JP5088502B2 - 電動ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献1に示される電動ブレーキ装置では、温度センサにより検出した温度に基づいて、グリスを封入した減速機構及び運動変換機構を含むキャリパ機部の摺動抵抗などの機械損失に消費される電流に相当する無効電流値(以下、キャリパ機部摩擦トルク電流成分ともいう。)を推定し、この無効電流値を、推力発生のためのモータに供給する電流値の補正に用いている。
上記特許文献1に示される電動ブレーキ装置は、モータに供給する電流値(モータ供給電流値)の補正を行なうものの、このモータ供給電流値の補正を、温度センサの検出データ、即ちその時その時の値を示すが経年変化を示す内容を含んでいないデータを用いて行なっており、制動制御について、キャリパの経年変化を反映して行えるものになっていないので、上述した一般例と同様に、制動制御精度の低下を招くことになる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動ブレーキ装置のキャリパの断面図である。図2は、図1の電動ブレーキ装置を模式的に示すブロック図である。図3は、図2の制御装置を模式的に示すブロック図である。図4は、図1の駐車ブレーキ(PKB)機構の作動状態を示し、(a)は、PKB動作時、(b)PKB解除時の状態を示す図である。図5は、図1、図2の制御装置が実行するキャリパ機部摩擦トルク成分電流(以下、適宜、摩擦トルク成分電流という。)検出・テーブル更新処理におけるモータの動作タイムチャートを示す図である。図6は、同摩擦トルク成分電流検出・テーブル更新処理を説明するためのモータ位置−推力発生成分電流+摩擦トルク成分電流テーブル(以下、適宜、モータ位置−電流テーブルという。)を示す図である。図7は、図1の電動ブレーキ装置の作用を説明するためのフローチャートである。
上述した制動力の発生のために、モータ9に電流が供給されるが、モータ9に供給される電流には、キャリパ機部(内部機器)の摺動抵抗などの機械損失に消費される電流に相当する無効電流成分(内部機器の摺動抵抗による無効電流値。以下、適宜、キャリパ機部摩擦トルク電流成分ともいう。)も含まれることになる。
前記車両に設けたブレーキペダル19にはストロークシミュレータ20が接続されており、ブレーキペダル19の操作量を示す情報(ブレーキペダル操作量情報)をECU4に出力するようにしている。
ブレーキパッド17は、その初期位置が、ディスクロータ18から一定の間隔を保った位置に設定されている。
電動ブレーキ装置1は、さらに、モータ9へ供給される電流(適宜、モータ供給電流という。)の値(モータ供給電流値)を検出してECU4に出力する電流センサ6を備えている。
また、上述したようにPKB動作機能が発揮された状態で、図示しないPKB動作解除用のスイッチに対する運転者の操作が行われると、これに応じてECU4の制御によりモータ9が増力方向(左回り)に一定回転以上動作されると共に、PKBソレノイド24への通電が停止され、図4(b)に示すように、モータ歯車22の歯先部と係止部23が離れ、モータ9が自由に動作できるようになり、前記ラッチが解除される、即ちPKBが0FFされる(PKB動作解除機能が発揮される。)。
本実施形態では、ECU4(制御装置5)が、電流値補正手段(モータ電流値補正手段)を構成している。
RAM3は、さらに、電動ブレーキの熱などの物理的情報により設定される剛性モデル(電動ブレーキの剛性モデル)や推力推定テーブル3aを更新可能に保存すると共に、後述する制御過程で実行される計測(図7ステップS3参照)により得られる位置データ及びこれに対応した電流値データを記憶するようにしている。この計測により得られた位置データ及び電流値データ(摩擦トルク成分電流)は、モータ位置‐電流テーブルの更新に用いられる。
図6は、左右輪共にPKB推力が同等である場合におけるテーブル更新処理を説明するための左右輪いずれか一方を対象にしたモータ位置‐電流テーブルで、横軸がモータ位置、縦軸が「推力発生成分電流+摩擦トルク成分電流」とされるモータ位置‐電流テーブルを示す図である。図6に示されるモータ位置‐電流テーブルがRAM3に更新可能に記憶される。図6中、モータ位置‐電流テーブルのうち更新前(学習前)、更新後(学習後)のものを、夫々、点線、実線で示す。
そして、図6は、所定のモータ位置において所望の推力(制動力)を得るために、モータ位置‐電流テーブル3bにおける前記所定のモータ位置に対応した大きさの電流(推力発生成分電流+摩擦トルク成分電流)をモータ9に通電する必要があることを示している。
図6中、符号▽は、実使用時においてクリアランスを詰めていない状態〔原点(ブレーキパッド接触位置相当)、無負荷領域(モータ位置ゼロに相当する位置)〕で得られる電流値(推力ゼロでの電流値)を示す。符号□、◇は、夫々、モータ9の推力を一点鎖線30で示すモータ位置におけるPKB ON位置(図5参照)相当推力とした際に必要とされる更新前(学習前)、更新後(学習後)モータ位置‐電流テーブルにおける「推力発生成分電流+摩擦トルク成分電流」を示す。
キャリパ2の経年変化(例えばグリスの性能低下)により、摩擦トルクが大きくなると、摩擦トルク成分電流ひいては内部機器の摺動抵抗による無効電流値(キャリパ機部摩擦トルク電流成分)が大きくなることから、所望の推力(制動力)を得るためには、経年変化前に必要とされた電流に比して大きな電流をモータ9に供給する必要がある。即ち、所望の推力(制動力)を得るために、経年変化前ひいては更新前(学習前)のモータ位置‐電流テーブル(図6中、点線で示す、)に代えて、同等モータ位置で電流値が大きくなるようにした更新後(学習後)のモータ位置‐電流テーブル3bを用いることが必要となる。
制御装置5が実行する電流補正処理は、図7に示すように、ステップS3、S4からなる学習分電流Id(摩擦トルク成分電流)の検出・テーブル更新処理と、ステップS1、S2からなる判定処理とを含んで構成されている。電流補正処理に、判定処理(ステップS1、S2)を含んでいることにより、学習分電流Id(摩擦トルク成分電流)の検出処理(ステップS3)を後述する摩擦トルク学習動作領域で行えるようにしている。
この電流補正処理では、ステップS1においてブレーキシステムが0Nである〔以下、YES(Y)ともいう。〕か否〔以下、(NO(N) ともいう。 )かの判定を行う。ステップS1でNOと判定すると、当該電流補正処理は終了する。
本実施形態では、ECU4(制御装置5)が、無効電流値算出手段を構成している。
ステップS2でNOと判定すると、ステップS1に戻る。ステップS2でYESと判定すると、ステップS3に進む。
学習分電流Id(例えばIdz、Idg)は、上述したようにPKBによる制動力が作用している状態で計測されることから、摩擦トルク成分電流に相当するものである。
すなわち、増力側電流Ipush_tb1(図6上側の□)に増力側学習分差分電流Idszを加えて、新たな増力側電流Ipush(図6上側の○)を得、この新たな増力側電流Ipushと増力側の推力ゼロでの電流値▽(図6上側)を接続して(所謂線形補完を行うことによって)実線で示される増力側の新たなモータ位置‐電流テーブル(図6上側)を得る。この新たなモータ位置‐電流テーブル((図6上側の実線)を学習前の増力側のモータ位置‐電流テーブル(図6上側の点線)に代えるように更新処理し、この新たなモータ位置‐電流テーブルを、制動制御のための指令値(電流値)算出に用いるようにする。
減力側の推力ゼロでの電流値▽(原点、パッド接触位置相当)は、実使用時において、クリアランスを詰めていない状態で得られる電流値であり、無負荷領域での摩擦トルクに相当する。
そして、ステップS4で現学習分電流Idnから前回学習分電流Idbを減算して得られる学習分差分電流Idsは、前回計測から現在計測までの摩擦抵抗の変化、ひいては経年変化に相当するものになっている。そして、この学習分差分電流Idsひいてはキャリパ2の経年変化を考慮してモータ位置‐電流テーブルを更新する。このため、当該更新されたモータ位置‐電流テーブルを制動制御のための指令値(電流値)算出に用いることにより、キャリパ2の経年変化を反映して制動制御を行なえ、これに伴い制動制御の精度を向上することができる。
図5に示すように、まずドライバによる制動動作(通常ブレーキ制御)が例えば時刻t1まで行われ、時刻t1でドライバがPKB ON要求を行うと、キャリパ2はPKB ON動作を行い、指定された推力にてモータ9をラッチする(PKB 0N制御)。PKB ON制御が完了すると時刻t2にてモータ9のラッチが解除されない範囲ΔX内でモータ9を増力方向および減力方向に動作し、学習分電流Id(摩擦トルク成分電流)の検出・テーブル更新処理を行う(摩擦トルク学習動作。図7ステップS3、S4)。そして、時刻t3にて、ドライバがPKB OFF動作を要求することにより、モータ9のラッチは外され、ブレーキペダル19入力による推力指令相当位置までモータ9を動作する(PKB OFF制御)。上述した摩擦トルク学習動作を行う領域(モータ9のラッチが解除されない範囲ΔXに対応する領域)を前記摩擦トルク学習動作領域という。時刻t4にてドライバがブレーキペダル19を動作することによって、モータ9を動作させ、推力を発生する(通常ブレーキ制御)。
ステップS4で現学習分電流Idnから前回学習分電流Idbを減算して学習分差分電流Idsを得るが、この学習分差分電流Idsは、前回計測から現在計測までの摩擦抵抗の変化、ひいては経年変化を表すものになっている。この学習分差分電流Idsひいてはキャリパ2の経年変化を考慮してモータ位置‐電流テーブル3bを更新する。このため、当該更新されたモータ位置‐電流テーブル3bを用いることにより、キャリパ2の経年変化を反映して制動制御を行なえ、これに伴い制動制御の精度を向上することができる。
図8は、本発明の第2実施形態に係る電動ブレーキ装置の作用を説明するためのフローチャートである。図9は、図8のステップS3、S4で実行されるキャリパ機部摩擦トルク成分電流検出・テーブル更新処理におけるモータの動作タイムチャートである。図10は、同テーブル更新処理を説明するためのモータ位置−電流テーブルを示す図であり、(a)は、左輪を対象にした図、(b)は、右輪を対象にした図である。図11は、同テーブル更新処理を説明するためのPKB ON位置の決定方法を示す図である。
また、第2実施形態では、図7に代えて図8の処理を行う。図8の処理では、図7の処理に比して、ステップS5〜S7を含むことが異なっている。図8において、ステップS4の処理(位置‐電流テーブルの更新)が行われると、ステップS5に進む。ステップS5で、あらかじめ設定された箇所すべての電流成分を更新した〔以下、YES(Y)ともいう。〕か否〔以下、NO(N)ともいう。〕かの判定を行う。ステップS5でYESと判定すると、ステップS6に移動する。ステップS6において、これまでに行ってきた規定動作により更新した電流値を用いて、テーブルの更新を行い、ステップS1に移動する。
ステップS5でNOと判定すると、ステップS7へ進む。ステップS7において、車両の総推力に変化が無いよう、PKB推力を変化させて、ステップS3に進む。
図9において、あるPKB推力にて規定動作が終了した場合(時刻t3)、左右輪のキャリパ2のPKBラッチを解除し(PKB OFF制御、時刻t3〜t4)、そのときの左右PKB推力の平均値が変化しないよう、左右の推力を変化させ、再びモータ9をラッチする(PKB ON制御、時刻t4〜t5)。その後、時刻t5にて前記第1実施形態で示したのと同様の規定動作を行い、そのときの学習分電流Id(摩擦トルク成分電流)を求める。このような動作を、ドライバによるPKB OFF操作が行われるまで実施し、可能な限り多くの位置における学習分電流Id(摩擦トルク成分電流)を計測する。
この第2実施形態によれば、局所的な摩擦トルク変動に対応したキャリパ機部摩擦トルク電流成分の考慮が可能となり、推力発生領域における位置‐電流特性が単調増加とならない場合においても、推力推定を行うことが可能となり、これに伴い、制動制御の精度を向上することができる。
Claims (4)
- モータの回転を内部機器に伝達してブレーキパッドをディスクロータに押圧するキャリパと、
前記内部機器に連係して設けられ前記モータの回転を係止するパーキング機構と、
前記パーキング機構の作動時に、モータの回転を係止し得る範囲で前記モータを回転させ、このときの前記モータヘ供給する電流値から前記内部機器の摺動抵抗による無効電流値を算出して該無効電流値により前記モータに供給する電流値を補正する電流値補正手段と、
を有することを特徴とする電動ブレーキ装置。 - モータと、該モータの回転を減速する減速機構と、該減速機構の回転を直線運動に変換して押圧部材に伝達する運動変換機構とを配設してなるキャリパを備え、前記モータの回転に応じて前記押圧部材を推進し、その推力でブレーキパッドをディスクロータに押圧して推力を発生し、前記モータに供給する電流値に基づいて必要な押圧推力を得るための制御を行うとともに前記キャリパに前記モータの回転を係止するパーキング機構を備え、車両に用いられる電動ブレーキ装置において、
前記パーキング機構の作動時に、モータの回転を係止し得る範囲で前記モータを回転させ、このときの前記モータヘ供給する電流値から前記減速機構および前記運動変換機構の摺動抵抗による無効電流値を算出して前記モータに供給する電流値の補正に用いることを特徴とする電動ブレーキ装置。 - 請求項2に記載の電動ブレーキ装置において、前記車両に用いられる複数個の前記パーキング機構の作動時の推力を、その平均値が一定になるように変化させ、このときの前記モータヘ供給する電流値から前記減速機構および前記運動変換機構の摺動抵抗による無効電流値を算出して前記モータへ供給する電流値の補正に用いることを特徴とする電動ブレーキ装置。
- モータと、該モータの回転を減速する減速機構と、該減速機構の回転を直線運動に変換して押圧部材に伝達する運動変換機構と、前記モータの回転位置を検出する回転位置検出器とを配設してなるキャリパを備え、前記モータの回転に応じて前記押圧部材を推進し、その推力でブレーキパッドをディスクロータに押圧して推力を発生し、前記モータに供給する電流値と前記回転位置検出器により検出される前記モータの回転位置とに基づいて必要な押圧推力を得るための制御を行うとともに前記キャリパに前記モータの回転を係止するパーキング機構を備え、車両に用いられる電動ブレーキ装置において、
前記パーキング機構の作動時に、モータの回転を係止し得る範囲で前記モータを回転させ、このときの前記モータヘ供給する電流値から前記減速機構および前記運動変換機構の摺動抵抗による無効電流値を算出する無効電流値算出手段と、
該無効電流値算出手段の無効電流値に基づいて前記モータに供給する電流値を補正するモータ電流値補正手段と、
前記モータ電流値補正手段により補正された補正電流値から押圧推力を推定する推力推定手段と、
を有することを特徴とする電動ブレーキ装置。
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