まず、本願において開示される代表的な発明の概要について説明する。
人物が装着したセンサ端末によってその人物の活動データを取得し、その活動データから複数の特徴量を抽出する。また、別途取得した複数種類のパフォーマンスデータに対して、各特徴量の持つ関連の強さと正負を算出し、特徴量の性質を表示することで、パフォーマンスを改善するために注目すべき特徴量の発見と改善施策立案を助けるシステムを実現する。これを実現するための代表的な発明の概要を以下に説明する。
第1の発明は、コンフリクトを生じうる2種類のパフォーマンスデータと、複数種類のセンシングデータとの、それぞれの関係の強さを表示する。
第2の発明は、期間・サンプリング周期などの基準が一致した、2種類のパフォーマンスデータと複数種類のセンシングデータとの、それぞれの関係の強さを表示する。
第3の発明は、主観データと客観データ、または客観データと客観データの、2種類のパフォーマンスデータと、複数種類のセンシングデータとの、それぞれの関係の強さを表示する。
第1の発明によれば、コンフリクトを生じる要因を発見しその要因を取り除くように施策を立てたり、コンフリクトを生じないように2種類のパフォーマンスを共に改善するように施策を立てることができる。
第2の発明によれば、パフォーマンスデータとセンシングデータが、異なるサンプリング周期で取得されていたり、欠損を含む不完全なものである場合にも、2種類のパフォーマンスをバランスよく改善するように適切に施策を立てることができる。
第3の発明によれば、個人の内面に関する定性的なパフォーマンスと生産性に関する定量的なパフォーマンスを共に改善するための施策、もしくは、生産性に関する定量的な2種類のパフォーマンスを共に改善するための施策、を立てることができる。
最初に、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
<図1:全体の処理の流れの概要>
図1に、第1の実施の形態の装置の概要を示す。第1の実施の形態では、無線送受信器を有するセンサ端末(TR)を組織の各メンバがユーザ(US)として装着し、その端末(TR)によって各メンバの行動やメンバ間の交流(インタラクション)に関するセンシングデータを取得する。行動については加速度センサやマイクによってデータを収集する。また、ユーザ(US)同士が対面した際にはそれぞれの端末(TR)間で赤外線を送受信することで対面を検知している。取得したセンシングデータは無線によって基地局(GW)に送信され、ネットワーク(NW)を通じてセンサネットサーバ(SS)に格納される。
また、パフォーマンスデータは、別途、もしくは同じ端末(TR)から収集する。ここで、パフォーマンスとは、組織または個人の、業務の成果と結びつきのある基準となるもののことであり、例えば売り上げや利益率、顧客満足度、従業員満足度、ノルマ達成率、などがある。言い換えれば、端末を装着したメンバ、そのメンバが属する組織に関連する生産性を示すものといえる。また、パフォーマンスデータとは、パフォーマンスを表す定量的な値である。パフォーマンスデータは、組織の担当者が入力したり、個人が自らの主観的な評価を数値で入力したり、ネットワーク内に存在するデータを自動的に取得したりする方法によって、得る。パフォーマンスを得る装置を、総称としてここではパフォーマンス入力用クライアント(QC)と呼ぶ。パフォーマンス入力用クライアント(QC)は、パフォーマンスデータを得る仕組みと、それをセンサネットサーバ(SS)に送信する仕組みを有する。これは、PC(Personal Computer)であっても良いし、端末(TR)がパフォーマンス入力用クライアント(QC)の機能を兼ねるものであっても良い。
パフォーマンス入力用クライアント(QC)で得たパフォーマンスデータは、ネットワーク(NW)を通じてセンサネットサーバ(SS)に格納される。これらのセンシングデータとパフォーマンスデータから業務改善に関する表示を作成する際には、クライアント(CL)からアプリケーションサーバ(AS)に依頼を出し、対象となるメンバのセンシングデータとパフォーマンスデータをセンサネットサーバ(SS)から取り出す。それをアプリケーションサーバ(AS)において処理・解析し、画像を作成する。さらにその画像をクライアント(CL)に戻しディスプレイに表示(CLDP)する。これによって、業務改善をサポートする、一連の業務改善システムを実現する。なお、センサネットサーバとアプリケーションサーバを別々の装置として図示・説明するが、それらが同一の装置で構成されるものであってもよい。
なお、端末(TR)で取得したデータは無線によって逐次送信するのではなく、データを端末(TR)内に蓄積しておき、有線ネットワークに接続した際にそれらのデータを基地局(GW)に送信しても良い。
<図9:別々の特徴量による分析の例>
図9に、組織と個人のパフォーマンスと、メンバの行動との結びつきを分析する場合の例を示す。
この分析は、パフォーマンスデータと、センサ端末(TR)から得たユーザ(US)の活動データとを合わせて調べることによって、日々のどのような活動(例えば、体の動きや、コミュニケーションの仕方)がパフォーマンスに影響を与えているのかを知るためのものである。
ここでは、ユーザ(US)が装着した端末(TR)や、PC(Personal Computer)から得たセンシングデータから、一定のパターンを持つデータを特徴量(PF)として抽出し、複数種類の特徴量(PF)それぞれの、パフォーマンスデータとの関連性の強さを求める。このとき目的とするパフォーマンスに影響を与えている可能性が高い特徴量を選んでおき、対象組織またはユーザ(US)において実際にどの特徴量が強い影響力を有しているのかを検討する。その結果を踏まえて、関連性が強い特徴量(PF)特徴量を増やすような施策を実施すれば、ユーザ(US)の行動が変わり、さらにパフォーマンスが向上されるようになる。このようにして、業務を改善するためにどのような施策を立てるべきかがわかるようになる。
関連性の強さについては、ここでは「影響力係数」という数値を用いる。影響力係数は、特徴量の値とパフォーマンスデータとの同期の強さを示す実数値であり、正または負の符号を有する。符号が正の場合には、特徴量が上がるとパフォーマンスデータも上がるという同期性があることを示し、符号が負の場合には、特徴量が上がるとパフォーマンスデータが下がるという同期性があることを示す。また、影響力係数の絶対値が高い方が、より強く同期していることを示す。影響力係数としては、各特徴量とパフォーマンスデータとの相関係数を用いる。または、各特徴量を説明変数、パフォーマンスデータを目的変数とした重回帰分析によって求められる、偏回帰係数を用いる。影響力を数値で表すものであれば、それ以外の方法を用いて求めても良い。
図9(a)は、組織のパフォーマンスとして「チーム進捗度」を選択し、また特徴量(OF)としてはチーム内対面時間(OF01)などのチーム進捗度との関連が高い可能性のある5つのもの(OF01〜OF05)を用いた場合の、分析結果例(RS_OF)である。計算方法(CF_OF)は、センシングデータからそれぞれの特徴量(OF)を抽出するための計算の概要を示している。各特徴量(OF)の、チーム進捗度に対する影響力係数(OFX)の結果を見ると、最も影響力の絶対値が強いのは、(1)チーム内対面時間(OF01)であることがわかる。一方、(3)対面時活性度(OF03)は係数が負であるため、対面時活性度は低い。つまり、喧々諤々と意見を投げ合うブレーンストーミングよりも、みんなでじっくり考える形の会議の方が、この組織ではチーム進捗度が良くなることがわかる。例えばこの結果から、チーム内の会議を増やす、特にじっくり考える会議を増やす施策を実施することが、チーム進捗度を高めるために効果的であることが言える。よって、この分析によって組織改善の施策立案することができる。
また、図9(b)は、個人のパフォーマンスとしてアンケート回答による「充実感」を選択し、また特徴量(PF)としては個人の対面時間(PF01)などの充実感との関連が高い可能性のある5つのもの(PF01〜PF05)を用いた場合の、分析結果例(RS_PF)である。上記と同様に計算方法(CF_OF)は、センシングデータからそれぞれの特徴量(OF)を抽出するための計算の概要を示している。この結果から、対象組織のメンバーはPCタイピング数が最も充実感に強い影響力を有していることがわかり、よりPC作業に注力させる環境を整える施策によって、充実度を高めることができると言える。
これらのように、組織のパフォーマンスに対しては組織にまつわる特徴量を選択し、個人のパフォーマンスに対しては個人の行動にまつわる特徴量を選択して分析することで、それぞれを高めるための施策を立てるのに役立つ。しかしながら、組織における知識労働業務を改善するためには、1つのパフォーマンスだけを向上するだけでは不十分である可能性が高いと言える。特に、あるパフォーマンスを向上させようとすると、別のパフォーマンスが低下してしまう場合には問題である。図9(a)(b)の例のように、別々の特徴量を用いた分析では、組織のパフォーマンス「チーム進捗度」を上げるためのある特徴量に注目した施策の実施によって、個人のパフォーマンス「充実感」が低下してしまう可能性を孕んでいるが、その点には考慮していない。つまり、2種類のパフォーマンスに対して別々に行った分析結果を単純に組み合わせるだけでは、「チーム進捗度」と、「充実
感」とを共に高めるために、どのような特徴量に注目して施策を立てれば良いかを知るためには不十分である。特に、分析対象となる特徴量あるいはパフォーマンスの数が増えるほど、施策を立てるための指標となる特徴量を特定することには限界がある。したがって、複数のパフォーマンスを両立させるための別の分析の方法が必要である。
<図2・図3:バランスマップの説明>
図2に、第1の実施の形態による表示形式の説明図を示す。なお、この表示形式をバランスマップ(BM)と呼ぶ。バランスマップ(BM)は、図9の例で残された課題であった、複数のパフォーマンスを改善するための分析を行うことを可能にするものである。本バランスマップ(BM)の特徴は、複数のパフォーマンスに対して共通の特徴量の組み合わせを用いること、各特徴量についてそれぞれのパフォーマンスに対する影響力係数の正負の符号の組み合わせに着目すること、である。バランスマップ(BM)では、複数のパフォーマンスに対して各特徴量の影響力係数を計算し、各パフォーマンスに対する影響力係数をそれぞれ軸にとってプロットする。パフォーマンスとして、「ワーカーの充実度」と「組織の作業効率」を取った場合の、各特徴量の計算結果をプロットした例を図3に示す。処理の最後には、図3の形式の画像が画面に表示(CLDP)される。
複数の改善すべきパフォーマンスがある場合に、パフォーマンス同士がコンフリクトしないものであれば改善は容易である。なぜなら、相互に関連性のない場合には順に1つずつのパフォーマンスを改善するための施策を実施すれば良いのであり、また、相互に正の関連性がある場合には、一方のパフォーマンスを改善すれば合わせてもう一方も改善されるからである。しかし、パフォーマンス同士がコンフリクトする場合、つまり、相互に負の関連性がある場合には、業務の改善は最も困難である。なぜならば、コンフリクトを孕んだ状態のままでは、1つのパフォーマンスを改善してもまた別のものが悪化することを繰り返し、全体を最適にすることができないからである。しかし、だからこそ、このようなコンフリクトを生じる組み合わせのパフォーマンスのコンフリクトの要因を発見し、コンフリクトを解消することができれば、業務全体の改善に大きく貢献できると言える。本発明では、コンフリクトを生じる可能性の高い組み合わせのパフォーマンスに対して、共通の特徴量を用いて分析することで、パフォーマンス間のコンフリクトの要因となっている特徴量や、パフォーマンスを両方高める要因となる特徴量をそれぞれ分類して発見することができる。これによって、コンフリクト要因の解消や、コンフリクトを生じさせない改善のための、施策を立案することができるようになる。
ここで、特徴量とはメンバの活動(動きやコミュニケーション)に関するデータである。また、図3で用いた特徴量(BM_F01〜BM_F09)の例を図10の表(RS_BMF)に示す。図2と図3の例では、横軸にパフォーマンスAに対する影響力係数(BM_X)、縦軸にパフォーマンスBに対する影響力係数(BM_Y)を取る。X軸の値(
BM_X)が正である場合には、その特徴量はパフォーマンスAを向上する性質を持ち、Y軸の値(BM_Y)が正である場合には、パフォーマンスBを向上する性質を持つと言える。さらに、各象限において第1象限にある特徴量は、両方のパフォーマンスを向上する性質を持ち、第3象限のものは、両方のパフォーマンスを低下させる性質を持つと言える。また、第2と第4象限にある特徴量は、一方のパフォーマンスを向上するが一方を低下させる、つまりコンフリクトを生じる一要因であるとわかる。よって、バランスマップ(BM)における第1象限(BM1)と第3象限(BM3)をバランス領域、第2象限(BM2)と第4象限(BM4)をアンバランス領域と呼んで区別する。着目した特徴量がバランス領域にあるかアンバランス領域にあるかによって、改善のための施策立案のプロセスが異なるためである。施策立案のフローチャートは図16に示している。
なお、本発明は影響力係数の正負の組み合わせに着目するものであり、全て正の場合、または、全て負の場合にはバランス領域、それ以外の場合にはアンバランス領域に分類する。そのため、3種類以上のパフォーマンスに対しても本発明は適用可能である。平面図の表記と説明の便宜上、本明細書と図面では、パフォーマンスの種類の数は2種類であるとして説明する。
<図4〜図6:全体システムの流れ>
図4から図6は、本発明の実施の形態の組織連携表示装置を実現するセンサネットワークシステムの全体構成を説明するブロック図である。図示の都合上分割して示してあるが、各々図示された各処理は相互に連携して実行される。端末(TR)でそれを装着した人物の動きやコミュニケーションに関するセンシングデータを取得し、センシングデータは基地局(GW)を経由して、センサネットサーバ(SS)格納する。また、パフォーマンス入力用クライアント(QC)によってユーザ(US)のアンケート回答や業務データなどのパフォーマンスデータがセンサネットサーバ(SS)に格納される。また、アプリケーションサーバ(AS)においてセンシングデータとパフォーマンスデータの解析を行い、解析結果であるバランスマップをクライアント(CL)で出力する。図4から図6はこれらの一連の流れを示す。
図4から図6における形の異なる5種類の矢印は、それぞれ、時刻同期、アソシエイト、取得したセンシングデータの格納、データ解析、及び、制御信号のためのデータまたは信号の流れを表している。
<図4:全体システム(1)(CL・AS)>
<クライアント(CL)について>
クライアント(CL)は、ユーザ(US)との接点となって、データを入出力する。クライアント(CL)は、入出力部(CLIO)、送受信部(CLSR)、記憶部(CLME)及び制御部(CLCO)を備える。
入出力部(CLIO)は、ユーザ(US)とのインタフェースとなる部分である。入出力部(CLIO)は、ディスプレイ(CLOD)、キーボード(CLIK)及びマウス(CLIM)等を備える。必要に応じて外部入出力(CLIU)に他の入出力装置を接続することもできる。
ディスプレイ(CLOD)は、CRT(Cathode−Ray Tube)又は液晶ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ(CLOD)は、プリンタ等を含んでもよい。
送受信部(CLSR)は、アプリケーションサーバ(AS)又はセンサネットサーバ(SS)との間でデータの送信及び受信を行う。具体的には、送受信部(CLSR)は、解析条件をアプリケーションサーバ(AS)に送信し、解析結果、つまりバランスマップ(BM)を受信する。
記憶部(CLME)は、ハードディスク、メモリ又はSDカードのような外部記録装置で構成される。記憶部(CLME)は、解析設定情報(CLMT)等の、描画に必要な情報を記録する。解析設定情報(CLMT)は、ユーザ(US)から設定された解析対象とするメンバー及び解析条件などを記録し、また、アプリケーションサーバ(AS)から受け取った画像に関する情報、例えば、画像のサイズや、画面の表示位置に関する情報を記録する。さらに、記憶部(CLME)は、制御部(CLCO)のCPU(図示省略)によって実行されるプログラムを格納してもよい。
制御部(CLCO)は、CPU(図示省略)を備え、通信の制御、ユーザ(US)からの解析条件の入力、及び、解析結果をユーザ(US)に提示するための表示(CLDP)等を実行する。具体的には、CPUは、記憶部(CLME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(CLCC)、解析条件設定(CLIS)、及び表示(CLDP)等の処理を実行する。
通信制御(CLCC)は、有線又は無線によるアプリケーションサーバ(AS)又はセンサネットサーバ(SS)との間の通信のタイミングを制御する。また、通信制御(CLCC)は、データの形式を変換し、データの種類別に行き先を振り分ける。
解析条件設定(CLIS)は、ユーザ(US)から入出力部(CLIO)を介して指定される解析条件を受け取り、記憶部(CLME)の解析設定情報(CLMT)に記録する。ここでは、解析に用いるデータの期間、メンバー、解析の種類及び解析のためのパラメータ等が設定される。クライアント(CL)は、これらの設定をアプリケーションサーバ(AS)に送信して解析を依頼する。
表示(CLDP)は、アプリケーションサーバ(AS)から取得した解析結果である図3のようなバランスマップ(BM)をディスプレイ(CLOD)などの出力装置に出力する。このとき、アプリケーションサーバ(AS)から画像と合わせて表示方法に関する指示、例えば表示サイズや位置などが指定されていればそれに応じて表示する。ユーザ(US)がマウス(CLIM)などの入力装置を通じて画像のサイズや位置を微調整することもできる。
また、画像として解析結果を受け取るのではなく、バランスマップにおける各特徴量の影響力係数の数値のみを受け取り、それに従ってクライアント(CL)上で画像を作成しても良い。この場合には、アプリケーションサーバ(AS)とクライアント(CL)間のネットワークにおける伝送量を節約することができる。
<アプリサーバ(AS)について>
アプリケーションサーバ(AS)は、センシングデータを処理及び解析する。クライアント(CL)からの依頼を受けて、又は、設定された時刻に自動的に、解析アプリケーションが起動する。解析アプリケーションは、センサネットサーバ(SS)に依頼を送って、必要なセンシングデータやパフォーマンスデータを取得する。さらに、解析アプリケーションは、取得したデータを解析し、その結果をクライアント(CL)に返す。あるいは
、解析結果の画像または数値を、そのままアプリケーションサーバ(AS)内の記憶部(ASME)に記録しておいてもよい。
アプリケーションサーバ(AS)は、送受信部(ASSR)、記憶部(ASME)及び制御部(ASCO)を備える。
送受信部(ASSR)は、センサネットサーバ(SS)及びクライアント(CL)との間でデータの送信及び受信を行う。具体的には、送受信部(ASSR)は、クライアント(CL)から送られてきたコマンドを受信し、センサネットサーバ(SS)にデータ取得依頼を送信する。さらに、送受信部(ASSR)は、センサネットサーバ(SS)からセンシングデータやパフォーマンスデータを受信し、解析した結果の画像や数値をクライアント(CL)に送信する。
記憶部(ASME)は、ハードディスク、メモリ又はSDカードのような外部記録装置で構成される。記憶部(ASME)は、解析のための設定条件及び解析の結果または途中経過のデータを格納する。具体的には、記憶部(ASME)は、解析条件情報(ASMJ)、解析アルゴリズム(ASMA)、解析パラメータ(ASMP)、特徴量テーブル(A
SDF)、パフォーマンスデータテーブル(ASDQ)、影響力係数テーブル(ASDE)、パフォーマンス相関マトリクス(ASCM)及びユーザID対応表(ASUIT)を格納する。
解析条件情報(ASMJ)は、クライアント(CL)から依頼された解析のための条件や設定を一時的に記憶しておく。
解析アルゴリズム(ASMA)は、解析を行うプログラムを記録する。本実施例の場合では、コンフリクト計算(ASCP)や特徴量抽出(ASIF)や影響力係数計算(ASCK)やバランスマップ描画(ASPB)のプログラムを記録している。クライアント(CL)から依頼された解析条件に従って、解析アルゴリズム(ASMA)から適切なプログラムが選択され、そのプログラムによって解析が実行される。
解析パラメータ(ASMP)は、例えば、特徴量抽出(ASIF)における特徴量の基準となる値や、分析するデータのサンプリング間隔と期間などのパラメータを記録する。クライアント(CL)の依頼によってパラメータを変更する際には、解析パラメータ(ASMP)が書き換えられる。
特徴量テーブル(ASDF)は、センシングデータから抽出した複数種類の特徴量の結果の値を、用いたデータの時刻もしくは日付情報と結び付けて格納するためのテーブルである。テキストデータもしくはデータベースのテーブルによって構成される。これは、特徴量抽出(ASIF)において作成され、記憶部(ASME)に格納される。特徴量テーブル(ASDF)の例を図24や図27に示す。
パフォーマンスデータテーブル(ASDQ)は、パフォーマンスデータを時刻もしくは日付情報と結び付けて格納するためのテーブルである。テキストデータもしくはデータベースのテーブルによって構成される。これは、センサネットサーバ(SS)から得た各パフォーマンスデータを、標準化したZスコアに変換するなどの下処理をして格納したものであり、コンフリクト計算(ASCP)において利用される。Zスコアに変換するための式は数式(2)を用いる。パフォーマンスデータテーブル(ASDQ)の例を図18(a)に示す。また、Zスコアに変換する前の元のパフォーマンスデータテーブル(ASDQ_D)の例を図18(b)に示す。元データでは、例えば業務量の値の単位は[件]、値
の範囲は0〜100であり、アンケート回答では単位はなく範囲は1〜6であり、データ系列の分布の特性が異なる。そのため、各パフォーマンスデータの種類ごとに、つまり、元データのテーブル(ASDQ_D)の縦の列ごとに、各日付の値を(数式2)によってZスコアに変換する。これによって、標準化後のテーブル(ASDQ)では、各パフォーマンスデータの分布が平均0、分散1となるように統一される。そのため、後の影響力計算(ASCK)で重回帰分析を行う際に、各パフォーマンスデータに対する影響力係数の値の大小を比較することが可能になる。
パフォーマンス相関マトリクス(ASCM)は、コンフリクト計算(ASCP)において、パフォーマンスデータテーブル(ASDQ)内の、各パフォーマンス間の関連度の強さ、例えば相関係数を格納するテーブルである。テキストデータもしくはデータベースのテーブルによって構成され、その例を図19に示す。図19では、図18の各列のパフォーマンスデータの、全ての組み合わせについて相関係数を求めた結果を、テーブルの対応する要素に格納している。例えば、業務量(DQ01)とアンケート(「心」)回答値(DQ02)との相関係数は、パフォーマンス相関マトリクス(ASCM)の要素(CM_01−02)に格納されている。
影響力係数テーブル(ASDE)は、影響力係数計算(ASCK)によって計算された、各特徴量の影響力係数の値を格納するテーブルである。テキストデータもしくはデータベースのテーブルによって構成され、その例を図20に示す。影響力係数計算(ASCK)では数式(1)の方法によって、各特徴量(BM_F01〜BM_F09)の値を説明変数、パフォーマンスデータ(DQ02またはDQ01)を目的変数として代入し、各特徴量に対応する偏回帰係数を求める。その偏回帰係数を、影響力係数として格納したものが影響力係数テーブル(ASDE)である。
ユーザID対応表(ASUIT)は、端末(TR)のIDと、その端末を装着したユーザ(US)の氏名・ユーザ番号・所属グループ等との対照表である。クライアント(CL)から依頼があれば、センサネットサーバ(SS)から受け取ったデータの端末IDに人物の氏名が追加される。ある属性に適合する人物のデータのみを利用する場合、人物の氏名を端末IDに変換してセンサネットサーバ(SS)にデータ取得依頼を送信するために、ユーザID対応表(ASUIT)が照会される。ユーザID対応表(ASUIT)の例を図17に示す。
制御部(ASCO)は、CPU(図示省略)を備え、データの送受信の制御及びデータの解析を実行する。具体的には、CPU(図示省略)が記憶部(ASME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(ASCC)、解析条件設定(ASIS)、データ取得(ASGD)、コンフリクト計算(ASCP)、特徴量抽出(ASIF)、
影響力係数計算(ASCK)、及びバランスマップ描画(ASPB)等の処理が実行される。
通信制御(ASCC)は、有線又は無線によるセンサネットサーバ(SS)及びクライアントデータ(CL)との通信のタイミングを制御する。さらに、通信制御(ASCC)は、データの形式を適切に変換し、また、データの種類別に行き先の振り分けを行う。
解析条件設定(ASIS)は、クライアント(CL)を通してユーザ(US)が設定した解析条件を受け取り、記憶部(ASME)の解析条件情報(ASMJ)に記録する。
データ取得(ASGD)は、解析条件情報(ASMJ)に則ってセンサネットサーバ(SS)にユーザ(US)の活動に関するセンシングデータと、パフォーマンスデータを依頼し、返されたデータを受け取る。
コンフリクト計算(ASCP)は、多数のパフォーマンスデータの中から、特にコンフリクトを解消すべきパフォーマンスデータの組み合わせを見つけるための計算である。ここでコンフリクトしている可能性の高い1組のパフォーマンスデータを選択し、バランスマップの両軸に取るように分析する。コンフリクト計算(ASCP)のフローチャートを図14に示す。コンフリクト計算(ASCP)の結果は、パフォーマンス相関マトリクス(ASCM)に出力される。
特徴量抽出(ASIF)は、ユーザ(US)の活動に関するセンシングデータ、またはPCログなどのデータから、ある基準を満たすパターンのデータを抽出する計算である。例えば、1日単位でそのパターンが出現した回数をカウントし、日毎に出力する。特徴量は複数種類用い、どの特徴量を分析に用いるかはユーザ(US)が解析条件設定(CLIS)において設定している。それぞれの特徴量抽出(ASIF)のためのアルゴリズムは解析アルゴリズム(ASMA)を用いる。抽出された特徴量の値は、特徴量テーブル(ASDF)に格納される。
影響力係数計算(ASCK)は、各特徴量が、2種類のパフォーマンスに対して有する影響力の強さを求める処理である。これによって、特徴量それぞれに1組の影響力係数の数値が求められる。この計算処理では、相関計算もしくは重回帰分析が用いられる。影響力係数は、影響力係数テーブル(ASDE)に格納される。
バランスマップ描画(ASPB)は、各特徴量の影響力係数の値をプロットし、バランスマップ(BM)の画像を作成し、クライアント(CL)に送る。もしくは、プロットするための座標の値を計算し、その値と色などの必要最小限のデータのみをクライアント(CL)に送信しても良い。バランスマップ描画(ASPB)のフローチャートは図15に示す。
<図5:全体システム(2)(SS・GW・QC)>
図5は、センサネットサーバ(SS)、パフォーマンス入力用クライアント(QC)及び基地局(GW)の一実施例の構成を示している。
<サーバ(SS)について>
センサネットサーバ(SS)は、全ての端末(TR)から集まったデータを管理する。具体的には、センサネットサーバ(SS)は、基地局(GW)から送られてくるセンシングデータをセンシングデータベース(SSDB)に格納し、また、アプリケーションサーバ(AS)及びクライアント(CL)からの要求に基づいてセンシングデータを送信する。また、センサネットサーバ(SS)は、パフォーマンス入力用クライアント(QC)から送られてくるパフォーマンスデータをパフォーマンスデータベース(SSDQ)に格納し、また、アプリケーションサーバ(AS)及びクライアント(CL)からの要求に基づいてパフォーマンスデータを送信する。さらに、センサネットサーバ(SS)は、基地局(GW)からの制御コマンドを受信し、その制御コマンドから得られた結果を基地局(GW)に返信する。
センサネットサーバ(SS)は、送受信部(SSSR)、記憶部(SSME)及び制御部(SSCO)を備える。時刻同期管理(図示省略)が基地局(GW)ではなくセンサネットサーバ(SS)で実行される場合、センサネットサーバ(SS)は時計も必要とする。
送受信部(SSSR)は、基地局(GW)、アプリケーションサーバ(AS)、パフォーマンス入力用クライアント(QC)及びクライアント(CL)との間で、データの送信及び受信を行う。具体的には、送受信部(SSSR)は、基地局(GW)から送られてきたセンシングデータとパフォーマンス入力用クライアント(QC)から送られてきたパフォーマンスデータを受信し、アプリケーションサーバ(AS)又はクライアント(CL)へセンシングデータ及びパフォーマンスデータを送信する。
記憶部(SSME)は、ハードディスク等のデータ記憶装置によって構成され、少なくとも、パフォーマンスデータテーブル(SSDQ)、センシングデータベース(SSDB)、データ形式情報(SSMF)端末管理テーブル(SSTT)及び端末ファームウェア(SSTFD)を格納する。さらに、記憶部(SSME)は、制御部(SSCO)のCPU(図示省略)によって実行されるプログラムを格納してもよい。
パフォーマンスデータテーブル(SSDQ)は、パフォーマンス入力用クライアント(QC)において入力されたユーザ(US)の主観評価や、業務データに関するパフォーマンスデータを、時刻もしくは日付データと結びつけて記録するためのデータベースである。
センシングデータベース(SSDB)は、各端末(TR)が取得したセンシングデータ、端末(TR)の情報、及び、各端末(TR)から送信されたセンシングデータが通過した基地局(GW)の情報等を記録しておくためのデータベースである。加速度、温度等、データの要素ごとにカラムが作成され、データが管理される。また、データの要素ごとにテーブルが作成されてもよい。どちらの場合にも、全てのデータは、取得された端末(TR)のIDである端末情報(TRMT)と、取得された時刻に関する情報とが関連付けて管理される。センシングデータベース(SSDB)の中の、対面データテーブルと加速度データテーブルの具体的な例を図22と図25に示す。
データ形式情報(SSMF)には、通信のためのデータ形式、基地局(GW)でタグ付けされたセンシングデータを切り分けてデータベースに記録する方法、及び、データの要求に対する対応方法等が記録されている。データ受信の後、データ送信の前にはこのデータ形式情報(SSMF)が参照され、データ形式の変換とデータ振り分けが行われる。
端末管理テーブル(SSTT)は、どの端末(TR)が現在どの基地局(GW)の管理下にあるかを記録しているテーブルである。基地局(GW)の管理下に新たに端末(TR)が加わった際に、端末管理テーブル(SSTT)が更新される。
端末ファームウェア(SSTFD)は、端末を動作させるためのプログラムを記憶しているものであり、端末ファームウェア登録(TFI)が行われた際には、端末ファームウェア(SSTFD)が更新され、ネットワーク(NW)を通じてこのプログラムを基地局(GW)に送り、さらにパーソナルエリアネットワーク(PAN)を通じて端末(TR)に送る。
制御部(SSCO)は、CPU(図示省略)を備え、センシングデータの送受信やデータベースへの記録・取り出しを制御する。具体的には、CPUが記憶部(SSME)に格納されたプログラムを実行することによって、通信制御(SSCC)、端末管理情報修正(SSTF)及びデータ管理(SSDA)等の処理を実行する。
通信制御(SSCC)は、有線又は無線による基地局(GW)、アプリケーションサーバ(AS)、パフォーマンス入力用クライアント(QC)及びクライアント(CL)との
通信のタイミングを制御する。また、通信制御(SSCC)は、送受信するデータの形式を、記憶部(SSME)内に記録されたデータ形式情報(SSMF)に基づいて、センサネットサーバ(SS)内におけるデータ形式、又は、各通信相手に特化したデータ形式に変換する。さらに、通信制御(SSCC)は、データの種類を示すヘッダ部分を読み取って、対応する処理部へデータを振り分ける。具体的には、受信されたセンシングデータやパフォーマンスデータはデータ管理(SSDA)へ、端末管理情報を修正するコマンドは端末管理情報修正(SSTF)へ振り分けられる。送信されるデータの宛先は、基地局(GW)、アプリケーションサーバ(AS)、パフォーマンス入力用クライアント(QC)、又はクライアント(CL)に決定される。
端末管理情報修正(SSTF)は、基地局(GW)から端末管理情報を修正するコマンドを受け取った際に、端末管理テーブル(SSTT)を更新する。
データ管理(SSDA)は、記憶部(SSME)内のデータの修正・取得及び追加を管理する。例えば、データ管理(SSDA)によって、センシングデータは、タグ情報に基づいてデータの要素別にデータベースの適切なカラムに記録される。センシングデータがデータベースから読み出される際にも、時刻情報及び端末情報に基づいて必要なデータを選別し、時刻順に並べ替える等の処理が行われる。
<パフォーマンス入力用クライアント(QC)について>
パフォーマンス入力用クライアント(QC)は、主観評価データや業務データなどのパフォーマンスデータを入力するための装置である。ボタンやマウスなどの入力装置と、ディスプレイやマイクなどの出力装置を備えており、入力フォーマット(QCSS)を提示し、値を回答を入力させる。もしくは、ネットワーク上の他のPC上にある、業務データや操作ログなどを自動で取得するようにしても良い。パフォーマンス入力用クライアント(QC)は、クライアント(CL)、またはアプリケーションサーバ(AS)、またはセンサネットサーバ(SS)と同じパーソナルコンピュータを用いても良いし、端末(TR)を用いても良い。また、ユーザ(US)にパフォーマンス入力用クライアント(QC)を直接操作させるのではなく、紙の回答用紙に書かれた回答を代理人がまとめてパフォーマンス入力用クライアント(QC)から入力しても良い。
パフォーマンス入力用クライアント(QC)は、入出力部(QCIO)、記憶部(QCME)、制御部(QCCO)及び送受信部(QCSR)を備える。
入出力部(QCIO)は、ユーザ(US)とのインタフェースとなる部分である。入出力部(QCIO)は、ディスプレイ(QCOD)、キーボード(QCIK)及びマウス(QCIM)等を備える。必要に応じて外部入出力(QCIU)に他の入出力装置を接続することもできる。端末(TR)をパフォーマンス入力用クライアント(QC)として用いる場合には、ボタン(BTN1〜3)を入力装置として用いる。
ディスプレイ(QCOD)は、CRT(Cathode−Ray Tube)又は液晶ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ(QCOD)は、プリンタ等を含んでもよい。また、パフォーマンスデータを自動で取得する場合には、ディスプレイ(QCOD)などの出力装置はなくても良い。
記憶部(QCME)は、ハードディスク、メモリ又はSDカードのような外部記録装置で構成される。記憶部(QCME)は、入力フォーマット(QCSS)の情報を記録する。ユーザ(US)に入力させる際には、入力フォーマット(QCSS)をディスプレイ(QCOD)に提示し、その設問に対応する回答データをキーボード(QCIK)など入力装置から取得する。必要に応じて、入力フォーマット(QCSS)は、センサネットサーバ(SS)からのコマンドを受け取って変更されてもよい。
制御部(QCCO)は、パフォーマンスデータ収集(QCDG)によってキーボード(QCIK)などから入力されたパフォーマンスデータを収集し、さらにパフォーマンスデータ抽出(QCDC)において、各データとそれを回答したユーザ(US)の端末IDもしくは氏名とを結びつけて、パフォーマンスデータの形式を整える。送受信部(QCSR)は、整えられたパフォーマンスデータをセンサネットサーバ(SS)に送信する。
<基地局(GW)について>
基地局(GW)は、端末(TR)とセンサネットサーバ(SS)を仲介する役目を持つ。無線の到達距離を考慮して、居室・職場等の領域をカバーするように複数の基地局(GW)が配置される。
基地局(GW)は、送受信部(GWSR)、記憶部(GWME)、時計(GWCK)及び制御部(GWCO)を備える。
送受信部(GWSR)は、端末(TR)からの無線を受信し、基地局(GW)への有線又は無線による送信を行う。無線を用いる場合には、送受信部(GWSR)は、無線を受信するためのアンテナを備える。また、センサネットサーバ(SS)との通信を行う。
記憶部(GWME)は、ハードディスク、メモリ、又はSDカードのような外部記録装置で構成される。記憶部(GWME)には、動作設定(GWMA)、データ形式情報(GWMF)、端末管理テーブル(GWTT)、基地局情報(GWMG)及び端末ファームウ
ェア(GWTFD)が格納される。動作設定(GWMA)は、基地局(GW)の動作方法を示す情報を含む。データ形式情報(GWMF)は、通信のためのデータ形式を示す情報、及び、センシングデータにタグを付けるために必要な情報を含む。端末管理テーブル(GWTT)は、現在アソシエイトできている配下の端末(TR)の端末情報(TRMT)、及び、それらの端末(TR)を管理するために配布しているローカルIDを含む。基地局情報(GWMG)は、基地局(GW)自身のアドレスなどの情報を含む。端末ファームウェア(GWTFD)は、端末を動作させるためのプログラムを記憶しているものであり、端末ファームウェアを更新する際には、新規の端末ファームウェアをセンサネットサーバ(SS)から受け取り、それをパーソナルエリアネットワーク(PAN)を通じて端末(TR)に送信する。
記憶部(GWME)には、さらに、制御部(GWCO)のCPU(図示省略)によって実行されるプログラムが格納されてもよい。
時計(GWCK)は時刻情報を保持する。一定間隔でその時刻情報は更新される。具体的には、一定間隔でNTP(Network Time Protocol)サーバ(TS)から取得した時刻情報によって、時計(GWCK)の時刻情報が修正される。
制御部(GWCO)は、CPU(図示省略)を備える。CPUが記憶部(GWME)に格納されているプログラムを実行することによって、端末(TR)からセンシングデータを受信するタイミング、センシングデータの処理、端末(TR)やセンサネットサーバ(SS)への送受信のタイミング、及び、時刻同期のタイミングを管理する。具体的には、CPUが記憶部(GWME)に格納されているプログラムを実行することによって、無線通信制御・通信制御(GWCC)、アソシエイト(GWTA)、時刻同期管理(GWCD
)及び時刻同期(GWCS)等の処理を実行する。
通信制御部(GWCC)は、無線又は有線による端末(TR)及びセンサネットサーバ(SS)との通信のタイミングを制御する。また、通信制御部(GWCC)は、受信したデータの種類を区別する。具体的には、通信制御部(GWCC)は、受信したデータが一般のセンシングデータであるか、アソシエイトのためのデータであるか、時刻同期のレスポンスであるか等をデータのヘッダ部分から識別して、それらのデータをそれぞれ適切な機能に渡す。
アソシエイト(GWTA)は、端末(TR)から送られてきたアソシエイト要求(TRTAQ)に対して、割り付けたローカルIDを各端末(TR)に送信する、アソシエイト応答(TRTAR)を行う。アソシエイトが成立したら、アソシエイト(GWTA)は、端末管理テーブル(GWTT)を修正する端末管理情報修正(GWTF)を行う。
時刻同期管理(GWCD)は、時刻同期を実行する間隔及びタイミングを制御し、時刻同期するように命令を出す。あるいは、センサネットサーバ(SS)の制御部(SSCO)が時刻同期管理(図示省略)を実行することによって、センサネットサーバ(SS)からシステム内の全ての基地局(GW)に統括して命令を送ってもよい。
時刻同期(GWCS)は、ネットワーク上のNTPサーバ(TS)に接続し、時刻情報の依頼及び取得を行う。時刻同期(GWCS)は、取得した時刻情報に基づいて、時計(GWCK)を修正する。そして、時刻同期(GWCS)は、端末(TR)に時刻同期の命令と時刻情報(GWCSD)を送信する。
<図6:全体システム(3)(TR)>
図6は、センサノードの一実施例である端末(TR)の構成を示している。ここでは端末(TR)は名札型の形状をしており、人物の首からぶら下げることを想定しているが、これは一例であり、他の形状でもよい。端末(TR)は、多くの場合には、この一連のシステムの中に複数存在し、組織に属する人物がそれぞれ身に着けるものである。端末(TR)は人間の対面状況を検出するための複数の赤外線送受信部(AB)、装着者の動作を検出するための三軸加速度センサ(AC)、装着者の発話と周囲の音を検出するためのマイク(AD)、端末の裏表検知のための照度センサ(LS1F、LS1B)、温度センサ
(AE)の各種センサを搭載する。搭載するセンサは一例であり、装着者の対面状況と動作を検出するために他のセンサを使用してもよい。
本実施例では、赤外線送受信部を4組搭載する。赤外線送受信部(AB)は、端末(TR)の固有識別情報である端末情報(TRMT)を正面方向に向かって定期的に送信し続ける。他の端末(TR)を装着した人物が略正面(例えば、正面又は斜め正面)に位置した場合、端末(TR)と他の端末(TR)は、それぞれの端末情報(TRMT)を赤外線で相互にやり取りする。このため、誰と誰が対面しているのかを記録することができる。
各赤外線送受信部は一般に、赤外線送信のための赤外発光ダイオードと、赤外線フォトトランジスタの組み合わせにより構成される。赤外線ID送信部(IrID)は、自らのIDである端末情報(TRMT)を生成して赤外線送受信モジュールの赤外線発光ダイオードに対して転送する。本実施例では、複数の赤外線送受信モジュールに対して同一のデータを送信することで、全ての赤外線発光ダイオードが同時に点灯する。もちろん、それぞれ独立のタイミング、別のデータを出力してもよい。
また、赤外線送受信部(AB)の赤外線フォトトランジスタによって受信されたデータは、論理和回路(IROR)によって論理和が取られる。つまり、最低どれか一つの赤外線受光部でID受光されていれば端末にIDとして認識される。もちろん、IDの受信回路を独立して複数持つ構成でもよい。この場合、それぞれの赤外線送受信モジュールに対して送受信状態が把握できるので、例えば、対面する別の端末がどの方向にいるかなど付加的な情報を得ることも可能である。
センサによって検出したセンシングデータ(SENSD)はセンシングデータ格納制御部(SDCNT)によって、記憶部(STRG)に格納される。センシングデータ(SENSD)は通信制御部(TRCC)によって送信パケットに加工され、送受信部(TRSR)によって基地局(GW)に対し送信される。
このとき、記憶部(STRG)からセンシングデータ(SENSD)を取り出し、無線または有線による送信のタイミングを決定するのが通信タイミング制御部(TRTMG)である。通信タイミング制御部(TRTMG)は、複数のタイミングを決定する複数のタイムベースを持つ。
記憶部に格納されるデータには、現在センサによって検出したセンシングデータ(SENSD)の他、過去に蓄積したまとめ送りデータ(CMBD)や、端末の動作プログラムであるファームウェアを更新するためのファームウェア更新データ(FMUD)がある。
本実施例の端末(TR)は、外部電源接続検出回路(PDET)により、外部電源(EPOW)が接続されたことを検出し、外部電源検出信号(PDETS)を生成する。外部電源検出信号(PDETS)によって、タイミング制御部(TRTMG)が生成する送信タイミングを切り替えるタイムベース切替部(TMGSEL)、または無線通信されるデータを切り替えるデータ切替部(TRDSEL)は本端末(TR)特有の構成である。図6では一例として、送信タイミングを、タイムベース1(TB1)とタイムベース(TB2)の2つのタイムベースを、外部電源検出信号(PDETS)によってタイムベース切替部(TMGSEL)が切り替える構成を、また通信されるデータを、センサから得たセンシングデータ(SENSD)と、過去に蓄積した纏め贈りデータ(CMBD)と、ファームウェア更新データ(FIRMU)とから、外部電源検出信号(PDETS)によってデータ切替部(TRDSEL)が切り替える構成を図示している。
照度センサ(LS1F、LS1B)は、それぞれ端末(NN)の前面と裏面に搭載される。照度センサ(LS1F、LS1B)により取得されるデータは、センシングデータ格納制御部(SDCNT)によって記憶部(STRG)に格納されると同時に、裏返り検知部(FBDET)によって比較される。名札が正しく装着されているときは、前面に搭載されている照度センサ(LS1F)が外来光を受光し、裏面に搭載されている照度センサ(LS1B)は端末本体と装着者との間に挟まれる位置関係となるため、外来光を受光しない。このとき、照度センサ(LS1B)で検出される照度より、照度センサ(LS1F)で検出される照度の方が大きな値を取る。一方で、端末(TR)が裏返った場合、照度センサ(LS1B)が外来光を受光し、照度センサ(LS1F)が装着者側を向くため、照度センサ(LS1F)で検出される照度より、照度センサ(LS1B)で検出される照度の方が大きくなる。
ここで、照度センサ(LS1F)で検出される照度と、照度センサ(LS1B)で検出される照度を裏返り検知部(FBDET)で比較することで、名札ノードが裏返って、正しく装着していないことが検出できる。裏返り検知部(FBDET)で裏返りが検出されたとき、スピーカ(SP)により警告音を発生して装着者に通知する。
マイク(AD)は、音声情報を取得する。音声情報によって、「騒々しい」又は「静か」等の周囲の環境を知ることができる。さらに、人物の声を取得・分析することによって、コミュニケーションが活発か停滞しているのか、相互に対等に会話をやり取りしているか一方的に話しているのか、怒っているのか笑っているのか、などの対面コミュニケーションを分析することができる。さらに、人物の立ち位置等の関係で赤外線送受信器(AB)が検出できなかった対面状態を、音声情報及び加速度情報によって補うこともできる。
マイク(AD)で取得される音声は、音声波形及び、それを積分回路(AVG)で積分した信号の両方を取得する。積分した信号は、取得した音声のエネルギを表す。
三軸加速度センサ(AC)は、ノードの加速度すなわちノードの動きを検出する。このため、加速度データから、端末(TR)を装着した人物の動きの激しさや、歩行などの行動を解析することができる。さらに、複数の端末が検出した加速度の値を比較することによって、それらの端末を装着した人物間のコミュニケーションの活性度や相互のリズム、相互の相関等を解析できる。
本実施例の端末(TR)では、三軸加速度センサ(AC)で取得されるデータは、センシングデータ格納制御部(SDCNT)によって記憶部(STRG)に格納されると同時に、上下検知回路(UDDET)によって名札の向きを検出する。これは、三軸加速度センサ(AC)で検出される加速度は、装着者の動きによる動的な加速度変化と、地球の重力加速度による静的加速度の2種類が観測されることを利用している。
表示装置(LCDD)は、端末(TR)を胸に装着しているときは、装着者の所属、氏名などの個人情報を表示する。つまり、名札として振舞う。一方で、装着者が端末(TR)を手に持ち、表示装置(LCDD)を自分の方に向けると、端末(TR)の転地が逆になる。このとき、上下検知回路(UDDET)によって生成される上下検知信号(UDDET)により、表示装置(LCDD)に表示される内容と、ボタンの機能を切り替える。本実施例では、上下検知信号(UDDET)の値により、表示装置(LCDD)に表示させる情報を、表示制御(DISP)によって生成される赤外線アクティビティ解析(ANA)による解析結果と、名札表示(DNM)とを切り替える例を示している。
赤外線送受信器(AB)がノード間で赤外線をやり取りすることによって、端末(TR)が他の端末(TR)と対面したか否か、すなわち、端末(TR)を装着した人物が他の端末(TR)を装着した人物と対面したか否かが検出される。このため、端末(TR)は、人物の正面部に装着されることが望ましい。上述の通り、端末(TR)は、さらに、三軸加速度センサ(AC)等のセンサを備える。端末(TR)におけるセンシングのプロセスが、図7におけるセンシング(TRSS1)に相当する。
端末は多くの場合には複数存在し、それぞれが近い基地局(GW)と結びついてパーソナルエリアネットワーク(PAN)を形成している。
端末(TR)の温度センサ(AB)は端末のある場所の温度を、照度センサ(LS1F)は端末(TR)の正面方向などの照度を取得する。これによって、周囲の環境を記録することができる。例えば、温度及び照度に基づいて、端末(TR)が、ある場所から別の場所に移動したこと等を知ることもできる。
装着した人物に対応した入出力装置として、ボタン1〜3(BTN1〜3)、表示装置(LCDD)、スピーカ(SP)等を備える。
記憶部(STRG)は、具体的にはハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発記憶装置で構成され、端末(TR)の固有識別番号である端末情報(TRMT)、センシングの間隔、及び、ディスプレイへの出力内容等の動作設定(TRMA)を記録している。この他にも記憶部(STRG)は一時的にデータを記録することができ、センシングしたデータを記録しておくために利用される。
通信タイミング制御部(TRTMG)は、時刻情報(GWCSD)を保持し、一定間隔でその時刻情報(GWCSD)を更新する時計である。時間情報は、時刻情報(GWCSD)が他の端末(TR)とずれることを防ぐために、基地局(GW)から送信される時刻情報(GWCSD)によって定期的に時刻を修正する。
センシングデータ格納制御部(SDCNT)は、記憶部(STRG)に記録された動作設定(TRMA)に従って、各センサのセンシング間隔などを制御し、取得したデータを管理する。
時刻同期は、基地局(GW)から時刻情報を取得して時計を修正する。時刻同期は、後述するアソシエイトの直後に実行されてもよいし、基地局(GW)から送信された時刻同期コマンドに従って実行されてもよい。
通信制御部(TRCC)は、データを送受信する際に、送信間隔の制御、及び、無線の送受信に対応したデータフォーマットへの変換を行う。通信制御部(TRCC)は、必要であれば、無線でなく有線による通信機能を持ってもよい。通信制御部(TRCC)は、他の端末(TR)と送信タイミングが重ならないように輻輳制御を行うこともある。
アソシエイト(TRTA)は、図5に示す基地局(GW)とパーソナルエリアネットワーク(PAN)を形成するためのアソシエイト要求(TRTAQ)と、アソシエイト応答(TRTAR)を送受信し、データを送信すべき基地局(GW)を決定する。アソシエイト(TRTA)は、端末(TR)の電源が投入されたとき、及び、端末(TR)が移動した結果それまでの基地局(GW)との送受信が絶たれたときに実行される。アソシエイト(TRTA)の結果、端末(TR)は、その端末(TR)からの無線信号が届く近い範囲にある一つの基地局(GW)と関連付けられる。
送受信部(TRSR)は、アンテナを備え、無線信号の送信及び受信を行う。必要があれば、送受信部(TRSR)は、有線通信のためのコネクタを用いて送受信を行うこともできる。送受信部(TRSR)によって送受信されるデータ(TRSRD)は、基地局(GW)との間でパーソナルエリアネットワーク(PAN)を介して転送される。
<図7・図28・図29:データ格納のシーケンスとアンケート文面例>
図7は、本発明の実施の形態において実行される、センシングデータとパフォーマンスデータの2種類のデータを格納する手順を示すシーケンス図である。
まず、端末(TR)の電源が入っており、かつ端末(TR)が基地局(GW)とアソシエイト状態になっていないとき、端末(TR)はアソシエイト(TRTA1)を行う。アソシエイトとは、端末(TR)が、ある一つの基地局(GW)と通信する関係であると規定することである。アソシエイトによってデータの送信先を決定することで、端末(TR)は確実にデータを送信することができる。
基地局(GW)からアソシエイト応答を受け取り、アソシエイトが成功した場合、端末(TR)は、次に時刻同期(TRCS)を行う。時刻同期(TRCS)において、端末(TR)は、基地局(GW)から時刻情報を受け取り、端末(TR)内の時計(TRCK)を設定する。基地局(GW)は、NTPサーバ(TS)と定期的に接続し時刻を修正している。このため、全ての端末(TR)において時刻が同期される。これによって、後に解析する際に、センシングデータに付随した時刻情報を照らし合わせることで、人物間の同時刻におけるコミュニケーションにおける相互の身体表現又は音声情報のやり取りを分析することも可能になる。
端末(TR)の三軸加速度センサ(AC)や温度センサ(AE)などの各種センサは、例えば10秒ごとの一定の周期でタイマ起動(TRST)し、加速度、音声、温度及び照度等をセンシングする(TRSS1)。端末(TR)は、端末情報(TRMT)の1つである端末IDを、赤外線によって他の端末(TR)との間で送受信することで、対面状態を検出する。端末(TR)の各種センサは、タイマ起動(TRST)せずに、常にセンシングを行ってもよい。しかし、一定の周期で起動することによって電源を効率的に使用することができ、充電することなく長時間端末(TR)を使用しつづけることができる。
端末(TR)は、センシングしたデータに、時計(TRCK)の時刻情報及び端末情報(TRMT)を添付する(TRCT1)。端末情報(TRMT)によって、端末(TR)を装着した人物が識別される。
データ形式変換(TRDF1)において端末(TR)は、センシングデータにセンシングの条件などのタグ情報を付与し、決められた無線送信フォーマットに変換する。このフォーマットは基地局(GW)内のデータ形式情報(GWMF)やセンサネットサーバ(SS)内のデータ形式情報(SSMF)と共通して保管されているものである。変換されたデータは、その後、基地局(GW)に送信される。
加速度データ及び音声データ等の連続した多量のデータを送信する場合、端末(TR)は、データ分割(TRBD1)によって、一度に送信するデータ数を制限する。その結果、送信過程でデータが欠損するリスクが低下する。
データ送信(TRSE1)は、無線の送信規格に則り、送受信部(TRSR)を通して、アソシエイト先の基地局(GW)にデータを送信する。
基地局(GW)は、端末(TR)からデータを受信(GWRE)すると、受信完了レスポンスを端末(TR)に返す。レスポンスを受信した端末(TR)は、送信完了(TRSO)と判定する。
一定の時間を経ても送信完了(TRSO)しない(すなわち端末(TR)がレスポンスを受信しない)場合、端末(TR)は、データ送信失敗と判定する。この場合、データが端末(TR)内に記憶され、再び送信状態が確立されたときにまとめて送信される。これによって、端末(TR)を装着している人物が無線の届かない場所に移動してしまった場合、又は、基地局(GW)の不具合でデータが受信されなくなった場合にも、データを途切れさせることなく取得することが可能になる。これによって、十分な量のデータから組織の性質を解析することができる。この、送信に失敗したデータを端末(TR)に保管し、再送信する仕組みをまとめ送りと呼ぶ。
データのまとめ送りの手順を説明する。端末(TR)は、送信できなかったデータを記憶しておき(TRDM)、一定時間後に再びアソシエイトの依頼を行う(TRTA2)。
ここで基地局(GW)からアソシエイト応答が得られ、アソシエイトが成功(TRAS)した場合、端末(TR)は、データ形式変換(TRDF2)、データ分割(TRBD2)及びデータ送信(TRSE2)を実行する。これらの処理は、それぞれ、データ形式変換(TRDF1)、データ分割(TRBD1)及びデータ送信(TRSE1)と同様である。なお、データ送信(TRSE2)の際、無線が衝突しないように輻輳制御される。その後は通常の処理に戻る。
アソシエイトが成功(TRAS)しなかった場合、端末(TR)は、アソシエイトに成功するまで定期的にセンシング(TRSS2)と端末情報・時刻情報添付(TRCT2)実行する。センシング(TRSS2)及び端末情報・時刻情報添付(TRCT2)は、それぞれ、センシング(TRSS1)及び端末情報・時刻情報添付(TRCT1)と同様の処理である。これらの処理によって取得されたデータは、基地局(GW)とのアソシエイトが成功(TRAS)するまで、端末(TR)内に記憶される。端末(TR)内に記憶されたセンシングデータは、アソシエイト成功後、もしくは無線圏内で充電している時などの、安定して基地局と送受信できる環境が整った際に、まとめて基地局(GW)に送信される。
また、端末(TR)から送信されたセンシングデータは基地局(GW)によって受信(GWRE)される。基地局(GW)は、受信したデータが分割されたものであるか否かを、センシングデータに付随する分割フレーム番号によって判定する。データが分割されている場合、基地局(GW)は、データ結合(GWRC)を実行し、分割されたデータを連続したデータに結合する。さらに、基地局(GW)は、基地局固有の番号である基地局情報(GWMG)をセンシングデータに付与し(GWGT)、そのデータを、ネットワーク(NW)を介してセンサネットサーバ(SS)に向けて送信する(GWSE)。基地局情
報(GWMG)は、その時刻における端末(TR)の大まかな位置を示す情報として、データ解析の際に利用することができる。
センサネットサーバ(SS)は、基地局(GW)からデータを受信すると(SSRE)、データ管理(SSDA)において、受信したデータを時刻・端末情報・加速度・赤外線・温度などの要素ごとに分類する(SSPB)。この分類は、データ形式情報(SSMF)として記録されているフォーマットを参照することによって実行される。分類されたデータは、センシングデータベース(SSDB)のレコード(行)の適切なカラム(列)に格納される(SSKI)。同じ時刻に対応するデータを同じレコードに格納することで、時刻及び端末情報(TRMT)による検索が可能になる。このとき必要であれば、端末情報(TRMT)ごとにテーブルを作成しても良い。
次に、パフォーマンスデータの入力から格納のシーケンスについて述べる。ユーザ(US)がパフォーマンス入力用クライアント(QC)を操作し、アンケート入力のためのアプリケーションを起動する(USST)。パフォーマンス入力用クライアント(QC)は、入力フォーマット(QCSS)を読み込み(QCIN)、その設問をディスプレイなどに表示する(QCDI)。入力フォーマット(QCSS)、つまり、アンケートの設問の例は図28に示す。ユーザ(US)はアンケート設問に対して適切な位置に回答を入力し(USIN)、回答結果はパフォーマンス入力用クライアント(QC)に読み込まれる。
図28の例では、パフォーマンス入力用クライアント(QC)から各ユーザ(US)のPCにメールで入力フォーマット(QCSS01)が送信され、ユーザはそれに回答(QCSS02)を記入して入力フォーマット(QCSS)に返信する、という場合の例を示している。より具体的には、図28では、アンケートの設問内容が業務に関する主観評価(1)5つの成長(「体」の成長、「心」の成長、「行」の成長、「知」の成長、「人」の成長)(2)充実度(能力発揮度、難易度)をそれぞれ6段階評価するものであって、ユ
ーザが5つの成長として「体」4、「心」6、「行」5、「知」2.5、「人」3と評価し、「能力発揮度」5.5、「難易度」3と評価した場合を示している。また、図29は、端末(TR)をパフォーマンス入力用クライアント(QC)として利用した場合の端末の画面の例である。この場合には、表示装置(LCDD)に表示された設問に対して、ボタン1〜3(BTN1〜BTN3)を操作することで回答を入力する。
パフォーマンス入力用クライアント(QC)は入力されたものから必要な回答結果をパフォーマンスデータとして抽出し(QCDC)、パフォーマンスデータをセンサネットサーバに送信する(QCSE)。センサネットサーバ(SS)は、パフォーマンスデータを受信し(SSQR)、記憶部(SSME)内のパフォーマンスデータテーブル(SSDQ)の適切な場所に振り分けて格納する(SSQI)。
<図8:データ解析のシーケンス図>
図8は、データ解析、すなわち、センシングデータとパフォーマンスデータを用いてバランスマップを描画するまでのシーケンスを示す。
アプリケーション起動(USST)は、ユーザ(US)によるクライアント(CL)内のバランスマップ表示アプリケーションの起動である。
解析条件設定(CLIS)において、クライアント(CL)は、図の提示に必要な情報をユーザ(US)に設定させる。クライアント(CL)内に記憶された設定用ウィンドウの情報を表示する、もしくはアプリケーションサーバ(AS)から設定用ウィンドウの情報を受け取って表示し、ユーザ(US)の入力によって、表示の対象となるデータの時刻及び端末情報、表示方法の条件設定などを取得する。解析条件設定ウィンドウ(CLISWD)の例は図12に示す。ここで設定した条件は、解析設定情報(CLMT)として記憶部(CLME)に格納される。
データ依頼(CLSQ)において、クライアント(CL)は、解析条件設定(CLIS)に基づいて対象となるデータの期間やメンバを指定し、アプリケーションサーバ(AS)に対してデータもしくは画像の依頼を行う。記憶部(CLME)には、検索対象のアプリケーションサーバ(AS)の名称やアドレスなどの、センシングデータを取得するために必要な情報が格納されている。クライアント(CL)は、データの依頼コマンドを作成し、アプリケーションサーバ(AS)用の送信フォーマットに変換される。送信フォーマットに変換されたコマンドは、送信・受信部(CLSR)を経由して、アプリケーションサーバ(AS)に送信される。
アプリーションサーバ(AS)は、クライアント(CL)からの依頼を受信し、アプリケーションサーバ(AS)内で解析条件を設定し(ASIS)、条件を記憶部の解析条件
情報(ASMJ)に記録する。さらにセンサネットサーバ(SS)に対して取得すべきデータの時刻の範囲及びデータ取得対象である端末の固有IDを送信し、センシングデータを依頼する(ASRQ)。記憶部(ASME)には、検索対象のセンサネットサーバ(SS)の名称、アドレス、データベース名及びテーブル名等、データ信号を取得するために必要な情報が記載されている。
センサネットサーバ(SS)は、アプリーションサーバ(AS)から受け取った依頼に基づき、検索コマンドを作成し、センシングデータベース(SSDB)内を検索(SSDS)し、必要なセンシングデータを取得する。その後、センシングデータをアプリケーションサーバ(AS)に送信する(SSSE)。アプリーションサーバ(AS)は、そのデータを受信し(ASRE)、一時的に記憶部(ASME)に記憶する。この、データ依頼(ASRQ)からデータ受信(ASRE)までの流れが、図13のフローチャートにおけるセンシングデータ取得(ASGS)に相当する。
また、センシングデータの取得と同様にして、パフォーマンスデータの取得も行う。アプリケーションサーバ(AS)からセンサネットサーバ(SS)に対してパフォーマンスデータの依頼(ASRQ2)を行い、センサネットサーバ(SS)は記憶部(SSME)内のパフォーマンスデータテーブル(SSDQ)を検索し(SSDS2)、必要なパフォーマンスデータを取得する。そして、パフォーマンスデータを送信し(SSSE2)、アプリケーションサーバ(AS)がそれを受信する(ASRE2)。この、データ依頼(ASRQ2)からデータ受信(ASRE2)までの流れが、図13のフローチャートにおけるパフォーマンスデータ取得(ASGQ)に相当する。
次に、アプリケーションサーバ(AS)において、コンフリクト計算(ASCP)、特徴量抽出(ASIF)、影響力係数計算(ASCK)、及びバランスマップ描画(ASPB)の処理を順に行う。これらの処理を行うプログラムは、記憶部(ASME)に格納されており、制御部(ASCO)によって実行され、画像が作成される。
作成した画像は送信され(ASSE)、画像を受信(CLRE)したクライアント(CL)は、その出力デバイス、例えばディスプレイ(CLOD)に表示する(CLDP)。
最後に、アプリケーション終了(USEN)によって、ユーザ(US)がアプリケーションを終了する。
<図10:特徴量一覧の例>
図10は、バランスマップに用いる特徴量(BM_F)の組み合わせと、それぞれの計算方法(CF_BM_F)、対応する行動の例(CM_BM_F)とを整理した表の例(RS_BMF)である。本発明では、センシングデータなどからこのような特徴量(BM_F)を抽出し、2種類のパフォーマンスに対して各特徴量が持つ影響力係数からバランスマップを作成し、パフォーマンスを向上させるために効果的な特徴量を見つける。この一覧(RS_BMF)のように、計算方法(CF_BM_F)と対応する行動の例(CM_BM_F)とを理解しやすいように整理しておくことで、ある特徴量に注目して、施策を立てるための指針が得られる。例えば、「(3)対面(短)」(BM_F03)という特
徴量を増やす施策を立てるのであれば、指示や報告・相談が増えるように机のレイアウトを変える施策を実施することなどが思い浮かぶ。各特徴量に対応する行動の例(CM_BM_F)は、別途、センシングデータとビデオ観察の結果とを照らし合わせた結果を要約しておくと良い。
図10の特徴量例の一覧(RS_BMF)に示した各特徴量(BM_F01〜BM_F02)の計算方法は、実施例2において述べる。
<図11:特徴量と改善施策の対応表の例>
また、図11は、各特徴量に対応する施策の例を集めて整理した組織改善施策例一覧(IM_BMF)の例である。図10の対応する行動の例(CM_BM_F)を踏まえて立案した施策の例をこのようにノウハウとして整理しておくことで、施策立案をよりスムーズなものにすることができる。組織改善施策例一覧(IM_BMF)には、特徴量を増やすための施策例(KA_BM_F)と特徴量を減らすための施策例(KB_BM_F)の項目がある。これは、バランスマップ(BM)の結果と連動して施策例を立てる際に有用である。図2のバランスマップ(BM)において、注目している特徴量が第1象限のバランス領域(BM1)にある場合には、その特徴量を増やすことによって2種類のパフォーマンスを共に向上させることができるため、「特徴量を増やすための施策例」(KA_BM_F)の項目から適切な施策を選択すると良い。また、注目している特徴量が第3象限のバランス領域(BM3)にある場合には、その特徴量を減らすことによって2種類のパフォーマンスを共に向上させることができるため、「特徴量を減らすための施策例」(KB_BM_F)の項目から適切な施策を選択すると良い。第2象限(BM2)または第4象限(BM4)のアンバランス領域にある場合には、その特徴量が対応する行動の中に、2つのパフォーマンスをコンフリクトさせる要因が含まれているということであるため、図10の対応する行動の例(CM_BM_F)に戻って、コンフリクトを生じさせている行動を特定し、生じないように施策を立てれば良い。
これらの、組織改善施策立案の一連の流れについては、図16のフローチャートに示す。<図12:解析条件設定ウィンドウの見本>
図12は、クライアント(CL)における解析条件設定(CLIS)において、ユーザ(US)に条件を設定させるために表示される解析条件設定ウィンドウ(CLISWD)の例である。
解析条件設定ウィンドウ(CLISWD)では、表示に用いるデータの期間、すなわち解析対象期間設定(CLISPT)、解析データのサンプリング周期設定(CLISPD)、表示する対象となるメンバの設定(CLISPM)、表示サイズの設定(CLISPS)を行い、さらに、会席条件に関する設定(CLISPD)を行う。
解析対象期間設定(CLISPT)は、テキストボックス(PT01〜03、PT11〜13)にて日付を設定し、センシングデータが端末(TR)で取得された時刻と、パフォーマンスデータが表す日時(もしくは時刻)が、この範囲内にあるデータを計算の対象とするために指定するものである。必要があれば時刻の範囲を設定するテキストボックスを追加しても良い。
解析データサンプリング周期設定(CLISPD)では、テキストボックス(PD01)とプルダウンリスト(PD02)からデータを解析する際の、サンプリング周期を設定する。これは、多種類のセンシングデータやパフォーマンスデータにおいて、それぞれが取得されているサンプリング周期が異なるものを、いくつで揃えるかを指定するものである。基本的には、解析に用いるデータの中で、最もサンプリング周期が長いものに合わせると良い。多種類のデータのサンプリング周期を揃える方法については、本発明の第2の実施の形態と同じ方法を用いる。
解析対象メンバ設定(CLISPM)のウィンドウには、アプリケーションサーバ(AS)のユーザID対応表(ASUIT)から読み込んだユーザ名、また必要ならば端末IDを反映させる。このウィンドウを用いて設定する人物は、チェックボックス(PM01〜PM09)にチェックを入れる、もしくは入れないことで、どのメンバのデータを解析に用いるかを設定する。直接個々のメンバを指定するのではなく、既定のグループ単位、年齢などの条件によって表示メンバをまとめて指定させても良い。
表示サイズ設定(CLISPS)では、作成した画像を表示するサイズをテキストボックス(PS01、PS02)に入力して指定する。本実施の形態では、画面に表示される画像が長方形であることを前提としているが、その他の形状でも良い。画像の縦の長さがテキストボックス(PS01)に、横の長さがテキストボックス(PS02)に入力される。入力される数値の単位として、ピクセル又はセンチメートル等、何らかの長さの単位が指定される。
解析条件設定(CLISPD)では、解析の際に用いるパフォーマンスの候補や特徴量を選択する。それぞれ、チェックボックス(PD01〜PD05、PD11〜PD15)にチェックを入れることで選択する。
全ての入力を終えたら、最後に、表示開始ボタン(CLISST)をユーザ(US)が押す。これによってこれらの解析条件を決定し、解析条件を解析設定情報(CLMT)に記録し、また、アプリケーションサーバ(AS)に送信する。
<図13:全体の処理のフローチャート>
図13は、本発明の第1の実施の形態において、アプリケーションの立ち上げから表示画面がユーザ(US)に提供されるまでの大まかな処理の流れを示すフローチャートである。
開始(ASST)後、解析条件設定(ASIS)を行い、次に、センシングデータ取得(ASGS)から特徴量抽出(ASIF)、パフォーマンスデータ取得(ASGQ)からコンフリクト計算(ASCP)をそれぞれ平行して行う。特徴量抽出(ASIF)は加速度データや対面データ、音声データなどのセンシングデータにおいて、ある特定のパターンを有する部分の出現回数をカウントする処理である。また、コンフリクト計算(ASCP)においてバランスマップ(BM)に用いるパフォーマンスデータの組み合わせを決定する。
ここで得た特徴量とパフォーマンスデータを時刻で揃えて統合データテーブル(ASTK)を作成する(ASAD)。特徴量抽出(ASIF)から統合データテーブル作成方法については、実施例2の方法を用いると良い。そして次に、統合データテーブル(ASTK)を用いて、影響力係数計算(ASCK)を行う。影響力係数計算(ASCK)では、相関係数もしくは偏回帰係数を求め、影響力係数として用いる。相関係数を用いる場合には、各特徴量と各パフォーマンスデータのすべての組み合わせについて相関係数を求める。この場合には、影響力係数は、特徴量とパフォーマンスデータとの1対1の関係を示すことができる。また、偏回帰係数を用いる場合には、全特徴量を説明変数、パフォーマンスデータの1つを目的変数とした重回帰分析を行う。この場合には、偏回帰係数は、それぞれに対応する特徴量が、他の特徴量と比べて強くパフォーマンスデータに影響しているかという相対的な強さを示すことができる。なお、重回帰分析とは、1つの目的変数と複数の説明変数との関係を以下の重回帰式(1)で表す手法である。これによって求められる、偏回帰係数(a1、 ... 、ap)が、対応する特徴量(x1、 ... 、xp)の、パフォーマンスyに対する影響力を示すことになる。
このときに、ステップワイズ法などを用いて有用な特徴量のみを選択し、バランスマップに用いるようにしても良い。
次に、求めた影響力係数をX軸とY軸にプロットし、バランスマップ(BM)を描画する(ASPB)。最後に、そのバランスマップ(BM)をクライアント(CL)の画面に表示(CLDP)して終了(ASEN)となる。
<図14:コンフリクト計算のフローチャート>
図14は、コンフリクト計算(ASCP)の処理の流れを示すフローチャートである。コンフリクト計算(ASCP)では、開始(CPST)後、まず図18のようなパフォーマンスデータテーブル(ASDQ)を読み込み(CP01)、その中から1組を選択し(CP02)、その組の相関係数を求め(CP03)、図19のパフォーマンス相関マトリクス(ASCM)に出力する。全てのパフォーマンスの組み合わせについて処理を完了(CO04)するまでこれを繰り返し、最後に、相関係数が負であり、かつ、その絶対値が最も大きいパフォーマンスの組を選択(CP05)し、終了(CPEN)する。例えば図19のパフォーマンス相関マトリクス(ASCM)では、相関係数が−0.86の値である要素(CM_01−02)が負で最も絶対値が高いものであるため、業務量(DQ01)とアンケート(「心」)回答値(DQ02)のパフォーマンスデータの組合わせが、選択される。
このように、負の相関の強いパフォーマンスの組を選択することによって、両立することが難しい、つまりコンフリクトを生じやすいパフォーマンスの組み合わせを見つけることができる。この後のバランスマップ描画(ASPB)では、これらの2つのパフォーマンスを軸に取り、これらを両立させるための分析を行い、組織を改善するために役立てる。
<図15:バランスマップ描画のフローチャート>
図15は、バランスマップ描画(ASPB)の処理の流れを示すフローチャートである。
開始(PBST)後、バランスマップの軸と枠を描画(PB01)し、影響力係数テーブル(ASDE)の値を読み込む(PB02)。次に、特徴量を1つ選択(PB03)する。特徴量は2種類のパフォーマンスに対してそれぞれ影響力係数を有している。その一方の影響力係数をX座標に、もう一方の影響力係数をY座標に取って、値をプロットする(PB04)。全ての特徴量のプロットを完了(PB05)するまでこれを繰り返し、終
了(PBEN)とする。
このようにして影響力係数を二軸に取って表示することで、各特徴量が他の特徴量と比較してどのような性質を有しているかが数値でみるよりもわかりやすくなる。これによって、特に原点から遠い座標に位置する特徴量は、2つのパフォーマンス両方に対して強い影響力を持っていることがわかる。つまり、この特徴量に注目した施策を実施することによって、業務が改善される可能性が高いという見込みが得られる。また、互いに近くに位置する特徴量は性質が類似していることがわかる。このような場合には、どちらの特徴量に注目した施策を立てても似た結果が得られると言えるため、施策の選択肢が増えるという利点がある。
<図16:組織改善施策立案のフローチャート>
図16は、バランスマップ(BM)の描画結果を活用し、組織を改善する施策を立案するまでのプロセスの流れを示すフローチャートである。ただしこれは、分析者が行う手順であり、コンピュータなどにおいて自動で処理される手順ではないため、図4の全体システム図や図13のフローチャートには含まれていない。
まず、開始(SAST)後、バランスマップにおいて、原点からの距離が最も遠い特徴量を選択する(SA01)。これは、距離が遠いものほどパフォーマンスに対して有する影響力が強い特徴量であることを示しており、その特徴量に注目した改善施策を実施した際に大きな効果があると見込めるからである。また、2つのパフォーマンスにおいて、特にコンフリクトを解消させたい、という目的がある場合には、アンバランス領域(第1象限と第3象限)にある特徴量の中で、最も原点から遠くに位置する特徴量を選択しても良い。
特徴量を選択したら、次に、その特徴量が位置する領域に注目する(SA02)。それがアンバランス領域である場合には、さらに別途、特徴量が出現する場面を分析(SA11)し、特徴量がアンバランスを生み出す要因を特定(SA12)する。これは、例えば、ビデオ撮影による時刻を付した動画などと特徴量データとを比較することで、対象組織または人が、どのような行動をした時に2つのパフォーマンスのコンフリクトが生じるのかを特定できる。
わかりやすい例を挙げると、ある特徴量Xとして、加速度リズムの上下変動が多いこと、つまり、動いたり止まったりが頻繁に切り替わるような動きは、作業効率は向上させるが疲労感を増加させることがバランスマップの結果から得られたとする。この特徴量Xが現れる時刻を帯グラフなどで表示し、ビデオデータと比較する。その結果、ワーカーが多種類の仕事を抱えていて、並列して行っているときに特徴量Xが現れており、特に立ち歩きと着席が交互に繰り返されるために加速度リズムが上下変動しやすいのだとわかった。このケースでは、業務の並列は作業効率のために必要であるが、それに付随する身体の動きの変化が疲労感を増やしているといえる。そこで、立ったままで行う業務、座って行う業務、会議室で行う業務、自席で行う業務などの観点から、行動や場所が類似した業務を連続させるようにスケジュールを組み、加速度リズムの変化を減らすことが組織改善施策として挙げられる。
一方、ステップ(SA02)において、特徴量がバランス領域に位置していた場合には、さらにそれが第1象限か第3象限かを分類する(SA03)。第1象限である場合には、その特徴量は2つのパフォーマンスに対して共に正の影響力を持っていると言えるため、特徴量を増やすことで両パフォーマンスを向上できる。したがって、図11のような組織改善施策例一覧(IM_BMF)の「増やすための施策例(KA_BM_F)」から、組織に適した施策を選択する(SA31)。もしくは、これを参考にして、新たな施策を
立てても良い。ステップ(SA03)において、第3象限である場合には、その特徴量は2つのパフォーマンスに対して共に負の影響力を持っており、特徴量を減らすことで両パフォーマンスを向上できる。したがって、組織改善施策例一覧(IM_BMF)の「減らすための施策例(KB_BM_F)」から、組織に適した施策を選択する(SA21)。
もしくは、これを参考にして、新たな施策を立てても良い。
以上のようにして、実施すべき組織改善施策を決定(SA04)し、終了(SAEN)となる。もちろんこの後、決定された施策を実施し、再度ワーカーの活動をセンシングして、各特徴量に対応する行動が期待通りに変化しているかを確認することが望ましい。
このようにして、注目する特徴量、バランスマップ(BM)上の領域、施策リストに沿って順に決定していくことで、適切な組織改善施策をスムーズに立案することができる。もちろんリスト以外の施策を立てても良いが、バランスマップ(BM)による分析結果を参考にすることで、組織が抱える課題と目的をぶらさないマネジメントが可能となる。
<図17:ユーザID対応表(ASUIT)>
図17は、アプリケーションサーバ(AS)の記憶部(ASME)内に保管される、ユーザID対応表(ASUIT)の形式の例である。ユーザID対応表(ASUIT)にはユーザ番号(ASUIT1)、ユーザ名(ASUIT2)、端末ID(ASUIT3)及びグループ(ASUIT4)を相互に関連付けて記録されている。ユーザ番号(ASUIT1)は対面マトリクス(ASMM)や解析条件設定ウィンドウ(CLISWD)におけるユーザ(US)の並び順を規定するためのものである。また、ユーザ名(ASUIT2)は組織に属するユーザの氏名であり、例えば解析条件設定ウィンドウ(CLISWD)などに表示される。端末ID(ASUIT3)はユーザ(US)が所有する端末(TR)の端末情報を示すものである。これによって、特定の端末(TR)から得られたセンシングデータを、そのユーザ(US)の行動を表す情報と捉えて解析することができる。グループ(ASUIT4)はユーザ(US)が属するグループであり、共通の業務を行う単位であることを示す。グループ(ASUIT4)は不必要ならばなくても良い項目であるが、実施例4のように、グループ内・外の人とのコミュニケーションを区別する場合には必要である。また、他の年齢などの属性情報の項目を追加することもできる。組織のメンバ構成や所属グループなどに変更があった場合には、ユーザID対応表(ASUIT)を書き換えることで、解析結果にも反映される。また、個人情報であるユーザ名(ASUIT2)はアプリケーションサーバ(AS)内に置かず、ユーザ名(ASUIT2)と端末ID(ASUIT3)との対応表を別途クライアント(CL)に置いて、解析対象のメンバを設定させ、端末ID(ASUIT3)とユーザ番号(ASUIT1)のみをアプリケーションサーバ(AS)に送信しても良い。これによって、アプリケーションサーバ(AS)は個人情報を取り扱わずにすむため、アプリケーションサーバ(AS)管理者とクライアント(CL)の管理者が異なる場合に、個人情報の管理手続きに関する煩雑さを回避することが可能である。
このようにして、コンフリクトを生じうる2種類のパフォーマンスデータに対して、センサデータから得た共通の特徴量を用いて影響力係数を求めることによって、業務における複数のパフォーマンスのコンフリクトを解消し、共に高めるための改善施策の指針を得るために役立つ。言い換えると、定量的な分析によって、業務の全体最適を実現するために効果を上げることができる。
本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の第2の実施の形態は、パフォーマンスデータとセンシングデータが、異なるサンプリング周期で取得されていたり、欠損を含む不完全なものである場合にも、それらのデータのサンプリング周期と期間を統一する。これによって、2種類のパフォーマンスをバランスよく改善するためのバランスマップの描画を行うものである。
<図21〜図27:描画のフローチャート>
図21は、本発明の第2の実施の形態において、アプリケーションの立ち上げから表示画面がユーザ(US)に提供されるまでの処理の流れを示すフローチャートである。大枠の流れは、本発明の第1の実施の形態のフローチャート(図13)と同様であるが、特徴量抽出(ASIF)とコンフリクト計算(ASCP)、統合データテーブル作成(ASAD)における、サンプリング周期と期間の統一方法をより詳細に説明する。システム図とシーケンス図については第1の実施の形態と同じものを用いる。
特徴量抽出(ASIF)においては、生データであるセンシングデータについても、種類ごとにサンプリング周期は異なる。例えば加速度データは0.02秒、対面データは10秒、音声データは0.125ミリ秒であるようにバラつきがある。これは、各センサから得たい情報の性質に合わせてサンプリング周期が決定されているからである。人物間の対面の有無に関しては、秒単位で判別できれば十分であるが、音の周波数に関する情報を得たい場合には、ミリ秒単位でのセンシングが必要となる。特に加速度による動きのリズムや音による周囲環境の判別が、組織や行動の特性を反映している可能性が高いため、端末(TR)でのサンプリング周期は短く設定されている。
しかし、複数種類のデータを統合して分析するためには、各データのサンプリング周期を統一することが必要である。また、ここで単純に一定間隔でデータを間引くのではなく、各データの必要な特性を維持しつつ統合する必要がある。
本明細書では、加速度と対面に関する特徴量を抽出するプロセスを例に取って、サンプリング周期を統一するプロセスを説明する。加速度データでは、加速度の振動数であるリズムの特性を重視し、リズムの上下変動の特性を失わないようにサンプリング周期の統一を行う。対面データでは、対面が継続している時間に注目した処理を行う。なお、パフォーマンスデータの1つであるアンケートを1日1回収集すると仮定し、すべての特徴量の最終的なサンプリング周期は1日に揃えるものとする。一般的には、センシングデータやパフォーマンスデータにおいて、最もサンプリング周期の長いものに合わせるようにすると良い。
<加速度の特徴量の算出方法>
まず、特徴量抽出(ASIF)の加速度データについては、サンプリング周期0.02秒の生データから、所定の時間単位(例えば1分単位)でリズムを求め、さらに1日単位でリズムに関する特徴量をカウントするという段階を踏む。なお、リズムを求める時間の単位は、目的に応じて1分以外の値に設定することも可能である。
加速度データテーブル(SSDB_ACC_1002)の例を図25に、1分単位での加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)の例を図26に、1日単位での加速度リズム特徴量テーブル(ASDF_ACCRY1DAY_1002)の例を図27に示す。ここでは端末IDが1002番の端末(TR)によるデータのみからテーブルを作成したと想定しているが、複数端末のデータを1テーブルに用いて作成しても良い。
まず、ある人物に関する加速度データテーブル(SSDB_ACC_1002)から、1分単位で加速度リズムを計算した加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)を作成する(ASIF11)。加速度データテーブル(SSDB_ACC_1002)は端末(TR)の加速度センサでセンシングされたデータを、単位が[G]になるように変換しただけのものである。つまり生データとして捉えてよい。センシングした時刻情報と、三軸加速度センサのX・Y・Z軸それぞれの値が対応付けて格納されている。端末(TR)の電源が切られていたり、データが送信途中で欠損したりした場合には、データは格納されないため、加速度データテーブル(SSDB_ACC_1002)の各レコードは、常に0.02秒間隔になっているとは限らない。
1分単位の加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)を作成する際に、このような欠損時間を補う処理を合わせて行う。1分間の中で生データが何も入っていない場合には、加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)にはNullとして入力する。これによって、加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)は1日の0時から23時59分までを全て1分間隔で埋められたテーブルになる。
加速度リズムとは、一定時間内に、XYZの各方向の加速度の値が、正と負に振動した回数、つまり振動数である。加速度データテーブル(SSDB_ACC_1002)において、各方向の1分間の中での振動した回数を数えて合計する。もしくは、時間的に連続したデータが0をまたいだ回数(時刻tの値と時刻t+1の値をかけて負になる場合の数。ゼロクロス数と呼ぶ)を用いて計算を簡略化しても良い。
なお、加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)は、1つの端末(TR)ごとに、1日分ずつ存在する。
次に、1分単位の加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)のそれぞれの日のテーブルの値を処理して、1日単位での加速度リズム特徴量テーブル(ASDF_ACCRY1DAY_1002)を作成する(ASIF12)。
図27の1日単位での加速度リズム特徴量テーブル(ASDF_ACCRY1DAY_1002)では、「(6)加速度リズム(小)」(BM_F06)と「(7)加速度リズム(大)」(BM_F07)の特徴量をテーブルに格納した例を示している。特徴量「(6)加速度リズム(小)」(BM_F06)は、1日のうちのリズムが2[Hz]以下であった合計時間を示している。これは、1分単位での加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)において、加速度リズム(DBRY)がNullではなく、かつ、2Hz未満である個数をカウントし、60[秒]をかけた数値である。同様にして、特徴量「(7)加速度リズム(大)」(BM_F07)は、Nullではなく、かつ、2Hz
以上である個数をカウントし、60[秒]をかけたものである。ここで、2Hzを閾値としているのは、過去の分析結果より、PC作業や考え事などの個人で行う静かな動きと、歩き回ったり積極的に話しかけたりするときの他者と関わりのある活発な動きとの境目が、ほぼ2Hzであることがわかっているためである。
以上のようにして作成した加速度リズム特徴量テーブル(ASDF_ACCRY1DAY_1002)は、サンプリング周期は1日、期間は解析対象期間設定(CLISPT)と一致したものとなる。解析対象期間外のデータは削除される。
また、図10の特徴量例の一覧(RS_BMF)に記載した特徴量(BM_F05、BM_F08、BM_F09)の計算方法については以下に説明する。「(8)加速度リズム継続(短)(BM_F08)」と「(9)加速度リズム継続(長)(BM_F09)」は、
図26の1分単位の加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)において、近いリズムの値が一定時間継続した回数を数えたものである。例えば、0[Hz]以上1[Hz]未満、1[Hz]以上2[Hz]未満、というようにリズムの区切りを決めておき、1分ずつのリズムの値がどの範囲に入るかを判別する。そして、同じ範囲の値が5回以上継続した場合には、「(9)加速度リズム継続(長)(BM_F09)」の
特徴量としてカウントを1増やす。継続した数が5回未満であった場合には、「(8)加速度リズム継続(短)(BM_F08)」の特徴量としてカウントを1増やす。また、「(5)加速度エネルギ(BM_F05)」は、1分単位の加速度リズムテーブル(ASDF_ACCTY1MIN_1002)の各レコードのリズムの値を2乗し、それらの1日分の合計を求め、さらにNull以外のデータの個数で割ったものである。
<対面の特徴量の算出方法>
一方、対面データについての特徴量抽出(ASIF)では、2者間における対面結合テーブルを作成(ASIF21)し、そして、対面特徴量テーブルを作成する(ASIF22)。端末から取得した生の対面データは図22(a)や図22(b)のように人物ごとに対面テーブル(SSDB_IR)に格納されている。なお、テーブルは、端末IDをカラムに含むようにすれば、複数人物を混合したものでも良い。対面テーブル(SSDB_IR)には、赤外線送信側ID1(DBR1)・受信回数1(DBN1)の組を複数個と、センシングした時刻(DBTM)とを1レコードに格納している。赤外線送信側ID(DBR1)は、端末(TR)が赤外線で受信した他の端末のID番号であり(つまり、対面した端末のID番号)、また、10秒間でそのID番号を何回受信したかを受信回数1(DBN1)に格納している。10秒間中に複数の端末(TR)と対面することも有り得るため、赤外線送信側ID1(DBR1)・受信回数1(DBN1)の組は複数組(図22の例では10組)まで、格納できるようになっている。また、端末(TR)の電源が切られていたり、データが送信途中で欠損したりした場合には、データは格納されないため、対面テーブル(SSDB_IR)の時刻は、完全に10秒間隔にはなっていないことがある。この点についても、対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003
)作成時に整える必要がある。
また、生データでは、対面した2者について、一方の端末(TR)でしか赤外線を受信していない、ことがある。そこで、ある2者間の対面の有無のみを10秒間隔で示した対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003)を作成する。その例を図23に示す。対面結合テーブル(SSDB_IRCT)は、全ての人物の組み合わせについてそれぞれ作成する。全く対面していないペアについてはこれを作成しなくても良い。対面結合テーブル(SSDB_IRCT)は、時刻(CNTTM)情報と、その2者間の対面の有無(CNTIO)を示す情報とのカラムを持っており、その時刻に対面した場合には1、対面していない場合には0の値が格納される。
対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003)を作成する際の処理は、各人物に関する対面テーブル(SSDB_IR_1002、SSDB_IR_1003)において、時刻(DBTM)データを照らし合わせ、同じもしくは最も近い時刻の赤外線送信側IDを調べる。どちらか一方のテーブルに相手のIDが含まれていれば、その2者が対面したものと判定して、対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003)の該当するレコードに、時刻(CNTTM)データと合わせて、対面の有無(CNTIO)の欄に1を入力する。なお、対面したと判別するための基準は、赤外線受信回数が閾値以上であった場合とする、両方のテーブルに互いのIDが存在する場合とする、などの別の基準を用いても良い。しかし、経験上、本人が対面したと感じているよりも、対面データは少なく検出される傾向があるため、ここでは少なくとも一方で検出されていれば、その2者は対面したと判定する方法を採用した。また、対面結合テーブル(SSCB_IRCT)を実施例5の方法によって補完することによって、さらに対面データの欠損を補完し、対面の有無や対面が継続した時間について、より精度を高くすることも可能である。
以上のようにして、1日分ずつ、全メンバの組み合わせについて対面結合テーブルを作成する。
さらに、対面結合テーブルに基づき、ある人物に関する図24の例のような対面特徴量テーブル(ASDF_IR1DAY_1002)を作成する(ASIF22)。対面特徴量テーブル(ASDF_IR1DAY_1002)のサンプリング周期は1日であり、期間は解析対象期間設定(CLISPT)と一致する。解析対象期間外のデータは削除される。図24の例では、特徴量「(3)対面(短)」(BM_F03)は、端末ID1002番の端末(TR)と他の全ての端末(TR)に関して、1日で、対面結合テーブル(SSDB_IRCT)での対面の有無(CNTIO)のカラムの値に1が2回以上30回未満続いた回数、つまり20秒以上5分未満の対面が継続した回数を合計したものである。この際に、実施例4に示すような方法で対面結合テーブルを補完した後のものを用いてカウントしても良い。また、特徴量「(4)対面(長)」(BM_F04)は、同様に、対面の有無(CNTIO)のカラムの値に1が30回以上続いた回数、つまり5分以上の対面が継続した回数を合計したものである。
以上のように、サンプリング周期を順に大きくするように段階に分けて特徴量を求める。これによって、各データについて分析に必要な特性を維持しつつ、サンプリング周期を統一した一連のデータを用意することができる。段階に分けない例としては、1日分の加速度の生データを平均して、1つの値を算出することが考えられるが、このような方法では1日のデータが平滑化されてしまい、その日の活動の特性の差がわからなくなる可能性が高い。よって、段階に分けることで特性を維持した特徴量の値を得ることができる。
<図28〜図30:パフォーマンスデータについて>
パフォーマンスデータについては、コンフリクト計算(ASCP)の始めにサンプリング周期を統一する処理(ASCP1)を行う。図28のようなアンケート用紙または電子メール、または図29の端末(TR)などを用いて入力されたアンケートの回答データは、図30のパフォーマンスデータテーブル(SSDQ)のように、取得時刻(SSDQ2)と回答したユーザ番号(SSDQ1)を付与して格納される。また、業務に関するパフォーマンスデータがある場合には、それらもパフォーマンステーブル(SSDQ)に含まれる。パフォーマンスデータの収集頻度は、1日に一回でも良いし、それ以上でも良い。サンプリング周期統一(ASCP)では、パフォーマンスデータテーブル(SSDQ)の元データを、ユーザごとにテーブルを分け、また回答されていない日があった場合にはそれをNullデータで補完し、サンプリング周期が1日となるように整理する。
そのデータに基づき、実施例1の図14のフローチャートと同様の方法を用いて、全ての組み合わせのパフォーマンス間での相関係数を計算(ASCP2)し、最もコンフリクトの大きい組のパフォーマンスを選択(ASCP3)する。
<図31:統合データテーブル>
図31に、統合データテーブルの作成(ASAD)によって出力される、統合データテーブル(ASTK_1002)の例を示す。統合データテーブル(ASTK)は、特徴量抽出(ASIF)とコンフリクト計算(ASCP)によって得られた、期間とサンプリング周期が統一されたセンシングデータとパフォーマンスデータとを、日付で紐付けて整理したテーブルである。
統合データテーブル(ASTK_1002)の中の値は、各カラム(特徴量またはパフォーマンス)についてZスコアに変換しておく。Zスコアとは、そのカラムのデータの分布が、平均値が0、標準偏差が1のものになるように標準化された値である。
あるカラムXの値(Xi)は、以下の数式(2)によって標準化される、つまり、Zスコア(Zi)に変換される。
この処理によって、データの分布や値の単位が異なる、複数種類のパフォーマンスデータや特徴量における影響力の計算を、一括して重回帰分析で扱うことができる。
このようにして、元のサンプリング周期が異なる複数種類のセンシングデータやパフォーマンスデータを、サンプリング周期とデータの期間が統一されるように処理を行うことによって、影響力計算において、同質のデータとして数式に導入して計算することが可能になっている。また、加速度データについては、まず短い時間単位でのリズムを求め、そして1日単位での特徴量として抽出する、という段階に分けることで、1日全体のリズムを直接求めるよりも格段に、日ごとの性質が反映された特徴量を得ることができる。また、対面データについては、複数の人物間の相互の対面情報を、シンプルな対面結合テーブル(SSDB_IRCT)に統一しておくことで、特徴量抽出のプロセスがシンプルになっている。また、実施例5の方法などを用いて、欠けたデータを補完する際の処理を簡単に行うことができる。
本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明の第3の実施の形態は、パフォーマンスデータとして主観データと客観データを収集し、バランスマップ(BM)の作成を行うものである。主観によるパフォーマンスデータには、例えば従業員の充実感ややりがい、ストレス、顧客の満足度などが挙げられる。
主観データは、人物の内面を表す指標である。特に知識労働やサービス業においては、従業員の一人一人が高いモチベーションを持ち、自発的に業務に取り組まなくては質の高いアイディアやサービスを提供することはできない。また、顧客の側から見ても、大量生産時代のように、顧客は製品の材料費と人件費という実質的な費用に対して金銭を支払うのではなく、製品やサービスに伴う楽しさや興奮などの付加価値を経験することに対して金銭を支払うようになってきている。したがって、組織の生産性を向上させるという目的において、人物の主観に関するデータを得ることが必要になる。主観データを得るためには、端末(TR)のユーザである従業員、または顧客にアンケートに回答することを依頼する。または、実施例7のように端末(TR)から得たセンサデータを分析して主観データとして扱うことも可能である。
また一方で、客観的なパフォーマンスデータを用いることにも意義がある。客観データには、例えば、売り上げや株価、処理にかかった時間、PCのタイピング数などがある。これらは、組織をマネジメントするために従来より計測され、分析されてきた指標であるが、主観的評価に比べてデータ値の根拠が明確である点、ユーザに負担をかけずに自動収集が可能である点、においてメリットがある。また、やはり現代でも最終的な組織の生産性は、売り上げや株価などの定量的な指標で評価されるものであるため、これらを向上させることを必ず求められる。客観的なパフォーマンスデータを得るためには、組織の業務用データサーバに接続して必要なデータを取得する、または、従業員が日頃使っているPCにて操作ログを記録する、などの方法がある。
このように、主観データと客観データとは共に必要な情報である。これらをセンサネットシステムと合わせて一括して処理できるシステムを構築することで、主観と客観の両面から組織を分析し、組織の生産性を総合的に向上させることができる。
<図32:システム図>
図32は、本発明の第3の実施の形態を実現するセンサネットシステムの全体構成を説明するブロック図である。本発明の第1の実施の形態における、図4〜図6の、パフォーマンス入力用クライアント(QC)のみが異なる。その他の部分と処理は本発明の第1の実施の形態と同様のものを用いるため省略した。
パフォーマンス入力用クライアント(QC)には、主観データ入力部(QCS)と客観データ入力部(QCO)とが存在する。ここでは、主観データはユーザが装着した端末(TR)を介して、アンケート回答を送ることで得ることを想定する。ユーザが使用している個人クライアントPCを介してアンケートに回答する方法を用いてもよい。また、客観データにおいては、例として、組織の定量的データである業務データと、各ユーザ個人が使用している個人クライアントPCの操作ログとを収集する方法について述べる。これ以外の客観データを用いても良い。
主観データ入力部(QCS)は、記憶部(QCSME)、入出力部(QSCIO)、制御部(QCSCO)、送受信部(QCSSR)を有する。ここでは主観データ入力部(QCS)は、1つまたは複数の端末(TR)がその働きを兼ねるものとする。記憶部(QCSME)は、アンケートを入力させるためのソフトウェアである入力アプリケーション(SME_P)のプログラム、アンケートの設問や回答データのフォーマットを設定している入力フォーマット(SME_SS)、また入力されたアンケート回答である主観データ(SME_D)を記憶している。
また、入出力部(QCSIO)は、表示装置(LCDD)とボタン1〜3(BTN1〜BTM3)を有する。これらは、図6や図29の端末(TR)と同じものである。
制御部(QCSCO)は、主観データ収集(SCO_LC)と通信制御(SCO_CC)を行い、送受信部(QCSSR)はセンサネットサーバなどとのデータ送受信を行う。主観データ収集(SCO_LC)を行う際には、図29と同様に、表示装置(LCDD)に設問を表示し、ユーザ(US)はボタン1〜3(BTN1〜BTM3)の操作によって、回答を入力する。入力フォーマット(SME_SS)を参照して、入力されたデータから必要なものを選択し、主観データ(SME_D)に端末IDや入力時刻を付与し、データを記憶する。これらのデータは、通信制御(SCO_CC)によって、端末(TR)のデータ送受信タイミングに合わせてセンサネットサーバ(SS)に送信される。
客観データ入力部(QCO)には、組織の業務データを管理するための業務データサーバ(QCOG)と各ユーザ個人が使用している個人クライアントPC(QCOP)がある。それぞれ、1台もしくは複数台存在する。
業務データサーバ(QCOG)は、同じサーバ内、もしくはネットワーク内の別のサーバに存在する売り上げや株価などの情報から、必要な情報を収集する。組織の機密情報に当たる情報も含まれる可能性があるため、アクセス制御などのセキュリティ面での仕組みを有していることが望ましい。なお、異なるサーバから業務データを取得する場合も、便宜上、同じ業務データサーバ(QCOG)内にあるものとして図には記載している。業務データサーバ(QCOG)は、記憶部(QCOGME)と制御部(QCOGCO)、送受
信部(QCOGSR)を有する。図には入出力部を記載していないが、業務担当者がサーバに直接業務データを入力する場合には、キーボードなどを含む入出力部が必要である。
記憶部(QCOGME)は、業務データ収集プログラム(OGME_P)と、業務データ(OGME_D)、そしてセンサネットサーバ(SS)など他のコンピュータからのアクセスを許可するかどうかを設定しているアクセス設定(OGME_A)を有する。
制御部(QCOGCO)は、送信先のセンサネットサーバ(SS)に業務データを送信して良いかを判断するアクセス制御(OGCO_AC)と、業務データ収集(OGCO_LC)、通信制御(OGCO_CC)を順に行って、送受信部(QCOGSR)を通して業務データを送信する。業務データ収集(OGCO_LC)では、必要な業務データを選別し、それに対応する時刻情報とを組にして取得する。
個人クライアントPC(QCOP)では、タイピング数や同時起動ウィンドウ数、タイピングエラー数などの、PCの操作に関するログ情報を取得する。これらの情報は、ユーザの個人作業に関するパフォーマンスデータとして用いることができる。
個人クライアントPC(QCOP)は、記憶部(QCOPME)、入出力部(QCOPIO)、制御部(QCOPCO)、送受信部(QCOPSR)を有する。記憶部(QCO
PME)には、操作ログ収集プログラム(OPME_P)と収集した操作ログデータ(OPME_D)が記憶されている。また、入出力部(QCOPIO)にはディスプレイ(OPOD)、キーボード(OPIK)、マウス(OPIM)、その他の外部入出力(OPIU)などを含む。入出力部(QCOPIO)によってPCを操作した記録を、操作ログ収集(OPCO_LC)において収集し、その中から必要なデータのみをセンサネットサーバ(SS)に送信する。送信時には、通信制御(OPCO_CC)を経て送受信部(QCOPSR)から送信される。
パフォーマンス入力用クライアント(QC)によって収集されたこれらのパフォーマンスデータは、ネットワーク(NW)を通じてセンサネットサーバ(SS)内のパフォーマンスデータテーブル(SSDQ)に格納される。
<図33:パフォーマンスの組み合わせの例>
図33は、バランスマップ(BM)の両軸に取るパフォーマンスデータの組み合わせの例(ASPFEX)を示したものである。第一のパフォーマンスデータ(PFD1)と第二のパフォーマンスデータ(PFD2)について、データの内容と、主観か客観かの分類とを示している。なお、第一と第二のパフォーマンスデータについては、どちらをX軸に取っても構わない。
図32に示したシステムを用いて収集できるパフォーマンスデータには、個人に関する主観データ、組織の業務に関する客観データ、個人の業務に関する客観データなどがある。実施例1の図14に示したコンフリクト計算(ASCP)と同様の方法によって、これら多種類のパフォーマンスデータの中からコンフリクトしがちな組を選択しも良いし、組織を改善したい目的に合わせて一組のパフォーマンスデータを選択しても良い。
図33の各パフォーマンスデータの組み合わせを採用した分析によって、組織改善に効果を挙げる点を以下に述べる。
1番(NO.1)の組み合わせでは、主観データであるアンケート回答の「体」の項目と、客観データである個人PCにおけるデータ処理量とのバランスマップ(BM)を作成する。データ処理量を上げることは個人作業のスピードを上げることである。しかし、スピードを上げることのみに注力していると、身体的な不調に繋がる可能性がある。そこで、このバランスマップ(BM)で分析することで、身体的な調子を維持しつつ、個人作業のスピードを向上するための施策を検討できる。また、同様に、2番(NO.2)のアンケート回答「心」と個人PCのデータ処理量との分析によっては、精神的な調子、つまりモチベーションを下げないように個人作業のスピードを向上するための施策を検討できる。
また、3番(NO.3)の例では、客観データ同士、かつ個人PCの操作ログ同士である、個人のタイピング速度とタイピングエラー回避率をパフォーマンスデータに取っている。これは、一般的にタイピング速度を向上させると、エラーが増えるというコンフリクトが生じるため、そのコンフリクトを解消させる方法を探すのが目的である。この例において、パフォーマンスデータは共にPCのログ情報であるが、バランスマップ(BM)にプロットする特徴量としては、端末(TR)から取得した加速度データや対面データを含むように選択する。こうして分析することによって、頻繁に話しかけられることによる集中力の低下や、慌しい動きによる焦りなどが、タイピングエラーとの関係のある要因として明らかになる可能性がある。
4番(NO.4)の例では、アンケート回答の「体」と組織全体の業務処理量との組み合わせを選択し、5番(NO.5)の例では、アンケート回答の「心」と組織全体の業務処理量との組み合わせを選択している。マネジメントにおいて、組織全体の生産性(ここでは業務処理量)を上げるためには、しばしば個人の感情や健康を無視してしまうことがる。そのため、4番や5番のように、個人の主観データと組織の客観データとを合わせた分析を行うことで、個々の従業員の感情や健康と、組織の生産性とを両立させるためのマネジメントを可能にする。また、特徴量としては従業員の行動を反映したセンシングデータを用いるため、従業員の行動変化に着目したマネジメントが実現できる。
また、6番(NO.6)の例では、センシングデータによる組織全体のコミュニケーション量と、組織全体の業務処理量との組み合わせを選択する。この場合はどちらも客観データである。コミュニケーション量と業務処理量については、コンフリクトする場合としない場合があると考えられる。情報共有が必要な業務においてはこれらはコンフリクトしないが、作業ベースの業務においては、コミュニケーション量は少ない方が業務処理量は向上するというコンフリクトが生じる可能性がある。しかしながら、組織におけるコミュニケーションは、従業員同士の協力の姿勢をはぐくんだり、新しいアイディアを創発するために必要なものであり、長期的には必須のものである。そのため、バランスマップ(BM)を用いて分析することで、コンフリクトを生じる行動と生じない行動とを分析することで、短期的に効果を成す業務処理量と長期的に効果を成すコミュニケーション量とを両立するマネジメントを実現できる。
このようにして、主観によるパフォーマンスデータと客観的なパフォーマンスデータとを収集し、さらにセンシングデータと合わせて一括で処理するシステムを実現することで、関係者の心理的な側面と客観的な指標との両面から組織を分析し、組織の生産性を総合的に向上させることができる。
本発明の第4の実施の形態について図面を参照して説明する。
<図34:バランスマップ>
図34に、本発明の第4の実施の形態の例を示す。本発明の第4の実施の形態は、本発明1〜3の実施の形態によるバランスマップにおいて、各特徴量が位置する象限のみに着目し、各象限に特徴量の名前を文字で記述する表示方法である。名前を直接表示するのではなく、特徴量の名前と象限との対応がわかる表示方法なら他の方法でも良い。
図3のように影響力係数の値を図にプロットして表現した方法は、詳細な分析を行う分析者には有意義であるが、一般ユーザに結果をフィードバックする際には、一般ユーザは値の意味を理解するのに気を取られ、結果が意味するところを理解しづらくなるという問題がある。そこで、このバランスマップの本質である、特徴量が位置する象限の情報のみを表示する。その際に、一方の影響力係数が0に近いもの、つまり図3のバランスマップにおいてX軸またはY軸近くにプロットされている特徴量は、位置する象限が明確ではなく、バランスマップにおいて重要な指標ではないと言えるため、表示しないようにする。そこで、表示するための影響力係数の閾値を設け、X軸・Y軸の影響力係数が共に閾値以上の特徴量のみを選択するプロセスを追加する。
<図35:フローチャート>
図35は、図34のバランスマップを描画するための処理の流れを示すフローチャートである。センサデータの取得から画像を画面に表示するまでの全体のプロセスは、実施例1の図13の手順と同様のものを用いる。そのうちの、バランスマップ描画(ASPB)の手順のみを図35に置き換える。
開始(PBST)後、まず、バランス領域やアンバランス領域に位置していると判別するための、影響力係数の閾値を設定する(PB10)。次に、バランスマップの軸と枠を描画(PB11)し、影響力係数テーブル(ASDE)を読み込む。次に特徴量を1つ選択する(PC13)。プロセス(PB11〜PB13)は、図15と同じ方法で行う。次に、選択した特徴量について、その特徴量の、2つのパフォーマンスに対する影響力係数が共に閾値以上かどうかを判別する(PB14)。閾値以上であった場合には、その影響力係数の正負の組み合わせから対応する象限を判断し、その象限に特徴量の名称を記載する(PB15)。このプロセスを、全ての特徴量についての処理を完了(PB16)するまで繰り返し、終了(PBEN)とする。
このようにして、各特徴量が4象限のどの領域に属しているか、のみをバランスマップ(BM)に特徴量の名前で表示することによって、必要最低限の情報、つまり、特徴量が有している特性のみをシンプルに読み取ることができるようになる。これは、影響力係数の値などの詳細な情報を必要としない、一般ユーザなどに分析結果を説明する際に有用である。
本発明の第5の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の第5の実施の形態は、本発明の第1〜4の実施の形態で用いる特徴量の一例である、対面と対面時姿勢変化(図10の特徴量例の一覧(RS_BMF)の(BM_F01〜BM_F04))を抽出する処理である。図13の特徴量抽出(ASIF)の処理に相当する。
<図36:対面データの検出範囲>
図36は、端末(TR)における、対面データの検出範囲の例を示す図である。端末(TR)は複数個の赤外線送受信器を有しており、広範囲に検出できるように上下左右に角度差を付けて固定されている。この赤外線送受信器は、人と人とが向かい合って会話をする対面状態を検出することを目的としているため、例えば検出距離は3メートル、検出角度は左右は30度、上方向に15度、下方向に45度となっている。これによって、完全に正対していない、つまり斜めを向いた状態での対面や、身長差のある人物間、または一方が着席、一方が起立した状態での対面も検出できるように配慮している。
組織において生産性との関連性を分析する際に、検出したいコミュニケーションは、30秒前後で行う報告や連絡から、2時間前後の会議などがある。コミュニケーションが継続した時間によって、コミュニケーションの内容も異なるため、なるべくコミュニケーションの始めと終わり、そして継続していた時間を正しくセンシングすることが必要である。
しかしながら、対面データでは10秒単位で対面の有無を判別しているが、対面データが連続して入っているものをコミュニケーションの1回のイベントとして区分すると、実際のコミュニケーション回数以上に短い対面が多く、長い対面が少なくカウントされてしまう。例えば図37の補完前データ(TRD_0)のように、対面検出データは細切れになって入っていることが多い。これは、人間は話すときに体を動かすことが多く、そのとき左右の触れ幅の最大値は30度以上であるため、実際の対面時間の全てを赤外線送受信器で検出できていないのだと考えられる。また、長い会議などにおいても、正面に向かい合った人物間で、分単位の長い空白が含まれていることが多い。これは、会議において話者が変わったり、スライドに注目したりして体の向きを変えている時間があるからだと考えられる。
そこで、対面検出データの空白を適切に補完する必要がある。しかし、ある閾値時間以下の空白を補完するアルゴリズムを用いた場合には、閾値が大きいと別のイベントであるはずの対面検出データも一体化されてしまい、逆に閾値が小さすぎると会議などの長い対面イベントが分割されてしまうという問題が生じる。そこで、特に長い対面イベントでは長く継続する対面検出データが存在することが多いという性質を利用し、短い空白と長い空白を二段階に分けてそれぞれ補完する方法を用いる。なお、三段階以上に分けて補完してもよい。
<図37:二段階での補完方法>
図37に、二段階で対面検出データが補完される様子を説明した図を示す。基本の補完ルールとしては、空白の時間の幅(t1)が、その直前の対面検出データの継続時間幅(T1)の一定数倍よりも小さい場合には補完する、とする。その補完条件を決める係数をαで示し、一次補完係数(α1)と二次補完係数(α2)を変えることで、同じアルゴリ
ズムで短い空白の補完と、長い空白の補完の、二段階の補完を共に行えるようにする。また、それぞれの補完において、補完する最大の空白の時間幅を設定しておく。一時補完(TRD_1)では短い空白を補完する。これによって、3分程度の報告などの短い対面内の空白が埋められ、連続したイベントとなる。また、2時間程度の会議においても、断片的な対面検出データが連続され、大きな対面のブロックと空白のブロックができる。さらに、二次補完(TRD_2)において、会議の中の大きな空白のブロックも補完される。なお、ここでは、空白時間(t1)の直前の対面継続時間(T1)に比例して補完の有無
が決定されるとしたが、空白時間の直後の対面継続時間に比例して決定することもできる。また、直前と直後の両方によって決定することもできる。この場合には、直前と直後の対面継続時間の和に比例するようにするか、直前に比例する方法と直後に比例する方法を2回実行して補完する方法がある。直前、あるいは直後に比例する方法を用いた場合には、実行時間やメモリ使用量を節約することができる。また、直前と直後の両方によって決定する方法では、対面継続時間をより高い精度で算出することができるというメリットがある。
図38は、図37で示した補完のプロセスを、実際の1日分の対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003)の値の変化として示した例である。また、一次と二次のそれぞれの補完において、補完されたデータの数をカウントし、その値を特徴量「 (1)対面時姿勢変化(小)(BM_F01)」・「(2)対面時姿勢変化(大)(BM_
F02)」として用いる。これは、データが欠けた数は、姿勢が変化した数を反映していると考えるからである。また、二次補完を終えた後の対面結合テーブル(SSDB_IRCT_1002−1003)において、対面検出データが一定時間範囲内に継続している回数を数えることで、特徴量「(3)対面(短)(BM_F03)」・「(4)対面(長)(B
M_F04)」を抽出する。
図39は、対面検出データを補完し、特徴量「(1)対面時姿勢変化(小)(BM_F01)」・「(2)対面時姿勢変化(大)(BM_F02)」「(3)対面(短)(BM_F03
)」・「(4)対面(長)(BM_F04)」を抽出するまでの処理の流れを示すフローチ
ャートである。これは、実施例1〜4における、特徴量抽出(ASIF)の中の処理の1つである。
開始(IFST)後、1組の人物を選択(IF101)し、その人物間の対面結合テーブル(SSDB_IRCT)を作成する。次に、一次補完を行うため、補完係数αをα=α1に設定する(IF103)。次に、対面結合テーブル(SSDB_IRCT)から時
系列順に対面データを取得(IF104)し、対面している(つまり図38のテーブルで言うと値が1であった場合)には(IF105)、そこから対面が継続している時間(T)をカウントし、記憶しておく(IF120)。また、対面していない場合には、そこから連続で対面していない時間(t)をカウントする(IF106)。そして、その直前に対面が継続していた時間(T)に補完係数αをかけた値と対面なし時間(t)とを比較し(IF107)、t<T*αであった場合にはその空白時間分のデータを1に変える、つまり対面検出データを補完する(IF108)。また、ここで、補完したデータの数をカウントしておく(IF109)。ここでカウントした数は、特徴量「(1)対面時姿勢変化(小)(BM_F01)」または「(2)対面時姿勢変化(大)(BM_F02)」として
用いる。そして1日の最後のデータまで処理を完了するまで(IF104〜IF109)の処理を繰り返す(IF110)。完了すれば一次補完を完了とし、補完係数αをα=α2に設定して、同様の処理(IF104〜IF110)によって二次補完を行う。二次補完が完了(IF111)すれば、各特徴量「(1)対面時姿勢変化(小)(BM_F01)」・「(2)対面時姿勢変化(大)(BM_F02)」「(3)対面(短)(BM_F03)」・「(4)対面(長)(BM_F04)」の値を求め、それぞれを1日分単位での対面特徴量テーブル(ASDF_IR1DAY)の適切な箇所に入力し(IF112)、終了(IFEN)とする。
このようにして、閾値を変えて2段階に分けて対面データを補完することによって、短い対面イベントと長い対面イベントを、共に精度よく抽出できるようになる。またさらに、ここで補完されたデータの数を、対面時の姿勢変化の特徴量として用いることで、処理時間の短縮、メモリ使用量の節約ができる。
本発明の第6の実施の形態について図面を参照して説明する。
<図40・図41:コミュニケーションダイナミクスの概要>
図40に、本発明の第6の実施の形態であるコミュニケーションダイナミクスにおける各フェーズの概要を説明するための図を示す。
特に創造性を要求される組織においては、日々同じ方法で業務を行うのではなく、適切に変化することが必要である。特に、コミュニケーションと創造性の関係については、日頃付き合いのない多くの人とのコミュニケーションによって新しい情報を得て刺激を受けること(拡散・Diffusion)、また、仲間うちでじっくりと議論して意思決定を行うこと(凝集・Aggregation)、そして、1人で考えたり文書にまとめたりすることでアウトプットの質を高めること(個・Individual)、をそれぞれバランスよく行うことが必要である。
本発明の第6の実施の形態は、端末(TR)による対面検出データを用いて、これらのコミュニケーションの性質のダイナミクスを可視化するためのものである。対面検出データから、ある人物または組織が、同じグループ内の人と対面した人数であるグループ内リンク率と、他のグループの人と対面した人数であるグループ外リンク率とを両軸に取る。ここで、正確には、人数のある基準を決め、それに対しての対面人数の割合によってプロットするため、リンク「率」と呼ぶ。実際には、対外的なコミュニケーションを一方の軸に、身内とのコミュニケーションをもう一方の軸に取るようにしていれば、他の指標を軸に取っても良い。
図40のように両軸に取ることで、グループ内リンク率が高いときは「凝集」のフェーズ、グループ外リンク率が高いがグループ内リンク率が低いときには「拡散」のフェーズ、両方が低いときには「個」のフェーズ、というように相対的にフェーズを分類することができる。さらに、日毎、もしくは週毎などの一定期間ごとに両軸の値をプロットし、その軌跡を平滑線で結ぶことでダイナミクスを可視化する。
図41にコミュニケーションダイナミクスの表示例と、それぞれのダイナミクスの形を分類した模式図とをあわせて示す。
Type Aの円運動(circular movement)パターンでは、凝集・拡散・個の各フェーズを順に通っているパターンである。このような軌跡を描く組織または人物は、知識創造の各フェーズをうまくコントロールしていると言える。
Type Bの縦振動(longitudinal oscillation)パターンでは、凝集と個のフェーズだけを繰り返しているパターンである。つまり、このような軌跡を描く組織または人物は、身内での議論と個人作業とを交互に繰り返している。長期的にこのような仕事の仕方を続けていると、外部の新しい考え方を知る機会がなくなってしまう危険性をはらんでいるため、時々は外部の人物とのコミュニケーションする機会を作る必要があると言える。
Type Cの横振動(lateral oscillation)パターンでは、拡散と個のフェーズだけを繰り返しているパターンである。つまり、このような軌跡を描く組織または人物は、外部の人との接触と個人作業とを交互に繰り返しており、チームワークが強くないと言える。長期的にこのような仕事の仕方を続けていると、メンバ同士が有する知識や知恵を共有することが難しくなるため、時々はグループのメンバが集合して情報交換をする機会を設ける必要があると言える。
以上のようにして、ダイナミクスのパターンを可視化し、分類することで、その組織や個人が日々の知識創造プロセスにおいて有する課題を発見することができる。その課題に対して適切な施策を立てることで、より生産性の高い組織作りを実現できる。
なお、Type A〜Cは、プロットした点の分布の形状と結んだ平滑線の傾きによって分類する。それぞれのタイプにおいて、点の分布の形状が丸か、縦長か、横長か、そして、平滑線の傾きが縦横混合か、縦が多いか、横が多いか、を判別して分類する。
<図42:対面マトリクス>
図42はある組織における対面マトリクス(ASMM)の例である。コミュニケーションダイナミクスにおいて、縦軸と横軸のリンク率を計算するために用いる。コミュニケーションダイナミクスにおいて、1日ずつ点をプロットする場合には、1日につき1枚の対面マトリクスを作成する。対面マトリクス(ASMM)では、行と列にそれぞれ端末(TR)を装着したユーザ(US)を取り、それらが交わる要素の値が、その二者が1日の間に対面した時間を表す。図23の対面結合テーブル(SSDB_IRCT)を全ての人物の組み合わせについて作成し、1日で対面した合計時間を求めることによって、対面マトリクス(ASMM)を作成する。さらに、図17のユーザID対応表(ASUIT)を照会することで、同じグループの人との対面か、異なるグループの人との対面かを区別し、グループ内リンク率をグループ外リンク率を算出する。
<図43:システム図>
図43は、本発明の第6の実施の形態であるコミュニケーションダイナミクスを描画するためのセンサネットシステムの全体構成を説明するブロック図である。本発明の第1の実施の形態における、図4〜図6の、アプリケーションサーバ(QC)の構成のみが異なる。その他の部分と処理は本発明の第1の実施の形態と同様のものを用いるため省略した。また、パフォーマンスデータは用いないため、パフォーマンス入力用クライアント(QC)はなくても良い。
アプリケーションサーバ(AS)内の記憶部(ASME)には、新たな構成としては対面マトリクス(ASMM)が存在する。また、制御部(ASCO)では、解析条件設定(ASIS)後、データ取得(ASGD)によってセンサネットサーバ(SS)から必要な対面データを取得し、それを用いて日毎に対面マトリクスを作成する(ASIM)。そしてグループ内とグループ外のリンク率を計算(ASDL)し、ダイナミクスを描画(ASDP)する。ダイナミクス描画(ASDP)では、グループ内・グループ外リンク率の値を両軸に取り、プロットする。さらに、点同士を時系列順に平滑線で結ぶ。そして、点の分布の形状と平滑線の傾きによってダイナミクスのパターンを分類(ASDB)するという手順で処理を行う。
このようにして、端末(TR)の対面データから算出した、グループ内リンク率とグループ外リンク率とを両軸にとって時系列変化をプロットする事によって、組織や個人のフェーズ変化の動きのパターンを可視化し、分析することができる。これによって、その組織や個人の知識創造プロセスにおける課題を発見することができ、さらに、その課題に対して適切な施策を立て、より創造性の高めるために役立てることができる。
本発明の第7の実施の形態について図面を参照して説明する。図44〜図53にて、実施例7を説明する。
<図44〜図45:システム構成とデータ処理のプロセス>
図44のブロック図によって、本発明の実施の形態を実現するセンサネットワークシステムの全体構成を説明する。
複数のセンサノードがあり、そのセンサノード(Y003)は、以下を具備する。ユーザーの動きやセンサノードの向きを検出する加速度センサ、ユーザー間の対面を検出する赤外線センサ、ユーザーの周囲温度を計測する温度センサ、ユーザーの位置を検出するGPSセンサ、このセンサノード(およびこれを装着するユーザー)を識別するIDを記憶する手段、リアルタイムクロックなどの時刻を取得するための手段、IDと上記のセンサからのデータと時刻に関する情報を通信に適した形式(フォーマット)に変換するための手段(例えば、マイクロコントローラとファームウエアによりデータを変換する)、無線あるいは有線の通信手段を有する。センサノードは、本発明の別の実施例に説明されたものを使うことができる。
上記の加速度センサ等のセンサからサンプリングして得られたデータ、時刻情報、IDは、上記の通信手段により、中継器(Y004)に送られ、通信手段Y001で受信される。さらにこのデータは、サーバと無線あるいは有線で通信する手段Y002により、サーバ(Y005)に送られる。
以下では、図45を用いて、加速度センサで取得したセンサデータを例に説明するが、他のセンサのデータやその他の時系列で変化するデータに広く本発明は適用される。
時系列に並ぶデータ(SS1、この例として3軸の加速度センサのx、y、z軸方向の加速度データを用いる)は、Y010の格納手段に格納される。Y010は、CPU、主記憶、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置および、これらをソフトウェアで制御することにより実現できる。 時系列データSS1からさらに加工した複数の時系列データを作成する。この作成手段をY011とする。この実施例では、A1、B1、...J1の10個の時系列データを生成する。A1の求め方を以下に説明する。
上記した3軸加速度データからその絶対値を計算する。これにより、加速度の大きさを表す、0または正値の時系列データSS2を得る。さらに、SS2にハイパスフィルターを通すことにより、0を中心として、その周りで増減する波形(時系列データ)に変換することができる。これをSS3とする。
さらに一定時間毎(これをTaあるいはTb と図に示す。例えば、5分毎)に、この波形データを解析し、これから周波数強度(周波数スペクトル、あるいは周波数分布)を得る。この手段としては、FFT(高速フーリエ変換)などを用いることができる。別の手段としては、例えば10秒程度の時間毎に波形を分析し、波形のゼロクロス回数をカウントする手段を用いることもできる。このゼロクロス数の頻度分布を上記の5分間まとめると図に示すヒストグラムを得ることができる。これを1Hz毎にまとめると、これも周波数強度分布である。この分布は、時間Taと時間Tbでは当然異なる。
人が、没頭し、一心に我をも忘れて行為にとり組むとき、大変充実感のある状態になり、これを心理学では「フロー」と呼んでいる。
従来人がフローであるかどうかは、インタビューやアンケートなどの手段で、研究されてきたが、これを装置で計測する方法は知られていなかった。我々は、図52、図53(a)の測定結果が示すように、フローと活動レベルのばらつきとの間には強い相関があることを発見した。
図52は、アンケートで求めた、フロー(充実、やりがい、集中、没入)と加速度センサのデータから解析した、活動レベルおよび活動レベルのばらつきの相関を示したものである。ここで活動レベルとは、各周波数バンドないの活動の頻度(計測は30分間で行った)を示し、活動レベルのばらつきとは、この活動レベルが、半日以上の期間にどれだけ変動するかどうかを標準偏差として表したものである。61人のデータを解析した結果、活動レベルとフローとの相関は最大でも0.1程度と小さかった。これに対して、活動レベルのばらつきとフローとは、相関の大きいものがあった。特に、1-2Hzの周波数バンドの動きのばらつき(これは体に装着した名札で計測したが、この周波数は、他の形態や他の部位に装着しても、同様である)は、フローと負に0.3以上の相関を示した。これ以外にも、多数のデータを取得した結果、取得時間の長さに応じて、1-2Hz、あるいは1-3Hzの動きがフローと相関を持つことを発明者は世界で初めて発見した。
このように、特に、1-3Hzの動きのばらつき、あるいは動きのむらが大きいとフローに成りにくく、逆に、1-3Hzの動きのばらつきが小さい、即ち一貫していると、フローになりやすいことを見出した。人が充実感をもつために、さらに人が仕事を楽しむために、さらに人が成長するために、さらに人が高い生産性で働くために、フローとなることが重要であることが知られている。上記の動きのばらつき(あるいはその逆の一貫性)を計測することにより、人の充実感や生産性向上を支援することができる。
図53(b)に示すように、さらに発明者は、多数の被験者を24時間一年以上に渡り計測することにより、日中の動きのばらつきやムラ(これが少ないほどフローになりやすい)は、睡眠時間のばらつきと相関することを見出した。これにより、睡眠時間を制御することにより、フローを増やすことができる。フローは人の充実感の源となるので、具体的な行動の変化により、充実感を向上できる画期的な発見である。睡眠時間のばらつきと同様に、起床時間のばらつきや就寝時間のばらつきなど睡眠に関係する量のばらつきは同様にフローに影響がある。このような睡眠を制御する、あるいは睡眠の制御を促して、フローや人の充実感、やりがい、あるいは人生の幸せを向上されることは本発明に含まれる。
この相関関係を活用すれば、以下の説明において、フロー、あるいは集中、あるいは動きの一貫性(ばらつきの少なさ)について説明しているところを、睡眠や睡眠に関係した量の一貫性(あるいはその反対のばらつき)に置き換えたものも、本発明に含まれる。
本実施形態では、人の動きに関連する時系列データを検出し、その時系列データを加工することにより、人の動きのばらつき、むら、あるいは一貫性に関する指標を算出し、その指標からばらつきやむらが小さいこと、あるいは一貫性が高いことを判定して、上述したフローを計測することを特徴とする。そして、その判定結果に基づいて、人あるいはその人が所属する組織の望ましい状態を可視化する。この動きのばらつき、むら、あるいは一貫性に関する指標について、以下説明する。
動きのばらつきとしては、上記の周波数強度に関する時間毎のばらつき(あるいは変化)を用いることが出来る。特に、その指標としては、例えば、5分ごとに、強度の変化を記録し、5分ごとの差を用いることが出来る。これ以外にも、動き(あるいは加速度)のばらつきに関わる幅広い指標を用いることが出来る。さらには、人の周囲温度や照度や周囲音の変化には、その人の動きが反映されるため、そのような指標を用いることもできる。あるいは、GPSから求めた位置の情報を用いて、動きのばらつきを求めることも可能である。
この動きの一貫性(例えば、周波数強度のばらつきの逆数を用いることができる)の時系列情報をA1とする。
次に、時系列データB1の求め方を説明する。B1の例として、歩行速度を用いる。
歩行速度は、SS3で求めた波形データから、1〜3Hzの周波数成分を持つものを取り出し、その中でも、周期的な繰り返し性が高い波形領域を歩いている、即ち歩行、と見なすことができる。このとき、繰り返しの周期から歩行の歩数ピッチを求めることができる。これをその人の歩行速度の指標として用いる。これを図ではB1と表す。
次に、時系列データC1の求め方を説明する。C1の例としては、外出を用いる。即ちいつもいる場所(例えばオフィス)から外に出ていることを検出する。
外出は、名札型のセンサノード(Y003)をユーザーに装着してもらい、外出時には、このセンサノードをクレードル(充電器)にさしてから外出することにする。センサノードをクレードルに指すことにより、これを検出することにより、外出を検出することができる。外出時にクレードルにセンサをさすことにより、外出時にバッテリーを充電できる。同時に、センサノードに蓄積されたデータを中継局やサーバーに送信することが出来る。GPSを用いて、もとめた位置から外出を検出することもできる。このようにしてもとめた外出時間をC1とする。
次に、時系列データD1の求め方を説明する。D1の例としては、会話を用いる。会話は、名札型センサノード(Y003)に組み込まれた赤外線センサにより、別のセンサノードと対面しているかを検出し、この対面時間を会話の指標とすることが出来る。さらに、加速度センサから求めた周波数強度から、対面している複数の人の中で、最も高い周波数成分を持っている人が、発言者であることを我々は発見した。これを用いれば、会話のより詳しい時間を分析することが出来る。さらに、マイクをセンサノードに組み込むことにより、音声の情報を用いて、会話を検出することが出来る。これらの技術を用いて求めた会話量の指標をD1とする。
次に、時系列データE1の求め方を説明する。E1の例としては、歩行を用いる。歩行の検出については、既に上で説明したので省略する。上記では、歩行の速度を問題にしたのに対し、ここでは、歩行時間を指標とする。
次に、時系列データF1の例として、安静を取りあげる。安静にしている時間を指標とする。これには、既に説明した周波数強度分析の結果0〜0.5Hz程度の低周波数の強度、あるいは時間を求めて指標として使うことが出来る。
次に、時系列データG1の例として、会話を取りあげる。会話については、D1として説明したので、省略する。これを用いる。
次に、時系列データH1の例として、睡眠を取りあげる。睡眠は上記の加速度から求めた周波数強度分析結果を用いて、検出することが出来る。睡眠時には、ほとんど動かないので、0Hzの周波数成分が、一定時間を超えたときを睡眠と判定することが出来る。睡眠状態にある時に、静止(0Hz)以外の周波数成分が出て、一定時間を超えて、静止状態0Hzに戻らないときを起床として、起床を検出できる。このように、睡眠の開始と終了時刻を特定することが出来る。この睡眠時間をH1と呼ぶ。
次に、時系列データI1の例として、外出を取りあげる。外出の検出方法は、既に記したとおりである。
最後に時系列データJ1の例として、集中を取りあげる。集中の検出方法は既にA1として記載したとおりであり、周波数強度のばらつきの逆数を用いる。
以上、重複を除くと、睡眠(あるいは歩行速度)、安静、集中、会話、歩行、外出という6つの量を使い、この対象者の状況を表現することが出来る。これを行うのは、もととなる時系列な波形(あるいは波形群)SS1から、この6つの時系列変数(A1、B1、...J1)を作成する手段(Y011)である。
ここで、この6つの量に限定してみても、それぞれは、連続的な値を取れるので、6次元の空間の一点で、対象者の状態は表されることになるので、その組み合わせは、非常に幅広い自由度がある。
しかし、あまりに自由度がありすぎると、その意味を解釈することが難しくなるという問題を、発明者は認識した。その結果、折角大量のデータがあっても、その意味をくみ取ることが現状できていないという課題がある。この問題意識から、状態変化を意味解釈する方法を検討した。
発明者は、人の状態は、これらの値の変化、即ち増減に現れることを発見した。即ち、睡眠時間が増えているか、減っているかを問題にする。あるいは、集中が増えているか、減っているかを問題にする。このようにして、人の状態は、上記の6つの量の増減を使って、2の六乗個の状態、即ち64個の状態に分類でき、この64個の状態には、言葉で表現できる意味をつけられることを発見した。この6つの量を使うことにより、幅広い人々の状態を表現することができることは全くのオリジナルな発見である。この方法を以下説明する。
まず、時刻T1からT2の間の時間を対象とする。この間の変数の変化を求める。具体的には例えば、動きのばらつきの少なさ、あるいは動きの一貫性を表す指標A1の波形を対象とし、時刻TR1からTR2までの波形をサンプリングし、その間の代表値(これを基準値RA1と呼ぶ)を求める。例えば、この期間のA1の平均値を求める。あるいは、外れ値の影響を省くために、メディアンを求めてもよい。あるいは、外れ値をとり除いて、平均を求めてもよい。同様に対象となるT1からT2までの代表値(これを対象値PA1と呼ぶ)を求める。このうえで、RA1に対して、PA1の大小の比較を行い、PA1が大きければ、増加とし、PA1が小さければ減少とする。この結果(これは増減に1あるいは0を割り当てれば1ビットの情報である)をBA1と呼ぶ。
これを行うには、TR1、TR2という基準値を作成する期間を格納、記憶しておく手段(Y012)が必要である。また、対象値を作成する期間であるT1、T2を記憶、格納する手段(Y013)が必要である。Y012、Y013からこれらの値を読み込み、上記の基準値および代表値の計算するのはY014およびY015である。また、上記の結果となる基準値と対象値との比較を行い、結果を格納する手段(Y016〜Y017)が必要である。
T1、T2とTR1、TR2との関係は、目的に応じて、いろいろな値を取ることが出来る。例えば、ある一日の状態を特徴づけたいときには、T1、T2をその日の始まりから終わりまでとする。それに対して、TR1、TR2は、その日の前日から遡って一週間とすることができる。このようにすれば、一週間のなかでの変動に左右されにくい基準値に対して、その日を位置づける特徴を浮き出させることが出来る。あるいは、T1、T2を一週間とし、TR1、TR2はその前の3週間と設定することもできる。これにより、最近一月程度の中での、その対象となる週の特徴を浮かび上がらせることが出来る。以上は、T1、T2の期間と、TR1、TR2の期間が重ならない例をあげたが、これを重複させることも出来る。これにより、対象となる期間T1、T2における未来の影響の中での位置づけを表現できる。いずれにせよ、見たい目的に応じて、この設定は柔軟に行うことが可能であり、いずれも本発明の範疇である。
同様にして、歩行速度B1についても、基準値RB1と対象値PB1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BB1を求めることが出来る。
同様にして、外出C1についても、基準値RC1と対象値PC1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BC1を求めることが出来る。
同様にして、会話D1についても、基準値RD1と対象値PD1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BD1を求めることが出来る。
同様にして、歩行E1についても、基準値RE1と対象値PE1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BE1を求めることが出来る。
同様にして、安静F1についても、基準値RF1と対象値PF1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BF1を求めることが出来る。
同様にして、会話G1についても、基準値RG1と対象値PG1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BG1を求めることが出来る。
同様にして、睡眠H1についても、基準値RH1と対象値PH1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BH1を求めることが出来る。
同様にして、外出I1についても、基準値RI1と対象値PI1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BI1を求めることが出来る。
同様にして、集中J1についても、基準値RJ1と対象値PJ1との比較により、結果となる増減(1ビットで表現される)BJ1を求めることが出来る。
<図46:4象限での表現>
以上より、6つの変数の増減(重複を入れて10個の変数の増減)を求めた。これ組み合わせることにより、この変動により詳しい意味を見出すことが出来る。
まず図46(a)に示すように、集中度の増減を表すBA1を横軸に、歩行速度の増減を表すBB1を縦軸にして、4象限の図を書くことができる。ここで、第1象限すなわち判定領域1は、集中度が増し、歩行速度が増している状況である。これはより抽象的に言えば、行為の掌握度や能力発揮が高まると同時に、緊張感や挑戦性が高まっていることを意味する。これをフローと名付ける。
第2象限、即ち結果判定領域2を心配とよび、領域3を充電、領域4を安心と呼ぶ。
これにより、このセンサノードY003を身につけていた人の内なる経験の質を求めることができる。具体的には、より緊張感も掌握度も高いフロー状態にあるか、あるいは逆に両者ともに低い充電状態にあるか、あるいは緊張だけが高い心配状態にあるか、あるいは掌握度だけが高い安心状態にあるかを時系列データから知ることが出来る。数値の羅列であった時系列のデータからこのような人が理解できる言葉で意味をつけることができる点が本発明の大きな特徴である。
このように、二つの変数の組み合わせで、4象限を構成し、その象限に意味と名前をつけるという手法により、豊かな意味を時系列データから求めることが出来る。
従来、多数の測定データをいくつかの予め定めたカテゴリに分類する方法が知られている。例えば、多変量解析では、判別分析と呼ぶ手法により、複数のカテゴリにデータを割り当てる方法が知られている。しかし、この方法では、判別条件の境界となる「しきい値」や境界線を決める必要がある。この場合、判別の正解となるデータを与えて、このしきい値や境界線を決める方法が知られている。しかし、決して100%正解を満たす条件を見つけることは難しい。従って、結果の信頼性に乏しいという課題があった。
本発明では、第1の時系列のデータと第2の時系列データと第1の参照値と第2の参照値を有し、第1の時系列データあるいはこれから加工されて得られた値が、第1の参照値よりも大きいか、あるいは小さいかを判定する手段を有し、第2の時系列データあるいはこれから加工されて得られた値が、第2の参照値よりも大きいか、あるいは小さいかを判定する手段を有し、第1の時系列データが第1の参照値よりも大きく、かつ第2の時系列データが第2の参照値よりも大きい状態1を判定する手段を有し、状態1以外の状態、あるいは状態1以外の状態のさらにあらかじめ限定された特定の状態を状態2にあることを判定する手段を有し、あらかじめ定められた少なくとも2つの状態を表現するおのおの2つの名称を記憶し、上記の状態1および状態2にこの2つの名称を対応させる手段を有し、この状態1あるいは状態2のいずれかにあることを表示する手段を有し、これにより、上記の第1および第2の時系列のデータを組み合わせた状態の変化を可視化する。
この構成によれば、時系列データから作成した参照値との大小関係を組み合わせることにより判定を行うため、正解データに合うように境界を定める必要がない。従って、結果の信頼性が飛躍的に向上する。これにより、幅広い時系列のデータを言葉に(あるいは一連の言葉に)変換することが可能になる。大量の時系列データを人が理解できる言葉に翻訳することが出来る画期的な発明である。
対象者の外との関係(図46(b))については、BC1、BD1を用い、外出も会話も増えている開拓指向か、外出は増えているが、会話が減っている観察指向か、あるいは、外出が減っているが、会話が増えている(仲間内での)結束指向か、あるいは外出も会話も減っている独歩指向かを明らかに出来る。
対象者の行動の特性(図46(c))については、BE1、BF1を用い、歩行も安静も増えている移動指向か、歩行は増えているが、安静が減っている活性指向か、あるいは、歩行が減っているが、安静が増えている静か指向か、あるいは歩行も安静も減っている動作指向かを明らかに出来る。
対象者の人への態度(図46(d))については、BG1、BH1を用い、会話も睡眠も増えている善処指向か、会話は増えているが、睡眠が減っている主導指向か、あるいは、会話が減っているが、睡眠が増えている自適指向か、あるいは会話も睡眠も減っている沈黙指向かを明らかに出来る。
対象者の頼むところ(図46(e))については、BI1、BJ1を用い、外出も集中も増えている拡大指向か、外出は増えているが、集中が減っている他力指向か、あるいは、外出が減っているが、集中が増えている自力指向か、あるいは外出も集中も減っている維持指向かを明らかに出来る。
以上の処理については、Y018〜Y019に記したように、予め定めた分類C1(すなわちフロー、心配、充電、安心のうちのひとつ)〜C5をえることができる。
以上より、大量のセンサデータ、即ち時系列波形データ、に連続的に、人が理解できる意味を見出すことに成功した。これは、これまでやられたことのない画期的な発明である。
また、本実施形態では、ユーザの生活あるいは業務に関する第1の量の変化が増加あるいは大きくかつ第2の量の変化が増加あるいは大きい状態1を判定する手段を有し、第1、第2の量の変化から、状態1以外の状態あるいは状態1以外の状態のさらにあらかじめ限定された特定の状態2にあることを判定する手段を有し、第3の量の変化が増加あるいは大きくかつ第4の量の変化が増加あるいは大きい状態3を判定する手段を有し、第3、第4の量の変化から、状態3以外の状態あるいは状態3以外の状態のさらにあらかじめ限定された特定の状態4にあることを判定する手段を有し、状態1でありかつ状態3である状態を状態5とし、状態1でありかつ状態4である状態を状態6とし、状態2でありかつ状態3である状態を状態7とし、状態2でありかつ状態4である状態を状態8とし、あらかじめ定められた少なくとも4つの状態を表現する4つの名称を記憶し、上記の状態5、状態6、状態7、状態8にこの4つの名称を対応させる手段を有し、この状態5あるいは状態6あるいは状態7あるいは状態8のいずれかにあることを表示する手段を有する。これにより、上記の第1、第2、第3、第4の量を組み合わせた、人あるいは組織の状態の変化を可視化する。
この構成によれば、より詳細な状態分類を行うことが可能であり、幅広い時系列データを言葉に変換できる。すなわち、大量の時系列データを理解できる言葉に翻訳することができる。
<図47:状態を64種類に分類、アンケート例>
これらの6つの変数の増減を用いると人の状態を64個(2の六乗個)の状態に分類できる。これに上記の意味を組み合わせて意味をつけたものを図47(a)に示す。例えば、歩行速度も安静も集中も増えている中で、会話が減り、歩行と外出が増えているならば、「ゆずる」という状態になる。これは、フローで、観察指向であり、移動指向である。同時に、沈黙指向で、拡大指向が組み合わさったものであり、この特性をくみ取り、その状態を表現することが出来る。
以上は、6つの変数の増減を用いて、64個の分類により、対象の状態を表現したが、2つの変数の増減を用いて、4個の分類により、対象の状態を表すことも可能である。あるいは3個の変数を用いて、8個の分類を行うことも可能である。この場合には、分類は大づかみになるものの、分類が単純化され、より理解しやすいという特徴がある。逆に、7個以上の変数の増減を用いて、より詳細な状態分類を行うことも可能である。
以上は、センサノードからのデータを使うことを実施例として説明してきたが、この発明は、センサノード以外からの時系列データでも同様な効果を得ることが出来る。例えば、パソコンの動作状況から、その人の在席や外出状況をえることができ、これを上記の変数のひとつとして用いることが考えられる。
あるいは、携帯電話の通話記録から会話の指標をえることも可能である。携帯電話のGPSの記録を用いて、外出の指標をえることも可能である。また、パソコンや携帯電話による電子メールの件数(送信数・受信数)を指標とすることもできる。
さらには、時系列データを明示的に使わずに、図47(b)に示すように、質問により、変数の増減を聞き出すことにより、上記の変数の獲得の一部あるいは全部を置き換えることが可能である。これは、例えばインターネット上のウェブサイト上において、この質問への答えを入力してもらい、サーバ(Y005)はネットワークを通じてユーザの入力結果を受信し、上記の解析を行うことができる(これを行う手段をY022とする)。この場合には、記憶にたよることになるので、計測としての正確さには欠けるものの、簡便に行えるというメリットがある。
<図48〜図51:解析結果例>
以上のようなセンサデータ、あるいは時系列データあるいは、アンケートの質問の結果、一日の特徴を明らかにすることが出来る。これを日々継続すると図48(a)に示すようなマトリクスを得ることができ、またこれをY020により接続される表示部に表示させて、ユーザに表示することが可能である。これをさらに、4象限の分類を二進法で表現すると、図48(b)のマトリクスを得ることが出来る。この数値データを用いて、このマトリクスの列と列との相関係数を計算することが出来る。この相関係数をR11〜R1616と表し、図49に示す(ここでは、簡単化のため5つの象限図のうち4つだけを用いた)。この表には、これら一日の状態表現の相互の関連づけが表現される。これをさらにわかりやすくするには、この行列の相関係数にしきい値(例えば明確な相関として0.4をしきい値とする)をもうけ、しきい値を超える場合には状態表現が相互に接続されていると判定し、当該しきい値を超えない場合には状態表現が非接続であると判定し、接続している状態表現間を線で結ぶことにより、その人の生活がどのような構造で営まれているかが可視化できる(図50)。
この図の例では、互いに正の相関で結ばれた要素によるループ(一周してもとにもどる経路)をプラスとマイナスの記号で示してある。これは、その変数に変動があるとその変動をさらに拡大していくフィードバックを示す。例えば、この例では、フローが一旦生じると、沈黙指向と独歩指向が増加し、結果として、さらにフローが増えるというフィードバックループを読み取ることが出来る。あるいは、マイナスで示した負の相関が奇数個入ったループは、変動を抑制するフィードバックである。例えば、フローが増えると、善処指向が弱まり、主導指向が強まり、心配が強まり、結果としてフローを弱めることがわかる。これは最初のフローが増える変動を抑制する。
これは一日単位での解析を例に説明したが、これを半日単位や一時間単位あるいは一週間あるいは一月など時間単位を変えても行えることは当然である。
時系列の大量データから、ここまで人の行動を決める構造が明らかになれば、この人の人生や仕事を高めるためのアドバイスを具体的に行うことができる。特に、図47(a)の64個の分類のそれぞれに予めアドバイスを対応づけて記録しておき、分類の何れかの状態にあることが判定されたときに、当該アドバイスを表示部に表示するなどして、自動的にセンサデータに基づくアドバイスを提供することが可能となる。このアドバイスの情報を表示する処理は、Y021で行う。「ゆずる」状態と判定された場合に提供されるアドバイスの例を図51に示す。
以上の結果を表示する際には、センサノードにつけられたIDではわかりにくいため、IDとその人(さらにはその人の性別、職位、部署等)の属性情報M1をIDと結びつけ、これらの結果と合わせて表示することにより、わかりやすくなる(これをY023、Y024とする)。
以上、人の状態を言葉で特徴づける方法を例に説明したが、本発明で特徴づけるのは、人に限らない。組織や家族や自動車の運転状況や装置の稼働状況など幅広い対象に同様に適用できる。
本発明の第8の実施の形態について、図面を参照して説明する。
本発明の第8の実施の形態は、現状の人物間のコミュニケーション量に関するデータを分析することで、コミュニケーションを増やすことが望ましい人物のペアを見つけ、それを促すように表示もしくは指示するものである。
人物間のコミュニケーション量を示すデータとしては、端末(TR)から得た対面時間のデータや、マイクによる声の反応時間、PCや携帯電話のログから得たメールの送受信数などを用いることができる。また、直接的にコミュニケーション量を示すデータではなくとも、人物間のコミュニケーション量に関する、特定の性質を有するデータを同様に用いることができる。例えば、該当する人物間で対面が検出されており、かつ、互いの加速度リズムが一定値以上である時間のデータを用いることもできる。互いの加速度リズムの値が高い対面状態、とは、ブレーンストーミングなど、活発な会話のキャッチボールを行なっている状態である。つまり、このデータを用いた場合には、ただ黙って会議の時間をすごしている人物間は分析の対象とされず、活発な会話のキャッチボールによって構成されている人と人との結びつきの構造(ネットワーク構造)を捉え、会話のキャッチボールを増やすべき人物のペアを抽出することができる。これ以降では、コミュニケーション量のデータとしては、端末(TR)から得た対面時間の情報を用いるものとして説明する。
コミュニケーションを増やすべき人物のペアを見つけるためには、組織内の3人の関係に着目する。ある人物X、A、Bにおいて、人物Xと人物Aは連携(コミュニケーション)しており、人物Xと人物Bも連携しているが、人物Aと人物Bは連携していないという場合には、人物Aと人物Bも連携している場合に比べて、人物Xが人物A、Bそれぞれに仕事を分担して依頼した場合に、人物A、Bは互いの状況と仕事内容を把握できずに仕事の効率や質が低下する。そのため、このような、3人の間の2組のペアは連携しているが、残りの1組は連携していない3者関係の組を見つけ出し、連携していないペア同士の連携を促すように表示を出す。このような3者関係を見つけ出すためには、本発明の実施の形態6で示した対面マトリクス(ASMM)を用いる。
図54は、本発明の第8の実施の形態を実現するセンサネットシステムの全体構成を説明するブロック図である。本発明の第1の実施の形態における、図4〜図6の、アプリケーションサーバ(AS)のみが異なる。その他の部分と処理は本発明の第1の実施の形態と同様のものを用いるため省略した。また、パフォーマンスデータは用いないため、パフォーマンス入力用クライアント(QC)はなくても良い。
アプリケーションサーバ(AS)内の記憶部(ASME)と送受信部の構成は、本発明の第6の実施の形態と同様のものを用いる。また、制御部(ASCO)では、解析条件設定(ASIS)後、データ取得(ASGD)によってセンサネットサーバ(SS)から必要な対面データを取得し、それを用いて日毎に対面マトリクスを作成する(ASIM)。そして、連携期待ペア抽出(ASR2)を行い、最後にネットワーク図描画(ASR3)するという手順で処理を行う。描画した結果はクライアント(CL)に送信してディスプレイなどに表示(CLDP)させる。
連携期待ペア抽出(ASR2)では、1組だけが連携していない3者関係を全て見つけ出し、その連携していないペアを連携期待ペアとしてリストアップする。
ネットワーク図描画では、全ての人物同士の連携の様子を示したネットワーク図に重ねて、連携期待ペアのリスト中の何組かを選び強調して表示させる。表示の例を図56に示す。これによって、連携を増やすことによって組織の改善が見込める人物が具体的に指示される。そのため、それらの人物を連携させるための施策、例えば同じグループに入れて共同で仕事をさせる、などを実施することが可能になる。
またさらに、1人の人物の周囲の人物同士の連携の度合いを示す指標である、結束度を用いることでさらに良い効果が得られる。連携期待ペア抽出(ASR2)前に、結束度計算(ASR1)を行い、結束度の値が低い人物、つまり周囲の連携が弱い人物に注目する。そして、その人物を含む3者関係から連携期待ペアを抽出するようにすると、組織全体を最適化するためのペアを抽出することができ、さらなる生産性の向上が見込める。また、全ての組み合わせに関して、3者間の連携の形を判別する必要がなくなるため、処理の時間が短くなるというメリットがある。これは特に人数の多い組織を対象にした場合に有効である。以下では、結束度を用いた場合のプロセスについて、具体的にその方法を述べる。結束度を用いない場合には、結束度計算(ASR1)のステップを行わないだけであり、他のステップは同様の方法で実施できる。
組織においては、結束度(Cohesion)という指標が生産性との関連が強い。結束度とは、ある人物Xについて、人物Xと連携(コミュニケーション)している他の複数の人物同士が連携している度合いを示す指標である。結束度が高い場合には、人物Xの周囲の人物同士が互いの状況と仕事内容を理解して自然に助け合って仕事を進められるため、仕事の効率や質が向上する。対して、結束度が低い場合には、効率や質が低下しがちであると言える。つまり、結束度とは、先ほど述べた、1人に対して別の2人が連携していないような3者関係を、1対3人以上の関係に拡張して、連携が欠けている度合いを数値で示す指標である。結束度は、その値が高いほど生産性が向上することがわかったため、この指標を組織改善の拠り所として活用することができる。そこで、本実施の形態では、連携すべき人物の組み合わせを、結束度の指標に基づいて抽出し、具体的にアドバイスする。これによって、より組織の生産性向上に効果の高いペアを戦略的に選び出し、そのペアの連携を増やすための施策を立てることができる。
次に、図54のブロック図に沿って、アプリケーションサーバ(AS)内の制御部(ASCO)における処理のプロセスを説明する。制御部(ASCO)以外の構成は実施例6と同様である。
まず、解析条件設定(ASIS)、データ取得(ASGD)、対面マトリクス作成(ASIM)については、本発明の第6の実施の形態と同様の方法で行う。
結束度計算(ASR1)は、以下の数式(3)によって各人物の結束度Ciを算出する。なお、以降、対面マトリクスの要素の値が、ある閾値(例えば1日あたり3分)以上の値の人物のペアを「連携している」とみなす。
図55の連携を示すネットワーク図の例を用いて、数式3を説明する。図55では、Niは4(人)、Liは2、NiC2は6となる。よって、結束度Ciは(2÷6×4=)1.33という値が求められる。同様にして、全人物に関する結束度を算出する。
次に、連携期待ペア抽出(ASR2)では、最も結束度の低い人物に注目して、その人物の結束度を高めるために連携すべき人物のペア、つまり、連携を期待するぺアを抽出する。具体的には、注目した人物とは連携しているが、互いには連携していないペアを全てリストアップする。図55の例を用いると、例えば人物jと人物lのペアは、それぞれ人物iと連携しているが互いには連携していないため、このペアが連携することによって、人物iと連携している人物間の連携数(Li)が増加し、人物iの結束度を上げることができる。
より具体的に、対面マトリクスの要素(人物間の対面時間を表す)からリストアップする方法を説明する。組織のメンバの中から、3人の組み合わせ(i,j,l)の全てのパターンを順にチェックする。人物iと人物jの要素をT(i,j)、人物iと人物lの要
素T(i,l)、人物jと人物lの要素T(j,l)、連携しているとみなす閾値をKとする。そ3人の組み合わせにおいて、
T(i,j)≧K、かつ、T(i,l)≧K、かつ、T(j,l)<Kを満たす条件を見つけ、人物i以外の2人(人物j,人物l)の組を連携期待ペアとしてリストアップする。
なお、最も結束度の低い人物だけに注目するのではなく、結束度が低い方から複数人の人物について、それぞれ連携期待ペアをピックアップしておき、次のネットワーク図描画(ASR3)の段階でこの中から数組のペアを選んで表示させることもできる。この場合には、組織を全体的に満遍なく改善するためのアドバイスをすることができる。
ネットワーク図描画(ASR3)では、対面マトリクス(ASMM)からバネモデルなどの配置アルゴリズムを用いて、人物を丸印、人物間の連携を線に対応付けて表す描画方法(ネットワーク図)によって、現在の組織の連携の状態を図で表す。さらに、連携期待ペア抽出(ASR2)において抽出されたペアのうちの数組(例えば2組など。表示させるペアの数はあらかじめ決めておく)をランダムに選び、異なる線種(例えば点線)や色の線でそのペアを結ぶ。描画した画像の例を図56に示す。図56は、現在すでに連携しているペアを実線で、今後の連携を期待するペアを点線で表示したネットワーク図である。これによって、どのペアが連携すれば組織が改善されるのかを明確に理解できる。
連携を促すための施策としては、メンバを複数のグループに分けてそれぞれで活動させるという方法がある。このとき、表示された連携期待ペアが同じグループに属するようにグループ分けを決定すれば、目的のペアの連携を促すことができる。また、この場合には、表示させるペアを連携期待ペアの中からランダムに選ぶのではなく、各グループの人数がほぼ同じになるように選択することもできる。
以上の方法によって、連携することが望ましいペアを抽出し、具体的に示すことができる。これによって、組織の連携を促し、ひいては組織の生産性を向上することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形実施可能であり、上述した各実施形態を適宜組み合わせることが可能であることは当業者に理解されよう。