JP5104413B2 - 缶用鋼板用原板の製造方法 - Google Patents
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Description
この問題に対しては、調質圧延後の鋼板コイルを、抜き取りで試験的にめっき工程に流したり、各鋼板コイルからサンプルを採取してめっき試験を行い事前に評価を行ったりしていたため、生産性の低下の原因となっていた。そのため、安定して、めっき原板の表面粗度を小さい範囲に制御できる技術の開発が求められていた。
始めに、めっき後の鋼板の光沢不良部と正常部とについて、めっき前(調質圧延後)の鋼板対応箇所の分析等により比較調査したが、板面粗度や付着物質を比較しても、その差を検出することはできなかった。
そこで次に、調質圧延に使用したロール表面の付着物を分析した結果、光沢の低い部分ではMnの検出量が多く、光沢の高い部分ではMnの検出量が少ないことがわかった。このことから、鋼中のMnが調質圧延前の焼鈍中に表面濃化し、該表面濃化したMnが、調質圧延に使用中のロールに堆積することにより微小な凹凸を形成し、この凹凸の転写により形成された板面の凹凸が、光の乱反射の違いから光沢不良(光沢差)を発生させることがわかった。
そこでさらに、光沢不良を招かずに所定の調質度を達成する手段を鋭意検討し、その結果、表面濃化せずに強度を確保しうる成分系として、B含有量を制御した成分系が、表面光沢の安定性向上に顕著な効果を発揮することを見出し、以下の要旨構成になる本発明をなすに至った。
(請求項1)
mass%で、C:0.0015〜0.0050%、Mn:0.2〜0.4%、Al:0.01〜0.12%、N:0.0010〜0.0070%、Nb:4×C〜20×C、B:0.04−0.08×Mn〜0.07−0.08×Mnを含み残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を、複数スタンドの圧延機にて、少なくとも第1スタンドの圧延ロールを粗度Ra0.6μm以下のスクラッチブライトロールとし、少なくとも最終スタンドの圧延ロールを粗度Ra0.5μm以下のブライトロールとして、調質圧延することを特徴とする缶用鋼板用原板の製造方法。
(請求項2)
請求項1に記載の製造方法で製造された缶用鋼板用原板にすずめっきを施すことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
(請求項3)
前記すずめっきを電気すずめっきとすることを特徴とする請求項2に記載の缶用鋼板の製造方法。
(対象鋼板の組成)
まず、調質圧延に供する鋼板の組成の限定理由について以下に説明する。以下の説明において、組成の成分含有量の単位はmass%であり、%と略記される。
C:0.0015〜0.0050%
すずめっきした缶用鋼板の光沢不良は、極低C材において主に発生する。そこで、本発明においては、対象材をCが0.0050%以下の極低C材に限定する。また、Cが0.0050%超では固溶Cが多くなりすぎて時効性等の材質劣化を引き起こし、また、固溶Cを固定するためのNb等の炭窒化物形成元素の増加を招くため実用上好ましくない。一方、精錬コストの観点からC量の下限を0.0015%とした。
Mn量が0.2%未満では熱間脆性を生じることがある。また、0.4%超においてはMnの表面濃化による光沢の不均一が発生する。それゆえ、Mn量は0.2〜0.4%の範囲とした。
Al:0.01〜0.12%
Al量が0.01%未満では脱酸効果が十分に得られない。また、NとAlNを形成することにより、鋼中の固溶Nを減少させる効果も十分に得られなくなる。一方、0.12%超になるとこの効果が飽和するばかりか、アルミナ等の介在物を生じやすくなる。よって、Al量は0.01〜0.12%の範囲とした。なお、好ましくは0.01〜0.10%の範囲である。
Nを0.0010%未満とすると、鋼の製造コストが上昇し、安定的な製造も困難になる。一方、Nが0.0070%を超えると溶接性を確保するために必要なB量が増加する。よって、N量は、0.0010〜0.0070%の範囲とした。なお、好ましくは0.0015〜0.10%の範囲である。
Nb:4×C〜20×C
Nbは非時効性を確保するために必要な元素である。NbはNbCを形成することで鋼中の固溶Cを減少させる働きがあるが、その効果を十分に発揮させるために、4×C(%)以上の添加量(添加後の鋼中含有量の意。以下同じ)が必要である。一方、Nb添加量が多すぎる(20×C(%)超である)と、固溶Cを減少させる働きが飽和するのに対して、再結晶温度を上昇させる欠点が生じる。したがって、Nb量は、4×C〜20×C(%)の範囲とする。
Bの一部は鋼中で固溶状態で存在することにより、固溶強化により鋼板の強度を上げる働きを持つ。本発明の最も重要な特徴は、MnをBに置き換えることで同等の硬さを維持しつつMn量を減少させることにある。Mnの減少による硬さの低下を補うために、等価となるB量として0.04−0.08×Mn〜0.07−0.08×Mn(%)の範囲とする。
(第1スタンドの圧延ロール)
調質圧延に際し、少なくとも第1スタンドの圧延ロールは、粗度Ra 0.6μm以下のスクラッチブライトロールとする必要がある。ダルロールや粗度Ra 0.6μm超のスクラッチブライトロールでは、圧延距離の増加に伴う光沢差の増加が大きくなる。なお、好ましくは粗度Ra 0.20μm以上である。粗度Ra 0.20μm以上とすると、調質度が未達となりにくい。ロール表面処理についてはとくに限定されないが、耐摩耗の面から例えばCrめっきを施してもよい。
(最終スタンドの圧延ロール)
所定のレベル以上の光沢度を確保するために、調質圧延の少なくとも最終スタンドの圧延ロールは粗度Ra 0.5μm以下のブライトロールとする必要がある。ブライトロールは、目標の粗度に応じてミラー、スクラッチのいずれでもよいが、粗度がRa 0.5μm超であると光沢度(めっき後含む)が確保できない。ロール表面処理についてはとくに限定されないが、耐摩耗の面から例えばCrめっきを施してもよい。
(全3スタンド以上の場合の第1および最終のスタンド以外のスタンドの圧延ロール)
調質圧延を全3スタンド以上の圧延機で行う場合、第1および最終のスタンド以外のスタンドの圧延ロールは、高光沢度を確保するために粗度Ra1.2μm以下のブライトロールが好ましい。より好ましくは、粗度Ra0.5〜0.6μmのブライトロールである。ロール表面処理についてはとくに限定されないが、耐摩耗の面から例えばCrめっきを施してもよい。
(調質圧延のその他の条件)
調質圧延は、鋼板の潤滑を行なう潤滑圧延としても、潤滑圧延を行なわないドライ圧延としてもよい。とくに本発明の効果はドライ圧延の場合に発揮されるのでドライ圧延とすることが好ましい。
(調質圧延後のめっき)
調質圧延後のめっきについては、缶用鋼板製造用として一般的な、すずめっき、Crめっき、あるいはこれらにNi下地処理やクロメート処理を施すなど、諸種のめっき法を適用することができるが、本発明の効果顕現性の面からは、すずめっきが好ましく、より好ましくは電気すずめっきである。
(光沢度)
光沢度は、光沢度計を用い入射角20°で測定した。鋼板の幅方向について光沢度を測定し、その測定データの最大値と最小値の平均値を光沢度とした。
光沢差の評価基準
A=(100t調質圧延後の光沢度)/(調質圧延開始時の光沢度)×100(%)
◎:A≧95%
○:95%>A≧90%
△:90%>A≧70%
×:70%>A≧50%
××:50%>A
また、原板の硬さを測定した。これらの結果を表1に併記した。
Claims (3)
- mass%で、C:0.0015〜0.0050%、Mn:0.2〜0.4%、Al:0.01〜0.12%、N:0.0010〜0.0070%、Nb:4×C〜20×C、B:0.04−0.08×Mn〜0.07−0.08×Mnを含み残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板を、複数スタンドの圧延機にて、少なくとも第1スタンドの圧延ロールを粗度Ra0.6μm以下のスクラッチブライトロールとし、少なくとも最終スタンドの圧延ロールを粗度Ra0.5μm以下のブライトロールとして、調質圧延することを特徴とする缶用鋼板用原板の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法で製造された缶用鋼板用原板にすずめっきを施すことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
- 前記すずめっきを電気すずめっきとすることを特徴とする請求項2に記載の缶用鋼板の製造方法。
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