JP3546605B2 - 缶用鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、合理的な缶用鋼板の製造方法に関し、特に、調質度T1〜T6、DR8〜DR10の全調質度および各種プレス加工法でつくられる2ピース缶(SDC: Shallow−Drawn Can, DRDC: Drawn & Redrawn Can, DTRC: Drawn & Thin Redrawn Can, DWIC: Drawing & Wall Ironing Can ),胴を接合してつくられる3ピース缶(Side Seam Soldered Can, Side Seam Welded Can, Thermoplastic Bonded Side Seam Can)などの使途に用いて好適であり、無地のフイルムを表裏両面にラミネートした後,あるいは缶外面相当は印刷済みのフイルムを,裏面には無地のフイルムをラミネートした後でも問題なく製缶でき,また,3ピース缶の製缶時における胴板の巻き方向が、圧延方向でも板幅方向でも支障がない、板幅方向に均一な材質を有する缶用鋼板を経済的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶用鋼板は、Sn,Ni,Cr等の各種めっきを施した後、製缶され、飲料缶、食缶等に使用される。特に、缶詰の95%以上を占める飲料缶の生産量は増加の一途をたどり,今日では、国民一人当たり1缶/日の飲料缶を消費するまでになってきた。このように大量消費財になってきた缶用鋼板の生産性を合理的に高めることは,地球環境的にも益々重要になってきている。
そして、この缶用鋼板において特筆すべきは、他の鋼板と比べて、極薄であることと、幅方向における均一な材質が必要であることである。
【0003】
ところで、上述した缶用鋼板を製造するために、従来から一般的に採用されてきた方法は、転炉,真空脱ガス処理法で成分を調整した低炭素鋼や極低炭素鋼の溶鋼を連続鋳造法で鋳片に凝固した後,鋳片の表面欠陥を除去し,加熱炉で再加熱した後,数機の粗圧延機でシートバーに圧延し,続いて仕上圧延機で数mm厚みの熱延鋼帯とした後,直ちに水冷して巻き取って熱延鋼板に仕上げ,これを酸洗,冷間圧延し,さらに焼鈍,調質圧延の後,前記各種めっきを行うものであった。
上記製造方法において,製造コスト及び品質の6割以上は,連続鋳造鋳片から熱延鋼帯を製造する段階で支配されるといってよい。従って,特にこの工程において、製造コスト及び品質の両方が満たされる合理的な製造方法を確立することが強く望まれていた。
このような観点から、連続鋳造鋳片を再加熱することなく直接熱間圧延する工程により製造することが可能になれば、省エネルギー、工程短縮になるので、製造コストの上から有利となる。
【0004】
さて、鋳片を直接熱間圧延するためには、解決すべき問題があり、そのうちの幾つかについては、これまでの努力によってかなりの部分が解決してきた。
まず最初に、無欠陥鋳片の製造技術の確立が挙げられる。すなわち、従来のように、連続鋳造鋳片をいったん冷却して表面欠陥を手入れ除去すると,鋳片の温度低下が大きく、加熱炉を通さずに直接圧延することが不可能となる。そのため、無欠陥鋳片が必要不可欠となり、底吹転炉での精錬と真空脱ガス処理による高清浄度鋼化,大容量タンディッシュ・垂直曲げ型連続鋳造機の採用,鋳型内湯面変動の鎮静化,浸漬ノズル吐出形状の最適化による溶鋼内吐出流の適正化,電磁ブレーキによる鋳型内溶鋼の流動制御,介在物吸収能に優れたモールドフラックスの採用等により解決が図られ,無欠陥鋳片の生産が可能になった。
【0005】
また、連続鋳造および熱延鋼帯の幅変更技術の確立も大きく寄与した。すなわち、従来の技術では、鋼板の様々な受注幅に能率よく対応できなかったが、スラブサイジングミルやスラブ幅プレスによる幅の大圧下技術の開発、仕上圧延機における異幅圧延を可能にするための,耐磨耗性高強度ロールの開発,ロールの局部磨耗防止技術の開発,局部磨耗したロールへのオンライン・ロールグラインダーの適用などにより、解決が図れるようになった。また,クラウン制御は,クロスロールの採用により大幅に改善ができ,仕上圧延での自由度,スケジュールフリー圧延技術の開発が進むとともに,鋼板の寸法精度も向上した。
【0006】
さらに、鋳片を直接熱間圧延するためには、鋳片温度の低下への対処技術の確立が必要である。連続鋳造後の鋳片温度が低く,そのまま加熱炉を通さずに熱間圧延すると,同一の鋳片でも鋳片温度が高い部分は大きく伸び,温度が低い部分は伸びにくくなり,竪ロールによる矯正の限界を超えて,直線的に圧延を行うことが難しかった。このほか、仕上圧延終了温度(FDT)は、良好なr値を得るためには、Ar点以上にすることが必要であると(例えば特開平4−333525)考えられており、熱間圧延時の温度を一定レベル以上に確保することが求められていた。
これらに対処するために,連鋳機と熱間圧延機とを直線的に直結、短絡配置し,その間を保熱・断熱する設備配列を基本にして,搬送あるいは圧延時での温度降下を小さくするための鋳片の大断面厚化、高速鋳造技術の開発,鋳片幅方向の中央部を重点的に水冷する水冷方式の採用,鋳造工程後半部における冷却を省略し,鋳片の持っている潜熱及び顕熱を有効利用することによる鋳片温度の高温化,さらに,鋳片温度の低下が大きい幅方向端部(幅端部)への加熱昇温などが活用されるようになった。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの従来の対処技術を適用しても、自動車用鋼板のような板厚が大きい鋼板へ熱間圧延するのに必要な温度は確保できるものの、板厚が小さい缶用鋼板へ熱間圧延するのに必要な温度を確保することは困難であった。
以上述べたように、設備的な技術開発が進んでも,再加熱を省略すれば,従来の再加熱法に比較して,低温圧延、低温巻き取りが避けられなかった。しかも、温度低下は、熱延鋼帯の幅端部、あるいはさらに鋼帯長さ方向の先端部、後端部で著しく、鋼帯内における材質の不均一やこれによってもたらされる鋼帯の形状不良が不可避であるという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は,従来技術が抱えていた上記問題点に鑑み、鋳片の再加熱を省略しても、鋼帯の幅方向において、均一な材質が得られる缶用鋼板の合理的な製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は,鋳片の再加熱を省略しても、幅方向の端5mmの位置から中央にかけて、硬さ、ランクフォード値(r値)などの材質が均一な缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は,鋳片の再加熱を省略しても、鋼帯の幅方向および長さ方向において、硬さ、ランクフォード値(r値)などの材質が均一で、しかも優れた製缶加工特性を有し、多様な製缶用途に供しうる缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題の解決に向けて、連鋳機と熱間圧延機とを直線的に直結、短絡配置した設備列を用い,鋳片を再加熱することなく缶用熱延鋼帯を製造す技術について研究した。特に、シートバーの均熱温度制御、仕上圧延機出側直後から巻き取りまでの冷却制御および鋼の成分組成などに着目して、直接圧延による缶用鋼板製造技術の原点に立ち返り鋭意研究した結果、これらの条件を適正に制御すれば、上記課題が解決可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
【0010】
(1) 鋼の成分組成が、C: 0.03wt %以下、 Si 0.03wt %以下、 Mn 0.05 0.30wt %、P: 0.02wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al 0.02 0.10wt %、N: 0.01wt %以下、O: 0.005wt %以下を含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる連続鋳造鋳片を、加熱炉を経由することなく直ちに熱間粗圧延し、粗圧延で得られたシートバーの両幅端部を加熱昇温することにより、圧延終了温度が鋼帯の全幅にわたってAr3変態点未満、(Ar3変態点−100℃)以上になるように熱間仕上げ圧延をした後、2〜 10 秒間放冷し、引き続き 100 ℃/ sec 以上の速度で冷却し、 700 ℃以下の温度で巻き取り、その後、冷間圧延、焼鈍および調質圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
(2) 上記連続鋳造鋳片は、上記成分組成に加えてさらに、 Nb 0.10wt %以下、 Ti 0.20wt %以下及びB: 0.005wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記 (1) に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0011】
(3) 熱間粗圧延で得られたシートバーを先行するシートバーと接合した後、両幅端部を加熱昇温する、上記(1)または (2)に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0013】
(4) 熱間仕上げ圧延を仕上げ板厚2.0 mm以下とし、冷間圧延を圧下率90%以下とする上記(1) 〜(3) のいずれか1つに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
発明者らは、先ずはじめに、従来から既知の方法、すなわち連鋳機と熱間圧延機を単に直線的に直結、短絡配置した設備列を用い,再加熱を省略して熱間圧延する方法により製造した熱延鋼帯について、その金属組織、材質を調査した。
このとき、鋳片のサイズは260mm厚×1000mm幅であり、連続鋳造後の高温鋳片を,再加熱することなく大圧下圧延、超高速圧延によって熱間圧延(仕上げ圧延終了温度:Ar以上)し、2.0mm の熱延鋼帯とした。得られた熱延鋼帯について,結晶粒径分布を光学顕微鏡にて調査を行った結果を図1に示す。
図1に示すように、結晶粒径の分布は大きく3領域に分かれ、幅方向にも、長さ方向にも不均一になることがわかった。この現象は、従来の再加熱法により、同様な条件で製造した場合には,結晶粒径分布がほぼ全幅、全長にわたって均一に揃った細粒となることと相違している。
【0017】
図1のような結晶粒径分布になった熱延鋼板を、酸洗、冷間圧延しても,結晶粒径が大きい鋼帯の幅方向端部及び長さ方向端部は中央部に比べて,伸び率が大きくなり,平坦度が悪い冷延鋼帯になる。
そしてこの冷延鋼帯を、連続焼鈍後,調質圧延により見掛け上,平坦に仕上げたとしても,3ピース缶の製缶工程において、印刷を施した後,缶単位のブランクシートにスリットカットを行うと,周辺の拘束が開放されて,圧延方向に反ったり,板幅方向に反ったりして,大板1枚の中でも,ほとんど不規則な平坦度のブランクシートになり,製缶が難しいことが分かった。
また,プレス加工で製缶される2ピース缶法においては,大きなコイルから直接、深絞り加工を行えば,上記のような問題は生じないが,缶体に仕上げた段階で、円周方向の缶高さが,熱延鋼帯の幅方向端部及び長さ方向端部では中央部に比べて不揃いになるとともに,缶胴部の円周方向の板厚分布も同様に不揃いになるので,正常な缶に仕上がらないことも分かった。この原因はr値の面内異方性(Δr)が悪くなったことによると考えられた。
【0018】
発明者等は、上述したような結晶粒径分布がもたらされる原因について、特に熱間仕上げ圧延終了温度(以下、単に「FDT」と略記する。)との関係について、調査、検討し,次のように考えた。
すなわち,FDTがAr変態点温度以上のオーステナイト(γ)単相領域であれば,仕上圧延機の最終スタンド出側直後は熱延加工組織であるが,その後γが再結晶し,さらに冷却が進むとγからフェライト(α)の変態を起こすので,細粒になる。そしてコイルに巻き取る際の,巻き取り温度(CT)が高温であれば自己焼鈍により粒径は大きくなり,炭化物も凝集粗大化する。また,低温で巻き取れば微細粒径となり炭化物も微細になる。
一方,FDTがAr変態点温度以下の(α+γ)二相領域となれば、γの部分は前記と同様な過程を経るが,αの部分は単に歪−焼なまし(strain−annealing)となる。すなわち,最終スタンドの軽圧下率(約10〜20%)の熱間加工ののち,高温で巻き取ると焼なましが進み,結晶粒径は極粗大粒化する。したがって,FDTが二相領域の場合には、γがαに変態した粒と,αが歪−焼なましで極粗大粒化した粒との混合組織となり,全体として粗大組織となる。なお,低温で巻き取ればおのおのの温度に対応して粒径は小さくなるが,それでも,基本的には粗大粒組織になる。
【0019】
このため、再加熱を省略しても、CTを同じにすれば,熱延鋼帯の幅方向、長さ方向の中央部はAr温度以上のFDTを確保できて,結晶粒径は細粒になる。しかし,熱延鋼帯の周辺部は熱間圧延中の降温によりArより低温となり、粗大粒組織となる。
また,FDTがAr温度以上を確保できる中央部でも,熱間圧延中の温度降下の違い、大型コイルに巻き取った後の自己焼鈍温度は中央部ほど高温に長く維持できること等により温度勾配が生じる。その結果,中央部でもその外周部はAr温度直上のため結晶粒径がより小さくなる。すなわち,中央部はさらに2領域に分かれ,結晶粒組織帯は3領域になる。図1においては、結晶粒組織とともに、これらに対応するFDTを併記して示している。
【0020】
図2に、前述した再加熱省略法において、板幅中央におけるFDTを、Ar点(Ar:900℃)以上として製造した場合のほか、Ar未満として製造した場合について、それぞれ、板幅方向における硬さと結晶粒径を調査した結果を示す。
図2から、従来,常識的に採用されてきた,FDTをAr点以上とする、条件で熱間圧延を行なっても,幅端から40〜50mmまでの幅端部は硬さが小さく,とくに幅端から5mmの位置の硬さは極端に小さくなり,また逆に,幅端部の内側は細粒になり、硬さが大きくなっており、幅端部の広い領域にわたり硬さの不均一を生じていることが分かった。
このように、従来の再加熱省略法においては、FDTを幅端部までAr点以上に確保することが難しく,その結果として,幅方向に均一な材質を有する熱延鋼帯を製造することが難しい。そして、これをそのまま冷間圧延すいると、幅端部が伸びる,いわゆる“耳伸び”不良に,そして,中央部と端部の境界が極端に伸びにくく,冷間圧延後,反りとして不良になることが考えられる。
このように製造しても、高強度、広幅極薄化に伴って、幅端部は耳切り除去を、ブランク反り部は大板で除去せざるをえず、製品歩留りも低く(経済的に悪く)なるばかりである。
なお、幅端部の温度低下を、粗圧延機−仕上げ圧延機間に設けたシートバーエッジヒーターにより加熱して防止する方法が考えられるが、実際に幅端部のFDTをAr以上に確保することはヒーターの負荷が大きく困難であった。しかも、このシートバーエッジヒーターによる加熱法は、前述したように、Ar直上での小さな温度変化が組織の大きな変化を生じるため、実際に、幅方向に均一な組織を得るような制御は実現していない。
【0021】
一方,図2において、FDTをAr点未満で熱間圧延を行なったものは,逆に幅端部の硬さが上昇するが,その不均一幅は20mm程度と小さく,硬さも繊維状組織と細粒の混粒になっている最端部は大きいが,それを除けば低い。これらのことから、発明者らは、繊維状組織の再結晶化は比較的小さい温度補償で達成でき、幅方向の硬さ不均一が解消されると考えた。
すなわち,発明者らは、再加熱省略法でFDTをAr点以上の高温に確保することは、特に極薄の缶用鋼板において,技術的に無理があると判断し,逆に,FDTを、従来は非常識とされていた、Ar点未満の低温域として熱間圧延すれば,少ない熱の補給量で均一な材質を有する缶用の熱延鋼帯を経済的に製造できると考えたのである。
【0022】
しかし、このような着想に基づいて、再加熱省略法(連続鋳造後の鋳片に再加熱を施さない方法)により、FDTをAr点未満として熱間圧延し,缶用鋼板を製造しようとする場合に、次に列挙するような、別の解決すべき問題が残っていた。
1)Ar未満のFDTで圧延すると、図1で示したように、熱延鋼帯の幅端部とくに幅端から数10mmの位置の範囲は、一部では繊維状組織が残り、結晶粒径が十分に大きくならない。この鋼帯に冷間圧延を施すと,平坦度の悪い冷延鋼帯となる。
2)鋼帯の長さ方向後端の一部には、図1で示したように、上記1)と同じ組織となり,缶用鋼板には使えないので、次工程で切捨て除去しなければならない。この量は約10%の歩留り低下となり,再加熱省略によるの省エネルギー効果以上に不経済となる。この原因として、圧延の後端部は、熱間仕上圧延機前での待ち時間が長く,温度降下量が大きいためと考えられた。
3)Ar点以下で熱間圧延すると,全体的に結晶粒径が大きくなり,一部では過大に大きくなって,プレス加工時にオレンジピールと称する肌荒れ現象や厳しい張り出し加工では破断するものもある。この現象は、特に2ピース缶では深刻な問題となる。
4)Ar点以下で熱間圧延すると,r値が悪くなり、2ピース缶で厳しいプレス加工を行う用途には使えない。
【0023】
これらの問題を解決するために,発明者らは、さらに研究を重ねた結果,下記の手段がこれらの問題の解決に極めて有効であることを知見した。
▲1▼幅端部の温度降下を補うために,シートバーをエッジヒータで加熱昇温すること。熱間仕上げ圧延の終了温度を鋼帯の全幅(中央から幅端より5mm内側の位置までの範囲)にわたってAr変態点未満、(Ar変態点−100℃)以上に制御すること。
このためには、例えば、エッジヒータによるシートバーの加熱範囲は、幅端から30mm程度までとすればよい。また、加熱方法は誘導加熱(Induction heating )などの任意の方法でよい。
このように加熱昇温の操作を行うことにより、板幅中央部から幅端5mmの位置までの全幅にわたって、FDTがほぼ均一の分布となり、幅端部の結晶粒は中央部のそれよりはやや小さいが、平坦度に影響を及ぼすような繊維状組織が殆どなくなり、この範囲における結晶粒組織が粗粒混粒組織を呈するほぼ一様な熱延鋼帯が得られる。
なお、FDTが余りに低くなり過ぎると、前述したような繊維状と細粒の混粒組織が解消されにくいので、FDTは、全幅にわたって、(Ar変態点−100℃)以上とする必要がある。
図3に、シートバーエッジヒータによる鋼帯幅端部の加熱昇温効果を示す。このように、幅端部を加熱昇温すれば、鋼帯幅方向の硬さ分布が改善され、冷延鋼板の平坦度も改善されることがわかった。
これらの事実から、粗圧延で得られたシートバーの両幅端部を加熱昇温することにより、圧延終了温度が、幅方向中央から幅端5mmの位置までの、鋼帯の全幅にわたって、Ar変態点未満、(Ar変態点−100℃)以上、好ましくは(Ar変態点−70℃)以上になるように熱間仕上げ圧延することが必要である。
【0024】
▲2▼上記幅端部を加熱昇温する前に、シートバーを先行するシートバーと接合すること。また、この接合の前に、シートバーを仕上圧延機前で巻き取り,その先端と後端を逆転して先行するシートバーと接合すること。
図4に、熱間圧延後端部における熱延鋼帯幅方向の硬さ分布に及ぼすシートバーを,先行するシートバーと接合して,連続仕上圧延を行う効果について示す。図4に示すように、シートバーを接合して連続的に仕上げ圧延(図4(a))すれば、鋳片単位で仕上げ圧延(図4(b))するよりも鋼帯幅方向の材質の均一化することがわかる。その際に、長さ方向の後端部の温度降下の防止法としては,粗圧延で仕上げたシートバーの先端と後端を逆転させることが有効であることもわかった。
【0025】
仕上圧延機での連続化には、シートバー接合のタイミングを合わせ,接合装置自体がシートバーのスピードに合わせて移動しながら,20秒以内という短時間でシートバー同士を接合した後,接合部分を電磁誘導法により加熱し圧着する短時間接合機の使用が、シートバーの温度低下を防止する上で望ましい。また、シートバーの保温、均熱、先後端の逆転および接合の時間を確保するために、接合前のシートバーをコイルに巻き取ることも可能である。
なお、粗圧延開始温度は1100〜1200℃が望ましい。また、熱間仕上げ圧延を終えコイルに巻き取った後は、常法にしたがい酸洗、冷間圧延(圧下率は前述のとおり)、再結晶焼鈍(680〜800℃)を行い、1〜40%の調質圧延を行って缶用鋼板とする。
【0026】
▲3▼熱間仕上げ圧延終了後、2〜10秒の間大気中放冷による徐冷を行い、引き続き100 ℃/sec 以上の速度で冷却し、700 ℃以下の温度で巻き取ること。
従来のように、仕上げ圧延の終了後直ちに(仕上圧延機出側直後から)水冷を開始するのではなく,2〜10秒間大気中放冷によって徐冷することにより,幅端部の結晶粒をある程度大きくさせることが可能となる。このように結晶粒成長を行わしめた後、鋼帯の上,下面から大量の水で強水冷し、100℃/秒以上の速度で冷却した後,700℃以下の低温で巻き取り自己焼鈍を抑制すると、均一な結晶粒からなる鋼帯が得られ、良好なr値を有する缶用鋼板を製造できる。図3、図4において、このような放冷時間の影響を確認できる。
ここで、上記徐冷の時間が2秒未満では、結晶粒成長が不十分であり、10秒を超えるとα粒径が粗大化し、再結晶焼鈍後も粗大粒となり、製缶加工において肌荒れ現象が発生しやすくなるので好ましくない。また、CTが700℃を超えると、短時間で水冷を施しても炭化物が粗大化し、結晶粒径も大きく、酸洗での脱スケール性も悪くなるので、700℃以下で巻き取るものとする。なお、再結晶粒径が微細化し、硬質になってもT1の硬さを得るためには、400℃以上で巻き取るのが好ましい。
【0027】
▲4▼熱間仕上げ圧延の仕上げ板厚を2.0 mm以下とし、冷間圧延の圧下率を90%以下とすること。
r値の改善は、通常、CTを高温にして達成するが,上記▲3▼のように,Ar点未満で圧延を行う場合には、高温CTを避けねばならない。そこで、これに代わる方策として,冷間圧延圧下率を90%以下まで小さくすることが有効であることが分かった。ただし、この圧下率が50%を下回ると、再結晶粒径が粗大化し前述のように肌荒れ現象になる。これは、再結晶によって到達する粒の大きさは、加工度が大きいほど、冷間圧下率が高いほど小さくなり、特に低加工度のものは、大きくなりすぎるので50%以上は確保するのが望ましい。従来,缶用鋼板の熱延仕上がり板厚は2mm以上であり、製品板厚が薄いわりには厚かった。このため,冷間圧延の圧下率が90%を超えることが普通であり、十分なr値が得られなかったのである。
ただし,冷間圧下率を小さくできればr値は改善できるが,薄い熱延鋼帯を製造するのに熱間圧延機のミルパワーから限界があった。また、熱間圧延機で鋳片単位で熱間圧延を行う従来の方式では、板厚が薄い鋼帯を、仕上圧延後,水冷しながら百数十メートルも先にある巻き取り機に精度良く到達させるためには、熱延鋼帯にある程度以上の剛性を付与する必要があり,板厚の薄い(圧下率の小さい)熱延鋼帯の製造には限界があった。しかし,仕上圧延機の前で先行するシートバーと接合して、連続圧延を行えば,そのような心配もなく,薄い熱延鋼帯が製造できる。
【0028】
▲5▼鋼中のC量を、0.03wt%以下とすること。
Ar点はC量に支配され,低炭素鋼領域において,C量が多くなるとAr点は低温になる。この場合、FDTもAr点に対応して低温になり,端部の熱量が不足して結晶粒径が大きくならず、不均一な結晶粒分布をもたらす。よって、均一な結晶粒分布の熱延鋼帯を、再加熱省略法で製造するためにはAr点の高い低Cの成分組成が有利である。
また、低C化はr値の向上にも有利となる。Ar点未満のFDTで熱間圧延することを前提にして、r値を改善するために実験した結果を図5に示す。図5から、C量を0.03wt%以下に減少させると,r値は顕著に改善されることがわかる。なお、図5によれば、Mn量を減少させることも有効である。
これら2つの観点から、C量は0.03wt%以下とする必要がある。因みに、C量とAr点との関係を調べた結果,C量が0.01wt%で900℃,0.03wt%で870℃,0.06wt%で840℃,0.09wt%で800℃であった。
【0029】
次に、本発明法に好適な鋼の成分組成について、その限定理由を含めて説明する。
Cは、前述したように、再結晶温度、再結晶粒径を制御し、プレス加工性を向上させるために重要な元素である。FDTをAr点未満として熱間圧延した熱延鋼帯の端部の結晶粒径も大きくするためには,FDT温度をできるだけ高温とするのが好ましく、そのためにAr点が高温になる低C組成の鋼がよい。また、プレス加工性の改善のためには、C量を低減し、結晶粒径を大きくするとともにr値を大きくすることが重要である。このように、FDTをAr点未満で熱間圧延を行なうにもかかわらず,r値の良い缶用鋼板を製造するためには、C量は0.03wt%未満とする必要がある。
【0030】
Siは、ぶりきの耐食性を劣化させるほか、さらに材質を極端に硬質化する元素であるので、過剰に含有させることは避けるべきである。よって製鋼段階で、できる限り少なくなるようにすることが肝要であり、耐火物中のSiOが溶鋼中のAlによって還元されるのを抑制するため、従来使用されているシャモット質耐火物に代えてジルコン質耐火物を用いる等の配慮を要する。
具体的には、Si量が0.03wt%を超えると硬質化して、調質度T1〜T3のぶりき原板を製造することができなくなるので、Si含有量は0.03wt%以下に制限する必要がある。
【0031】
Mnは、Sによる熱延コイルの耳割れ発生を防止するために添加する必要がある。この耳割れは、直接的にはSによって支配されるので、S量が少なければ敢えてMn添加の必要はないが、鋼中にはSが不可避的に含有されていることからMnを添加する必要がある。また,Mnは、Cと同様に、少なくすればr値が改善できる。Mn量が、0.05wt%未満では耳割れの発生を防止することができず、一方、0.30wt%を超えると、結晶粒径の細粒化と固溶強化によって硬質化し、r値が低下するので、0.05〜0.30wt%の範囲とする。
【0032】
Pは材質を硬質化させ、かつぶりきの耐食性を劣化させる元素であるので、過剰の含有は好ましくない。したがって、その含有量は0.02wt%以下とする。
【0033】
Sは、過剰に含有すると,熱間圧延の高温γ域で固溶していたSが温度低下にともない過飽和となり、(Fe,Mn)Sとしてγ粒界に析出して、赤熱脆性を生じ熱延コイルの耳割れ発生の原因となる。また、S系介在物となってプレス欠陥を引き起こす原因となる。したがって、S含有量は、0.02wt%以下に制限する。なお、上記耳割れあるいはプレス欠陥の発生を防止するためには、特にMn/S比で8以上にするのが望ましい。
【0034】
Alは、鋼の脱酸に必要な元素であり、含有量が多くなるのに従って鋼の清浄度が高くなるが、過剰の添加は、再結晶粒径の成長を抑制するほか、経済的にも好ましくないので、Al添加量は0.10wt%以下とする。一方、Al量の下限は、本質的には溶鋼中の固溶酸素量に見合った量のAlにより脱酸して鋼中に金属Alとして残存させる必要はないことになるが、このようにするとぶりきの清浄度が悪くなる。さらに、軟質ぶりきを得るためには、固溶NをAlによって固定し、その残存量を減らす必要がある。よって、Al量は0.02〜0.10wt%の範囲とする。
【0035】
Nは、鋼の製造過程において空気中のNから混入する元素であり、鋼中に固溶していると軟質な鋼板を得られなくする。このため、製鋼過程で空気中からのNの混入を極力抑制して、0.01wt%以下に制限する必要がある。
【0036】
Oは、鋼中のAl,Mnあるいは耐火物のSiフラックスのCa,Na,F等と酸化物を形成し、プレス加工時の割れを引き起こしたり、耐食性を劣化させるのでできるだけ低値に抑制する必要がある。とくに、O量が0.005 wt%を超えると、これらの悪影響が顕著になるので0.005 wt%以下に制限する。
O量の抑制方法としては、真空脱ガス処理による脱酸強化、タンディッシュの堰形状、ノズルの形状、鋳込速度の調整の手段を講ずることが効果的である。これらの手段の過程で、鋼中のAl量が多くすることは、介在物のクラスター状化により浮上分離を促進するので有効である。
【0037】
また、さらなる加工性向上のために、Ti、Nbが、耐加工脆化のためにBを添加することが有効である。
Nbは, 炭化物、窒化物を形成し、固溶C、固溶Nの残存量を少なくする元素である。一方、多量に添加すると、Nb系析出物による結晶粒界のピン止め効果のために、再結晶温度が上昇し、連続焼鈍炉における通板作業性の悪化,鋼帯組織の細粒化を招く。したがって、Nbの添加量は0.1wt%以下の範囲とする。なお、好ましい添加量は0.001 wt%以上である。
【0038】
Tiは、炭化物、窒化物を形成し、固溶C、固溶Nの残存量を少なくする元素である。一方、多量に添加すると、鋼板断面の顕微鏡観察で確認される、鋭利なとがった析出物を形成し、、耐食性の悪化、プレス加工時のすり疵の発生を招く。したがって、Tiの添加量は0.20wt%以下の範囲とする。なお、好ましい添加量は0.0001wt%以上である。
【0039】
Bは、極低炭素鋼に炭化物形成元素を添加し固溶Cを減少させた場合に懸念される、プレス加工後の脆化割れを抑制する作用を有する元素である。この脆化割れは、固溶C量が少なくなると粒界にPが偏析して脆化するものである。Bは、その際に、固溶Cの役目をして、あるいはB自体が粒界強度を大きくして脆化を抑制する。Bは、また、炭化物、窒化物を形成するので、軟質化に有効である。しかし、余りに多量添加すると、連続焼鈍時、再結晶粒界にBが偏析し、再結晶を遅らせるので、0.005 wt%以下の範囲で添加する。なお、好ましい添加量は0.0001wt%以上である。
【0040】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
連鋳機と熱間圧延機とを直線的に直結、短絡配置し,各々のつなぎ部では内部に保熱材を施した断熱カバーを設けることにより、徹底的に保熱、断熱した設備列のラインで,本発明法での実施及び比較を行った。
表1に示す成分組成の鋼を底吹き転炉により溶製し、C;0.03wt%となして出鋼した。続いて、スラブを冷却して手入れを施すような欠陥が発生しないように次の対策を講じた。真空脱ガス処理を施して、C量の調整及び溶鋼の高清浄度化を図るとともに、Alを添加し、続いて炭化物形成元素、窒化物形成元素を添加したものも作った。これらを、それぞれ高清浄度鋼を製造するのに有利な大容量のタンディッシュを有する垂直曲げ型連続鋳造機を用いて鋳造した。ここで、さらに高清浄化を目的に、介在物の浮上分離を促進するために,タンディッシュには堰を設け、介在物の合体、浮上分離を図り、また、鋳型内の湯面変動を小さく押さえるために、粘性が大きく(4ポアズ以上),介在物吸収能に優れたモールドフラックスを使った。また、鋳型内の溶鋼流動を正常にして,凝固層に介在物が補足されないように、吐出形状が逆Y型25°の浸漬ノズルを使うとともに、溶鋼流が深く侵入するのを防ぐために、電磁ブレーキを活用した。このようにして、厚み260mmで1000mm幅の鋳片を,鋳込み速度1.5 m/分以上で高速鋳造し,その後鋳片幅方向の中央部を重点的に水冷するとともに,後端部の水冷は省略し,無欠陥で高温の鋳片を得た。
【0041】
これらの鋳片を,再加熱を省略し,剛性が大きく大圧下が可能な,最高圧延速度が1680mpmで放熱時間を短くできる、超高速仕上圧延機を備えたミルにより圧延した。この粗圧延機でシートバーを製造し、そのシートバーの先端と後端を逆転させた後,先行シートバーと接合する連続圧延により極薄熱延鋼帯とした。熱間圧延にあたっては、エッジヒータの有無(有りの場合はシートバー全長の幅端部を加熱昇温),熱延終了温度(FDT)のほか,熱延終了後の冷却条件(高架水槽を備え制御バルブを細分化した,緩急自在に強冷却を行えるホットラン冷却設備を使用)、巻取温度(自己焼鈍、30分以上)、熱延板板厚などを変化させた。その後,直ちに酸洗して脱スケールを行い、6スタンドタンデム連続冷間圧延機にて種々の圧下率で圧延し冷延鋼帯とした。続いて、極低炭素鋼(C≦0.01wt%)は750℃で,低炭素鋼(C;0.01〜0.03wt%)は680℃で連続焼鈍を行った後,調質圧延の圧下率を変化させて種々の調質度のぶりき原板に仕上げた。これらの熱間圧延条件を表2に、冷間圧延および調質圧延条件を表3に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0003546605
【0043】
【表2】
Figure 0003546605
【0044】
【表3】
Figure 0003546605
以上の方法で製造した冷延鋼帯の平坦度を測定するとともに、ぶりき原板の幅方向各位置における硬さ(HR30T) ,ランクフォード値(r値)およびその面内異方性Δrを測定した。
なお、平坦度は冷延鋼帯の長さ方向の各位置から幅×1000mm長の大板を切り出し、定盤上に静置し、耳伸び、中伸びなど、高さをトースカンを使って測定した。またr値は、
r=(r+2r+r)/4により、Δrは、
Δr=(r−2r+r)/2、または調質度DR材のように、伸びが小さく塑性歪み法で測定することが不可能な超硬質鋼板については、固有振動法(JIS G3135、1986解説、参考2)にて測定した。
ただし、r、r、rは、それぞれ圧延方向、圧延方向に対し45°の方向、圧延方向に対し90°の方向のランクフォード値を表す。
これらの測定結果を表3、表4に示す。
【0045】
上記ぶりき原板に,ハロゲンタイプの電気すずめっき工程にて各種のすずめっき後,リフロー処理(溶錫化処理),クロメート処理を連続して行い,ぶりきに仕上げた。
使用したSnめっき浴およびリフローおよびクロメート条件は下記の通りである。
・Snめっき
浴組成 塩化第1スズ 75g/l
弗化ナトリウム 25g/l
弗化水素カリウム 50g/l
塩化ナトリウム 45g/l
Sn2+ 36g/l
Sn4+ 1g/l
pH 2.7
浴温度 65℃
電流密度 48A/dm
・リフロー条件
通電加熱 280℃
・クロメート
液組成 無水クロム酸 15g/l
硫酸 0.13g/l
液温度 40℃
電流密度 10A/dm
陰極電解処理
【0046】
また、ティンフリー鋼板は電気めっきラインで,先ずCrO;180g/l,HSO;0.8g/lのクロメート液で金属Cr量5〜120mg/mのめっきを施した後,引き続きCrO;60g/l,HSO;0.2g/lのクロメート液で酸化Cr(クロム換算量で1〜30mg/m)のめっきを行って仕上げた。
【0047】
これらのめっき鋼板を用い,3ピース缶については曲げ加工を施して耐フルーティング性および高速溶接性のテストを行った。
フルーティング性の評価は、缶胴の成形に相当するように曲げ加工を施し,胴体に発生した折れが商品として見るに耐えない程度のものまたは設計通りの真円度が得られず偏平になったもの(×印で表示)と、そうでないもの(○印で表示)に判定した。
高速溶接性は、銅ワイヤー型電気抵抗加熱シーム溶接機でワイヤー速度65m/分,溶接圧力40kg,周波数600Hzで溶接して,散り(スプラッシュ)の発生しない上限電流値とピール溶接強度(溶接部の一端に切り込みを入れ,溶接部を缶胴から引き剥がすピールテスト法により溶接部の全長が引きちぎれるものが強度が十分と判定)が得られる下限電流値の差を適正溶接電流範囲として評価し,5A以上あれば高速溶接の工程化が可能と判定して,さらに,フランジ拡缶成形で溶接部の近傍から割れない,いわゆるHAZ(heat affected zone)割れが発生しないことを確認して最終判定とした。
【0048】
また、2ピース缶については,缶壁の傷付性を評価し,肉眼観察で傷が確認されないもの(○印で表示)と,傷が確認され,耐蝕性が悪くなると推定されるもの(×印で表示)に判定した。
これらのめっき条件、製缶結果を表5にまとめて示す。
【0049】
【表4】
Figure 0003546605
【0050】
【表5】
Figure 0003546605
【0051】
以上の実施例から、本発明例はすべて、冷延鋼帯における耳伸び、中伸びも少なく平坦度が良好であること、調質後の幅方向の硬さが中央〜幅端5mmの位置まで均一であり、r値、Δrも全幅にわたって一様で、しかも優れた値を示している。とくに、実施例において、幅中央部と幅端5mmの位置のFDTの差は、35℃以上もあり、従来このような温度差を有しては冷延鋼帯の均一性は実現できなかったところ、本発明で達成しえた意義は大きい。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明法によれば,低Cの鋼からなるシートバーの幅端部を加熱昇温して、圧延終了温度を全幅にわたってAr変態点未満〜(Ar変態点−100℃)に維持して熱間圧延することにより、鋳片の再加熱を施さずとも、均一な材質の熱延鋼帯を製造でき,その結果、均一な材質を有し、プレス加工性、製缶性にも優れる缶用鋼板を製造することが可能になる。
また,本発明法によれば,さらに、シートバーの接合による連続熱間圧延、熱延後の冷却制御、熱延鋼板の薄厚化による冷延圧下率の低減などを行うことにより、熱延終了温度の低温化にもかかわらず,結晶粒径が大きく,r値が大きい深絞り加工性に優れる缶用鋼板を製造することが可能になる。
以上の結果、合理的に再加熱を省略して熱間圧延を行い、缶用鋼板を製造できるようになるので、省エネルギー、生産性の向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の、再加熱を省略した熱間圧延法で圧延した熱延鋼帯における結晶粒組織およびFDTの分布関係を示す図である。
【図2】熱延鋼帯幅方向の硬さ分布に及ぼすFDTと結晶粒組織の影響を示す図である。
【図3】熱間圧延後部における熱延鋼帯幅方向の硬さ分布に及ぼす幅端部加熱、熱延後放冷時間の影響を示す図である。
【図4】熱間圧延後端部における熱延鋼帯幅方向の硬さ分布に及ぼす圧延方式(連続、単一)、幅端部加熱および熱延後空冷時間の影響を示す図である。
【図5】r値に及ぼすC量,FDTおよび冷間圧延圧下率の影響を示す図である。

Claims (4)

  1. 鋼の成分組成が、C: 0.03wt %以下、 Si 0.03wt %以下、 Mn 0.05 0.30wt %、P: 0.02wt %以下、S: 0.02wt %以下、 Al 0.02 0.10wt %、N: 0.01wt %以下、O: 0.005wt %以下を含有し、残部が Fe および不可避的不純物からなる連続鋳造鋳片を、加熱炉を経由することなく直ちに熱間粗圧延し、粗圧延で得られたシートバーの両幅端部を加熱昇温することにより、圧延終了温度が鋼帯の全幅にわたってAr3変態点未満、(Ar3変態点−100℃)以上になるように熱間仕上げ圧延をした後、2〜 10 秒間放冷し、引き続き 100 ℃/ sec 以上の速度で冷却し、 700 ℃以下の温度で巻き取り、その後、冷間圧延、焼鈍および調質圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
  2. 上記連続鋳造鋳片は、上記成分組成に加えてさらに、 Nb 0.10wt %以下、 Ti 0.20wt %以下及びB: 0.005wt %以下から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の缶用鋼板の製造方法。
  3. 熱間粗圧延で得られたシートバーを先行するシートバーと接合した後、両幅端部を加熱昇温する、請求項1または2に記載の缶用鋼板の製造方法。
  4. 熱間仕上げ圧延を仕上げ板厚2.0mm以下とし、冷間圧延を圧下率90%以下とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
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