JP5167918B2 - 衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ - Google Patents

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Description

本発明は、船が衝突する時、衝突エネルギーを吸収し、被衝突船の船腹における損傷を低減することができるバルバスバウ(球状船首)に関する。
現在、多くの大型船は、造波抵抗を減じてエネルギーロスを少しでも低減し、船の推進性能を高めるため、船首喫水線近傍に、バルバスバウを備えている。
従来から、バルバスバウとして、内部に補強用の桁材を縦横に配置した剛体構造のものが採用されているが(特許文献1及び2、参照)、剛体構造のバルバスバウを備える船が、他船に衝突した場合、図1に示すように、衝突船1のバルバスバウ2が、被衝突船の船腹3に食い込み、更には、破壊部位を拡大して船殻を損傷し、破口4を形成する危険性がある。
それ故、このことを踏まえ、近年、船が衝突する際、特に、衝突船の船首が、被衝突船の船腹に衝突する際、被衝突船の船殻を損傷しないよう、衝突エネルギーを、極力、吸収する構造のバルバスバウが提案されている(特許文献3〜5、参照)。
特許文献3には、先端部を水密構造とし、先端部に続く周縁部を、非水密構造(バルバスバウ内部が外水に連通する構造)として、衝突エネルギーを吸収するルバスバウが開示されている。しかし、特許文献3に開示のバルバスバウは、先端部に続く周縁部が非水密構造であるため、造波抵抗を充分に低減することができない。
また、特許文献3に開示のバルバスバウは、非水密構造とするために、鋼板に防食加工を施さなければならないので、製造コストが増大する。
特許文献4には、球状突起の根元の外板に、横方向の曲げ剛性を低減する肉厚減少部を設けたバルバスバウが開示されている。また、特許文献5には、球状突起の根元の外板に、横方向の曲げ強度が低い低強度部(下降伏点又は0.2%耐力が235MPa以下の低降伏点鋼からなる)を設けたバルバスバウが開示されている。
引用文献4及び5に開示のバルバスバウは、バルバスバウの根元付近に、肉厚減少部又は低強度部を設け、衝突時に、バルバスバウが根元で曲がり易くしたものである。
即ち、引用文献4及び5に開示のバルバスバウは、船同士が、所要の角度をもって衝突した時、バルバスバウが根元で容易に折れ曲がり、バルバスバウの船腹との接触面が、先端面ではなく、胴体面となって、被衝突船の船腹における損傷を低減するものである。
しかし、引用文献4及び5に開示のバルバスバウは、特許文献3に開示のバルバスバウとは異なり、バルバスバウ自体が、衝突エネルギーを吸収するダンパーとして機能しないので、船同士が、90°に近い衝突角度で衝突した場合、バルバスバウが、衝突反力を受けて根元で折れ曲がる前に、被衝突船の船腹に食い込むことが想定される。
結局、引用文献4及び5に開示のバルバスバウは、被衝突船の船腹における損傷を低減する程度において限界があるものである。
一方、船の衝突安全性を高める手段として、衝突時のエネルギー吸収性能に優れた鋼材を用いることも検討されている。
特許文献6には、船側外板に、従来の国際船級協会連合(IACS)の統一規格材に比べて、(a)降伏応力σyと一様伸びεuの積(σy×εu)を20%以上増加させた鋼材、(b)引張試験において、一様伸びεuまでのエネルギー吸収量を20%以上増加させた鋼材、又は、(c)降伏応力σyは同等以上で、かつ、一様伸びεuを20%以上増加させた鋼材を用い、従来構造のままで、船殻に破口が生じるまでに吸収することできるエネルギー量を増加した船体構造が開示されている。
しかし、船首が他船の船腹に衝突する場合、被衝突船の船腹が、エネルギー吸収量を50%以上高めた鋼板で構成されていても、衝突船のバルバスバウが変形しない限り、バルバスバウは船腹を貫通することになる。
結局、被衝突船の船腹が、エネルギー吸収量の高い鋼板で構成されていても、衝突の態様によっては、エネルギー吸収量の高い鋼板を用いることの効果を期待することはできない。それ故、衝突船のバルバスバウで、衝突エネルギーを吸収できれば,被衝突船の船腹における損傷を、極力低減することができる。
したがって、現在、航行時には、造波抵抗を大きく減じてエネルギーロスをより低減し、船の推進性能をより高める機能を発揮するが、衝突時には、被衝突船の船腹における損傷を低減するため、衝突エネルギーを吸収するダンパー機能を発揮するバルバスバウが求められている。
特開2002−347690号公報 特開2005−199736号公報 特開平08−164887号公報 特開2004−314824号公報 特開2004−314825号公報 特開2002−087373号公報
本発明は、バルバスバウに対する要求に鑑み、船体構造の設計を変更することなく、衝突時に、被衝突船の船腹における損傷を効果的に低減することができるバルバスバウを提供することを課題とする。
本発明者らは、船の衝突時に、バルバスバウがダンパーとして機能する構造について、有限要素法(Finite-Element Method)を用いて検討した。
その結果、本発明者らは、バルバスバウを構成する外殻鋼板と内殻鋼板の強度特性、特に、降伏強度を、構造部位に応じて最適化すると、船の衝突時、(i)バルバスバウが、被衝突船に対し直角に衝突する場合でも、容易に、船体軸方向に座屈変形して、衝突エネルギーを吸収し、かつ、(ii)バルバスバウと被衝突船の船腹との接触面積が増大するので、(iii)被衝突船の船腹における損傷を効果的に低減することができることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、要旨は以下のとおりである。
(1) 外殻鋼板に、複数の内殻縦鋼板を、船体軸方向に所定の間隔をおいて溶接して構成したバルバスバウであって、
(i)外殻鋼板の降伏強度U(MPa)、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)、及び、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部の溶接金属の降伏強度W(MPa)が、下記式(1)及び(2)を満たし、
(ii)衝突時、外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形する
ことを特徴とする衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
W−U≧100MPa ・・・(1)
I−U≧70MPa ・・・(2)
(2) 外殻鋼板に、複数の内殻縦鋼板を、船体軸方向に所定の間隔をおいて溶接するとともに、該内殻縦鋼板の間に、船体軸方向に沿って、複数の内殻横鋼板を溶接して構成したバルバスバウであって、
(i)外殻鋼板の降伏強度U(MPa)、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)、内殻横鋼板の降伏強度J(MPa)、及び、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部の溶接金属の降伏強度W(MPa)が、下記式(1)、(2)、及び、(3)を満たし、
(ii)衝突時、外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形する
ことを特徴とする衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
W−U≧100MPa ・・・(1)
I−U≧70MPa ・・・(2)
I−J≧70MPa ・・・(3)
) 前記内殻横鋼板の降伏強度Jが、外殻鋼板の降伏強度U以下であることを特徴とする前記(2)に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
) 前記内殻縦鋼板が、環状鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
) 前記溶接金属の降伏強度Wが、220〜500MPaであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
)前記内殻縦鋼板の降伏強度Iが、190〜500MPaであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
)前記外殻鋼板の降伏強度Uが、120〜400MPaであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
)前記外殻鋼板の降伏強度Uが、120〜240MPaであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
本発明によれば、船の衝突時、バルバスバウが、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形して、衝突エネルギーを吸収し、かつ、バルバスバウと被衝突船の船腹との接触面積が増大するので、被衝突船の船腹における損傷を、顕著に低減することができる。
本発明を、図面に基づいて説明する。
図2に、バルバスバウを備えた船首の一態様を示す。(a)は、バルバスバウの側面態様を示し、(b)は、バルバスバウの正面態様を示す。図2(a)に示すように、バルバスバウ2は、船1'の船体軸方向Dsに沿って、船首前方に突き出ている。
図3に、衝突後、バルバスバウが根元で座屈して折れ曲がった態様を示す。(a)は、折れ曲がったバルバスバウの側面態様を示し、(b)は、折れ曲がったバルバスバウの正面態様を示す。
図3に示すように、衝突時、バルバスバウが根元で座屈して、船体軸方向から大きく折れ曲がると、バルバスバウの被衝突船との接触面積が拡大した場合であっても、衝突エネルギーの吸収量は少ないので、衝突船1は、衝突後もさらに前進し、船首上部が、衝突線Zを越えて、被衝突船の船腹に衝突して、被衝突船の船腹の損傷を拡大する可能性すらある。
そこで、本発明においては、衝突時、図4に示すように、バルバスバウが、船体軸方向Dsに、蛇腹状に座屈変形する(バルバスバウの変形方向が、船体軸方向とほぼ一致する)ように、バルバスバウを構成する。
バルバスバウが、図4に示すように、ほぼ船体軸方向に、均一に座屈変形すると、衝突エネルギーの吸収量が増大し、かつ、被衝突船の船腹とバルバスバウの接触面積が拡大するので、被衝突船の船腹における損傷を、大幅に低減することができる。
即ち、バルバスバウの根元が座屈して、バルバスバウの軸が、船体軸方向から大きく逸れると、バルバスバウ全体が、均一に変形せず、バルバスバウの変形で吸収する衝突エネルギー量は少ない。
バルバスバウ全体が、均一に変形するためには、衝突時、バルバスバウの軸が、船体軸方向から大きく逸れないことが必要である。
本発明者らは、上記バルバスバウを実現するため、まず、モデル化したバルバスバウにおいて、外殻鋼板の降伏強度と、内殻鋼板の降伏強度を変化させてバルバスバウを構成し、バルバスバウの軸方向に、高剛性物体を押し付けていった時の変形挙動を、有限要素法を用いて解析した。その結果を、図5及び図6に示す。
バルバスバウの構造として、外殻鋼板の内部に、縦横の内殻鋼板を溶接した構造(引用文献1及び2、参照)や、円環状の内殻鋼板を、バルバスバウの軸方向に、所定の間隔で並べて、外殻鋼板に溶接した構造(特許文献4及び5、参照)が知られているが、上記解析に際しては、円形状の内殻鋼板を、バルバスバウの軸方向に、所定の間隔で並べて、外殻鋼板に溶接した構造を採用した。
なお、以下、バルバスバウの軸方向に、所定の間隔で並べて、外殻鋼板に溶接した内殻鋼板を、内殻縦鋼板と呼び、説明する。
バルバスバウ2の外殻鋼板の降伏強度が、内殻縦鋼板の降伏強度より大きい場合、図5に示すように、高剛性物体6を、押付け方向7(船体軸方向Dsに対向する方向)に押し付けていった時、バルバスバウは、容易に変形せず、形状をほぼ保ったまま、バルバスバウの根元で折れ曲がって、バルバスバウの軸Dbは、船体軸方向Dsから大きく変位する(変位角θ1が大きい)。
バルバスバウ2の外殻鋼板の降伏強度が、内殻縦鋼板の降伏強度より小さい場合、図6に示すように、高剛性物体6を、押付け方向7(船体軸方向Dsに対向する方向)に押し付けていった時、バルバスバウは、バルバスバウの根元で折れ曲がらずに、バルバスバウの外殻鋼板が、蛇腹状に座屈変形して、バルバスバウの軸Dbは、船体軸方向Dsから殆ど変位しない(変位角θ2が極めて小さい)。
即ち、バルバスバウを構成する外殻鋼板の降伏強度と、同内殻縦鋼板の降伏強度の差を変化させると、バルバスバウの軸の変位角(変位幅)が変化するが、(a)バルバスバウを構成する外殻鋼板の降伏強度を、同内殻縦鋼板の降伏強度より小さくすると、バルバスバウの外殻鋼板が、船体軸方向で蛇腹状に座屈変形して、バルバスバウの軸は、船体軸方向から大きく変位しないことが判明した。
また、外殻鋼板と内殻鋼板の溶接部の強度は、構造体としてのバルバスバウの強度に大きく影響するので、上記溶接部を形成する溶接金属の降伏強度と、変形後のバルバスバウの軸の変位幅との関係を調査した結果、(b)外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部を形成する溶接金属の降伏強度が、外殻部の降伏強度よりも大きいと、座屈変形は、溶接部で起きず、内殻縦鋼板間の外殻鋼板の円周方向で均一に起きて、変形後のバルバスバウの軸の変位は、極めて小さいことが判明した。
即ち、(a)バルバスバウを構成する外殻鋼板の降伏強度が、内殻縦鋼板の降伏強度より小さく、かつ、(b)バルバスバウを構成する外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部を形成する溶接金属の降伏強度が、外殻鋼板の降伏強度より大きいと、バルバスバウの外殻鋼板が、蛇腹状に、容易に、船体軸方向に座屈変形して、バルバスバウの軸は、船体軸方向から全く変位しないことが判明した。
このことは、バルバスバウの外殻鋼板の降伏強度が、同内殻縦鋼板の降伏強度、及び、溶接部を形成する溶接金属の降伏強度より小さいので、船体軸方向に向かう押付け力により、まず、(i)バルバスバウの椀状先端部が座屈して、高剛性物体と接触する接触面積が増大し、次に、(ii)この接触面積で受ける力により、内殻縦鋼板間の円周外殻鋼板が、円周方向で、優先的に、均一に座屈変形し、結果的に、バルバスバウの外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形したと推測される。
本発明者らは、さらに、図5及び図6に示すバルバスバウの変形挙動を、定量的に解析した。
前述したように、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部の強度は、構造体としてのバルバスバウの強度に大きく影響するし、また、衝突時の衝撃力で、上記溶接部が容易に破断すると、バルバスバウの外周面で、座屈変形が均一に起きず、バルバスバウが大きく折れ曲がることが想定されるので、本発明者らは、まず、上記溶接部を形成する溶接金属の降伏強度と、座屈変形したバルバスバウの軸の変位幅との関係を、定量的に解析した。
その結果、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部を形成する溶接金属の降伏強度が、外殻部の降伏強度よりも100MPa以上大きいと、変形後のバルバスバウの軸の変位は極めて小さいことが判明した。
本発明者らは、上記知見を踏まえ、外殻鋼板の降伏強度と、内殻縦鋼板の降伏強度の差と、変形後のバルバスバウの軸の変位角との関係を、定量的に解析した。その結果を、図7に示す。
図7は、横軸に、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)と外殻鋼板の降伏強度U(MPa)の差:ΔYP(MPa)をとり、縦軸に、変形後のバルバスバウの軸と船体軸がなす変位角θ(°)をとり、(i)溶接部を形成する溶接金属の降伏強度W(MPa)と外殻鋼板の降伏強度U(MPa)の差が、100MPa未満の場合における変化(図中、○)と、(ii)溶接部を形成する溶接金属の降伏強度W(MPa)と外殻鋼板の降伏強度U(MPa)の差が、100MPa以上の場合における変化(図中、●)を示す。
図から、溶接部を形成する溶接金属の降伏強度W(MPa)と外殻鋼板の降伏強度U(MPa)の差が、100MPa以上の場合、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)と外殻鋼板の降伏強度U(MPa)の差:ΔYP(MPa)が70MPa以上あると、変位角が0°、即ち、バルバスバウが、船体軸方向に座屈変形することが解る。
即ち、衝突時、(i)バルバスバウの椀状先端部が、まず、座屈変形して、衝突エネルギーを吸収しつつ、平坦になることにより、衝突による衝撃力を緩和するとともに、バルバスバウの被衝突船の船腹への貫入を回避することができ、さらに、(ii)バルバスバウの外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形していき、衝突エネルギーを吸収しつつ、バルバスバウと被衝突船の船腹との接触面積が増大することにより、接触面への負荷を低減して、被衝突船の船腹における破口を防止することができる。
船殻鋼板は、国際船級協会連合(IACS)の統一規格を満たす必要があり、バルバスバウを構成する外殻鋼板及び内殻鋼板の降伏強度も、国際船級協会連合(IACS)の統一規格を満たす必要があるが、バルバスバウは、波動衝撃や、漂流物の衝突に耐える構造体でなければならないので、外殻鋼板は、降伏強度U(MPa)が120MPa以上のものが望ましい。
外殻鋼板の降伏応力の上限は、特に、限定されるものではないが、通常、船殻に使用する鋼板の降伏強度に則れば、400MPaが好ましい。衝突時に、バルバスバウの外殻鋼板が、確実に、蛇腹状に座屈変形するためには、その降伏強度は、240MPa以下が好ましい。
内殻縦鋼板の降伏強度は、ΔYP(MPa):70MPa以上を確保するため、190MPa以上が好ましい。図7に示すように、バルバスバウの変位角(折曲角)をほぼ0°にするため、ΔYP(MPa)は、大きいほど好ましく、この限りで、内殻縦鋼板の降伏強度に、上限はないが、通常、船殻に使用する鋼板の降伏強度に則れば、内殻縦鋼板の降伏強度は、500MPa以下で充分である。
バルバスバウの外殻鋼板を、バルバスバウの変位角をほぼ0°に維持しつつ、蛇腹状に座屈変形させるうえで、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部を形成する溶接金属の降伏強度W(MPa)は重要であり、本発明では、前記式(1)で規定するが、降伏強度W(MPa)の上限は、内殻縦鋼板の降伏強度と同様に、500MPa程度で充分である。なお、降伏強度W(MPa)の下限は、前記式(1)によれば、220MPaである。
前述したように、バルバスバウの構造として、外殻鋼板に、内殻鋼板を縦横に溶接した構造(特許文献1及び2、参照)も知られているが、このような構造のバルバスバウに、本発明を適用する場合には、横方向(船体軸方向に平行)に配置する内殻鋼板(以下、内殻横鋼板という)として、外殻鋼板の蛇腹状の座屈変形を阻害しないよう、降伏強度Jが、外殻鋼板の降伏強度U以下の鋼板を用いることが好ましい。内殻横鋼板の降伏強度の下限は、特に限定する必要はない。
バルバスバウの構造として、特許文献1及び2、及び、特許文献4及び5に記載されている構造の他、各種構造のものが存在するが、本発明を適用して、外殻鋼板の降伏強度、内殻鋼板の降伏強度、及び、外殻鋼板と内殻鋼板の溶接部を形成する溶接金属の降伏強度を最適化すれば、外殻鋼板の蛇腹状の座屈変形を実現して、本発明の効果を得ることができる。
外殻鋼板としては、質量%で(以下、%で表示する)、C:0.02〜0.2%、Si:0.03〜1%、Mn:0.3〜2%、Al:0.002〜0.1%、及び、N:0.001〜0.01%を含有し、不純物として、P:0.03%以下、S:0.01%以下に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板が好ましい。
本発明で用いる外殻鋼板は、強度及び/又は靱性の調整、及び、他の特性の付与の点から、必要に応じて、Cr:0.01〜 1%、Ni:0.01〜3%、Cu:0.01〜1.5%、及び、B:0.0003〜0.005%の1種又は2種以上を含有するものでもよい。
また、母材鋼板の延性やHAZ靱性を高めるため、必要に応じ、Mg:0.0005〜0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、及び、REM:0.0005〜0.05%の1種又は2種以上を含有させてもよい。
なお、溶接用構造鋼板は、通常、強度調整のために、Mo、W、Nb、V、Ti、Ta、及び、Zrの1種又は2種以上を含有するが、本発明の外殻鋼板も、これらの元素の1種または2種以上を、Mo:0.1%以下、W:0.2%以下、Nb:0.01%以下、V:0.1%以下、Ti:0.02%以下、Ta:0.5%以下、Zr:0.1%以下の範囲で、かつ、所要の特性を阻害しない範囲で含有してもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明者らは、シミュレーションにより、本発明の実施可能性と効果を確認した。
図8に、本発明のバルバスバウが船腹に衝突した場合における効果を確認するためのシミュレーションモデルを示す。原油タンカーにおいて、船側構造の中央から1/4を想定するモデルである。
B−B’に沿って、オイルカーゴ部分の仕切構造に対応する横隔壁が配置されている。C−C’に沿う部分は、船体構造で最も重要な舷側厚板部分である。船側における衝突位置は、オイルカーゴ部分の中央位置A(D)に設定した。衝突位置を中心に、A−A’は垂直方向を示し、D−D’は水平方向を示す。
本発明で規定する条件を満たすバルバスバウを、図8に示すシミュレーションモデルに衝突させて、バルバスバウを、船体軸方向に蛇腹状に座屈変形させて、衝突エネルギーの吸収能を調査した。船体軸方向における蛇腹状の座屈変形量を評価する指標として、船体軸方向におけるバルバスバウの短縮量を採用した。
上記調査の結果の一例を、図9に示す。発明例では、衝突エネルギーの吸収能が顕著に大きく、被衝突船の船腹における損傷は大きく低減されることが解る。
表1に、シミュレーション条件と結果を併せて示す。
Figure 0005167918
比較例1は、構造材として、外殻鋼板、内殻縦鋼板、内殻横鋼板の区別なく、軟鋼レベルの鋼板を用い、溶接金属のみ、オーバーマッチング強度を実現できるような通常の溶接材料を用いて構成したバルバスバウを用いた例である。
比較例1のバルバスバウの短縮量が6mの場合における吸収エネルギーを、基準吸収エネルギー:EA(ref)とし、各種条件下におけるバルバスバウ短縮量6mにおける吸収エネルギーをEAとして、EAの向上を、指標:EA/EA(ref)で評価した。その結果を、各種条件とともに、表1に示す。
比較例2は、比較例1同様に、外殻鋼板,内殻縦鋼板,内殻横鋼板の区別なく、降伏強度320MPaクラスの鋼板を用いて構成したバルバスバウを用いた例である。比較例1よりも高強度の鋼板を用いてバルバスバウを構成しているので、10%の吸収エネルギー能の向上が見られた。
一方、本発明で規定する条件を満たす発明例1〜6では、比較例1及び2により、大幅な吸収エネルギー能の増大が図られている。特に、発明例1、2、及び、6では、降伏強度Jが降伏強度U以下であるため、他の発明例よりも、吸収エネルギー向上効果が著しいことが解る。
前述したように、本発明によれば、船の衝突時、バルバスバウが、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形して、衝突エネルギーを吸収し、かつ、バルバスバウと被衝突船の船腹との接触面積が増大するので、被衝突船の船腹における損傷を、極力、低減することができる。その結果、被衝突船の沈没を回避し、また、被衝突船からの油の流出を防止することができる。本発明は、造船産業において利用可能性が大きいものである。
船の衝突時の変形態様を模式的に示す図である。 バルバスバウを備えた船首の一態様を示す図である。(a)は、バルバスバウの側面態様を示し、(b)は、バルバスバウの正面態様を示す。 衝突後、バルバスバウが根元で座屈して折れ曲がった態様を示す。(a)は、折れ曲がったバルバスバウの側面態様を示し、(b)は、折れ曲がったバルバスバウの正面態様を示す。 衝突時におけるバルバスバウの座屈変形(バルバスバウの変形方向が、船体軸方向とほぼ一致する)態様を示す図である。 バルバスバウに、高剛性物体を押し付けていった時の従来の変形挙動を、模式的に示す図である。 バルバスバウに、高剛性物体を押し付けていった時の本発明の変形挙動を、模式的に示す図である。 外殻鋼板の降伏強度と、内殻鋼板の降伏強度の差と、変形後のバルバスバウの軸の変位角(折曲角)との関係を、定量的に解析した結果を示す図である。 バルバスバウが船腹に衝突した場合におけるシミュレーションモデルを示す図である。 バルバスバウ短縮量と衝突エネルギーの吸収能の関係を示す図である。
符号の説明
1 衝突船
1' 船
2 バルバスバウ
2' 衝突後のバルバスバウ
3 被衝突船の船腹
4 破口
5 外殻鋼板
6 高剛性物体
7 押付け方向
Ds 船体軸方向
Db バルバスバウの軸
θ、θ1、θ2 変位角
Z 衝突線

Claims (8)

  1. 外殻鋼板に、複数の内殻縦鋼板を、船体軸方向に所定の間隔をおいて溶接して構成したバルバスバウであって、
    (i)外殻鋼板の降伏強度U(MPa)、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)、及び、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部の溶接金属の降伏強度W(MPa)が、下記式(1)及び(2)を満たし、
    (ii)衝突時、外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形する
    ことを特徴とする衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
    W−U≧100MPa ・・・(1)
    I−U≧70MPa ・・・(2)
  2. 外殻鋼板に、複数の内殻縦鋼板を、船体軸方向に所定の間隔をおいて溶接するとともに、該内殻縦鋼板の間に、船体軸方向に沿って、複数の内殻横鋼板を溶接して構成したバルバスバウであって、
    (i)外殻鋼板の降伏強度U(MPa)、内殻縦鋼板の降伏強度I(MPa)、内殻横鋼板の降伏強度J(MPa)、及び、外殻鋼板と内殻縦鋼板の溶接部の溶接金属の降伏強度W(MPa)が、下記式(1)、(2)、及び、(3)を満たし、
    (ii)衝突時、外殻鋼板が、船体軸方向に、蛇腹状に座屈変形する
    ことを特徴とする衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
    W−U≧100MPa ・・・(1)
    I−U≧70MPa ・・・(2)
    I−J≧70MPa ・・・(3)
  3. 前記内殻横鋼板の降伏強度Jが、外殻鋼板の降伏強度U以下であることを特徴とする請求項2に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
  4. 前記内殻縦鋼板が、環状鋼板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
  5. 前記溶接金属の降伏強度Wが、220〜500MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
  6. 前記内殻縦鋼板の降伏強度Iが、190〜500MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
  7. 前記外殻鋼板の降伏強度Uが、120〜400MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
  8. 前記外殻鋼板の降伏強度Uが、120〜240MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の衝突エネルギー吸収能に優れたバルバスバウ。
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