シリコン単結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などから排出される、アルゴンを主成分として含む使用済み雰囲気ガス、のアルゴン濃度は、比較的高い(アルゴン濃度は例えば95vol%以上である)。従来の技術においては、このような高濃度アルゴンについて、TSA法によって更に高濃度化しつつ高い回収率を達成することは、困難である。
また、シリコン単結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などから排出される、アルゴンを主成分として含む使用済み雰囲気ガスには、不純物として窒素が含まれることが多い。アルゴンを充分に高純度化するためには、この窒素を除去する必要がある。TSA法によるアルゴン精製技術においては、低温域にて窒素の吸着性が高い所定の吸着剤が充填された吸着管が使用されるところ、TSA法による従来のアルゴン精製技術では、例えば次のような吸着工程および脱着工程が吸着管にて繰り返されて、窒素除去が図られる。
吸着工程では、精製対象の粗アルゴンガスが所定温度に冷却されたうえで吸着管に導入される。粗アルゴンガスは吸着管内を通流して吸着管外に導出されるところ、吸着管内を通流中に吸着剤と接触して吸着剤を冷却する。粗アルゴンガスとの接触によって吸着剤は除々に降温し、当該吸着剤の窒素吸着能は除々に高くなる(即ち、粗アルゴンガスは、精製対象のガスであると共に、吸着剤を冷却するための媒体としての役割を担う)。吸着工程では、このような吸着剤に窒素が吸着される。
脱着工程では、精製されたアルゴンガスその他の加熱用ガスが所定温度に加熱されたうえで吸着管に導入される。加熱用ガスは、吸着管内を通流して吸着管外に導出されるところ、吸着管内を通流中に吸着剤と接触して吸着剤を加熱する。加熱用ガスとの接触によって吸着剤は除々に昇温し、当該吸着剤の窒素吸着能は除々に低くなる。脱着工程では、このような吸着剤から窒素が脱着して加熱用ガスと共に吸着管外に排出される。
しかしながら、吸着剤から粗アルゴンガスへの熱伝達によって吸着剤を降温させる上述の吸着工程では、吸着剤が充分な低温に至るのに比較的に長時間を要する場合が多い。また、吸着剤が充分な低温に至る前に吸着管内を通流する粗アルゴンガスからは充分に窒素が除去されず、吸着剤が充分な低温に至るのに要する時間が長いほど、窒素除去が不充分なアルゴンガスの吸着管からの導出量は増大する(これは、アルゴンガスの高純度化の観点から好ましくない)。加えて、精製されたアルゴンガスその他の加熱用ガスから吸着剤への熱伝達によって吸着剤を昇温させる上述の脱着工程では、吸着剤が充分な高温に至るのに比較的に長時間を要する場合が多い。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、TSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適し且つTSAサイクル時間の短縮化を図るのに適したアルゴン精製方法および装置、並びに、これらに利用するのに適した目的ガス精製方法および装置を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によるとアルゴン精製方法が提供される。本方法においては、アルゴンを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された吸着管を含むTSA吸着塔に向けて混合ガスを供給する。そして、吸着工程、加熱脱着工程、および冷却工程を含むサイクルを、TSA吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着管内の吸着剤が相対的に低温の吸着用温度にある状態にて、当該吸着管に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスを当該吸着管から導出する。加熱脱着工程では、吸着管内の吸着剤を相対的に高温の温度へと昇温させつつ当該吸着剤から不純物を脱着させる。また、加熱脱着工程では、液状熱媒を用いて吸着管内の吸着剤を加熱し、且つ、吸着管に精製ガスを導入しつつ当該吸着管からオフガスを導出して当該オフガスを貯留槽に導入する。冷却工程では、吸着管内の吸着剤を降温させる。また、冷却工程では、液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却する。
本方法では、TSA吸着塔において、上述の吸着工程、加熱脱着工程、および冷却工程を含む温度変動吸着法(TSA法)を実行し、これによって混合ガス中のアルゴンの富化ないし高純度化を図るところ、本方法によると、高純度化されるアルゴンについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、加熱脱着工程中にTSA吸着塔から導出され続けるオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをTSA法による再度のアルゴン富化に供するからである。本方法の加熱脱着工程では、吸着工程を経て窒素を吸着している吸着剤から窒素が脱着する。この脱着窒素をTSA吸着塔外に適切に押し出すべく、加熱脱着工程にあるTSA吸着塔の吸着管には精製ガス(高純度アルゴンガス)が導入される。そのため、加熱脱着工程にあるTSA吸着塔ないし吸着管から導出されるオフガスのアルゴン濃度は比較的高い。本方法では、このようなオフガスを、装置外に排気せずに貯留槽に戻し、TSA法による再度のアルゴン富化に供する。したがって、本方法は、高純度アルゴンを高収率で得るのに適するのである。
また、本方法によると、TSAサイクル時間を短縮化しやすい。本方法では、吸着剤の温度変動を伴うTSA法を実行するうえで、液状熱媒および液状冷媒を用いて吸着剤の温度変動を実現するからである。具体的には次の通りであある。
本方法の加熱脱着工程では、液状熱媒を用いて吸着管内の吸着剤を加熱する。吸着剤が充填されている吸着管に液状熱媒を接触させて、当該液状熱媒から吸着管内の吸着剤へと熱を供給することによって、吸着剤を加熱することができる。液状熱媒は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を加熱するための媒体として気体を用いる場合よりも、本方法のように液状熱媒を用いて吸着剤を加熱する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く昇温させることができる。仮に、本方法における液状熱媒として55%エタノール水溶液を採用する場合(第1の場合)を想定し、加熱用の媒体としてアルゴンガスを用いて吸着剤を昇温する場合(第2の場合)を想定すると、55%エタノール水溶液の比熱は0.839kcal/kg・℃(−20℃にて)であって、アルゴンガスの比熱は0.125kcal/kg・℃(−23℃にて)であるので、単位時間あたりの吸着剤へ熱供給量について、第1の場合では第2の場合の7倍程度を実現することが可能である。したがって、第1の場合(本発明に係る場合)は、第2の場合の7分の1程度の短時間で加熱脱着工程を終了させることが可能である。加熱脱着工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
一方、本方法の冷却工程では、液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却する。吸着剤が充填されている吸着管に液状冷媒を接触させて、当該液状冷媒によって吸着管内の吸着剤から熱を奪うことによって、吸着剤を冷却することができる。液状冷媒は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を冷却するための媒体として気体を用いる場合よりも、本方法のように液状冷媒を用いて吸着剤を冷却する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く降温させることができる。仮に、本方法における液状冷媒として55%エタノール水溶液を採用する場合(第3の場合)を想定し、冷却用の媒体としてアルゴンガスを用いて吸着剤を降温する場合(第4の場合)を想定すると、55%エタノール水溶液およびアルゴンガスの各比熱は上記の通りであるので、単位時間あたりの吸着剤から熱受容量について、第3の場合では第4の場合の7倍程度を実現することが可能である。したがって、第3の場合(本発明に係る場合)は、第4の場合の7分の1程度の短時間で冷却工程を終了させることが可能である。冷却工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
以上のように、本発明の第1の側面に係るアルゴン精製方法は、TSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適し、且つ、TSAサイクル時間の短縮化を図るのに適するのである。
加えて、本方法は、アルゴンの精製にあたり、原料ガスたる混合ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。一般に、シリコン単結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などから排出される、アルゴンを主成分として含む使用済み雰囲気ガス、の排出流量や不純物組成は、変動を伴うことが多く、急激に変動する場合もある。そのため、炉から排出される当該排出ガスを連続的に精製処理するためには、当該排出ガスの流量変動や組成変動に対応可能な処理システムを構築する必要がある。本方法では、原料ガスたる混合ガスについて、貯留槽に一旦取り込んだうえで、当該貯留槽から、TSA法を実行するためのTSA吸着塔に向けて供給する。貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスがその流量や組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や組成変動は、当該混合ガスが貯留槽に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該貯留槽から導出される混合ガスにおいては緩和ないし抑制される(このような流量変動や組成変動の緩和ないし抑制の観点から、貯留槽のガス収容用容積は可変であるのが好ましい)。そのため、本方法によると、原料ガスの流量変動や組成変動に対応しやすいのである。
本発明の第2の側面によるとアルゴン精製方法が提供される。本方法においては、アルゴンを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された吸着管を含む複数のTSA吸着塔から選択されたTSA吸着塔に向けて混合ガスを供給する。そして、吸着工程、加熱脱着工程、および冷却工程を含むサイクルを複数のTSA吸着塔のそれぞれにおいて繰り返し行う。吸着工程では、吸着管内の吸着剤が相対的に低温の吸着用温度にある状態にて、当該吸着管に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスを当該吸着管から導出する。加熱脱着工程では、吸着管内の吸着剤を相対的に高温の温度へと昇温させつつ当該吸着剤から不純物を脱着させる。また、加熱脱着工程では、液状熱媒を用いて吸着管内の吸着剤を加熱し、且つ、吸着管に精製ガスを導入しつつ当該吸着管からオフガスを導出し、当該オフガスを貯留槽に導入する。加熱脱着工程にあるTSA吸着塔の吸着管に導入される精製ガスは、吸着工程にあるTSA吸着塔の吸着管から導出された精製ガスである。冷却工程では、吸着管内の吸着剤を降温させる。また、冷却工程では、液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却する。
本発明の第2の側面に係るアルゴン精製方法は、本発明の第1の側面に係るアルゴン精製方法の構成を含む。したがって、第2の側面に係るアルゴン精製方法によると、第1の側面に係るアルゴン精製方法に関して上述したのと同様の技術的効果を享受することができる。具体的には、第2の側面に係るアルゴン精製方法は、TSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適し、且つ、TSAサイクル時間の短縮化を図るのに適する。加えて、第2の側面に係るアルゴン精製方法は、原料ガスたる混合ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。
本発明の第2の側面においては、吸着工程にあるTSA吸着塔の吸着管から導出された精製ガスの一部を、冷却工程にあるTSA吸着塔の吸着管に導入しつつ、当該冷却工程吸着管からオフガスを導出し、当該オフガスを貯留槽に導入するのが好ましい。吸着工程にあるTSA吸着塔ないし吸着管から導出される精製ガスは、低温の吸着用温度にある吸着管内にて冷やされたものであり、比較的低温である。このように低温の精製ガスの一部を、冷却工程にあるTSA吸着塔の吸着管に導入することは、冷却工程時間の短縮化に資する。また、このようにして冷却に使用された精製ガスを含む吸着管からのオフガスを貯留槽に戻すことは、アルゴンガスの収率向上に資する。
本発明の第1および第2の側面において、吸着工程では、液状冷媒を用いて当該吸着工程にある吸着管内の吸着剤を冷却し続けるのが好ましい。冷却工程では液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却するところ、当該冷却工程を経た後の吸着管内の吸着剤を相対的に低温の吸着用温度として吸着工程を行うには、引き続き液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却するのが効率がよい。
好ましくは、吸着工程における吸着剤の吸着用温度は−50℃以上である。このような構成は、本発明を簡便に実施する観点から好ましい。低くとも−50℃の吸着用温度を実現する程度に液状冷媒を冷却することは、比較的入手が容易な冷却機等によって実現可能だからである。より好ましくは、吸着工程における吸着剤の吸着用温度は−40℃以上である。このような構成においては、吸着用温度がより低温である場合よりも、液状冷媒を冷却するのに使用すべき冷却機等の負荷が軽減される。
好ましくは、加熱脱着工程において加熱される吸着剤の温度は、高くとも50℃である。加熱脱着工程において高くとも50℃の加熱温度を実現する程度に液状熱媒を加熱することは、比較的入手が容易な電気ヒータ等によって実現可能である。また、加熱脱着工程において高くとも50℃の加熱温度を実現する程度に液状熱媒を加熱すればよいことは、液状熱媒の過度の蒸散を抑制するのに好適である。
好ましくは、吸着工程にあるTSA吸着塔の吸着管の第1内部圧力を0.01MPaGから1MPaGの範囲とし、且つ、加熱脱着工程にあるTSA吸着塔の吸着管の第2内部圧力を、前記の第1内部圧力より低い限りにおいて、大気圧から0.05MPaGの範囲とする。吸着工程における吸着管内が相対的に高圧であり且つ加熱脱着工程における吸着管内が相対的に低圧であるというこのような構成は、吸着工程にて吸着剤への不純物の吸着を促進し、加熱脱着工程にて吸着剤から不純物の脱着を促進するうえで、好適である。
好ましくは、混合ガスをTSA吸着塔に供給する前に、当該混合ガスに含まれる不純物の一部を圧力変動吸着法(PSA法)によって除去する(PSA法は、PSA吸着塔を使用して実行する)。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。また、このような構成によると、PSA法を実行するPSA吸着塔にて蓄えられる所定の圧力(PSA操作圧力)を、TSA吸着塔における上述の吸着工程や加熱脱着工程に利用可能である。本構成を採用する場合、上述の吸着工程にあるTSA吸着塔の吸着管内での吸着圧力がPSA操作圧力に追随して上昇するように構成することが可能となる。これにより、PSA操作圧力を利用して、当該吸着管内の吸着剤に対する窒素などの不純物の吸着量を増加させて、TSA吸着性能を高めることが可能となり、これとともに、TSA吸着塔ないし吸着管からの精製ガス(高純度アルゴン)の供給圧力が高まり、回収利用しやすくなる。また、本構成を採用すると、PSA操作圧力を利用して、上述の加熱脱着工程にあるTSA吸着塔ないし吸着管から導出されるガス(当該工程において、吸着剤から脱着したガスや、TSA吸着塔に導入される上記精製ガスを含む)を貯留槽へリサイクルしやすくなる。
第1の好ましい実施の形態では、上記PSA法にて、PSA吸着剤が充填された複数のPSA吸着塔から選択されたPSA吸着塔に向けて混合ガスを供給し、下記の吸着工程および脱着工程を複数のPSA吸着塔のそれぞれにおいて繰り返し行う。吸着工程では、PSA吸着塔内が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物をPSA吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された準精製ガスを当該PSA吸着塔から導出する。脱着工程では、PSA吸着塔内を降圧してPSA吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該PSA吸着塔からガスを導出する。また、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいてPSA吸着塔から第1ガスを導出する第1脱着工程と、PSA吸着塔から第2ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第1ガスを貯留槽に導入する。
このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。本構成においては、上述の脱着工程中にPSA吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供することができるからである。脱着工程にあるPSA吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本構成においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第1ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第2ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
第2の好ましい実施の形態では、上記PSA法にて、PSA吸着剤が充填された複数のPSA吸着塔から選択されたPSA吸着塔に向けて混合ガスを供給し、下記の吸着工程、減圧工程、脱着工程、洗浄工程、および昇圧工程を複数のPSA吸着塔のそれぞれにおいて繰り返し行う。吸着工程では、PSA吸着塔内が相対的に高圧である状態にて、当該PSA吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物をPSA吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された準精製ガスを当該PSA吸着塔から導出する。減圧工程では、PSA吸着塔内を降圧して当該PSA吸着塔からガスを導出する。脱着工程では、PSA吸着塔内を降圧してPSA吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該PSA吸着塔からガスを導出する。洗浄工程では、PSA吸着塔に洗浄ガスを導入し、且つ、当該PSA吸着塔からガスを導出する。洗浄工程の洗浄ガスは、減圧工程にあるPSA吸着塔から導出されたガスである。洗浄工程は、当該洗浄工程の開始から途中までにおいてPSA吸着塔から第1ガスを導出する第1洗浄工程と、当該PSA吸着塔から第2ガスを導出する、第1洗浄工程の後の第2洗浄工程とを含み、第2ガスを貯留槽に導入する。昇圧工程では、PSA吸着塔内の圧力を上昇させる。
このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。本構成においては、上述の洗浄工程中にPSA吸着塔から導出され続けるガス(パージガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いパージガスを貯留槽に導入し、当該パージガスをPSA法によるアルゴン富化に供することができるからである。洗浄工程にあるPSA吸着塔から導出されるパージガスの不純物含有率は、洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にあるところ、本構成においては、パージガスの不純物含有率が充分に低下するまで、パージガス(第1ガス)を系外に排出する第1洗浄工程を行い、パージガスの不純物含有率が充分に低下した以降に、パージガス(第2ガス)を貯留槽に導入する第2洗浄工程を行うことが可能である。
第2の好ましい実施の形態において、より好ましくは、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいてPSA吸着塔から第3ガスを導出する第1脱着工程と、当該PSA吸着塔から第4ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第3ガスを貯留槽に導入する。このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。本構成においては、上述の脱着工程中にPSA吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供することができるからである。脱着工程にあるPSA吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第3ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第4ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、混合ガスをTSA吸着塔またはPSA吸着塔に供給する前に、貯留槽からの混合ガスに対して、当該混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を施す。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。
本発明の第3の側面によるとアルゴン精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ吸着剤が充填された吸着管を含む、TSA吸着塔と、アルゴンを含む混合ガスをTSA吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、吸着管内の吸着剤を冷却するためにTSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための、冷媒貯槽と、吸着管内の吸着剤を加熱するためにTSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための、熱媒貯槽と、貯留槽からTSA吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽およびTSA吸着塔の間を連結する第1のガスラインと、TSA吸着塔の第1ガス通過口側から導出されるガスを貯留槽に供給可能にTSA吸着塔および貯留槽の間を連結する第2のガスラインと、冷媒貯槽からTSA吸着塔に冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、TSA吸着塔から冷媒貯槽に冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、熱媒貯槽からTSA吸着塔に熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、TSA吸着塔から熱媒貯槽に熱媒を戻すための第2の熱媒ラインとを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法を適切に実行することが可能である。
本発明の第4の側面によるとアルゴン精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ吸着剤が充填された吸着管を含む、複数のTSA吸着塔と、アルゴンを含む混合ガスをTSA吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、吸着管内の吸着剤を冷却するためにTSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための、冷媒貯槽と、吸着管内の吸着剤を加熱するためにTSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための、熱媒貯槽と、貯留槽から各TSA吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽および各TSA吸着塔の間を連結する第1のガスラインと、主幹路、および、TSA吸着塔ごとに設けられて当該TSA吸着塔の第2ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第2のガスラインと、貯留槽に接続された主幹路、および、TSA吸着塔ごとに設けられて当該TSA吸着塔の第1ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第3のガスラインと、冷媒貯槽から吸着剤冷却対象のTSA吸着塔に冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、TSA吸着塔から冷媒貯槽に冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、熱媒貯槽から吸着剤加熱対象のTSA吸着塔に熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、TSA吸着塔から熱媒貯槽に熱媒を戻すための第2の熱媒ラインとを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法や、第2の側面に係る上述のアルゴン精製方法を、適切に実行することが可能である。
本発明の第3および第4の側面において、好ましくは、混合ガスに含まれる不純物の一部をPSA法によって除去するためのPSA吸着塔を含むPSA系が第1のガスラインに設けられている。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。
好ましくは、混合ガスをTSA吸着塔またはPSA吸着塔に供給する前に当該混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理、を実行するための前処理系が第1のガスラインに設けられている。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。
本発明の第5の側面によると目的ガス精製方法が提供される。本方法においては、目的ガスを含む混合ガスを、吸着剤が充填された吸着管を含むTSA吸着塔に向けて供給する。そして、吸着工程、加熱脱着工程、および冷却工程を含むサイクルをTSA吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着管内の吸着剤が相対的に低温の吸着用温度にある状態にて、当該吸着管に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、目的ガスが富化された精製ガスを当該吸着管から導出する。加熱脱着工程では、吸着管内の吸着剤を相対的に高温の温度へと昇温させつつ当該吸着剤から不純物を脱着させる。また、加熱脱着工程では、液状熱媒を用いて吸着管内の吸着剤を加熱する。冷却工程では、吸着管内の吸着剤を降温させる。また、冷却工程では、液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却する。本方法による精製対象の目的ガスとしては、アルゴンのほか、ヘリウム、ネオン、クリプトン、およびキセノン等の希ガス等が挙げられる。
このような構成を具備する本方法は、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法や、第2の側面に係る上述のアルゴン精製方法において、適切に利用することが可能である。また、本方法によると、第1の側面に係るアルゴン精製方法に関して上述したのと同様に、所定の目的ガスの精製にあたり、TSAサイクル時間を短縮化しやすい。本方法では、吸着剤の温度変動を伴うTSA法を実行するうえで、液状熱媒および液状冷媒を用いて吸着剤の温度変動を実現するからである。
本発明の第6の側面によると目的ガス精製方法が提供される。本方法においては、目的ガスを含む混合ガスを、吸着剤が充填された吸着管を含む複数のTSA吸着塔から選択されたTSA吸着塔に向けて供給する。そして、吸着工程、加熱脱着工程、および冷却工程を含むサイクルを複数のTSA吸着塔のそれぞれにおいて繰り返し行う。吸着工程では、吸着管内の吸着剤が相対的に低温の吸着用温度にある状態にて、当該吸着管に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、目的ガスが富化された精製ガスを当該吸着管から導出する。加熱脱着工程では、吸着管内の吸着剤を相対的に高温の温度へと昇温させつつ当該吸着剤から不純物を脱着させる。また、加熱脱着工程では、液状熱媒を用いて吸着管内の吸着剤を加熱する。冷却工程では、吸着管内の吸着剤を降温させる。また、冷却工程では、液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却する。本方法による精製対象の目的ガスとしては、アルゴンのほか、ヘリウム、ネオン、クリプトン、およびキセノン等の希ガス等が挙げられる。
このような構成を具備する本方法は、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法や、第2の側面に係る上述のアルゴン精製方法において、適切に利用することが可能である。また、本方法によると、第1の側面に係るアルゴン精製方法に関して上述したのと同様に、所定の目的ガスの精製にあたり、TSAサイクル時間を短縮化しやすい。本方法では、吸着剤の温度変動を伴うTSA法を実行するうえで、液状熱媒および液状冷媒を用いて吸着剤の温度変動を実現するからである。
本発明の第5および第6の側面において、吸着工程では、液状冷媒を用いて当該吸着工程にある吸着管内の吸着剤を冷却し続けるのが好ましい。冷却工程では液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却するところ、当該冷却工程を経た後の吸着管内の吸着剤を相対的に低温の吸着用温度として吸着工程を行うには、引き続き液状冷媒を用いて吸着管内の吸着剤を冷却するのが効率がよい。
好ましくは、吸着工程における吸着剤の吸着用温度は−50℃以上である。このような構成は、本発明を簡便に実施する観点から好ましい。より好ましくは、吸着工程における吸着剤の吸着用温度は−40℃以上である。このような構成においては、吸着用温度がより低温である場合よりも、液状冷媒を冷却するのに使用すべき冷却機等の負荷が軽減される。
好ましくは、加熱脱着工程において加熱される吸着剤の温度は、高くとも50℃である。加熱脱着工程において高くとも50℃の加熱温度を実現する程度に液状熱媒を加熱することは、比較的入手が容易な電気ヒータ等によって実現可能である。また、加熱脱着工程において高くとも50℃の加熱温度を実現する程度に液状熱媒を加熱すればよいことは、液状熱媒の過度の蒸発を抑制するのに好適である。
本発明の第7の側面によると目的ガス精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ吸着剤が充填された吸着管を含む、TSA吸着塔と、吸着管内の吸着剤を冷却するためにTSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための、冷媒貯槽と、吸着管内の吸着剤を加熱するためにTSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための、熱媒貯槽と、冷媒貯槽からTSA吸着塔に冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、TSA吸着塔から冷媒貯槽に冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、熱媒貯槽からTSA吸着塔に熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、TSA吸着塔から熱媒貯槽に熱媒を戻すための第2の熱媒ラインとを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第5の側面に係る上述の目的ガス精製方法を、適切に実行することが可能である。
本発明の第8の側面によると目的ガス精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し、当該第1および第2ガス通過口と連通し且つ吸着剤が充填された吸着管を含む、複数のTSA吸着塔と、吸着管内の吸着剤を冷却するためにTSA吸着塔に供給される液状冷媒を保持するための、冷媒貯槽と、吸着管内の吸着剤を加熱するためにTSA吸着塔に供給される液状熱媒を保持するための、熱媒貯槽と、主幹路、および、TSA吸着塔ごとに設けられて当該TSA吸着塔の第2ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有するガスラインと、冷媒貯槽から吸着剤冷却対象のTSA吸着塔に冷媒を供給するための第1の冷媒ラインと、TSA吸着塔から冷媒貯槽に冷媒を戻すための第2の冷媒ラインと、熱媒貯槽から吸着剤加熱対象のTSA吸着塔に熱媒を供給するための第1の熱媒ラインと、TSA吸着塔から熱媒貯槽に熱媒を戻すための第2の熱媒ラインとを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第5の側面に係る上述の目的ガス精製方法や、第6の側面に係る上述の目的ガス精製方法を、適切に実行することが可能である。
図1は、本発明に係るアルゴン精製装置Yの全体概略構成を表す。アルゴン精製装置Yは、貯留系1と、前処理系2と、PSA系3と、リサイクルライン4と、TSA系5とを備え、アルゴンを含む原料ガスG0を回収しつつ連続的にアルゴンを精製することが可能なように構成されている。
原料ガスG0は、シリコン結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、製鋼用真空脱ガス炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などにおける炉内雰囲気ガスとして使用されて不純物が混入しているアルゴンであり、少なくとも一つの所定の炉(図示略)から連続的に又は断続的に排出されたものである。この排ガス(原料ガスG0)の排出流量や、圧力、組成は、炉で実施中の工程や炉の操業条件に応じて、変動することが多く、急激に変動する場合もある。原料ガスG0は、例えば、主成分としてアルゴンを含み、且つ、不純物として窒素、一酸化炭素、酸素、水素、および二酸化炭素を含む。主たる不純物は例えば窒素である。
アルゴン精製装置Yの一部をなす貯留系1は、図1に示すように、バッファタンク10、除塵器11、昇圧ブロア12、濃度分析計13、流量制御部14、および、原料ガス導入端E1を有するライン15を備えてなる。除塵器11、バッファタンク10、昇圧ブロア12、および流量制御部14は、ライン15内において、直列に配されている。
バッファタンク10は、アルゴンを含む混合ガス(原料ガスG0を含む)を一旦貯留するための貯留槽である。また、本実施形態では、バッファタンク10は、そのガス収容用の容積が可変に構成されている。容積が可変のバッファタンク10は、例えば、内部空間が拡縮可能な袋体によってガス貯留空間が形成されたものである。
除塵器11は、炉からの排ガスである原料ガスG0に含まれることの多い粉塵や金属粉等の固形成分を、原料ガスG0から除去するためのものである。このような除塵器11は、バッファタンク10の上流側に配され、例えば所定の除塵フィルタを有してなる。
昇圧ブロア12は、バッファタンク10の下流側に配されてバッファタンク10に原料ガスG0を取り込むように稼働するためのものである。昇圧ブロア12が稼働することにより、バッファタンク10内のガス貯留空間に負圧が作用して、原料ガスG0がバッファタンク10へ適当に流入することとなる。また、昇圧ブロア12が稼働することにより、バッファタンク10からガスG1が導出され、当該ガスG1は前処理系2に向けて送出される。
濃度分析計13は、バッファタンク10および昇圧ブロア12を経たガスG1に含まれる各不純物の濃度を測定するためのものである。濃度分析計13において、ガスG1に含まれる例えば窒素、一酸化炭素、酸素、水素、および二酸化炭素のそれぞれの濃度が測定される。
流量制御部14は、前処理系2などの後段へと供給するガスG1の流量を制御するためのものである。このような流量制御部14は、例えば、開度を制御可能なバルブよりなる。
アルゴン精製装置Yの一部をなす前処理系2は、後段のPSA系3において実行される圧力変動吸着法(PSA法)や、後段のTSA系5において実行される温度変動吸着法(TSA法)によっては除去しにくい不純物を、ガスG1から除去するためのものである。アルゴンを精製する際にPSA法やTSA法によっては除去しにくい不純物としては、例えば酸素および水素が挙げられる。また、酸素は、精製後のアルゴンを炉内雰囲気ガスとして再利用する際に有害であることが多いので、除去の必要性が高い。前処理系2は、図1に示すように、前処理槽20A,20B,20C、予熱器21、クーラ22A,22B,22C、酸素供給量制御部23A,23B,23C、水素供給量制御部24、温度計25A,25B,25C、水素濃度分析計26、およびライン27を備えてなる。前処理槽20A,20B,20Cは、ライン27内において直列に配されている。ライン27は、ライン27A,27B,27C,27Dを含む。
前処理槽20Aは、ガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去するための転化反応槽である(一酸化炭素は、後段の前処理槽20B,20Cに充填される触媒にとっての触媒毒となる場合がある)。前処理槽20Aには、下記の反応式(1)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えばプラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Bは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aから導出されたガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去するための転化反応槽である。前処理槽20Bには、下記の反応式(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えばプラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Cは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bから導出されたガスG1中の水素および酸素を水に変化させて実質的に除去するための転化反応槽である。前処理槽20Cには、上記の反応式(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えばプラチナ系触媒やパラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
予熱器21は、前処理槽20Aに至る前にガスG1を昇温するためのものであり、例えば電気ヒータよりなる。酸素供給量制御部23Aは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン27Aと連結されている。このような酸素供給量制御部23Aは、酸素貯留部からライン27Aへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計25Aは、前処理槽20Aに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
クーラ22Aは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン27Bに設けられている。このようなクーラ22Aは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。酸素供給量制御部23Bは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン27Bと連結されている。このような酸素供給量制御部23Bは、酸素貯留部からライン27Bへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計25Bは、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
クーラ22Bは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン27Cに設けられている。このようなクーラ22Bは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。酸素供給量制御部23Cは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン27Cと連結されている。このような酸素供給量制御部23Cは、酸素貯留部からライン27Cへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。水素供給量制御部24は、図外の水素貯留部と連結され、且つ、ライン27Cと連結されている。このような水素供給量制御部24は、水素貯留部からライン27Cへと必要に応じて供給される水素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。水素濃度分析計26は、ライン27Cを流れるガスG1に酸素や水素が添加される前にガスG1の水素濃度を測定するためのものである。温度計25Cは、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
クーラ22Cは、前処理槽20Cにおける処理を経て前処理槽20Cから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン27Dに設けられている。このようなクーラ22Cは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。
本実施形態における前処理系2は、上述のように三段の転化反応槽を具備するものであるが、後段(PSA系3,TSA系5)にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物の種類および量に応じて、前処理系2を、所定の一段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の二段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の四段以上の転化反応槽を具備するものとして構成してもよい。或は、後段(PSA系3,TSA系5)にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物がない場合は、前処理系2を設けなくてもよい。
アルゴン精製装置Yの一部をなすPSA系3は、図1および図2に示すように、PSA装置30を備えてなる。PSA装置30は、吸着塔31A,31B,31Cと、昇圧機32と、クーラ33と、ライン34〜37とを備え、前処理系2からのガスG1から圧力変動吸着法(PSA法)を利用してアルゴンを濃縮分離することが可能なように構成されている。
吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは、両端にガス通過口31a,31bを有し、ガス通過口31a,31bの間において、ガスG1に含まれる不純物を選択的に吸着するための吸着剤が充填されている。例えば、不純物たる窒素や、一酸化炭素、二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、CaA型ゼオライトを用いることができる。例えば、不純物たる二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、カーボンモレキュラーシーブを用いることができる。例えば、不純物たる水分を吸着するための吸着剤としては、アルミナゲルを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内にて積層させて充填してもよい。吸着塔31A,31B,31C内に充填する吸着剤の種類や数については、吸着塔31A,31B,31Cにて除去すべき不純物の種類および量に応じて決定する。
昇圧機32は、ガス吸入口32aおよびガス送出口32bを有する。ガス吸入口32aは、前処理系2におけるライン27Dと連結されている。このような昇圧機32は、ガス吸入口32aから吸引したガスG1をガス送出口32bから吸着塔31A,31B,31Cに向けて供給ないし送り出すためのものであり、例えば圧縮機である。
クーラ33は、ガスG1を吸着塔31A,31B,31Cに供給する前に当該ガスG1を冷却するためのものである。
ライン34は、昇圧機32のガス送出口32bに接続された主幹路34’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路34A,34B,34Cを有する。分枝路34A,34B,34Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁34a,34b,34cが付設されている。また、ライン34の主幹路34’には上述のクーラ33が配されている。
ライン35は、主幹路35’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路35A,35B,35Cを有する。分枝路35A,35B,35Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁35a,35b,35cが付設されている。
ライン36は、主幹路36’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路36A,36B,36Cを有する。分枝路36A,36B,36Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁36a,36b,36cが付設されている。
ライン37は、ガス排出端E2を有する主幹路37’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路37A,37B,37Cを有する。分枝路37A,37B,37Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁37a,37b,37cが付設されている。主幹路37’には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁37dが付設されている。
本実施形態におけるPSA系3ないしPSA装置30は、上述のように三塔の吸着塔31A,31B,31Cを具備するものであるが、PSA系3を、所定の一塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の二塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の四塔以上の吸着塔を具備するものとして構成してもよい。或は、後段のTSA系5にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物がない場合は、PSA系3を設けなくてもよい。
アルゴン精製装置Yの一部をなすリサイクルライン4は、図1に示すように、PSA系3ないしPSA装置30における上述のライン37と、貯留系1における上述のバッファタンク10とを連結する。リサイクルライン4には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁4aが付設されている。このようなリサイクルライン4は、PSA装置30における吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側から排出される所定のガスを、バッファタンク10に戻すためのものである。
アルゴン精製装置Yの一部をなすTSA系5は、図1および図3に示すように、TSA装置50を備えてなる。TSA装置50は、吸着塔51A,51Bと、熱交換器52Aと、クーラ52Bと、冷媒タンク52Cと、冷媒ポンプ52Dと、ブラインクーラ52Eと、熱媒タンク52Fと、熱媒ポンプ52Gと、ガス流路をなすライン53〜58と、冷媒流れ及び熱媒流れに係るライン59a〜59fを含んで且つ所定箇所に自動弁を伴う冷媒熱媒ラインとを備え、PSA系3からの準精製ガスG2から温度変動吸着法(TSA法)を利用してアルゴンを更に濃縮分離することが可能なように構成されている。
吸着塔51A,51Bのそれぞれは、ガス通過口51a,51b、少なくとも一本の吸着管51c、二枚の管板51d、空間部51e,51fを有する。吸着塔51A,51Bは縦置きされている。吸着管51cには、ガスG1に含まれる不純物たる窒素を選択的に吸着するための吸着剤が充填されている。そのような吸着剤として、例えば、CaX型ゼオライト、Caモルデナイト型ゼオライト、およびLiX型ゼオライトを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着管51c内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着塔51A,51B内にて積層させて充填してもよい。このような吸着管51cは、塔内において管板51dに支持されており、吸着管51c内部と空間部51eないしガス通過口51a,51bとは連通している。また、空間部51eはガス流路の一部であり、空間部51fは、冷媒や熱媒を受容する部位であり、これら空間部51e,51fは管板51dによって仕切られている。
熱交換器52Aは、PSA装置30から導出された準精製ガスG2を冷却するためのものである。クーラ52Bは、熱交換器52Aを経た準精製ガスG2を冷却するためのものである。冷媒タンク52Cは、液状の冷媒M1を保持するためのものである。冷媒M1としては、例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化メチレン、またはエチレングリコールを使用することができる。冷媒ポンプ52Dは、冷媒タンク52C内の冷媒M1をブラインクーラ52E側ないし吸着塔51A,51B側に送流するためのものである。ブラインクーラ52Eは、冷媒M1が吸着塔51A,51Bに至る前に当該液状冷媒を所定温度まで冷却するための、冷凍機付き冷媒冷却器である。熱媒タンク52Fは、液状の熱媒M2を保持し且つ熱媒M2を加熱するためのものである。熱媒タンク52Fには所定の加熱手段(図示略)が設けられている。熱媒M2としては、例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化メチレン、またはエチレングリコールを使用することができる。本実施形態では、冷媒M1および熱媒M2は同種の液体である。熱媒ポンプ52Gは、熱媒タンク52F内の熱媒M2を吸着塔51A,51B側に送流するためのものである。
ライン53は、主幹路53’、および、吸着塔51A,51Bの各ガス通過口51a側にそれぞれが接続された分枝路53A,53Bを有する。分枝路53A,53Bには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁53a,53bが付設されている。上述の熱交換器52Aおよびクーラ52Bは、ライン53の主幹路53’に設けられている。
ライン54は、主幹路54’、および、吸着塔51A,51Bの各ガス通過口51b側にそれぞれが接続された分枝路54A,54Bを有する。分枝路54A,54Bには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁54a,54bが付設されている。ライン54の主幹路54’は、上述の熱交換器52Aに接続されている。
ライン55は、精製ガス導出端E3を有し、熱交換器52Aを介してライン54と連通している。
ライン56は、主幹路56’、および、吸着塔51A,51Bの各ガス通過口51b側にそれぞれが接続された分枝路56A,56Bを有する。分枝路56A,56Bには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁56a,56bが付設されている。また、ライン56の主幹路56’は、上述のライン55と連結されており、主幹路56’には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁56cが付設されている。
ライン57は、主幹路57’、および、吸着塔51A,51Bの各ガス通過口51b側にそれぞれが接続された分枝路57A,57Bを有する。分枝路57A,57Bには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁57a,57bが付設されている。また、ライン57の主幹路57’は、ライン54の主幹路54’に連結されている。
ライン58は、主幹路58’、および、吸着塔51A,51Bの各ガス通過口51a側にそれぞれが接続された分枝路58A,58Bを有する。分枝路58A,58Bには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁58a,58bが付設されている。また、ライン58の主幹路58’は、上述の貯留系1におけるバッファタンク10に接続されている。
冷媒熱媒ラインに含まれるライン59aは、吸着塔51A,51Bへの冷媒供給用ラインであり、冷媒タンク52C、冷媒ポンプ52D、ブラインクーラ52Eを直列に連結し、且つ、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの下端側と連通可能に設けられている。
ライン59bは、吸着塔51A,51Bからの冷媒回収用ラインであり、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの上端側と連通可能であり且つ空間部51fの下端側と連通可能に、設けられている。また、ライン59bは、冷媒タンク52Cに接続されている。
ライン59cは、均圧用ラインであり、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの上端側と連通可能に設けられており、且つ、冷媒タンク52Cに接続されている。
ライン59dは、吸着塔51A,51Bへの熱媒供給用ラインであり、熱媒タンク52Fおよび熱媒ポンプ52Gを直列に連結し、且つ、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの下端側と連通可能に設けられている。
ライン59eは、吸着塔51A,51Bからの熱媒回収用ラインであり、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの上端側と連通可能であり且つ空間部51fの下端側と連通可能に、設けられている。また、ライン59eは、熱媒タンク52Fに接続されている。
ライン59fは、均圧用ラインであり、吸着塔51A,51Bのそれぞれの空間部51fの上端側と連通可能に設けられており、且つ、熱媒タンク52Fに接続されている。
以上のような構成を有するアルゴン精製装置Yを使用して、本発明に係るアルゴン精製方法を実行することができる。
貯留系1では、昇圧ブロア12が稼働して、ライン15の原料ガス導入端E1から原料ガスG0が受け入れられる。受け入れられた原料ガスG0は、除塵器11を通過することによって所定の固形成分が除去された後、バッファタンク10に取り込まれる。バッファタンク10には、PSA系3からリサイクルライン4を介して所定のガスも取り込まれ、また、TSA系5からライン58を介して所定のガスも取り込まれる。そして、バッファタンク10からはガスG1が導出される。ガスG1については、濃度分析計13によって各不純物の濃度が測定される。また、ガスG1については、流量制御部14によって流量が調節される。
流量制御部14にて流量制御を受けるガスG1は、前処理系2に供される。前処理系2では、ガスG1は、順次、前処理槽20Aにて一酸化炭素が除去され(第1処理)、前処理槽20Bにて水素濃度が低下され或は水素が除去され(第2処理)、前処理槽20Cにて水素が除去される(第3処理)。具体的には、前処理槽20Aでは、上述のように、反応式(1)で表される転化反応によってガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去する。前処理槽20Bでは、上述のように、反応式(2)で表される転化反応によってガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去する。前処理槽20Cでは、上述のように、反応式(2)で表される転化反応によってガスG1中の水素および酸素を水に変化させて水素および酸素を実質的に除去する。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、ガスG1は、ライン27Aにおいて、温度計25Aによって測定される温度が例えば130〜150℃となるように予熱器21を通過する際に昇温される。これにより、前処理槽20Aにおける反応温度は例えば250℃以下とされる。上記反応式(1)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は130℃以上であるのが好ましい。前処理槽20Aにおいてメタンが生ずる反応を充分に抑制するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は250℃以下であるのが好ましい。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1には、酸素供給量制御部23Aの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。酸素添加量は、上述の濃度分析計13によって測定された一酸化炭素濃度および酸素濃度に基づいて決定される。上記反応式(1)で表される転化反応を促進して前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素を除去するためには、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる一酸化炭素の1.0〜1.5倍当量であるのが好ましい。前処理槽20Aでは、上述のように、上記反応式(1)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の一酸化炭素が二酸化炭素に変成されて実質的に除去される。
前処理槽20Aの後、ガスG1は、前処理槽20Bに導入される前にクーラ22Aを通過することによって所定温度に調節される。温度計25Bによって測定される温度が例えば50〜60℃となるように、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度は調節される。これにより、前処理槽20Bにおける反応温度は例えば100〜360℃とされる。上記反応式(2)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Bにおける反応温度は100〜360℃であるのが好ましい。また、前段の前処理槽20Aにおいて、水素と酸素の反応により副生成物として水が発生する場合が想定されるところ、水分は前処理槽20B内の触媒の活性阻害要因となり得るため、前処理槽20Bに導入されるガスG1の温度は、露点温度(例えば50℃)以上であるのが好ましい。
前処理槽20BにガスG1が導入される前に、ガスG1には、酸素供給量制御部23Bの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。酸素添加量は、上述の濃度分析計13によって測定された一酸化炭素濃度および酸素濃度、並びに、前処理槽20A前に添加された酸素量に基づいて決定される。上記反応式(2)で表される転化反応は発熱反応であるところ、前処理槽20Bに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Bにおける反応温度が360℃を超えない程度の量であるのが好ましい。前処理槽20Bでは、上述のように、上記反応式(2)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の水素および酸素が水に変えられて実質的に除去または低濃度化される。
前処理槽20Bの後、ガスG1は、前処理槽20Cに導入される前にクーラ22Bを通過することによって所定温度に調節される。温度計25Cによって測定される温度が例えば50〜60℃となるように、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度は調節される。これにより、前処理槽20Cにおける反応温度は例えば100〜360℃とされる。上記反応式(2)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Cにおける反応温度は100〜360℃であるのが好ましい。また、ガスG1中の水分は前処理槽20C内の触媒の活性阻害要因となり得るため、前処理槽20Cに導入されるガスG1の温度は、露点温度(例えば50℃)以上であるのが好ましい。
前処理槽20CにガスG1が導入される前に、水素濃度分析計26によってガスG1の水素濃度が測定されたうえで、酸素供給量制御部23Cの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加され、また、水素供給量制御部24の稼働によって必要に応じて所定量の水素が添加される。酸素添加量は、上述の濃度分析計13によって測定された一酸化炭素濃度および酸素濃度、前処理槽20A前に添加された酸素量、前処理槽20B前に添加された酸素量、並びに、水素濃度分析計26によって測定された水素濃度に基づいて決定される。上記反応式(2)で表される転化反応によって前処理槽20Cにて水素を除去するためには、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる水素の1/2当量であるのが好ましい。前処理槽20Cでは、上述のように、上記反応式(2)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の水素および酸素が水に変えられて実質的に除去される。アルゴン精製装置Yによって精製されるアルゴンから水素および酸素を除去する場合において、前処理槽20Bにて充分に水素および酸素を除去できる場合には、前処理槽20C等については必ずしも設けなくてもよい。
前処理槽20Cを経た後、ガスG1は、クーラ22Cを通過することによって温度調節される。クーラ22Cを通過した後のガスG1の温度は例えば20〜40℃である。
前処理系2において所定の前処理を受けたガスG1は、PSA系3に供される。PSA系3に供されたガスG1は、昇圧機32によって例えば0.8〜1MPaGに圧縮された後、クーラ33を通過することによって所定温度に冷却される。PSA系3およびリサイクルライン4では、PSA装置30の駆動時において、図4から図6に示す態様で自動弁34a〜34c,35a〜35c,36a〜36c,37a〜37d,4aを切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜15からなる1サイクルを繰り返すことができる(図4から図6では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す)。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにて、吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程が行われる。図7は、ステップ1〜5におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図8は、ステップ6〜10におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図9は、ステップ11〜15におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。
ステップ1では、図4に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図7(a)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図3および図7(a)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ1では、所定の高圧状態にある吸着塔31Aのガス通過口31a側にガスG1が導入されて、当該ガスG1中の不純物(二酸化炭素,水,窒素など)を吸着塔31A内の吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された準精製ガスG2が吸着塔31Aのガス通過口31b側から導出される。準精製ガスG2は、ライン35を介してTSA系5に向けて送出される。これとともに、ステップ1では、後述のステップ11〜15(吸着工程)を経た吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG3が導出される。このガスG3は、ライン36を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ1では、後述のステップ15(第2脱着工程)を経た吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3’(パージガス)が導出される。このガスG3’は、ライン37を介してガス排出端E2から装置外へ排出される。
ステップ2では、図4に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図7(b)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図3および図7(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、吸着塔31Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、準精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ2では、吸着塔31Cにおいて、ステップ1から引き続き第1減圧工程が行われる。これとともに、ステップ2では、ステップ1から引き続いて吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3”(パージガス)が導出される。このガスG3”は、ライン37およびリサイクルライン4を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。
ステップ3では、図4に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図7(c)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2減圧工程が行われる。
図3および図7(c)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ3では、吸着塔31Aにおいて、ステップ2から引き続き吸着工程が行われ、準精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Cにおいて、ステップ2から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG4が導出される。このガスG4は、ライン36を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG4が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。
ステップ4では、図4に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図7(d)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第1脱着工程が行われる。
図3および図7(d)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ4では、吸着塔31Aにおいて、ステップ3から引き続き吸着工程が行われ、準精製ガスG2が導出される。準精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31Aからの準精製ガスG2が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG5(オフガス)が導出される。このガスG5は、ライン37およびリサイクルライン4を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。
ステップ5では、図4に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図7(e)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2脱着工程が行われる。
図3および図7(e)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ5では、吸着塔31Aにおいて、ステップ4から引き続き吸着工程が行われ、準精製ガスG2が導出される。準精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ5では、吸着塔31Bにおいて、ステップ4から引き続いて内部が昇圧される。これとともに、ステップ5では、ステップ4から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が更に脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG6(オフガス)が導出される。このガスG6は、ライン37を介してガス排出端E2から装置外へ排出される。
ステップ1〜5において、吸着工程にある吸着塔31Aの内部の最高圧力は、例えば700〜800kPaGである。ステップ1の第1洗浄工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば500〜600kPaGである。ステップ1〜2にわたる第1減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は、例えば300〜400kPaGである。ステップ3の第2減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は、例えば150〜200kPaGである。ステップ4の第1脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば70〜100kPaGである。ステップ5の第2脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば0〜30kPaGである。
ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図8に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図8に示すように第1洗浄工程(ステップ6)、第2洗浄工程(ステップ7)、第1昇圧工程(ステップ8)、および第2昇圧工程(ステップ9,10)が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図8に示すように第1減圧工程(ステップ6,7)、第2減圧工程(ステップ8)、第1脱着工程(ステップ9)、および第2脱着工程(ステップ10)が行われる。
ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図9に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図9に示すように第1洗浄工程(ステップ11)、第2洗浄工程(ステップ12)、第1昇圧工程(ステップ13)、および第2昇圧工程(ステップ14,15)が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図9に示すように第1減圧工程(ステップ11,12)、第2減圧工程(ステップ13)、第1脱着工程(ステップ14)、および第2脱着工程(ステップ15)が行われる。
以上のようにして、PSA系3ないしPSA装置30からは、アルゴンが富化された準精製ガスG2が、TSA系5に向けて送出され続ける。
TSA系5では、TSA装置50の駆動時において、図10および図11に示す態様で自動弁53a,53b,54a,54b,56a,56b,56c,57a,57b,58a,58bを切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜10からなる1サイクルを繰り返すことができる(図10および図11では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す)。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔51A,51Bのそれぞれにて、吸着工程、冷媒抜出し工程、加熱脱着工程、熱媒抜出し工程、冷却工程、および蓄圧工程が行われる。図12から図21は、ステップ1〜10におけるTSA装置50でのガス、冷媒M1および熱媒M2の流れ状態を表す。
ステップ1では、冷媒熱媒ラインの各自動弁の開閉状態が適宜選択され且つガスラインの各自動弁の開閉状態が図10に示すように選択されて、図12に示すような冷媒流れ状態およびガス流れ状態が達成され、吸着塔51Aにて吸着工程が、吸着塔51Bにて冷媒抜出し工程が行われる。具体的には次の通りである。
ステップ1では、冷媒M1が、冷媒タンク52Cからライン59aを介して吸着塔51Aの空間部51fの下端側に供給される。この冷媒M1は、冷媒タンク52Cから冷媒ポンプ52Dによってポンプアップされてブラインクーラ52Eを通過して冷却されたものである。ブラインクーラ52Eによる冷媒M1の冷却温度は例えば−50〜−40℃である。これとともに、吸着塔51Aの空間部51fの上端側からライン59bを介して冷媒タンク52Cに冷媒M1が回収される。この冷媒M1は、冷媒タンク52Cに回収される前にクーラ52Bを通過し、準精製ガスG2を冷却するのに利用される。冷媒M1と準精製ガスG2の比熱の差が大きいので、クーラ52Bでは効率よく準精製ガスG2を冷却することができる。冷媒M1は、吸着塔51Aの空間部51fとブラインクーラ52Eとの間を巡回し、これにより、吸着塔51Aの吸着管51c内の吸着剤は冷却され続けて低温の吸着用温度に維持される。吸着用温度は低くとも−50℃とする。本実施形態では、吸着用温度は例えば−35℃である。これとともに、吸着塔51Aのガス通過口51a側にライン53を介して準精製ガスG2が導入されて、当該ガスG2中の不純物窒素を吸着塔51Aの吸着管51c内の吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスG7が吸着塔51Aのガス通過口51b側から導出される。精製ガスG7は、ライン54,55を介して精製ガス導出端E3から装置外へ取り出される。この精製ガスG7は、装置外に取り出される前に熱交換器52Aを通過し、準精製ガスG2を冷却するのに利用される。これとともに、後述のステップ6〜10(吸着工程)を経た吸着塔51Bの空間部51fの下端側からライン59bを介して冷媒タンク52Cに冷媒M1が回収される(このとき、ライン59cの自動弁が開状態とされ、冷媒タンク52Cと吸着塔51Bの空間部51fとは均圧される)。吸着工程にある吸着塔51Aの吸着管51cの内部圧力は、0.01〜1MPaGの範囲とする。
ステップ2では、冷媒熱媒ラインの各自動弁の開閉状態が適宜選択され且つガスラインの各自動弁の開閉状態が図10に示すように選択されて、図13に示すような冷媒流れ状態、熱媒流れ状態、およびガス流れ状態が達成されて、吸着塔51Aにて吸着工程が、吸着塔51Bにて加熱脱着工程が行われる。具体的には次の通りである。
ステップ2では、吸着塔51Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG7が導出される。これとともに、熱媒M2が、熱媒ポンプ52Gによってポンプアップされて熱媒タンク52Fからライン59dを介して吸着塔51Bの空間部51fの下端側に供給される。熱媒タンク52F内では、熱媒M2は例えば45〜50℃に加熱されている。これとともに、吸着塔51Bの空間部51fの上端側からライン59eを介して熱媒タンク52Fに熱媒M2が回収される。熱媒M2は、吸着塔51Bの空間部51fと熱媒タンク52Fとの間を巡回し、これにより、吸着塔51Bの吸着管51c内の吸着剤は加熱され続けて例えば40℃に至るまで昇温される。加熱脱着工程における吸着剤の最高到達温度は高くとも50℃とする。これとともに、吸着塔51Bのガス通過口51b側に、吸着塔51Aから導出された精製ガスG7の一部がライン56を介して導入されつつ、吸着塔51Bのガス通過口51a側からガスG7’が導出される。このガスG7’は、ライン58(リサイクルライン)を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。また、加熱脱着工程にある吸着塔51Bの吸着管51cの内部圧力は、吸着工程における吸着管51cの内部圧力より低い限りにおいて、大気圧から0.05MPaGまでの間とする。
ステップ3では、冷媒熱媒ラインの各自動弁の開閉状態が適宜選択され且つガスラインの各自動弁の開閉状態が図10に示すように選択されて、図14に示すような冷媒流れ状態、熱媒流れ状態、およびガス流れ状態が達成されて、吸着塔51Aにて吸着工程が、吸着塔51Bにて熱媒抜出し工程が行われる。具体的には次の通りである。
ステップ3では、吸着塔51Aにおいて、ステップ2から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG7が導出される。これとともに、吸着塔51Bの空間部51fの下端側からライン59eを介して熱媒タンク52Fに熱媒M2が回収される(このとき、ライン59fの自動弁が開状態とされ、熱媒タンク52Fと吸着塔51Bの空間部51fとは均圧される)。
ステップ4では、冷媒熱媒ラインの各自動弁の開閉状態が適宜選択され且つガスラインの各自動弁の開閉状態が図10に示すように選択されて、図15に示すような冷媒流れ状態およびガス流れ状態が達成されて、吸着塔51Aにて吸着工程が、吸着塔51Bにて冷却工程が行われる。具体的には次の通りである。
ステップ4では、吸着塔51Aにおいて、ステップ3から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG7が導出される。これとともに、冷媒M1が、冷媒タンク52Cからライン59aを介して吸着塔51Bの空間部51fの下端側にも供給される。この冷媒M1は、冷媒タンク52Cから冷媒ポンプ52Dによってポンプアップされてブラインクーラ52Eを通過して冷却されたものである。これとともに、吸着塔51Bの空間部51fの上端側からライン59bを介して冷媒タンク52Cに冷媒M1が回収される。冷媒M1は、吸着塔51Bの空間部51fとブラインクーラ52Eとの間を巡回し、これにより、吸着塔51Bの吸着管51c内の吸着剤は冷却され続けて例えば−35℃(吸着用温度)に至るまで降温される。これとともに、吸着塔51Bのガス通過口51b側に、吸着塔51Aから導出された精製ガスG7の一部がライン57を介して導入されつつ、吸着塔51Bのガス通過口51a側からガスG7’が導出される。吸着塔51Bへと導入される精製ガスG7は、吸着塔51Bの吸着管51c内の吸着剤の冷却に寄与する。また、ガスG7’は、ライン58(リサイクルライン)を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。
ステップ5では、冷媒熱媒ラインの各自動弁の開閉状態が適宜選択され且つガスラインの各自動弁の開閉状態が図10に示すように選択されて、図16に示すような冷媒流れ状態およびガス流れ状態が達成されて、吸着塔51Aにて吸着工程が、吸着塔51Bにて蓄圧工程が行われる。具体的には次の通りである。
ステップ5では、吸着塔51Aにおいて、ステップ4から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG7が導出される。これとともに、ステップ4から引き続いて冷媒M1が吸着塔51Bの空間部51fとブラインクーラ52Eとの間を巡回し、吸着塔51Bの吸着管51c内の吸着剤は冷却される。これとともに、吸着塔51Bのガス通過口51b側に、吸着塔51Aから導出された精製ガスG7の一部がライン57を介して導入され、吸着塔51Bの吸着管51c内が蓄圧される。吸着塔51Bの吸着管51c内は、例えば、0.01〜1MPaGの範囲の所定圧力まで昇圧される。
ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔51Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔51Bにおいて吸着工程が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔51Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔51Aにおいて、冷媒抜出し工程(ステップ6)、加熱脱着工程(ステップ7)、熱媒抜出し工程(ステップ8)、冷却工程(ステップ9)、および蓄圧工程(ステップ10)が行われる。ステップ6〜10における冷媒流れ状態、熱媒流れ状態、およびガス流れ状態を、図17から図21に示す。
以上のようにして、アルゴン精製装置YないしTSA装置50から、アルゴンが富化された精製ガスG7が取り出され続ける。
アルゴン精製装置Yを使用して行う以上のアルゴン精製方法によると、精製ガスG7として、99.999%以上の高純度のアルゴンを取得することができる(精精ガスG7中の窒素濃度は0.1volppm以下に低減することができる)。
また、本方法では、TSA装置50の吸着塔51A,51Bのそれぞれにおいて、上述のような吸着工程、冷媒抜出し工程、加熱脱着工程、熱媒抜出し工程、冷却工程、および蓄圧工程を含むTSA法を実行し、これによって準精製ガスG2中のアルゴンの富化ないし高純度化を図る。このような本方法によると、高純度化されるアルゴンについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、加熱脱着工程中の吸着塔51A,51Bから導出され続けるオフガス(ガスG7’)をバッファタンク10に戻し、当該オフガスをPSA法およびTSA法による再度のアルゴン富化に供するからである。本方法の加熱脱着工程では、吸着工程を経て窒素を吸着している吸着剤から窒素が脱着する。この脱着窒素を吸着管51c外に適切に押し出すべく、加熱脱着工程にある吸着塔51A,51Bの吸着管51cには精製ガスG7(高純度アルゴンガス)が導入される。そのため、加熱脱着工程にある吸着塔51A,51Bの吸着管51cから導出されるオフガス(ガスG7’)のアルゴン濃度は比較的高い。本方法では、このようなオフガス(ガスG7’)を、装置外に排気せずにバッファタンク10に戻し、PSA法およびTSA法による再度のアルゴン富化に供する。したがって、本方法は、高純度アルゴンを高収率で得るのに適するのである。
加えて、本方法によると、TSA装置50でのTSAサイクル時間を短縮化しやすい。本方法では、吸着剤の温度変動を伴うTSA法を実行するうえで、液状の冷媒M1および液状の熱媒M2を用いて吸着剤の温度変動を実現するからである。具体的には次の通りである。
本方法の加熱脱着工程では、液状の熱媒M2を用いて吸着管51c内の吸着剤を加熱する。吸着剤が充填されている吸着管51cに液状の熱媒M2を接触させて、当該熱媒M2から吸着管51c内の吸着剤へと熱を供給することによって、吸着剤を加熱する。液状の熱媒M2は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を加熱するための媒体として気体を用いる場合よりも、本方法のように液状の熱媒M2を用いて吸着剤を加熱する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く昇温させることができる。仮に、本方法における熱媒M2として55%エタノール水溶液を採用する場合(第1の場合)を想定し、加熱用の媒体としてアルゴンガスを用いて吸着剤を昇温する場合(第2の場合)を想定すると、55%エタノール水溶液の比熱は0.839kcal/kg・℃(−20℃にて)であって、アルゴンガスの比熱は0.125kcal/kg・℃(−23℃にて)であるので、単位時間あたりの吸着剤へ熱供給量について、第1の場合では第2の場合の7倍程度を実現することが可能である。したがって、第1の場合(本発明に係る場合)は、第2の場合の7分の1程度の短時間で加熱脱着工程を終了させることが可能である。加熱脱着工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
一方、本方法の冷却工程では、液状の冷媒M1を用いて吸着管51c内の吸着剤を冷却する。吸着剤が充填されている吸着管51cに液状の冷媒M1を接触させて、当該冷媒M1によって吸着管51c内の吸着剤から熱を奪うことによって、吸着剤を冷却する。液状の冷媒M1は気体よりも比熱が相当程度に大きいので、TSA法において吸着剤を冷却するための媒体として気体を用いる場合よりも、本方法のように液状の冷媒M1を用いて吸着剤を冷却する場合の方が、吸着剤を所望の温度にまで早く降温させることができる。仮に、本方法における冷媒M1として55%エタノール水溶液を採用する場合(第3の場合)を想定し、冷却用の媒体としてアルゴンガスを用いて吸着剤を降温する場合(第4の場合)を想定すると、55%エタノール水溶液およびアルゴンガスの各比熱は上記の通りであるので、単位時間あたりの吸着剤から熱受容量について、第3の場合では第4の場合の7倍程度を実現することが可能である。したがって、第3の場合(本発明に係る場合)は、第4の場合の7分の1程度の短時間で冷却工程を終了させることが可能である。冷却工程時間の短縮化は、TSAサイクル時間の短縮化に資する。
以上のように、本発明に係るアルゴン精製方法は、TSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適し、且つ、TSAサイクル時間の短縮化を図るのに適するのである。
本方法のTSA系5での吸着工程における吸着剤の吸着用温度は、上述のように−50℃以上である。このような構成は、本方法を簡便に実施する観点から好ましい。低くとも−50℃の吸着用温度を実現する程度に冷媒M1を冷却することは、比較的入手が容易な冷却機等によって実現可能だからである。
本方法のTSA系5での加熱脱着工程において加熱される吸着剤の温度は、上述のように、高くとも50℃である。加熱脱着工程において高くとも50℃の加熱温度を実現する程度に熱媒M2を加熱することは、比較的入手が容易な電気ヒータ等によって実現可能である。
本方法のTSA系5での吸着工程にある吸着塔51A,51Bの吸着管51cの内部圧力は、上述のように0.01MPaGから1MPaGの範囲であり、且つ、加熱脱着工程にある吸着塔51A,51Bの吸着管51cの内部圧力は、上述のように、吸着工程における吸着管51cの内部圧力より低い限りにおいて、大気圧から0.05MPaGの範囲である。このような構成は、吸着工程にて吸着剤への不純物窒素の吸着を促進し、加熱脱着工程にて吸着剤から不純物窒素の脱着を促進するうえで、好適である。
本方法では、TSA系5にて、冷媒M1と熱媒M2とが混ざり合わないようにこれら冷媒M1および熱媒M2をTSA装置50内にて巡回させることができる。すなわち、冷媒M1について、熱媒M2の混入によって不当に温度が上昇してしまうのを回避することができ、また、熱媒M2について、冷媒M1の混入によって不当に温度が低下してしまうのを回避することができる。このような構成は、冷媒M1および熱媒M2を効率よく使用するのに好適である。
本方法では、PSA系3にて、上述のように、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガス(ガスG5)をバッファタンク10に導入し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供する。このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。
本方法では、PSA系3にて、上述のように、洗浄工程(第1洗浄工程,第2洗浄工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(パージガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いパージガス(ガスG3”)をバッファタンク10に導入し、当該パージガスをPSA法によるアルゴン富化に供する。このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。
図1から図3に示すアルゴン精製装置Yを使用して、所定の原料ガスG0からアルゴンを濃縮分離した。本実施例における原料ガスG0は、シリコン単結晶引き上げ炉から排出された使用済み雰囲気ガスであり、主成分としてアルゴンを含む。当該原料ガスG0の仕様を、図22の表に掲げる。
本実施例では、貯留系1において、バッファタンク10に原料ガスG0を取り込みつつ、バッファタンク10からガスG1を後段(前処理系2,PSA系3)に向けて供給し続けた。ガスG1については、昇圧ブロア12および流量制御部14により、圧力を0.1MPaとし且つ流量を20Nm3/hに制御した。
本実施例では、前処理系2において、以下の条件でガスG1に対して前処理を行った。前処理槽20A内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Aに導入される前のガスG1については、前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素が除去されるように一酸化炭素に対して所定の過剰量の酸素を添加した。前処理槽20Aでの反応温度は230℃に制御した。前処理槽20B内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Bに導入される前のガスG1については、前処理槽20Bにて一部の水素が除去されるように、所定量の酸素を添加した。前処理槽20Bでの反応温度は250℃に制御した。前処理槽20C内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Cに導入される前のガスG1については、前処理槽20Cを経た後に水素および酸素が実質的に除去されるように所定量の酸素を添加した。前処理槽20Cでの反応温度は230℃に制御した。前処理槽20Cの後のクーラ22Cでは、ガスG1を30℃に冷却した。
本実施例では、PSA系3ないしPSA装置30において、昇圧機32によってガスG1を0.8Mpaまで昇圧しつつ、図7から図9に示すように吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程からなる1サイクル(ステップ1〜15)を吸着塔31A,31B,31Cにおいて繰り返した。本実施例において使用したPSA装置30の吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは円筒形状(内径100mm,内寸高さ1800mm)を有する。各吸着塔内には、吸着剤としてCaA型ゼオライトを充填した。また、本実施例では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、吸着工程は330秒間、第1減圧工程は120秒間、第2減圧工程は30秒間、第1脱着工程は60秒間、第2脱着工程は120秒間、第1洗浄工程は70秒間、第2洗浄工程は50秒間、第1昇圧工程は30秒間、および第2昇圧工程は180秒間行った。吸着工程における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最高圧力は800kPaGとし、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力は20kPaGとした。また、第1減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は400kPaGとし、第2減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は200kPaGとした。このような条件で行った本実施例において取得した準精製ガスG2について、その仕様を図22の表に掲げる。
本実施例では、TSA系5ないしTSA装置50において、図12から図21に示すように吸着工程、冷媒抜出し工程、加熱脱着工程、熱媒抜出し工程、冷却工程、および蓄圧工程からなる1サイクル(ステップ1〜10)を吸着塔51A,51Bのそれぞれにおいて繰り返した。本実施例において使用したTSA装置50の吸着塔51A,51Bのそれぞれは円筒形状(内径200mm,内寸高さ1500mm)を有する。吸着塔51A,51Bのそれぞれは、円筒形状(内径200mm)の7本の吸着管51cを内部に有する。吸着管51c内には、吸着剤としてCaX型ゼオライトを充填した。冷媒M1および熱媒M2としては、55%のエタノール水溶液を使用した。PSA装置50に導入される準精製ガスG2については、熱交換器52Aにて−20℃まで冷却し、クーラ52Bにて−35℃まで冷却した。ブラインクーラ52Eでは、冷媒M1を−40℃まで冷却した。熱媒タンク52Fでは、熱媒M2を50℃まで加熱しつつ保持した。本実施例では、吸着塔51A,51Bのそれぞれにおいて、吸着工程は3時間、冷媒抜出し工程は0.2時間、加熱脱着工程は1時間、熱媒抜出し工程は0.2時間、冷却工程は1.4時間、および蓄圧工程は0.2時間行った(1サイクルの時間は6時間)。また、吸着工程における吸着塔51A,51Bの内部の最終到達吸着圧力(最高圧力)は700kPaGとし、加熱脱着工程における吸着塔51A,51Bの内部の最終到達脱着圧力(最低圧力)は20kPaGとした。本実施例では、吸着管51c内の吸着剤の温度を1サイクルにわたって測定した。その結果を図23のグラフに示す。図23のグラフでは、横軸はTSAサイクル時間(h)を表し、縦軸は吸着剤の温度(℃)を表す。図23のグラフに表れているように、吸着管51c内の吸着剤の温度は、吸着工程の間は−35℃に維持され、加熱脱着工程では急激に上昇して40℃に至り、冷却工程では相当程度急速に下降して−35℃に至った。
以上のような条件で行った本実施例において取得した精製ガスG7について、その仕様を図22の表に掲げる。