JP6119495B2 - ソーワイヤ及びコアワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、表面に固定砥粒を設けたソーワイヤ及び該ソーワイヤに使用されるコアワイヤに関する。
シリコンやSiC、サファイヤ等の半導体用インゴットのスライス加工には、高能率、高精度が要求される。そのため、半導体用インゴットのスライス加工には、ダイヤモンド砥粒をワイヤ表面に固定したソーワイヤが適用されている。ソーワイヤの砥粒の固着は、電着による固定、レジンボンドによる固定、低融点金属によって固定する方法が提案されて、実用化されている。
電着によって固定する方法は、固着力の強化のため、低電流密度で長時間のめっきを行う必要があり、砥粒の固着力は高いものの、生産性が低い。また、電着層を均一かつ砥粒を均一分散させるために電着に必要以上の砥粒を分散させておく必要があり、コストの増加が懸念される。レジンボンドによる固定は、砥粒の固着する力が不十分で、切断効率が低い。
このような問題に対して、ろう材や半田によって砥粒を固着させたソーワイヤが提案されている(例えば、特許文献1〜5)。特に、半田は、Sn、Znを含む組成の低融点金属であり、簡便かつ安価に砥粒の保持力を高めることができる。
特開2011−098407号公報 特開2010−000584号公報 特開2010−000583号公報 特表2003−525130号公報 国際公開2010−71198号
本発明では、ソーワイヤへの砥粒の固定を、低融点金属である半田によって行う。ソーワイヤには高強度が要求されるため、高強度鋼線がコアワイヤとして用いられる。鋼線の強度は、伸線加工によって高めることできるため、潤滑を目的として表面にブラス(Cu−Zn合金)めっきが施される。コアワイヤにブラスめっき鋼線を使用すると、砥粒を固定する低融点金属である半田成分とブラスめっきが反応し、脆化層を形成するために砥粒の固着強度が低下することがある。
また、表面にNiめっき層が形成された砥粒を用いた場合には、低融点金属に含まれるSnとNiが脆い反応層を形成し、砥粒の固着強度が低下することがある。更に、インゴットの切断過程では、発熱によりコアワイヤ表面のブラスめっきからCuが固着金属中に拡散し、脆化層が形成されるために、砥粒の固着強度が著しく低下することがある。
本発明はソーワイヤでの切断ロスを低減し、高速で切断可能なソーワイヤ、及びその素線であるコアワイヤの提供を課題とするものである。
切断加工時の発熱によって、コアワイヤの表面に設けられたブラスめっき層から、砥粒を固定する低融点金属である半田へのCu、Znが拡散すると、固着層が脆化し、砥粒の固着強度を低下させ、切断性能を悪化させることが明らかになった。そこで、本発明者らは、ブラスめっき層からのCu、Znの拡散を防止するために検討を行い、コアワイヤの表面のめっき組成として、Cu、Znに加えて、Co、Niの一方又は両方を含有させることが有効であるという知見を得た。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.80〜1.20%、
Si:0.02〜2.0%、
Mn:0.10〜1.0%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
鋼線の表面に、原子%で、Cu:60〜70%を含有し、更に、Co、Niの一方又は両方の合計の含有量が0.5〜5%であり、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき層を設けたコアワイヤに、
砥粒を融点が230℃以下の半田で固定したことを特徴とするソーワイヤ。
[2] 前記コアワイヤの鋼線が、更に、質量%で、
Cr:0.01〜0.5%
を含むことを特徴とする上記[1]に記載のソーワイヤ。
[3] 前記コアワイヤの鋼線の線径が0.06〜0.16mmであり、引張強さが3500MPa以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のソーワイヤ。
[4] 前記コアワイヤの鋼線の金属組織が伸線加工により加工強化されたパーライトからなることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載のソーワイヤ。
[5] 前記砥粒の表面に、Niめっき層が形成されたことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載のソーワイヤ。
[6] 砥粒を融点が230℃以下の半田で固定したソーワイヤに用いられるコアワイヤであって、質量%で、
C:0.80〜1.20%、
Si:0.02〜2.0%、
Mn:0.10〜1.0%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼線の表面に、
原子%で、Cu:60〜70%を含有し、更に、Co、Niの一方又は両方の合計の含有量が0.5〜5%であり、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき層を設けたことを特徴とするコアワイヤ。
[7] 前記鋼線が、更に、質量%で、
Cr:0.01〜0.5%
を含むことを特徴とする上記[6]に記載のコアワイヤ。
[8] 前記鋼線の線径が0.06〜0.16mmであり、引張強さが3500MPa以上であることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載のコアワイヤ。
[9] 前記鋼線の金属組織が伸線加工により加工強化されたパーライトからなることを特徴とする上記[6]〜[8]の何れか1項に記載のコアワイヤ。
本発明によれば、コアワイヤの表面に形成されためっき層から、砥粒を固定する低融点金属である半田へのCu、Znの拡散が防止され、脆化層の生成が抑制される。特に、Sn系の半田で砥粒を固着するソーワイヤでは、高い砥粒の固着強度が得られ、更に、Niでコーテイングされた砥粒を使用する際にも、砥粒の表面の脆化層の生成を抑制する効果が顕著である。したがって、本発明のソーワイヤでインゴットを切断した場合、高い切断効率と少ない切断ロスを達成することが可能になる。
本発明のソーワイヤの断面の一例を示す図である。
ソーワイヤで半導体等を切断する際には、ロスを少なくするために、コアワイヤの線径を細くすることが必要である。また、コアワイヤには切断時に一定の高張力が負荷されるため、コアワイヤは、極細で高強度の鋼線が好適に使用される。一般に、極細の高強度鋼線を製造するためには、伸線で強加工を行う必要があり、伸線潤滑性の確保が重要となる。従来、極細の高強度鋼線を伸線加工する際に、潤滑性を高めるため、伸線材表面にはブラスめっき層が設けられていた。
近年、被切断インゴットの切断ロスの低減ニーズが大きくなり、コアワイヤには、より細く、高強度のものが要求される。このような要求に対して、本発明では、コアワイヤとして、C:が0.8%以上の共析鋼線又は過共析鋼線を適用する。共析鋼又は過共析鋼の金属組織はパーライトであり、ブラスめっき層を設けてダイス伸線による強加工を施し、極細鋼線にすると、高強度が得られる。
しかし、ブラスめっきを設けた鋼線をコアワイヤに使用した場合、砥粒固定時の半田の溶融工程及び切断工程の発熱によってソーワイヤ表面の固着層(半田が被着した層)にCu、Znが拡散し、砥粒の周囲に脆化層を形成し、砥粒の固着強度が低下し、切断性能を悪化させることが明らかになった。特に、半田などの低融点金属を溶融して砥粒を固定する場合は極短時間で拡散が進行するため、脆化層の形成は避けられず、砥粒の固着強度が著しく低下し、切断速度が低下することがわかった。
このような悪影響を除去するためには、ブラスめっきの表層に、更に、砥粒固定層と反応しない金属又は合金からなるめっき層、例えば、Niめっき層、Crめっき層等を形成することが考えられる。しかし、伸線加工前に、ブラスめっきの上にNiやCrの硬質めっきを施すと、伸線加工性が著しく低下する。また、伸線加工後、硬質めっきを行うことも考えられるが、コアワイヤは極細であるため、生産性が著しく低下し、また、新たなめっき装置の導入が必要となりコストが高くなる。
また、砥粒を固定する前にコアワイヤの表面のブラスめっきを除去することも対策として考えられる。しかし、めっき除去工程を追加すると製造コストが高くなり、また、めっきを除去すると地鉄が露出する。めっき層はコアワイヤの防錆にも寄与しているため、砥粒を固着する前にコアワイヤに錆が発生し、ソーワイヤ製造工程での砥粒固定処理が安定化しなくなり、適用は困難である。
そこで、本発明者らは、コアワイヤのめっき層からのCu、Znの拡散を防止するために、製造の容易性、製造コスト面から検討を行った。その結果、コアワイヤの表面のめっき組成として、Cu、Znに加えて、Co、Niの一方又は両方を含有することにより、固着層へのCu、Znの拡散が抑制されるという知見が得られた。そして、低融点合金である半田からなる固着層には脆化層が生成せず、砥粒の固着強度の低下が抑制され、砥粒の脱落を防止することができた。
以下、本発明について、詳細に説明する。
図1に本発明のソーワイヤの断面の一例を示す。本発明のソーワイヤは、表面にめっき層2を設けたコアワイヤ1に、さらに固着層3を形成し、砥粒4を固定したものである。砥粒の表面に砥粒めっき層5を設けてもよい。コアワイヤの表面のめっき層2は、Cu及びZnと、Co、Niの一方又は両方を含む合金である。コアワイヤ1は、極細かつ高強度であることが要求されるため、本発明では、C、Si、Mnを含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼線とし、更に、Crを含有することができる。
ソーワイヤの切断性能を高めるには、砥粒を高強度かつ極細のコアワイヤに強固に固着させることが必要である。砥粒とコアワイヤとの固着には、低融点金属(半田)を用いることが好ましい。これは、半田が溶融して砥粒を固着するため、砥粒との接合力が高いためである。半田として融点が230℃以下のものを用いる。溶融半田へのコアワイヤを浸漬して半田層(固着層3)を被覆する場合あるいは粉末半田を付着後加熱溶融して被覆する場合には半田の融点+20℃程度まで加熱する。コアワイヤの最高温度が250℃を超えてしまうと、コアワイヤの強度、延性が低下し、ウェハー切断性能が低下するために半田の融点の上限を230℃とした。半田は、融点(MP)が230℃以下であれば、組成は特に制限されないが、Sn−Zn−Bi系:例えばSn−8Zn−3Bi(MP=197℃)、Sn−Bi系:Sn−58Bi(MP138℃)、Sn−Ag−Cu系:Sn−3Ag−0.5Cu(MP=220℃)、Sn−Cu系:Sn0.55Cu(MP=226℃)が使用可能である。また、低融点金属の半田を用いることにより、高融点のロウ材に比べて加熱温度を低下させることができるため、コアワイヤの軟化を抑制し、高強度を維持することが可能になる。低融点金属である半田が固着層3を形成する。
砥粒は、アルミナAl23、SiC、CBN、ダイヤモンドを使用することができる。特に、ダイヤモンドは、硬度及び熱伝導の点で最も優れた砥粒である。半田と砥粒との接合力を高めるには、予め、砥粒にNi又はCu等のめっきを施すことが好ましい。ダイヤモンド砥粒を使用する場合、Ni又はCuのめっき層は、ダイヤモンドを、物理的(又は機械的)に包み込んでいるだけであり、Ni又はCuの原子とダイヤモンドとの化学的な結合はない。
砥粒4の表面にめっきを施して砥粒めっき層5を設ける場合は、半田との界面で化学結合を形成し、強固な結合を得ることが好ましい。即ち、砥粒表面の砥粒めっき層5のめっきと固着層3の半田との界面に、金属間化合物が生成することが好ましいが、金属間化合物層が厚くなると割れが発生し易くなり、砥粒の保持力の低下を招く場合がある。そのため、砥粒めっき層には、半田と薄い金属間化合物層を形成する、Niめっき層が好適である。
次に、コアワイヤの成分について説明する。なお、コアワイヤの成分の「%」は、「質量%」である。
Cは、コアワイヤの高強度を達成するために重要な成分である。Cの含有量が0.80%未満では、強度を確保することが困難になる。一方、Cの含有量が1.20%を超えると、伸線加工時に断線し易くなる。したがって、C含有量は0.80〜1.20%とする。また、より高強度のコアワイヤを得るためには、Cの含有量を0.92%以上にすることが好ましい。
Siは、固溶強化に寄与し、脱酸元素としても作用する。コアワイヤの強度を高めるには、Siの含有量を0.02%以上にすることが必要である。更に強度を高めるには、Si量は0.05%以上が好ましい。一方、Siの含有量が2.0%を超えると、伸線加工時に断線し易くなるため、Si量の上限を2.0%以下とする。伸線加工性を高めるには、Siの含有量を1.0%以下にすることが好ましい。
Mnは、脱酸及び脱硫に寄与するとともに、焼入れ性を高める元素であり、本発明では、含有量を0.10%以上とする。コアワイヤの強度を高めるには、Mnの含有量を0.20%以上にすることが好ましい。一方、Mnの含有量が1.0%を超えると、ベイナイトが発生して伸線加工性が低下するため、1.0%以下とする。
更に、コアワイヤの強度を高めるために、Crを含有してもよい。
Crは、コアワイヤのパーライト組織のセメンタイトの間隔(ラメラ間隔)の微細化に寄与する元素である。コアワイヤの強度を高めるには、0.01%以上のCrを含有させることが好ましい。より好ましくは、Crの含有量を0.2%以上とする。一方、Crを過剰に添加すると、ベイナイトが発生して伸線加工性が低下することがあるため、Crの含有量の上限は、0.5%以下が好ましい。
コアワイヤの表面には、伸線加工時に潤滑作用を有するめっき層2が形成されている。このめっき層は、伸線加工性を確保するためにCu及びZnを含有する。更に、ソーワイヤの固着層へのCu、Znの拡散を抑制するため、めっき層はCo、Niの一方又は両方を含有する。即ち、本発明のコアワイヤの表面に設けられるめっき層は、Cu−Zn−(Co、Ni)の三元系又は四元系の合金である。
コアワイヤの表面のめっきは、伸線加工時の潤滑性を確保するために、高い展伸性が得られる結晶構造であることが好ましい。Cu−Zn系合金(ブラス)の結晶は柔らかく展伸性が高いαブラスと、硬く加工しにくいβブラスからなる。このブラスのα/β比率は、例えば、めっき組成で変化する。α/β比率を大きくするには、Cu量を増加させたり、Co、Niを含有させることが有効である。
コアワイヤの表面のめっき層の好ましい組成について説明する。なお、めっき層の「%」は「原子%」である。
コアワイヤの表面のめっき層のCuの含有率は、60%以上が好ましい。これは、Cuの含有率が60%以上になると、硬質のβブラスが30%以下に抑えられ、伸線加工性が顕著に向上するためである。一方、めっき層のCuの含有率が70%を超えると、伸線加工性は向上するものの、ソーワイヤの固着層へのCuの拡散が促進され、砥粒の固着強度が低下することがあるため、70%以下が好ましい。
Co、Niは、固着層へのCu、Znの拡散を効果的に抑制し、砥粒の固着強度を高めるため、一方又は両方の合計の含有率を0.5%以上にすることが好ましい。また、Co、Niを含有させると、βブラスの生成が抑制され、伸線加工性が向上するため、一方又は両方の合計の含有率を1.0%以上にすることがより好ましい。一方、Co、Niを過剰に含有すると、めっき層が硬化し、伸線加工性が劣化する場合があるため、一方又は両方の合計の含有率を5%以下にすることが好ましい。伸線加工性を高めるには、Co、Niの一方又は両方の合計の含有率を4%以下にすることが更に好ましい。
表面にNiめっき層が形成された砥粒を用いた場合には、固着層の半田に含まれるSnと砥粒のNiめっき層のNiが脆い反応層を形成し、砥粒の固着強度が低下することがあった。本発明では、めっき層中に上記のとおりCoとNiの一方又は両方を含有することにより、Niでコーテイングされた砥粒を使用する際にも、砥粒の表面の脆化層の生成を抑制する効果が顕著である。
めっき層の成分は、コアワイヤをアルカリ溶液に浸漬し、めっき層を溶解した液を定量分析することによって求める。具体的には、ICP発光分光分析、原子吸光分析で、Cu、Zn、Co及びNiを定量測定し、ノルマライズして求めることができる。これら測定結果に基づき、それぞれの元素の比重からめっき厚さに換算し、コアワイヤ表面の表面めっき層厚さを求めることもできる。また、XPS、AES等の表面分析、及びEDS、EPMAを用いた機器分析でもめっき層の組成を求めることが可能である。
めっき層の厚さはダイスでの伸線加工時の潤滑性を確保可能な厚さであれば特に限定はしない。ただし、コアワイヤの表面のめっき層は、強加工の伸線加工を行うために、伸線加工後のめっき層厚さを100〜500nmにすることが好ましい。これは、めっき層が薄いと潤滑性が不足し、めっき層が厚いと伸線加工時に剥離し易くなるとともに、溶融はんだとの反応量が増加し、本発明のめっき組成でも砥粒の周囲の脆化層生成の抑制効果が低減し、砥粒の脱落が多くなるため切断性能が低下するためである。
コアワイヤの鋼線の線径は、被切断材のロスを低減するために、0.16mm以下にすることが好ましい。より好ましくは、線径を0.12mm以下とする。一方、コアワイヤの鋼線の線径が細すぎると、半導体等を切断する際の負荷によって断線し易くなるため、0.06mm以上にすることが好ましい。
また、半導体等を切断する際の断線を抑制するには、コアワイヤの強度を3500MPa以上にすることが好ましい。このような高強度化を達成するには、コアワイヤの鋼線の金属組織は、伸線加工により加工強化されたパーライトからなることが好ましい。パーライトは、フェライトとセメンタイトが層状に生成した組織であり、伸線加工によって高強度化することができる。なお、パーライト以外に、フェライト、ベイナイトなどが含まれる場合があるが、90%以上がパーライトであれば、本発明では、パーライトからなる金属組織とみなす。
次に、コアワイヤの製造方法について説明する。
極細鋼線の製造方法は、線材を伸線加工する常法で行えばよく、適宜、パテンティングなどの熱処理を施すことが好ましい。パテンティングは、鋼の金属組織をパーライトにする熱処理であり、加工の歪みを回復させて、伸線加工性を高めるために施す。伸線加工を行う前に、潤滑性が高いめっき層を形成する。
本発明では、伸線加工を施す前の鋼線の表面に、電気めっきにより、Cu層及びZn層、更にCo層、Ni層の一方又は双方を形成するか、又は、Cu層と、Zn−Co層、Zn−Ni層の一方又は双方を形成し、加熱して合金化処理を行うことにより形成できる。Cu層とZn層との間に、Co層、Ni層の一方又は双方を形成してもよい。合金化処理は、例えば、480〜600℃で行えばよい。
合金化処理を施した後、ダイスによる湿式伸線により0.06〜0.16mmの極細線径まで伸線すると、高強度のコアワイヤを製造することができる。特に、3500MPa以上の高強度、好ましくは4000MPa以上の強度、より好ましくは4300MPa以上の高強度を得るためには、伸線加工の真歪みを4以上にすることが好ましい。
以上のとおり、本発明で規定するコアワイヤの成分組成を有する鋼線を伸線加工に供し、めっき層を形成する直前の最終熱処理とその後のめっき層形成及び最終伸線を施すことにより、金属組織をパーライトとし、強度を3500MPa以上とすることができる。
以下、実施例について説明する。
コアワイヤの素材となる線材は、線径5.5mmであり、表1に示す成分の鋼材を熱間圧延して製造した。この線材を伸線と熱処理を繰り返し、線径0.5〜1mmで最終熱処理、電気めっき、拡散処理を行い、Cu−Zn−(Co、Ni)の三元系又は四元系の合金めっき鋼線(以下、単に合金めっき鋼線ともいう。)を得た。
Figure 0006119495
Cu−Zn−(Co、Ni)の三元系又は四元系の合金めっき(以下、単に合金めっきともいう。)は、電気Cuめっき、Co及び/又はNiめっき、最後にZnめっきを行い、合金化処理を施して形成した。めっき組成、めっき厚さは、Cuめっき、Co及び/又はNiめっき、Znめっきの厚さによって調整した。合金化処理は、480〜510℃で行った。
得られた合金めっき鋼線に湿式伸線を施し、線径0.05〜0.17mmのコアワイヤを製造した。
このコアワイヤをフラックス処理後、250℃のSn−3Ag−0.5Cuの溶融半田槽に浸漬し、表面に1〜3μmの厚さの半田層からなる固着層3を形成した。融点は220℃である。その後、1〜3μmのNiめっき層を有する粒径が10〜20μmのダイヤモンド砥粒を静電塗布でワイヤ表面に付着し、250℃で加熱して表面の半田を溶融し、砥粒を仮付けした。
さらに、仮付けしたワイヤ表面にSn−58Biを160℃の溶融半田浴を通過させて砥粒を固着し、半田固定ソーワイヤを得た。
引張り試験を行い固定砥粒のソーワイヤの強度はコアワイヤと同等で、強度低下はしていないこと、伸びも変化していないこと、破断荷重の50%の負荷をかけた捻回特性も変化していないことを確認した。
この半田固定ソーワイヤを用いて、断面積156mm×156mmの多結晶シリコンインゴットの切断試験を行った。切断条件を表2に示すようにソーワイヤ供給量、切断速度はソーワイヤの切断性により調整した。また、切断時のワイヤ張力はコアワイヤの破断荷重の30〜70%の範囲で調整した。切断性は、1分間当たりの切断面積の平均値で評価し、電着固定砥粒ソーワイヤでの切断速度を5、レジンボンドソーワイヤでの切断速度を1として切断性評価指数で示した。砥粒の固着強度が低いと、切断中に砥粒が脱落し、指数が低下する。また、ソーワイヤの強度や延性が低い場合は、切断途中で断線しないように張力を低下させ、切断速度を遅くする必要があるため、指数が低下する。
Figure 0006119495
めっき層成分の分析は、コアワイヤをアルカリ溶液に浸漬し、溶解除去した溶液をICP発光分光分析することによって行い、Cu、Zn、Co、Niを定量して求めた。これら分析結果に基づき、それぞれの元素の比重からめっき厚さに換算し、コアワイヤ表面の表面めっき層厚さを求めた。
ソーワイヤにおけるコアワイヤの鋼種、線径、めっき層成分、めっき層厚さ、金属組織、引張強さと、シリコンインゴットの切断性評価結果を表3に示す。めっき層成分においてCu、Co、Niの残部はZnである。
Figure 0006119495
本発明No.1〜12の固定砥粒ソーワイヤは、切断性評価指数が3以上であり、良好な切断性が得られる。Niめっき層を有する砥粒を使用したにもかかわらず、砥粒の表面の脆化層の生成も見られなかった。
一方、No.13〜26は比較例である。
No.13及び14は、合金めっきのCo、Niの合計含有量が少なく、半田へのCu、Znの拡散の抑制が不十分で、砥粒の周囲に脆化層が形成され、切断性能が低下した例である。No.17は合金めっきのCu量が多く、Co、Niを含むものの、Cuの拡散の抑制が不十分で、切断性能が低下した例である。
No.15及び16は、合金めっきに含まれるCo、Niの合計値が多く、めっき層が硬くなり、伸線加工時に断線が発生し、切断試験を行うことができなかった例である。No.18は、合金めっきのCu量が少なく、伸線加工性が不十分で断線が発生し、シリコンインゴットの切断ができなかった例である。
No.19〜26は、鋼線の成分が本発明の範囲外であり、シリコンインゴットの切断性能が低下した例である。
No.19〜21は、鋼線のC、Si、Mnが少なく、強度が不十分で、No.22〜24は、鋼線のC、Si、Mnが多く、コアワイヤの延性が低下した例である。これらは、シリコンインゴット切断時の断線を避けるために張力を低下させ、切断速度を遅くする必要があるために切断性能が低下している。
No.25は、鋼線のC量が少なく、コアワイヤの線径が細いため、シリコンインゴット切断時の負荷張力を低下させる必要があり、切断性能が低下した例である。No.26は、鋼線のC量が多く、延性が低いため、シリコンインゴッド切断時の張力を低下させたため、切断性能が低下した例である。また、No.26はNo.22と比べてコアワイヤの線径が太く、高張力かつ高速での切断が可能であり、切断指数は良くなるものの、シリコンインゴットの切断ロスは大きくなっている。
1 コアワイヤ
2 めっき層
3 固着層
4 砥粒
5 砥粒めっき層

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.80〜1.20%、
    Si:0.02〜2.0%、
    Mn:0.10〜1.0%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる
    鋼線の表面に、原子%で、Cu:60〜70%を含有し、更に、Co、Niの一方又は両方の合計の含有量が0.5〜5%であり、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき層を設けたコアワイヤに、
    砥粒を融点が230℃以下の半田で固定したことを特徴とするソーワイヤ。
  2. 前記コアワイヤの鋼線が、更に、質量%で、
    Cr:0.01〜0.5%
    を含むことを特徴とする請求項1に記載のソーワイヤ。
  3. 前記コアワイヤの鋼線の線径が0.06〜0.16mmであり、引張強さが3500MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のソーワイヤ。
  4. 前記コアワイヤの鋼線の金属組織が伸線加工により加工強化されたパーライトからなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のソーワイヤ。
  5. 前記砥粒の表面に、Niめっき層が形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のソーワイヤ。
  6. 砥粒を融点が230℃以下の半田で固定したソーワイヤに用いられるコアワイヤであって、質量%で、
    C:0.80〜1.20%、
    Si:0.02〜2.0%、
    Mn:0.10〜1.0%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼線の表面に、
    原子%で、Cu:60〜70%を含有し、更に、Co、Niの一方又は両方の合計の含有量が0.5〜5%であり、残部がZn及び不可避的不純物からなるめっき層を設けたことを特徴とするコアワイヤ。
  7. 前記鋼線が、更に、質量%で、
    Cr:0.01〜0.5%
    を含むことを特徴とする請求項6に記載のコアワイヤ。
  8. 前記鋼線の線径が0.06〜0.16mmであり、引張強さが3500MPa以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載のコアワイヤ。
  9. 前記鋼線の金属組織が伸線加工により加工強化されたパーライトからなることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載のコアワイヤ。
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