JP5172888B2 - アルミニウム材料の表面処理方法 - Google Patents

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本発明は、アルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム域を生成するアルミニウム材料の表面処理方法に関するものである。
従来より、アルミニウム材料又はアルミニウム合金の表面に窒化アルミニウムを形成して、耐摩耗性を向上させる手法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、アルミニウムなどの被処理材表面を活性化する工程及びグロー放電を発生させて該被処理材表面をイオン窒化して窒化アルミニウム層を表面に形成する工程を有する窒化アルミニウム層を有するアルミニウム材料の製法が提案されている。
しかしながら、特許文献1は、形成できるAlN層の膜厚がせいぜいで10数μm、実際には数μm程度が限界であり、十分な厚さを形成することができなかった。また、数μm〜10数μmのAlN層を形成するには長時間、例えば24時間超を要し、コスト面においても不所望の方法であった。得られるAlN層も不均一であるために、所望の耐摩耗性を得ることができなかった。さらに、被処理材であるアルミニウムとの密着性も良好でなく、剥離などが観察され、この点においても所望のものは得ることができなかった。
特許文献2には、かかる特許文献1の技術の課題、即ちAlNの膜厚の薄さ、耐摩耗性の不均一性、AlNと母材との不十分な密着性などを改善した方法が開示されている。即ち、特許文献2には、アルミニウムなどの母材、該母材表面上にAl−Agの金属間化合物層、及び該金属管化合物層上にAlN層を有する耐摩耗性に優れたアルミニウム材が提案されている。
しかしながら、特許文献2は、特許文献1の課題を幾分解決してはいるが、AlNの膜厚が10μmを越えるとクラックが生じるという課題(特許文献2の段落0036)を有している。また、中間層としてAgを用いるため、コスト面において不所望の方法であった。さらに、特許文献2では、次のように、材料を選択する上での制限を受けることとなる。
即ち、1)アルミニウム材料に銀を含まなければならないこと、2)銀を含有する中間層を「膜状」に析出させなければならないこと。また、これらの制限に留まらず、該中間層を介してAlNが形成されているため、母材となるアルミニウム材料とAlNとの密着強度が、該中間層に依存し、機械的強度の選択性が喪失するなどの課題を有していた。
これに対して、特許文献3には、CuAl2を有するアルミニウム材料を準備する工程、及び該アルミニウム材料をプラズマ窒化する工程を有し、これによりアルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域を生成する、AlN域を表面に有するアルミニウム材料の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、アルミニウム材料の表面に、特許文献1,2のものに比べて、AlN域の膜厚が厚く、域内において均一であり、母材との密着性が高い、AlN域を生成することができる。
特開昭60−211061号公報 特開平5−179420号公報 WO2004/065653号公報
ところで、窒化アルミニウム(AlN)は、極めて高い熱伝導性をもち、電気絶縁性も高く、耐熱性や耐食性にも優れる。また耐摩耗性にも優れるため、アルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域を生成することは、アルミニウム材料の表面の強化に有効であるため、上記の特許文献3の技術のように、AlN域の膜厚が厚く、域内において均一であり、母材との密着性が高くなれば、AlN域の耐久性も向上しうる。
しかし、このようなAlN域に対しては、耐摩耗性、耐衝撃性、耐クラック性、圧縮応力の緩和性といった耐久性に関し更なる向上が要望されている。例えば、より硬度が高く耐摩耗性に優れ、しかも靭性も高く耐衝撃性に優れたAlNの開発が求められている。ただし、一般には、硬度と靭性とは、硬度が高くなれば靭性が低下し、靭性が高くなれば硬度が低下するというトレードオフの関係があるため、高硬度と高靭性との両立は極めて困難なものである。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、耐摩耗性及び耐衝撃性により優れた窒化アルミニウム(AlN)域を表面に備えたアルミニウム材料の表面処理方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のアルミニウム材料の表面処理方法は、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)を含有するアルミニウム材料を準備する工程と、準備した該アルミニウム材料をプラズマ窒化処理して、前記アルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域を生成するプラズマ窒化工程とをそなえ、前記アルミニウム材料に含有されるシリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の含有率は、シリコン(Si)が0.4〜0.8重量パーセント、マグネシウム(Mg)が0.8〜1.2重量パーセントであり、前記プラズマ窒化工程では、活性化した第1の窒化性気体雰囲気下で、−100〜−350Vの連続した直流電圧を前記アルミニウム材料に印加する工程を実施することを特徴としている(請求項1)。
前記プラズマ窒化工程は、300〜600℃で1時間以上実施することが好ましい(請求項2)。
前記第1の窒化性気体は、窒素と水素とからなる気体を含んだ気体、及び/又は、窒素ガスと水素ガスとを含んだ気体であることが好ましい(請求項3)。
この場合、前記第1の窒化性気体は、窒素分圧0.1〜2.0Torr,水素分圧0.3〜6.0Torrであることが好ましい(請求項4)。
また、前記プラズマ窒化工程前に、前記アルミニウム材料をスパッタリング処理し前記アルミニウム材料の表面に存在するアルミナ(Al23)を除去するスパッタリング処理工程をさらにそなえていることが好ましい(請求項5)。
前記スパッタリング処理工程は、分圧0.01〜20Torrの窒素を含み化学的反応活性化した第2の窒化性気体雰囲気下で、前記アルミニウム材料を陰極として直流電圧−100V〜−1000Vを印加して、10分間以上実施することが好ましい(請求項6)。
ここで、連続直流電圧を印加する場合は、窒素分圧を0.1〜20Torr、好ましくは0.1〜5Torrとした雰囲気下で前記アルミニウム材料を陰極として直流電圧−100〜−1000Vを、好ましくは−150〜−500Vを印加して、10分間以上、好ましくは60分間以内、更に好ましくは30分以内実施することが好ましい。
この際、ガス圧力(分圧)が低ければ高い電圧でプラズマを発生させることが可能であるが、ガス圧力が高いと高い電圧を印加することはできないので、印加する電圧に応じたガス圧力(分圧)を採用することが必要になる。
本発明のアルミニウム材料の表面処理方法によれば、アルミニウム材料の表面に、柱状組織と粒状組織とが重合した組織構造の窒化アルミニウム域が生成された、本発明のアルミニウム材料を製造することができる。このように、柱状組織と粒状組織とが重合した組織構造の場合、柱状組織により硬度が高められ、これにより窒化アルミニウム域の耐摩耗性が向上し、粒状組織により靭性が高められ、これにより窒化アルミニウム域の耐衝撃性が向上する。また、柱状組織と粒状組織とが重合したことにより、耐クラック性、圧縮応力の緩和性についても向上する。このように、窒化アルミニウム域の様々な性能を大きく向上させることができ、基材のアルミニウム材を高レベルで保護しうるものになる。
本発明の一実施形態としてのアルミニウム材料を示す模式的な構造図であり、(a),(b)でAlN層(AlN域)の構成が異なる場合をそれぞれ示す。 本発明の一実施形態にかかる第1実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態にかかる第1実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を図2よりもさらに拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態にかかる第1実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大し各含有成分に着目して示す図面代用電子顕微鏡写真であって、(a)はアルミニウム(Al)に着目した電子顕微鏡写真、(b)は窒素(N)に着目した電子顕微鏡写真、(c)は酸素(O)に着目した電子顕微鏡写真、(d)はマグネシウム(Mg)に着目した電子顕微鏡写真、(e)はシリコン(Si)に着目した電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施形態にかかる第1実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を図2よりもさらに拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真であって、(a)はアルミニウム(Al)に着目した電子顕微鏡写真、(b)は窒素(N)に着目した電子顕微鏡写真、(c)は酸素(O)に着目した電子顕微鏡写真、(d)はマグネシウム(Mg)に着目した電子顕微鏡写真、(e)はシリコン(Si)に着目した電子顕微鏡写真である。 本発明に関連する関連実施形態にかかる第2実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。 本発明に関連する関連実施形態にかかる第3実施例のアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。 Al−Mg元合金の状態図である。 Al−Si元合金の状態図である。
[概要]
本発明者らは、窒化アルミニウム(AlN)の生成時に、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)が母材としてのアルミニウム材料に特定の割合で存在することが、短時間で厚いAlN層(AlN域)の形成及び母材との密着性を有するAlN層の形成に有効であるだけでなく、AlN層に柱状組織と粒状組織とが重合した組織構造が形成されることを見出した。
特に、本発明者らは、工業的に用いられているアルミニウム合金を窒化してその表面にAlNを形成する試行を繰り返す過程で、AlN層に上記の柱状組織と粒状組織とが重合した組織構造が形成される特定のアルミニウム合金が存在することを見出した。
そこで、本発明のアルミニウム材料の表面処理方法は、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)を含有するアルミニウム材料を準備する工程と、準備した該アルミニウム材料をプラズマ窒化処理して、前記アルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域を生成するプラズマ窒化工程とをそなえているが、以下、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の含有率が特定されるアルミニウム材料毎に、実施形態を説明する。
[実施の形態]
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図9は本発明の実施形態に係るアルミニウム材料を示すものであり、図1〜図5は本発明の一実施形態に係るアルミニウム材料を示し、図6,図7は本発明に関連する関連実施形態に係るアルミニウム材料を示し、図8,図9は各実施形態にかかる合金の状態図である。
[一実施形態]
まず、本発明の一実施形態について説明する。
(材料)
本実施形態で母材として用いるアルミニウム材料にはSi及びMgが含有されている。ここでは、以下の表1に示すJIS規格の「6061」を用いた実施例を挙げて説明する。「6061」の場合、Si及びMgに着目すれば、Siは0.4〜0.8mass%含まれ、Mgは0.8〜1.2mass%含まれている。
また、プラズマ窒化工程では、活性化した第1の窒化性気体雰囲気下で、連続した直流電圧をアルミニウム材料に印加する第1の処理工程と、パルス電圧をアルミニウム材料に所定時間だけ印加する印加工程と所定時間だけ印加を休止する印加休止工程とを交互に繰り返す第2の処理工程と、のいずれかにより処理を行なうことが必要であるが、本実施形態では、アルミニウム材料に連続した直流電圧を印加する第1の処理工程を採用している。
本実施形態と同様な条件で、同様な工程によりAlN層を生成した場合に「6061」と同様の効果、即ち、図1(a),(b)に示すように、母材(アルミニウム材料)1の表面のAlN層2に柱状組織21と粒状組織22とが重合した組織構造が形成されうるSi及びMgの含有率は、「6061」よりも広いものと考えられる。
母材1表面のAlN層2に柱状組織21と粒状組織22とが重合した組織構造形成されうるSi及びMgの含有率は、Siが0.006〜13.5重量パーセント程度であって、Mgが0.006〜6.2重量パーセント程度であれば、同様の効果を得られるものと考えられる。
この場合には、アルミニウム材料に含有されるシリコン(Si)とマグネシウム(Mg)との含有率の比(Si/Mg)は、好ましくは、5×10-4〜2.3×103の範囲、より好ましくは、1×10-3〜1×10-1の範囲とする。
なお、ここに掲げた範囲は、表2に示すAl−Si系とAl−Mg系二元平衡状態図とにおける最大固溶限から求めた比と、表3に示すJISハンドブック(非鉄)PP966−975(アルミニウム合金の国際合金記号)を参考にしてSiとMgの含有量の最大値と最小値とから求められるもので、上記の範囲5×10-4〜2.3×103の範囲は、表2
,3中の(A)/(D)〜(G)/(F)であり、上記の範囲1×10-3〜1×10-1の範囲は、表2,3中の(E)/(H)〜(C)/(D)である。

なお、この場合、Mgはいずれの濃度でもAl中に固溶できる濃度であるが、実際にはSi濃度によりMg2Siを析出している可能性もあるものと考えられる。
また、Si及びMgは、窒化の過程で母材(アルミニウム材料)1中からその表面のAlN成長領域内に進出していきながら、AlN成長時、特に、柱状組織21の成長の核となりながら外方に移動していき、特定の移動スパンで一部は移動を止め粒状組織22の成長の核となりなる、といった過程を繰り返しながら、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合した組織構造が形成されるものと考えられる。このため、Si及びMgはアルミニウム材料(母材)1中に、ある程度均一に分散されていることが好ましい。
(AlN域生成工程)
なお、ここでは、「Si及びMgを含有するアルミニウム材料を準備する工程」として、市販の、Si及びMgを含有するアルミニウム合金を選定してそのまま用いる工程となっているが、「Si及びMgを含有するアルミニウム材料を準備する工程」には、母材としてアルミニウム材料がSi及びMgを含んでいない場合、Si及びMgを含むように、アルミニウム母材を処理する工程も含まれることになる。
なお、用いるアルミニウム母材がSi及びMgを含んでいない場合、「Si及びMgを含むアルミニウム材料を準備する工程」は、(1)Si及びMgを所要量だけ含むAl合金(Si,Mgを含むAl合金)の溶製(溶解製造)工程と、(2)この溶製した材料を鍛造,圧延する工程と、(3)その後溶体化処理する工程とにより、構成することができる。
ここで、各工程を説明する。
(1)溶製工程は、用いる材料がAl単体,Si単体,Mg単体などの場合に用いる工程であり、Si,Mgを含むAl合金、例えばAl−Mg−Si系合金を得る工程である。
(2)鍛造,圧延工程は、得られたAl合金を鍛造及び/又は圧延する工程である。
(3)溶体化工程は、Al合金をAl以外の元素(例えばAl−Mg−Si系合金であればMg又はSi)の溶解度以上の温度(溶体化温度)に加熱してAl以外の元素を過飽和に溶け込ませ、十分に固溶し終わった後に、Al以外の元素又はそれを含む結晶などが生じない冷却速度で急冷し、常温で過飽和の固溶状態を調製する工程である。
なお、この場合、アルミニウム材料は、バルクであっても、粉体であってもよい。ここで、粉体とは、平均粒径1mm程度のチップ材から平均粒径1μm粉末を意味する。したがって、本発明により、その表面の所定領域にAlN域を有するアルミニウム粉体材料を提供することも、その表面の所定領域にAlN域を有するアルミニウムバルク材料を提供することもできる。
アルミニウム材料の準備工程後、このアルミニウム材料をプラズマ窒化する工程を実施する。但し、プラズマ窒化前に、アルミニウム材料の表面に存在するAl23を除去する工程、例えばスパッタリング処理工程に付するのがよい。
Al23除去工程は、従来より行われている工程を用いることができる。例えば、塩素イオンによる還元、アルゴンイオンスパッタリングなどを挙げることができるが、これらに限定されない。但し、本発明において、後に行うプラズマ窒化処理との関係上、Al23除去工程は、母材としてのアルミニウム材料を容器内に配置し、該容器内を真空下とし、その後、窒化性気体下、好ましくは下記のような条件で、アルミニウム材料を陰極として直流電圧を印加して、下記の時間、アルミニウム材料をスパッタリング処理するのが好ましい。
・プレスパッタリング条件
最小電圧/最大電圧 −150/−500(V)
最小電流密度/最大電流密度0.5/20(μA/mm2
時間:最小/最大 10/60(min)
窒素分圧:最小/最大 0.1/5.0(Torr)
なお、上記の各条件は、最も好ましい条件であり、最小電圧/最大電圧については、−100/−1000(V)でもよく、より好ましいのが−150/−500(V)である。最小電流密度/最大電流密度については、0.018/52.9(μA/mm2)でもよく、より好ましいのが0.5/20(μA/mm2)である。最小電流密度の0.018(μA/mm2)は、自然酸化膜Al23の密度を3.95g/cm3とし、その厚さを10nmとして、1hのプレスパッタリングで除去し得たと仮定したときの電流密度であり、最大電流密度の52.9(μA/mm2)は、自然酸化膜Al23の密度を3.95g/cm3とし、その厚さを500nmとして、1minのプレスパッタリングで除去し得たと仮定したときの電流密度である。
時間については、10分以上であればよく、好ましくは60分間以内、更に好ましくは30分以内である。窒素分圧については、0.1〜20Torrであればよく、好ましくは0.1〜5Torrである。
この際、ガス圧力(分圧)が低ければ高い電圧でプラズマを発生させることが可能であるが、ガス圧力が高いと高い電圧を印加することはできないので、印加する電圧に応じたガス圧力(分圧)を採用することが必要になる。
スパッタリング処理工程は、化学的反応活性化した第2の窒化性気体雰囲気下で行うのがよい。ここで、「第2の窒化性気体」は、N2ガスのみ、又はN2ガスと不活性ガス(例えばArガス)との混合気体であるのがよい。
なお、前述のように、スパッタリング工程は、その温度及び/又は時間などの条件によっては、「時効析出処理工程」を兼ねる場合、即ち「CuAl2を有するアルミニウム材料を準備する工程」を兼ねる場合もある。
次いで、アルミニウム材料は、プラズマ窒化工程に付される。この工程によりアルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域が形成される。
プラズマ窒化工程は、以下のような条件で行うのがよい。
プラズマ窒化条件
温度:最低/最高 300/600(℃)
時間:最短/最長 4/9(h)
最小電圧/最大電圧 −100/−350(V)
最小電流密度/最大電流密度0.5/20(μA/mm2
窒素分圧:最小/最大 0.01/2.0(Torr)
水素分圧:最小/最大 0.3/6.0(Torr)
アンモニア:最小/最大 0.02/20(Torr)
ただし、アンモニアガスは必須条件ではない。
また、この実施形態のプラズマ窒化工程では、活性化した第1の窒化性気体雰囲気下で、被処理物に−100〜−350(V)の直流電位を印加して、第1の窒化性気体雰囲気を活性化させて、電流密度が0.5〜20(μA/mm2)とした連続直流グロー放電による処理工程(第1の処理工程)を用いるものとする。
この処理工程は、AlNの所望の厚さに依存して、その処理時間が異なるが、一般に処理工程は0.5時間以上、例えば0.5〜100時間行うことができるが、好ましくは、1〜25時間、必要にして十分なAlNの厚さを得られる処理時間としては、上記のごとく4〜9時間である。
なお、プラズマ窒化工程の雰囲気は、第1の窒化性気体雰囲気であるのがよい。ここで、第1の窒化性気体は、窒素と水素とからなる気体を有する気体、及び/又は窒素ガスと水素ガスとを有する気体であるのがよい。「窒素と水素とからなる気体」とは、例えばNH3ガスなどの元素Nと元素Hとからなる気体をいい、「窒素と水素とからなる気体を有する気体」とは、例えばNH3ガスと例えば不活性ガス(例えばArガス)との混合気体をいう。また、「窒素ガスと水素ガスとを有する気体」とは、H2ガス及びN2ガスのみからなる気体であっても、これに例えば不活性ガス(例えばArガス)をさらに有する気体であってもよい。「窒素と水素とからなる気体を有する気体」は、NH3ガス、又はNH3ガスとArガスとの混合気体であるのがよい。
本実施形態では、「窒素ガスと水素ガスとを有する気体」を用いており、上記のように、窒素ガス分圧が0.01〜2.0(Torr)及び水素ガス分圧が0.3〜6.0(Torr)としている。また、これに、分圧が0.02〜20(Torr)のアンモニアガスを添加しているが、これは必須ではない。つまり、第1の窒化性気体は、このようなNH3ガスや、その他、H2ガス及びN2ガスを有する気体であってもよい。
好ましくは、第1の窒化性気体は、本実施形態のように、窒素ガス:水素ガスの分圧比が1:3であるか、又は窒素:水素のモル比が1:3であるのがよい。
本発明のプラズマ窒化工程は、AlNを0.05μm/時以上、好ましくは0.5〜100μm/時で生成することができる。
特に、プラズマ窒化工程の初期段階(窒化工程開始から4時間まで)は、AlN形成速度が10〜13μm/時であるが、次の段階(窒化工程後4〜6時間)は、AlN形成速度が10〜30μm/時である。
(AlN域の特性)
このような方法により、本発明は、その表面にAlN域を有するアルミニウム材料を提供することができる。
AlN域の厚さは、上述の方法の種々のパラメータを変化させることにより、特にプラズマ窒化工程のパラメータ、例えばプラズマ窒化時間などを変化させることにより、制御することができるが、例えば、AlN域の厚さは、0.01μm以上、例えば2〜2000μm、より好ましくは4〜200μmとすることができる。
図2は本実施形態にかかる第1実施例、つまり、アルミニウム材料として「6061」を用いた場合における、アルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真であり、図3はその窒化アルミニウム域を図2よりもさらに拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。また、図1はその窒化アルミニウム域の構成を模式的に示す図である。図1〜図3に示すように、本発明により得られたアルミニウム材料は、その表面にAlN域を有し、このAlN層(AlN域)2の組織構造は、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合したものとなる。
なお、AlN層2は、図1(a),(b)に極めて模式的に示すように、柱状組織21と粒状組織22とは交互に重合するが、AlN層2の端部、つまり、母材1に接触する基端や先端は、製造条件にもよるが、図1(a)に示すように、柱状組織21と粒状組織22とが混在して形成される場合や、図1(b)に示すように、基端或いは先端に柱状組織21のみが形成される場合がある。また、図示しないが、条件によっては、AlN層2の基端或いは先端に粒状組織22のみが形成される場合も考えられる。
柱状組織21と粒状組織22とを観察すると、柱状組織21は、窒素が高濃度に拡散して緻密な構造となっており、柱状組織21には、本来固溶若しくは析出した形で存在していた他の合金(SiやMg等)は減少し希薄化している。一方、AlN層の基点となる粒状組織では、他の合金(SiやMg等)は濃化している。これは、窒素が高濃度に拡散し緻密な柱状のAlNを形成すると、本来固溶若しくは析出した形で存在していた他の合金(SiやMg等)が母材内部へと押しやられるため減少し希薄化する一方で、AlN層の基点となる粒状組織22では存在しやすいため結果として合金元素が濃化するものと考えられる。また、窒化層(拡散層)の先端部には、MgやSiが強く濃化しているが、これは窒化層から排出されただけでなく、窒化されていない母材からも移動してきた合金がこの領域に集まっている事によるものと考えられる。これは、窒化先端部から10μmの深さまで基材の合金濃度が希薄になっていることから推測することができる。
そして、柱状組織21の成長によって母材内部へと押しやられた他の合金(SiやMg等)が集まったところに粒状組織22が形成されるため、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合した組織構造が形成されるものと考えられる。
このように、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合した組織構造は、Al合金基材では、従来では得られなかったものであり、これにより、Al合金基材の表面に良質な硬質被膜を生成すること可能となる。
つまり、柱状組織21は高硬度で緻密な組織を有しているため、変形抵抗が高くなり、外力が加わっても基材のアルミニウム材に影響を及ぼさない。この緻密かつ硬質な柱状組織21によりAlN層2の耐摩耗性が高められる。
また、緻密かつ硬質な柱状組織21の間に形成される、微細な粒状の組織22は、柱状組織1よりも軟質(靭性が高い)であるため、種々の方向からの衝撃に対しても緩衝性がある。このため、緻密かつ硬質な柱状組織21によりAlN層2の耐衝撃性が高められる。
したがって、高硬度である柱状組織21の高い変形抵抗によって外力に対する基材のアルミニウム材の変形が抑制されると共に、軟質で靭性が高い粒状組織22の緩衝性によって外部からの衝撃が基材のアルミニウム材への伝達が抑制され、基材のアルミニウム材を高レベルで保護しうるものになる。
また、各2つの柱状組織21の層の相互間に介在する粒状組織22は、2つの柱状組織21の層間を強固に接合することになり、厚みのあるAlN層2の耐久性を大幅に高めることになる。
また、本実施形態の場合、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合した多層構造を有しているため、外力等によってAlN層2が摩耗や破壊を生じる場合にも、最外層のみが摩耗や破壊を生じるだけで、その内側の層までは摩耗や破壊が進行しないようなメカニズムが発生しうる。つまり、亀裂進展の抑制効果がある。
したがって、AlN層2が摩耗や破壊を生じる場合も、最外層が摩耗若しくは破壊してもその内部に層が存在する限り、同じ性質、つまり、柱状組織21と粒状組織22とによる高い変形抵抗及び高い緩衝性を併せ持つ性質が発揮されることになり、このてんからも、AlN層2の耐久性が大幅に高まることになる。
このため、長期に亘って、基材のアルミニウム材を高レベルで保護しうるものになる。
(組成元素毎に色分けして示す図面代用電子顕微鏡写真)
図4は本実施形態としてのアルミニウム材料の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して主要な組成元素毎に色分け(明度分け)して示す図面代用電子顕微鏡写真であり、図5はその各組成元素毎に窒化アルミニウム域を図4よりもさらに拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真である。なお、図4,図5は本来カラーの写真であり、色分けして各元素の存在を示しており、その元素が高密度で存在している箇所は赤色に、その元素の密度が低下するに従い、オレンジ色,黄色,緑色,青と色を変化させて示しており、その元素の密度が存在していない場合は、黒色表示している。
図4,図5の図面代用電子顕微鏡写真は白黒表示のため識別し難いが、図4(a)に示すように、アルミニウム(Al)に着目すれば、アルミニウム材料の母材1の部分は、ほとんどが赤(暗いグレー)で示されておりこの部分にアルミニウムが高密度で存在していることを示している。図4(a),図5(a)に示すように、AlN層2は母材1の部分よりも明るくなっている箇所があるが、この明るくなっている箇所はアルミニウムの密度がやや低下していることを意味している。ただし、図5(a)に示すように、AlN層2内のアルミニウムの密度は、柱状組織21では、明るくなっている箇所の中でも比較的暗め(オレンジ色,赤色)になっておりアルミニウムの比較的高いことを示し、粒状組織22では、明るくなっている箇所の中でも比較的明るめ(黄色)になっておりアルミニウムの比較的低いことを示している。
図4(b),図5(b)に示すように、窒素(N)に着目すれば、母材1の部分は、ほとんどが黒で示されておりこの部分に窒素がほとんど存在しないことを示している。AlN層2は母材1の部分よりも明るくなっている箇所があるが、この明るくなっている箇所(黄色,オレンジ色,赤色)は窒素が存在することを示し、中でも比較的暗めの箇所(オレンジ色,赤色)は窒素の密度が高くなっていることを示している。
また、図4(c),図5(c)に示すように、酸素(O)に着目すれば、母材1及びAlN層2は、ほとんどが黒で示されておりこの部分に酸素がほとんど存在しないことを示している。ただし、図4(c)に示すように、母材1とAlN層2との境界部分及びAlN層2の表面は、やや明るく表示されており、酸素が僅かに存在することを示している。
また、図4(d),図5(d)に示すように、マグネシウム(Mg)に着目すれば、母材1の部分及びAlN層2には、所どころ白くなっている箇所がありこの部分にマグネシウムが存在することを示している。特に、母材1とAlN層2との境界と、AlN層2における粒状組織22の部分にマグネシウムが多く存在することを示している。また、母材1中で、AlN層2に近い部分はマグネシウムが極めて少なく、AlN層2から一定以上離れた部分はマグネシウムが略均一に分散していることがわかる。
さらに、図4(e),図5(e)に示すように、シリコン(Si)に着目すれば、マグネシウムと略同様に、母材1の部分及びAlN層2には、所どころ白くなっている箇所がありこの部分にシリコンが存在することを示している。特に、母材1とAlN層2との境界と、AlN層2における粒状組織22の部分にシリコンが多く存在することを示している。また、マグネシウムと略同様に、母材1中で、AlN層2に近い部分はシリコンが極めて少なく、AlN層2から一定以上離れた部分はシリコンが略均一に分散していることがわかる。
このような組成元素の分布状況から、AlN層2における柱状組織21と粒状組織22との層構造には、マグネシウムとシリコンとが寄与していることが推測できる。特に、母材1中でAlN層2に近い部分に存在するマグネシウム及びシリコンが、AlNの生成過程でAlN層2の方に移行していき、一部は母材1とAlN層2との境界部分に留まり、残りのものは柱状組織21の生成過程でこの境界部分からAlN層2の表面方向に移動していき、このうちの一部が粒状組織22の生成箇所でこの粒状組織22の部分に留まり、残りのものは次の柱状組織21の生成過程でこの粒状組織22の部分からさらにAlN層2の表面方向に移動していく、といった動きを繰り返しながら、層構造が形成されているものと考えられる。
(層構造の生成メカニズムについての考察)
柱状組織21が連続して一定以上までは成長せずに、途中に粒状組織22が形成されその後再び柱状組織21が成長し、柱状組織21と粒状組織22との層構造が生成される点について以下に考察する。
アルミニウム合金を構成する主要元素のマグネシウム(Mg),銅(Cu),亜鉛(Zn)のアルミニウム(Al)に対する固溶限は大きいが、鉄(Fe),クロム(Cr),ニッケル(Ni),錫(Sn)は殆ど固溶しないと言える。しかし、アルミニウム合金元素の中で鉛(Pb),Sn,Znを除くと窒化物を形成するために、工業的に用いられているアルミニウム合金を窒化してその表面にAlNを形成する際には、阻害要因となる合金元素は少ないように思える。
また、Siは直接窒化してSi34を生成することは困難であることが知られている。一般的な鋳造用アルミ合金であるAC2A,AC4B,AC8C,ADC12のように、Si濃度が4mass%以上と高い濃度になると、初晶Siがアルミニウム合金表面にも存在しており、このSiを窒化することは困難であることが予測される。更に、アルミニウム合金を窒化する際に材料の融点を考慮すると,550℃以下での処理である必要がある。
また、このような温度域においてアルミニウム中に固溶しているSiの拡散の程度は、540℃において、1.8×10-9 cm2/sとの報告(松村嘉高,星加洋:溶接学会全国大会講演概要,No.19 Page.368-369(1976) 「AlおよびAl合金の拡散接合」があり、4時間保持したとするとAl中のSiの平均拡散距離は515μmとなる。
一連の研究で、AlN層の厚さは最大でも100μm程度であることから、AlN層を形成する間もSiは十分に拡散し得ることを示すものである。Mgなどの他の合金元素も同様に考えると、本研究で用いたアルミニウム合金の合金元素は、十分に拡散し得る場にあったと考えられる。即ち、合金元素が窒化物として析出しない限り、これらの合金元素はAlN層中に均質な濃度分布として存在すると予測される。
しかしながら、SiとMgは共に約6μmの間隔でほぼ同じ位置に濃化している。一方、SiやMgの窒化物析出はX線回折では検出されていない。また、窒素濃度にはこのような一次元的な規則性は認められず、SiやMgが濃化したことによる相対的な濃度の低下が観察されている。
これらのことを併せて考えると、AlN層中にSiやMgが固溶しているか、Si34を中心としてMgやAl、更にOまでもが合金化し、X線回折では検出が困難なナノサイズのSi−Al−O−N化合物として存在していることが推測される。
ところで、本実施形態のアルミニウム材料の表面処理方法を開発するにあたって、表1に示す「6061」以外のJIS規格のアルミニウム材料についても同様な方法で試験を行ったが、本実施形態のように、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合したAlN層は容易には得られなかった。
しかし、プラズマ窒化の条件を変更することにより、「6061」以外のJIS規格のアルミニウム材料についても、上記実施例の場合ほど多数の層状ではないが、柱状組織21と粒状組織22とが交互にそれぞれ複数ずつ重合したAlN層が得られた。
そこで、本発明に関連する関連実施形態としてプラズマ窒化の条件を変更した例を説明し、その実施例として、アルミニウム材料として「ADC12」を用いた第2実施例と、アルミニウム材料として「AC4B」を用いた第3実施例を説明する。
[関連実施形態]
(材料)
関連実施形態で母材として用いるアルミニウム材料にはSi及びMgが含有されており、具体的には、前記の表1に示すJIS規格の「ADC12」や「AC4B」を用いることができる。JIS規格の「ADC12」は、前記の表1にJIS規格の「ADC12Z」と略同様な構成のアルミニウム材料である。「ADC12」の場合、Si及びMgに着目すれば、Siは9.6〜12.0mass%含まれ、Mgは0.3mass%未満が含まれている。JIS規格の「AC4B」の場合、Si及びMgに着目すれば、Siは7.0〜10.0mass%含まれ、Mgは0.5mass%未満が含まれている。
なお関連実施形態では、上記のアルミニウム材料にパルス電圧を印加する印加工程と印加休止工程とを交互に繰り返す第2の処理工程を用いており、この場合には、「ADC12」に限らない。
(プレスパッタリング工程)
パルス電圧を印加する第2の処理工程を用いる場合のプレスパッタリング処理の際には、窒素分圧を0.01〜20Torr、好ましくは0.01〜10Torrとした雰囲気下で前記アルミニウム材料を陰極として−100〜−1000Vを、好ましくは−150〜−1000Vの直流電圧を印加して、10分間以上、好ましくは60分間以内、更に好ましくは30分以内実施するようにすればよい。
(AlN域生成工程)
関連実施形態の場合、プラズマ窒化工程では、前記の本発明の一実施形態の第1の処理工程に替えて、活性化した前記第1の窒化性気体雰囲気下で、アルミニウム材料を陰極として−100〜−50kV、好ましくは−200V〜−1000Vのパルス電圧を、0.05(μs)〜1(s)、好ましくは10〜1000(μs)だけ印加する印加工程と、その後の0.05(μs)〜10(s)、好ましくは10〜1000(μs)だけ印加休止する印加休止工程とからなる処理工程(第2の処理工程)を用いている。
なお、この処理時間に関し、断続印可電源にて、高電圧にすることによってN2プラスイオンのエネルギーは高くなり、プレスパッタリングの効率は高まる利点がある。更に、パルス条件の選択によってAlN形成効率も高くなる。ただし、高電圧になるほどOn Time(印加時間)は短くする必要があり、全ガス圧力は低くする必要がある。全ガス圧力が高いと容易にアーク放電に移行し、電圧は瞬時に低下して大電流となり、被処理物が溶融・蒸発してしまう。また、高電圧でOn Timeを長くすると全ガス圧力が低くても真空アーク放電を発生する可能性が高くなる。
この処理工程(プラズマ窒化工程全体)は、AlNの所望の厚さに依存して、その処理時間が異なるが、一般に処理工程は0.5時間以上、例えば0.5〜100時間行うことができるが、より好ましい処理時間としては、1〜25時間、必要にして十分なAlNの厚さを得られる処理時間としては、上記のごとく4〜9時間である。
つまり、プラズマ窒化工程は、本発明の一実施形態と同様に、以下のような条件で行うのがよい。
プラズマ窒化条件
温度:最低/最高 300/600(℃)
時間:最短/最長 1/9(h)
最小電圧/最大電圧 200/1000(V)
最小電流密度/最大電流密度 0.5/20(μA/mm2
窒素分圧:最小/最大 0.05/10(Torr)
水素分圧:最小/最大 0.15/30(Torr)
アンモニア:最小/最大 0.02/20(Torr)
ただし、アンモニアガスは必須条件ではない。
そのほかは、本発明の一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
(AlN域の特性)
このような方法により、関連実施形態の場合は、例えば図6の第2実施例にかかるアルミニウム材料(ADC12)の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真に示すように、AlN層(AlN域)2の組織構造は、層数は少ないが、柱状組織21と粒状組織22とが交互に重合したものとなる。
また、このような方法により、関連実施形態の場合は、例えば図7の第3実施例にかかるアルミニウム材料(AC4B)の窒化アルミニウム域を含む表面部分を拡大して示す図面代用電子顕微鏡写真に示すように、AlN層(AlN域)2の組織構造は、層数は少ないが、柱状組織21と粒状組織22とが重合したものとなる。
このように、関連実施形態の場合も、本発明の一実施形態と同様に、基材のアルミニウム材を高レベルで保護しうるものになる。
[その他]
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
なお、前記の一実施形態のように、プラズマ窒化工程として、活性化した第1の窒化性気体雰囲気下で、連続した直流電圧を印加する第1の処理工程を実施するものでは、その実施例として、アルミニウム材料としてJIS規格の「6061」を用いたものを説明しているように、Si,Mgの比率が「6061」或いはこれに近いアルミニウム材料に近いものほど製造しやすいものと考えられる。
一方、関連実施形態のように、パルス電圧をアルミニウム材料印加する印加工程とその後の印加休止工程とからなる第2の処理工程を実施するものでは、Si,Mgの比率が「6061」或いはこれに近いアルミニウム材料に近いものに限らず、その実施例として、アルミニウム材料としてJIS規格の「ADC12」や「AC4B」を用いたものを説明しているように、Si,Mgの比率が比較的広範囲のアルミニウム材料に適用しうるものと考えられる。
1 アルミニウム材料(母材)
2 窒化アルミニウム(AlN)域
21 柱状組織
22 粒状組織

Claims (6)

  1. シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)を含有するアルミニウム材料を準備する工程と、
    準備した該アルミニウム材料をプラズマ窒化処理して、前記アルミニウム材料の表面に窒化アルミニウム(AlN)域を生成するプラズマ窒化工程とをそなえ、
    前記アルミニウム材料に含有されるシリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の含有率は、シリコン(Si)が0.4〜0.8重量パーセント、マグネシウム(Mg)が0.8〜1.2重量パーセントであり、
    前記プラズマ窒化工程では、活性化した第1の窒化性気体雰囲気下で、−100〜−350Vの連続した直流電圧を前記アルミニウム材料に印加する工程を実施する
    ことを特徴とする、アルミニウム材料の表面処理方法。
  2. 前記プラズマ窒化工程を300〜600℃で1時間以上実施する
    ことを特徴とする、請求項1記載のアルミニウム材料の表面処理方法。
  3. 前記第1の窒化性気体は、窒素と水素とからなる気体を含んだ気体、及び/又は、窒素ガスと水素ガスとを含んだ気体である
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルミニウム材料の表面処理方法。
  4. 前記第1の窒化性気体は、窒素分圧0.1〜2.0Torr,水素分圧0.3〜6.0Torrである
    ことを特徴とする、請求項3記載のアルミニウム材料の表面処理方法。
  5. 前記プラズマ窒化工程前に、前記アルミニウム材料をスパッタリング処理し前記アルミニウム材料の表面に存在するアルミナ(Al23)を除去するスパッタリング処理工程をさらにそなえている
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム材料の表面処理方法。
  6. 前記スパッタリング処理工程は、分圧0.01〜20Torrの窒素を含み化学的反応活性化した第2の窒化性気体雰囲気下で、前記アルミニウム材料を陰極として直流電圧−100V〜−1000Vを印加して、10分間以上実施する
    ことを特徴とする、請求項5記載のアルミニウム材料の表面処理方法。
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