JP5132913B2 - トナー用バインダー樹脂、その製造方法、およびトナー - Google Patents
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Description
トナー用バインダー樹脂は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、強靭性、低温での定着性等に優れ、性能バランスの良いポリエステル樹脂が特に注目されている。
ここで、得られた反応物中には、化合物(X)を構成単位として有するポリエステル樹脂(P1)のほかに、化合物(X)を構成単位として有しないポリエステル樹脂(P0)や、未反応の化合物(X)を含有していてもよい。
このような反応をする官能基(f)としては、特に制限されないが、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、グリシジル基、アルコキシ基、イソシアネート基、およびエステル基等が挙げられる。中でも、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、エステル基が好ましい。
長鎖アルキル基(r)の炭素数は、ワックス分散性の点から35以上が好ましい。
また、長鎖アルキル基(r)の炭素数の上限値は、特に制限されないが、ポリエステル樹脂への取り込まれやすさの点から、100以下が好ましく、80以下がより好ましい。
また、長鎖アルキル基(r)としては、特に制限されず、直鎖のアルキル基(r1)でもよく、分岐を有するアルキル基(r2)でもよい。例えば、直鎖のアルキル基(r1)としては炭素数30以上のポリエチレン構造が挙げられ、分岐を有するアルキル基としては炭素数30以上のポリプロピレン構造が挙げられる。なかでも、長鎖アルキル基(r)は、直鎖のアルキル基(r1)であることが好ましい。長鎖アルキル基(r)が直鎖のアルキル基(r1)である場合に、得られるバインダー樹脂の透明性が良好となり、発色の良いトナーを得られる傾向にある。化合物(X)中の官能基の結合位置は、特に限定されないが、トナーの定着特性を考慮すると、長鎖アルキル基(r)の片末端炭素に結合していることが好ましい。
(1)炭素数30以上のポリエチレンの片末端に水酸基を有する化合物。例えば、東洋ペトロライト社製ユニリンシリーズのうち数平均分子量が438以上のもの、
(2)炭素数30以上のポリエチレンの片末端にカルボキシル基を有する化合物。例えば東洋ペトロライト社製ユニシッドシリーズのうち数平均分子量が438以上のもの。
なお、化合物(X)の含有量とは、ポリエステル樹脂(P1)中の化合物(X)と未反応の化合物(X)の合計量である。
未反応の化合物(X)の含有量は、ポリエステル樹脂中に含有された状態での化合物(X)の吸熱量を測定することにより、以下の式から求めることができる。
樹脂中の未反応の化合物(X)の含有量(質量%)={ポリエステル樹脂中に含有された化合物(X)の吸熱量(J/g)}/{化合物(X)自身の吸熱量(J/g)}×100(質量%)
また、ポリエステル樹脂(P)の軟化温度は、特に制限されないが、90〜200℃であるのが好ましい。軟化温度が90℃以上の場合に、トナーの非オフセット性が良好となる傾向にあり、200℃以下の場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。軟化温度の下限値は、100℃以上がより好ましく、上限値は180℃以下がより好ましい。
なお、本発明の効果であるトナーの発色性、色再現性は、印刷対象画像の色を忠実に再現できるか否かの指標の一つであり、カラートナーとしての適正を判断するものである。例えば、OHP用シートに印刷したテストパターンをオーバーヘッドプロジェクターにて投影し、投影像の鮮明さ、色のくすみの有無等を目視にて評価し、発色性、色再現性の良、不良を判断することができる。
本発明のトナー用ポリエステルバインダー樹脂は、酸またはアルコールと反応しうる官能基(f)と炭素数30以上の長鎖アルキル基(r)とを有する化合物(X)の存在下で、
(A)酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部、および
(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)105〜150モル部を重合することによって製造することができる。
なお、化合物(X)の酸またはアルコールと反応しうる官能基(f)が、カルボキシル基またはその無水物もしくはエステルである場合には、化合物(X)は酸成分に該当するが、ここでいう(A)酸成分とは、化合物(X)以外の酸成分をいうものとする。
脂肪族ジオール成分としては、特に制限されないが、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、脂肪族ジオール成分と芳香族ジオール成分を組み合せて使用することもできる。
本発明において、脂肪族ジオール成分の使用量は、特に限定されないが、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部に対して10モル部以上が好ましい。脂肪族ジオールの使用量が10モル部以上の場合に、重合度が上がりトナーの非オフセット性が良好となる傾向にあるとともに、多量の重合触媒を使用せずとも、また長時間の重合を実施しなくても重合度を高めることができる傾向にあり、コスト面、環境面で好ましい。脂肪族ジオール成分の使用量は、15モル部以上がより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸成分を使用する場合は、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部に対して0.1〜30モル部使用することが好ましい。3価以上の多価アルコール成分の使用量が、0.1モル部以上の場合にトナーの非オフセット性が良好となる傾向にあり、30モル部以下の場合にトナーの耐ブロッキング性や定着性が良好となる傾向にある。3価以上の多価アルコール成分の使用量の下限値は、1モル部以上がより好ましく、また上限値は28モル部以下がより好ましい。
(A)酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部、および
(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)105〜150モル部
を重合する。
(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)の使用量が、(A)酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部に対して105モル部以上である場合に反応性が良好となるため、反応時間が短くなり生産性が向上するとともに、樹脂中の残存モノマーを減少させることが出来る傾向にあり、さらには光線透過率が高い樹脂を得ることができ、その結果、発色の良いトナーを提供できる傾向にある。また得られる樹脂の画像の安定性が良好となり、帯電の環境依存性が小さくなる傾向にある。また、(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)の使用量が、150モル部以下である場合に樹脂の帯電性が良好となる傾向にある。(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)の使用量の下限値は、125モル部以上が好ましく、またこの上限値は145モル部以下が好ましい。
(a−1)官能基数は1(mmol/g)以上とする、
(a−2)長鎖アルキル基(r1)の炭素数は100以下とする、
(a−3)化合物(X1)の含有量は5質量%以下とする、
(a−4)未反応の化合物(X1)の含有量は4.5質量%以下とする。
(a)用いる化合物(X)に関して、長鎖アルキル基(r)が分岐を有するアルキル基(r2)である化合物(X2)の場合には、
(a’−1)官能基数は1(mmol/g)以上とする、
(a’−2)長鎖アルキル基(r1)の炭素数は100以下とする、
(a’−3)化合物(X2)の含有量は0.5質量%以下とする、
(a’−4)未反応の化合物(X2)の含有量は0.45質量%以下とする。
(b)製造処方に関して
(b−1)酸成分(ただし、化合物(X)は除く)100モル部に対し、アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く)を105モル部以上とする、
(b−2)化合物(X)を(A)酸成分および(B)アルコール成分とともに反応容器内に投入する。
ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマンニウム等の重合触媒を用いることができる。
着色剤としては、特に制限されないが、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料もしくは顔料などを挙げることができる。これらの染料や顔料はそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。フルカラートナーの場合には、イエローとしてベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料など、マゼンタとしてキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料など、シアンとしてフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー中2〜10質量%であることが好ましい。
荷電制御剤の含有量は、特に制限されないが、トナー中0.5〜5質量%であるのが好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
離型剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの離型効果、保存性、定着性、発色性等を左右することから、トナー中0.3〜15質量%であることが好ましい。離型剤の含有量の下限値は、より好ましくは1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
これらの添加剤の含有量は、特に制限されないが、トナー中0.05〜10質量%であるのが好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上の場合にトナーの性能改質効果が充分に得られる傾向にあり、10質量%以下の場合にトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
磁性1成分現像剤として用いる場合には磁性体を含有し、磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト等をはじめとする、鉄、コバルト、ニッケル等を含む強磁性の合金の他、化合物や強磁性元素を含まないが、適当に熱処理することによって強磁性を表すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含む所謂ホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
磁性体の含有量は、特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナー中3〜70質量%であることが好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下の場合にトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の下限値は、3質量%以上がより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
(1)化合物(X)の分析方法
1)吸熱量(J/g)
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用い、昇温速度5℃/分で測定し、DSCチャートにおける吸熱ピークのベースラインからの面積より、化合物(X)自身の吸熱量(J/g)を求めた。
1)可視光透過率
ヒートプレスを用いて厚さ50μmの樹脂膜を作成し、島津製作所社製紫外可視分光光度計「UV−2400」を用いて、波長400〜800nmにて光線透過率を測定した。続いて測定結果から以下の基準で可視光透過率を評価した。
○:すべての波長において光線透過率が90%以上である。
×:すべてまたは一部の波長において光線透過率が90%未満である。
2)ガラス転移温度(Tg)
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
4)酸価(AV)
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
5)ポリエステル樹脂中の未反応の化合物(X)の吸熱量(J/g)
2)と同様の装置を用い、同条件で測定を行い、DSCチャートにおける吸熱ピークの、ベースラインからの面積より求めた。
なお、樹脂中の未反応の化合物(X)の含有量については、以下の式より求めることができる。
樹脂中の未反応の化合物(X)の含有量(質量%)={ポリエステル樹脂中に含有された化合物(X)の吸熱量(J/g)}/{化合物(X)自身の吸熱量(J/g)}×100(質量%)
1)非オフセット性
シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度100mm/sに設定した温度変更可能であるプリンターを用いて、テストパターンとして0.5mg/cm2のトナー濃度にて4.5cm×15cmのベタ画像を印刷し、非オフセット性の評価を行った。また、定着時にホットオフセット現象により定着ローラーにトナーが移行するときの最低温度をオフセット発生温度と定め、以下の基準を用いて非オフセット性を判断した。
◎(良好) :オフセット発生温度が200℃以上
○(使用可能) :オフセット発生温度が180℃以上200℃未満
×(劣る) :オフセット発生温度が180℃未満
非オフセット性の評価設備を用い、同一の定着速度で、定着ローラーの温度を145℃に設定して定着させた上述のテストパターン画像を、JIS512の砂消しゴムにて9回擦り、試験前後の画像濃度をマクベス社製画像濃度計にて測定し、定着率を以下の式で算出し、以下の基準により評価した。
定着率=試験後の画像濃度/試験前の画像濃度 ×100 (%)
◎(非常に良好):80%以上の定着率
○(良好) :75%以上80%未満の定着率
△(使用可能) :70%以上75%未満の定着率
×(劣る) :70%未満の定着率または145℃でコールドオフセット現象が発生し測定不可
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを50℃に保温された乾燥機に約24時間放置し、トナーの凝集程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
◎(良好):サンプル瓶を逆さにするだけで分散する。
○(使用可能):サンプル瓶を逆さにし、2〜3回叩くと分散する。
×(劣る):サンプル瓶を逆さにし、4〜5回以上叩くと分散する。
非オフセット性の評価方法と同一条件で印刷を1万枚行った場合において、トナーの帯電量を基準として画像安定性を評価した。
◎(非常に良好):初期の帯電量と最終の帯電量に変化がない。
○(良好) :帯電量は若干変化があるが、画像濃度に影響が少ない。
△(使用可能) :帯電量(画像濃度)に変化があるが、添加剤により改良可能である。
×(劣る) :画像濃度が大きく変化する。
画像安定性と同様の方法にて印刷を一万枚行った後、部材への融着、印字面のカブリを基準として耐久性を評価した。
◎(非常に良好):部材への融着やカブリは認められない。
○(良好) :部材への融着やカブリはごくわずかに見られる程度。
△(使用可能):部材への融着やカブリは若干認められるが、添加剤などにより改良可能。
×(劣る) :部材への融着やカブリが大いに見られる。
非オフセット性の評価設備を用いて、OHP用シート上にテストパターン画像を印刷した。オーバーヘッドプロジェクターにて投光し、スクリーンに投影された像に対して鮮明さ、色のくすみに関する目視評価を行った。各色トナーが多層構造となるカラー用トナーとしての適正を判断するものである。
◎(良好):投影像は鮮明で、色のくすみも見られない。発色性、色再現性は良好である。
○(使用可能):投影像はほぼ鮮明で、わずかに色のくすみが見られるのみである。発色性、色再現性は使用可能レベルである。
×(劣る) :投影像は不鮮明で、色のくすみが見られ、発色性、色再現性は使用不可レベルである。
表1に示す仕込み組成の酸成分、アルコール成分、化合物(X)と、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂1を得た。
エステル化反応の開始(水留出開始時点)から縮合反応の終了(撹拌停止時点)までに要した時間を総反応時間とし、表1に示す。得られた樹脂の特性値を同じく表1に示す。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1に示す。
(A)酸成分、(B)アルコール成分、および化合物(X)を表1および表2に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂2〜4,ポリエステル樹脂A,ポリエステル樹脂C,ポリエステル樹脂D、およびポリエステル樹脂Fを得た。
総反応時間および得られた樹脂の特性値を表1および表2に示す。
次いで、ポリエステル樹脂1に代えて、それぞれポリエステル樹脂2〜4,ポリエステル樹脂A,ポリエステル樹脂C,ポリエステル樹脂D、およびポリエステル樹脂Fを用いること以外は、実施例1と同様の方法でトナーを得た。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1または表2に示す。
酸成分としてテレフタル酸75モル部、イソフタル酸20モル部、およびアジピン酸5モル部、アルコール成分としてシクロヘキサンジメタノール15モル部、およびエチレングリコール125モル部、触媒として1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。次いで、反応系内の温度を上げて280℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。攪拌翼のトルクが所望の値を示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂aを得た。ポリエステル樹脂aの軟化温度は175℃、Tgは58.1℃、酸価は5.1mgKOH/gであった。
実施例1のポリエステル樹脂の製造に用いる(A)酸成分、(B)アルコール成分、および化合物(X)を表1または表2に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂5〜7およびポリエステル樹脂Bを得た。総反応時間および得られた樹脂の特性値を表1または表2に示す。
次いで、ポリエステル樹脂1に代えて、ポリエステル樹脂5〜7、ポリエステル樹脂B、および合成例1で得たポリエステル樹脂aを用いて、表1または表2に示す比率で用いること以外は、実施例1と同様の方法でトナーを得た。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1または表2に示す。
実施例1で得られたポリエステル樹脂1を45質量部、キナクリドン顔料(クラリアント社製HOSTAPARM PINK E、C.I.番号:Pigment Red 122)を1.5質量部、ポリエチレンワックス(三洋化成工業社製、サンワックス171−P)3質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製E−84)0.5質量部をメチルエチルケトン50質量部に溶解・分散し、固形分50質量%の混合液を得た。ついで、該混合液80質量部、メチルエチルケトン6質量部、イソプロピルアルコール5質量部、1規定水酸価ナトリウム水溶液2.7質量部を1L丸底フラスコに仕込み、350rpmにて撹拌しながら液温30℃とした。撹拌回転数、液温を保持しながら脱イオン水30質量部を10分かけて滴下し、転相乳化を行った。10分間そのまま保持したのち、撹
拌回転数を150rpmに減速し、50質量部の脱イオン水を投入した。
次いで、液温を上昇させ、蒸留操作によりメチルエチルケトンを除去し、水系媒体のトナー粒子分散液を得た。
得られた分散液をろ過水洗した後、トナー湿粉を脱イオン水に再分散して1規定塩酸を加えてpHを約3とし、ろ過水洗を2回行って十分に洗浄して、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキを50℃の真空乾燥機で十分に乾燥した。
得られた微粉末100質量部に対して、0.25質量部のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、最終的にトナーを得た。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表1に示す。
表2に示す仕込み組成の(A)酸成分、(B)アルコール成分と、全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、化合物(X)を添加した。30分後、撹拌を停止し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂Eを得た。総反応時間および得られた樹脂の特性値を表2に示す。
次いで、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂Eに変更する以外は、実施例1と同様の方法にてトナーを得た。
得られたトナーについて前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。評価結果を表2に示す。
表2に示す仕込み組成の(A)酸成分、(B)アルコール成分、その他の成分と、全酸成分に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始したが、その他の成分として添加したポリエチレンが熱により分解し、油分が水とともに留出した。水の留出がなくなりエステル化反応を終了したが、分解物による反応容器内の汚染が著しく、次いで行う予定であった縮合反応を中止せざるを得ず、ポリエステル樹脂を得るに至らなかった。
(1)実施例1〜8の化合物(X)を含有するポリエステル樹脂(P)を含有するバインダー樹脂を用いたトナーは、トナー化時添加ワックスの分散性が向上し、非オフセット性と定着性のバランスの良いトナーが得られ、かつ画像安定性、耐久性が良好で発色性、色再現性に優れたトナーが得られた。
(2)炭素数が48の長鎖アルキル基を有する化合物(X)を含有するポリエステル樹脂(P)を用いた実施例1,2,8は、トナー化時添加ワックスの分散性がより良好となるため、これを単独で用いたトナーは非オフセット性、耐久性が特に優れていた。
(3)(A)酸成分(ただし、化合物(X)を除く。)100モル部に対して、(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)を除く。)を135モル部用いて重合した樹脂1,2は、(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)を除く。)を120モル部用いた樹脂3と比較して総反応時間が短く、かつこれらを用いたトナーは画像安定性が優れていた。
(5)実施例5〜7は、その他の樹脂との併用であるが、バランスの良いトナー性能を発現している。(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)を除く。)を108モル部用いて重合した樹脂5,6は、(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)を除く。)を102モル部として重合した樹脂7と比較して総反応時間が短かった。
(7)可視光透過率の不良な樹脂を用いたトナーは、トナーの発色性、色再現性が劣っており、カラートナー用としては利用価値が低かった(比較例2,3,5,7)。
(8)化合物(X)に替えて、酸またはアルコールと反応しうる官能基(f)を有さない化合物(ポリエチレン)を使用した場合、ポリエステル樹脂を得ることができなかった(比較例6)。
ジオールA:ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.3モル付加物
ジオールB:ビスフェノールAエチレンオキサイド2.0モル付加物
化合物A:東洋ペトロライト社 ユニリン700
化合物B:東洋ペトロライト社 ユニシッド700
化合物D:エヌエスケミカル社 ライスワックス
化合物E:炭素数140のポリプロピレンをベースとして、片末端をマレイン酸変性したもの
Claims (3)
- カルボキシル基、水酸基より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)が炭素数30以上の長鎖アルキル基(r)の末端炭素に結合している化合物(X)の存在下で、
(A)芳香族ジカルボン酸を全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部中70モル部以上、および
(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)105〜150モル部を重合して得られたトナー用ポリエステルバインダー樹脂であって、前記化合物(X)を0.5〜5.0質量%含み、
樹脂厚50μmにおける波長400〜800nmの領域での光線透過率が全領域で90%以上であるトナー用ポリエステルバインダー樹脂。 - カルボキシル基、水酸基より選ばれる少なくとも1種の官能基(f)が炭素数30以上の長鎖アルキル基(r)の末端炭素に結合している化合物(X)の存在下で、
(A)芳香族ジカルボン酸を全酸成分(ただし、化合物(X)は除く。)100モル部中70モル部以上、および
(B)アルコール成分(ただし、化合物(X)は除く。)105〜150モル部を重合する、請求項1記載のトナー用ポリエステルバインダー樹脂を製造する方法。 - 請求項1に記載のトナー用ポリエステルバインダー樹脂を含有するトナー。
Priority Applications (1)
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