JP5349015B2 - Ni節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法並びにスラブおよび熱延鋼板 - Google Patents

Ni節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法並びにスラブおよび熱延鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、熱間圧延での耳割れの発生を抑止したNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法、並びにその製造方法に供するための鋳造スラブおよび加熱スラブ、並びに熱延鋼板に関する。
SUS301、SUS304などに代表される加工硬化型の準安定オーステナイト系ステンレス鋼(いわゆる300系ステンレス鋼)は、その優れた製造性、耐食性、加工性などを活かして様々な用途に使用されている。オーステナイト系ステンレス鋼は一般にNiを多量に含有することから高価である。
より低廉なオーステナイト系鋼が必要な用途では、Ni含有量を減らし、代わりにMn等のオーステナイト形成元素を多量に配合したSUS201、SUS202などのNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼(いわゆる200系ステンレス鋼)、あるいはそれらをベースとした高Mnオーステナイト系鋼種が適用されることがある。特許文献1〜4には種々の高Mnオーステナイト系ステンレス鋼が記載されている。
高Mnオーステナイト系鋼は、300系ステンレス鋼に比べ一般に耐食性、熱間加工性、成形性に劣る。また、多量のMnを含有するために製鋼工程では有害なMn酸化物の微細粒子(Mnヒューム)が発生し、環境対策が必要となる。冷間圧延、焼鈍、酸洗等の下工程ではMn含有量が高いことに起因して製品の表面品質低下が生じやすい。したがって、高Mnオーステナイト系鋼を300系ステンレス鋼の代替として適用するには、製造性や材料特性の面で問題が多い。
特許文献5、6にはMn量を低減したNi節減型のオーステナイト系ステンレス鋼が示されている。しかしこれらは強度あるいは加工性が低く、300系ステンレス鋼を代替できるほどの材料特性は得られていない。特許文献7には熱間加工性や耐食性がSUS304と同等であるMn量を比較的低減したNi節減型のオーステナイト系ステンレス鋼が示されている。しかし、そのMn含有量は3質量%以上であり、製造現場での環境劣化や製品の表面性状低下の問題を解消するためには、さらなるMn含有量の低減が望まれる。
特開2006−111932号公報 特開2007−197806号公報 特開平11−241145号公報 特開平7−70700号公報 特開昭56−152951号公報 特開2006−22369号公報 特開2007−63632号公報
発明者らの調査によれば、Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、Mn含有量を3%未満のレベルに低減すると熱間加工性が低下し、耳割れのない健全な熱延鋼板を得ることが非常に難しくなることが確認された。耳割れの発生は高品質の鋼板を安全に製造する上で問題となることがあり、耳割れの程度が大きい場合にはトリミングすることによる歩留低下を招くなど、製造コスト増大の要因となる。
本発明は、Mn含有量を低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、熱間圧延での耳割れの発生を抑止する技術を提供するとともに、300系ステンレス鋼の代替として多くの用途で適用可能な耐食性および材料特性を具備した材料を提供しようというものである。
上記目的は、質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部がFeおよび不可避的不純物であり、必要に応じてさらに下記(2)式で定義されるオーステナイト安定度指標Md30が0以上80以下、かつ下記(3)式で定義される積層欠陥エネルギー指標SFEが0以上40未満を満たす化学組成のスラブを加熱炉に装入し、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持することにより下記(A)の組織状態とする工程、
前記組織状態のスラブを加熱炉から取り出して、当該スラブに熱間圧延を施す工程、
を有するNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法によって達成される。
0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr …(2)
SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53 …(3)
ここで(1)〜(3)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
(A)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で30μm以下である組織状態
スラブ厚さ中央部とは、スラブ厚さの15%に相当する厚さ方向中央領域である。
加熱炉に装入する前の上記スラブとしては、下記(B)の組織状態を有する鋳造スラブを適用することがより好ましい。
(B)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が15%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で60μm以下である組織状態
このような鋳造スラブを用いると、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持する時間を1〜5h程度とすることが可能になり、一般的な連続熱間圧延ラインにおける加熱炉が使用できる。つまり、非常に長時間の加熱保持を行う必要がなくなる。
前記の組織状態を有する鋳造スラブは、所定組成に成分調整された溶鋼を、スラブ製造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジ表面における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が50℃/min以上となるように鋳造する工程によって得ることができる。
また、本発明では、上記化学組成を有するスラブとして、熱間圧延工程の加熱炉に装入するための「鋳造スラブ」であって、前記(B)の組織状態であるものが提供される。また、その加熱炉中で1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持されている「加熱スラブ」であって、前記(A)の組織状態であるものが提供される。
さらに本発明では、上記化学組成を有し、上記(A)の組織状態に調整された加熱スラブに熱間圧延を施してなる耳部無手入れの熱延鋼板であって、耳割れが観測されないNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板が提供される。鋼板には鋼帯が含まれる。耳割れは、圧延中に板のエッジ(幅方向端部;「耳」と呼ばれる)に生じる割れである。ある圧延パスで耳割れが生じると、その後の圧延パスで板が伸びるのに伴って割れ幅が拡大し、場合によっては操業上のトラブルを招くこともある。耳割れ深さは、鋼板のエッジから割れ先端までの幅方向(圧延方向に対し直角方向)の距離である。本明細書では深さ1mm以下のエッジ欠陥は、耳割れとして扱わない。そのような微小なエッジ欠陥は本発明対象鋼において熱間圧延以降の工程に悪影響を与えない。すなわち本明細書でいう耳割れは深さ1mmを超えるものを意味する。
本発明によれば、Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、「Mn含有量の低減」と「熱間圧延時の耳割れ抑止」とを両立させることが可能となり、健全な熱延鋼板(鋼帯)を安定して得ることができる。Mn含有量を低減したことにより製造現場での環境が改善され、鋼板の表面品質低下も抑制される。得られた鋼板は耐食性および機械的特性が良好であり、ばね、機械部品、ガスケットをはじめとする多くの用途で300系ステンレス鋼の代替として活用できると考えられ、製品のコストダウンに寄与しうる。
発明者らはMn含有量を低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、熱間加工性を改善する手法を研究してきた。その結果、このような成分系ではオーステナイト素地中にδフェライトが分布した組織状態となりやすく、オーステナイト素地とδフェライトの界面が熱延耳割れの起点あるいは伝播経路として機能することが確かめられた。したがって、熱間圧延時にδフェライト相の存在量ができるだけ少なくなっていることが耳割れ防止には有利である。しかし、化学組成の調整だけでδフェライト量の低減を図ることは、限られた組成範囲に制限され、必ずしも得策ではない。
種々検討の結果、熱間圧延に供する加熱スラブの内部全体についてδフェライト量を低減する必要はなく、熱間圧延時にひずみが作用しやすいスラブエッジ近傍の表層部だけについてδフェライト相の存在量およびサイズを低減することによって、熱間圧延での耳割れを安定して抑止できることがわかった。
図1に、本発明に相当する鋳造スラブおよび加熱スラブ相当材の、スラブ長手方向(鋳造方向)およびスラブ幅方向に平行なスラブ厚さ中央部の断面についての金属組織を例示する。「スラブエッジセンター」とはスラブエッジの厚さ方向中心を意味する。図1に例示される鋼の化学組成は、質量%でC:0.12%、Si:0.5%、Mn:2.8%、Ni:2.3%、Cr:16.3%、Cu:2.8%、N:0.12%、残部Feおよび不可避的不純物である。ここで図1(b)の加熱スラブ相当材は、前記鋳造スラブから採取したサンプルをオーステナイト単相領域である1230℃で2h加熱した後、水中に急冷したものである。いずれもスラブ長手方向およびスラブ幅方向に平行なスラブ厚さ中央部の断面(すなわちスラブ広面に平行なスラブ厚さ中央部の断面)が観察できるように試料を樹脂に埋め込み、研磨およびNaOH水溶液による電解エッチングを施し、光学顕微鏡で観察したものである。
鋳造スラブ(図1(a))においては、スラブエッジ付近と幅方向内部とでδフェライト相の分布形態に違いが見られる。スラブエッジ付近では、鋳造時の冷却速度が大きいことから、内部よりもδフェライト相の量が少なく、サイズも小さい。このような鋳造スラブをオーステナイト単相領域で加熱した加熱スラブ(図1(b))においては、スラブエッジ付近でδフェライト相の量およびサイズがかなり低減している。
発明者らは加熱スラブの組織状態と熱間加工性の関係を詳細に検討した結果、前述のように、本発明で対象とする鋼種の熱間圧延での耳割れは、オーステナイト素地とδフェライトの界面を起点として発生し、またオーステナイト素地とδフェライトの界面は亀裂の伝播経路となる。δフェライト量が少ないほど、またオーステナイト相とδフェライト相の界面面積が小さいほど、熱間圧延での耳割れ感受性が低くなる。δフェライト量はδフェライト相の体積率(断面観察における面積率)として表すことができ、オーステナイト相とδフェライト相の界面面積はδフェライト相の長径に大きく依存する。発明者らの検討によれば、熱間圧延前の加熱炉中で下記(A)の組織状態となっているとき、熱間圧延での耳割れが安定して顕著に抑止できることが明らかになった。
(A)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で30μm以下である組織状態
本発明で対象とする化学組成(後述)の鋼においては、スラブエッジから100μmを超える内部のδフェライト形態は熱間圧延での耳割れにほとんど影響を及ぼさない。
オーステナイト相とδフェライト相の界面で熱間割れが起こるメカニズムは不明な点も多いが、フェライト生成元素であるPおよびSがδフェライト相中に濃化し、熱間圧延前の加熱時および熱間圧延時にδフェライト相がオーステナイト相に変態する過程で、両者の界面にP、Sが偏析して界面結合力が低下し、その界面に熱延ひずみが蓄積されて割れに至るものと推察される。
δフェライト相の面積率は、図1(b)に例示したようなスラブ長手方向およびスラブ幅方向に平行なスラブ厚さ中央部の断面についての金属組織において、δフェライト相の面積率を測定することによって求めることができる。δフェライト相の長径は、前記断面に現れている島状あるいは粒子状に見える個々のδフェライト相の最も長い部分の径をいう。断面観察は、スラブエッジ表面から100μm深さの領域を、スラブ長手方向について15mm以上の距離にわたって観察し、それらの領域中に観測されるδフェライト相のデータを採用する。前記領域の内外に跨って存在するδフェライト相については、面積率を算出する際には前記領域の内部に存在するδフェライト相の部分の面積だけを採用し、長径はそのδフェライト相の全体像から決定する。δフェライト相の長径の上位20%とは、測定対象のδフェライト相の総数をn個とし、n個の長径データを最大のものから降順に並べた場合の、1番目からn×0.2(小数点以下切り捨て)番目までのデータについての平均値をいう。
なお、この測定手法は(A)の組織状態と、後述の(B)、(C)の組織状態の判定において適用できる。ただし(C)の組織状態の判定においては上記において「スラブ」を「鋼板」と読み替えて適用すればよい。
上記(A)の組織状態を有する加熱スラブを得るためには、鋳造スラブを1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持することが重要である。保持温度が1100℃を下回ると熱間圧延での仕上温度が低下して変形抵抗の増大を招きやすい。またスラブエッジ付近におけるδフェライト相の量およびサイズを前述の所定範囲にコントロールすることが難しくなる場合がある。1250℃を超えると固相線温度に接近する場合があり好ましくない。
図2に、質量%でC:0.12%、Si:0.5%、Mn:2.8%、Ni:2.3%、Cr:15〜19%、Cu:2.8%、N:0.12%、残部Feの組成において、横軸にCr含有量を採った場合の計算により求めた平衡状態図を例示する。この場合、例えばbで示した領域で加熱保持するとδフェライト相が生成することから、スラブエッジ付近におけるδフェライト相の量およびサイズを上記所定の範囲に低減することが困難となる。したがって、例えば図2中にaで示したようなオーステナイト単相領域で加熱保持する必要がある。鋳造スラブのδフェライト存在形態に応じて加熱保持時間をコントロールすることにより、上述した所望の組織状態を得ることができる。なお、オーステナイト単相領域に長時間加熱しても、鋳造時に生じたδフェライト相を拡散によって完全に消失させることは一般に困難であり、通常、ある程度のδフェライト相が残留する。
δフェライト相の存在量が多い鋳造スラブを用いた場合、上記(A)の組織状態を得るためには長時間の加熱が必要となる。そこで、熱間圧延時に大幅な加熱時間の延長を伴わないようにするためには、組織状態が好適に調整された鋳造スラブを適用することが有利となる。具体的には下記(B)の組織状態を持つ鋳造スラブを採用することが望ましいことがわかった。
(B)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が15%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で60μm以下である組織状態
鋳造スラブにおいてスラブエッジ近傍のδフェライト相の量およびサイズがこの程度に低減されていれば、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域での加熱時間を1〜5hとすることが可能となり、連続熱間圧延ラインの加熱炉が利用できる。
上記(B)の組織状態を持つ鋳造スラブは、鋼の化学組成(δフェライト相の生成し易さ)に応じて、鋳造時の冷却速度をコントロールすることによって得ることができる。具体的には、後述の化学組成を有する溶鋼を、スラブ製造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジ表面における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が所定値以上となるように鋳造すればよい。その所定値(平均冷却速度の下限)は鋼の化学組成(δフェライト相の生成し易さ)に応じて変動するが、本発明で規定する組成範囲全体において安定して上記(B)の組織状態を持つ鋳造スラブを得るためには、前記平均冷却速度を50℃/minとすることが好ましい。凝固開始温度から1250℃までの温度範囲は例えば図2に示されるように、δフェライト相が晶出する温度域を含む範囲である。この温度域を通過する時間を短くすることにより、δフェライト相の生成量を抑制することができる。鋳造速度に応じてモールドの水冷条件などを調整することにより鋳造時の冷却速度をコントロールすることが可能である。鋳造方法としては、連続鋳造や、扁平鋳型などを用いたバッチ式の鋳造法が好適な対象となる。
熱間圧延は常法によって行うことができる。具体的には、前述(A)の組織状態に調整された加熱スラブを炉から取り出して、複数パスの熱間圧延を施し、例えば仕上圧延温度は900〜1050℃、巻取温度は400〜900℃とすればよい。発明者らの詳細な検討によれば、本発明で対象とする鋼種の場合、耳割れは熱間圧延率が60%以上の熱延パスにおいて生じる。その原因は、蓄積される熱延ひずみと、熱延によって変化していくδフェライト相の形態とのバランスにあると考えられる。すなわち、熱間圧延率が高くなるに伴って、熱延ひずみは増大し、δフェライト相も長径を増していく。このため、熱間圧延率の増大に伴って熱延割れ感受性も増大していく。しかし、熱間圧延率がさらに増大すると、δフェライト相は層状に伸ばされていくことによって、δフェライト相の形態に起因する熱延割れ感受性は減少に転じる。種々検討の結果、熱間圧延率が60〜70%のときにδフェライト相の形態に起因する熱延割れ感受性は最大になり、その後の熱延パスによって熱延ひずみに起因する熱延割れ感受性が増大しても、「熱延ひずみに起因する熱延割れ感受性」+「δフェライト相の形態に起因する熱延割れ感受性」で表されるトータルの熱延割れ感受性の増大速度は低下し、場合によっては減少するようになることも考えられる。したがって、60%以上の熱間圧延率に相当する最初の熱延パス(例えば圧延率66%など)を受けた直後のδフェライト相の形態が十分に熱延割れ感受性の低いものであれば、さらに熱間圧延を続けても、95%程度の熱間圧延率まで耳割れの発生を抑止することが可能となる。
詳細に検討したところ、60%以上の熱間圧延率に相当する最初の熱延パスを受けた直後において、下記(C)の組織状態になっていれば、その後の圧延パスにおいてトータル熱延率が例えば95%になるまで熱間圧延を施しても耳割れは発生しないことがわかった。
(C)鋼板エッジ(耳)の厚さ中央部表面から板幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で50μm以下となる組織状態
なお、深さが1mm以内のエッジ欠陥であれば、熱延ラインや冷延・焼鈍ラインにおいて操業上、問題とならない。
60%以上の熱間圧延率に相当する最初の熱延パスを受けた直後に上記(C)の組織状態を有している場合は、その後に熱延を継続して得られた熱延鋼板も、上記(C)を満たす組織状態を有している。
熱間圧延後は一般的なオーステナイト系ステンレス冷延鋼板の製造方法に従って、「冷間圧延→必要に応じて中間焼鈍および冷間圧延→仕上焼鈍」の工程により例えば板厚0.1〜3mm程度の焼鈍鋼板とすることができる。その後、形状矯正や調質圧延を適宜施すことができる。
以下、本発明で対象とする鋼の化学組成について説明する。鋼の成分元素についての「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
C、Nは、加工誘起マルテンサイト相(α’相)を固溶強化するために有用な元素である。本発明で対象とする鋼では、Nの固溶強化に対する寄与はCの約半分である。種々検討の結果、成形加工により生成したα’相を固溶強化させてSUS301並みの優れた強度を得るためには、C、Nともそれぞれ0.05%以上の含有量を確保した上で、C+0.5Nが0.1以上となるようにCおよびNを含有させることが極めて有効である。ただし、C、Nの含有量が多くなると鋼材が硬化し、C+0.5Nが0.25を超えると加工性を阻害する場合があることがわかった。したがって本発明では下記(1)式を満たす範囲でCおよびNを含有させる。C含有量は0.12%以下とすることがより好ましく、N含有量は0.18%以下とすることがより好ましい。
0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
Siは、製鋼での脱酸に有効な元素であり、固溶強化にも寄与する。その作用を十分に得るためには0.3%以上のSi含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰に含有させると鋼が硬化し加工性低下を招く。またSiはフェライト生成元素であり、その作用はCrより小さいが、過剰に含有させると高温域でδフェライト相が生成しやすくなり、熱間加工性を十分に改善することが難しくなる。これらの弊害はSi含有量が4%を超えると顕著に現れる。したがってSi含有量は4%以下の範囲とする。
Mnは、Niよりも安価であり、Niの機能を代替できる有用なオーステナイト形成元素である。Niを後述の範囲で節減する場合、Mnの含有量は0.5%以上を確保する必要がある。1%以上を確保することがより効果的であり、1.5%以上とすることが一層効果的である。一方、Mn含有量が多くなると製鋼工程における環境上の問題、鋼板の表面品質劣化の問題、介在物に起因する加工性低下や耐食性低下の問題などが生じやすい。このため本発明ではMn含有量を3%未満に制限する。
P、Sは、原料から混入するが、その含有量は低いほど好ましい。製造性や、加工性その他の材料特性に多大な悪影響を及ぼさない範囲として、Pは0.06%以下、Sは0.005%以下の範囲で含有が許容される。
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼に必須の合金元素であるが、本発明ではコスト低減の観点からNi含有量をできるだけ節減する成分設計を行い、Ni含有量は5%未満の範囲とする。ただし、C、N、Mnの含有量を上記の範囲とした場合に良好な熱間加工性を得るためには、Ni含有量を0.5%以上確保する必要があり、1%以上とすることがより効果的である。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を担保する不動態皮膜の形成に必須の元素である。本発明では代替対象である従来の300系オーステナイト系ステンレス鋼に要求される耐食性を得るために、16%を超えるCr含有量を確保する。ただしCrはフェライト生成元素であり、図2に例示されるようにCr含有量が増大すると高温でδフェライト相+オーステナイト相(γ)共存領域が拡大しやすい。発明者らの検討によれば、熱間圧延時の加熱温度範囲においてγ単相領域を十分に確保するためには、Cr含有量を19%以下とすることが有利となる。したがって本発明ではCr含有量を16%超え19%以下の範囲とする。
Cuは、オーステナイト生成元素であることから、Cuを含有させることにより低Ni化・低Mn化の成分設計が容易になる。詳細な検討の結果、上記Ni含有量およびMn含有量の範囲で低Ni・低Mn化を図るためには、Cuを0.8%以上含有させることが極めて有利となる。ただし、3.5%を超えて多量にCuを含有させると熱間加工性が低下しやすい。したがってCu含有量は0.8〜3.5%とする。
上記以外の元素として、V:0.3%以下、Zr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、B、Ca、Mg、CoおよびREM(希土類元素):合計0.1%以下といった元素の混入が許容される。これらはスクラップ等の原料から不可避的に混入する場合があるが上記範囲の混入であれば本発明の効果を阻害するものではない。
得られた鋼板において、強度、延性、曲げ性、耐へたり性などの材料特性をSUS301と同等レベルとするために、下記(2)式で定義されるオーステナイト安定度指標Md30が0以上80以下、かつ下記(3)式で定義される積層欠陥エネルギー指標SFEが0以上40未満を満たすように成分組成を調整することが望ましい。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr …(2)
SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53 …(3)
Md30が大きいほど、オーステナイト相から加工誘起マルテンサイト相への変態が起こりやすいので軽度の冷延ひずみの付与で高強度が得られ、冷間圧延率を低めに設定して延性改善を図る場合には特に有利となる。また、ばねへの成形加工においても曲げ部などで加工ひずみが付与された部分はTRIP現象によりさらに高強度化し、優れた耐へたり性が得られる。これらの作用はMd30を0以上とすることによって顕著に現れる。ただし、Md30が80を超えると加工部での加工誘起マルテンサイト生成量が多くなり過ぎ、特に曲げ加工において割れが発生しやすくなる。
SEFが大きくなるとオーステナイト相の加工硬化が小さくなるために、加工時に生じた加工誘起マルテンサイト相と母相であるオーステナイト相の硬度差が大きくなり、特にSFEが40以上の場合には曲げ加工時に両相の界面近傍で亀裂が生じやすくなる。逆にSFEが0より小さくなるとオーステナイト相の加工硬化が過大となり、延性低下が問題となりやすい。
表1に示す化学組成の鋼を溶製した。表1中のC1はSUS301、C2はSUS304である。いずれも270kgの溶鋼を水冷式の銅製鋳型に鋳造して、鋳造スラブを得た。
C1、C2を除く鋼について、鋳造の際、鋳型に設置した数本の熱電対によって凝固時の温度変化をモニターし、スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向内部への冷却速度分布を測定した。得られた鋳造スラブから、厚さ60mm×幅80mm×長さ120mmの鋳造スラブ試料を採取した。ただし、上記の冷却速度分布のデータに基づいて採取位置(スラブエッジから鋳造スラブ試料のエッジまでの距離)を変えることによって、鋳造スラブ試料は、エッジの厚さ中央部表面における「凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度」が種々の段階にあるものを用意した。
各鋳造スラブ試料について、エッジ近傍の厚さ中央部の断面が観察できる試料を用意し、研磨およびNaOH水溶液による電解エッチングを施した断面を光学顕微鏡で観察した。断面観察は、スラブ試料エッジ表面から100μm深さの領域を、スラブ試料長手方向15mmの距離にわたって行い、前述の要領でその領域におけるδフェライト相の面積率およびδフェライト相の長径の上位20%の平均値を求めた。δフェライト相の面積率は光学顕微鏡像の画像処理を利用して求めた。
各鋳造スラブ試料を1150〜1230℃の範囲の所定の保持温度で加熱保持したのち、炉から取り出し、熱間圧延に供した。保持温度および保持時間は後述表3中に記載してある。表3中の試験番号P15以外はいずれもオーステナイト単相領域、P15はδフェライト相+オーステナイト相共存領域で加熱保持を行った。熱間圧延のパススケジュールは表2に示す条件とした。各パスのディレイは約7秒、圧延速度は約30m/minとし、水の噴霧を行わない条件で大気中にて熱間圧延を行った。熱間圧延中に、各パスの出側で耳割れの有無を観察した。トータル熱延率95%においても耳割れが発生しない場合を合格(熱間加工性;良好)と判定した。
熱間圧延前における加熱保持中のスラブ(加熱スラブ)の組織状態を知るために、各鋳造スラブ試料のエッジ付近の位置に相当する試験片を、熱間圧延用試料と同条件で加熱保持し、保持時間経過時点で炉から取り出し、直ちに水中に急冷することにより観察用試料を作製した。これを用いて前述の観察手法によりスラブ試料エッジの厚さ中央部表面から幅方向深さ100μm以内の領域におけるδフェライト相の面積率、およびδフェライト相の長径の上位20%の平均値を求めた。また、上記熱間圧延の3パス目(トータル熱延率66%)を終えた後、5秒以内に水中に急冷した試料についても、前述の観察手法により鋼板エッジ(耳)の厚さ中央部表面から幅方向深さ100μm以内の領域におけるδフェライト相の面積率、およびδフェライト相の長径の上位20%の平均値を求めた。
表3にこれらの結果を示す。図3にA1〜A5鋼について、加熱スラブエッジの厚さ方向中央部表面から幅方向深さ100μm以内の領域におけるδフェライト相の面積率(スラブエッジ表層部100μmにおけるδフェライト相の面積率)およびδフェライト相の長径の上位20%の平均値(スラブエッジ表層部100μmにおけるδフェライト相の長径)と、耳割れ発生有無の関係を示す。
表2および図3からわかるように、本発明で規定する化学組成を有し、加熱スラブにおいて前記(A)の組織状態を満たす本発明例のものは、いずれも60%以上の最初の熱延パス直後における板の組織状態が前記(C)を満たし、トータル熱延率95%においても耳割れは全く発生しなかった。このうちP12は鋳造時の高温での冷却速度が遅いものであるが、比較的δフェライト相の生成しにくい化学組成であることから鋳造スラブが前記(B)の組織状態を呈しており、その結果、熱間加工性は良好であった。P15は前記(B)の組織状態を満たさない鋳造スラブを適用した場合であるが、熱間圧延時のオーステナイト単相温度域での加熱保持を長時間としたことにより前記(A)の組織状態を満たす加熱スラブが得られ、熱間加工性は良好であった。
これに対し、比較例P1、P2、P7、P10、P13、P14は、それぞれの化学組成(δフェライト相の生成し易さ)に対して鋳造時の高温での冷却速度が遅すぎたことにより前記(B)の組織状態を満たす鋳造スラブが得られず、それに起因して前記(A)の組織状態を満たす加熱スラブが得られなかったために熱間加工性に劣った。このうちP13は熱間圧延前の加熱保持温度がオーステナイト相+δフェライト相共存領域であったことから加熱スラブ中のδフェライト量がかなり多くなり、P14と比べ早期に耳割れが発生した。P16はCu含有量が高すぎたことに起因して熱間加工性が低下した。P17はS含有量が高すぎたことに起因して熱間加工性が低下した。
表1に示した各鋼を用いて、冷延鋼板の材料特性を調べた。各鋼とも板厚3mmの熱間圧延板を出発材料として、以下の工程にて仕上焼鈍材および25%調質圧延材を得た。
仕上焼鈍材; 1060℃での溶体化処理および水冷→酸洗→1mmまで冷間圧延→1080℃での仕上焼鈍および水冷
25%調質圧延材; 1060℃での溶体化処理および水冷→酸洗→1.33mmまで冷間圧延→1080℃での仕上焼鈍および水冷→1mmまで調質圧延(25%)
仕上焼鈍材について、JIS Z2201に準拠した13B号試験片を用いた圧延方向の引張試験(クロスヘッド速度3mm/min、標点間距離50mm、常温)を行った。また、表面を#600研磨仕上げとした試料を用いてJIS G0577に準じた方法により、3.5%塩化ナトリウム水溶液、30℃中における孔食電位を測定した。
25%調質圧延材について、JIS Z2244に準拠した方法で荷重10kgにおけるビッカース硬さを測定した。また、幅10mm、長さ200mmの圧延方向を長手方向とする試験片を用いて、JIS H3130に準拠した方法により「繰り返したわみ試験」を行い、ばね限界値を求めた。
なお、引張試験値はn=3、孔食電位はn=3、ビッカース硬さはn=5、ばね限界値はn=5の平均値である。
結果を表4に示す。
表4からわかるように、本発明例のものはSUS301、SUS304と同等レベルの強度、延性、耐食性、ばね性を有することが確認された。
本発明に相当する鋳造スラブおよび加熱スラブ相当材についての金属組織写真の一例。 計算により求めた平衡状態図の一例。 加熱スラブエッジの厚さ中央部表面から幅方向深さ100μm以内の領域における「δフェライト相の面積率」および「δフェライト相の長径の上位20%の平均値」と、耳割れ発生有無の関係を示すグラフ。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成のスラブを加熱炉に装入し、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持することにより下記(A)の組織状態とする工程、
    前記組織状態のスラブを加熱炉から取り出して、当該スラブに熱間圧延を施す工程、
    を有するNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (A)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で30μm以下である組織状態
  2. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成を有し、下記(B)の組織状態である鋳造スラブを加熱炉に装入し、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に1〜5h保持する工程、
    前記保持後のスラブを加熱炉から取り出して、当該スラブに熱間圧延を施す工程、
    を有するNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (B)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が15%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で60μm以下である組織状態
  3. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成を有する溶鋼を、スラブ製造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジ表面における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が50℃/min以上となるように鋳造して下記(B)の組織状態である鋳造スラブを得る工程、
    得られた鋳造スラブを加熱炉に装入し、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に1〜5h保持する工程、
    前記保持後のスラブを加熱炉から取り出して、当該スラブに熱間圧延を施す工程、
    を有するNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (B)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が15%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で60μm以下である組織状態
  4. 鋼の化学組成は、さらに下記(2)式で定義されるオーステナイト安定度指標Md30が0以上80以下、かつ下記(3)式で定義される積層欠陥エネルギー指標SFEが0以上40未満を満たすものである請求項1〜3のいずれかに記載のNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr …(2)
    SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53 …(3)
    ここで(2)式(3)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
  5. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成を有する鋳造スラブであって、下記(B)の組織状態を有するNi節約型オーステナイト系ステンレス鋼スラブ。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (B)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が15%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で60μm以下である組織状態
  6. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成を有し、1100〜1250℃かつオーステナイト単相温度域に保持されている加熱スラブであって、下記(A)の組織状態を有する熱間圧延工程用Ni節約型オーステナイト系ステンレス鋼スラブ。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (A)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で30μm以下である組織状態
  7. 質量%で、C:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Si:4%以下、Mn:0.5%以上3%未満、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Ni:0.5%以上5%未満、Cr:16%超え19%以下、N:0.05%超えかつ下記(1)式を満たす範囲、Cu:0.8%以上3.5%以下、残部Feおよび不可避的不純物である化学組成を有し、下記(A)の組織状態に調整された加熱スラブに熱間圧延を施してなる耳部無手入れの熱延鋼板であって、耳割れが観測されないNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板。
    0.10≦C+0.5N≦0.25 …(1)
    ここで(1)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
    (A)スラブエッジの厚さ中央部表面からスラブ幅方向深さ100μm以内の領域において、δフェライト相の面積率が4%以下、δフェライト相の長径が上位20%の平均値で30μm以下である組織状態
  8. 鋼の化学組成は、さらに下記(2)式で定義されるオーステナイト安定度指標Md30が0以上80以下、かつ下記(3)式で定義される積層欠陥エネルギー指標SFEが0以上40未満を満たすものである請求項5、6のいずれかに記載のNi節約型オーステナイト系ステンレス鋼スラブまたは請求項7に記載のNi節約型オーステナイト系ステンレス熱延鋼板。
    Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr …(2)
    SFE=6.2Ni+18.6Cu+0.7Cr+3.2Mn−53 …(3)
    ここで(2)式(3)式の元素記号の箇所には質量%で表された当該元素の含有量値が代入される。
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