JP5229258B2 - 内燃機関の燃焼重心判定方法及び燃焼制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃焼重心判定方法及び燃焼制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンに代表される圧縮自着火式の内燃機関の燃焼行程における燃焼室内での燃焼重心判定方法に係る。また、その判定結果に基づいて燃焼室内での燃焼形態を制御する燃焼制御装置にも係る。尚、上記燃焼重心とは、燃焼室内に噴射された燃料(例えばメイン噴射で噴射された燃料)が燃焼室内で燃焼する際に、その全ての燃料の燃焼が完了する完全燃焼状態を燃焼度合い「100%」とした場合において、燃焼度合いが「50%」に達したときをいう。言い換えると、燃焼室内での熱発生量の累積が、噴射された燃料の全量が燃焼した場合の熱発生量に対して「50%」に達したときをいう。
ディーゼルエンジン等のように希薄燃焼を行うエンジンでは、高い空燃比(リーン雰囲気)の混合気を燃焼させる運転領域が全運転領域の大部分を占めているため、窒素酸化物(以下、NOxという)が比較的多く排出されることが懸念される。また、燃焼室内での燃焼時において、混合気の不完全燃焼が生じた場合、排気ガス中にスモークが発生し排気エミッションの悪化を招いてしまうことになる。
このため、従来より、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制し、排気エミッションの改善を図ることが求められている。尚、NOxの発生量を抑制するものとして、排気ガスの一部を吸気通路に還流させる排気還流(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置が知られている(例えば下記の特許文献1及び特許文献2を参照)。また、スモークの発生量を抑制するための対策としては、エンジンの圧縮行程で副噴射を実行し、この副噴射での燃焼を予混合燃焼とすることで燃焼場での酸素不足の解消を図ることが知られている(例えば下記の特許文献3を参照)。
特開2004−3415号公報 特開2002−188487号公報 特開2001−193526号公報
これまで、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制することを目的として、燃焼室内での熱発生率(従来ではクランク軸の単位回転角度当たりの熱発生量)を制御することが提案されている。
ところが、エンジンの運転状態において、実際に燃焼室内で行われている燃焼が上記意図する(NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制するための)熱発生率(熱発生率波形:燃焼期間中における熱発生率の変化)で行われているか否かを検証することは難しい。実際に燃焼室内で行われている燃焼が適正な熱発生率とは異なる熱発生率で行われた場合には、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制するといった効果を得ることができなくなる。
また、適正な熱発生率を得るための燃料噴射形態(燃料噴射開始タイミング等)や筒内環境(吸気バルブの閉弁時における(筒内が密閉された状態での)筒内の酸素濃度等)の調整は、予め作成された燃料噴射マップやEGRマップに従って行われるが、これらマップの作成に際しては、エンジン回転数やエンジンの要求トルク等といった運転状態毎(エンジン回転数と要求トルクとをパラメータとする運転状態マップの格子点毎)に燃料噴射形態やEGR量(排気還流量)の適合を行っていた。つまり、エンジン運転状態毎に、実験的に燃料噴射形態やEGR量の適合値を試行錯誤で個別に求めていき、これら多数のエンジン運転状態毎に対応した適合値をマップ化することで燃料噴射マップやEGRマップを作成していた。そして、この燃料噴射マップに従って、現在のエンジン運転状態に適した燃料噴射形態を設定してインジェクタの制御を行ったり、EGRマップに従って、現在のエンジン運転状態に適したEGR量を設定してEGRバルブの制御を行ったりしていた。
このようにしてエンジンの複数の運転状態に対して実験的に適合値を個別に求めていたため、エンジン運転領域の全域に亘って適正な燃料噴射形態や筒内環境が設定されている保証がなかった。つまり、ある運転状態(上記適合値が求められていない過渡運転や環境変化)や燃料性状変化時(低セタン価燃料が給油された場合など)では、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制する熱発生率が得られないままエンジンの運転が継続されてしまう可能性があった。
また、試行錯誤で複数の運転状態に対する適合値を決定していたため、適合の複雑化を招き、種々のエンジンに共通した体系的な燃焼制御手法を構築することが不可能であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関の運転状態に応じた適切な熱発生率が得られているか否かを高い精度で判定できる判定方法、及び、その判定結果を利用して適切な熱発生率が得られるようにすることが可能な内燃機関の燃焼制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、燃焼室内での燃焼に伴う熱発生率を時間軸上で管理することにより、言い換えると、燃焼を時間の関数として扱うことにより、内燃機関の回転数に関わりなく、燃料噴射量に応じて一律に燃焼重心時刻が規定されるようにする。そして、この規定された燃焼重心時刻に基づいて、適正な熱発生率が得られているか否かを判定するようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、圧縮自着火式内燃機関の気筒内に向けて燃料噴射弁から噴射された燃料が燃焼する際の燃焼重心を判定する方法を対象とする。そして、上記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力を、内燃機関に要求される出力の大きさに応じて比例配分することにより設定したうえで、
下記の式(1)、
燃焼重心時刻=基準燃焼重心時刻×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2…(1)
(基準燃焼重心時刻:予め設定された基準燃料噴射量及び着火開始時刻を基点として与えられる燃焼重心の時刻、基準燃料噴射量:基準燃焼重心時刻を設定するために予め規定された基準となる燃料噴射量)
により燃焼重心時刻を求めるようにしている。
そして、上記燃焼重心時刻を、それに対応するクランク軸回転角度としての燃焼重心角度に置き換える下記の式(2)
燃焼重心角度=基準燃焼重心角度×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2
×(内燃機関回転数/基準内燃機関回転数) …(2)
(基準燃焼重心角度:予め設定された基準燃料噴射量及び着火開始角度を基点として与えられる燃焼重心のクランク軸回転角度)
により燃焼重心角度を求め、この求められた燃焼重心角度と実際の燃焼重心角度との乖離量に基づき、この乖離量が所定量以上である場合には燃焼が適正に行われていないと判定する判定動作を行うようにしている。
この特定事項により、燃料噴射弁から噴射された燃料が燃焼室内で燃焼する場合に、その熱発生率を「単位時間当たりの熱発生量」として扱うことになる。これにより、燃料噴射量毎に略近似した熱発生率波形が得られ、それぞれの燃焼重心が略一致することになる。この燃焼重心は、内燃機関の回転数が異なっても燃料噴射量が同一であれば略一致した時刻として得られる。このため、実際の燃焼重心の時刻が、燃料噴射量に応じた適正な燃焼重心(上記式(1)で得られている燃焼重心)の時刻に対して所定の乖離時間以上である場合(また、上記式(2)で得られている燃焼重心角度に対して所定の乖離角度以上である場合)には燃焼が適正に行われていないと判定することができる。つまり、上記式を利用することで内燃機関の運転領域の略全域に対して燃焼重心時刻を算出することが可能であり、その算出された燃焼重心時刻と実際の燃焼重心時刻とを対比することで、内燃機関の運転領域の略全域に対して適正な燃焼重心が得られているか、言い換えると適正な熱発生率で燃焼が行われているか否かを判定することが可能である。
上記燃焼重心判定方法において、燃焼が適正に行われていないと判定された場合の燃焼制御を行う手段としては以下のものが挙げられる。つまり、上記内燃機関の燃焼重心判定方法によって、燃焼室内で行われている燃焼が適正に行われていないと判定された場合に、算出された燃焼重心時刻と実際の燃焼重心時刻との乖離時間を短縮するように燃焼室内での燃焼を制御する燃焼重心時刻変更手段を備えさせるものである。
この燃焼重心時刻変更手段による具体的な燃焼重心時刻の変更動作としては以下のものが挙げられる。先ず、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁からの燃料噴射時期の補正を行うものであって、算出された燃焼重心時刻に対する実際の燃焼重心時刻の遅れ時間が長いほど燃料噴射時期を進角側に補正する構成としたものである。
また、燃焼室内の酸素濃度の補正を行うものであって、算出された燃焼重心時刻に対する実際の燃焼重心時刻の遅れ時間が長いほど燃焼室内の酸素濃度を高く設定する構成としたものである。
これら特定事項により、燃焼重心時刻が適正時刻からずれた状態での運転が継続されてしまうといった状況を早期に解消することができ、適正な熱発生率での燃焼が可能になって、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制し、排気エミッションの改善を図ることができる。
本発明では、燃焼室内での燃焼に伴う熱発生率を時間軸上で管理することにより、内燃機関の回転数に関わりなく、燃料噴射量に応じて一律に燃焼重心時刻が規定されるようにする。これにより、適正な熱発生率が得られているか否かを正確に判定することが可能になる。
実施形態に係るエンジン及びその制御系統の概略構成図である。 ディーゼルエンジンの燃焼室及びその周辺部を示す断面図である。 ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 膨張行程時の熱発生率(クランク軸の単位回転角度当たりの熱発生量)の変化及び燃料噴射率(クランク軸の単位回転角度当たりの燃料噴射量)の変化をそれぞれ示す波形図である。 エンジン要求出力と、その要求出力に応じて設定される目標燃料圧力との関係を示す図である。 目標燃料圧力を決定する際に参照される燃圧設定マップを示す図である。 複数の燃料噴射量それぞれにおいてエンジン回転数が異なる場合の熱発生率(クランク軸の単位回転角度当たりの熱発生量及び単位時間当たりの熱発生量)の変化を示す波形図である。 各燃料噴射量毎における熱発生率(単位時間当たりの熱発生量)の変化及び燃料噴射率(単位時間当たりの燃料噴射量)の変化をそれぞれ示す波形図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1及びその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、後述するECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ(吸気絞り弁)62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、NOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75及びDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75及びDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。即ち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
尚、このキャビティ13bの形状としては、その中央部分(シリンダ中心線P上)では凹陥寸法が小さく、外周側に向かうに従って凹陥寸法が大きくなっている。つまり、図2に示すようにピストン13が圧縮上死点付近にある際、このキャビティ13bによって形成される燃焼室3としては、中央部分では比較的容積の小さい狭小空間とされ、外周側に向かって次第に空間が拡大される(拡大空間とされる)構成となっている。
上記ピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16及び排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16及び排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52及びコンプレッサホイール53を備えている。コンプレッサホイール53は吸気管64の内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気管73の内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール53を回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール52側に可変ノズルベーン機構(図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続する排気還流通路(EGR通路)8が設けられている。このEGR通路8は、排気の一部を適宜吸気系6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、このEGR通路8には、電子制御によって無段階に開閉され、同通路を流れる排気流量を自在に調整することができるEGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気を冷却するためのEGRクーラ82とが設けられている。これらEGR通路8、EGRバルブ81、EGRクーラ82等によってEGR装置(排気還流装置)が構成されている。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62の上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、及び、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40などが接続されている。一方、出力インターフェース106には、上記インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、及び、EGRバルブ81などが接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。例えば、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、後述するパイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射(主噴射)、アフタ噴射、ポスト噴射を実行する。
−燃料噴射形態−
以下、本実施形態における上記パイロット噴射、プレ噴射、メイン噴射、アフタ噴射、ポスト噴射の各動作の概略について説明する。
(パイロット噴射)
パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。即ち、この実施形態におけるパイロット噴射の機能は、気筒内の予熱に特化したものとなっている。言い換えれば、この実施形態におけるパイロット噴射は、燃焼室3内でのガスの予熱を行うための噴射動作(予熱用燃料の供給動作)となっている。
具体的には、噴霧の分配や局所濃度の適正化を図るために、パイロット噴射の1回当たりの噴射量をインジェクタ23の最小限界噴射量(例えば1.5mm3)とし、噴射回数を設定することで必要な総パイロット噴射量を確保するようにしている。このようにして分割噴射されるパイロット噴射のインターバルは、インジェクタ23の応答性(開閉動作の速さ)によって決定される。このインターバルは、例えば200μsに設定される。また、パイロット噴射の噴射開始タイミングとしては、例えばクランク角度で、ピストン13の圧縮上死点前(BTDC)80°以降に設定される。尚、パイロット噴射の1回当たりの噴射量や、インターバル、噴射開始タイミングは、上記値に限定されるものではない。
(プレ噴射)
プレ噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する噴射動作である。プレ噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。また、本実施形態におけるプレ噴射は、上述したメイン噴射による初期燃焼速度を抑制する機能ばかりでなく、気筒内温度を高める予熱機能をも有するものとなっている。
具体的に、本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための総燃料噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)に対して例えば10%としてプレ噴射量が設定される。この総燃料噴射量に対するプレ噴射量の比率は、気筒内を予熱する際に必要となる熱量等に応じて設定される。
上記総燃料噴射量が15mm3未満であった場合には、プレ噴射での噴射量が、インジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)未満となるため、プレ噴射は実行しないことになる。尚、この場合、インジェクタ23の最小限界噴射量(1.5mm3)だけプレ噴射での燃料噴射を行うようにしてもよい。一方、プレ噴射の噴射総量としてインジェクタ23の最小限界噴射量の2倍以上(例えば3mm3以上)が要求される場合には、複数回数のプレ噴射を実行することで、このプレ噴射で必要な総噴射量を確保するようにしている。これにより、プレ噴射の着火遅れを抑制し、メイン噴射による初期燃焼速度の抑制を確実に行って、安定した拡散燃焼に導くことができる。
(逐次燃焼について)
以上のようにして本実施形態では、パイロット噴射及びプレ噴射によって気筒内の予熱が十分に行われる。この予熱により、後述するメイン噴射が開始された場合、このメイン噴射で噴射された燃料は、直ちに自着火温度以上の温度環境下に晒されて熱分解が進み、噴射後は直ちに燃焼が開始されることになる。
具体的に、ディーゼルエンジンにおける燃料の着火遅れとしては、物理的遅れと化学的遅れとがある。物理的遅れは、燃料液滴の蒸発・混合に要する時間であり、燃焼場のガス温度に左右される。一方、化学的遅れは、燃料蒸気の化学的結合・分解かつ酸化発熱に要する時間である。そして、上述した如く気筒内の予熱が十分になされている状況では上記物理的遅れを最小限に抑えることができ、その結果、着火遅れも最小限に抑えられることになる。
従って、メイン噴射によって噴射された燃料の燃焼形態としては、予混合燃焼が殆ど行われないことになり、大部分が拡散燃焼となる。その結果、燃料噴射タイミングを制御することがそのまま燃焼タイミングを制御することに略等しくなり、燃焼の制御性を大幅に改善することができる。つまり、これまで、ディーゼルエンジンの燃焼は、その予混合燃焼がかなりの割合を占めていたが、本実施形態では、この予混合燃焼の割合を最小限に抑えることで、燃料噴射タイミング及び燃料噴射量を制御する(噴射率波形を制御する)ことによる熱発生率波形(着火時期及び熱発生量)の制御によって燃焼の制御性を大幅に改善することが可能になる。本実施形態では、この新たな方式の燃焼形態を「逐次燃焼(燃料が噴射されて直ちに開始される燃焼)」または「制御燃焼(燃料噴射タイミング及び燃料噴射量によって能動的に制御される燃焼)」と呼ぶこととする。
(メイン噴射)
メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。本実施形態では、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じて決定される要求トルクを得るための上記総燃料噴射量から上記プレ噴射での噴射量を減算した噴射量として設定される。
ここで、上述したプレ噴射及びメイン噴射の制御プロセスについて簡単に説明する。
まず、エンジン1のトルク要求値に対して、上記プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和である総燃料噴射量が算出される。つまり、エンジン1に要求されるトルクを発生させるための量として総燃料噴射量が算出される。
上記エンジン1のトルク要求値は、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態、補機類等の使用状況に応じて決定される。例えば、エンジン回転数(クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジン1のトルク要求値としては高く得られる。
このようにして総燃料噴射量が算出された後、この総燃料噴射量に対するプレ噴射での噴射量の比率(分割率)を設定する。つまり、プレ噴射量は、総燃料噴射量に対して上記分割率で分割された量として設定されることになる。この分割率(プレ噴射量)は、「メイン噴射による燃料の着火遅れの抑制」と「メイン噴射による燃焼の熱発生率のピーク値の抑制」とを両立する値として求められる。これらを抑制することで、高いエンジントルクを確保しながらも、燃焼音の低減やNOx発生量の低減を図ることが可能になる。尚、本実施形態では、上記分割率を10%としている。
(アフタ噴射)
アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的に、本実施形態では、このアフタ噴射により供給された燃料の燃焼エネルギがエンジンのトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射を実行するようにしている。また、このアフタ噴射においても、上述したパイロット噴射の場合と同様に、最小噴射率(例えば1回当たりの噴射量1.5mm3)とし、複数回数のアフタ噴射を実行することで、このアフタ噴射で必要な総アフタ噴射量を確保するようにしている。
(ポスト噴射)
ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
−燃料噴射圧−
上記メイン燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、即ち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、及び、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。即ち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷及びエンジン回転数に基づいて設定される。この燃料圧力の目標値を設定するための具体的な手法については後述する。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジン1や吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量及び燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度及びアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(プレ噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−目標燃料圧力の設定−
次に、上記目標燃料圧力の設定手法及び燃圧設定マップについて説明する。先ず、本実施形態において目標燃料圧力を設定する際の技術的思想について説明する。
ディーゼルエンジン1においては、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが重要である。本発明の発明者は、これら要求を連立するための手法として、燃焼行程時における気筒内での熱発生率の変化状態(熱発生率波形で表される変化状態)を適切にコントロールすることが有効であることに着目し、この熱発生率の変化状態をコントロールするための手法として以下に述べるような目標燃料圧力の設定手法を見出した。尚、熱発生率の変化状態が適切にコントロールされているか否かの検証については、後述する「燃焼重心判定動作」によって行われる。
図4の上段に示す波形のうちの実線は、横軸をクランク角度、縦軸を熱発生率とし、プレ噴射及びメイン噴射で噴射された燃料の燃焼に係る理想的な熱発生率波形を示している。図中のTDCはピストン13の圧縮上死点に対応したクランク角度位置を示している。また、図4の下段に示す波形は、インジェクタ23から噴射される燃料の噴射率(クランク軸の単位回転角度当たりの燃料噴射量)波形を示している。
上記熱発生率波形としては、例えば、ピストン13の圧縮上死点(TDC)からメイン噴射で噴射された燃料の燃焼が開始され、ピストン13の圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後10度(ATDC10°)の時点)で熱発生率が極大値(ピーク値)に達し、更に、圧縮上死点後の所定ピストン位置(例えば、圧縮上死点後25度(ATDC25°)の時点)で上記メイン噴射において噴射された燃料の燃焼が終了するようになっている。このような熱発生率の変化状態で混合気の燃焼を行わせるようにすれば、例えば圧縮上死点後10度(ATDC10°)の時点で気筒内の混合気のうちの50%が燃焼を完了した状況となる。つまり、圧縮上死点後10度(ATDC10°)の時点が燃焼重心となって、膨張行程における総熱発生量の約50%がATDC10°までに発生し、高い熱効率でエンジン1を運転させることが可能となる。
また、この燃焼重心に到達した時点でのクランク角度と燃料噴射率波形との関係としては、インジェクタ23に対して燃料噴射停止信号を送信した時点から燃料噴射が完全に停止するまでの期間(図4における期間T1)に燃焼重心が位置することになる。
尚、上記プレ噴射で噴射された燃料の燃焼ではピストン13の圧縮上死点(TDC)において10[J/°CA]の熱発生率となっており、これにより、メイン噴射で噴射された燃料の安定した拡散燃焼が実現されることになる。この値は、これに限定されるものではなく。例えば、上記総燃料噴射量に応じて適宜設定される。また、図示していないが、プレ噴射に先立ってパイロット噴射も行われており、これにより気筒内温度を十分に高めて、メイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保している。
以上のようにして本実施形態では、パイロット噴射及びプレ噴射によって気筒内の予熱が十分に行われる。この予熱により、メイン噴射が開始された場合、このメイン噴射で噴射された燃料は、直ちに自着火温度以上の温度環境下に晒されて熱分解が進み、噴射後は直ちに燃焼が開始されることになる。
また、図4に二点鎖線αで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも高く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度及びピーク値が共に高くなりすぎており、燃焼音の増大やNOx発生量の増加が懸念される状態である。一方、図4に二点鎖線βで示す波形は、燃料噴射圧力が、適正値よりも低く設定された場合の熱発生率波形であり、燃焼速度が低く且つピークの現れるタイミングが大きく遅角側に移行していることで十分なエンジントルクが確保できないことが懸念される状態である。
上述したように、本実施形態に係る目標燃料圧力の設定手法は、熱発生率の変化状態の適正化(熱発生率波形の適正化)を図ることで燃焼効率の向上を図るといった技術的思想に基づくものである。そして、それを実現するために後述するような目標燃料圧力の設定を行っている。
図5の実線は、本実施形態に係るエンジン1における要求出力(要求パワー)と、その要求出力に応じて設定される目標燃料圧力との関係を示している。このように、要求出力と目標燃料圧力とは比例関係にあり、要求出力に対して目標燃料圧力が一義的に決定されるようになっている。言い換えると、各要求出力に対して目標燃料圧力がそれぞれ予め割り付けられている。
以下、要求出力に対する目標燃料圧力の設定手法について図5を用いて具体的に説明する。
先ず、図5に破線で示す仮燃圧ラインを設定する。この仮燃圧ラインは、要求出力が「0」である場合には目標燃料圧力も「0」となるように設定され、この図5に示すグラフの原点を通り且つ所定の傾きを有する直線として与えられている。
この仮燃圧ラインの傾きは、エンジン1の排気量等によって決定される。つまり、例えば排気量の大きなエンジン1ほど仮燃圧ラインの傾きとしては小さく設定される。この仮燃圧ライン上の目標燃料圧力は、要求出力に対して所定の比例定数(上記仮燃圧ラインの傾きに相当)をもって比例関係とされて求められることになる。つまり、要求出力に対して所定の比例定数が乗算されることで目標燃料圧力が求められ、この目標燃料圧力の集合が上記仮燃圧ラインとなっている。
そして、この仮燃圧ライン上のパワー重心点(図5に示すものでは要求出力40kWの点)に対し、所定の圧力オフセット量だけ仮燃圧ラインを高燃料圧側(図5の上側)に平行移動させ、これにより、図中に実線で示す燃圧ラインを設定する。尚、上記パワー重心点としては上記の値に限定されるものではない。
ここで、上記パワー重心点は、エンジン1の出力範囲のうち最も使用頻度の高い出力に相当する値として設定されている。
更に、上記圧力オフセット量としては、インジェクタ23から噴射されたメイン噴射の燃料が、上記ピストン13の圧縮上死点(TDC)で燃焼を開始した場合に、圧縮上死点後の所定ピストン位置(圧縮上死点後10度(ATDC10°)の時点)で筒内の熱発生率が極大値(ピーク値)に達するように設定されたものである。つまり、上記パワー重心点において、図4に実線で示した理想的な熱発生率波形が得られるように上記圧力オフセット量は設定されている。尚、この圧力オフセット量はエンジン1の排気量や気筒数などに応じ、予め実験やシミュレーションによりエンジン1の種類毎に個別に設定されることになる。また、本実施形態に係るエンジン1の燃料供給系2にあっては、目標燃料圧力の上限値(上限レール圧)としては200MPaに設定されている。
図6は、目標燃料圧力を決定する際に参照される燃圧設定マップである。この燃圧設定マップは、図5に実線で示した燃圧ラインに従って作成されたものであって、例えば上記ROM102に記憶されている。また、この燃圧設定マップは、横軸がエンジン回転数であり、縦軸がエンジントルクとなっている。また、図6におけるTmaxは最大トルクラインを示している。
この燃圧設定マップの特徴として、図中にA〜Iで示す等燃料噴射圧力ライン(等燃料噴射圧力領域)は、アクセルペダルの踏み込み量などに基づいて求められるエンジン1に対する要求出力(要求パワー)の等パワーライン(等出力領域)に割り付けられている。つまり、この燃圧設定マップでは、等パワーラインと等燃料噴射圧力ラインとが略一致するように設定されている。
具体的には、図6の曲線Aはエンジン要求出力が10kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として66MPaのラインが割り付けられている。以下、同様に、曲線Bはエンジン要求出力が20kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として83MPaのラインが割り付けられている。曲線Cはエンジン要求出力が30kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として100MPaのラインが割り付けられている。曲線Dはエンジン要求出力が40kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として116MPaのラインが割り付けられている。曲線Eはエンジン要求出力が50kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として133MPaのラインが割り付けられている。曲線Fはエンジン要求出力が60kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として150MPaのラインが割り付けられている。曲線Gはエンジン要求出力が70kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として166MPaのラインが割り付けられている。曲線Hはエンジン要求出力が80kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として183MPaのラインが割り付けられている。曲線Iはエンジン要求出力が90kWのラインであり、これに燃料噴射圧力として200MPaのラインが割り付けられている。これら各値は、これに限定されるものではなく、エンジン1の性能特性等に応じて適宜設定される。
また、上記各ラインA〜Iは、エンジン要求出力の変化量に対する燃料噴射圧力の変化量の割合が略均等に設定されている。
このようにして作成された燃圧設定マップに従い、エンジン1に対する要求出力に適した目標燃料圧力を設定し、サプライポンプ21の制御等を行うようになっている。
また、エンジン回転数とエンジントルクとが共に増加する場合(図6における矢印Iを参照)、及び、エンジン回転数が一定でエンジントルクが増加する場合(図6における矢印IIを参照)、並びに、エンジントルクが一定でエンジン回転数が増加する場合(図6における矢印IIIを参照)の何れにおいても燃料噴射圧力が高められる。これにより、エンジントルク(エンジン負荷)が高い場合における吸入空気量に適した燃料噴射量を確保し、また、エンジン回転数が高い場合における単位時間当たりの燃料噴射量を多くして短期間で必要燃料噴射量を確保することができる。
一方、エンジン回転数及びエンジントルクが変化したとしても、その変化後のエンジン出力が変化していない場合(図6における矢印IVを参照)には、燃料噴射圧力を変化させないようにして、それまで設定されていた燃料噴射圧力の適正値を維持する。つまり、上記等燃料噴射圧力ライン(等パワーラインに一致している)に沿うようなエンジン運転状態の変化では燃料噴射圧力を変化させないようにし、上述した理想的な熱発生率波形での燃焼形態を継続させる。この場合、NOx発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼行程時の燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を継続的に連立させることができる。
以上のように、本実施形態では、エンジン1に対する要求出力(要求パワー)と燃料噴射圧力(コモンレール圧)との間に一義的な相関を持たせ、また、エンジン回転数及びエンジントルクの少なくとも一方が変化することでエンジン出力が変化する状況では、それに応じた適正な燃料圧力での燃料噴射が行えるようにし、逆に、エンジン回転数やエンジントルクが変化してもエンジン出力が変化しない状況では、燃料圧力をそれまで設定されていた適正値から変化させないようにしている。これによって、エンジン運転領域の略全域に亘って熱発生率変化状態を理想状態に近付けることが可能になる。
−燃焼重心判定−
次に、本発明の特徴である燃焼重心の判定動作について説明する。この燃焼重心の判定は、上記メイン噴射で噴射された燃料が燃焼(大部分が拡散燃焼)する場合に、その燃焼重心が適正なタイミング(例えば、圧縮上死点後10度(ATDC10°)の時点)にあるか否かを判定するための動作である。つまり、燃焼重心が適正なタイミングにあれば、燃焼室3内での燃焼が良好に行われており、NOx発生量及びスモーク発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することができていると判定される。一方、燃焼重心が適正なタイミングになければ、上記各要求を連立できていないとして、燃焼重心を適正なタイミングに移行させるための燃焼制御が行われることになる。以下、具体的に説明する。
(燃焼重心判定動作)
先ず、燃焼重心が適正なタイミングにあるか否かを判定するための燃焼重心判定動作について説明する。
この燃焼重心判定の基本的な技術的思想は、先ず、上述した如く、各要求出力に対して目標燃料圧力(目標コモンレール内圧)をそれぞれ割り付けた状態(比例配分した状態)としておく。この状態で、上記メイン噴射で噴射された燃料が燃焼室3内で燃焼する場合に、その熱発生率を「単位時間当たりの熱発生量」として扱う。つまり、上記図4で示した熱発生率波形の横軸をクランク角度から時間に置き換える。これにより、燃料噴射量毎に略近似した熱発生率波形が得られ、それぞれの燃焼重心(燃焼室3内での熱発生量の累積が、メイン噴射で噴射された燃料の全量が燃焼した場合の熱発生量に対して「50%」に達した時点)が略一致することになる。
図7(a)〜(d)は、複数の燃料噴射量それぞれにおいてエンジン回転数が異なる場合の熱発生率の変化を示す波形図である。例えば、図7(a)はメイン噴射での燃料噴射量が10mm3の場合、図7(b)はメイン噴射での燃料噴射量が30mm3の場合、図7(c)はメイン噴射での燃料噴射量が50mm3の場合、図7(d)はメイン噴射での燃料噴射量が70mm3の場合のそれぞれについての熱発生率波形である。各図共に上段が横軸をクランク角度としたもの、つまり、クランク軸の単位回転角度当たりの熱発生量を熱発生率としたものであり、下段が横軸を時間としたもの、つまり、単位時間当たりの熱発生量を熱発生率としたものである。また、各図の実線はエンジン回転数が2000rpmの場合、破線はエンジン回転数が3600rpmの場合、一点鎖線はエンジン回転数が4800rpmの場合をそれぞれ示している。
このように、クランク軸の単位回転角度当たりの熱発生量を熱発生率とした場合、エンジン回転数が異なれば燃焼重心角度も異なっている。具体的には、エンジン回転数が高くなる程、燃焼重心角度は遅角側に移行することになる。これに対し、単位時間当たりの熱発生量を熱発生率とした場合には、エンジン回転数が異なっても熱発生率波形は略近似したものとなり、燃焼重心角度が略一致することになる。
図8は、各燃料噴射量毎における熱発生率(単位時間当たりの熱発生量)の変化及び燃料噴射率(単位時間当たりの燃料噴射量)の変化をそれぞれ示す波形図である。この図8における実線は燃料噴射量が70mm3の場合、破線は燃料噴射量が50mm3の場合、一点鎖線は燃料噴射量が30mm3の場合、二点鎖線は燃料噴射量が10mm3の場合をそれぞれ示している。そして、エンジン回転数が異なっても、熱発生率波形としては、各燃料噴射量毎に、この図8に示すそれぞれの波形に近似したものとなる。つまり、燃料噴射量毎に一つの熱発生率波形を描くことができ、これはエンジン回転数が変化しても燃焼重心時刻(TDCからの経過時間)が変化することがないことを意味している。具体的に、図8では、時刻t1が燃料噴射量10mm3の場合の燃焼重心であり、時刻t2が燃料噴射量30mm3の場合の燃焼重心であり、時刻t3が燃料噴射量50mm3の場合の燃焼重心であり、時刻t4が燃料噴射量70mm3の場合の燃焼重心である。
このようにして得られた燃料噴射量毎の燃焼重心(時間軸上において燃焼重心となった時刻)に対し、実際にその燃料噴射量で燃焼が行われた場合における燃焼重心(時間軸上において燃焼重心となった時刻)が略一致しているか否かを判定することによって、燃焼重心が適正な位置にあるか、言い換えると熱発生率が適正に得られているか否かを判定するようにしている。以上が、燃焼重心判定の基本的な技術的思想である。
次に、この燃焼重心判定手法について具体的に説明する。
上記燃焼重心時刻は以下の式(1)によって算出される。
燃焼重心時刻=基準燃焼重心時刻×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2…(1)
ここで、「基準燃焼重心時刻」は、予め設定された基準燃料噴射量で与えられる燃焼重心の時刻である。また、「基準燃料噴射量」は、「基準燃焼重心時刻」を設定するために予め規定された基準となる燃料噴射量である。これら「基準燃焼重心時刻」及び「基準燃料噴射量」は、予め実験やシミュレーションにより求められている。例えば、エンジン回転数が2000rpmであった場合に、「基準燃料噴射量」を30mm3に設定し、その場合の「基準燃焼重心時刻」としてTDCから700μsec経過時刻が得られた場合には、これら「基準燃料噴射量」及び「基準燃焼重心時刻」の値が上記式(1)における「基準燃料噴射量」及び「基準燃焼重心時刻」として与えられる。これらの値はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
また、上記「燃料噴射量」はインジェクタ23から実際に噴射される燃料噴射量に相当するものであり、上記要求出力(要求パワー)等に応じて設定される目標燃料噴射量である。また、コモンレール22とインジェクタ23とを接続する配管の途中に流量センサを設けておき、その流量センサによって検出される燃料流量に基づいて「燃料噴射量」を求めるようにしてもよい。
そして、燃焼重心が適正な位置にあるか否かを判定する際の実際の動作としては、以下の式(2)によって燃焼重心角度を算出し、この算出された燃焼重心角度と、実際に検出された燃焼重心角度とを比較することになる。これは、燃焼重心が適正か否かを判定する場合、実測しやすいクランク軸回転角度に対して、計算上の理想的なクランク軸回転角度上の燃焼重心を対比するようにすることで、判定動作の簡略化を図るためである。つまり、上記燃焼重心時刻は、回転数比の乗算によって燃焼重心角度に置き換えられることを利用し、以下の式(2)によって燃焼重心角度を算出するようにしたものである。即ち、以下の式(2)は上記式(1)と同義の計算式である。
燃焼重心角度=基準燃焼重心角度×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2
×(エンジン回転数/基準エンジン回転数) …(2)
ここで、「基準燃焼重心角度」は、予め設定された基準燃料噴射量で与えられる燃焼重心でのクランク回転角度である。また、「基準燃料噴射量」は、「基準燃焼重心角度」を設定するために予め規定された基準となる燃料噴射量である。尚、この式(2)は、メイン噴射で噴射された燃料の燃焼が行われている期間(メイン燃焼期間)において、クランクシャフトが1°回転する毎に要する時間が一定であると仮定した場合の近似式である。
これら「基準燃焼重心角度」及び「基準燃料噴射量」は、予め実験やシミュレーションにより求められている。例えば、エンジン回転数が2000rpmであった場合に、「基準燃料噴射量」を30mm3に設定し、その場合の「基準燃焼重心角度」としてATDC10°CAが得られた場合には、これら「基準燃料噴射量」及び「基準燃焼重心角度」の値が上記式(2)における「基準燃料噴射量」及び「基準燃焼重心角度」として与えられる。これらの値はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。
また、この場合にも、上記「燃料噴射量」はインジェクタ23から実際に噴射される燃料噴射量に相当するものであり、上記要求出力(要求パワー)等に応じて設定される目標燃料噴射量である。また、コモンレール22とインジェクタ23とを接続する配管の途中に流量センサを設けておき、その流量センサによって検出される燃料流量に基づいて「燃料噴射量」を求めるようにしてもよい。
この式(2)によって燃焼重心角度を算出し、この算出された燃焼重心角度と、実際に検出(実測)された燃焼重心角度とを比較することにより、燃焼重心が適正な位置にあるか否かを判定する。実際には、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度のデータが上記ROM102に格納されており、燃料噴射量に応じて特定の燃焼重心角度データがROM102から読み出され、その燃焼重心角度データと、実際に検出(実測)された燃焼重心角度とを比較することにより、燃焼重心が適正な位置にあるか否かを判定することになる。
ここで、燃焼重心角度を実測するための手法としては、エンジン回転数の変化(上記クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されたエンジン回転速度の変化)に基づいて行われる。また、筒内圧センサを備えさせ、その筒内圧変化に基づいて燃焼重心角度を実測するようにしてもよい。更には、シリンダブロックに取り付けられたノッキングセンサからの信号(振動信号)に基づいて燃焼重心角度を実測するようにしてもよい。更には、これらの組み合わせによって燃焼重心角度を実測するようにしてもよい。
そして、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が遅角側または進角側に所定量(例えばクランク角度で3°CA)以上乖離している場合には、燃焼重心がずれている、つまり、熱発生率が適正に得られていないと判定する。つまり、NOx発生量及びスモーク発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することができていないと判定する。このような判定が行われた場合には、以下の燃焼重心移動制御が実行される。以下、この燃焼重心移動制御について説明する。
(燃焼重心移動制御)
燃焼重心移動制御(燃焼重心時刻変更手段による燃焼制御)は、上述した如く、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が遅角側または進角側に所定量以上乖離している場合に、燃焼重心がずれていると判定した際の制御である。つまり、熱発生率が適正に得られていないと判定した場合に、この熱発生率を適正に得る(燃焼重心角度を適正に得る)ための制御である。以下、具体的に説明する。
この燃焼重心移動制御としては、具体的には、インジェクタ23から噴射される燃料の噴射時期の補正や、燃焼室3内の酸素濃度の補正を行うようにしている。
燃料噴射時期の補正としては、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が遅角側に所定量以上乖離している場合には、燃焼重心角度を進角側に移動させるように、燃料噴射時期を進角側に補正する。逆に、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が進角側に所定量以上乖離している場合には、燃焼重心角度を遅角側に移動させるように、燃料噴射時期を遅角側に補正する。これにより、燃焼重心角度を適正な位置にすることで、熱発生率の適正化が図れ、NOx発生量及びスモーク発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが可能になる。
一方、燃焼室3内の酸素濃度の補正としては、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が遅角側に所定量以上乖離している場合には、燃焼重心角度を進角側に移動させるように、燃焼室3内の酸素濃度を高める動作を行う。具体的には、上記EGRバルブ81の開度を小さくするか、全閉にする。または、ターボチャージャ5の可変ノズルベーン機構に備えられているノズルベーンの開度を小さくし、エンジン1の過給圧を高くする。または、上記スロットルバルブ62の開度を大きくする。尚、これらEGRバルブ81の制御、ノズルベーンの制御、スロットルバルブ62の制御のうち一つのみを実行してもよいし、複数を同時に実行してもよい。
これらの動作により燃焼室3内の酸素濃度が高められ、燃焼速度が高くなることに伴って燃焼重心角度が進角側に移動して、燃焼重心角度を適正な位置にすることができる。その結果、熱発生率の適正化が図れ、NOx発生量及びスモーク発生量を削減することによる排気エミッションの改善、燃焼音の低減、エンジントルクの十分な確保といった各要求を連立することが可能になる。尚、上記式(2)によって算出された燃焼重心角度に対して、実際に検出された燃焼重心角度が進角側に所定量以上乖離している場合には、燃焼重心角度を遅角側に移動させるように、燃焼室3内の酸素濃度を低くする動作を行う。この動作は、上述した燃焼室3内の酸素濃度を高める動作とは逆の動作により行われる。
以上説明したように、本実施形態では、燃焼重心が適正タイミングからずれているか否かを判定し、その判定結果に従って燃焼重心移動制御を実行するようにしたことにより、燃焼室3内で行われる燃焼の燃焼重心時刻が適正時刻からずれた状態での運転が継続されてしまうといった状況を早期に解消することができる。その結果、適正な熱発生率での燃焼が可能になって、NOxの発生量及びスモークの発生量を共に抑制し、排気エミッションの改善を図ることができる。
また、NOxの発生量を抑制するために燃料噴射タイミングが遅角側に制御されていたり、燃料性状(セタン価等)に応じて燃料噴射タイミングが進角側に制御されていたりした場合には、上記算出式によって求められた燃焼重心に対して、これら制御によって遅角側または進角側に変更された燃焼重心が適正な燃焼重心時刻であると補正した上で上述した燃焼重心判定動作及び燃焼重心移動制御が行われることになる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、コモンレール式筒内直噴型多気筒(4気筒)ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、例えば6気筒ディーゼルエンジンなど他の任意の気筒数のディーゼルエンジンにも適用可能である。また、本発明が適用可能なエンジンは、自動車用のエンジンに限るものではない。
また、上記実施形態では、通電期間においてのみ全開の開弁状態となることにより燃料噴射率を変更するピエゾインジェクタ23を適用したエンジン1について説明したが、本発明は、可変噴射率インジェクタを適用したエンジンへの適用も可能である。
また、上記実施形態では、燃焼重心を時間軸上で管理することで、燃焼重心が適正な位置にあるか否かを判定するようにしていた。本発明はこれに限らず、上記燃圧設定マップの適正化を検証することに役立てることもできる。つまり、燃焼重心が適正な位置にない場合、その原因の一つとして燃料圧力が適正に得られていないことが挙げられる。このため、燃焼重心が適正な位置にない場合に、燃圧設定マップの適正化を図るべく、燃圧の設定値を変更するようにしてもよい。
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンにおいて燃焼室内での燃焼が適正に行われているか否かの検証に利用することが可能である。
1 エンジン(内燃機関)
3 燃焼室
23 インジェクタ(燃料噴射弁)
5 ターボチャージャ
62 スロットルバルブ
81 EGRバルブ

Claims (5)

  1. 圧縮自着火式内燃機関の気筒内に向けて燃料噴射弁から噴射された燃料が燃焼する際の燃焼重心を判定する方法であって、
    上記燃料噴射弁から噴射される燃料の圧力を、内燃機関に要求される出力の大きさに応じて比例配分することにより設定したうえで、
    下記の式(1)、
    燃焼重心時刻=基準燃焼重心時刻×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2…(1)
    (基準燃焼重心時刻:予め設定された基準燃料噴射量及び着火開始時刻を基点として与えられる燃焼重心の時刻、基準燃料噴射量:基準燃焼重心時刻を設定するために予め規定された基準となる燃料噴射量)
    により燃焼重心時刻を求めることを特徴とする内燃機関の燃焼重心判定方法。
  2. 請求項1記載の内燃機関の燃焼重心判定方法において、
    上記燃焼重心時刻を、それに対応するクランク軸回転角度としての燃焼重心角度に置き換える下記の式(2)
    燃焼重心角度=基準燃焼重心角度×(燃料噴射量/基準燃料噴射量)1/2
    ×(内燃機関回転数/基準内燃機関回転数) …(2)
    (基準燃焼重心角度:予め設定された基準燃料噴射量及び着火開始角度を基点として与えられる燃焼重心のクランク軸回転角度)
    により燃焼重心角度を求め、この求められた燃焼重心角度と実際の燃焼重心角度との乖離量に基づき、この乖離量が所定量以上である場合には燃焼が適正に行われていないと判定する判定動作を行うことを特徴とする内燃機関の燃焼重心判定方法。
  3. 請求項2記載の内燃機関の燃焼重心判定方法によって、燃焼室内で行われている燃焼が適正に行われていないと判定された場合に、算出された燃焼重心時刻と実際の燃焼重心時刻との乖離時間を短縮するように燃焼室内での燃焼を制御する燃焼重心時刻変更手段を備えていることを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
  4. 請求項3記載の内燃機関の燃焼制御装置において、
    上記燃焼重心時刻変更手段は、燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁からの燃料噴射時期の補正を行うものであって、算出された燃焼重心時刻に対する実際の燃焼重心時刻の遅れ時間が長いほど燃料噴射時期を進角側に補正するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
  5. 請求項3記載の内燃機関の燃焼制御装置において、
    上記燃焼重心時刻変更手段は、燃焼室内の酸素濃度の補正を行うものであって、算出された燃焼重心時刻に対する実際の燃焼重心時刻の遅れ時間が長いほど燃焼室内の酸素濃度を高く設定するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
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