以下、本発明のハイブリッド型建設機械を適用した実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
このハイブリッド型建設機械は、建設機械型のハイブリッド型建設機械であり、下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
「全体構成」
図2は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を実線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、電動発電機12には、インバータ18及び昇降圧コンバータ100を介して蓄電器としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。
また、DCバス110には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。
DCバス110には、DCバス110の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ30に入力される。
また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部113が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cを含み、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cには、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このような実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、ハイブリッド型建設機械の運転中は常時運転される。
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を操作者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
インバータ18は、電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。
このバッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100によって行われる。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。
インバータ20は、旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19へ充電する。図2には、旋回電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス110に接続するようにしてもよい。
昇降圧コンバータ100は、一側がDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、昇降圧コンバータ100がDCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してバッテリ19に充電する必要があるため、昇降圧コンバータ100がDCバス電圧値を降圧する必要がある。
このため、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12と旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
DCバス110は、2つのインバータ18及び20と昇降圧コンバータとの間に配設されており、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受が可能に構成されている。
DCバス電圧検出部111は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ30に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
バッテリ電流検出部113は、バッテリ19の電流値を検出するための電流検出部である。バッテリ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100に流れる電流を正の値として検出される。検出されるバッテリ電流値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている電動作業要素である。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置である。レバー26A、26B、及びペダル26Cは、キャビン10内の運転席の周囲に配設され、ハイブリッド型建設機械の操作者によって操作される。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者によるレバー26A、26B、及びペダル26Cの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
なお、レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーである。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
操作装置26のレバー26A、26B、及びペダル26Cが操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
圧力センサ29は、作業要素の一つであるブーム4の操作を検出する第1操作検出部、及び旋回機構2の操作を検出する第2操作検出部としてのセンサである。この圧力センサ29は、旋回機構2を旋回させるためにレバー26Aが操作されると、旋回操作の操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。また、同様に、ブーム4を上昇又は下降させるためにレバー26Bが操作されると、ブーム4を上昇又は下降させるための操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。
圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるためのレバー26Aの操作量と、ブーム4を上昇又は下降させるためのレバー26Bの操作量とを的確に把握することができる。
旋回機構2とブーム4の操作量を表す電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御とブーム4の駆動制御に用いられる。
なお、実施の形態1では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26のレバー26Aに入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
「コントローラ30」
コントローラ30は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の駆動制御を行う制御装置であり、速度指令変換部31、駆動制御装置32、及び旋回駆動制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、速度指令変換部31、駆動制御装置32、及び旋回駆動制御装置40は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより、実現される装置である。
なお、コントローラ30には、旋回機構2とブーム4の操作量を表す電気信号が入力されるため、コントローラ30は、旋回機構2とブーム4が同時期に操作される複合操作がなされることを検出することができる。
「速度指令変換部31」
速度指令変換部31は、圧力センサ29から入力される信号(レバー26Aの操作量を表す信号)を速度指令に変換して出力する駆動指令出力部である。これにより、レバー26Aの操作量は、旋回用電動機21を回転駆動させるための速度指令(rad/s)に変換される。この速度指令は、旋回駆動制御装置40に入力される。
この速度指令変換部31で用いる変換特性については、図3を用いて説明する。
なお、速度指令変換部31がレバー26Aの操作量を表す信号を速度指令に変換する際には、速度指令テーブルを参照するが、この処理内容については後述する。
「操作量/速度指令の変換特性」
図3は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の速度指令変換部31においてレバー26Aの操作量を速度指令(上部旋回体3を旋回させるために旋回用電動機21を回転させるための速度指令)に変換する変換特性を示す図である。この変換特性は、レバー26Aの操作量に応じて、不感帯領域、零速度指令領域(左旋回用及び右旋回用)、左方向旋回駆動領域、及び右方向旋回駆動領域の5つの領域に区分される。
ここで、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の制御系では、旋回用電動機21の回転軸21aが反時計回りに回転する回転方向を「正転」と称し、正転方向の駆動を表す制御量に正の符号を付す。一方、旋回用電動機21の回転軸21aが時計回りに回転する回転方向を「逆転」と称し、逆転方向の駆動を表す制御量に負の符号を付す。正転は、上部旋回体3の右方向への旋回に対応し、逆転は、上部旋回体の左方向への旋回に対応する。
「不感帯領域」
この変換特性に示すように、不感帯領域は、レバー26Aの中立点付近に設けられている。
旋回用電動機21が停止している状態(すなわち、上部旋回体3が旋回動作を行っておらず停止している状態)において、レバー26Aの操作量が不感帯領域内にある場合は、速度指令変換部31から速度指令は出力されず、旋回駆動制御装置40による旋回用電動機21の駆動制御は行われない。また、このとき、メカニカルブレーキ23は制動状態にされる。
従って、上部旋回体3が旋回動作を行っておらず停止している状態において、レバー26Aの操作量が不感帯領域内にある状態では、メカニカルブレーキ23によって旋回用電動機21及び上部旋回体3が機械的に停止されている。
一方、上部旋回体3が旋回している状態において、レバー26Aの操作量が不感帯領域内にされた場合(すなわち、操作者が旋回動作を停止させようとしてレバー26Aを中立付近に戻した場合)には、上部旋回体3の旋回が停止するまで(すなわち、旋回用電動機21が停止するまで)は、速度指令変換部31から零速度指令が出力される。
旋回停止後に所定時間(例えば、数秒)が経過すると、メカニカルブレーキ23が制動状態に切り替えられ、速度指令変換部31からは零速度指令は出力されなくなる。このような制御は、後述する旋回駆動制御装置40内の主制御部60によって統括される。
「零速度指令領域」
零速度指令領域は、レバー26Aの操作方向における不感帯領域の両外側に設けられている。この零速度指令領域は、主に旋回開始時において、不感帯領域における上部旋回体3の停止状態と、左右方向の旋回駆動領域における旋回状態とを切り替える際に操作性を良くするために設けられる緩衝領域である。
レバー26Aの操作量がこの零速度指令領域の範囲内にあるときは、速度指令変換部31から零速度指令が出力され、メカニカルブレーキ23は解除された状態となる。
なお、零速度指令とは、上部旋回体3の旋回速度を零にするために、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を零にするための速度指令であり、後述するPI(Proportional Integral)制御では、回転軸21Aの回転速度を零に近づけるための目標値として用いられる。
また、旋回開始時には、メカニカルブレーキ23の制動(オン)/解除(オフ)の切り替えは、不感帯領域と零速度指令領域の境界においてコントローラ30内の旋回駆動制御装置40によって行われる。
従って、旋回開始時には、レバー26Aの操作量が零速度指令領域内にある間は、メカニカルブレーキ23は解除され、零速度指令により、旋回用電動機21の回転軸21Aは停止状態に保持される。これにより、上部旋回体3は旋回駆動されずに停止状態に保持される。
「左方向旋回駆動領域」
左方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を左方向に旋回させるための速度指令が速度指令変換部31から出力される領域である。
実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aに左方向の旋回操作が入力されたときに、ブーム4の上昇又は下降が行われている場合(すなわち旋回用電動機21とブーム4の複合動作が行われている場合)には、ブーム4の上昇又は下降を行っていない場合とは異なる速度指令特性を用いて旋回用電動機21の旋回駆動を行う。
このため、実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、ブーム4の上昇操作及び下降操作を行っていない場合に用いる第1速度指令特性(HH)、ブーム4の上昇操作時に旋回用電動機21を駆動制御するための第2速度指令特性(H)、及び、ブーム4の下降操作時に旋回用電動機21を駆動制御するための第3速度指令特性(HHH)を有する。
ここで、第1速度指令特性(HH)は、上述のように、ブーム4の上昇操作及び下降操作を行っていない場合に用いる速度指令特性である。
また、第2速度指令特性(H)は、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が、第1速度指令特性(HH)における速度指令の絶対値での増大度合よりも小さくなるように設定されている速度指令特性である。
一方、第3速度指令特性(HHH)は、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が、第1速度指令特性(HH)における速度指令の絶対値での増大度合よりも多くなるように設定されている速度指令特性である。
なお、実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、第2速度指令特性(H)が選択された場合には、バケット6の移動速度は、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高くなるように設定されている。
また、第3速度指令特性(HHH)が選択された場合には、バケット6の移動速度は、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも高くなるように設定されている。
このため、図3では、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大割合が大きくなるに連れて、第2速度指令特性(H)、第1速度指令特性(HH)、第3速度指令特性(HHH)と表す。
このような第2速度指令特性(H)と第3速度指令特性(HHH)を用いることより、実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aへの操作入力が検出されたときに、ブーム4の上昇操作が検出されると、旋回用電動機21の旋回速度をブーム4の非操作時における旋回速度よりも低下させる。
また、レバー26Aへの操作入力が検出されたときに、ブーム4の下降操作が検出されると、旋回用電動機21の旋回速度をブーム4の非操作時における旋回速度よりも増大させる。
このように、ブーム4の非操作時とは速度指令特性を変更して旋回駆動を行うのは、旋回用電動機21とブーム4の複合操作時に、バケット6がダンプトラックの荷台等に接触することを未然に防ぐためである。
なお、これらの速度指令特性は、後述する速度指令テーブルに格納されており、旋回駆動制御装置40によって選択される。
この速度指令特性の選択については後述するが、いずれの速度指令特性が選択された場合においても、この左方向旋回駆動領域内では、レバー26Aの操作量に応じて、速度指令の絶対値が増大するように設定されている。この速度指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が左方向に旋回駆動される。
なお、上部旋回体3の旋回速度をある一定以下に制限するために、左方向旋回駆動領域における速度指令値は、絶対値が所定の値で制限される。
「右方向旋回駆動領域」
右方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を右方向に旋回させるための速度指令が速度指令変換部31から出力される領域である。
実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aに右方向の旋回操作が入力されたときに、ブーム4の上昇又は下降が行われている場合(すなわち旋回用電動機21とブーム4の複合動作が行われている場合)には、ブーム4の上昇又は下降を行っていない場合とは異なる速度指令特性を用いて旋回用電動機21の旋回駆動を行う。
このため、実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、ブーム4の上昇操作及び下降操作を行っていない場合に用いる第1速度指令特性(HH)、ブーム4の上昇操作時に旋回用電動機21を駆動制御するための第2速度指令特性(H)、及び、ブーム4の下降操作時に旋回用電動機21を駆動制御するための第3速度指令特性(HHH)を有する。
ここで、第1速度指令特性(HH)は、上述のように、ブーム4の上昇操作及び下降操作を行っていない場合に用いる速度指令特性である。
また、第2速度指令特性(H)は、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が、第1速度指令特性(HH)における速度指令の絶対値での増大度合よりも小さくなるように設定されている速度指令特性である。
一方、第3速度指令特性(HHH)は、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が、第1速度指令特性(HH)における速度指令の絶対値での増大度合よりも多くなるように設定されている速度指令特性である。
このため、図3では、レバー26Aの操作量に対する速度指令の絶対値での増大割合が大きくなるに連れて、第2速度指令特性(H)、第1速度指令特性(HH)、第3速度指令特性(HHH)と表す。
このような第2速度指令特性(H)と第3速度指令特性(HHH)を用いることより、実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aへの操作入力が検出されたときに、ブーム4の上昇操作が検出されると、旋回用電動機21の旋回速度をブーム4の非操作時における旋回速度よりも低下させる。
また、レバー26Aへの操作入力が検出されたときに、ブーム4の下降操作が検出されると、旋回用電動機21の旋回速度をブーム4の非操作時における旋回速度よりも増大させる。
このように、ブーム4の非操作時とは速度指令特性を変更して旋回駆動を行うのは、旋回用電動機21とブーム4の複合操作時に、バケット6がダンプトラックの荷台等に接触することを未然に防ぐためである。
なお、これらの速度指令特性は、後述する速度指令テーブルに格納されており、旋回駆動制御装置40によって選択される。
この速度指令特性の選択については後述するが、いずれの速度指令特性が選択された場合においても、この右方向旋回駆動領域内では、レバー26Aの操作量に応じて、速度指令の絶対値が増大するように設定されている。この速度指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が右方向に旋回駆動される。
なお、左方向旋回駆動領域と同様に、右方向旋回駆動領域における速度指令値は、絶対値が所定の値で制限される。
「駆動制御装置32」
駆動制御装置32は、電動発電機12の運転制御(力行運転又は回生運転の切り替え)、及び、バッテリ19の充放電制御を行うための制御装置である。この駆動制御装置32は、エンジン11の負荷の状態とバッテリ19の充電状態に応じて、電動発電機12の運転制御を行い、インバータ18を介してバッテリ19の充放電制御を行う。
「旋回駆動制御装置40」
図4は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の制御系の構成を示すブロック図である。
旋回駆動制御装置40は、インバータ20を介して旋回用電動機21の駆動制御を行うための制御装置であり、旋回用電動機21を駆動するための駆動指令を生成する駆動指令生成部50、及び主制御部60を含む。
駆動指令生成部50には、レバー26Aの操作量に応じて速度指令変換部31から出力される速度指令が入力され、この駆動指令生成部50は速度指令に基づき駆動指令を生成する。駆動指令生成部50から出力される駆動指令はインバータ20に入力され、このインバータ20によって旋回用電動機21がPWM制御信号により交流駆動される。
主制御部60は、圧力センサ29からレバー26Aの操作量を表す信号が入力され、旋回駆動制御装置40の制御処理に必要な周辺処理を行う制御部である。この主制御部60の具体的な処理内容については、関連箇所においてその都度説明する。
主制御部60は、速度指令テーブルを格納するための内部メモリ60Aを有する。
内部メモリ60Aには、第1速度指令テーブル、第2速度指令テーブル、第3速度指令テーブルが格納されている。
すなわち、内部メモリ60Aは、旋回用電動機21を駆動するための速度指令を操作装置26のレバー26Aに入力される操作量に対応付けた速度指令テーブルであって、操作量に対する速度指令値の異なる複数の駆動指令テーブルを格納するテーブル格納部である。
テーブルの選択は、ブーム4の操作状態(上昇操作、下降操作、又は操作なし)に応じて、主制御部60によって行われる。この選択処理については後述する。
主制御部60の選択処理によって選択された速度指令テーブルは、速度指令変換部31が速度指令を出力する際に参照される。
主制御部60によって第1速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第1速度指令テーブルを参照し、第1速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第1速度指令特性が選択されることになる。
主制御部60によって第2速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第2速度指令テーブルを参照し、第2速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第2速度指令特性が選択されることになる。
主制御部60によって第3速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第3速度指令テーブルを参照し、第3速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第3速度指令特性が選択されることになる。
このようにして、図3に示す左方向旋回駆動領域及び右方向旋回駆動領域における3種類の速度特性が実現される。
「駆動指令生成部50」
駆動指令生成部50は、減算器51、PI制御部52、トルク制限部53、トルク制限部54、減算器55、PI制御部56、電流変換部57、及び旋回動作検出部58を含む。この駆動指令生成部50の減算器51には、レバー26Aの操作量に応じた旋回駆動用の速度指令(rad/s)が入力される。
減算器51は、レバー26Aの操作量に応じた速度指令の値(以下、速度指令値)から、旋回動作検出部58によって検出される旋回用電動機21の回転速度(rad/s)を減算して偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部52において、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるためのPI制御に用いられる。
PI制御部52は、減算器51から入力される偏差に基づき、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるように(すなわち、この偏差を小さくするように)PI制御を行い、そのために必要なトルク電流指令を演算する。生成されたトルク電流指令は、トルク制限部53に入力される。
トルク制限部53は、レバー26Aの操作量に応じてトルク電流指令の値(以下、トルク電流指令値)を制限する処理を行う。この制限処理は、レバー26Aの操作量に応じてトルク電流指令値の許容値が緩やかに増大する制限特性に基づいて行われる。このようなトルク電流指令値の制限は、PI制御部52によって演算されるトルク電流指令値が急激に増大すると制御性が悪化するため、これを抑制するために行われる。
この制限特性は、レバー26Aの操作量の増大に伴ってトルク電流指令値の許容値(の絶対値)を緩やかに増大させる特性を有し、上部旋回体3の右方向及び左方向の双方向を制限するための特性を有するものである。制限特性を表すデータは、主制御部60の内部メモリに格納されており、主制御部60のCPUによって読み出され、トルク制限部53に入力される。
トルク制限部54は、トルク制限部53から入力されるトルク電流指令によって生じるトルクが旋回用電動機21の許容最大トルク値以下となるように、トルク制限部53から入力されるトルク電流指令値を制限する。このトルク電流指令値の制限は、トルク制限部53と同様に、上部旋回体3の右方向及び左方向の双方向の回転に対して行われる。
ここで、トルク制限部54においてトルク電流指令値を制限するためのトルク許容値には、通常用の値と非常用の値の2種類がある。通常用のトルク許容値は、旋回用電動機21の連続定格トルクを表すトルク電流指令値に対応し、非常用のトルク許容値は、旋回用電動機21の短時間定格トルクを表すトルク電流指令値に対応する。
通常用及び非常用のトルク許容値は、正転側と逆転側のそれぞれの値があり、通常用と非常用の切替は、主制御部60によって行われる。
トルク電流指令値を制限するための特性を表すデータ(トルク許容値のデータ)は、主制御部60の内部メモリに格納されており、主制御部60のCPUによって読み出され、トルク制限部54に入力される。
減算器55は、トルク制限部54から入力されるトルク電流指令値から、電流変換部57の出力値を減算して得る偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部56及び電流変換部57を含むフィードバックループにおいて、電流変換部57から出力される旋回用電動機21の駆動トルクを、トルク制限部54を介して入力されるトルク電流指令値(目標値)によって表されるトルクに近づけるためのPI制御に用いられる。
PI制御部56は、減算器55から入力される偏差に基づき、この偏差を小さくするようにPI制御を行い、インバータ20に送る最終的な駆動指令となる電圧指令を生成する。インバータ20は、PI制御部56から入力される電圧指令に基づき、旋回用電動機21をPWM駆動する。
電流変換部57は、旋回用電動機21のモータ電流を検出し、これをトルク電流指令に相当する値に変換し、減算器55に入力する。
旋回動作検出部58は、レゾルバ22によって検出される旋回用電動機21の回転位置の変化(すなわち上部旋回体3の旋回)を検出するとともに、回転位置の時間的な変化から旋回用電動機21の回転速度を微分演算によって導出する。導出された回転速度を表すデータは、減算器51及び主制御部60に入力される。
このような構成の駆動指令生成部50において、速度指令変換部31から入力される速度指令に基づき、旋回用電動機21を駆動するためのトルク電流指令が生成され、上部旋回体3が所望の位置まで旋回される。
図5は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械における速度指令の選択処理の手順を示す図である。この処理は、主制御部60によって実行される処理であり、例えば、5ミリ秒毎に繰り返し実行される処理である。
主制御部60は、ハイブリッド型建設機械の運転の開始に伴い、選択処理を開始する(スタート)。
主制御部60は、圧力センサ29から入力される信号に基づき、レバー26Aに入力される旋回操作の操作量が絶対値で20%に到達したか否かを判定する(ステップS1)。
主制御部60は、圧力センサ29から入力される信号に基づき、レバー26Bにブーム4を操作するための操作入力があったか否かを判定する(ステップS2)。ブーム4の非操作時と操作時では、選択する速度指令特性が異なるからである。
主制御部60は、ブーム4の操作があったと判定した場合には(ステップS2でYes)、ブーム4を操作するための操作入力が上昇用又は下降用のいずれの方向への操作であるかを判定する(ステップS3)。
主制御部60は、ステップS3において、ブーム4を下降させるための操作であったと判定した場合は、内部メモリ60Aから第3速度指令テーブルを選択する(ステップS4)。
主制御部60によって第3速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第3速度指令テーブルを参照し、第3速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第3速度指令特性が選択されることになる。
一方、主制御部60は、ステップS3において、ブーム4を上昇させるための操作であったと判定した場合は、内部メモリ60Aから第2速度指令テーブルを選択する(ステップS5)。
主制御部60によって第2速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第2速度指令テーブルを参照し、第2速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第2速度指令特性が選択されることになる。
また、主制御部60は、ステップS2において、ブーム4を操作するための操作入力がなかったと判定した場合は、内部メモリ60Aから第1速度指令テーブルを選択する(ステップS6)。
主制御部60によって第1速度指令テーブルが選択された場合には、速度指令変換部31は第1速度指令テーブルを参照し、第1速度指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられた速度指令を出力する。すなわち、速度指令特性としては、第1速度指令特性が選択されることになる。
ステップS4、S5、又はS6が終了すると、手順はリターンする。
図6は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械における旋回用電動機21とブーム4の複合操作時のバケット6の軌跡と移動速度を成分分解して示す図であり、(a)は、ハイブリッド型建設機械よりもダンプトラックが高い位置にある場合の軌跡、(b)は(a)の場合に旋回機構2の旋回動作とブーム4の上昇を開始する場合におけるバケット6の移動速度の成分、(c)は(a)の場合に旋回機構2の旋回動作とブーム4の下降を開始する場合におけるバケット6の移動速度の成分、(d)はハイブリッド型建設機械よりもダンプトラックが低い領域にある場合の軌跡、(e)は(d)の場合に旋回機構2の旋回動作とブーム4の下降を開始する場合におけるバケット6の移動速度の成分、(f)は(d)の場合に旋回機構2の旋回動作とブーム4の上昇を開始する場合におけるバケット6の移動速度の成分を示す。
図6(a)に示すように、バケット6よりもダンプトラックが高い位置にある場合には、ハイブリッド型建設機械は、地点Aで掘削作業を行ってバケット6に土砂を積載し、地点Aで旋回機構2の旋回動作とブーム4の上昇動作を開始する。地点Bは、ダンプトラックの荷台の上方でバケット6の排土操作を行い土砂をバケット6から排土する地点である。
ここで、地点Aと地点Bを直線的に結ぶ破線よりもダンプトラック寄りの領域をブーム6が通過すると、バケット6がダンプトラックに接触する可能性がある。
しかしながら、実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、地点Aでレバー26Aに旋回操作が入力され、かつ、レバー26Bにブーム4の上昇動作が入力されると、第2速度指令特性(H)が選択されることにより、ブーム4の動作を行わない場合(第1速度指令特性(HH)で旋回動作が行われる場合)よりも低い速度で旋回動作が開始される。
この状態におけるバケット6の移動速度は、図6(b)に示すように、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高くなる。
このため、バケット6は、実線で示すように、地点Aと地点Bを直線的に結ぶ破線よりも高い位置を通過して地点Aから地点Bに移動する。
これにより、ハイブリッド型建設機械の方がダンプトラックよりも低い位置にある場合において、ブームを上昇させながら旋回動作を行って土砂をダンプトラックに運ぶ場合に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
また、このような接触の防止を速度指令特性の選択によって実現することができるため、操作性を向上させることができる。
また、地点Bで土砂をダンプトラックに積載した後に、再びバケットを地点Aに戻す際には、地点Bでレバー26Aに旋回操作が入力され、かつ、レバー26Bにブーム4の下降動作が入力されると、第3速度指令特性(HHH)が選択されることにより、ブーム4の動作を行わない場合(第1速度指令特性(HH)で旋回動作が行われる場合)よりも高い速度で旋回動作が開始される。
この状態におけるバケット6の移動速度は、図6(c)に示すように、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも高くなる。
このため、バケット6は、実線で示すように、地点Aと地点Bを直線的に結ぶ破線よりも高い位置を通過して地点Bから地点Aに移動する。
これにより、ハイブリッド型建設機械の方がダンプトラックよりも低い位置にある場合において、ブーム4を下降させながら旋回動作を行ってバケット6をダンプトラックから作業地点(地点A)に戻す場合に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
また、このような接触の防止を速度指令特性の選択によって実現することができるため、操作性を向上させることができる。
一方、図6(d)に示すように、バケット6よりもダンプトラックが低い位置にある場合には、ハイブリッド型建設機械は、地点Cで掘削作業を行ってバケット6に土砂を積載し、地点Cで旋回機構2の旋回動作とブーム4の下降動作を開始する。地点Dは、ダンプトラックの荷台の上方でバケット6の排土操作を行い土砂をバケット6から排土する地点である。
ここで、地点Cと地点Dを直線的に結ぶ破線よりもダンプトラック寄りの領域をブーム6が通過すると、バケット6がダンプトラックに接触する可能性がある。
しかしながら、実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、地点Cでレバー26Aに旋回操作が入力され、かつ、レバー26Bにブーム4の下降動作が入力されると、第3速度指令特性(HHH)が選択されることにより、ブーム4の動作を行わない場合(第1速度指令特性(HH)で旋回動作が行われる場合)よりも高い速度で旋回動作が開始される。
この状態におけるバケット6の移動速度は、図6(e)に示すように、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも高くなる。
このため、バケット6は、実線で示すように、地点Cと地点Dを直線的に結ぶ破線よりも高い位置を通過して地点Cから地点Dに移動する。
これにより、ハイブリッド型建設機械よりもダンプトラックが低い位置にある場合において、ブームを下降させながら旋回動作を行って土砂をダンプトラックに運ぶ場合に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
また、このような接触の防止を速度指令特性の選択によって実現することができるため、操作性を向上させることができる。
また、地点Dで土砂をダンプトラックに積載した後に、再びバケットを地点Cに戻す際には、地点Dでレバー26Aに旋回操作が入力され、かつ、レバー26Bにブーム4の上昇動作が入力されると、第2速度指令特性(H)が選択されることにより、ブーム4の動作を行わない場合(第1速度指令特性(HH)で旋回動作が行われる場合)よりも低い速度で旋回動作が開始される。
この状態におけるバケット6の移動速度は、図6(f)に示すように、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高くなる。
このため、バケット6は、実線で示すように、地点Cと地点Dを直線的に結ぶ破線よりも高い位置を通過して地点Cから地点Dに移動する。
これにより、ハイブリッド型建設機械よりもダンプトラックが低い位置にある場合において、ブーム4を上昇させながら旋回動作を行ってバケット6をダンプトラックから作業地点(地点C)に戻す場合に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
また、このような接触の防止を速度指令特性の選択によって実現することができるため、操作性を向上させることができる。
なお、以上では、状況を極端にして説明を容易にするために、ハイブリッド型建設機械とダンプトラックの位置関係が上下方向で異なる場合について説明したが、ハイブリッド型建設機械とダンプトラックが同じ高さにある場合においても、旋回動作とブーム4の上昇動作又は下降動作との複合動作が行われた場合には、第2速度指令特性(H)又は第3速度指令特性(HHH)が選択されて旋回動作が行われる。
このため、上述の場合と同様に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
実施の形態1のハイブリッド型建設機械では、速度指令特性の選択によって旋回速度を調節して衝突を防止できるので、このような旋回速度の調整をレバー26Aとレバー26Bの操作量を調整することによって実現する場合に比べて、大幅な操作性の向上を図ることができる。
また、以上では、主制御部60の内部メモリ60Aがテーブル格納部としての機能を有する形態について説明したが、速度指令テーブルを格納するメモリは、主制御部60の外部メモリであってもよい。
また、以上では、トルク電流指令の演算にPI制御を用いる形態について説明したが、これに代えて、ロバスト制御、適応制御、比例制御、積分制御等を用いてもよい。
図7は、実施の形態1の変形例のハイブリッド型建設機械における速度指令特性を示す特性図である。この変形例は、第2速度指令特性(H)よりも操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が小さい2種類の速度指令特性を有する点が図3に示す速度指令特性と異なる。
図7に示すように、変形例では、中速速度指令特性(M)、及び低速速度指令特性(L)が付加されている。
中速速度指令特性(M)は、第2速度指令特性(H)よりも操作量に対する速度指令の絶対値での増大度合が小さく、低速速度指令特性(L)は絶対値での増大割合がさらに小さい。
中速速度指令特性(M)と低速速度指令特性(L)は、主制御部60の内部メモリ60Aに格納される中速速度指令テーブルと低速速度指令テーブルを主制御部60が選択し、速度指令変換部31が速度指令を出力する際に参照されることによって実現される。
このような中速速度指令特性(M)と低速速度指令特性(L)は、操作者が操作装置26に取り付けられた選択ボタンを押圧することによって選択される。中速速度指令特性(M)又は低速速度指令特性(L)が選択されている間は、速度指令特性は中速速度指令特性(M)又は低速速度指令特性(L)のうちの選択された方に固定される。
このような中速速度指令特性(M)と低速速度指令特性(L)を操作者が選択することによっても、ブーム4を上昇させる際に、旋回速度を遅くすることができるので、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、複合操作を検出した場合に速度指令特性を変更する代わりに、ブームシリンダ7の戻り側の油圧パイプ7Aに、切替弁200を有し、ブームシリンダ7への供給油量と戻り油量を制御する点が実施の形態2のハイブリッド型建設機械と異なる。
なお、図8には、実施の形態1(図2)では省略していたメインポンプ14の傾転角を制御するポンプ制御弁14Aを示す。このポンプ制御弁14Aは、コントローラ30によって電気的に駆動され、ポンプ14の傾転角の制御が行われる。
その他の構成は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成に準ずるため、同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
切替弁200は、上述のようにブームシリンダ7の油圧パイプ7A側に挿入されており、油圧パイプ7Aを通じてコントロールバルブ17に戻る油量を調節することのできる切替弁である。この切替弁200は、コントローラ30によって駆動制御が行われる。
コントローラ30によるポンプ制御弁14Aと切替弁200の駆動制御は、具体的には、次のように行われる。
ポンプ制御弁14Aは、旋回操作とブーム4の上昇操作とが同時に行われた場合(すなわち旋回とブーム4の上昇との複合操作が行われた場合)に、ポンプ14の傾転角を増大させる。これにより、ブーム4の上昇速度が増大するため、図6(b)及び(図6(f)に示す状態と同じように、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高い状態(図6(b))、及び、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高い状態(図6(f))を作り出すことができる。
一方、切替弁200は、旋回操作とブーム4の下降操作とが同時に行われた場合(すなわち旋回とブーム4の下降との複合操作が行われた場合)に、油圧パイプ7Aを通流する油量を減少させる。これにより、ブーム4の下降速度が低減されるため、図6(c)及び(図6(e)に示す状態と同じように、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも低い状態(図6(c))、及び、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも低い状態(図6(f))を作り出すことができる。
すなわち、実施の形態2のハイブリッド型建設機械では、旋回用電動機21を駆動制御するための速度指令特性を変更する代わりに、ポンプ制御弁14Aと切替弁200により、ブームシリンダ7への供給油量と戻り油量を調節することによって、図6を用いて説明した実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様の動作を可能にしている。
図9は、実施の形態2のハイブリッド型建設機械におけるポンプ制御弁14Aと切替弁200の制御処理の手順を示す図である。この処理は、コントローラ30によって実行される処理であり、例えば、5ミリ秒毎に繰り返し実行される処理である。
コントローラ30は、圧力センサ29から入力される信号に基づき、レバー26Bにブーム4を操作するための操作入力があったか否かを判定する(ステップS21)。ブーム4の非操作時と操作時では、ポンプ制御弁14Aと切替弁200の制御処理が異なるからである。
コントローラ30は、ブーム4の操作があったと判定した場合には(ステップS21でYes)、旋回動作中であるか否かを判定する(ステップS22)。旋回動作中であるか否かは、例えば、旋回動作検出部58の出力に基づいて判定すればよい。
コントローラ30は、旋回動作中であると判定した場合(ステップS22でYes)は、ブーム4を操作するための操作入力が上昇用又は下降用のいずれの方向への操作であるかを判定する(ステップS23)。
コントローラ30は、ステップS23において、ブーム4を下降させるための操作であったと判定した場合は、切替弁200を絞り位置に制御する(ステップS24)。これにより、し、ブームシリンダ7からコントロールバルブ17への戻り油量が低減される。ブームの下降速度を低くするためである。
一方、コントローラ30は、ステップS23において、ブーム4を上昇させるための操作であったと判定した場合は、ポンプ制御弁14Aを駆動制御し、メインポンプ14の傾転角を増大させる(ステップS25)。ブームの上昇速度を高くするためである。
また、コントローラ30は、ステップS22において、旋回動作中ではないと判定した場合は、ポンプ制御弁14Aと切替弁200の制御位置を通常位置に設定する(ステップS26)。旋回動作とブーム4の複合操作は行われていないため、通常の供給油量又は戻り油量でのブーム4の操作を可能とするためである。
ステップS24、S25、又はS26が終了すると、手順はリターンする。
以上、実施の形態2のハイブリッド型建設機械では、旋回用電動機21を駆動制御するための速度指令特性を変更する代わりに、ポンプ制御弁14Aと切替弁200により、ブームシリンダ7への供給油量と戻り油量を調節することによって、図6を用いて説明した実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様の動作が可能である。
このため、上述の場合と同様に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
実施の形態2のハイブリッド型建設機械では、ポンプ制御弁14Aと切替弁200の切替制御によってブーム4の上昇速度及び下降速度を調節して衝突を防止できるので、このような旋回速度の調整をレバー26Aとレバー26Bの操作量を調整することによって実現する場合に比べて、大幅な操作性の向上を図ることができる。
[実施の形態3]
図10は、実施の形態3のハイブリッド型建設機械の制御系の構成を示すブロック図である。
実施の形態3の旋回駆動制御装置340は、零速度指令による速度制御と、トルク電流指令によるトルク制御を行う点が実施の形態1の旋回駆動制御装置40と異なる。このため、実施の形態3の旋回駆動制御装置340は、トルク制御を行う際に解放するスイッチ部359を含む。
また、実施の形態3のハイブリッド型建設機械の制御系には、実施の形態1の速度指令変換部31の代わりに、駆動指令変換部331が含まれる。
その他の構成は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械に準ずるため、同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
駆動指令変換部331は、レバー26Aの操作量に応じて零速度指令とトルク電流指令を出力する。レバー26Aの操作量を駆動指令に変換する変換特性については、図11を用いて後述するが、実施の形態3のハイブリッド型建設機械においても、変換特性は、レバー26Aの操作量によって不感帯領域、零速度指令領域(左旋回用及び右旋回用)、左方向旋回駆動領域、及び右方向旋回駆動領域の5つの領域に区分される。
駆動指令変換部331は、レバー26Aの操作量が零速度指令領域にある場合は、零速度指令を出力する。また、旋回停止時に制動トルクが必要な場合は、不感帯領域においても零速度指令を出力する。ここまでは、実施の形態1の速度指令変換部31と同一である。
一方、左方向旋回駆動領域と右方向旋回駆動領域では、駆動指令変換部331は、トルク電流指令を出力する。このようにトルク電流指令が出力される場合には、主制御部60によってスイッチ部359が解放される。
スイッチ部359が解放された状態では、駆動指令変換部331から出力されるトルク電流指令は、PI制御部52、トルク制限部53、54、減算器55、及びPI制御部56を経てインバータ20に入力される。
インバータ20から出力されるトルク電流指令は、旋回用電動機21に入力されるとともに、電流変換部57に入力される。電流変換部57の出力は、減算器55に入力される。
このような実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、左方向旋回駆動領域と右方向旋回駆動領域においては、スイッチ部359が解放された状態で、減算器55、PI制御部56、インバータ20、及び電流変換部57を含むフィードバックループにより、トルク制限部54から減算器55に入力されるトルク電流指令値と、電流変換部57から減算器55に入力されるトルク電流指令値の偏差が最小となるように、PI制御が行われる。
以上のような構成により、零速度指令とトルク電流指令を使い分けて、レバー26Aの操作量に応じた旋回駆動が行われる。
図11は、実施の形態3のハイブリッド型建設機械の駆動指令変換部331においてレバー26Aの操作量をトルク電流指令(上部旋回体3を旋回させるために旋回用電動機21を回転させるためのトルク電流指令)に変換する変換特性を示す図である。この変換特性は、レバー26Aの操作量に応じて、不感帯領域、零速度指令領域(左旋回用及び右旋回用)、左方向旋回駆動領域、及び右方向旋回駆動領域の5つの領域に区分される。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械におけるレバー操作量の変換特性は、上述のように、左方向旋回駆動領域と右方向旋回駆動領域においては、トルク電流指令になっている。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械の主制御部60の内部メモリ60Aには、トルク指令テーブルとして、第1トルク指令テーブル、第2トルク指令テーブル、及び第3トルク指令テーブルの3つのトルク指令テーブルが格納されている。これらのトルク指令テーブルは、左方向旋回駆動領域と右方向旋回駆動領域において、駆動指令変換部331がトルク電流指令を出力する際に参照されるテーブルであり、第2トルク指令テーブル、第1トルク指令テーブル、及び第3トルク指令テーブルの順で、レバー26Aの操作量に対して絶対値で大きなトルク電流指令を出力するように設定されている。
すなわち、内部メモリ60Aは、旋回用電動機21を駆動するためのトルク電流指令を操作装置26のレバー26Aに入力される操作量に対応付けたトルク指令テーブルを複数有するテーブル格納部である。トルク指令テーブルの選択処理については後述する。以下、各領域について説明する。
「不感帯領域」
不感帯領域の特性は、実施の形態1と同一である。すなわち、旋回動作の開始前は、メカニカルブレーキ23が制動状態にされる。一方、制動時には、零速度指令が出力され、旋回停止後に所定時間(例えば、数秒)が経過すると、メカニカルブレーキ23が制動状態に切り替えられる。
「零速度指令領域(判定領域)」
零速度指令領域の特性は、実施の形態1と同一である。すなわち、レバー26Aの操作量がこの零速度指令領域の範囲内にあるときは、駆動指令変換部331から零速度指令が出力され、メカニカルブレーキ23は解除された状態となる。
また、実施の形態3では、この零速度指令領域は、操作量が絶対値で10%以上20%未満の範囲内に設定され、旋回開始時にトルク電流指令を決定するためのトルク指令テーブルを選択するための判定が行われる判定領域でもある。トルク電流指令は、操作量が絶対値で20%以上になった場合に、トルク指令テーブルに基づいて駆動指令変換部331から出力される駆動指令である。このトルク指令テーブルの選択処理については後述する。
「左方向旋回駆動領域」
左方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を左方向に旋回させるためのトルク電流指令が駆動指令変換部331から出力される領域である。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aの操作量が判定領域としての零速度指令領域を通過する際の経過時間により、高トルク指令特性、中トルク指令特性、又は低トルク指令特性のいずれかのトルク指令特性が選択される。
このトルク指令特性は、いずれのトルク指令特性が選択された場合においても、この左方向旋回駆動領域内では、レバー26Aの操作量に応じて、トルク電流指令の絶対値が増大するように設定されている。このトルク電流指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が左方向に旋回駆動される。
なお、上部旋回体3の旋回速度をある一定以下に制限するために、スイッチ359の切替によってオーバースピードを検出した場合、左方向旋回駆動領域におけるトルク電流指令値は、絶対値が所定の値で制限される。
「右方向旋回駆動領域」
右方向旋回駆動領域は、上部旋回体3を右方向に旋回させるためのトルク電流指令が駆動指令変換部331から出力される領域である。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、レバー26Aの操作量が判定領域としての零速度指令領域を通過する際の経過時間により、高トルク指令特性、中トルク指令特性、又は低トルク指令特性のいずれかのトルク指令特性が選択される。
このトルク指令特性は、いずれのトルク指令特性が選択された場合においても、右方向旋回駆動領域内では、レバー26Aの操作量に応じて、トルク電流指令の絶対値が増大するように設定されている。このトルク電流指令に基づいて旋回駆動制御装置40で駆動指令が演算され、この駆動指令によって旋回用電動機21が駆動され、この結果、上部旋回体3が右方向に旋回駆動される。
なお、左方向旋回駆動領域と同様に、スイッチ359の切替によってオーバースピードを検出した場合、右方向旋回駆動領域におけるトルク電流指令値は、絶対値が所定の値で制限される。
「トルク指令テーブルの選択処理」
実施の形態3のハイブリッド型建設機械において、第1トルク指令テーブル、第2トルク指令テーブル、又は第3トルク指令テーブルのいずれかのトルク指令テーブルを選択する処理は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械において、第1速度指令テーブル、第2速度指令テーブル、又は第3速度指令テーブルを選択する処理と同一である。すなわち、実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、図5に示す手順において第1速度指令テーブルを選択する代わりに第1トルク指令テーブルを選択し、第2速度指令テーブルを選択する代わりに第2トルク指令テーブルを選択し、第3速度指令テーブルを選択する代わりに第3トルク指令テーブルを選択する。
このように主制御部60の選択処理によって選択されたトルク指令テーブルは、左方向旋回駆動領域と右方向旋回駆動領域において、駆動指令変換部331がトルク電流指令を出力する際に参照される。
主制御部60によって第1トルク指令テーブルが選択された場合には、駆動指令変換部331は第1トルク指令テーブルを参照し、第1トルク指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられたトルク電流指令を出力する。すなわち、トルク指令特性としては、第1トルク指令特性が選択されることになる。
主制御部60によって第2トルク指令テーブルが選択された場合には、駆動指令変換部331は第2トルク指令テーブルを参照し、第2トルク指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられたトルク電流指令を出力する。すなわち、トルク指令特性としては、第2トルク指令特性が選択されることになる。
主制御部60によって第3トルク指令テーブルが選択された場合には、駆動指令変換部331は第3トルク指令テーブルを参照し、第3トルク指令特性に基づいてレバー26Aの操作量に対応付けられたトルク電流指令を出力する。すなわち、トルク指令特性としては、第3トルク指令特性が選択されることになる。
以上のトルク指令テーブルの選択処理は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の右方向旋回駆動領域と左方向旋回駆動領域において、第1速度指令テーブル、第2速度指令テーブル、又は第3速度指令テーブルを選択する処理に代わりに、第1トルク指令テーブル、第2トルク指令テーブル、又は第3トルク指令テーブルを選択する処理を行うものである。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、旋回用電動機21を駆動制御するための速度指令特性を変更する代わりに、駆動指令としてトルク指令特性を用いることにより、図6を用いて説明した実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様に、複合操作においてブーム4を下降させる場合には、旋回用電動機21を駆動するためのトルクを増大して、バケット6の移動速度は、旋回方向の成分速度の方が下降方向の成分速度よりも高くなるようにする。複合操作においてブーム4を上昇させる場合には、旋回用電動機21を駆動するためのトルクを低減して、バケット6の移動速度は、旋回方向の成分速度よりも上昇方向の成分速度の方が高くなるようにする。
以上、実施の形態3のハイブリッド型建設機械では、旋回用電動機21を駆動制御するための速度指令特性を変更する代わりに、駆動指令としてトルク指令特性を用いることにより、図6を用いて説明した実施の形態1のハイブリッド型建設機械と同様の動作が可能である。
このため、上述の場合と同様に、バケット6がダンプトラックに接触することを防ぐことができる。
なお、以上では、トルク指令特性がレバー26Aの操作量に応じて直線的に変化する形態について説明したが、トルク指令特性は、レバー26Aの操作量に応じて曲線的に変化する特性であってもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態のハイブリッド型建設機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。