JP5091732B2 - 耐へたり性および曲げ性に優れた低Niばね用ステンレス鋼 - Google Patents

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本発明は、Niを節減するため、必要最小限の含有量に抑制しつつも優れた曲げ加工性を発現し、高強度ステンレス製ばねとして必須とされる耐へたり性および耐食性をも兼備する高強度ばね用ステンレス鋼ならびに高強度ステンレスばねに関する。
SUS301およびSUS304に代表される加工硬化型の準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工により高強度が得られ、高強度ステンレスばね用素材として多用されている。
しかしながら、昨今のNi原料高騰により、Niを6%以上含有するSUS301や8%以上含有するSUS304などでは、コスト的に活用できない用途も散見されるに至っている。これに対応すべく、近年、以下の特許文献1−4に記される、いわゆる200系ステンレス鋼をベースとした鋼が、300系ステンレス鋼の代替材として提供されつつある。これらの鋼は、ばね性に関連があると思われる材料特性、例えば比例限界応力、耐力、ばね限界値、常温ならびに高温耐へたり性について優れたレベルが得られることを特徴としている。
これらの鋼はNiに代わるオーステナイト形成元素として多くは約4%以上のMnを含有させ、Ni含有量を低減させてコスト節減を図る素材である。
一方、ばね用を上述した文献までの大量のMnを含有させずとも、Niを節減したオーステナイト系ステンレス鋼の技術も提示されている(特許文献5および6)。
特開2006−111932号公報 特開2007−197806号公報 特開平11−241145号公報 特開平7一70700号公報 特公昭60−33186号公報 特開2006−22369号公報
4%以上のMnを含有する技術では、その製鋼、精錬の際に有害なMn酸化物のダストを生成し、環境保全の観点から課題が多い。さらに、ステンレス鋼をリサイクルする際に、従来は非磁性であれば300系スクラップとして処理して来たが、高Mn含有鋼も非磁性であるために、Niを多く含有する有用なスクラップとNiが少なくMnを多量に含有する鋼とを区分することが困難となり、スクラップ市場の混乱を招くことが懸念される。また、Mn含有量が高いことで表面品質が低下し、焼鈍酸洗性や光輝焼鈍などの生産性を損ない、Niを低減したにも関わらず、これらの生産性低下によりその効果が総コスト面で相殺されてしまうという課題があった。
一方、Mnを抑制したNi低減鋼である技術(特許文献5)では、高強度ばねとして優れた耐へたり性を発現させるのに必要とされる加工度が高いため、良好な曲げ性を得ることが困難である。また、特許文献6の技術においては高強度ばねとしての十分な強度が得られないという課題があった。
本発明は、Niを節減しつつもステンレスばね用素材として優れた耐へたり性および曲げ性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を提供するものである。
上記課題は、質量%で、0.10%≦C+0.5N≦0.25%(但しC>0.05%、N>0.05%)、Si≦1.5%、0.5%≦Mn<3.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、1.5%≦Ni<5.0%、15.0%≦Cr≦19.0%、0.8%≦Cu≦4.0%、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(1)式で示されるオーステナイト安定度指標Md30が0〜60、下記(2)式で示される積層欠陥エネルギー生成指標SFEが0〜40未満であって、加工誘起マルテンサイト相を5〜50体積%、残部がオーステナイト相からなる、耐へたり性および曲げ性に優れた低Niばね用ステンレス鋼によって達成される。
この低Niばね用ステンレス鋼にはさらに150〜500℃の温度範囲で時効処理が施されていても良い。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr…(1)
SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53 ‥・(2)
ここで、上記(1)および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表されたそれぞれの元素の含有値が代入される。
本発明によれば、Ni含有量を5.0質量%未満に節減しつつもMn含有量の多量添加を回避し、ステンレスばねとして優れた耐へたり性と曲げ性、耐食性を兼ね備えたオーステナイト系ステンレス鋼が提供される。
この鋼を用いて製造されるばねは、素材が300系ステンレス鋼である高強度ばねに代替できる。したがって、本発明はコスト面および品質面でNi原料の高騰に対応し得るものである。
本発明者らは、Ni含有量を5.0質量%未満に抑制したオーステナイト系ステンレス鋼において、上記課題を達成すべく鋭意研究し、以下の知見を得るに至った。
まず、ばねとして優れた耐久性を発現させるために、その素材は優れた耐へたり性を有していることが前提となり、それは素材を高強度化することで達成される。オーステナイト系ステンレス鋼をベースに高強度を得る手段として最も有効な手段は、冷間圧延などの加工を付与してオーステナイトを加工硬化させるとともに、オーステナイトの一部を硬質な加工誘起変態させる、いわゆる加工誘起変態塑性(TRIP)現象を利用することである。ばねへの成形工程でも加工ひずみが付与された部分ではTRIP現象により硬化し、このTRIP現象の起こりやすさはオーステナイト安定度により左右される。高強度化すればするほど耐へたり性は向上するものの、ばねとしての加工性、例えば後述の曲げ性は低下する。ばね素材として優れた加工性を維持しつつ、ばねとして良好な耐へたり性を得る上で、オーステナイト安定度およびばね素材の加工誘起マルテンサイト相の量を調整する必要があることが明らかとなった。
一方、曲げ性は引張試験などで評価される伸びとある程度相関があり、伸びにはTRIP現象と加工誘起マルテンサイトの強度を左右する固溶強化元素であるC,N含有量が深く関与していることが分かった。すなわち、オーステナイト安定度ならびにC,N量を適正範囲に調整することが必須とされた。ただし、これのみでは安定して優れた曲げ性が得られないことが分かった。そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、積層欠陥エネルギーの生成指標であるSFEを適正範囲に調整することで安定して良好な曲げ性が得られることが明らかとなった。この理由として、SFEが大きいとオーステナイトの加工硬化が小さくなるために加工誘起マルテンサイトとオーステナイトとの硬度差が大きくなること、逆にSFEが小さいとオーステナイトの加工硬化が大きくなるためにオーステナイトの延性が低下し、このいずれも曲げ性を低下させる要因となるためであると推定される。
「成分元素」
以下、本発明鋼に含まれる合金成分ならびに含有範囲限定理由について説明する。
1)CおよびN
C,Nは、加工誘起マルテンサイト(α’)相を固溶強化するために有用な元素である。本発明鋼においてはCに対するNの固溶強化の寄与はおおよそ半分であり、α’相の生成の際、TRIPによる十分な延性を発現させるためには、C質量%+0.5×N質量%(以下、C+0.5Nと略記)を0.10質量%以上とする必要がある。また、C,Nとも0.05質量%を越える含有量を確保することが顕著な延性向上作用を安定して得るために重要である。一方、C、Nの含有量が多くなりすぎると過度に硬質化し、加工性を阻害する要因となる。この傾向は(C+0.5N)が0.25質量%を越えると顕著に現れるため、これ以下となるように調整する必要がある。より好ましくは、C含有量が0.12質量%以下、N含有量が0.18質量%以下で調整されるのが良い。
2)Si
Siは、製鋼での脱酸に有用な元素であるが、1.5質量%を越えて過剰に含有させると鋼が硬質化し加工性を損なう要因となる。また、Siはフェライト生成元素であるため、過剰添加は高温域でのδフェライト相の多量生成を招き、熱間加工性を阻害する。したがって、Si含有量は1.5質量%以下に制限される。
3)Mn
MnはNiに比べて安価で、Niの機能を代替できる有用なオーステナイト形成元素である。本発明においてその機能を活用するために0.5%以上のMn含有量を確保する必要がある。一方、Mn含有量が過剰となると、製鋼工程における環境保全の問題が生じやすくなる。また、表面性状に起因する生産性の低下ならびにMnSなどの介在物生成に起因する曲げ性の劣化を引き起こす要因となる。このため、Mn含有量は3.0質量%未満、好ましくは2.5質量%未満に制限される。
4)PおよびS
PおよびSは不可避的不純物として混入するが、その含有量は低いほど望ましく、曲げ性その他の材料特性や製造性に多大な悪影響を与えない範囲として、Pについては0.06質量%以下、Sは0.005質量%以下に規定した。
5)Ni
Niはオーステナイト系ステンレス鋼に必須の元素であるが、本発明ではコスト低減の観点からNi含有量を極力低く抑える成分設計を行っており、上限を5.0質量%未満に規定する。ただし、上記Mn含有量の範囲で製造性や加工性を兼備させる成分バランスを実現させるためには1.5質量%以上のNi含有量を確保する必要がある。
6)Cr
Crはステンレス鋼の耐食性を担保する不動態皮膜の形成に必須の元素である。Cr含有量が15.0質量%未満であると、本発明の代替対象となる従来の300系オーステナイト系ステンレス鋼に要求される耐食性が十分に確保できない場合がある。ただし、Crはフェライト生成元素であるため、過度のCr含有は高温域でのδフェライト相の多量生成を招き、熱間加工性を損なう要因となるため好ましくない。種々検討の結果、本発明では19.0質量%までCrを含有させることができる。したがって、Cr含有量は15.0〜19.0質量%に規定される。
7)Cu
Cuはオーステナイト生成元素であることから、Cu含有量の増加に応じてNi含有量の設定自由度が拡大し、Niを抑制した成分設計が容易になる。また、加工誘起マルテンサイト相の生成に起因する加工硬化が抑制されるとともに、SFE値を高める上で有効な元素でもある。これらの作用を有効に得るためには0.8質量%以上のCu含有量を確保する必要がある。ただし、4.0質量%を越える多量のCu含有は熱間加工性を阻害しやすい。このため、Cu含有量は0.8〜4.0質量%に規定される。
本発明鋼は、上記の成分に加えて、熱間加工性確保を目的としたB、Caの1種あるいは2種、耐食性向上を目的としたMoを含有することができる。ただし含有される場合には、BあるいはCaは総量で0.0070質量%以下、Moは1.5質量%以下で含有されるのが望ましい。
(1)式で表されるオーステナイト安定度指標Md30が大きいほどオーステナイトからα’相への変態が起こり易いことから、軽度の冷延ひずみの付与で高強度が得られるとともに、優れた延性を確保することができる。また、ばねへの成形工程においても曲げ部など加工ひずみが付与された部分はTRIP現象によりさらに高強度化し、優れた耐へたり性を発現しやすい。このような効果はMd30が0以上で顕著に現れる。ただし、Md30が60を越えて大きくなると、曲げ加工を施した部分におけるα’生成量が多くなり過ぎるために割れが誘発され、曲げ性が劣化する。したがって、Md30は0〜60の範囲に規定した。
(2)式で表される積層欠陥エネルギー指標SFEは、良好な曲げ性を安定して得る上で0〜40未満の範囲に規定した。この理由として、前述の通り、SFEが40以上となるとオーステナイトの加工硬化が小さくなるためにα’相とオーステナイト相との硬度差が大きくなり、曲げ加工時にはα’相/オーステナイト界面近傍でき裂が生じやすくためと考えられる。また、逆にSFEが0未満の場合にはオーステナイトの加工硬化が大きくなることによる延性低下が顕著に起こるようになるためと推定される。
さらに、加工誘起マルテンサイトを5〜50体積%含有し、他はオーステナイト相となるように金属組織が調整される。この加工誘起マルテンサイトは、最終焼鈍後に行われる冷間あるいは温間での調質圧延や加工により導入される。本発明鋼では、加工誘起マルテンサイトが5体積%以上となるようにひずみが付与されることで優れた耐へたり性を発現するようになる。耐へたり性は強度が高いほど、つまり加工誘起マルテンサイト量が多いほど優れるが、その反面、曲げ成形時における割れ発生頻度が増し、ばね成形素材の加工誘起マルテンサイトが50体積%を超えると曲げ加工時の割れ発生が顕著となる。なお、オーステナイト、加工誘起マルテンサイト以外に2体積%以下のフェライトを含んでいても良い。
以上のように化学成分および金属組織が調整された本発明鋼にさらに時効処理を施しても良い。時効処理を施すことにより、調質圧延などで付与されたひずみが一部回復すると同時に、ひずみ時効強化あるいはCuによる析出強化が起こるため、高強度を維持した状態で曲げ性を向上させることが可能である。このような効果は、時効温度が150℃で現れる。一方、時効処理温度が500℃を超えるとひずみの回復が大きくなるとともにひずみ時効強化や析出強化の効果が小さくなるために、強度が急激に低下する。したがって、時効処理温度は150〜500℃に規定した。時効処理時間は特に規定しないが、均熱時間が0s〜5hであることが望ましい。
本発明鋼は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼板の製造プロセスにより製造可能である。熱間圧延以降の中間焼鈍あるいは仕上焼鈍は1050〜1100℃の範囲で行うことが望ましい。また、仕上焼鈍後は目標硬さに応じた調質圧延が施され、例えば板厚0.1〜3mmの調質圧延鋼板とすることができる。その後、形状矯正や前述の時効温度範囲における連続時効処理が適宜実施されても良い。
(実施例1)
表1の組成をもつ各種ステンレス鋼A〜Lを溶製した。表1において、A1〜A11が本発明で規定する化学成分を有する発明対象鋼、B1〜8が比較鋼、C1、2はそれぞれ従来鋼SUS301、SUS304である。なお、B1およびB2はSFE、B3およびB4はMd30、B5およびB6はC+0.5Nの値、B7はMn含有量、B8はS含有量が本発明で規定する範囲を外れる。
Figure 0005091732
各鋼とも100kgの鋼塊を得た後に、抽出温度1230℃で熱間圧延することにより板厚3mmの熱延鋼帯を製造した。熱延鋼帯に1080℃で均熱1分の焼鈍を施した後、冷間圧延、焼鈍を繰り返すことにより、硬さが450±3HV5、板厚が0.50±0.003mmの調質圧延鋼帯を得た。なお、調質圧延後の硬さが450HV5となる調質圧延率をそれぞれの鋼についてあらかじめ調べておき、その調質圧延率をもとに仕上焼鈍時の板厚を設定し、その板厚まで冷間圧延を行った後に1080℃で均熱1分の仕上焼鈍を実施した。その後の板厚0.5mmまでの調質圧延では、板温が70℃となるよう加温した上で7〜10パスで行った。
上記の板厚0.5mmの調質圧延材を用いて、加工誘起マルテンサイト相量の測定および耐へたり性、曲げ性の調査を行った。加工誘起マルテンサイト量は、径5mmの円盤を採取後、エッジをリン酸硫酸中にて電解研磨したサンプルを用い、4枚重ね合わせて振動試料型磁力計により測定した。耐へたり量は、60mm各の試験片の中央に径28mmの円孔を打ち抜いた後、金型を用いて荷重50kNで突起を成形した。図1に耐へたり性評価試験片の外観模式図を示す。突起を成形後常温において荷重18〜21kNで平押し加工することにより、各供試材の突起高さを212±1μmに調整した。その後、50kNの荷重を負荷し、4サイクル繰り返した後の突起高さを45°おきに8点測定し平均化した値を平均突起高さとした。
この実験方法によれば、実際のばね形状に成形加工し、セッチングと呼ばれる工程を経て実使用された際の耐へたり性をシミュレートすることが可能であり、平均突起高さが高いほど耐へたり性に優れると評価される。
曲げ性は、幅25mm、長さ50mmの短冊片を、長さ方向が圧延方向と直角となるように採取し、90°のV曲げ試験を行った。曲げ稜線が圧延方向となるように試験片をセットし、先端のRが0.8〜1.5mmの金型を用いて20kNの荷重を負荷して曲げを行った後、曲げ部外周側をマイクロスコープを用いて150倍で観察し、割れによる開口が認められなかった最大のRを曲げ限界R(m)とした。
表2に各鋼の加工誘起マルテンサイト量、平均突起高さおよび曲げ限界Rを示す。
Figure 0005091732
本発明鋼は加工誘起マルテンサイト量が14〜48体積%であり、平均突起高さ90μm以上、曲げ限界Rは1.0mm以下と、いずれも優れた耐へたり性および曲げ性を有している。一方、比較鋼のB3、B5、B7および現行材C1、C2の平均突起高さは86μm以下であり、本発明鋼に比べ耐へたり性に劣る。
曲げ限界Rについては比較鋼、従来鋼とも1.2mm以上であり、本発明鋼に比べ曲げ性に劣る。本実施例のように、調質圧延により高強度化した鋼にて優れた耐へたり性と曲げ性を両立させるには本発明で規定した化学成分に調整する必要があることが確認された。
(実施例2)
本発明鋼の鋼No.A1およびA7について、仕上板厚は0.5mmとしつつ、調質圧延率を変化させることで加工誘起マルテンサイト相量を変化させた鋼の造り込みを行い、実施例1に示す実験方法により平均突起高さおよび曲げ限界Rを測定した。表3に測定結果を示す。なお、試験番号X3およびX11はそれぞれ表2に記載の鋼A1およびA7の測定値と同一である。
Figure 0005091732
本発明例ではいずれも加工誘起マルテンサイト相量が6〜44体積%であり、平均突起高さ90μm以上、曲げ限界Rは1.0mm以下と、いずれも優れた耐へたり性および曲げ性を有している。一方、比較例の試験番号X1、X2およびX8の平均突起高さは82μm以下であり、本発明鋼に比べ耐へたり性に劣る。これは加工誘起マルテンサイト相量が少ないために突起部の強度が低かったためであると推定される。
一方、試験番号X7、X12の曲げ限界Rは1.4mm以上であり、本発明例に比べ曲げ性に劣る。これは、過剰のマルテンサイトを生成させたために曲げ割れ感受性が高まったためと思われる。本実施例より、本発明で規定した範囲に加工誘起マルテンサイト相量を調整する必要があることが確認された。
(実施例3)
本発明鋼の鋼No.A1の、加工誘起マルテンサイト相量が32体積%である鋼(実施例2表3中の試験番号X5について、50〜600℃で在炉30minの時効処理を施し、実施例1に示す実験方法により平均突起高さおよび曲げ限界Rを測定した。表4に測定結果を示す。なお、表中には時効処理後にマルテンサイト量を調査した結果も付した。
Figure 0005091732
時効処理温度が50℃である試験番号Y1は、時効処理なしの場合と同一の平均突起高さおよび曲げ限界Rであり、時効処理の効果が現れない。100℃以上の時効処理により曲げ限界Rが小さくなり、曲げ性が向上することが認められる。時効処理温度が高くなるにともない平均突起高さが小さくなる傾向を示す。その傾向は時効処理温度が500℃を越える領域で特に顛著となり、平均突起硬さは83μm以下となる。以上より、本発明で規定した範囲で時効処理を施すことにより、耐へたり性を損なうことなく曲げ性をさらに向上し得ることが確認された。
実施例で用いた耐へたり性試験片の外観模式図を示す。

Claims (2)

  1. 質量%で、0.10%≦C+0.5N≦0.25%(但しC>0.05%、N>0.05%)、Si≦1.5%、0.5%≦Mn<3.0%、P≦0.06%、S≦0.005%、1.5%≦Ni<5.0%、15.0%≦Cr≦19.0%、0.8%≦Cu≦4.0%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記(1)式で示されるオーステナイト安定度指標Md30が0〜60、下記(2)式で示される積層欠陥エネルギー生成指標SFEが0〜40未満であって、加工誘起マルテンサイト相を5〜50体積%、残部がオーステナイト相からなる、耐へたり性および曲げ性に優れた低Niばね用ステンレス鋼。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr・‥(1)
    SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53‥・(2)
  2. 請求項1に記載のステンレス鋼に、更に150〜500℃の温度域で時効処理が施された、耐へたり性および曲げ性に優れた低Niばね用ステンレス鋼。
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