JP5181269B2 - 上下免震機構 - Google Patents

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Description

本発明は免震構造物に適用される免震機構に係わり、特に上部構造体と下部構造体との間に設置されてそれらの間の上下方向の相対振動に対する免震効果を得る上下免震機構に関する。
一般に免震構造は水平動に対しては有効であるが上下動に対しては殆ど効果がないのが現状である。これは免震装置の鉛直剛性が水平剛性の千倍以上と極めて大きく、上下方向の減衰も小さいためである。
そのため、上下動に効果的な免震構造として空気バネや皿バネを用いる上下免震装置が考えられており、特許文献1には皿バネによる上下免震装置と水平免震装置とを併用した3次元免震装置についての開示がある。
特開2001−82542号公報
しかし、空気バネや皿バネによる上下免震装置では、建物全体の重量を空気バネや皿バネにより安定に支持するためには大型化が不可避であるし、コストもかさむことから、現実的とはいえない。
また、いずれにしても上下動の変位振幅は水平動に比較すると桁違いに小さいのであるが、微小振幅で大きな負担力をもつような有効なダンパー(減衰装置)は実用化されていないことから、微小な上下動に対してダンパーを効果的に作動させてエネルギーを有効に吸収するためには鉛直剛性を小さくして上下動の変位振幅を大きくする必要がある。しかし、過度に鉛直剛性を小さくすると「ふかふかバネ」の状態となって常時の使い勝手や居住性が大きく損なわれ、好ましくない。
以上のことから、上下動に対する免震効果を発揮するためには、上部構造の大きな鉛直荷重に対応できて充分な支持力を有し、適度に低下した鉛直剛性を持ち、微小振幅から有効な減衰性能を持つという性能が要求されるのであるが、現時点ではそのような要求に応え得る有効適切な上下免震装置は提供されていない。
上記事情に鑑み、本発明は上記のような性能を備える有効適切な上下免震機構を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、上部構造体と下部構造体の間に生じる上下方向の相対振動に対して免震効果を得る上下免震機構であって、上部または下部のいずれか一方が水平に対して傾斜する傾斜面とされ、他方が水平面とされた略楔状の可動部材を少なくとも1対用いて、双方の可動部材の一端どうしを対向させた状態で対称配置して上部構造体と下部構造体との間に介装し、各可動部材の傾斜面を傾斜滑り支承により上部構造体または下部構造体に対して水平方向に変位自在に支持するとともに、各可動部材の水平面を水平滑り支承により下部構造体または上部構造体に対して水平方向に変位自在に支持することにより、上部構造体と下部構造体との間に上下方向の相対変位が生じた際に双方の可動部材を傾斜滑り支承および水平滑り支承により案内して互いに離接するように逆向きの水平方向に変位可能とし、かつ、双方の可動部材の一端どうしをバネ要素により連結してなることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の上下免震機構であって、傾斜滑り支承における摩擦抵抗力によって上部構造体と下部構造体との間の上下方向の相対振動に対する減衰力を得るように傾斜滑り支承における摩擦係数を設定し、かつ、水平滑り支承における摩擦係数を傾斜滑り支承における摩擦係数よりも小さく設定して、該水平滑り支承によって上部構造体を下部構造体に対して水平各方向に相対変位自在に支持してなることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、上部構造体と下部構造体の間に生じる上下方向の相対振動に対して免震効果を得る上下免震機構であって、上部および下部の双方が水平に対して互いに逆方向に同角度傾斜する傾斜面とされた略楔状の可動部材を少なくとも1対用いて、双方の可動部材の一端どうしを対向させた状態で対称配置して上部構造体と下部構造体との間に介装し、各可動部材の上下の傾斜面をそれぞれ傾斜滑り支承により上部構造体および下部構造体に対して水平方向に変位自在に支持することにより、上部構造体と下部構造体との間に上下方向の相対変位が生じた際に双方の可動部材を上下の傾斜滑り支承により案内して互いに離接するように逆向きの水平方向に変位可能とし、かつ、双方の可動部材の一端どうしをバネ要素により連結し、傾斜滑り支承における摩擦抵抗力によって上部構造体と下部構造体との間の上下方向の相対振動に対する減衰力を得るように傾斜滑り支承における摩擦係数を設定し、かつ、下部構造体とそれを支持する基盤との間に、下部構造体を基盤に対して水平各方向に相対変位自在に支持する水平免震機構を介装してなることを特徴とする。
本発明の上下免震機構によれば、略楔状の1対の可動部材を上部構造体と下部構造体の間に傾斜滑り支承を介して水平方向に変位可能な状態で介装し、それら可動部材どうしをバネ要素により連結した構成により、可動部材を介して上部構造体の鉛直荷重を支持しつつその鉛直剛性を傾斜角とバネ剛性の設定により任意に設定でき、したがって鉛直剛性を適度に低下させることによって上下方向の固有周期を長周期化でき、地震応答を大きく低減することができる。
また、可動部材を変位自在に支持する傾斜滑り支承における摩擦係数を適切に設定することにより、その摩擦抵抗力により履歴吸収エネルギーが生じて滑り支承自体がダンパー(減衰装置)として機能し、したがって他に格別の減衰要素を必要とすることなく優れた減衰効果が得られるし、滑り支承における傾斜角と摩擦係数の設定により減衰特性を自由にかつ広範に設定することができる。
さらに、摩擦係数が充分に小さい水平滑り支承により上部構造体を水平変位自在に支持したり、あるいは下部構造体(すなわち上下免震機構の全体)を基盤に対して水平免震機構により支持することにより全体として3次元免震機構を構成でき、上下免震効果のみならず水平免震効果も得られる。
図1は本発明の一実施形態である上下免震機構の基本構成を示すものである。本実施形態の上下免震機構は、上部構造体1(たとえば免震建物の本体)と、それを支持する下部構造体2(たとえば基礎)との間に設置されて、それらの間に生じる上下方向の相対振動に対して免震効果を得るものである。
本実施形態の上下免震機構は、上部が水平に対して傾斜している傾斜面とされ下部が水平面とされた略楔状の可動部材3を1対用いて、それら可動部材3の一端(図示例では高さ寸法の大きい基端側)どうしを対向させた状態で対称配置して上部構造体1と下部構造体2との間に介装するとともに、双方の可動部材3の傾斜面(図示例では上面)と水平面(同、下面)をそれぞれ傾斜滑り支承4および水平滑り支承5によって上部構造体1と下部構造体2に対して水平方向に変位自在に支持して双方の可動部材3どうしを互いに離接するように変位可能とし、かつ双方の可動部材3の一端どうしをバネ要素6により連結したものである。
各可動部材3の上部の傾斜面の水平に対する傾斜角θは適宜設定すれば良いが、たとえば tanθ=1/2〜1/5 程度とすることが好適である。なお、図示例ではその傾斜角θに対応して上部構造体1の底面に同角度の傾斜面を形成している。
傾斜滑り支承4および水平滑り支承5は、たとえばステンレス等からなる平滑な滑り面上を低摩擦係数の樹脂等(たとえばテフロン(登録商標))で被覆された滑り材が、鉛直荷重を支持しつつ直線上に滑らかに相対移動できるように構成した摺動(滑り)機構であるが、本実施形態では後述するように上面側の傾斜滑り支承4における摩擦抵抗力によって所望の減衰力を得るようにその摩擦係数μを適切に設定するものである。その摩擦係数μの値としては、たとえばμ=0.03〜0.1程度とすることが好適である。
また、下面側の水平滑り支承5における摩擦係数μは可及的に小さくして(実質的にゼロにして)、上部構造体1を可動部材3とともに水平各方向に滑らかに摺動させることが好ましく、それにより本実施形態の上下免震機構は上下方向のみならず水平方向に対する免震効果も得られて実質的に3次元免震機構として機能するものとなる。
可動部材3どうしを連結しているバネ要素6は可動部材3どうしが離接することに伴って伸縮して所望の鉛直剛性を与えるものであり、図示例の場合はそのバネ要素6として可動部材3どうしを常に外側に付勢する押しバネを使用している。
なお、図示例ではバネ要素6をコイルバネのように示しているが、所望のバネ剛性を有するものであればバネ要素6の形態や素材は適宜で良い。いずれにしても、バネ要素6は水平方向に伸縮するだけで可動部材3に対する回転が生じることはないので、可動部材3に対する連結はクレビスやボールジョイント等の複雑な接合機構を用いることなく単に固定するだけで良い。
本実施形態の上下免震機構は、上部構造体1と下部構造体2との間で上下方向の相対振動が生じた際には各可動部材3が離接するように逆向きの水平方向に変位し、かつバネ要素6の弾性付勢力が復元力となって元の位置に復元するものである。
すなわち、図示例の場合には、上部構造体1と下部構造体2とが接近するように相対変位した際(つまり、上部構造体1が下方に変位して下部構造体2との間の距離が狭まる場合)には、各可動部材3はバネ要素6に抗してそれを圧縮しつつ互いに接近するように内側に押し込まれる。逆に、上部構造体1と下部構造体2とが離反するように相対変位した際(つまり、上部構造体1が上方に変位して下部構造体2との間の距離が拡がる場合)には、バネ要素6の弾性付勢力によって各可動部材3は互いに離反するように外側に押し出される。
その際、可動部材3間の水平変位δxは上下方向の相対変位δzに対して2/tanθ倍に拡大され、上部の傾斜滑り支承4と下部の水平滑り支承5に作用する鉛直方向の反力の合計は、摩擦が無ければ可動部材3間に作用する水平力の2/tanθ倍となる。したがって、この機構によって鉛直方向のバネ剛性は、可動部材3間に設置したバネ要素6の実際のバネ剛性kの4/tan2θ倍に拡大されることになる。たとえば、傾斜角tanθ=1/5の場合、鉛直方向のバネ剛性Kはバネ要素の実際のバネ剛性kの100倍となる。
また、傾斜滑り支承4に所定の摩擦係数μを与えているため、上下動が一定の大きさになるまでは滑らないで、一定の大きさを超えてから免震効果を発揮する。したがって、歩行や車の移動等のような小さな加振力によって上部構造体が敏感に振動してしまう「ふかふかバネ状態」にはならない。
そして、傾斜面の傾斜角θと摩擦係数μにより、どの程度の変位から滑り始めて免震効果を発揮させるかを任意に設定できるし、後述する手法によりそのときの減衰定数の値を定式化することができる。
しかも、鉛直方向のバネ剛性は可動部材3どうしを連結しているバネ要素6の実際のバネ剛性kに対して拡大されることから過大な変形(沈下)を生じない。また、そのバネ要素6による復元力によって地震後に大きな残留変形が生じることもない。
以下、図2〜図6を参照して本実施形態の上下免震機構による免震原理とその解析手法および解析結果について詳細に説明する。
なお、以下の検討においては、可動部材3の上部の傾斜面の傾斜角度をθ、傾斜滑り支承での摩擦係数をμとする。下部の水平滑り支承での摩擦係数は充分小さく無視できるものとする。また、鉛直荷重をP、したがって片側の鉛直方向加力をP/2、傾斜面の抗力(傾斜面に垂直な方向に作用)をN、バネ反力をf、バネ要素6のバネ剛性をk、鉛直方向変位をδz、可動部材3の水平方向変位(伸縮量)をδx、自重をPoとする。
図2に示すように、鉛直方向に摩擦抵抗を受けながら載荷されてバネ反力が増す方向(可動部材3どうしが接近する方向)に水平変位する場合には、上記各諸元の関係から(1)式が導かれる。
Figure 0005181269
逆に、図3に示すように、鉛直方向に摩擦抵抗を受けながら除荷されてバネ反力が減る方向(可動部材3どうしが離反する方向)に水平変位する場合には、同様に(2)式が導かれる。
Figure 0005181269
摩擦力が作用しない場合においては、(1)式および(2)式において傾斜面での摩擦係数μ=0として(3)式となる。
Figure 0005181269
以上の結果を図4に示す。図4(a)に示されるように、摩擦がない場合の(3)式を基準にして、載荷時(加重方向に変位する場合)の挙動を示す(1)式の剛性は高く、除荷時(荷重が減って荷重逆方向に変位(復元)する場合)の挙動を示す(2)式の剛性は低くなる。
また、上下振動する場合の「荷重と変形の履歴特性」は、図4(a)に示しているようなループ状を呈する。すなわち、
・自重Poによる変位δoが生じている状態から、(1)式にぶつかるまでは変位は変わらず荷重が増加する。
・さらに荷重Pが増えると、(1)式の線上を移動する。
・荷重Pが減少に転ずると、変位が変わらず(2)式に達する。なお、(2)式に至る前 に荷重が増すと、Y軸に平行に(1)式に向かう。
・さらに荷重Pが減ると、(2)式の線上を原点に向けて移動する。
・荷重Pが増加に転じると、変位が変わらず(1)式に達する。
・さらに荷重Pが増えると、(1)式の線上を移動する(以下、繰り返し)。
このような履歴特性をもつため、上下振動すると摩擦により履歴吸収エネルギー(図4(b)に示す四角形の履歴ループの内側の面積に相当する)が生じて振動減衰機能を発揮する。
この場合、摩擦が無いときの鉛直方向の初期剛性K、自重Poによる初期変位δo、振幅a、各振動数ωで上下振動している場合の履歴吸収エネルギーWは次式となる。
Figure 0005181269
さらに、図4(b)に示すように振幅(−a〜+a)での等価剛性をK’とすると、その等価剛性K’とこれにより支持される質量mによって上下振動が決定されることから、等価な減衰係数をCeq、減衰定数をheqとして、減衰で吸収されるエネルギーWは次式で表すことができ、これを上式と等値とすることで減衰定数heqは(4)式として求められる。
Figure 0005181269
上記の解析により、いくつかの諸元を設定して等価な減衰定数heqを算定した結果の一例を図5に示す。(a)は傾斜角が1/5すなわちtanθ=0.2の場合、(b)は傾斜角が1/2すなわちtanθ=0.5の場合の例である。
図5から、振幅が大きくなると減衰が小さくなる傾向はあるが、傾斜滑り支承における摩擦係数μを通常の滑り支承と同等にμ=0.05〜0.1程度に設定することで減衰定数heqを0.1〜0.2程度とすることができることが分かる。すなわち、格別の減衰装置を設置しない通常の構造減衰の場合には減衰定数は0.01程度しかないが、本機構によればそれに比較して上下振動を抑制するための充分な減衰性能を付与できることが分かる。
以上の解析は変位振幅をもとに整理したものであるが、応力振幅(軸力変動)で整理すると、変位δoで滑りを生じない範囲の応力振幅ΔPが次式の範囲の場合には、変位がδoのままで履歴ループを描かないため、減衰を付与できず、heq=0となる。
Figure 0005181269
応力振幅がさらに大きくなると、履歴ループを描くようになり、その場合においては次式によりΔP、a/δoが求められる。
Figure 0005181269
そして、上記で求めたa/δoを(4)式に代入することにより、等価な減衰定数heqは次式で求められる。なお、ΔP/Poは応力振幅比(応答軸力/自重)である。
Figure 0005181269
以上の解析により変位振幅と同様に等価な減衰定数heqを算定した結果を図6に示す。図6から明らかなように、傾斜角θが小さいほど、また摩擦係数μが大きいほど、減衰効果を発揮し始める応力振幅は大きくなる(つまり、大きな応力振幅にならないと滑り始めず、効き始めが遅くなる)。具体的に一例を挙げれば、傾斜角θが1/2(図6(b)参照)の場合において摩擦係数μ=0.05の場合には、応力軸力が自重Poの0.13倍から効き始め、自重Poの0.8倍までは減衰定数が0.1以上となり、かなり広範囲に応答低減効果を期待できる。
また、減衰定数heqの式にバネ剛性kを含まないことから、減衰定数heqはバネ剛性kによらないことがわかる。
以上、本実施形態の上下免震機構について説明したが、以下にその効果について列挙する。
(1)複雑かつ高価な直動機構(リニアガイド)等のメカニズムやオイルダンパー等の減衰装置を使用せず、単なる滑り支承を水平に対してわずかに傾斜配置することのみでその摩擦力により減衰力が得られ、鉛直荷重が大きい場合にも充分に対応できる。そのため、単純な構成でローコストでありながら高性能な上下免震機構を実現することができる。
(2)滑り支承に所定の摩擦係数をもつため、微小振動に対しては滑らず免震効果を発揮しない。このため、常時の歩行や車の移動によって敏感に揺れてしまう所謂「ふかふかバネ」状態にはならない。勿論、大地震時には滑りを生じて摩擦抵抗力を減衰に利用することで応答を充分に低減でき、上下免震機構として有効に機能する。
(3)一般的に、上下動による鉛直方向変位は全ての支承位置でほぼ同一となる。常時荷重(軸力)による支承の鉛直変位が均等になるように(不同沈下しないように)支承内のバネ要素6のバネ剛性kを設定しておけば、応力振幅比ΔP/Poも同一になる。この場合、滑り始めるときの応力振幅比ΔP/Poは次式で決定されるから、バネ剛性kによらず、摩擦係数μ、傾斜角θが一定であれば変わらない。そこで、全ての支承において傾斜面の摩擦係数μと傾斜角θを同じにすれば同時に滑り始め、同一の上下振動をさせることができる。
Figure 0005181269
(4)減衰定数heqもバネ要素6のバネ剛性kに依存しない(バネ剛性kの値により変化しない)。したがって、全ての支承において傾斜面の摩擦係数μ、傾斜角θを同じにすれば、軸力に比例した減衰力をもつことができる。
(5)傾斜面の摩擦係数μと傾斜角θにより、上下動免震の効果を発揮し始める(滑り始める)時の応力振幅比を任意に設定できる。
なお、応力振幅比ΔP/Poが小さい場合から効果的にするためには摩擦係数μを小さくして傾斜角θを大きくすれば良いが、その場合は応力振幅比ΔP/Poが大きくなったときの減衰定数heqが小さくなってしまう。したがって、上下動が問題となる応力振幅比ΔP/Poの下限を滑り始めとなるように設定することで、これより大きな地震動に対する上下振動を大幅に低減することができる。
また、応力振幅比ΔP/Poが増大するとこれに反比例するように減衰定数heqが減少し、応答低減効果も低下するが、いずれにしても等価な減衰定数heqを0.1程度以上には容易に確保することができる。つまり、一般的な構造物における上下振動に対する減衰定数は0.01程度しかないことを考慮すると、それに比べて10倍以上もの減衰性能を確保でき、大幅な応答低減効果が得られる。
(6)全ての支承が同一の上下振動をするため、エネルギー吸収効率が高く、免震層上部基礎に過大な応力を生じない。隣接する支承の鉛直変位が異なると下部構造体2(通常は基礎梁がこれに相当する)に強制変位による大きな応力が生じてしまうが、全ての支承の鉛直変位が同一になるように容易に設定できるのでそのような応力を生じない。
(7)支承内に可動部材3どうしを連結するバネ要素6があるため、そのバネ剛性kにより揺れが収まると原位置に復元するので、残留変形が小さくなる。
(8)滑りを生じた後の鉛直剛性はバネ要素6のバネ剛性kで決定されるが、従来の免震より大幅に低下させることができるので、上下動に対して長周期化し、地震応答が大きく低減される。
(9)傾斜滑り支承4による上下方向の免震のみならず、水平滑り支承5による水平方向の免震効果も同時に得られるので、全体として3次元免震機構となる。
以上で本発明の一実施形態を説明したが、図7に他の実施形態を示す。
図7(a)は全体の天地を逆に構成したものである。すなわち、可動部材3の上部を水平面として水平滑り支承5により上部構造体1の底面に対して水平変位自在に支持し、可動部材3の下部を傾斜面として傾斜滑り支承4により下部構造体2の上面に対して水平変位自在に支持したものである。この場合は上部側の水平滑り支承5における摩擦係数μを可及的に小さくし、下部側の傾斜滑り支承4における摩擦係数μを所望の減衰を得るように設定することにより、上記実施形態と同様の効果が得られる。
図7(c)は他の実施形態を示すもので、図7(b)はその基本構成を示すものである。すなわち、図7(b)は可動部材3の上部および下部の双方を傾斜面とし、双方の傾斜面をいずれも傾斜滑り支承4により水平変位自在に支持したものであり、上下の傾斜滑り支承4の摩擦係数の設定により充分な減衰力が得られる。但し、この場合は上部構造体1と下部構造体2との間の水平方向の相対変位は可動部材3により拘束されるので水平免震効果は期待できず、それが不要な場合に限られる。
そこで、図7(c)はさらに下部構造体2を基盤7に対して水平免震機構8を介して水平方向に免震支持したもの、すなわち(b)に示した上下免震機構全体をさらに水平免震支持して全体として3次元免震機構を構成したものである。この場合、上下免震機構全体を免震支持するための水平免震機構8としては、水平滑り支承はもとよりベアリング支承やローラ支承等の転がり支承のみならず積層ゴム等も採用可能である。
図7(d)は可動部材3の向きを上記各例とは逆にして高さ寸法の小さい先端どうしを対向させ、バネ要素6として可動部材3どうしを常に内側に付勢する引きバネを用いたものである。この場合は、上部構造体1が下方に変位した際には各可動部材3はバネ要素6に抗してそれを伸張させつつ互いに離反するように外側に押し出され、上部構造体1が上方に変位した際にはバネ要素6の付勢力によって各可動部材3は互いに接近するように内側に引き寄せられることになり、動作方向が逆になるだけで上記各例と同様に機能する。勿論、この場合も傾斜面の位置は任意であって図示しているように下部を傾斜面とすることに限らず、図7(a)〜(c)に示したように傾斜面を下部としたり、あるいは上部と下部の双方にしても良いことはいうまでもない。
なお、上記各例ではいずれも可動部材3を1対2台として使用したが、2対4台の可動部材を直交方向に配置したり、あるいは多数対の可動部材を放射状に配置したり任意の方向に向けて配置することも考えられる。
本発明の一実施形態である上下免震機構を示す概略構成図である。 同、解析例を示す図である。 同、解析例を示す図である。 同、解析例を示す図である。 同、解析結果を示す図である。 同、解析結果を示す図である。 同、他の実施形態を示す図である。
符号の説明
1 上部構造体
2 下部構造体
3 可動部材
4 傾斜滑り支承
5 水平滑り支承
6 バネ要素
7 基盤
8 水平免震機構

Claims (3)

  1. 上部構造体と下部構造体の間に生じる上下方向の相対振動に対して免震効果を得る上下免震機構であって、
    上部または下部のいずれか一方が水平に対して傾斜する傾斜面とされ、他方が水平面とされた略楔状の可動部材を少なくとも1対用いて、双方の可動部材の一端どうしを対向させた状態で対称配置して上部構造体と下部構造体との間に介装し、
    各可動部材の傾斜面を傾斜滑り支承により上部構造体または下部構造体に対して水平方向に変位自在に支持するとともに、各可動部材の水平面を水平滑り支承により下部構造体または上部構造体に対して水平方向に変位自在に支持することにより、上部構造体と下部構造体との間に上下方向の相対変位が生じた際に双方の可動部材を傾斜滑り支承および水平滑り支承により案内して互いに離接するように逆向きの水平方向に変位可能とし、
    かつ、双方の可動部材の一端どうしをバネ要素により連結してなることを特徴とする上下免震機構。
  2. 請求項1記載の上下免震機構であって、
    傾斜滑り支承における摩擦抵抗力によって上部構造体と下部構造体との間の上下方向の相対振動に対する減衰力を得るように傾斜滑り支承における摩擦係数を設定し、
    かつ、水平滑り支承における摩擦係数を傾斜滑り支承における摩擦係数よりも小さく設定して、該水平滑り支承によって上部構造体を下部構造体に対して水平各方向に相対変位自在に支持してなることを特徴とする上下免震機構。
  3. 上部構造体と下部構造体の間に生じる上下方向の相対振動に対して免震効果を得る上下免震機構であって、
    上部および下部の双方が水平に対して互いに逆方向に同角度傾斜する傾斜面とされた略楔状の可動部材を少なくとも1対用いて、双方の可動部材の一端どうしを対向させた状態で対称配置して上部構造体と下部構造体との間に介装し、
    各可動部材の上下の傾斜面をそれぞれ傾斜滑り支承により上部構造体および下部構造体に対して水平方向に変位自在に支持することにより、上部構造体と下部構造体との間に上下方向の相対変位が生じた際に双方の可動部材を上下の傾斜滑り支承により案内して互いに離接するように逆向きの水平方向に変位可能とし、
    かつ、双方の可動部材の一端どうしをバネ要素により連結し、
    傾斜滑り支承における摩擦抵抗力によって上部構造体と下部構造体との間の上下方向の相対振動に対する減衰力を得るように傾斜滑り支承における摩擦係数を設定し、
    かつ、下部構造体とそれを支持する基盤との間に、下部構造体を基盤に対して水平各方向に相対変位自在に支持する水平免震機構を介装してなることを特徴とする上下免震機構。
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