シリコン結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、クロム鋼脱炭炉などから排出される、アルゴンを主成分として含む使用済み雰囲気ガス、の排出流量や不純物組成は、変動を伴うことが多く、急激に変動する場合もある。そのため、炉から排出される当該排出ガスを連続的に精製処理するためには、当該排出ガスの流量変動や組成変動に対応可能な処理システムを構築する必要がある。しかしながら、PSA法を実行するためのPSA装置においては、当該装置に供給される原料ガスの有意な流量変動(即ち負荷変動)に対応するのは、困難である。また、PSA装置は、原料ガスの組成変動に対応するのも不得手である。
また、各種炉から排出される、アルゴンを主成分として含む使用済み雰囲気ガス、のアルゴン濃度は、比較的高い(アルゴン濃度は例えば95vol%以上である)。従来の技術においては、このような高濃度アルゴンについて、PSA法によって更に高濃度化しつつ高い回収率を達成することは、困難である。
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、PSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適したアルゴン精製方法およびアルゴン精製装置を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によるとアルゴン精製方法が提供される。本方法においては、アルゴンを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された吸着塔に向けて、混合ガスを供給する。そして、吸着工程および脱着工程を含むサイクルを、吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着塔内が相対的に高圧である状態において、当該吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスを当該吸着塔から導出する。脱着工程では、吸着塔内を降圧して吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。また、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第1ガスを導出する第1脱着工程と、吸着塔から第2ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第1ガスを貯留槽に導入する。本方法においては、単一の吸着塔を使用してもよいし、複数の吸着塔を併用してもよい。
本方法では、吸着塔において、上述の吸着工程および脱着工程を含む圧力変動吸着法(PSA法)を実行し、これによって混合ガス中のアルゴンの富化を図る。混合ガスについては、貯留槽に一旦取り込んだうえで、当該貯留槽から、PSA法を実行するための吸着塔に向けて供給する。貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスがその流量や組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や組成変動は、当該混合ガスが貯留槽に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該貯留槽から導出される混合ガスにおいては抑制される。そのため、本方法によると、アルゴンの富化にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、富化されたアルゴンについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、上述の脱着工程中に吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供するからである。脱着工程にある吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第1ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第2ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明の第1の側面に係るアルゴン精製方法は、PSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適する。
本発明の第2の側面によるとアルゴン精製方法が提供される。本方法においては、アルゴンを含む混合ガスを貯留槽に取り込み、また、貯留槽から、吸着剤が充填された複数の吸着塔に向けて、混合ガスを供給する。そして、吸着工程、減圧工程、脱着工程、洗浄工程、および昇圧工程を含むサイクルを、吸着塔において繰り返し行う。吸着工程では、吸着塔内が相対的に高圧である状態にて、当該吸着塔に混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスを当該吸着塔から導出する。減圧工程では、吸着塔内を降圧して当該吸着塔からガスを導出する。脱着工程では、吸着塔内を降圧して吸着剤から不純物を脱着させ、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。洗浄工程では、吸着塔に洗浄ガスを導入し、且つ、当該吸着塔からガスを導出する。洗浄工程の洗浄ガスは、減圧工程にある吸着塔から導出されたガスである。洗浄工程は、当該洗浄工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第1ガスを導出する第1洗浄工程と、当該吸着塔から第2ガスを導出する、第1洗浄工程の後の第2洗浄工程とを含み、第2ガスを貯留槽に導入する。昇圧工程では、吸着塔内の圧力を上昇させる。
本方法では、各吸着塔において、上述の吸着工程、減圧工程、脱着工程、洗浄工程、および昇圧工程を含むPSA法を実行し、これによって混合ガス中のアルゴンの富化を図る。混合ガスについては、貯留槽に一旦取り込んだうえで、当該貯留槽から、PSA法を実行するための各吸着塔に向けて供給する。貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスがその流量や組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や組成変動は、当該混合ガスが貯留槽に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該貯留槽から導出される混合ガスにおいては抑制される。そのため、本方法によると、アルゴンの富化にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスの流量変動や組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、富化されたアルゴンについて、高い収率を達成しやすい。本方法においては、上述の洗浄工程中に吸着塔から導出され続けるガス(パージガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いパージガスを貯留槽に導入し、当該パージガスをPSA法によるアルゴン富化に供するからである。洗浄工程にある吸着塔から導出されるパージガスの不純物含有率は、洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にあるところ、本方法においては、パージガスの不純物含有率が充分に低下するまで、パージガス(第1ガス)を系外に排出する第1洗浄工程を行い、パージガスの不純物含有率が充分に低下した以降に、パージガス(第2ガス)を貯留槽に導入する第2洗浄工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明の第2の側面に係るアルゴン精製方法は、PSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適する。
本発明の第2の側面において、好ましくは、脱着工程は、当該脱着工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第3ガスを導出する第1脱着工程と、当該吸着塔から第4ガスを導出する、第1脱着工程の後の第2脱着工程とを含み、第3ガスを貯留槽に導入する。このような構成は、高純度アルゴンを高収率で得るのに資する。本方法においては、上述の脱着工程中に吸着塔から導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガスを貯留槽に戻し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供するからである。脱着工程にある吸着塔から導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にあるところ、本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(第3ガス)を貯留槽に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(第4ガス)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
好ましくは、減圧工程は、当該減圧工程の開始から途中までにおいて吸着塔から第5ガスを導出する第1減圧工程と、当該吸着塔から第6ガスを導出する、第1減圧工程の後の第2減圧工程とを含み、第5ガスを洗浄ガスとして洗浄工程にある吸着塔に導入し、第6ガスを昇圧工程にある吸着塔に導入する。減圧工程にある吸着塔から導出されるガスのアルゴン濃度は比較的高いところ、このような構成によると、減圧工程にある吸着塔から導出されるガスを利用して他の吸着塔にて洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うことができる。すなわち、このような構成によると、複数の吸着塔のそれぞれにて行われる工程を有機的に利用して、アルゴン富化のためのPSA法を効率よく行うことが可能なのである。
好ましくは、脱着工程にある吸着塔の内部の最低圧力を0%とし且つ吸着工程にある吸着塔の内部の最高圧力を100%とする場合、第1減圧工程の終了時における吸着塔の内部の第1中間圧力は35〜80%の範囲にあり、且つ、第2減圧工程の終了時における吸着塔の内部の第2中間圧力は第1中間圧力より小さい限りにおいて15〜50%の範囲にある。このような構成は、洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うのに資する。
好ましくは、昇圧工程は、第2減圧工程にある吸着塔から導出された第6ガスを昇圧対象の吸着塔に導入する第1昇圧工程と、当該吸着塔に精製ガスを導入する、第1昇圧工程の後の第2昇圧工程とを含む。このような構成は、昇圧工程およびその後の吸着工程を各吸着塔にて効率よく行ううえで好適である。
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、脱着工程にある吸着塔の内部の最低圧力は大気圧以上である。このような構成においては、吸着塔にて脱着工程を行うにあたり、真空ポンプなどの積極的減圧手段を必ずしも使用する必要はない。また、真空ポンプなどの積極的減圧手段を必ずしも使用する必要のないこのような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置が、貯留槽からの混合ガスの流量変動(即ち、装置に対する負荷変動)に対応するうえで、好適である。
好ましくは、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量は、吸着塔にて吸着工程が開始する時に更新する。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷を軽減するうえで好適である。
第1の好ましい実施の形態では、貯留槽における貯留量について上側設定量および当該上側設定量より小さい下側設定量を設定する。そのうえで、混合ガス供給流量の更新時において、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量以上である場合、混合ガス供給流量を増大し、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量を下回り且つ下側設定量を上回る場合、混合ガス供給流量を変更せず、貯留槽内の混合ガスの貯留量が下側設定量以下である場合、混合ガス供給流量を低減する。このような構成は、貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスの流量変動に貯留槽が対応するとともに、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。
第2の好ましい実施の形態では、貯留槽における貯留量について上側設定量および当該上側設定量より小さい下側設定量を設定し、且つ、混合ガス供給流量の更新時より前に貯留槽に取り込まれる混合ガスの流量(例えば所定期間内の平均流量)を得て基準流量とする。そのうえで、混合ガス供給流量の更新時において、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量以上である場合、基準流量より大きな流量を混合ガス供給流量とし、貯留槽内の混合ガスの貯留量が上側設定量を下回り且つ下側設定量を上回る場合、基準流量を混合ガス供給流量とし、貯留槽内の混合ガスの貯留量が下側設定量以下である場合、基準流量より小さな流量を混合ガス供給流量とする。このような構成は、貯留槽に取り込まれることとなる原料ガスたる混合ガスの流量変動に貯留槽が対応するとともに、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。
好ましくは、混合ガスを吸着塔に供給する前に、貯留槽からの混合ガスに対して、当該混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を施す。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。また、このような構成は、混合ガスに含まれる不純物の除去または変成を、安定して行い、従って効率的に行ううえでも好適である。流量変動が緩和された貯留槽からの混合ガスに対して前処理を施す本構成においては、前処理に対する負荷が安定しやすいからである。
好ましくは、前処理は複数段に分けて行う。混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するうえで当該混合ガスに施すべき前処理に発熱反応が含まれる場合、前処理を複数段に分けて行うという構成は、当該前処理において、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
混合ガスがアルゴンに加えて少なくとも一酸化炭素および水素を含む場合には、好ましくは、前処理は、一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせる第1処理と、水素を酸素と反応させて水を生じさせる、第1処理の後に行う第2処理とを含む。このような構成は、混合ガスがアルゴンに加えて一酸化炭素および水素を含む場合に当該一酸化炭素および水素の除去または低濃度化を図るうえで好適である。
また、前処理は、水素を酸素と反応させて水を生じさせる、第2処理の後に行う第3処理を更に含んでもよい。このような構成は、水素を酸素と反応させて水を生じさせる処理において(当該処理にて、水素と酸素は発熱反応により水を生じる)、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好適である。また、このような構成は、水素の除去または更なる低濃度化を図るうえでも好適である。加えて、このような構成においては、第3処理により、吸着塔に供給される混合ガスの水素濃度を最終的に調整することが可能である。そのため、このような構成は、精製ガス(高純度アルゴン)を所望濃度の水素を含有するものとして調製するうえでも好適である。
本発明の第3の側面によるとアルゴン精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し当該第1および第2ガス通過口の間において吸着剤が充填された吸着塔と、アルゴンを含む混合ガスを吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、貯留槽から吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽および吸着塔の間を連結する第1ラインと、吸着塔の第1ガス通過口側に接続され且つガス排出端を有する第2ラインと、第2ラインおよび貯留槽を連結する第3ライン(リサイクルライン)とを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法を適切に実行することが可能である。
本発明の第4の側面によるとアルゴン精製装置が提供される。本装置は、第1ガス通過口および第2ガス通過口を有し当該第1および第2ガス通過口の間において吸着剤が充填された複数の吸着塔と、アルゴンを含む混合ガスを吸着塔に供給するより前に貯留するための貯留槽と、貯留槽から各吸着塔の第1ガス通過口側に混合ガスを供給可能に貯留槽および各吸着塔の間を連結する第1ラインと、ガス排出端を有する主幹路、および、吸着塔ごとに設けられて当該吸着塔の第1ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第2ラインと、主幹路、および、吸着塔ごとに設けられて当該吸着塔の第2ガス通過口側に接続された複数の分枝路、を有する第3ラインと、第2ラインおよび貯留槽を連結する第4ラインとを備える。このような構成を具備する本装置によると、本発明の第1の側面に係る上述のアルゴン精製方法および第2の側面に係る上述のアルゴン精製方法を、適切に実行することが可能である。
本発明の第3および第4の側面に係るアルゴン精製装置は、好ましくは、貯留槽における貯留量を検知するための手段と、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量を制御するための手段とを更に備える。このような構成は、上述の第1の好ましい実施の形態に係る混合ガス供給流量の更新を実行するうえで好適である。
本発明の第3および第4の側面に係るアルゴン精製装置は、好ましくは、貯留槽における貯留量を検知するための手段と、貯留槽から吸着塔に向けて供給する混合ガスの流量を制御するための手段と、貯留槽に供給される混合ガスの流量を検知するための手段とを更に備える。このような構成は、上述の第2の好ましい実施の形態に係る混合ガス供給流量の更新を実行するうえで好適である。
好ましくは、混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理系が第1ラインに設けられている。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。また、このような構成は、混合ガスに含まれる不純物の除去または変成を、安定して行い、従って効率的に行ううえでも好適である。流量変動が緩和された貯留槽からの混合ガスに対して前処理を施す本構成においては、前処理系に対する負荷が安定しやすいからである。
好ましくは、前処理系は、前処理を複数段に分けて行うための複数の処理槽を含む。混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するうえで当該混合ガスに施すべき前処理に発熱反応が含まれる場合、前処理を複数段に分けて行うための複数の処理槽を前処理系が含むという構成は、当該前処理において、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
混合ガスがアルゴンに加えて少なくとも一酸化炭素および水素を含む場合には、好ましくは、前処理系は、一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせる第1処理を実行するための第1処理槽と、第1処理の後に水素を酸素と反応させて水を生じさせる第2処理を実行するための第2処理槽とを含む。このような構成は、混合ガスがアルゴンに加えて一酸化炭素および水素を含む場合に当該一酸化炭素および水素の除去または低濃度化を図るうえで好適である。
また、前処理系は、第2処理の後に水素を酸素と反応させて水を生じさせる第3処理を実行するための第3処理槽を更に含んでもよい。このような構成は、水素を酸素と反応させて水を生じさせる処理において(当該処理にて、水素と酸素は発熱反応により水を生じる)、過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好適である。また、このような構成は、水素の除去または更なる低濃度化を図るうえでも好適である。加えて、このような構成は、精製ガス(高純度アルゴン)を所望濃度の水素を含有するものとして調製するうえでも好適である。
図1は、本発明に係るアルゴン精製装置Yの全体概略構成を表す。アルゴン精製装置Yは、貯留系1と、前処理系2と、PSA系3と、リサイクルライン4とを備え、アルゴンを含む原料ガスG0を回収しつつ連続的にアルゴンを精製することが可能なように構成されている。
原料ガスG0は、シリコン結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、クロム鋼脱炭炉などにおける炉内雰囲気ガスとして使用されて不純物が混入しているアルゴンであり、少なくとも一つの所定の炉(図示略)から連続的に又は断続的に排出されたものである。この排ガス(原料ガスG0)の排出流量や、圧力、組成は、炉で実施中の工程や炉の操業条件に応じて、変動することが多く、急激に変動する場合もある。原料ガスG0は、例えば、主成分としてアルゴンを含み、且つ、不純物として水素、窒素、一酸化炭素、および酸素を含む。主たる不純物は例えば水素である。炉からの原料ガスG0の排出流量(即ち、アルゴン精製装置Yへの原料ガスG0の供給流量)は、例えば100〜500Nm3/hである。
アルゴン精製装置Yの一部をなす貯留系1は、図1および図2に示すように、バッファタンク10、除塵器11、昇圧ブロア12、流量計13、貯留量検知計14、濃度分析計15、流量制御部16、および、原料ガス導入端E1を有するライン17を備えてなる。除塵器11、流量計13、バッファタンク10、昇圧ブロア12、および流量制御部16は、ライン17内において、直列に配されている。
バッファタンク10は、アルゴンを含む混合ガス(原料ガスG0を含む)を一旦貯留するためのものである。また、本実施形態では、バッファタンク10は、容積が可変に構成されている。容積が可変のバッファタンク10は、例えば、拡縮可能な布製容器によってガス貯留空間が形成されたものである。バッファタンク10の最大容積は例えば100〜200m3である。バッファタンク10の可変容積については、上側設定値VHおよび下側設定値VLが設定されている。上側設定値VHは、例えば80〜160m3である。下側設定値VLは、例えば40〜80m3である。
除塵器11は、炉からの排ガスである原料ガスG0に含まれることの多い粉塵や金属粉等の固形成分を、原料ガスG0から除去するためのものである。このような除塵器11は、バッファタンク10の上流側に配され、例えば所定の除塵フィルタを有してなる。
昇圧ブロア12は、バッファタンク10の下流側に配されてバッファタンク10に原料ガスG0を取り込むように稼働するためのものである。昇圧ブロア12が稼働することにより、バッファタンク10内のガス貯留空間に負圧が作用して、原料ガスG0がバッファタンク10へ適当に流入することとなる。また、昇圧ブロア12が稼働することにより、バッファタンク10からガスG1が導出され、当該ガスG1は前処理系2に向けて送出される。
流量計13は、炉からの排ガスである原料ガスG0がバッファタンク10へと流入する流量を計測するためのものである。貯留量検知計14は、バッファタンク10ないしそのガス貯留空間に貯留されているガスの貯留量を計測するためのものである。
濃度分析計15は、バッファタンク10および昇圧ブロア12を経たガスG1に含まれる各不純物の濃度を測定するためのものである。濃度分析計15において、ガスG1に含まれる例えば水素、窒素、一酸化炭素、および酸素のそれぞれの濃度が測定される。
流量制御部16は、前処理系2などの後段へと供給するガスG1の流量を制御するためのものである。このような流量制御部16は、例えば、開度を制御可能なバルブよりなる。
アルゴン精製装置Yの一部をなす前処理系2は、後段のPSA系3において実行される圧力変動吸着法(PSA法)によっては除去しにくい不純物をガスG1から除去するためのものである。PSA法によってアルゴンを精製する際に当該PSA法によっては除去しにくい不純物としては、酸素および水素が挙げられる。また、酸素は、精製後のアルゴンを炉内雰囲気ガスとして再利用する際に有害であることが多いので、除去の必要性が高い。前処理系2は、図1および図3に示すように、前処理槽20A,20B,20C、予熱器21、冷却器22A,22B,22C、水素供給量制御部23、酸素供給量制御部24A,24B,24C、温度計25A,25B,25C、流量制御部26A,26B、水素濃度分析計27、ライン28A,28B,28C,28D、およびバイパスライン28b,28cを備えてなる。前処理槽20A,20B,20Cは、ガス経路上、直列に連結されている。
前処理槽20Aは、ガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去するための転化反応槽であり(一酸化炭素は、後段の前処理槽20B,20Cに充填される触媒にとっての触媒毒となる場合がある)、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Aには、下記の反応式(1)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒や、パラジウム系触媒、プラチナ―パラジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Bは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aの出口端20bから導出されたガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去するための転化反応槽であり、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Bには、下記の反応式(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒やロジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
前処理槽20Cは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bの出口端20bから導出されたガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去するための転化反応槽であり、入口端20aおよび出口端20bを有する。前処理槽20Cには、上記の反応式(2)で表される転化反応を促進する触媒が充填されている。当該触媒としては、例えば、プラチナ系触媒やロジウム系触媒などの貴金属系触媒を採用することができる。
予熱器21は、前処理槽20Aに至る前にガスG1を昇温するためのものであり、例えば電気ヒータよりなる。水素供給量制御部23は、図外の水素貯留部と連結され、且つ、前処理槽20Aの入口端20aに接続するライン28Aと連結されている。このような水素供給量制御部23は、水素貯留部からライン28Aへと必要に応じて供給される水素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。酸素供給量制御部24Aは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン28Aと連結されている。このような酸素供給量制御部24Aは、酸素貯留部からライン28Aへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計25Aは、前処理槽20Aに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Aは、前処理槽20Aにおける処理を経て前処理槽20Aの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン28Bに設けられている。このような冷却器22Aは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。この冷却器22Aとライン上並列するようにバイパスライン28bが設けられており、当該バイパスライン28bには、流量制御部26Aが設置されている。流量制御部26Aは、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。酸素供給量制御部24Bは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン28Bと連結されている。このような酸素供給量制御部24Bは、酸素貯留部からライン28Bへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。温度計25Bは、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Bは、前処理槽20Bにおける処理を経て前処理槽20Bの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン28Cに設けられている。このような冷却器22Bは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。この冷却器22Bとライン上並列するようにバイパスライン28cが設けられており、当該バイパスライン28cには、流量制御部26Bが設置されている。流量制御部26Bは、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。酸素供給量制御部24Cは、図外の酸素貯留部と連結され、且つ、ライン28Cと連結されている。このような酸素供給量制御部24Cは、酸素貯留部からライン28Cへと必要に応じて供給される酸素の流量を制御するためのものであり、例えば、開度や開状態時間を制御可能なバルブよりなる。水素濃度分析計27は、ライン28Cを流れるガスG1に酸素が添加される前にガスG1の水素濃度を測定するためのものである。温度計25Cは、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度を測定するためのものである。
冷却器22Cは、前処理槽20Cにおける処理を経て前処理槽20Cの出口端20bから導出されたガスG1を冷却するためのものであり、ライン28Dに設けられている。このような冷却器22Cは、例えば、冷却水を冷却媒体とする熱交換器よりなる。
本実施形態における前処理系2は、上述のように三段の転化反応槽を具備するものであるが、PSA系3にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物の種類および量に応じて、前処理系2を、所定の一段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の二段の転化反応槽を具備するものとして構成してもよいし、所定の四段以上の転化反応槽を具備するものとして構成してもよい。或は、PSA系3にガスG1を供する前に当該ガスG1から除去すべき不純物がない場合は、前処理系2を設けなくてもよい。
アルゴン精製装置Yの一部をなすPSA系3は、図1および図4に示すように、PSA装置30を備えてなる。PSA装置30は、吸着塔31A,31B,31Cと、昇圧機32と、ライン33〜36とを備え、前処理系2からのガスG1(アルゴンを含む)から圧力変動吸着法(PSA法)を利用してアルゴンを濃縮分離することが可能なように構成されている。
吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは、両端にガス通過口31a,31bを有し、ガス通過口31a,31bの間において、ガスG1に含まれる不純物を選択的に吸着するための吸着剤が充填されている。例えば、不純物たる二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、カーボンモレキュラーシーブ(CMS)を用いることができる。例えば、不純物たる窒素や一酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、ゼオライトモレキュラーシーブ(ZMS)を用いることができる。例えば、不純物たる水分を吸着するための吸着剤としては、アルミナを用いることができる。一種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内に充填してもよいし、複数種類の吸着剤を吸着塔31A,31B,31C内にて積層させて充填してもよい。吸着塔31A,31B,31C内に充填する吸着剤の種類や数については、吸着塔31A,31B,31Cにて除去すべき不純物の種類および量に応じて決定する。
昇圧機32は、ガス吸入口32aおよびガス送出口32bを有する。ガス吸入口32aは、前処理系2におけるライン28Dと連結されている。このような昇圧機32は、ガス吸入口32aから吸引したガスG1をガス送出口32bから吸着塔31A,31B,31Cに向けて供給ないし送り出すためのものであり、例えば圧縮機である。
ライン33は、昇圧機32のガス送出口32bに接続された主幹路33’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路33A,33B,33Cを有する。分枝路33A,33B,33Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁33a,33b,33cが付設されている。
ライン34は、精製ガス導出端E2を有する主幹路34’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路34A,34B,34Cを有する。分枝路34A,34B,34Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁34a,34b,34cが付設されている。
ライン35は、主幹路35’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31b側にそれぞれが接続された分枝路35A,35B,35Cを有する。分枝路35A,35B,35Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁35a,35b,35cが付設されている。
ライン36は、ガス排出端E3を有する主幹路36’、および、吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側にそれぞれが接続された分枝路36A,36B,36Cを有する。分枝路36A,36B,36Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁36a,36b,36cが付設されている。
本実施形態におけるPSA系3ないしPSA装置30は、上述のように三塔の吸着塔31A,31B,31Cを具備するものであるが、PSA系3を、所定の一塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の二塔の吸着塔を具備するものとして構成してもよいし、所定の四塔以上の吸着塔を具備するものとして構成してもよい。
アルゴン精製装置Yの一部をなすリサイクルライン4は、図1に示すように、PSA系3ないしPSA装置30における上述のライン36と、貯留系1における上述のバッファタンク10とを連結する。リサイクルライン4には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁4aが付設されている。このようなリサイクルライン4は、PSA装置30における吸着塔31A,31B,31Cの各ガス通過口31a側から排出される所定のガスを、バッファタンク10に戻すためのものである。
以上のような構成を有するアルゴン精製装置Yを使用して、本発明に係るアルゴン精製方法を実行することができる。
貯留系1では、昇圧ブロア12が稼働して、ライン17の原料ガス導入端E1から原料ガスG0が受け入れられる。受け入れられた原料ガスG0は、除塵器11を通過することによって所定の固形成分が除去されて、流量計13にて流量が計測された後、バッファタンク10に取り込まれる。バッファタンク10には、PSA系3からの所定のガスも取り込まれる。バッファタンク10におけるガス貯留空間の容積は上述のように可変であるところ、バッファタンク10ないしそのガス貯留空間に貯留されているガスの貯留量が貯留量検知計14によって計測される。そして、バッファタンク10からはガスG1が導出される。ガスG1については、濃度分析計15によって各不純物の濃度が測定される。濃度分析計15によって測定される水素濃度をX10とし、酸素濃度をX20とし、一酸化炭素濃度をX30とする。また、ガスG1については、流量制御部16によって流量が調節される。ガスG1の流量は、PSA系3における吸着塔31A,31B,31Cのいずれかが後述の吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)に更新される。具体的には、ガスG1の流量は、例えば次のようにして更新される。
まず、流量計13によって計測される原料ガスG0の流量について、吸着塔31A,31B,31Cの一つが後述の吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)までの所定時間(例えば10秒間)の平均流量が、基準流量として求められる。次に、求められた平均流量(基準流量)が、装置全体について想定ないし設定される負荷流量範囲すなわち流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜400Nm3/h)に対する割合(α%)に換算される。この割合(α%)を利用して、ガスG1について次に設定されるべき流量が算出される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が上述の上側設定値VH以上である場合、α%にβ%が加算され、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜400Nm3/h)の(α+β)%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が上述の下側設定値VL以下である場合、α%からβ%が差し引かれ、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜400Nm3/h)の(α−β)%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。例えば、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が、上側設定値VHを下回り且つ下側設定値VLを上回る場合、流量制御部16の流量制御範囲(例えば0〜400Nm3/h)のα%の流量が算出され、この算出流量がガスG1の次の流量として採用される。ガスG1についてこのようにして更新された流量は、次の吸着塔切替時まで流量制御部16によって維持されることとなる。
流量更新におけるパラメータたるβの値は、原料ガスG0の流量について予め把握可能な限りにおける変動量や変動時間に応じて設定することができる。βの値を適切に選択することにより、バッファタンク10内のガス貯留量の変化を抑制することができ、バッファタンク10から供給されるガスG1の流量が安定化される。これにより、後段の前処理系2およびPSA系3に対する、ガスG1の流量変化等に伴う負荷変動を軽減して、負荷の安定化を図ることができる。
流量制御部16にて流量制御を受けるガスG1は、前処理系2に供される。前処理系2では、ガスG1は、順次、前処理槽20Aにて一酸化炭素が除去され(第1処理)、前処理槽20Bにて水素濃度が低下され或は水素が除去され(第2処理)、前処理槽20Cにて水素濃度が調整され或は水素が除去される(第3処理)。具体的には、前処理槽20Aでは、上述のように、反応式(1)で表される転化反応によってガスG1中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成して実質的に除去する。前処理槽20Bでは、上述のように、反応式(2)で表される転化反応によってガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去する。前処理槽20Cでは、上述のように、反応式(2)で表される転化反応によってガスG1中の水素および酸素を水に変化させて低濃度化または実質的に除去する。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、ガスG1は、ライン28Aにおいて、温度計25Aによって測定される温度が例えば130〜150℃となるように予熱器21を通過する際に昇温される。これにより、前処理槽20Aにおける反応温度は例えば250℃以下とされる。上記反応式(1)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は130℃以上であるのが好ましい。前処理槽20Aにおいてメタンが生ずる反応を充分に抑制するうえでは、前処理槽20Aにおける反応温度は250℃以下であるのが好ましい。
前処理槽20AにガスG1が導入される前に、ガスG1には、水素供給量制御部23の稼働によって必要に応じて所定量の水素が添加され、酸素供給量制御部24Aの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。水素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された水素濃度X10に基づいて決定される。水素が添加されて前処理槽20Aに導入されるガスG1の水素濃度をX11とする。酸素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された酸素濃度X20および一酸化炭素濃度X30に基づいて決定される。酸素が添加されて前処理槽20Aに導入されるガスG1の酸素濃度をX21とする。上記反応式(1)で表される転化反応を促進して前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素を除去するためには、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Aに導入されるガスG1に含まれる一酸化炭素の1.0〜1.5倍当量であるのが好ましい。前処理槽20Aでは、上述のように、上記反応式(1)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の一酸化炭素が二酸化炭素に変成されて実質的に除去される。
前処理槽20Aの後、ガスG1が前処理槽20Bに導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、メインラインであるライン28Bに設けられた冷却器22Aを通過するガスとバイパスライン28bを通過するガスとの流量比を調整することにより、温度計25Bによって測定される温度が例えば50〜60℃となるように、前処理槽20Bに導入される前のガスG1の温度は調節される。流量比の調整は、流量制御部26Aが稼働することによって行われる。このような手法により、前処理槽20Bにおける反応温度は例えば100〜350℃とされる。上記反応式(2)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Bにおける反応温度は100〜350℃であるのが好ましい。また、前段の前処理槽20Aにおいて、水素と酸素の反応により副生成物として水が発生する場合が想定されるところ、水分は前処理槽20B内の触媒の活性阻害要因となり得るため、前処理槽20Bに導入されるガスG1の温度は、露点温度(例えば50℃)以上であるのが好ましい。
前処理槽20BにガスG1が導入される前に、ガスG1には、酸素供給量制御部24Bの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。酸素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された酸素濃度X20および一酸化炭素濃度X30、並びに、前処理槽20A前に添加された酸素量に基づいて決定される。酸素が添加されて前処理槽20Bに導入されるガスG1の酸素濃度をX22とする。上記反応式(2)で表される転化反応は発熱反応であるところ、前処理槽20Bに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Bにおける反応温度が350℃を超えない程度の量であるのが好ましい。前処理槽20Bでは、上述のように、上記反応式(2)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の水素および酸素が水に変えられて実質的に除去または低濃度化される。
前処理槽20Bの後、ガスG1が前処理槽20Cに導入される前に、ガスG1の温度は調節される。具体的には、メインラインであるライン28Cに設けられた冷却器22Bを通過するガスとバイパスライン28cを通過するガスとの流量比を調整することにより、温度計25Cによって測定される温度が例えば50〜60℃となるように、前処理槽20Cに導入される前のガスG1の温度は調節される。流量比の調整は、流量制御部26Bが稼働することによって行われる。このような手法により、前処理槽20Cにおける反応温度は例えば100〜350℃とされる。上記反応式(2)で表される転化反応を促進するうえでは、前処理槽20Cにおける反応温度は100〜350℃であるのが好ましい。また、ガスG1中の水分は前処理槽20C内の触媒の活性阻害要因となり得るため、前処理槽20Cに導入されるガスG1の温度は、露点温度(例えば50℃)以上であるのが好ましい。
前処理槽20CにガスG1が導入される前に、水素濃度分析計27によってガスG1の水素濃度が測定されたうえで、酸素供給量制御部24Cの稼働によって必要に応じて所定量の酸素が添加される。前処理槽20Cに導入されるガスG1の水素濃度をX13とする。酸素添加量は、上述の濃度分析計15によって測定された酸素濃度X20および一酸化炭素濃度X30、前処理槽20A前に添加された酸素量、前処理槽20B前に添加された酸素量、並びに、水素濃度分析計27によって測定された水素濃度X13に基づいて決定される。酸素が添加されて前処理槽20Cに導入されるガスG1の酸素濃度をX23とする。上記反応式(2)で表される転化反応によって前処理槽20Cにて水素を除去するためには、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる酸素は、前処理槽20Cに導入されるガスG1に含まれる水素の1/2当量であるのが好ましい。また、ガスG1中の水素を所定程度に低濃度化するためには、1/2X13>X23の範囲でX23を所定値に調節する。前処理槽20Cでは、上述のように、上記反応式(2)で表される転化反応が生じ、ガスG1中の水素および酸素が水に変えられて実質的に除去または低濃度化される。アルゴン精製装置Yによって精製されるアルゴンから水素を除去する場合において、前処理槽20Bにて充分に水素を除去できる場合には、前処理槽20Cおよびその直前に配される温度調節手段等については必ずしも設けなくてもよい。
前処理槽20Cを経た後、ガスG1は、冷却器22Cを通過することによって温度調節される。冷却器22Cを通過した後のガスG1の温度は例えば20〜40℃である。
前処理系2において所定の前処理を受けたガスG1は、PSA系3に供される。PSA系3およびリサイクルライン4では、PSA装置30の駆動時において、図5から図7に示す態様で自動弁33a〜33c,34a〜34c,35a〜35c,36a〜36d,4aを切り替えることにより、装置内において所望のガスの流れ状態を実現し、以下のステップ1〜15からなる1サイクルを繰り返すことができる(図5から図7では、各自動弁の開状態を○で表し且つ閉状態を×で表す)。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにて、吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程が行われる。図8は、ステップ1〜5におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図9は、ステップ6〜10におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。図10は、ステップ11〜15におけるPSA装置30でのガスの流れ状態を表す。
ステップ1では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(a)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図4および図8(a)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ1では、所定の高圧状態にある吸着塔31Aのガス通過口31a側にガスG1が導入されて、当該ガスG1中の不純物(二酸化炭素,水,窒素など)を吸着塔31A内の吸着剤に吸着させ、且つ、アルゴンが富化された精製ガスG2が吸着塔31Aのガス通過口31b側から導出される。精製ガスG2は、ライン34を介して精製ガス導出端E2から装置外へ取り出される。これとともに、ステップ1では、後述のステップ11〜15(吸着工程)を経た吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG3が導出される。このガスG3は、ライン35を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ1では、後述のステップ15(第2脱着工程)を経た吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3’(パージガス)が導出される。このガスG3’は、ライン36を介してガス排出端E3から装置外へ排出される。
ステップ2では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(b)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2洗浄工程が、吸着塔31Cにて第1減圧工程が行われる。
図4および図8(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、吸着塔31Aにおいて、ステップ1から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ2では、吸着塔31Cにおいて、ステップ1から引き続き第1減圧工程が行われる。これとともに、ステップ2では、ステップ1から引き続いて吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG3が洗浄ガスとして導入されつつ、吸着塔31Bのガス通過口31a側からガスG3”(パージガス)が導出される。このガスG3”は、ライン36およびリサイクルライン4を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。
ステップ3では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(c)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第1昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2減圧工程が行われる。
図4および図8(c)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ3では、吸着塔31Aにおいて、ステップ2から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Cにおいて、ステップ2から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31Cのガス通過口31b側からガスG4が導出される。このガスG4は、ライン35を介して吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ3では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31CからのガスG4が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。
ステップ4では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(d)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第1脱着工程が行われる。
図4および図8(d)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ4では、吸着塔31Aにおいて、ステップ3から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Bのガス通過口31b側に吸着塔31Aからの精製ガスG2が昇圧ガスとして導入されて、吸着塔31Bの内部が昇圧される。これとともに、ステップ4では、吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG5(オフガス)が導出される。このガスG5は、ライン36およびリサイクルライン4を介してバッファタンク10へと導入されて、バッファタンク10に貯留される。
ステップ5では、図5に示すように各自動弁の開閉状態が選択され且つ昇圧機32が作動することにより、図8(e)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔31Aにて吸着工程が、吸着塔31Bにて第2昇圧工程が、吸着塔31Cにて第2脱着工程が行われる。
図4および図8(e)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ5では、吸着塔31Aにおいて、ステップ4から引き続き吸着工程が行われ、精製ガスG2が導出される。精製ガスG2の一部は吸着塔31Bへと導かれる。これとともに、ステップ5では、吸着塔31Bにおいて、ステップ4から引き続いて内部が昇圧される。これとともに、ステップ5では、ステップ4から引き続いて吸着塔31Cの内部が降圧されて、吸着塔31C内の吸着剤から不純物が更に脱着され、吸着塔31Cのガス通過口31a側からガスG6(オフガス)が導出される。このガスG6は、ライン36を介してガス排出端E3から装置外へ排出される。
ステップ1〜5において、吸着工程にある吸着塔31Aの内部の最高圧力は、例えば700〜800kPa(ゲージ圧)である。ステップ1の第1洗浄工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば500〜600kPa(ゲージ圧)である(減圧工程にある吸着塔の内部圧力を基準に第1洗浄工程の終了タイミングを決定するのが好ましい)。ステップ1〜2にわたる第1減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は、例えば300〜400kPa(ゲージ圧)である。ステップ3の第2減圧工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は、例えば150〜200kPa(ゲージ圧)である。ステップ4の第1脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば70〜100kPa(ゲージ圧)である。ステップ5の第2脱着工程の終了時点における吸着塔31Cの内部の圧力は、例えば0〜30kPa(ゲージ圧)である。
ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図9に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図9に示すように第1洗浄工程(ステップ6)、第2洗浄工程(ステップ7)、第1昇圧工程(ステップ8)、および第2昇圧工程(ステップ9,10)が行われる。これとともに、ステップ6〜10では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図9に示すように第1減圧工程(ステップ6,7)、第2減圧工程(ステップ8)、第1脱着工程(ステップ9)、および第2脱着工程(ステップ10)が行われる。
ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Aにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Cにおいて、図10に示すように吸着工程が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Bにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Aにおいて、図10に示すように第1洗浄工程(ステップ11)、第2洗浄工程(ステップ12)、第1昇圧工程(ステップ13)、および第2昇圧工程(ステップ14,15)が行われる。これとともに、ステップ11〜15では、ステップ1〜5で吸着塔31Cにおいて行われたのと同様に、吸着塔31Bにおいて、図10に示すように第1減圧工程(ステップ11,12)、第2減圧工程(ステップ13)、第1脱着工程(ステップ14)、および第2脱着工程(ステップ15)が行われる。
以上のようにして、PSA系3ないしPSA装置30からは、アルゴンが富化された精製ガスG2が取り出され続ける。
アルゴン精製装置Yを使用して行う以上のアルゴン精製方法では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、上述のような吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程を含むPSA法を実行し、これによって混合ガスたるガスG1中のアルゴンの富化を図る。ガスG1は、上述の原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5をバッファタンク10に一旦取り込んだうえで、当該バッファタンク10から、PSA法を実行するためのPSA系3ないしPSA装置30(吸着塔31A,31B,31Cを含む)に向けて供給されたものである。バッファタンク10に取り込まれる原料ガスG0がその流量や、圧力、組成に変動を伴う場合であっても、流量変動や、圧力変動、組成変動は、当該原料ガスG0がバッファタンク10に一旦取り込まれて貯留および混合されることにより、当該バッファタンク10から導出されるガスG1においては抑制される。そのため、本方法によると、アルゴンの富化にあたりPSA法を利用するものであっても、原料ガスG0の流量変動や、圧力変動、組成変動に対応しやすい。
加えて、本方法によると、精製ガスG2(富化されたアルゴン)について、高い収率を達成しやすい。その理由は次のとおりである。
第一に、本方法においては、上述の脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(オフガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いオフガス(ガスG5)をバッファタンク10に導入し、当該オフガスをPSA法による再度のアルゴン富化に供するからである。吸着工程にて吸着剤に吸着された不純物(例えば二酸化炭素や窒素など)は、脱着工程において吸着剤から脱着するところ、当該脱着工程においては、塔内圧力が低下するにつれて、単位圧力当りの不純物脱着量は大きくなる。そのため、脱着工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるオフガスの不純物含有率は、脱着工程の開始以降、漸次的に上昇する傾向にある。本方法においては、当該オフガスの不純物含有率が充分に低い期間は、オフガス(ガスG5)をバッファタンク10に導入する第1脱着工程を行い、オフガスの不純物含有率が一定以上である期間は、オフガス(ガスG6)を系外に排出する第2脱着工程を行うことが可能である。
第二に、本方法においては、上述の洗浄工程(第1洗浄工程,第2洗浄工程)にある吸着塔31A,31B,31Cから導出され続けるガス(パージガス)のうち、アルゴン濃度が相対的に高いパージガス(ガスG3”)をバッファタンク10に導入し、当該パージガスをPSA法によるアルゴン富化に供するからである。洗浄工程が進むほど吸着剤が清浄化されるので、洗浄工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるパージガスの不純物含有率は、洗浄工程の開始以降、漸次的に低下する傾向にある。本方法においては、パージガスの不純物含有率が充分に低下するまで、パージガス(ガスG3’)を系外に排出する第1洗浄工程を行い、パージガスの不純物含有率が充分に低下した以降に、パージガス(ガスG3”)をバッファタンク10に導入する第2洗浄工程を行うことが可能である。
以上のように、本発明に係るアルゴン精製方法は、PSA法を利用して高純度アルゴンを高収率で得るのに適する。
本方法では、上述のように、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれの減圧工程は、当該減圧工程の開始から途中までにおいて当該吸着塔からガスG3を導出する第1減圧工程と、当該吸着塔からガスG4を導出する、第1減圧工程の後の第2減圧工程とを含み、ガスG3を洗浄ガスとして洗浄工程にある他の吸着塔に導入し、ガスG4を第1昇圧工程にある他の吸着塔に導入する。減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるガスのアルゴン濃度は比較的高いところ、このような構成によると、減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cから導出されるガスを利用して他の吸着塔にて洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うことができる。すなわち、このような構成によると、複数の吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにて行われる工程を有機的に利用して、アルゴン富化のためのPSA法を効率よく行うことが可能である。
本方法では、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力を0%とし且つ吸着工程にある吸着塔31A,31B,31Cの内部の最高圧力を100%とする場合、第1減圧工程の終了時における吸着塔31A,31B,31Cの内部の第1中間圧力は35〜80%の範囲にあり、且つ、第2減圧工程の終了時における吸着塔31A,31B,31Cの内部の第2中間圧力は第1中間圧力より小さい限りにおいて15〜50%の範囲にあるのが好ましい。このような構成は、洗浄工程および昇圧工程を効率よく行うのに資する。
本方法では、昇圧工程は、上述のように、第2減圧工程にある吸着塔31A,31B,31Cの一つから導出されたガスG4を昇圧対象の吸着塔31A,31B,31Cの一つに導入する第1昇圧工程と、当該吸着塔に精製ガスG2を導入する、第1昇圧工程の後の第2昇圧工程とを含む。このような構成は、昇圧工程およびその後の吸着工程を各吸着塔において効率よく行ううえで好適である。
本方法では、PSA法を実行するにあたり、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)にある吸着塔31A,31B,31Cの内部を降圧するうえで真空ポンプを使用しない。そのため、吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力は大気圧以上である。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔31A,31B,31CないしPSA装置30が、バッファタンク10からのガスG1の流量変動(即ち、装置に対する負荷変動)に対応するうえで、好適である。
本方法で使用するバッファタンク10の容積は上述のように可変である。このような構成は、バッファタンク10に取り込まれることとなる原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5の流量変動(特に原料ガスG0の流動変動)や圧力変動にバッファタンク10が対応するうえで、好適である。
本方法では、バッファタンク10からPSA系3ないし吸着塔31A,31B,31Cに向けて供給するガスG1の流量は、上述のように、吸着塔31A,31B,31Cにて吸着工程が開始する時に更新する。このような構成は、PSA法を実行するための吸着塔ないしPSA装置に対する負荷を軽減するうえで好適である。
本方法では、バッファタンク10における貯留量について、上述のように、上側設定量VHおよび下側設定量VLを設定し、且つ、ガスG1供給流量の更新時より前にバッファタンク10に取り込まれる原料ガスG0の平均流量を得て基準流量とする。そのうえで、本方法では、ガスG1供給流量の更新時において、上述のように、バッファタンク10内のガス貯留量が上側設定量VH以上である場合、基準流量より大きな流量をガスG1供給流量とし、バッファタンク10内のガス貯留量が上側設定量VHを下回り且つ下側設定量VLを上回る場合、基準流量をガスG1供給流量とし、バッファタンク10内のガス貯留量が下側設定量VL以下である場合、基準流量より小さな流量をガスG1供給流量とする。このような手法においては、ガスG1供給流量の更新時において、バッファタンク10内のガス貯留量が上側設定量VH以上である場合、ガスG1供給流量を増大し、バッファタンク10内のガス貯留量が上側設定量VHを下回り且つ下側設定量VLを上回る場合、ガスG1供給流量を変更せず、バッファタンク10内のガス貯留量が下側設定量VL以下である場合、ガスG1供給流量を低減する場合がある。以上のような構成は、バッファタンク10に取り込まれることとなる原料ガスG0、ガスG3”、およびガスG5の流量変動(特に原料ガスG0の流動変動)にバッファタンク10が対応するとともに、前処理系2や、PSA法を実行するためのPSA装置30ないし吸着塔31A,31B,31C、に対する負荷変動を軽減して負荷の安定化を図るうえで好適である。前処理系2での前処理に含まれる上記反応式(1)で表される転化反応および上記反応式(2)で表される転化反応は、いずれも発熱反応であるところ、前処理系2に対する負荷変動が軽減されて負荷の安定化が図られることは、当該発熱反応について過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
本方法では、ガスG1をPSA系3の吸着塔31A,31B,31Cに供給する前に、バッファタンク10からのガスG1に対して、当該ガスG1に含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を前処理系2において施す。このような構成は、高純度アルゴンを得るうえで好適である。
本方法では、前処理系2にてガスG1に施すべき前処理を、上述したように複数段(第1〜第3処理)に分けて行う。第1処理における上記反応式(1)で表される転化反応、並びに、第2および第3処理における上記反応式(2)で表される転化反応は、いずれも発熱反応であるところ、前処理を複数段に分けて行うという構成は、当該前処理に含まれる発熱反応について過度の温度上昇を防止して反応温度を適正範囲内に制御するうえで好ましい。
本方法では、前処理系2の後においてガスG1を吸着塔31A,31B,31Cに供給する前に、昇圧機32によってガスG1を昇圧する。このような構成は、ガスG1について前処理系2にて前処理を施したうえで適切にPSA法を実行するうえで好適である。
図1から図4に示すアルゴン精製装置Yを使用して、所定の原料ガスG0からアルゴンを濃縮分離した。本実施例における原料ガスG0は、シリコン結晶引き上げ炉から排出された使用済み雰囲気ガスであり、主成分としてアルゴンを含む。当該原料ガスG0の仕様を、図11の表に掲げる。
本実施例では、貯留系1において、バッファタンク10に原料ガスG0を取り込みつつ、バッファタンク10からガスG1を後段(前処理系2,PSA系3)に向けて供給し続け、ガスG1の流量について、PSA系3における吸着塔31A,31B,31Cのいずれかが吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)に更新した。ガスG1の流量については、上述した手法において、具体的には次のように更新した。
まず、流量計13によって計測される原料ガスG0の流量について、吸着塔31A,31B,31Cの一つが吸着工程を開始する時(吸着塔切替時)までの10秒間の平均流量を基準流量として求めた。次に、求められた平均流量(基準流量)を、流量制御部16の流量制御範囲である0〜400Nm3/hに対する割合(α%)に換算した。この割合(α%)を利用して、ガスG1について次に設定されるべき流量を算出した。具体的には、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が、バッファタンク10について設定した上側設定値120m3以上である場合には、α%に5%を加算し、流量制御部16の流量制御範囲である0〜400Nm3/hの(α+5)%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が下側設定値40m3以下である場合には、α%から5%を差し引き、流量制御部16の流量制御範囲である0〜400Nm3/hの(α−5)%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。また、吸着塔切替時に貯留量検知計14によって計測されるバッファタンク10のガス貯留量が、上側設定値120m3を下回り且つ下側設定値40m3を上回る場合には、流量制御部16の流量制御範囲である0〜400Nm3/hのα%の流量を算出し、この算出流量をガスG1の次の流量として採用した。ガスG1について以上のようにして更新した流量は、次の吸着塔切替時まで維持した。
本実施例では、前処理系2において、以下の条件でガスG1に対して前処理を行った。前処理槽20A内の触媒としては、プラチナ―パラジウム系触媒を採用した。前処理槽20Aに導入される前のガスG1については、温度を130℃に調節し、後段の前処理槽20B,20Cを経た後に水素濃度が0.5vol%となり得るように所定量の水素を添加し、前処理槽20Aにて充分に一酸化炭素が除去されるように一酸化炭素に対して所定の過剰量の酸素を添加した。前処理槽20B内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Bに導入される前のガスG1については、温度を50℃に調節し、後段の前処理槽20Cを経た後に水素濃度が0.5vol%となり得る限りにおいて、前処理槽20Bにて一部の水素が除去されるように、所定量の酸素を添加した。前処理槽20C内の触媒としては、プラチナ系触媒を採用した。前処理槽20Cに導入される前のガスG1については、温度を50℃に調節し、前処理槽20Cを経た後に水素濃度が0.5vol%となるように所定量の酸素を添加した。前処理槽20Cの後の冷却器22Cでは、ガスG1を30〜40℃に冷却した。
本実施例では、PSA系3ないしPSA装置30において、図8から図10に示すように吸着工程、第1減圧工程、第2減圧工程、第1脱着工程、第2脱着工程、第1洗浄工程、第2洗浄工程、第1昇圧工程、および第2昇圧工程からなる1サイクルを吸着塔31A,31B,31Cにおいて繰り返した。本実施例において使用したPSA装置30の吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれは円筒形状(内径800mm,内寸高さ3500mm)を有する。各吸着塔内には、吸着剤として、所定量のCMSと、所定量のZMSと、所定量のアルミナとを積層して充填した。また、本実施例では、吸着塔31A,31B,31Cのそれぞれにおいて、吸着工程は330秒間、第1減圧工程は120秒間、第2減圧工程は30秒間、第1脱着工程は60秒間、第2脱着工程は120秒間、第1洗浄工程は70秒間、第2洗浄工程は50秒間、第1昇圧工程は30秒間、および第2昇圧工程は180秒間行った。吸着工程における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最高圧力は800kPa(ゲージ圧)とし、脱着工程(第1脱着工程,第2脱着工程)における吸着塔31A,31B,31Cの内部の最低圧力は大気圧とした。また、第1減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第1中間圧力)は400kPa(ゲージ圧)とし、第2減圧工程の終了時点における吸着塔31A,31B,31Cの内部の圧力(第2中間圧力)は200kPa(ゲージ圧)とした。
このような条件で行った本実施例において取得した精製ガスG2について、アルゴン純度は99.5vol%であり、水素濃度は0.5vol%であり、アルゴン回収率は約70%であった。取得した精製ガスG2の仕様を図11の表に掲げる。