以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[装置構成]
図1に本発明の車両の制御装置を適用したハイブリッド車両の概略構成を示す。図1の例は、機械分配式2モータ型と称されるハイブリッド車両であり、エンジン(内燃機関)1、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、動力分配機構20、を備える。動力源に相当するエンジン1と、第1のモータジェネレータMG1とが動力分配機構20に連結されている。動力分配機構20の駆動軸3には、駆動軸3のトルク(駆動力)又はブレーキ力のアシストを行うための動力源である第2のモータジェネレータMG2が連結されている。さらに、駆動軸3は最終減速機8を介して左右の駆動輪9に連結されている。第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2とは、バッテリ、インバータ、又は適宜のコントローラ(図1参照)を介して、もしくは直接的に電気的に接続され、第1のモータジェネレータMG1で生じた電力で第2のモータジェネレータMG2を駆動するように構成されている。
エンジン1は燃料を燃焼して動力を発生する熱機関であり、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどが挙げられる。第1のモータジェネレータMG1はエンジン1からトルクを受けて回転することにより主として発電を行うものであり、発電に伴うトルクの反力が作用する。第1のモータジェネレータMG1の回転数を制御することにより、エンジン1のエンジン回転数が連続的に変化する。このような変速モードを無段変速モードという。 第2のモータジェネレータMG2は、駆動力又はブレーキ力を補助(アシスト)する装置である。駆動力をアシストする場合、第2のモータジェネレータMG2は電力の供給を受けて電動機として機能する。一方、ブレーキ力をアシストする場合には、第2のモータジェネレータMG2は、駆動輪9から伝達されるトルクにより回転させられて電力を発生する発電機として機能する。
動力分配機構20は、いわゆるシングルピニオン型の遊星歯車機構であり、リングギヤR1、キャリアC1、サンギヤS1、を備える。キャリアC1は、リングギヤR1とサンギヤS1との両方に噛み合っているピニオンギヤCP1を保持している。
エンジン1の出力軸2は第1の遊星歯車機構のキャリアC1に連結されている。第1のモータジェネレータMG1のロータ11の一端は第1の遊星歯車機構のサンギヤS1に連結されている。リングギヤR1は駆動軸3に連結されている。
第1のモータジェネレータMG1のロータ11の他端はロック機構7に連結されている。ロック機構7は、クラッチ7a、アクチュエータ7b、を有する。クラッチ7aにおいて、一方のクラッチ板はケースなどに固定され、他方のクラッチ板は第1のモータジェネレータMG1のロータ11に連結されている。ロック機構7は、アクチュエータ7bを用いてクラッチ7aを係合及び解放することが可能に構成されている。ロック機構7は、クラッチ7aを係合することにより、第1のモータジェネレータMG1のロータ11を固定し、動力分配機構20のサンギヤS1を固定する。また、ロック機構7は、クラッチ7aの係合を解放することにより、第1のモータジェネレータMG1のロータ11を解放し、動力分配機構20のサンギヤS1を解放する。ロック機構7は、ECU5から送信された制御信号Sig5に基づいて、クラッチ7aの係合/解放を制御する。
ロック機構7がクラッチ7aを解放している状態では、第1のモータジェネレータMG1の回転数を連続的に変化させることによりエンジン1のエンジン回転数が連続的に変化し、無段変速モードが実現される。一方、ロック機構7がクラッチ7aを係合している状態では、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1のエンジン回転数が駆動軸3の回転数より小さくなる状態)に固定され、固定変速モードが実現される。
電源ユニット30は、インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34を備える。第1のモータジェネレータMG1は電源線37によりインバータ31に接続されており、第2のモータジェネレータMG2は電源線38によりインバータ31に接続されている。また、インバータ31はコンバータ32に接続され、コンバータ32はHVバッテリ33に接続されている。さらに、HVバッテリ33はコンバータ34を介して補機バッテリ35に接続されている。
インバータ31は、モータジェネレータMG1及びMG2との間で電力の授受を行う。モータジェネレータの回生時には、インバータ31はモータジェネレータMG1及びMG2が回生により発電した電力を直流に変換し、コンバータ32へ供給する。コンバータ32は、インバータ31から供給される電力を電圧変換し、HVバッテリ33を充電する。一方、モータジェネレータの力行時には、HVバッテリ33から出力される直流電力はコンバータ32により昇圧されてインバータ31へ供給され、電源線37又は38を介してモータジェネレータMG1又はMG2へ供給される。
HVバッテリ33の電力はコンバータ34により電圧変換されて補機バッテリ35に供給され、各種の補機の駆動に使用される。
インバータ31、コンバータ32、HVバッテリ33及びコンバータ34の動作はECU4により制御されている。ECU4は制御信号Sig4を送信することにより、電源ユニット30内の各要素の動作を制御する。また、電源ユニット30内の各要素の状態などを示す必要な信号は制御信号Sig4としてECU4に供給される。具体的には、HVバッテリ33のバッテリ残存容量を示すSOC(State Of Charge)及びバッテリの入出力制限値などは制御信号Sig4としてECU4に供給される。
ECU4は、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2との間で制御信号Sig1〜Sig3を送受信することにより、それらを制御し、ロック機構7に制御信号Sig5を送信することにより、ロック機構7を制御する。例えば、ECU4は、図示しないアクセルペダルからの制御信号に基づいて、アクセル開度を検出して要求駆動力を求め、駆動力が当該要求駆動力となるように、エンジン1、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2、を制御する。また、このとき、ECU4は、エンジン1のエンジントルクと、第1のモータジェネレータMG1の反力トルクと、に基づいて、ロック機構7を制御する。従って、ECU4は、本発明における制御手段として機能する。
(制御方法)
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御方法について説明する。
まず、図2を参照して、無段変速モード、及び、固定変速モード、におけるハイブリッド車両の動作状態について説明する。図2は、無段変速モード及び固定変速モードにおける共線図の一例を示している。図2(a)、(b)において、上下方向は回転数に対応しており、上方向が正回転に対応する。
図2(a)における直線A1a、A1b、A1cは無段変速モードにおける共線図の一例を示している。無段変速モードの場合には、エンジン1のエンジントルクTKEに対応する反力トルクが、第1のモータジェネレータMG1よりトルクTK1として出力される。なお、トルクTK2は、第2のモータジェネレータMG2より出力されるトルクを示している。無段変速モードでは、第1のモータジェネレータMG1の回転数を増減変化させることにより、エンジン1のエンジン回転数を連続的に制御することが可能である。駆動軸3の回転数がN1であるとした場合において、例えば、第1のモータジェネレータMG1の回転数を白丸m1、m2、m3と順次変化させた場合には、エンジン1のエンジン回転数は、白丸Ne1(>N1)、Ne2(=N1)、Ne3(<N1)と順次変化する。つまり、エンジン1のエンジン回転数は、駆動軸3の回転数よりも高い値、等しい値及び低い値に順次変化する。このとき、第1のモータジェネレータMG1は発電し、インバータ31を介して、駆動軸3のアシストを行う第2のモータジェネレータMG2に電力を供給する。つまり、無段変速モードでは、エンジン1からの出力は、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達されるルートと、第1のモータジェネレータMG1から駆動軸3のアシストを行う第2のモータジェネレータMG2へ電気的に伝達されるルートと、の2つのルートで、駆動軸3へ伝達される。
図2(b)における直線A2は固定変速モードにおける共線図の一例を示している。固定変速モードの場合には、ロック機構7が第1のモータジェネレータMG1のロータ11を固定するとともにサンギヤS1を固定している状態となるため、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1のエンジン回転数Ne4が駆動軸3の回転数N1より小さくなる状態)に固定される。このとき、ロック機構7が第1のモータジェネレータMG1のロータ11を固定することにより、第1のモータジェネレータMG1は発電機及び電動機のいずれとしても機能しないため、第1のモータジェネレータMG1から第2のモータジェネレータMG2に電力が供給されない。従って、固定変速モードでは、エンジン1からの出力は、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達されるルートでのみ、駆動軸3へ伝達される。
ここで、エンジン1が、例えばディーゼルエンジンのように比較的高トルクを出力することが可能なエンジンの場合には、エンジン1のエンジントルクが、中速度から高速度域で比較的大きくなりやすい。そのため、中速度から高速度域において、変速モードを無段変速モードにした場合には、エンジントルクに対応する反力トルクが、第1のモータジェネレータMG1の出力可能なトルクの上限を超える可能性がある。ここで、もし、エンジン1のエンジントルクが比較的大きくなった場合であっても、それに対応して反力トルクを第1のモータジェネレータMG1に出力させようとした場合には、第1のモータジェネレータMG1の発電容量を大きくする必要があるため、第1のモータジェネレータMG1は大型化してしまう。
また、無段変速モードでは、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達されるルートと、第1のモータジェネレータMG1から第2のモータジェネレータMG2へと電気的に伝達されるルートと、の2つのルートでエンジン1からの出力が駆動軸3へ伝達される。従って、たとえ、第1のモータジェネレータMG1が大型化された場合であっても、中速度から高速度域において、変速モードが無段変速モードに設定されると、固定変速モードに設定された場合と比較して、伝達損失が大きくなり、燃費が悪化する。
そこで、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置では、ECU4は、エンジン1のエンジントルクに対応する反力トルクが第1のモータジェネレータMG1の出力可能なトルクの上限を超えた場合には、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えることとする。以下、図3を用いて具体的に説明する。
図3は、エンジン1がディーゼルエンジンの場合における、エンジン1の動作点を示す図であり、縦軸がエンジントルクを示し、横軸がエンジン回転数を示している。図3には、無段変速モードの場合におけるエンジン1の動作線(以下、「CVT動作線」と称する)Lcv、等パワー線Lp1〜Lp3を示している。ここで、CVT動作線Lcvは、具体的には、燃費の向上やNOxの排出抑制の観点から最適となるように規定されている。また、動作点の領域として固定変速モードに設定される領域を固定変速モード領域ArDとして示している。
図3に示すように、CVT動作線Lcv上では、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecが最大値となっている。つまり、トルクTKecは、無段変速モードの場合において、第1のモータジェネレータMG1の出力可能なトルク上限の反力トルクに対応するエンジントルクを示している。言い換えると、エンジン1のエンジントルクがトルクTKecを超えると、当該エンジントルクに対応する反力トルクが第1のモータジェネレータMG1の出力可能なトルクの上限を超える。以下では、トルクTKecを「反力上限エンジントルク」と称することもある。また、図3において、トルクTKesは、エンジン1のエンジントルクの最大値(以下、「最大エンジントルク」と称する)を示している。ディーゼルエンジンのように高トルクを出力可能なエンジンでは、図3に示すように、最大エンジントルクTKesが、反力上限エンジントルクTKecよりも大きくなる。
図3に示すように、エンジン1のエンジントルクが反力上限エンジントルクTKecを超える領域は、固定変速モード領域ArDとなっている。ECU4は、エンジン1の動作点が固定変速モード領域ArD内に位置する場合には、固定変速モードに設定する。この固定変速モード領域ArDは、無段変速モードの場合と比較して、固定変速モードの方が、燃費を向上させることができる領域である。従って、無段変速モードの場合において、エンジントルクが反力上限エンジントルクTKecを超えて、例えば、動作点を点Pc1から点Ps1に移動させる場合には、ECU4は、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えることとする。このようにすることで、エンジン1のエンジントルクが反力上限エンジントルクTKecを超えるような場合において、エンジン1のエンジントルクに対応した反力トルクを第1のモータジェネレータMG1に出力させる必要がなくなり、第1のモータジェネレータMG1を大型化せずに済み、燃費の向上を図ることができる。
なお、図3に示す例では、エンジン1のエンジントルクが反力上限エンジントルクTKecよりも小さくなる動作点の領域の一部も領域ArDとしている。この領域は、エンジン1のエンジントルクが反力上限エンジントルクTKecよりも小さくなる場合であっても、無段変速モードの場合と比較して、固定変速モードの方が燃費を向上させることができる領域である。従って、例えば、等パワー線Lp3上において、無段変速モードとして動作点が点Pc3に位置する場合と、固定変速モードとして動作点が点Ps3に位置する場合と、では、固定変速モードとして動作点が点Ps3に位置する場合の方が、燃費を向上させることができる。
また、先にも述べたように、エンジン1の最大エンジントルクTKesは、反力上限エンジントルクTKecと比較して大きくなっている。そこで、本実施形態では、固定変速モードの状態において、加速要求があった場合には、ECU4は、無段変速モードに切り換えるのではなく、固定変速モードのまま、エンジン1のエンジントルクを上昇させることとする。これにより、無段変速モードに切り換えた場合と比較して、燃費の向上を図ることができるとともに、出力を上昇させるためにエンジン回転数を上昇させる必要がなくなり、ドライバビリティの向上も図ることができる。
ここで、固定変速モードの状態で、エンジン1の最大エンジントルクTKesを超えるような要求駆動力があった場合について説明する。
エンジン1の最大エンジントルクTKesを超えるような要求駆動力があった場合には、ECU4は、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換えることとする。例えば、固定変速モードの状態で動作点が点Ps1にあった場合において、エンジン1の最大エンジントルクTKesを超えるような要求駆動力があった場合には、ECU4は、動作点を点Ps1から点Pc1へと移動させ、無段変速モードに切り換える。このようにすることで、エンジン1の出力の一部を第2のモータジェネレータMG2による出力トルクとして得ることができるので、高速走行時において、所望の駆動力を円滑に出力することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
しかしながら、ここで、エンジン1の最大エンジントルクTKesを超えるような要求駆動力があった場合において、常に、固定変速モードから無段変速モードへと切り換えるとした場合には、頻繁に変速モードが切り換わる恐れがあり、ドライバビリティの観点からすると好ましくない。
そこで、エンジン1の最大エンジントルクTKesを超えるような要求駆動力があった場合において、ECU4は、固定変速モードから無段変速モードへと常に切り換えるとする代わりに、エンジン1の最大エンジントルクTKesと第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクとに基づいて、固定変速モードの状態で要求駆動力を満たすことが可能か否かを判定し、その結果に基づいて、固定変速モードから無段変速モードへと切り換えるとしても良い。
具体的には、まず、ECU4は、アクセル開度などに基づいて、要求駆動力を求め、エンジン1の最大エンジントルクTKesと、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクと、により要求駆動力を満たすことが可能であるか否かについて判定する。例えば、ECU4は、要求駆動力から最大エンジントルクTKesを引いた値が、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクの上限以下になっているか否かについて判定し、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクの上限以下になっていると判定した場合には、エンジン1の最大エンジントルクTKesと、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクと、により要求駆動力を満たすことが可能であると判定する。
ECU4は、エンジン1の最大エンジントルクTKesと、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクと、により要求駆動力を満たすことが可能であると判定した場合には、無段変速モードに切り換えずに、固定変速モードのまま、エンジン1のエンジントルクを最大エンジントルクTKesにするとともに、駆動力の足りない分を、第2のモータジェネレータMG2の出力トルクによってアシストすることとする。このとき、第2のモータジェネレータMG2には、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が供給される。
逆に言うと、ECU4は、エンジン1の最大エンジントルクTKesと、第2のモータジェネレータMG2の出力可能なトルクと、により要求駆動力を満たすことが不可能であると判定した場合にのみ、固定変速モードから無段変速モードへと切り換えることとする。このようにすることで、変速モードが頻繁に切り換わるのを防ぐことができ、ドライバビリティを向上させることができる。
ここで、上述の実施形態では、エンジン1としてディーゼルエンジンが用いられるとしたが、これに限られない。要は、最大エンジントルクTKesが、反力上限エンジントルクTKecよりも大きくなるエンジンであれば、本発明を適用可能である。このような性質を有するエンジンとしては、ディーゼルエンジンの他、例えば、過給機付きのガソリンエンジンや大排気量のガソリンエンジンなどが挙げられる。従って、本実施形態に係るハイブリッド車両のエンジン1としては、ディーゼルエンジンに限られるものではなく、代わりに、過給機付きのガソリンエンジンや大排気量のガソリンエンジンであっても良い。
(変速モード切換方法)
次に、変速モードの切換方法について具体的に説明する。
まず、最初に、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換える場合について、図3における動作点を点Ps2から点Pc2へと移動させる場合の例を用いて説明する。図3に示すように、動作点が点Ps2に位置する場合には、エンジン1のエンジントルク及びエンジン回転数は、最大エンジントルクTKes及び回転数Nesとなっており、変速モードは固定変速モードとなっている。動作点が点Pc2に位置する場合には、エンジン1のエンジントルク及びエンジン回転数は、反力上限エンジントルクTKec及び回転数Necとなっており、変速モードは無段変速モードとなっている。
図4は、固定変速モード及び無段変速モードにおける共線図の一例を示している。図4において、上下方向は回転数に対応しており、上方向が正回転に対応する。
直線As1は、図3における動作点が点Ps2に位置する場合の共線図を示している。図3における動作点が点Ps2に位置しているので、エンジン1のエンジントルクはトルクTKesとなっており、エンジン回転数は回転数Nesとなっている(図3参照)。また、このとき、固定変速モードとなっているので、第1のモータジェネレータMG1の回転数は0となっている。なお、このとき、第2のモータジェネレータMG2の回転数(駆動軸3の回転数)はNmg2とし、変速モードの切り換えの前後において、一定に保たれるものとする。また、固定変速モードの場合において、第2のモータジェネレータMG2による駆動力アシストは行われていないものとする。
直線Ac1は、図3における動作点が点Pc2に位置する場合の共線図を示している。図3における動作点が点Pc2に位置しているので、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecとなっており、エンジン回転数は回転数Necとなっている(図3参照)。このとき、無段変速モードとなっているので、第1のモータジェネレータMG1の回転数は、回転数Nmg1となっている。回転数Nmg1は、エンジン1のエンジン回転数Necと、第2のモータジェネレータMG2の回転数(駆動軸3の回転数)Nmg2と、より規定される。また、第1のモータジェネレータMG1より、エンジン1のエンジントルクTKecに対応する反力トルクTKmg1が出力されている。
図5、図6は夫々、固定変速モードから無段変速モードへと切り換える場合のエンジン及びモータジェネレータの時間に対する動作変化の一例を示している。具体的には、上述の図4でいうと、共線図が直線As1から直線Ac1へと変化する場合を示している。
まず、図5に示すエンジン及びモータジェネレータの動作について説明する。図5に示す例では、固定変速モードから無段変速モードへと切り換える際において、エンジン1の動作点を等パワー線Lp2に沿って点Ps2から点Pc2へ変化させることとする。
図5(a)はエンジン1のトルク(エンジントルク)及び回転数(エンジン回転数)の時間に対する変化を示している。図5(b)は第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図5(c)は第2のモータジェネレータMG2の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図5(a)〜図5(c)において、一点鎖線はトルクの時間変化を示し、実線は回転数の時間変化を示している。
時刻t1までは、固定変速モード、即ち、ロック機構7においてクラッチ7aが係合された状態となっている。そのため、時刻t1までは、第1のモータジェネレータMG1のロータ11は固定されているので、第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数は0となる(図5(b)参照)。また、時刻t1までは、エンジン1のエンジントルク及びエンジン回転数は、図3における動作点Ps2に対応するトルク及び回転数となっている。即ち、エンジン1のエンジントルクは最大エンジントルクTKesとなっており、エンジン1のエンジン回転数は回転数Nesとなっている(図5(a)参照)。また、図5に示す例では、時刻t1までは、固定変速モードとなっているので、第2のモータジェネレータMG2によって駆動力はアシストされていない。従って、時刻t1まで、第2のモータジェネレータMG2の出力トルクは0となる。なお、第2のモータジェネレータMG2の回転数Nmg2は、駆動軸3の回転数と等しくなっており、変速モードが切り換えられる間、一定に保たれる(図5(c)参照)。
時刻t1から時刻t2において、エンジン1のエンジントルクはトルクTKesから徐々に低下するように制御され、エンジン1のエンジン回転数は回転数Nesから徐々に上昇するように制御される(図5(a)参照)。具体的には、図3において、動作点が、等パワー線Lp2に沿って点Ps2から点Pc2へと移動するように制御される。
また、時刻t1から時刻t2において、ロック機構7におけるクラッチ7aは解放された状態となるものの、完全に解放された状態とはならない。即ち、ロック機構7は、クラッチ7aのクラッチ板同士が滑るように、即ち、クラッチ7aの状態としてはいわゆる半クラッチに近い状態となるように制御される。従って、時刻t1から、エンジン1のエンジントルクを受けるために、第1のモータジェネレータMG1は反力トルクTKmg1を出力し始める。また、ロック機構7は、クラッチ7aのクラッチ板同士が滑るように制御されるので、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間には摩擦力が発生する。そのため、時刻t1より、第1のモータジェネレータMG1の回転数は0から徐々に上昇する(図5(b)参照)。このように、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間に摩擦力を発生させて、第1のモータジェネレータMG1の回転数を0から徐々に上昇させることにより、エンジン1のエンジン回転数が急激に上昇する、いわゆる吹き上がりを防ぐことができる。
また、時刻t1から時刻t2において、駆動力を一定に保持するため、エンジン1のエンジントルクがトルクTKesから低下するのに伴い、第2のモータジェネレータの出力トルクは0から徐々に上昇するように制御される(図5(c)参照)。つまり、時刻t1から、第2のモータジェネレータMG2は駆動力のアシストを開始する。このとき、第2のモータジェネレータMG2は、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が供給される。
時刻t2以降では、ロック機構7は、クラッチ7aが完全に解放された状態となるように制御され、無段変速モードとなる。このとき、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecとなり、エンジン1のエンジン回転数はNecとなる(図5(a)参照)。即ち、図3で言うと、動作点が点Pc2に到達する。第1のモータジェネレータMG1の回転数は、完全に上昇して、回転数Nmg1に到達する(図5(b)参照)。回転数Nmg1は、図4で述べたように、エンジン1のエンジン回転数Nesと第2のモータジェネレータMG2の回転数(駆動軸3の回転数)Nmg2とで規定される回転数である。このとき、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により第2のモータジェネレータMG2はトルクTKmg2を出力している。つまり、第2のモータジェネレータに供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われる。
図5(d)は、駆動力における各トルクの割合の時間に対する変化を示している。図5(d)において、「エンジンより直接伝達されるトルク」とは、エンジン1のエンジントルクのうち、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達される分のトルクを示している。「エンジンより電気パスで伝達されるトルク」とは、エンジン1のエンジントルクのうち、第1のモータジェネレータMG1から第2のモータジェネレータMG2へと電気的に伝達される分のトルク、即ち、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により第2のモータジェネレータMG2が駆動軸3に出力するトルクを示している。「HVバッテリからの蓄積電力によるトルク」とは、HVバッテリ33に予め蓄積された電力により第2のモータジェネレータMG2が駆動軸3に出力するトルクを示している。
図5(d)にも示すように、時刻t1からt2では、第2のモータジェネレータMG2がトルクを駆動軸3に出力し始めるので、このとき、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が第2のモータジェネレータMG2に供給される。ただし、このとき、第1のモータジェネレータMG1は、反力トルクTKmg1を出力し、回転数も徐々に上昇するので、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によってHVバッテリ33は充電される。そのため、時間の経過に伴って、第2のモータジェネレータMG2に供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により次第に賄われるようになる。時刻t2以降では、第1のモータジェネレータMG1は、反力トルクTKmg1を出力するとともに、回転数は回転数Nmg1となり、第2のモータジェネレータに供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われ、HVバッテリ33に蓄積された電力量が殆ど減少しない状態となる。
以上の図5で述べた方法を用いることにより、駆動力を一定に保持しつつ、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換えることができ、エンジン1の出力の一部を第2のモータジェネレータMG2による出力トルクとして得ることができる。これにより、高速走行時において、所望の駆動力を円滑に出力することが可能となり、ドライバビリティの向上を図ることができる。
次に、図6に示すエンジン及びモータジェネレータの動作について説明する。図6に示す例では、固定変速モードから無段変速モードへと切り換える際において、エンジン1のエンジントルクの大きさを、第1のモータジェネレータMG1の出力可能な反力トルクに対応するエンジントルクの大きさまで低下させた後、エンジン1のエンジン回転数を上昇させることとする。
図6(a)はエンジン1のトルク(エンジントルク)及び回転数(エンジン回転数)の時間に対する変化を示している。図6(b)は第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図6(c)は第2のモータジェネレータMG2の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図6(a)〜図6(c)において、一点鎖線はトルクの時間変化を示し、実線は回転数の時間変化を示している。
時刻t1までは、固定変速モード、即ち、ロック機構7においてクラッチ7aが係合された状態となっている。そのため、時刻t1までは、第1のモータジェネレータMG1のロータ11は固定されているので、第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数は0となる(図6(b)参照)。また、時刻t1までは、エンジン1のエンジントルク及び回転数は、図3における動作点Ps2に対応するトルクTKes及び回転数Nesとなっている(図6(a)参照)。また、時刻t1までは、固定変速モードとなっているので、第2のモータジェネレータMG2によって駆動力はアシストされていない。従って、時刻t1まで、第2のモータジェネレータMG2の出力トルクは0となる。なお、第2のモータジェネレータMG2の回転数Nmg2は、駆動軸3の回転数と等しくなっており、変速モードが切り換えられる間、一定に保たれる(図6(c)参照)。
時刻t1から時刻t2では、エンジン1のエンジントルクが、トルクTKesから、第1のモータジェネレータMG1の出力可能な反力トルクTKmg1に対応するエンジントルクTKecまで低下するように制御された後、エンジン1のエンジン回転数が回転数Nesから徐々に上昇するように制御される(図6(a)参照)。また、ロック機構7は、クラッチ7aのクラッチ板同士が滑るように制御されるため、時刻t1より、第1のモータジェネレータMG1は、エンジン1のエンジントルクを受けるために反力トルクTKmg1を出力する。このとき、クラッチ7aのクラッチ板の間には摩擦力が発生するので、第1のモータジェネレータMG1の回転数は0から徐々に上昇する(図6(b)参照)。これにより、エンジン1のエンジン回転数が急激に上昇する、いわゆる吹き上がりを防ぐことができる。
また、時刻t1から時刻t2において、また、駆動力を一定に保持するため、エンジン1のエンジントルクの低下に応じて、第2のモータジェネレータの出力トルクが0からTKmg2まで上昇するように制御され(図6(c)参照)、第2のモータジェネレータMG2による駆動力のアシストが開始される。このとき、第2のモータジェネレータMG2は、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が供給される。
時刻t2以降では、ロック機構7は、クラッチ7aが完全に解放された状態となるように制御され無段変速モードとなる。このとき、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecとなり、エンジン1のエンジン回転数はNecとなる(図6(a)参照)。即ち、図3で言うと、動作点が点Pc2に到達する。第1のモータジェネレータMG1は、エンジン1のエンジン回転数Necと駆動軸3の回転数Nmg2とで規定される回転数Nmg1に達する(図6(b)参照)。また、第2のモータジェネレータMG2はトルクTKmg2を出力して駆動力のアシストを継続しているが、このときの第2のモータジェネレータMG2に供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われている。
図6(d)は、駆動力における各トルクの割合の時間に対する変化を示している。図6(d)にも示すように、時刻t1からt2では、第2のモータジェネレータMG2がトルクTKmg2を駆動軸3に出力し始めるので、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が第2のモータジェネレータMG2に供給される。ただし、このとき、第1のモータジェネレータMG1は、反力トルクTKmg1を出力し、回転数も徐々に上昇するので、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によってHVバッテリ33は充電される。そのため、時間の経過に伴って、第2のモータジェネレータMG2に供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により次第に賄われるようになる。時刻t2以降では、第1のモータジェネレータMG1は、反力トルクTKmg1を出力するとともに、回転数は回転数Nmg1となり、第2のモータジェネレータに供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われ、HVバッテリ33に蓄積された電力量が殆ど減少しない状態となる。
以上の図6で述べた方法を用いても、駆動力を一定に保持しつつ、固定変速モードから無段変速モードへと変速モードを切り換えることができ、エンジン1の出力の一部を第2のモータジェネレータMG2による出力トルクとして得ることができる。これにより、高速走行時において、所望の駆動力を円滑に出力することが可能となり、ドライバビリティの向上を図ることができる。
次に、無段変速モードから固定変速モードへと切り換える場合について、図3における動作点を点Pc2から点Ps2へと移動させる場合の例を用いて説明する。以下、図7〜図8を用いて具体的に説明する。
図7、図8は夫々、無段変速モードから固定変速モードへと切り換える場合のエンジン及びモータジェネレータの時間に対する動作変化の一例を示している。具体的には、先に述べた図4でいうと、共線図が直線Ac1から直線As1へと変化するときの例を示している。
まず、図7に示すエンジン及びモータジェネレータの動作について説明する。図7に示す例では、無段変速モードから固定変速モードへと切り換える際において、エンジン1の動作点を等パワー線Lp2に沿って点Pc2から点Ps2へ変化させることとする。
図7(a)はエンジン1のトルク(エンジントルク)及び回転数(エンジン回転数)の時間に対する変化を示している。図7(b)は第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図7(c)は第2のモータジェネレータMG2の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図7(a)〜図7(c)において、一点鎖線はトルクの時間変化を示し、実線は回転数の時間変化を示している。
時刻t1までは、無段変速モード、即ち、ロック機構7においてクラッチ7aが解放された状態となっている。このとき、エンジン1のエンジントルク及び回転数は、図3における動作点Pc2に対応するトルク及び回転数となっている。即ち、エンジン1のエンジントルクはエンジントルクTKecとなっており、エンジン1のエンジン回転数は回転数Necとなっている(図7(a)参照)。第1のモータジェネレータMG1は、エンジントルクTKecに対応する反力トルクTKmg1を出力し、その回転数は回転数Nmg1となっている(図7(b)参照)。また、時刻t1までは、第2のモータジェネレータMG2はトルクTKmg2を出力することにより駆動軸3をアシストしている。このとき、第2のモータジェネレータに供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われている。なお、第2のモータジェネレータMG2の回転数Nmg2は、駆動軸3の回転数と等しくなっており、変速モードが切り換えられる間、一定に保たれる(図7(c)参照)。
時刻t1から時刻t2では、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecから徐々に上昇するように制御され、エンジン1のエンジン回転数は回転数Necから徐々に低下するように制御される(図7(a)参照)。具体的には、図3において、動作点が、等パワー線Lp2に沿って点Pc2から点Ps2へと移動するように制御される。
また、時刻t1から時刻t2では、ロック機構7は、クラッチ7aのクラッチ板同士が滑るように、即ち、クラッチ7aの状態としてはいわゆる半クラッチに近い状態となるように制御される。従って、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間には摩擦力が発生する。時刻t1から時刻t2において、クラッチ7aにおけるアクチュエータ7bの油圧は次第に大きくなるように制御されるため、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間の摩擦力は次第に大きくなる。そのため、時刻t1から時刻t2では、第1のモータジェネレータMG1の回転数はNmg1から徐々に低下する(図7(b)参照)。
また、時刻t1から時刻t2において、第2のモータジェネレータの出力トルクは、第1のモータジェネレータMG1の出力が低下して発電量も低下するのに伴い、TKmg2から徐々に低下する(図7(c)参照)。ここで、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecから徐々に上昇し、第2のモータジェネレータの出力トルクはトルクTKmg2から徐々に低下するので、駆動力全体としては一定に保たれる。
時刻t2において、エンジン1のエンジン回転数は回転数Nesとなるので(図7(a)参照)、図4の共線図に示したように、第1のモータジェネレータMG1の回転数は0に近づく(図4参照)。従って、このとき、ショックを発生させることなく、ロック機構7におけるクラッチ7aを完全に係合すること、即ち、固定変速モードへ切り換えることが可能となる。つまり、エンジン1のエンジン回転数を回転数Nesまで低下させることにより、第1のモータジェネレータMG1の回転数を0に近づけることができ、固定変速モードへ切り換えることが可能となる。ロック機構7におけるクラッチ7aが完全に係合されると、変速モードは固定変速モードとなり、第1のモータジェネレータMG1の出力トルクは0となる(図7(b)参照)。
また、時刻t2において、エンジン1のエンジントルクはトルクTKesに到達する(図7(a)参照)。従って、このとき、図3で言うと、動作点が点Ps2に到達する。また、本実施例では、固定変速モードの場合、第2のモータジェネレータMG2によって駆動力がアシストされないので、時刻t2以降、第2のモータジェネレータMG2の出力トルクは0となる(図7(c)参照)。
図7(d)は、駆動力における各トルクの割合の時間に対する変化を示している。図7(d)にも示すように、時刻t1までは、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により第2のモータジェネレータMG2はトルクを出力している。時刻t1からt2では、第2のモータジェネレータMG2のトルクが徐々に低下するように制御される。また、時刻t1からt2では、ロック機構7におけるクラッチ7aの係合力が徐々に大きくなるように、かつ、エンジン1のエンジントルクが徐々に上昇するように制御される。そのため、時刻t1からt2では、エンジン1より直接伝達されるトルクの割合、即ち、エンジン1のエンジントルクのうち、動力分配機構20を介して駆動軸3に直接伝達される分のトルクの割合が上昇する。時刻t2において、変速モードは固定変速モードに完全に切り換えられるので、エンジン1より直接伝達されるトルクにより駆動力は賄われる。
以上の図7で述べた方法を用いることにより、駆動力を一定に保持しつつ、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えることができ、燃費を向上させることができる。
次に、図8に示すエンジン及びモータジェネレータの動作について説明する。図8に示す例では、無段変速モードから固定変速モードへと切り換える際において、エンジン1のエンジントルクの大きさを、第1のモータジェネレータMG1の出力可能な反力トルクに対応するエンジントルクの大きさに保持しつつ、エンジン1のエンジン回転数を固定変速モードに切り換え可能な回転数まで低下させた後、変速モードを切り換えて、エンジン1のエンジントルクを上昇させることとする。
図8(a)はエンジン1のトルク(エンジントルク)及び回転数(エンジン回転数)の時間に対する変化を示している。図8(b)は第1のモータジェネレータMG1の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図8(c)は第2のモータジェネレータMG2の出力トルク及び回転数の時間に対する変化を示している。図8(a)〜図8(c)において、一点鎖線はトルクの時間変化を示し、実線は回転数の時間変化を示している。
時刻t1までは、無段変速モード、即ち、ロック機構7においてクラッチ7aが解放された状態となっている。このとき、エンジン1のエンジントルク及び回転数は、図3における動作点Pc2に対応するトルクTKec及び回転数Necとなっている(図8(a)参照)。第1のモータジェネレータMG1は、エンジントルクTKecに対応する反力トルクTKmg1を出力し、その回転数は回転数Nmg1となっている(図8(b)参照)。また、時刻t1までは、第2のモータジェネレータMG2はトルクTKmg2を出力することにより駆動軸3をアシストしている。このとき、第2のモータジェネレータに供給される電力は、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力によって完全に賄われている。なお、第2のモータジェネレータMG2の回転数Nmg2は、駆動軸3の回転数と等しくなっており、変速モードが切り換えられる間、一定に保たれる(図8(c)参照)。
時刻t1から時刻t2では、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecに保持され、エンジン1のエンジン回転数は回転数Necから徐々に低下するように制御される(図8(a)参照)。このとき、ロック機構7は、クラッチ7a完全に係合された状態とはならず、クラッチ7aのクラッチ板同士が滑るように制御される。従って、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間には摩擦力が発生する。時刻t1から時刻t2において、クラッチ7aにおけるアクチュエータの油圧は次第に大きくなるように制御されるため、クラッチ7aにおけるクラッチ板の間の摩擦力は次第に大きくなる。そのため、時刻t1から時刻t2では、第1のモータジェネレータMG1の回転数はNmg1から徐々に低下する(図8(b)参照)。
また、時刻t1から時刻t2において、駆動力を一定に保持するために、第2のモータジェネレータの出力トルクはTKmg2に保持される(図8(c)参照)。このとき、第1のモータジェネレータMG1の出力は低下して発電量が低下するので、第2のモータジェネレータMG2には、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が供給される。
時刻t2において、エンジン1のエンジン回転数は回転数Nesとなるので(図8(a)参照)、図4の共線図に示したように、第1のモータジェネレータMG1の回転数は0となる(図4参照)。このとき、ショックを発生させることなく、ロック機構7におけるクラッチ7aを完全に係合することが可能となる。そして、ロック機構7におけるクラッチ7aが完全に係合されると、第1のモータジェネレータMG1の出力トルクは0となる(図8(b)参照)。ロック機構7におけるクラッチ7aが完全に係合された後、エンジン1のエンジントルクはトルクTKecより上昇してトルクTKesとなるように制御される。このときに、図3で言うと、動作点が点Ps2に到達する。また、本実施例では、固定変速モードの場合、第2のモータジェネレータMG2によって駆動力がアシストされないので、時刻t2以降においては、第2のモータジェネレータMG2の出力トルクは0に制御される。
図8(d)は、駆動力における各トルクの割合の時間に対する変化を示している。図8(d)にも示すように、時刻t1までは、第1のモータジェネレータMG1に発生した電力により第2のモータジェネレータMG2は一定のトルク(トルクTKmg2)を出力し、時刻t1からt2においても、そのまま一定に保持される。しかし、第1のモータジェネレータMG1の出力は低下して発電量が低下するので、第2のモータジェネレータMG2には、HVバッテリ33に予め蓄積された電力が供給される。第1のモータジェネレータMG1の発電量は徐々に低下するので、第2のモータジェネレータMG2に供給される電力として、HVバッテリ33に予め蓄積された電力の割合が次第に大きくなる。時刻t2において、変速モードは固定変速モードに完全に切り換えられるので、エンジン1より直接伝達されるトルクにより駆動力は賄われる。
以上の図8で述べた方法を用いても、駆動力を一定に保持しつつ、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えることができ、燃費を向上させることができる。
[変形例]
上述の実施形態では、動力分配機構20は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であるとしているがこれに限られない。代わりに、ダブルピニオン型の遊星歯車機構であるとしてもよい。即ち、キャリアC1は、リングギヤR1とサンギヤS1との両方に噛み合っているピニオンギヤCP1を保持する代わりに、サンギヤS1と噛み合うように構成されたインナーピニオンギヤと、当該インナーピニオンギヤ及びリングギヤR1と噛み合うように構成されたアウターピニオンギヤと、を保持するとしても良い。また、ピニオンギヤCP1としては、段差付きのピニオンギヤであるとしても良い。
また、本発明を適用することが可能なハイブリッド車両の機構としては、第1のモータジェネレータMG1のロータをロックすることにより固定変速モードを実現するものには限られない。代わりに、例えば、以下の図9で示すように、動力分配機構20の回転要素のうち、いずれか一つをブレーキにより固定することで固定変速モードを実現する機構であっても、本発明を適用することが可能である。
図9は、変形例に係るハイブリッド車両の概略構成を示すスケルトン図である。図9において、図1に示すハイブリッド車両と同様の機能を有する構成要素については、図1と同じ符号を付して示している。
変形例に係るハイブリッド車両において、エンジン1と、第1のモータジェネレータMG1とが動力分配機構20に連結されている。動力分配機構20の駆動軸3には、第2のモータジェネレータMG2が変速部6を介して駆動軸3に接続されている。
動力分配機構20は、エンジン1のエンジントルクを第1のモータジェネレータMG1と駆動軸3とに分配する機構であり、差動作用を生じるように構成されている。具体的には複数組の差動機構を備え、互いに差動作用を生じる4つの回転要素のうち、第1の回転要素にエンジン1が連結され、第2の回転要素に第1のモータジェネレータMG1が連結され、第3の回転要素に駆動軸3が連結される。第4の回転要素はブレーキ部7bkにより固定可能となっている。
動力分配機構20は、2つの遊星歯車機構を組み合わせて構成される。第1の遊星歯車機構はリングギヤR1、キャリアC1、サンギヤS1を備える。第2の遊星歯車機構はダブルピニオン式であり、リングギヤR2、キャリアC2、サンギヤS2を備える。
エンジン1の出力軸2は第1の遊星歯車機構のキャリアC1に連結され、そのキャリアC1は第2の遊星歯車機構のリングギヤR2に連結されている。これらが第1の回転要素を構成する。第1のモータジェネレータMG1のロータ11は第1の遊星歯車機構のサンギヤS1に連結され、これらが第2の回転要素を構成している。
第1の遊星歯車機構のリングギヤR1と第2の遊星歯車機構のキャリアC2は相互に連結されているとともに駆動軸3に連結されている。これらが第3の回転要素を構成している。また、第2の遊星歯車機構のサンギヤS2は回転軸29に連結されており、回転軸29とともに第4の回転要素を構成している。回転軸29はブレーキ部7bkにより固定可能となっている。ブレーキ部7bkはECU4により制御される。
ブレーキ部7bkが第4の回転要素を固定していない状態では、第1のモータジェネレータMG1の回転数を連続的に変化させることによりエンジン1のエンジン回転数が連続的に変化し、無段変速モードが実現される。一方、ブレーキ部7bkが第4の回転要素を固定している状態では、動力分配機構20により決定される変速比がオーバードライブ状態(即ち、エンジン1より出力される回転数が駆動軸3の回転数より小さくなる状態)に固定され、固定変速モードが実現される。
変形例に係るハイブリッド車両においても、本発明を適用することが可能である。即ち、第1のモータジェネレータの出力可能なトルク上限を超えるような反力トルクに対応するエンジントルクがエンジン1より出力された場合において、無段変速モードから固定変速モードへと変速モードを切り換えるとすることにより、第1のモータジェネレータMG1を大型化せずに済み、燃費を向上させることができる。
以上に述べたことから分かるように、要は、モータジェネレータより反力トルクを出力させ、エンジンの回転数と駆動軸の回転数との回転数比が連続的に変化する無段変速モードと、モータジェネレータより反力トルクを出力させずに、当該回転数比が固定となる固定変速モードと、を有するハイブリッド車両であれば、本発明のハイブリッド車両の制御装置を適用することが可能である。