JP5123749B2 - 反射率を可逆的に変化させる方法およびその素子および該素子の製造方法、並びに透過率可変素子および反射率可変ミラー - Google Patents
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この発明の素子を透過率可変素子として構成した実施の形態を以下説明する。図1において透過率可変素子10は空隙12を隔てて対向配置されたガラス製または樹脂製の2枚の透明基板14,16を具えている。透明基板14,16の対向面には電極対を構成する透明導電膜18,20がそれぞれ形成されている。透明導電膜18,20は例えばITO(酸化インジウム・スズ)、酸化スズ、酸化亜鉛等で構成される。空隙12には電解液22が充填されている。空隙12の周囲はシール材24で封止されている。電解液22はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネート(TEABF4−PC)を主成分としメタノールを含有する非水溶媒25に、溶質として金属陽イオン26(例えばNi2+)、陰イオン28(例えばCl-)、電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料30(例えばフェロセン)を分散して構成されている。なお透明基板14,16が破損したときに電解液22が空隙12から外部に漏出するのを防止するために、電解液22に増粘剤、PMMA、ポリオールイソシアネート、ポリマー等を添加して、電解液22をゲル状にすることもできる。また外部から照射される紫外線により溶媒が劣化するのを防止するために、電解液22に紫外線吸収剤を添加することもできる。透明導電膜18,20にはリード線32,34の一端部がそれぞれ接続されている。リード線32,34の他端部間にはスイッチ36および直流電源38の直列接続回路が接続されている。またリード線32,34間にはスイッチ40が、スイッチ36および直流電源38の直列接続回路と並列に接続されている。スイッチ36,40は相互に連動して互いに逆方向にオン、オフ切り換えされる。
図1の透過率可変素子10の実施例を説明する。透過率可変素子10を製造し、使用する手順を説明する。ここでは非水溶媒中に金属イオンを溶解する方法として特開2007−103464号公報に記載の方法を利用する。
(1)脱水メタノールに5重量%の無水NiCl2を、水分が入らないようにN2雰囲気中で溶解する。
(2)上記(1)で得られた溶液と0.8モル/リットルのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネート溶液を体積比1:9で混合する。
(3)上記(2)で得られた溶液に0.01〜0.03モル/リットルのフェロセンを添加して電解液22を調整する。調整された電解液22はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネートを主成分としこれにメタノールを混合した非水溶媒25中に、金属陽イオン26としてのNi2+、陰イオン28としてのCl-、電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料30としてのフェロセンが分散した状態にある。このときフェロセンは中性状態(非イオン化状態)にある。
(4)上記(3)で調整された電解液22を、対向面に透明導電膜18,20をそれぞれ形成して対向配置した透明基板14,16間の空隙12(空隙長:1mm)に充填する。充填後空隙12の周囲をシール材24で封止して透過率可変素子10を完成する。完成した透過率可変素子10は厚み方向全体が透明(電解液22がフェロセン含んでいるので、やや黄色味がかった透明)である。
(5)完成した透過率可変素子10に図1のように電気回路を接続し、図2のようにスイッチ36をオンし、スイッチ40をオフして両電極18,20間に直流電源38により2Vの電圧を印加した。その結果、負電極20に金属陽イオン26であるNi2+が堆積して反射膜が析出し、透明基板16の前面側から透明基板16を透過して見て無色の鏡となった。
(6)上記(5)の状態から図1のようにスイッチ36をオフし、スイッチ40をオンして両電極18,20間を短絡すると反射膜が消失し元の透明な状態に戻った。上記(5)の状態からスイッチ36,40を共にオフして両電極18,20間を開放した場合も反射膜が消失し元の透明な状態に戻った。
比較例としてフェロセンを添加しない電解液22を調整して上記実施例と同様の実験を行った。その結果、両電極18,20に2Vの電圧を印加すると負電極20に反射膜が析出して鏡となったが、その後両電極18,20を短絡または開放しても鏡の状態のままであり、元の透明な状態には戻らなかった。したがって実施例によればフェロセン(電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料)の添加により金属イオンの移動度が上がることがわかった。このような違いが生じる理由は未だ明らかではないが、一つの推測として、フェロセンを添加しない場合は金属イオンが負電極の表面に移動すると金属イオンと負電極20との間で電極反応が生じて金属イオンが負電極20にメッキされる(つまり金属イオンは電解液22中に分散した元の状態に戻らない)のに対し、フェロセンを添加した場合は、イオン化したフェロセンと金属イオンとが混在した状態で負電極の表面に移動するため、金属イオンと負電極20との間で電極反応が生じにくくなる(メッキされにくくなる)のではないかと考えられる。
この発明の素子を反射率可変ミラーとして構成した実施の形態を以下説明する。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。図3において反射率可変ミラー42は空隙12を隔てて対向配置された不透明基板44と透明基板16を具えている。不透明基板44は例えば表面が暗色(黒色等)のガラス、セラミックス、樹脂、金属等の基板で構成されたもので、反射率は低い。不透明基板44と透明基板16の対向面には電極対を構成する透明導電膜18,20がそれぞれ形成されている。空隙12には電解液22が充填されている。空隙12の周囲はシール材24で封止されている。電解液22は実施の形態1で使用したものと同じで、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネートを主成分としメタノールを含有する非水溶媒25に、溶質として金属陽イオン26(例えばNi2+)、陰イオン28(例えばCl-)、電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料30(例えばフェロセン)を分散させて構成されている。なお不透明基板44と透明基板16が破損したときに電解液22が空隙12から外部に漏出するのを防止するために、電解液22に増粘剤、PMMA、ポリオールイソシアネート、ポリマー等を添加して、電解液22をゲル状にすることもできる。また外部から照射される紫外線により溶媒が劣化するのを防止するために、電解液22に紫外線吸収剤を添加することもできる。透明導電膜18,20にはリード線32,34の一端部がそれぞれ接続されている。リード線32,34の他端部間にはスイッチ36および直流電源38の直列接続回路が接続されている。またリード線32,34間にはスイッチ40が、スイッチ36および直流電源38の直列接続回路と並列に接続されている。スイッチ36,40は相互に連動して互いに逆方向にオン、オフ切り換えされる。
Claims (11)
- 空隙を隔てて電極対を配置し、
前記空隙に、メタノールを含有する非水溶媒中に少なくとも金属イオンおよび電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を分散させた電解液を充填し、
前記電極対間の電場の変化に応じて、前記化合物材料を前記金属イオンと同極性にイオン化しかつ前記電解液中の金属イオンおよび前記イオン化した化合物材料を電気泳動により一方の電極の表面に堆積させて鏡にする状態と、逆に該金属イオンおよび該イオン化した化合物を該電極の表面から離脱しかつ該化合物材料を中性化する状態とに変化させて、該電極の表面の反射率を可逆的に変化させる方法。 - 前記化合物材料がフェロセンである請求項1記載の方法。
- 前記非水溶媒がテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホランから選ばれた少なくとも一種を主成分とする請求項1または2に記載の方法。
- 前記電解液に紫外線吸収剤を添加してなる請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
- 空隙を隔てて配置された電極対と、前記空隙に充填された、メタノールを含有する非水溶媒中に少なくとも金属イオンおよび電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を分散させた電解液とを具備してなり、
前記電極対間の電場の変化に応じて、前記化合物材料が前記金属イオンと同極性にイオン化しかつ前記電解液中の金属イオンおよび前記イオン化した化合物材料が電気泳動により一方の電極の表面に堆積して鏡になる状態と、逆に該金属イオンおよび該イオン化した化合物を該電極の表面から離脱しかつ該化合物材料を中性化する状態とに変化して、該電極の表面の反射率が可逆的に変化する素子。 - 前記化合物材料がフェロセンである請求項5記載の素子。
- 前記非水溶媒がテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホランから選ばれた少なくとも一種を主成分とする請求項5または6に記載の素子。
- 前記電解液に紫外線吸収剤を添加してなる請求項5から7のいずれか1つに記載の方法。
- 脱水メタノールにNiCl2を溶解し、これにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート−プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホランから選ばれた少なくとも一種の非水溶媒および電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を添加して非水溶媒中に金属イオンおよび電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を分散させた電解液を調整し、
該電解液を電極対の間の空隙に充填して、
前記電極対間の電場の変化に応じて、前記化合物材料が前記金属イオンと同極性にイオン化しかつ前記電解液中の金属イオンおよび前記イオン化した化合物材料が電気泳動により一方の電極の表面に堆積して鏡になる状態と、逆に該金属イオンおよび該イオン化した化合物を該電極の表面から離脱しかつ該化合物材料を中性化する状態とに変化して、該電極の表面の反射率が可逆的に変化する素子を製造する方法。 - 空隙を隔てて対向配置された2枚の透明基板と、
前記2枚の透明基板の対向面にそれぞれ形成された透明導電膜と、
前記空隙に充填された、メタノールを含有する非水溶媒中に金属イオンおよび電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を分散させた電解液とを具備し、
前記透明導電膜対間の電場の変化に応じて、前記化合物材料が前記金属イオンと同極性にイオン化しかつ前記電解液中の金属イオンおよび前記イオン化した化合物材料が電気泳動により前記いずれかの透明導電膜の表面に堆積して鏡になる状態と、逆に該金属イオンおよび該イオン化した化合物を該透明導電膜の表面から離脱しかつ該化合物材料を中性化する状態とに変化して、該透明導電膜の表面の反射率が可逆的に変化し、もって前記両透明基板を透過して見た透過率が可逆的に変化する透過率可変素子。 - 裏面に透明導電膜を形成した透明基板と、
該透明基板の裏面側で該透明基板に対し空隙を隔てて対向配置され、少なくとも前面が電極を構成し、前面側から見て不透明である背面部材と、
前記空隙に充填された、メタノールを含有する非水溶媒中に金属イオンおよび電極反応により可逆的にイオン化する化合物材料を分散させた電解液とを具備し、
前記透明導電膜と前記背面部材の電極間の電場の変化に応じて、前記化合物材料が前記金属イオンと同極性にイオン化しかつ前記電解液中の金属イオンおよび前記イオン化した化合物材料が電気泳動により前記透明導電膜と前記背面部材の電極のいずれかの表面に堆積して鏡になる状態と、逆に該金属イオンおよび該イオン化した化合物を該表面から離脱しかつ該化合物材料を中性化する状態とに変化して、該表面の反射率が可逆的に変化し、もって前記透明基板の前面側から見た反射率が可逆的に変化する反射率可変ミラー。
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