダ32、33とスイングレバープレート36、38とを介し、第1の軸1および第2の軸2に支持されるスイングレバー41、42、43、44は、織り幅方向に移動する。また、第1の軸1の織り幅方向の移動に伴って、スイングレバーホルダ32に連結される揺動アーム30が、織り幅方向に移動する。揺動アーム30の移動によって、ボールベアリング29を介して揺動アーム30と係合する偏心ブッシュ27、および偏心ブッシュ27のスリーブに嵌合される固定部材28が、織り幅方向に移動する。フレーム3の固定位置の織り幅方向変更に伴って、駆動タイミングプーリ9は、タイミングベルト16が両タイミングプーリ9、15間に掛け渡された状態で、織り幅方向位置が変更される。
駆動軸6に対し、織り幅方向位置が調整された後、駆動タイミングプーリ9および偏心ブッシュ27は、駆動軸6に対して位相が調整されることにより、回転軸14の駆動軸6に対する連結位相、およびスイングレバー41、42、43、44の駆動軸6に対する連結位相が変更され、遊星耳組装置110およびキャッチコード開口装置100において、耳経糸およびキャッチコードCの開口運動のタイミングがそれぞれ調整される。
駆動軸6が図1において例えば反時計方向に回転する場合、耳経糸の開口運動のタイミングは、タイミングベルト16が掛け渡された状態で、駆動軸6に対し、駆動タイミングプーリ9を時計方向に回すことにより遅れ、逆に反時計方向にすことにより早くなる。例として、開口運動のタイミングを織機主軸の回転角に対し2°だけ遅くする場合、駆動タイミングプーリ9を時計方向に1°回転させる。また、2°だけ早くする場合、駆動タイミングプーリ9を反時計方向に1°回転させる。
キャッチコード開口装置100において、キャッチコードCの開口運動のタイミングは、ピン49によって偏心ブッシュ27と相対回転不能に係合する固定部材28を介して、偏心ブッシュ27を回すことにより調整される。駆動軸6が図1において例えば反時計方向に回転する場合、遊星耳組装置110における耳経糸の開口運動のタイミングと同様、偏心ブッシュ27を駆動軸6に対し時計方向に回すことにより遅れ、逆に反時計方向にすことにより早くなる。例として、開口運動のタイミングを織機主軸の回転角に対し2°だけ遅くする場合、偏心ブッシュ27を時計方向に1°回転させ、2°だけ早くする場合、偏心ブッシュ27を反時計方向に1°回転させる。その際、固定部材28の溝28aの揺動アーム30の溝30aに対するズレ具合を見て、偏心ブッシュ27の駆動軸6に対する回転角、即ち位相を確認しながら行う。図6のワープラインWLを跨いだ状態のスイングレバー41、42、43、44の最大揺動位置、および図8のワープラインWLを跨がない状態のスイングレバー41、42、43、44の最大揺動位置に示されるように、第1のスイングレバー41、42および第2のスイングレバー43、44の揺動角は、それぞれ約18°である。このスイングレバー41、42、43、44の揺動角に対応する駆動軸6の回転角が180°であるので、偏心ブッシュ27の1°の回転によって、第1のスイングレバー41、42および第2のスイングレバー43、44は約0.1°だけ揺動した状態となる。
遊星耳組装置110において、耳経糸の開口運動のタイミングの調整終了後、ボルト61を締め上げることにより、駆動タイミングプーリ9は駆動軸6に固定され、遊星耳組装置110は耳経糸の開口運動のタイミングが確定される。また、キャッチコード開口装置100において、キャッチコードCの開口運動のタイミングの調整終了後、ボルト69を締め上げることにより、偏心ブッシュ27は駆動軸6に固定され、キャッチコード開口装置100はキャッチコードCの開口運動のタイミングが確定される。
本実施形態では、第1の軸1と第2の軸2とは、ワープラインWLを挟んで互いに対向するが、共にワープラインWLに対し一方の側、例えば共にワープラインWLの上方、または共にワープラインWLの下方に配設されてもよいし、ワープラインWL上に配設されてもよい。第1の軸1と第2の軸2とは、互いに平行に設けられるが、第1の軸1と第2の軸2とを直列に配して互いに同軸に設けてもよい。また、第1の軸1および第2の軸2は、遊星耳組装置110のフレーム3に設けられることにより、遊星耳組装置110の織り幅方向位置の変更によって、織り幅方向位置が変更され、キャッチコード開口装置100は、織布幅変更に伴う作業の一部を省略できる。しかし、レール5またはビーム4に、第1の軸1用および第2の軸2用の軸支部材を取り付けることにより、第1の軸1および第2の軸2を、遊星耳組装置110を介せずにビーム4に支持させてもよい。
本実施形態では、第1の軸1、第2の軸2は、フレーム3に固定され、ベアリング31を介してスイングレバーホルダ32、33を揺動可能に支持することにより、スイングレバー41、42、43、44を揺動可能に支持している。しかし、第1の軸1、第2の軸2は、スイングレバーホルダ32、33に固定されてもよく、その場合、フレーム3と第1の軸1との間、およびフレーム3と第2の軸2との間にそれぞれベアリング31が介在して、スイングレバーホルダ32、33は揺動可能に支持される。
本実施形態では、遊星耳組装置110は、回転伝達機構130の第1の歯付回転部材および第2の歯付回転部材として、同一歯数の駆動タイミングプーリ9および従動タイミングプーリ15が用いられ、両タイミングプーリ9、15間にタイミングベルト16が掛け渡される。しかし、第1の歯付回転部材および第2の歯付回転部材として、同一歯数の2つの歯車を用いてもよい。その場合、両歯車間にアイドル歯車を配設するのが好ましく、駆動軸6と回転軸14との軸間距離を維持したまま、第1の歯付回転部材および第2の歯付回転部材として小径の歯車を用いることが可能となる。
本実施形態では、駆動タイミングプーリ9および固定部材8が、第1の歯付回転部材を構成し、割り締めによって駆動軸6に固定され、駆動タイミングプーリ9の駆動軸6に対する位相が変更されることにより、耳経糸の開口運動のタイミングが調整される。しかし、従動タイミングプーリ15が割り締めによって回転軸14に固定され、回転軸14の従動タイミングプーリ15に対する位相が変更可能に設けられることにより、耳経糸の開口運動のタイミングが調整されてもよい。その場合、従動タイミングプーリ15の回転軸14への固定を解除すると共に、タイミングプーリ9、15間にタイミングベルト16を掛け渡したまま駆動軸6を静止させた状態で、回転軸14を所望の角度だけ回転させる。これにより、回転軸14の駆動軸6に対する連結位相が変更され、遊星耳組装置110において耳経糸の開口運動のタイミングが調整される。また、図示しないテンショナーを操作してタイミングベルト16を弛めて取り外し、駆動軸6を静止させた状態で従動タイミングプーリ15と共に回転軸14を所望の角度だけ回転させ、再び、タイミングベルト16を駆動タイミングプーリ9と従動タイミングプーリ15とに掛け渡してもよい。同様に、回転軸14の駆動軸6に対する連結位相が変更される。
本実施形態では、キャッチコード開口装置100において、運動変換機構140の駆動軸6に固定される回転部材として偏心ブッシュ27が設けられ、偏心ブッシュ27は、駆動軸6に嵌合される内周面の軸心と、揺動アーム30の一端の挿通孔30bにボールベアリング29を介して嵌合される外周面の軸心とが、互いに異なる。偏心ブッシュ27は、揺動アーム30の他端がピン34を介して第1のスイングレバーホルダ32に連結されることにより、駆動軸6の一方向回転運動を第1のスイングレバーホルダ32の揺動運動に変換するクランクとして機能する。このように、クランク機能を有する運動変換機構140によって、駆動軸6の一方向回転運動が、第1のスイングレバー41、42および第2のスイングレバー43、44の互いに逆方向の揺動運動に変換されている。しかし、運動変換機構としてカム・カムレバー機構を用いてもよい。その場合、駆動軸6に固定される回転部材としてカムを用い、第1のスイングレバーホルダ32の一端にカムボールを設け、カムボールをカム溝に摺接させたり、第1のスイングレバーホルダ32をスプリングで付勢してカムボールをカム面に当接させることにより、第1のスイングレバーホルダ32は揺動される。
本実施形態では、キャッチコード開口装置100において、運動変換機構140には、駆動軸6に固定されるの回転部材として、偏心ブッシュ27が設けられている。しかし、運動変換機構140において、駆動軸6に固定される回転部材としてタイミングプーリ、歯車等の第3の歯付回転部材を設けると共に、駆動軸6に対し平行な支軸を設け、該支軸によって第4の歯付回転部材を支持し、かつ、偏心ブッシュ27またはカムを支持するようにしてもよい。第3の歯付回転部材によって、第4の歯付回転部材は回転される。偏心ブッシュ27またはカムは、支軸または第4の歯付回転部材に固定される。第4の歯付回転部材は、偏心ブッシュ27を用いる場合、第3の歯付回転部材と同一歯数であり、カムを用いる場合、第3の歯付回転部材の歯数にカムの山の数を乗算した歯数である。
上記のように、駆動軸6に固定される回転部材として第3の歯付回転部材を設ける場合、キャッチコードCの開口運動のタイミングの調整は、回転部材である第3の歯付回転部材の駆動軸6に対する位相を変更することにより、スイングレバー41、42、43、44の駆動軸6に対する連結位相を変更する方法のほか、偏心ブッシュ27またはカムを、第4の歯付回転部材のボス部または支軸に割り締めする等により、偏心ブッシュ27またはカムの第4の歯付回転部材に対する位相を変更可能として、前記連結位相を変更する方法を用いてもよい。また、両歯付回転部材に掛け渡されるタイミングベルトまたはチェーンを取り外すことにより、スイングレバー41、42、43、44を揺動可能とし、前記連結位相を変更する方法を用いてもよい。
本実施形態では、偏心ブッシュ27は、ボールベアリング29を介して揺動アーム30の一端の偏心ブッシュ挿通孔に挿通され、転がり軸受けを介して揺動アーム30の一端と係合されている。しかし、偏心ブッシュ27は、揺動アーム30の偏心ブッシュ挿通孔に嵌合されて、直接、揺動アーム30の一端に係合されてもよい。また、含油メタル等の滑り軸受けが偏心ブッシュ挿通孔に圧入されることにより、滑り軸受けを介して揺動アーム30の一端に係合されてもよい。