以下、実施形態による電動ブレーキ装置を、4輪自動車に搭載した場合を例に挙げ、添付図面を参照して説明する。なお、図8に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。また、図1および図2中で二本の斜線が付された線は電気系の線を表している。
図1において、車両1には、車輪(前輪3L,3R、後輪5L,5R)に制動力を付与して車両1を制動するブレーキ装置2(車両用ブレーキ装置、ブレーキシステム)が搭載されている。ブレーキ装置2は、左側の前輪3Lおよび右側の前輪3Rに対応して設けられた左右の液圧ブレーキ装置4,4(フロント制動機構)と、左側の後輪5Lおよび右側の後輪5Rに対応して設けられた左右の電動ブレーキ装置21,21(リア制動機構)と、ブレーキペダル6(操作具)の操作(踏込み)に応じて液圧を発生するマスタシリンダ7と、運転者(ドライバ)のブレーキペダル6の操作量を計測する液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9と含んで構成されている。
液圧ブレーキ装置4は、例えば、液圧式ディスクブレーキにより構成されており、液圧(ブレーキ液圧)の供給によって車輪(前輪3L,3R)に制動力を付与する。電動ブレーキ装置21は、例えば、電動式ディスクブレーキにより構成されており、電動モータ22B(図2参照)の駆動によって車輪(後輪5L,5R)に制動力を付与する。液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9は、メインECU10に接続されている。
マスタシリンダ7と液圧ブレーキ装置4,4との間には、液圧供給装置11(以下、ESC11という)が設けられている。ESC11は、例えば、複数の制御弁と、ブレーキ液圧を加圧する液圧ポンプと、該液圧ポンプを駆動する電動モータと、余剰のブレーキ液を一時的に貯留する液圧制御用リザーバ(いずれも図示せず)とを含んで構成されている。ESC11の各制御弁および電動モータは、フロント液圧装置用ECU12に接続されている。フロント液圧装置用ECU12は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。フロント液圧装置用ECU12は、メインECU10からの指令に基づいて、ESC11の各制御弁の開閉および電動モータの駆動を制御する。
メインECU10は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。メインECU10は、液圧センサ8およびペダルストロークセンサ9からの信号の入力を受けて、予め定められた制御プログラムにより各輪(4輪)に対しての目標制動力の演算を行う。メインECU10は、算出した制動力に基づいて、フロント2輪それぞれに対しての制動指令をフロント液圧装置用ECU12(即ち、ESCECU)へ車両データバスとしてのCAN13(Controller area network)を介して送信する。メインECU10は、算出した制動力に基づいて、リア2輪それぞれに対しての制動指令(目標推力)をリア電動ブレーキ用ECU24,24へCAN13を介して送信する。
前輪3L,3Rおよび後輪5L,5Rのそれぞれの近傍には、これらの車輪3L,3R,5L,5Rの速度(車輪速度)を検出する車輪速度センサ14,14が設けられている。車輪速度センサ14,14は、メインECU10に接続されている。メインECU10は、各車輪速度センサ14,14からの信号に基づいて各車輪3L,3R,5L,5Rの車輪速度を取得することができる。
また、運転席の近傍には、パーキングブレーキスイッチ15が設けられている。パーキングブレーキスイッチ15は、メインECU10に接続されている。パーキングブレーキスイッチ15は、運転者の操作指示に応じたパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)の作動要求(保持要求となるアプライ要求、解除要求となるリリース要求)に対応する信号(作動要求信号)をメインECU10に伝達する。メインECU10は、パーキングブレーキスイッチ15の操作(作動要求信号)に基づいて、リア2輪それぞれに対してのパーキングブレーキ指令をリア電動ブレーキ用ECU24,24へ送信する。
電動ブレーキ装置21は、ブレーキ機構22と、パーキング機構23と、メインECU10と、リア電動ブレーキ用ECU24とを備えている。この場合、電動ブレーキ装置21は、位置制御および推力制御を実施するために、モータ回転位置を検出する位置検出手段としての回転角センサ25と、推力(ピストン推力)を検出する推力検出手段としての推力センサ26と、モータ電流を検出する電流検出手段としての電流センサ27(いずれも図2参照)とを備えている。
ブレーキ機構22は、車両1の左右の車輪、即ち、左後輪5L側と右後輪5R側とのそれぞれに設けられている。ブレーキ機構22は、電動ブレーキ機構として構成されている。ブレーキ機構22は、例えば、図2に示すように、シリンダ(ホイルシリンダ)としてのキャリパ22Aと、電動機(電動アクチュエータ)としての電動モータ22Bと、減速機構22Cと、回転直動変換機構22Dと、押圧部材としてのピストン22Eと、制動部材(パッド)としてのブレーキパッド22Fと、図示しないリターンスプリング(戻しばね)とを備えている。電動モータ22Bは、電力の供給により駆動(回転)し、ピストン22Eを推進する。電動モータ22Bは、メインECU10からの制動指令(目標推力)に基づいてリア電動ブレーキ用ECU24により制御される。減速機構22Cは、電動モータ22Bの回転を減速して回転直動変換機構22Dに伝達する。
回転直動変換機構22Dは、減速機構22Cを介して伝達される電動モータ22Bの回転をピストン22Eの軸方向の変位(直動変位)に変換する。ピストン22Eは、電動モータ22Bの駆動により推進され、ブレーキパッド22Fを移動させる。ブレーキパッド22Fは、ピストン22Eにより被制動部材(ディスク)としてのディスクロータDに押圧される。ディスクロータDは、車輪(後輪5L,5R)と共に回転する。リターンスプリングは、制動付与時に、回転直動変換機構22Dの回転部材に対して制動解除方向の回転力を付与する。ブレーキ機構22は、電動モータ22Bの駆動によりディスクロータDにブレーキパッド22Fを押圧すべくピストン22Eが推進される。即ち、ブレーキ機構22は、ブレーキパッド22Fを移動させるピストン22Eに、電動モータ22Bの駆動により発生する推力を伝達する。
パーキング機構23は、各ブレーキ機構22,22、即ち、左側(左後輪5L側)のブレーキ機構22と右側(右後輪5R側)のブレーキ機構22とのそれぞれに設けられている。パーキング機構23は、ブレーキ機構22のピストン22Eの推進状態を保持する。即ち、パーキング機構23は、制動力の保持と解除を行う。パーキング機構23は、例えば、図3に示すように、爪車(ラチェットギヤ23B)に係合爪(レバー部材23C)を係合させることにより回転を阻止(ロック)するラチェット機構(ロック機構)により構成されている。即ち、パーキング機構23は、ソレノイド23Aと、爪車となるラチェットギヤ23Bと、係合爪となるレバー部材23Cと、戻しばねとなる圧縮ばね23Dとを含んで構成されている。ソレノイド23Aは、電力の供給により駆動する(プランジャ23A1が変位する)。ソレノイド23Aは、メインECU10およびリア電動ブレーキ用ECU24により制御される。
ラチェットギヤ23Bは、ブレーキ機構22の電動モータ22Bの回転軸22B1に一体的に固定されている。ラチェットギヤ23Bの外周側には、レバー部材23Cの爪部23C1と係合する爪23B1が周方向に亙って等間隔に複数設けられている。レバー部材23Cは、一端側がラチェットギヤ23Bの爪23B1に係合する爪部23C1となり、他端側がソレノイド23Aのプランジャ23A1に連結される連結部23C2となっている。レバー部材23Cは、ソレノイド23Aによりラチェットギヤ23Bの爪23B1に対して係合または離間するように往復運動する。圧縮ばね23Dは、レバー部材23Cの爪部23C1をラチェットギヤ23Bの爪23B1から離間する方向に弾性力を付与する。
リア電動ブレーキ用ECU24は、各ブレーキ機構22,22、即ち、左側(左後輪5L側)のブレーキ機構22と右側(右後輪5R側)のブレーキ機構22とのそれぞれに対応して設けられている。リア電動ブレーキ用ECU24は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいてブレーキ機構22(電動モータ22B)とパーキング機構23(ソレノイド23A)を制御する。即ち、リア電動ブレーキ用ECU24は、電動モータ22Bの駆動を制動指令(目標推力)に基づいて制御する制御装置(電動ブレーキ制御装置)を構成している。これと共に、リア電動ブレーキ用ECU24は、パーキング機構23(ソレノイド23A)の駆動を作動指令に基づいて制御する制御装置(電動パーキング制御装置)を構成している。リア電動ブレーキ用ECU24には、メインECU10から制動指令、作動指令が入力される。
回転角センサ25は、電動モータ22Bの回転軸22B1の回転角度(モータ回転角)を検出する。回転角センサ25は、各ブレーキ機構22の電動モータ22Bにそれぞれ対応して設けられており、電動モータ22Bの回転位置(モータ回転位置)を検出する位置検出手段を構成している。推力センサ26は、ピストン22Eからブレーキパッド22Fへの推力(押圧力)に対する反力を検出する。推力センサ26は、各ブレーキ機構22それぞれに設けられており、ピストン22Eに作用する推力(ピストン推力)を検出する推力検出手段を構成している。電流センサ27は、電動モータ22Bに供給される電流(モータ電流)を検出する。電流センサ27は、各ブレーキ機構22の電動モータ22Bにそれぞれ対応して設けられており、電動モータ22Bのモータ電流を検出する電流検出手段を構成している。回転角センサ25、推力センサ26、および、電流センサ27は、リア電動ブレーキ用ECU24に接続されている。
リア電動ブレーキ用ECU24(および、このリア電動ブレーキ用ECU24とCAN13を介して接続されたメインECU10)は、回転角センサ25からの信号に基づいて電動モータ22Bの回転角度を取得することができる。リア電動ブレーキ用ECU24(およびメインECU10)は、推力センサ26からの信号に基づいてピストン22Eに作用する推力を取得することができる。リア電動ブレーキ用ECU24(およびメインECU10)は、電流センサ27からの信号に基づいて電動モータ22Bに供給されるモータ電流を取得することができる。
次に、電動ブレーキ装置21による走行中の制動付与および制動解除の動作について説明する。なお、以下の説明では、運転者がブレーキペダル6を操作したときの動作を例に挙げて説明する。しかし、自動ブレーキの場合についても、例えば、自動ブレーキの指令が自動ブレーキ用ECU(図示せず)またはメインECU10からリア電動ブレーキ用ECU24に出力される点で相違する以外、ほぼ同様である。
例えば、車両1の走行中に運転者がブレーキペダル6を踏込み操作すると、メインECU10は、ペダルストロークセンサ9から入力される検出信号に基づいて、ブレーキペダル6の踏込み操作に応じた指令(例えば、制動付与指令に対応する目標推力)をリア電動ブレーキ用ECU24に出力する。リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいて、電動モータ22Bを正方向、即ち、制動付与方向(アプライ方向)に駆動(回転)する。電動モータ22Bの回転は、減速機構22Cを介して回転直動変換機構22Dに伝達され、ピストン22Eがブレーキパッド22Fに向けて前進する。
これにより、ブレーキパッド22F,22FがディスクロータDに押し付けられ、制動力が付与される。このとき、ペダルストロークセンサ9、回転角センサ25、推力センサ26等からの検出信号により、電動モータ22Bの駆動が制御されることにより、制動状態が確立される。このような制動中、回転直動変換機構22Dの回転部材、延いては、電動モータ22Bの回転軸22B1には、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングにより制動解除方向の力が付与される。
一方、メインECU10は、ブレーキペダル6が踏込み解除側に操作されると、この操作に応じた指令(例えば、制動解除指令に対応する目標推力)をリア電動ブレーキ用ECU24に出力する。リア電動ブレーキ用ECU24は、メインECU10からの指令に基づいて、電動モータ22Bを逆方向、即ち、制動解除方向(リリース方向)に駆動(回転)する。電動モータ22Bの回転は、減速機構22Cを介して回転直動変換機構22Dに伝達され、ピストン22Eがブレーキパッド22Fから離れる方向に後退する。そして、ブレーキペダル6の踏込みが完全に解除されると、ブレーキパッド22F,22FがディスクロータDから離間し、制動力が解除される。このような制動が解除された非制動状態では、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングは初期状態に戻る。
次に、パーキングブレーキによる制動付与(アプライ)および制動解除(リリース)の動作について説明する。なお、以下の説明では、運転者がパーキングブレーキスイッチ15を操作したときの動作を例に挙げて説明するが、自動パーキングブレーキ(オートアプライ、オートリリース)の場合についても、例えば、メインECU10の自動パーキングブレーキの判定に基づいてその指令(オートアプライ指令、オートリリース指令)が出力される点で相違する以外、ほぼ同様である。
例えば、運転者によりパーキングブレーキスイッチ15がアプライ側に操作されると、メインECU10は、パーキングブレーキを作動(アプライ)する。この場合、メインECU10は、先ず、リア電動ブレーキ用ECU24を介してブレーキ機構22の電動モータ22Bを推力発生側(アプライ側:図3の時計方向)に回転させ、ブレーキパッド22F,22FをディスクロータDに所望の力(例えば、車両1の停止を維持できる力)で押圧する。この状態で、メインECU10は、リア電動ブレーキ用ECU24を介してパーキング機構23のソレノイド23Aを作動させる。即ち、ソレノイド23Aのプランジャ23A1を引き込む(図3の上側に向けて変位させる)ことにより、レバー部材23Cの爪部23C1をラチェットギヤ23Bの爪23B1に押付ける。このとき、図3の(A)に示すように、レバー部材23Cの爪部23C1がラチェットギヤ23Bの爪23B1の頂部に当接(干渉)することにより、これら爪部23C1と爪23B1とが係合されない場合もある。
次に、メインECU10は、リア電動ブレーキ用ECU24を介して電動モータ22Bを減力側(リリース側:図3の反時計方向)に回転させる。これにより、爪部23C1と爪23B1とが係合されない場合にも、図3の(B)に示すように、爪部23C1と爪23B1とを確実に係合させることができる。この状態で、電動モータ22Bへの通電を停止すると共に、例えば推力センサ26により所定の推力(例えば、車両の停止を維持できる推力)に達しているか否かを確認してから、ソレノイド23Aへの通電を停止する。このとき、ラチェットギヤ23B(即ち、電動モータ22Bの回転軸22B1)には、ブレーキ機構22に設けられた図示しないリターンスプリングの弾性力に基づいて減力側(リリース側)への回転力(図3の反時計方向の力)が付与される。このため、ソレノイド23Aへの通電を停止しても、図3の(C)に示すように、爪部23C1と爪23B1との係合状態が保持される。これにより、電動モータ22Bおよびソレノイド23Aへの通電を停止した状態で制動状態を保持することができる。
一方、パーキングブレーキスイッチ15がリリース側に操作されると、メインECU10は、パーキングブレーキの作動を解除(リリース)する。この場合、ソレノイド23Aには通電せずに、電動モータ22Bを推力発生側(アプライ側)に僅かに回転させる。これにより、レバー部材23Cの爪部23C1とラチェットギヤ23Bの爪23B1との係合が緩み、圧縮ばね23Dのばね力によってレバー部材23Cが爪部23C1と爪23B1との係合を解除する方向(時計方向)へ回動する。そして、推力センサ26により推力が変化したか否かを確認してから、電動モータ22Bを減力側(リリース側)へ回転させて制動を解除する。
次に、電動ブレーキ装置21による推力制御および位置制御について説明する。
メインECU10は、各種センサ(例えば、ペダルストロークセンサ9)からの検出データ、自動ブレーキ指令等に基づいて、電動ブレーキ装置21で発生すべき制動力、即ち、ピストン22Eに発生させる目標推力を求める。メインECU10は、制動指令となる目標推力を、リア電動ブレーキ用ECU24に出力する。リア電動ブレーキ用ECU24は、目標推力をピストン22Eで発生させるように電動モータ22Bに対し、推力センサ26で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御、および、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置をフィードバックとする位置制御を行う。
図4は、リア電動ブレーキ用ECU24の制御ブロック図である。図4に示すように、リア電動ブレーキ用ECU24は、推力・推定推力フィードバック制御部24Aと、モータ制御部24Bと、推力推定マップ部24Cと、推定推力マップ補正部24Dとを備えている。推力・推定推力フィードバック制御部24Aは、入力側がメインECU10、推力センサ26、および、推力推定マップ部24Cに接続されている。推力・推定推力フィードバック制御部24Aの出力側は、モータ制御部24Bに接続されている。推力・推定推力フィードバック制御部24Aには、メインECU10から制動指令として目標推力が入力される。また、推力・推定推力フィードバック制御部24Aには、推力センサ26で検出された推力(ピストン推力)が入力される。また、推力・推定推力フィードバック制御部24Aには、推力推定マップ部24Cから推定推力(推定ピストン推力)が入力される。
推力・推定推力フィードバック制御部24Aは、例えば、推力センサ26により検出される推力の範囲内(低推力)のときは、「推力センサ26で検出された推力(測定推力)」と「目標推力」とからその偏差を求めると共に、その偏差を小さくするようにモータ制御部24Bに制御量を出力する。また、推力・推定推力フィードバック制御部24Aは、推力センサ26により検出される推力の範囲外(高推力)のときは、「回転角センサ25で検出されたモータ回転位置に基づいて推力推定マップ部24Cで推定された推力(推定推力)」と「目標推力」とからその偏差を求めると共に、その偏差を小さくするようにモータ制御部24Bに制御量を出力する。
モータ制御部24Bは、入力側が推力・推定推力フィードバック制御部24Aに接続され、出力側が電動モータ22Bに接続されている。モータ制御部24Bには、推力・推定推力フィードバック制御部24Aから制御量が入力される。モータ制御部24Bは、推力・推定推力フィードバック制御部24Aから入力された制御量に対応する電流を電動モータ22Bに供給する。これにより、電動モータ22Bが駆動され、ピストン22Eで目標推力が発生することにより、この目標推力に応じた制動力が付与される。
推力推定マップ部24Cは、入力側が回転角センサ25および推定推力マップ補正部24Dに接続されている。推力推定マップ部24Cの出力側は、推力・推定推力フィードバック制御部24Aに接続されている。推力推定マップ部24Cには、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置が入力される。推力推定マップ部24Cは、後述する図6に示すマップ、即ち、モータ回転位置と推力との関係を備えている。
推力推定マップ部24Cは、モータ回転位置と推力との関係(図6に示すマップ)に基づいて、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置から推力を推定する。推力推定マップ部24Cは、推定した推力を推力・推定推力フィードバック制御部24Aに出力する。また、推力推定マップ部24Cには、推定推力マップ補正部24Dから補正マップが入力される。推力推定マップ部24Cは、補正マップにより補正されたモータ回転位置と推力との関係に基づいて、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置から推力を推定することができる。
推定推力マップ補正部24Dは、入力側が推力センサ26、回転角センサ25、および、電流センサ27に接続されている。推定推力マップ補正部24Dの出力側は、推力推定マップ部24Cに接続されている。推定推力マップ補正部24Dには、推力センサ26で検出された推力、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置、電流センサ27で検出されたモータ電流が入力される。
推定推力マップ補正部24Dは、推力推定マップ部24Cで用いられるモータ回転位置と推力との関係(マップ)を、例えば経年変化等に拘わらず適正に維持できるように補正を行う。例えば、推定推力マップ補正部24Dは、推力センサ26の検出範囲内(図5および図6参照)では、モータ回転位置に対する推力センサ26で検出した推力の特性を用いて推力推定マップ部24Cのマップを補正する。即ち、推定推力マップ補正部24Dは、推力センサ26の検出範囲内では、回転角センサ25で検出されたモータ回転位置と推力センサ26で検出されたピストン推力との関係からマップを補正する。
一方、推定推力マップ補正部24Dは、推力センサ26の検出範囲外(図6参照)では、後述するように、モータ回転位置を所定値に保持したときのそのモータ回転位置とモータ電流値とから推力を推定し、その推定された推力とモータ回転位置との関係からマップを補正する。この場合、推定推力マップ補正部24Dは、補正したマップ(補正マップ)を推力推定マップ部24Cに出力する。これにより、推定推力マップ補正部24Dは、補正マップを用いて推力の推定を行うことができる。
ところで、補正を精度よく行うために、例えば、規定された動作で推力を変化させ、この変化させているときに検出される検出値に基づいて補正を行うことが考えられる。しかし、この検出を行うために、例えば、ブレーキ要求がないときにブレーキ力を発生させると、急な加速の要求があったときに、ブレーキ力を減力する時間分、車両の応答が遅れる可能性がある。また、機械摩擦等の外乱により補正の精度が悪くなる可能性もある。そこで、実施形態では、パーキングブレーキの解除中にモータ回転位置を一定に保持したときの電動モータ22Bの電流値に基づいて推力推定の補正を行うことにより、通常のブレーキ操作の範囲内で精度よく補正を行うことができるようにしている。
ここで、モータ回転位置に対する推力のマップの補正方法の考え方について、図5および図6を参照しつつ説明する。図5は、推力と推力センサ26の検出値との関係の一例を示している。図6は、モータ回転位置と推力との関係の一例を示している。これら図5および図6に示すように、推力センサ26の検出範囲内の領域については、回転角センサ25の検出位置に対する推力センサ26の検出推力によって、図6のマップを補正することが可能である。一般に、ブレーキパッド22Fの剛性によって、比較的推力の低い領域では、マップの傾きは小さくなり、比較的推力の高い領域ではマップの傾きは大きくなり、ほぼ直線状になる。このため、推力の高い領域では、推力の推定が比較的容易である。
しかし、比較的推力の低い領域で得られたマップから外挿によって比較的推力の高い領域のマップを推定した場合、高推力になるほど誤差が拡大し、推定精度が低下するおそれがある。即ち、比較的推力の低い領域で得られたモータ回転位置と推力との関係(例えば図6の点A)から、この関係(点A)よりも高い推力の領域のモータ回転位置と推力との関係(特性)を推定(補間)した場合、図6に一点鎖線52または二点鎖線53で示すように、実際の関係(図6の実線51)に対するずれ(誤差)が大きくなる可能性がある。
このため、極力高い推力において、補正可能な点を取得し、内挿によって推定することが望ましい。即ち、極力高い推力で得られたモータ回転位置と推力との関係(例えば図6の点B)から、この関係(点B)よりも低い推力の領域のモータ回転位置と推力との関係を推定(補間)することが望ましい。比較的推力の高い領域では、モータ回転位置と推力との関係(特性)は直線的に振る舞うため、十分高い推力において補正することができれば、補正可能な点が一点のみであっても、十分な精度を確保することができる。
これに対して、通常ブレーキの範囲(運転中の推力の範囲)では、十分高い推力を発生する機会は少なく、高い推力の補正可能な点を得にくい。このため、例えば、車両速度が十分低いときに比較的高い推力まで電動ブレーキ装置21を動作させ、補正を行うことが考えられる。しかし、この場合は、ブレーキの要求がないときに、ブレーキ力を発生させることになる。このため、例えば、急な加速要求があったときに、この加速の前にブレーキ力を減少させなければならず、その時間分だけ車両の応答が遅れる可能性がある。
これに対して、パーキングブレーキの動作時は、通常ブレーキの範囲よりも十分大きな推力を発生させるため、補正のタイミングとして理想的である。しかも、パーキングブレーキの動作は、車両の操作を妨げるおそれが少ない。また、パーキングブレーキの操作は、車両の走行開始、終了時に通常行われる動作であるため、補正の頻度を高くし、マップの精度を高く保つことができる。しかし、パーキングブレーキの動作は短時間であるため、例えば、推力を変化させているときの検出値に基づいて補正を精度よく行うことは困難と考えられる。そこで、実施形態では、パーキングブレーキ中に精度よく推力を推定する手段を提供する。
即ち、図7は、推力の増大時(増力時)および減少時(減力時)のモータ電流と推力センサ検出値との関係の一例を示している。図7に示すように、電動モータ22Bが回転しているときのモータ電流に対する推力の特性は、電動モータ22Bの電気的特性以外に、ブレーキ機構22の機構部の摩擦等による伝達効率のばらつきによって変化する。一方、モータ回転位置に基づく位置制御によって電動モータ22Bのモータ回転位置を保持しているときは、モータ電流に対する推力の関係は、図7に破線54に示される効率100%の直線上に概ね収束する。
このため、効率100%の時には、電動モータ22Bの電気的特性に基づく比例関係を用いて、モータ電流からモータトルクを推定し、推力を算出することができる。そして、効率100%の時の電動モータ22Bの電気的特性に基づく比例関係は、設計仕様で決まり、個体差もないため、予め求めておくことができる。従って、推力センサ26の検出範囲外において、位置制御でモータ回転位置を保持する機会を設けることで、効率の影響を考慮することなく、モータ電流から推力を推定することができる。
そこで、実施形態では、モータ回転位置を所定位置(一定位置)に保持するときに、マップの補正を行う。このために、リア電動ブレーキ用ECU24は、補正手段としての推定推力マップ補正部24Dを備えている。推定推力マップ補正部24Dは、電動モータ22Bの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、モータ回転位置における電動モータ22Bに供給する電流値に対する推力の関係から、モータ回転位置に基づく推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を算出する。この場合、パーキング機構23を解除する場合に、電動モータ22Bの駆動によりモータ回転位置を一定に保持する。
即ち、実施形態では、パーキングブレーキを解除すべく電動モータ22Bを駆動している途中でモータ回転位置を一定に保持し、この保持しているときのモータ電流値に基づいて推力を推定し、マップを補正する。具体的に説明すると、図3に示すパーキングブレーキの解除時には、電動モータ22Bをモータ回転位置に基づいて制御しており、爪部23C1と爪23B1との係合を解除するために推力発生側に爪23B1の間隔以上分だけ動かすときに、所望の回転分だけ移動したことを確認するために、一定時間モータ回転位置を保持する。このとき、保持中のモータ電流値から推力を推定し、モータ回転位置に対する推力の補正を行う。なお、モータ回転位置の所定位置(一定に保持する位置)は、推力とモータ回転位置との関係(マップ)の補正を精度よく行うことができるように、推力の高いモータ回転位置とすることが好ましい。例えば、所定位置は、図6の点Bのような、電動モータ22Bの駆動によって発生させることができる最大推力の60〜100%(より好ましくは、75〜90%)の範囲内の推力に対応するモータ回転位置として設定することができる。
このような補正を行うために、リア電動ブレーキ用ECU24のメモリには、図8に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、パーキングブレーキの解除の制御処理に用いる処理プログラムが格納されている。そこで、メインECU10の演算回路で行われる制御処理について、図8を参照しつつ説明する。なお、図8の制御処理は、例えば、リア電動ブレーキ用ECU24に通電している間、所定の制御周期(例えば、10ms)で繰り返し実行される。
例えば、リア電動ブレーキ用ECU24への通電開始により、図8の制御処理が開始されると、S1では、パーキングブレーキ(駐車ブレーキ)の解除要求(リリース要求)があるか否かを判定する。即ち、S1では、パーキングブレーキスイッチ15の操作に基づく解除指令(解除要求)、または、オートリリース判定に基づく解除指令(解除要求)が、メインECU10からリア電動ブレーキ用ECU24に入力されたか否かを判定する。
S1で「NO」、即ち、解除要求がないと判定された場合は、S1の前に戻り、S1以降の処理を繰り返す。一方、S1で「YES」、即ち、解除要求ありと判定された場合は、S2に進む。S2では、電動モータ22Bを係合解除位置に位置制御する。即ち、S2では、パーキング機構23のラチェットギヤ23Bとレバー部材23Cとが係合した状態におけるモータ回転位置に対して、規定量分だけ推力発生側(アプライ側)に回転したモータ回転位置を指令として、電動モータ22Bの位置制御を行う。ここでの規定量とは、図3のラチェットギヤ23Bの爪23B1の間隔以上である。S2で、電動モータ22Bをモータ回転位置指令に基づいて推力発生側への駆動を開始したら、S3に進む。
S3では、係合解除位置に到達したか否かの判定を行う。即ち、S3では、モータ回転位置指令の近傍で、規定時間モータ回転位置が変化しないことを判定する。S3で「NO」、即ち、モータ回転位置が変化すると判定した場合は、S3の前に戻り、S3以降の処理を繰り返す。一方、S3で「YES」、即ち、規定時間モータ回転位置が変化しないと判定した場合は、S4に進む。
S4では、推力推定補正処理を行う。即ち、S4では、S3で「YES」と判定されることにより、モータ回転位置は保持された状態になるため、モータ電流値から推力を推定する。即ち、図7に示すマップ(予め求めた効率100%のモータ電流と推力との関係に対応する破線54)に基づいてモータ電流値から推力を推定する。これにより、図6のマップの補正点となる「モータ回転位置」と「推力」との関係を得ることができる。なお、図7に示すマップ、即ち、効率100%のモータ電流と推力との関係は、予め求めておき、リア電動ブレーキ用ECU24のメモリに記憶させておく。
このようなS4の処理により、リア電動ブレーキ用ECU24の推定推力マップ補正部24Dは、推力を補正する補正量を得ることができる。そして、推定推力マップ補正部24Dは、補正量に対応する補正マップを推力推定マップ部24Cに出力する。推力推定マップ部24Cは、補正マップを用いてモータ回転位置から精度よく推力を推定することができる。
S4で補正処理を行ったら、即ち、モータ電流から推力を推定することにより補正点を得たら、S5に進む。S5では、電動モータ22Bを減力側(リリース側)に回転させて制動を解除する。具体的には、そのときのブレーキペダル6の操作量に対応した目標推力(ブレーキペダル6が操作されていない場合は目標推力0kN)となるまで電動モータ22Bを減力側に駆動し、リターンする。即ち、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
図9は、パーキングブレーキを解除するときのモータ回転位置とモータ電流の時間変化を示している。図9中のt1時点で、パーキングブレーキの解除要求があると、図9中のt1時点からt2時点まで電動モータ22Bが推力発生側に駆動される。即ち、図8のS2の処理により、パーキング機構23が係合した状態におけるモータ回転位置に対して規定量分だけ推力発生側に移動したモータ回転位置を指令として、位置制御が行われる。そして、図9中のt2時点で、電動モータ22Bが指令位置まで駆動したか否かの確認が行われる。即ち、図8のS3の処理により、パーキング機構23の係合が解除される位置まで到達したことを確認するために、指令の近傍で規定時間モータ回転位置が変化しないことを判定する。図9中のt3時点で指令位置まで到達したと判定されたとき、モータ回転位置は保持された状態になるため、S4の補正処理により、電流値から推力を推定し、推定推力のマップ補正を行う。図9中のt3時点で補正処理を行ったら、電動モータ22Bを減力側に回転させて、制動を解除する。図9では、ブレーキペダル6が操作されていない状況(目標推力をゼロ(0)kN)として制御を実施しているが、ペダル操作等により目標推力が定められていればその値まで減力することになる。
以上のように、実施形態によれば、電動モータ22Bの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、電流値(モータ電流値)に対する推力の関係から推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を算出する。この場合に、図7に示すように、モータ回転位置を所定位置に保持しているときは、効率の影響を考慮することなく、電動モータ22Bの電気的特性に基づく比例関係を用いて電動モータ22Bの電流値から推力を推定することができる。このため、推力センサ26で検出しなくても(推力センサ26の検出範囲外でも)、推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を精度よく求めることができ、推力推定の補正の精度を向上することができる。この結果、推力の推定を精度よく行うことができる。
しかも、実施形態によれば、パーキング機構23を解除するときに、モータ回転位置を一定に保持することにより、推力推定の補正を行う。このため、通常のブレーキ操作の範囲の中で、精度よく補正を行うことができる。即ち、パーキング機構23を解除するときの高い推力で補正を行うことができるため、この補正の精度を向上することができる。しかも、補正の頻度を高くすることもできるため、この面からも、ピストン推力の推定を精度よく行うことができる。
なお、実施形態では、パーキング機構23を解除する場合に、モータ回転位置を所定位置に保持し、このときの推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を算出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、パーキング機構23を保持(アプライ)する場合に、所望の推力を発生させた状態でモータ回転位置を所定位置に保持し、このときの推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を算出する構成としてもよい。即ち、パーキングブレーキ操作時は、モータ回転位置を保持し、補正する機会を得やすいため、これを利用して補正量を算出することが好ましい。
また、パーキング機構23を解除する途中で、左,右の両輪のパーキングブレーキ力を同時に下げるべくモータ回転位置を保持したときに、補正量を算出してもよい。さらに、パーキング機構の動作と関係なく、即ち、パーキング機構を保持状態(アプライ状態)とした後に、または、パーキング機構を解除状態(リリース状態)とした後に、モータ回転位置を一定に保持し、このときの推力(ピストン推力)の推定値を補正する補正量を算出してもよい。
実施形態では、電動モータ22Bの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、モータ回転位置における電動モータ22Bに供給する電流値に対する推力の関係から、モータ回転位置に基づくピストン推力の推定値を補正する補正量を算出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、電動モータの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、モータ回転位置における電動モータに供給する電流値に対する推力の関係から、電流値に基づくピストン推力の推定値を補正する補正量を算出する構成としてもよい。即ち、電動モータの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、モータ回転位置における電動モータに供給する電流値に対する推力の関係から、モータ回転位置または電流値に基づくピストン推力の推定値を補正する補正量を算出する構成とすることができる。
実施形態では、「メインECU10」と「左後輪5L側のリア電動ブレーキ用ECU24」と「右後輪5R側のリア電動ブレーキ用ECU24」とをそれぞれ別体のECUとし、これら3つのECUを車両データバスであるCAN13で接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、メインECU10と左右のリア電動ブレーキ用ECU24,24との3つのECUを、電動ブレーキ装置21,21用の制御装置(電動ブレーキ制御装置)として構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、メインECUとリア電動ブレーキ用ECUとを一つのECUにより構成してもよい。即ち、左右の電動モータと左右のパーキング機構(ソレノイド)を制御する制御装置を、1つのECUにより構成してもよい。
実施形態では、ブレーキ機構22にリア電動ブレーキ用ECU24を取り付けることにより、これらブレーキ機構22とリア電動ブレーキ用ECU24とを1つのユニット(組立体)として構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ブレーキ機構とリア電動ブレーキ用ECUとを分離して配置してもよい。この場合、電動ブレーキ用ECU(リア電動ブレーキ用ECU)を左側(左後輪側)と右側(右後輪側)とでそれぞれ別々に設けてもよいし、左側(左後輪側)と右側(右後輪側)とで一つの(共通の)電動ブレーキ用ECU(リア電動ブレーキ用ECU)として構成してもよい。
実施形態では、前輪3L,3R側を液圧ブレーキ装置4,4とし、後輪5L,5R側を電動ブレーキ装置21,21とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、前輪側を電動ブレーキ装置とし、後輪側を液圧ブレーキ装置としてもよい。
実施形態では、後輪側の左右の電動ブレーキ装置21,21にパーキング機構を備えた構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、左前輪側と右前輪側とにそれぞれパーキング機構を備えた電動ブレーキ装置を配置してもよい。また、左右の前輪と左右の後輪との四輪のそれぞれにパーキング機構を備えた電動ブレーキ装置を配置してもよい。換言すれば、左右の前輪と左右の後輪との四輪のそれぞれに電動ブレーキ装置を配置すると共に、左右の前輪および/または左右の後輪の電動ブレーキ装置にパーキング機構を備えてもよい。要するに、車両の車輪のうち少なくとも左右一対の車輪の電動ブレーキ装置を、パーキング機構を備えた電動ブレーキ装置により構成することができる。
以上説明した実施形態に基づく電動ブレーキ装置として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
(1).第1の態様としては、ブレーキパッドを移動させるピストンに、電動モータの駆動により発生する推力を伝達するブレーキ機構と、前記電動モータの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、前記モータ回転位置における前記電動モータに供給する電流値に対する前記推力の関係から、前記モータ回転位置または前記電流値に基づくピストン推力の推定値を補正する補正量を算出する補正手段と、を有する。
この第1の態様によれば、電動モータの駆動によりモータ回転位置を所定位置に保持するときに、電流値に対する推力の関係からピストン推力の推定値を補正する補正量を算出する。この場合に、モータ回転位置を所定位置に保持しているときは、効率の影響を考慮することなく、電動モータの電気的特性に基づく比例関係を用いて電動モータの電流値から推力を推定することができる。このため、推力センサで検出しなくても(推力センサの検出範囲外でも)、ピストン推力の推定値を補正する補正量を精度よく求めることができ、推力推定の補正の精度を向上することができる。この結果、ピストン推力の推定を精度よく行うことができる。
(2).第2の態様としては、第1の態様において、制動力の保持と解除を行うパーキング機構を有し、前記パーキング機構を解除する場合に、電動モータの駆動により前記モータ回転位置を一定に保持する。
この第2の態様によれば、パーキング機構を解除するときに、モータ回転位置を一定に保持することにより、推力推定の補正を行う。このため、通常のブレーキ操作の範囲の中で、精度よく補正を行うことができる。即ち、パーキング機構を解除するときの高い推力で補正を行うことができるため、この補正の精度を向上することができる。しかも、補正の頻度を高くすることもできるため、この面からも、ピストン推力の推定を精度よく行うことができる。