JP5093834B2 - 生分解性樹脂粉体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)全体の50〜100重量%が、結晶化度が20%以上60%以下であるポリ乳酸からなる粉体。
(2)100℃〜160℃の温度で熱処理する工程を経て得られることを特徴とする(1)に記載の粉体。
(3)ポリ乳酸の50〜100重量%がL体である(1)又は(2)に記載の粉体。
(4)ポリ乳酸の重量平均分子量が1万〜100万である(1)〜(3)いずれかに記載の粉体。
(5)重量平均分子量1000以下の低分子量有機化合物が0〜0.5重量%である(1)〜(4)いずれかに記載の粉体。
(6)平均粒径が1〜1000μmである(1)〜(5)いずれかに記載の粉体。
(7)−40〜100℃の温度にて機械粉砕する(1)〜(6)いずれかに記載の粉体の製造方法。
(8)(1)〜(6)いずれかに記載の粉体からなるスクラブ剤。
(9)スクラブ剤を含む身体及び/又は頭髪清浄用化粧料であって、平均粒径が50〜300μmである(1)〜(5)いずれかに記載の粉体が該スクラブ剤の10〜100重量%である化粧料。
(10)(1)〜(6)いずれかに記載の粉体を10〜100重量%含む研磨剤。
(11)(1)〜(6)いずれかに記載の粉体を1〜99重量%含む塗料。
(12)(1)〜(6)いずれかに記載の粉体を1〜99重量%含むトナー。
本発明の粉体は、全体の50〜100重量%が、結晶化度が30%以上60%以下であるポリ乳酸からなる必要がある。
生分解性を有することで、自然界に排出されても環境に悪影響を与える恐れが少なくなる。ここで生分解性を有した樹脂とは、土壌中の微生物等によって経時的に分解することを特徴とする樹脂のことを示す。また、熱可塑性であることより、溶融混練などによって、各種の添加剤を添加することが容易になる。ここで熱可塑性とは、加熱することにより溶融して液体状になることを示す。更に結晶化することで、適度な硬度と粘り強さを兼ね備えさせることが可能となり、研磨性、耐久性といった品質と、優れた生産性とを両立することが容易になる。
重量平均分子量を1万以上とすることで樹脂の粘り強さが高まって、耐久性の良好な粉体とすることができる。一方、100万以下とすることで、粉砕性を高めて粒径の小さい粉体を得ることが容易になる。重量平均分子量は3万〜80万の範囲がより好ましく、5万〜50万の範囲が更に好ましく、10万〜30万の範囲が特に好ましい。
本発明の粉体は、重合して得た生分解性樹脂組成物、又は重合して得た生分解性樹脂組成物に各種の添加剤を添加した生分解性樹脂組成物を、ストランド状で水中に押出して冷却固化・カットしたペレット状等の固形物とした後、粉砕して得ることができる。
このようにして得られた粉体には、更にヘンシェルミキサー等を用いて他の粉体を混ぜることもできる。混ぜる粉体としては、異なった添加剤の入った生分解性樹脂粉体や、生分解性樹脂以外の樹脂や有機物、無機物からなる粉体が挙げられる。この工程で粉体を混ぜる際には、比重差や量に応じて粉体の大きさを適宜調整することが好ましい。
身体及び/又は頭髪清浄用化粧料として界面活性剤を用いることは従来行なわれてきているが、更に強固な汚れを取り除き、しかも皮膚のあれをとどめるために界面活性剤とスクラブ粒子を含有する化粧料が用いられている。本発明の粉体は適度な硬度を有し、且つ、生分解性を有しているので、このような用途に好適である。
研磨材としては、粉体をそのまま用いる乾式や、水などの液体と共にスラリー状にして用いる湿式、樹脂で固めたり繊維に付着させたりして用いる固体式などのいずれにも用いることができる。
乾式では粉体を圧縮エアーで投射する方法(エアーブラスト法)やモーターの動力で高速回転する翼によって高速で加工物に噴射する方法(ショットブラスト法)にて、素材表面の下地処理、梨地加工、ピーニング、バリ取り、クリーニング、彫刻などに用いる。研磨材としてはさまざまな種類があり、加工物によって最適な研磨材を選定するが、本発明の粉体は上記した特徴を生かして、樹脂成形品、金属ダイカスト品のバリ取り、金属・樹脂成形体の洗浄、汚れ落としを始めとした様々な用途に用いることができる。
湿式では、水や各種有機溶剤、界面活性剤などと混ぜてスラリー状にして用いることが多いが、本発明の粉体は耐薬品性が高く、且つ、吸湿性及び吸湿による特性変化が少ないので、様々な物質と混ぜて使用することができる。
このような研磨材及びその原料として用いる場合は、本発明の粉体単独、あるいは有機や無機の充填剤を添加したり、他の粉体と混ぜたりすることで、目的に合った研磨力、耐久性などを有した研磨材とすることができる。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した
(1)生分解性樹脂含有率
溶媒として重水素化THFを用いて、1H−NMR測定により求めた。測定機はFT−NMR DPX−400(Bruker社製)を用いた。また、濾過して取り除いた不溶成分は真空乾燥後重量を測定し、生分解性樹脂含有率を求める際に用いた。
(2)重量平均分子量、低分子量有機物含有量
THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法を用いて求めた。測定機にはHLC−8120(東ソー(株)製)を用い、分子量の換算には標準ポリスチレンを用いた。
(3)粒径(平均粒径、粒径分布)
水中に分散させた粉体の粒径(平均粒径、粒径分布)を、レーザー光回折/散乱法を用いた日機装(株)社製 マイクロトラックFRA粒度分析計を用いて測定した。
(4)形状
光学顕微鏡にて粉体粒子の形状を観察した。
(5)安息角
JISR9301に準じて測定を行った。
(6)結晶化度
以下の条件にて広角X線回折を行い、得られた回折ピークを定法に従ってピーク分離して結晶と非晶の回折に分離して結晶化度を求めた。
測定装置 : ロータフレックス RU−200 理学社製
測定方法 : 反射法
X線強度 : 40kv、120mA
X線源 : CuKα線
スリット間隔 : DS=0.6、RS=0.3、SS=1
数平均分子量が15万、L体とD体の比率が90:10のポリ乳酸からなる一粒の平均重量が25mg、最長部の長さが3mmの円柱状ペレットを箱型の熱風乾燥機中にて100℃で80分熱処理を行って結晶化度が20%の熱処理ペレットを得た。
得られた熱処理ペレットを、ターボ工業(株)社製の機械式粉砕機である「ターボミル」と100メッシュの振動ふるいを組み合わせて、粉砕・分級して粉体を得た。粉砕機では粉砕したペレットを100メッシュの振動ふるいによって分級し、ふるいを通過したものは製品とし、通過しなかったものは粉砕機に戻して再度粉砕するようにした。粉砕の際は15℃の冷風を用いて粉体の温度が100℃以下となるように冷却した。
主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。なお、ペレットと粉体の結晶化度は同じであったので粉体に関してのみ記載することとする。他の実施例、比較例についても同様とする。
得られた粉体は低分子量有機化合物含有率が0.05%以下、生分解性樹脂であるポリ乳酸含有率が99%以上であり、1時間当たりの粉砕量が10kgと多いことから分かるように粉砕性が良く、平均粒径は150μm、且つ、多少のヒゲしか無く、安息角も41度と流動性が良い、優れた粉体であった。また、低分子量化合物の含有率も低い粉体であった。
スクラブ剤として得られた粉体10重量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル15重量部、ミリスチルジメチルアミンオキシド3重量部、プロピレングリコール5重量部、ラノリン0.5重量部、カルボキシビニルポリマー0.2重量部、トリエタノールアミン0.1重量部、水66重量部を混合して手指洗浄用化粧料を作成した。得られた化粧料は皮膚の荒れが少なく、優れた洗浄性、優れた使用触感を有した、優れたものであった。
表1に記載した条件を変えた以外は参考例1と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。
参考例2では50メッシュのふるいを用いたところ、粒径が大きくなったものの、1時間当たりの粉砕量が上がり、また安息角が低いことからわかるように流動性粉砕性の良い粉体が得られた。
実施例3では140℃にて80分熱処理を行って得た、結晶化度が40%の熱処理ペレットを用いたところ、粉砕性に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体が得られた。
参考例4では重量平均分子量が30万と重合度の高いポリ乳酸からなるペレットを粉砕に用いたところ、平均粒径がやや大きくなり、粉砕性、流動性がやや低くなったものの実用上問題無い、良好な粉体が得られた。また、低分子量化合物の含有率も低い粉体であった。
参考例2で得られた粉体を単独で用いて、エポキシ樹脂にてモールドされた半導体素子のリードフレームに付着したバリ取りに用いた。この際、粉体の投射は圧縮空気を用いるエアーブラスト方式にて行った。この結果、樹脂でモールドされた半導体素子自体は傷つけずに、リードフレームに付着していたバリのみをきれいに除去することができた。また、粉塵がほとんど発生せず素子をほとんど汚すことがなかった。使用した粉体を5回繰り返し使用したが、バリ取り性能、素子の汚染状況に変化はほとんど見られず、優れた耐久性を示した。
粉砕機として日清エンジニアリング(株)製のブレードミルを用いた以外は実施例3と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。
得られた粉体は平均粒径が20μmと非常に細かく、且つ、ヒゲが無い粉体であった。また、低分子量化合物の含有率も低い粉体であった。
得られた粉体を塗料用シンナーで希釈されたアクリル系塗料に、塗料成分に対して5重量%となるように添加したところ、大きな凸凹が無く均一な艶消し塗装のできる塗料が得られた。
参考例1と同じポリ乳酸70重量部と大成化光(株)社製の加工チタンI−131E 30重量部とを2軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)に投入して、スクリュー回転数300rpm、シリンダー温度240℃、押出速度150Kg/hr(滞留時間1分)、減圧度0.04MPaにて溶融混練を行った。混練したポリマーはストランド状にして水中に押出した後に冷却固化、カッティングを行い、一粒の平均重量が30mg、最長部の長さが3mmの円柱状ペレットを得た。
得られたペレットを参考例1と同様にして熱処理、粉砕して粉体を得た。主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。
得られた粉体は粉砕性に優れ、平均粒径が小さく、且つ、流動性に優れた、良好な粉体であった。また、低分子量化合物の含有率も低い粉体であった。
参考例1で用いたポリ乳酸80重量部と重量平均分子量10万のポリトリメチレンテレフタレート20重量部をそれぞれ用いて、表1に示した条件以外は、参考例1と同様にして粉体を得た。主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。
得られた粉体はいずれの場合も、粒径が細かく、且つ、ヒゲが少なく、流動性の悪くない粉体であった。また、低分子量化合物の含有率も低い粉体であった。
実施例8では数平均分子量が0.5万、L体とD体の比率が90:10のポリ乳酸を、実施例9では数平均分子量が90万、L体とD体の比率が90:10のポリ乳酸を用いた以外は実施例3と同様にして紛体を得た。主な製造条件及び粉体特性を表1に示す。
実施例8では分子量が小さいために、微細な粉が多く発生するものの、粉砕は容易であった。得られた紛体は、低分子量有機化合物含有率が5%であり、また微細な紛体が多いために流動性が多少悪化し洗浄性も多少劣ると思われるが、用途を限定すれば使用可能なレベルと考えられる。
実施例9は分子量が大きいために樹脂が粘り強くなって、粉砕性が落ち、ヒゲが観察されるようになるものの、用途を限定すれば使用可能なレベルであった。
[比較例1]
樹脂組成物の熱処理を行わなかった以外は参考例1と同様にして粉体を得ようとした。しかしながら、粉砕開始後、10〜30分程度で振動ふるいの目がつまってしまい連続して粉体を製造することができなかった。目がつまるまでに得られた粉体を調べたところ、ヒゲ状の突起だらけの粉体で流動性が無いものであった。
Claims (12)
- 全体の50〜100重量%が、結晶化度が30%以上60%以下であるポリ乳酸からなる粉体。
- 120〜160℃の温度で熱処理する工程を経て得られることを特徴とする請求項1に記載の粉体。
- ポリ乳酸の50〜100重量%がL体である請求項1又は2に記載の粉体。
- ポリ乳酸の重量平均分子量が1万〜100万である請求項1〜3いずれかに記載の粉体。
- 重量平均分子量1000以下の低分子量有機化合物が0〜0.5重量%である請求項1〜4いずれかに記載の粉体。
- 平均粒径が1〜1000μmである請求項1〜5いずれかに記載の粉体。
- 120〜160℃の温度にて1分以上熱処理した樹脂組成物を−40〜100℃の温度にて機械粉砕する請求項1〜6いずれかに記載の粉体の製造方法。
- 請求項1〜6いずれかに記載の粉体からなるスクラブ剤。
- スクラブ剤を含む身体及び/又は頭髪清浄用化粧料であって、平均粒径が50〜300μmである請求項1〜5いずれかに記載の粉体が該スクラブ剤の10〜100重量%である化粧料。
- 請求項1〜6いずれかに記載の粉体を10〜100重量%含む研磨剤。
- 請求項1〜6いずれかに記載の粉体を1〜99重量%含む塗料。
- 請求項1〜6いずれかに記載の粉体を1〜99重量%含むトナー。
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