以下、本発明のハイブリッド型建設機械を適用した実施の形態について説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
ハイブリッド型建設機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
「全体構成」
図2は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を実線でそれぞれ示す。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
コントロールバルブ17は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
また、電動発電機12には、電動発電機12の駆動制御部としてインバータ18及び昇降圧コンバータ100を介して蓄電器としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。電動発電機12とインバータ18とは電動発電系を構成し、蓄電器19と昇降圧コンバータ100とは充放電系を構成する。
また、DCバス110には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。旋回用電動機21、電動作業要素の駆動制御部としてのインバータ20、レゾルバ22、及び旋回減速機24は、負荷駆動系を構成する。
DCバス110には、DCバス110の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ30に入力される。
また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部112と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部113が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cを含み、レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cには、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
このような実施の形態1のハイブリッド型建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、コントローラ30によって運転制御が行われ、ハイブリッド型建設機械の運転中は常時運転される。
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。そして、電動発電機12には、電動発電系の異常検出部としての温度センサ12Aが配設されている。電動発電機12に負荷がかかると温度センサ12Aの温度検出値が上昇する。これにより、温度センサ12Aの温度検出値が高すぎると、電動発電機12が過負荷状態であることを把握することができる。
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための圧油を発生するポンプであり、傾転角を制御するポンプ制御弁14Aを有する。このポンプ制御弁14Aは、コントローラ30によって電気的に駆動され、メインポンプ14の傾転角の制御が行われる。メインポンプ14から吐出される圧油は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を操作者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
インバータ18は、電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの制御指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。そして、インバータ18には、電動発電系の異常検出部としての図示しない温度センサ、電流検出器、及び電圧検出器が配設されている。温度センサではインバータ18のスイッチング素子の温度を検出し、電流検出器によって電動発電機12の電流を検出することができる。例えば、インバータ18と電動発電機12との間で断線が発生した場合には、電流検出器で検出される電流値は急激に低下することで、異常が発生したことを検出することができる。
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。そして、バッテリ19には、充放電系の異常検出部としての図示しない温度センサが配設されている。バッテリ19に過電流が流れ続けると温度センサの温度検出値が上昇するので、温度センサの温度検出値を検出することで、バッテリ19が過負荷状態であるかを把握することができ、充放電系の異常を検出することができる。
このバッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100によって行われる。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部112によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部113によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30からの制御指令によって行われる。
インバータ20は、旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの制御指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19へ充電する。図2には、旋回電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス110に接続するようにしてもよい。
昇降圧コンバータ100は、一側がDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してバッテリ19に充電する必要があるため、DCバス電圧値を降圧する必要がある。これは、旋回用電動機21の力行運転と回生運転においても同様であり、その上、電動発電機12はエンジン11の負荷状態に応じて運転状態が切り替えられ、旋回用電動機21は上部旋回体3の旋回動作に応じて運転状態が切り替えられるため、電動発電機12と旋回用電動機21には、いずれか一方が電動(アシスト)運転又は力行運転を行い、他方が発電運転又は回生運転を行う状況が生じうる。
このため、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12と旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
DCバス110は、2つのインバータ18及び20と昇降圧コンバータとの間に配設されており、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受が可能に構成されている。
DCバス電圧検出部111は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ30に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
バッテリ電圧検出部112は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。そして、DCバス電圧検出部111とバッテリ電圧検出部112とは、コンバータ100とバッテリ19の間で断線異常が発生すると、バッテリ電圧検出部112とDCバス電圧検出部111との電圧値を比較することで、異常の発生と異常発生箇所の特定を行うことができる異常検出部としても機能する。
バッテリ電流検出部113は、バッテリ19の電流値を検出するための電流検出部である。バッテリ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100に流れる電流を正の値として検出される。検出されるバッテリ電流値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。そして、バッテリ電流検出部113は、昇降圧コンバータ100とバッテリ19の間で断線異常が発生すると、バッテリ電流検出部113で検出される電流値の急激な低下を検出することで、充放電系を異常検出部としても機能する。
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている電動作業要素である。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置である。レバー26A、26B、及びペダル26Cは、キャビン10内の運転席の周囲に配設され、ハイブリッド型建設機械の操作者によって操作される。
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者によるレバー26A、26B、及びペダル26Cの操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
なお、レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーである。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
操作装置26のレバー26A、26B、及びペダル26Cが操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
圧力センサ29は、操作検出部としてのセンサであり、この圧力センサ29では、旋回機構2を旋回させるためにレバー26Aが操作されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。
圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるためのレバー26Aの操作量を的確に把握することができる。
旋回機構2とブーム4の操作量を表す電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御とブーム4の駆動制御に用いられる。
なお、実施の形態1では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26のレバー26Aに入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
「コントローラ30」
コントローラ30は、本実施の形態のハイブリッド型建設機械の駆動制御を行う制御装置である。このコントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。
コントローラ30は、エンジン11の運転制御、電動発電機12の駆動制御、及びメインポンプ14の駆動制御を行う。エンジン11及び電動発電機12の制御は、メインポンプ14の負荷に応じて行われ、メインポンプ14で発生される圧油は、コントロールバルブ17に供給される。
また、コントローラ30は、操作装置26のレバー26A、26B、及びペダル26Cに入力される操作に応じて、コントロールバルブ17から油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9へ圧油の供給量を制御し、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6の駆動制御を行う。
また、コントローラ30はアシスト異常判定部40を備え、アシスト異常判定部40には異常検出部で検出される電動発電機12の温度、電動発電機12に通流する電流値、電動発電機12に印加される電圧値、インバータ18に含まれるスイッチング素子の温度、インバータ18に供給される電圧値、及びインバータ18に供給される電流値を表す信号が入力されるように構成されている。同様に、異常検出部で検出されるバッテリ19の温度、バッテリ19や昇降圧コンバータ100に通電する電流値、バッテリ19や昇降圧コンバータ100に印加される電圧値、昇降圧コンバータ100のスイッチング素子の温度を表す信号が入力されるように構成されている。
そして、アシスト異常判定部40では、異常検出部で検出された検出値が入力されると、それぞれの種類の検出値に対応して設定された閾値を超えるとアシスト異常が発生したと判定する。
さらに、コントローラ30はエンスト防止部32を備えている。エンスト防止部32では、アシスト異常判定部40でアシスト異常が発生したと判断されると、エンスト防止処理がなされる。実施の形態1においてエンスト防止部32は、ポンプ制御弁14Aを駆動制御することにより、油圧ポンプ14の出力がエンジン出力上限値以下まで低下するようにメインポンプ14の傾転角を小さくするエンスト防止処理が実行される。
ここで、電動発電機12の異常とは、例えば、電動発電機12又は昇降圧コンバータ100やバッテリ19の蓄電系に断線が生じている場合や、温度が異常に上昇している状態をいう。
また、インバータ18の異常とは、例えば、断線や故障により、スイッチング素子の温度、電圧値、又は電流値がそれぞれの閾値を超えて、過熱状態、過電圧状態、又は過電流状態が生じていることをいう。
図3は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械において電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合にメインポンプ14の出力を低減させる際の特性を示す図であり、(a)はエンジン11の出力、メインポンプ14の出力、エンジン11及び電動発電機12の合計出力を異常検出の前後にわたって示す図、(b)はポンプ制御弁14Aに入力される制御指令が変化した場合におけるメインポンプ14の吐出圧力と出力の関係を示す図である。メインポンプ14の吐出圧は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9、油圧モータ1A、1Bが受ける負荷状況によって決められる。よって、負荷が軽い場合には、メインポンプ14の出力はエンジン11の出力上限値よりも低く、負荷が大きい場合にはエンジン11の出力上限値よりも高くなる。ここで、メインポンプ14の出力がエンジン11の出力上限値よりも高い場合には、電動発電機12によってエンジン11をアシストする。
図3(a)において、WEngはエンジン11の出力上限値、WPmpnはメインポンプ14の出力値、WASMは電動発電機12の出力上限値、WEng+WASMはエンジン11(WEng)及び電動発電機12(WASM)の合計出力値、WPmp0はコントローラ30のエンスト防止部32によるエンスト防止処理がなされた後におけるメインポンプ14の出力をそれぞれ表す。
時刻t=t0では、電動発電機12又はインバータ18の異常は発生していない。そして、この時点では操作者のレバー操作によって、油圧シリンダへは高出力の要求がなされている。それに伴い、メインポンプ14の出力WPmpnはエンジン11の出力上限値WEngより高い出力となっている。このため、コントローラ30は、エンジン11のエンストを防止するため、電動発電機12にエンジン11をアシストするようにインバータ18へ指令を送信する。これにより、エンジン11の出力上限値WEngより高い出力がメインポンプ14によって要求されても、エンストすることなく作業を行うことができる。ここで、電動発電機12の出力上限値WASMは、エンジン11の出力上限値WEngと加算するとメインポンプ14の出力WPmpnよりも高くなるように設定されている。
しかしながら、電動発電機12に負荷が掛かり過ぎて、温度センサ12Aによる検出値が予め定めた温度に達すると、コントローラ30のアシスト異常判定部40は電動発電機12が過負荷状態にあると判断する。この場合、コントローラ30のアシスト異常判定部40は、電動発電機系に異常が発生したと判断し、アシスト異常処理を行うことで電動発電機12の負荷を低減するように、インバータ18へ電動発電機12からの出力を停止するように指令を送る。これにより、電動発電機12からの出力が無くなるため、メインポンプ14の出力WPmpnがエンジンの出力上限値WEngより高い状態となってしまう。ここで、本実施の形態では、時刻t=t1で電動発電機12に異常が発生すると、コントローラ30のエンスト防止部32は、電動発電機12の異常を検出し、ポンプ制御弁14Aを駆動制御するための駆動指令を変更して傾転角を小さくする。これにより、メインポンプ14の出力はWPmpnからエンジン11の出力上限値WEngより小さいWPmp0に低減される。
ここで、ポンプ制御弁14Aを駆動制御するための駆動指令は、メインポンプ14の斜板の傾転角を制御するためのポンプ電流Iである。
このため、図3(b)に示すように、メインポンプ14の吐出圧力をPiで一定にした状態で、ポンプ電流IをInからI0(In>I0)に低減すると、ポンプ電流値に応じて傾転角が制御され、メインポンプ14の出力がWPmpnからWPmp0に低減される。
図3(b)に示すように、例えば、吐出出力Piが任意に変動したとしても、メインポンプ14の出力がエンジン11の出力上限値WEngを超えないように電流I0は設定される。具体的には、メインポンプ14の出力の最大値WPmpnmaxがエンジン11の出力上限値WEngを超えないように電流I0は設定される。このため、電動発電機12によるアシスト力がない状態においても、エンジン11の出力WEngだけでメインポンプ14を駆動することができる。
このように、エンジン11の出力WEngは、メインポンプ14の出力WPmpnが吐出圧Piによって変動しても、WEng>WPmp0の条件を満たすことができる。
以上のように、実施の形態1のハイブリッド型建設機械によれば、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合には、コントローラ30によってメインポンプ14の傾転角が所定の角度まで小さくされ、これにより、メインポンプ14の出力WPmp0がエンジン11の出力WEngよりも低くなるように制御される。
このように、実施の形態1のハイブリッド型建設機械によれば、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生して電動発電機12によるアシスト力がなくなっても、メインポンプ14の出力が低減されることにより、エンジン11の出力WEngだけでメインポンプ14を駆動することができるので、電動発電機12のアシストが得られない場合においても、運転状態を継続することができる。
また、本実施の形態では、電動発電機12に温度異常が発生した場合の処理を説明したが、電動発電系の異常検出部であるインバータ18の電流検出器や電圧検出器の検出値に基づいて、アシスト異常判定部40が電動発電系の異常を判断するようにしてもよい。この場合、これに加えてエンスト防止部32によりメインポンプ14の出力を低減する処理を行ってもよい。
さらに、バッテリ19と昇降圧コンバータ100で構成される充放電系に備えられた異常検出部からの検出値によって、充放電系に異常が発生した場合でも、上述の場合と同様に、アシスト異常判定部40が電動発電系の異常を判断するようにしてもよい。この場合、バッテリ19から電動発電機12への電力供給が不能となるため、アシスト異常判定部40ではアシスト不能と判断し、電動発電機12の電動運転及び発電運転を停止させるアシスト異常判定処理を行う。このため、充放電系に異常が発生した場合でも、電動発電系に異常が発生したときと同様に、エンスト防止部32によりメインポンプ14の出力を低減する処理を行うように構成すればよい。
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2のハイブリッド型建設機械において電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合にエンジン11の機関回転数を低下させる際の特性を示す図であり、(a)はエンジン11の出力上限値、メインポンプ14の出力上限値を機関回転数に対してプロットした図、(b)はエンジン11の出力上限値、メインポンプ14の出力、電動発電機12の出力上限値、エンジン11及び電動発電機12の合計出力上限値を異常検出の前後にわたって示す図である。
実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合に、メインポンプ14の出力を低減させるのではなく、エンジン11の出力特性とメインポンプ14の出力特性との関係に基づき、エンジン11の機関回転数を調整することによってメインポンプ14の出力よりもエンジン11の出力の方が高い運転領域にする点が実施の形態1のハイブリッド型建設機械と異なる。
なお、図4(a)に示すメインポンプ14の出力特性とは、傾転角が最大の場合の出力特性である。このため、傾転角が最大値よりも小さく設定されている状態においては、メインポンプ14の出力特性は、図4(a)に示す特性よりも、低い値をとる。
図4(a)に示すように、メインポンプ14の出力は、機関回転数の上昇に応じて略線形的に増大する特性を有する。これに対して、エンジン11の出力上限値WEngは、機関回転数の上昇に伴い二次曲線的に増大して最大出力に到達し、機関回転数rが高い領域では若干低下する特性を有する。
このため、図4(a)に示すように、機関回転数がr1の状態では、メインポンプ14の出力WPmp1の方がエンジン11の出力WEng1より大きい。この状態は、機関回転数がr2に上昇するまで継続する。すなわち、機関回転数がr2以下の領域は、油圧ポンプ14を駆動するために、電動発電機12によるアシストが必要な領域である。
機関回転数がr2になると、メインポンプ14の出力WPmp1とエンジン11の出力WEng1が等しくなり、エンジン11の出力上限値WEngは、機関回転数がr3のときに最大出力WEng3となり、その後徐々に低下して、機関回転数r4において、メインポンプ14の出力WPmp1とエンジン11の出力WEng1は再び等しくなる。すなわち、機関回転数がr2からr4の間は、エンジン11の出力上限値WEngの方がメインポンプ14の出力WPmpより大きくなるため、電動発電機12によるアシストがない状態でも油圧ポンプ14を駆動することができる領域である
機関回転数がr4よりも高くなると、機関回転数がr2以下の領域と同様に、メインポンプ14の出力WPmp1の方がエンジン11の出力WEng1より大きくなり、油圧ポンプ14を駆動するために、電動発電機12によるアシストが必要になる。
実施の形態2のハイブリッド型建設機械では、正常時の機関回転数がr2未満であるr1の回転数で使用されている場合に、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合には、コントローラ30は、エンジン11の機関回転数をr2からr4の範囲内に制御する。
これにより、電動発電機12のアシストが得られない状態においても、エンジン11の出力上限値WEngだけでメインポンプ14を駆動することができるので、運転状態を継続することができる。
図4(b)に示すように、時刻t=0では、電動発電機12及びインバータ18は正常に動作しており、エンジン11の機関回転数は正常時のr1となっている。そして、この時点では、操作者のレバー操作によって、油圧シリンダへは高出力の要求がなされている。ここで、メインポンプ14へ要求された出力は、回転数r1におけるメインポンプ14の出力上限値WPmp1と同じ値が要求されている。そして、メインポンプ14への出力WPmp1は、エンジン11の出力上限値WEngより高い出力値となっている。このため、コントローラ30はエンジン11のエンストを防止するため、電動発電機12にエンジン11をアシストするようにインバータ18へ指令を送信する。これにより、エンジン11の出力上限値WEngより高い出力がメインポンプ14に必要な状況であっても、エンストすることなく作業を行うことができる。ここで、電動発電機12の出力上限値WASMをエンジン11の出力上限値WEngと加算した合計の出力上限値は、メインポンプ14の出力WPmp1よりも高くなるように設定されている。
しかしながら、電動発電機12に継続的な負荷が掛かり過ぎて、温度センサ12Aによる検出値が予め定められた温度に達すると、コントローラ30のアシスト異常判定部40は電動発電機12が過負荷状態にあると判定する。この場合、コントローラ30のアシスト異常願底部40は、電動発電系に異常が発生したと判断し、アシスト異常処理を行うことで電動発電機12の負荷を低減するように、インバータ18へ電動発電機12からの出力を停止するように指令を送る。これにより、電動発電機12からの出力がないため、メインポンプ14の出力WPmp1がエンジン11の出力上限値WEng1より高い状態となってしまう。ここで、本実施の形態では、時刻t=t1で電動発電機12に異常が発生すると、コントローラ30のエンスト防止部32は、異常を検出し、エンジン11の機関回転数をr3に制御する。ここで、メインポンプ14の出力上下値WPmp1も回転数の増加に伴い僅かに上がりWPmp3となる。機関回転数r3においては、メインポンプ14が実施の形態2のハイブリッド型建設機械の出力できる能力限界値で運転していても、メインポンプ14の出力上限値WPmp3はエンジン11の出力上限値WEng3より高くなる。
従って、異常の発生により、電動発電機12の出力WASMは零となるが、エンジン11の出力がWEng3となり、メインポンプ14の出力WPmp3を上回るので、エンジン11の出力WEng3だけでメインポンプ14の運転を継続することができる。
なお、以上では、説明の便宜上、時刻t=t1で電動発電機12に異常が発生した場合に、エンジン11の機関回転数を最大出力が発生されるr3に制御する形態について説明したが、機関回転数はr3に限られず、r2からr4の間であればよい。機関回転数がr2からr4の間の運転領域であれば、エンジン11の出力がメインポンプ14の出力を上回る運転領域になるからである。
以上のように、実施の形態2のハイブリッド型建設機械によれば、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合には、コントローラ30によってエンジン11の出力がメインポンプ14の出力を上回る運転領域に設定されるため、電動発電機12によるアシスト力がなくなっても、エンジン11の出力上限値WEngだけでメインポンプ14を駆動することができ、運転状態を継続することができる。
また、以上では、機関回転数としてエンジン11の機関回転数を用いて説明したが、エンジン11と機械的に結合している電動発電機12の回転数を機関回転数として用いてもよい。
[実施の形態3]
図5は、実施の形態3のハイブリッド型建設機械において電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合にエンジン11の機関回転数を低下させる際の特性を示す図であり、(a)はエンジン11の出力上限値、メインポンプ14の出力上限値を機関回転数に対してプロットした図、(b)はエンジン11の出力上限値、メインポンプ14の出力、電動発電機12の出力上限値、エンジン11及び電動発電機12の合計の出力上限値を異常検出の前後にわたって示す図である。
図5(a)に示すエンジン11の出力特性とメインポンプ14の出力特性は、図4(a)に示す実施の形態2の特性と同一である。
実施の形態3のハイブリッド型建設機械は、正常時の機関回転数がr4より高いr5の機関回転数で運転されている場合において、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した際に、エンジン11の機関回転数をr2からr4の間の運転領域に設定する点が実施の形態2のハイブリッド型建設機械と異なる。
時刻t=0において、電動発電機12及びインバータ18は正常に動作しており、エンジン11の機関回転数は正常時のr5となっている。そして、この時点では操作者のレバー操作によって、油圧シリンダへは高出力が要求されている。ここで、メインポンプ14へ要求された出力は、機関回転数r5におけるメインポンプ14の出力上限値WPmp5と同じ値が要求されている。そして、メインポンプ14への出力WPmp5は、エンジン11の出力上限値WEng5より高い出力値となっている。このため、電動発電機12によりアシストする動作が実行される。従って、電動発電機12の出力上限値WASMとエンジン11の出力上限値WEng5とを加算した合計の出力上限値は、メインポンプ14の出力WPmp5よりも高く設定することができる。
しかしながら、電動発電機12に継続的に負荷が掛かり過ぎて、温度センサ12Aによる検出値が予め定められた温度に達すると、コントローラ30のアシスト異常願底部40は電動発電機12が過負荷状態にあると判定する。この場合、コントローラ30のアシスト異常願底部40は、電動発電系に異常が発生したと判定し、アシスト異常処理を行うことで電動発電機12の負荷を低減するように、インバータ18へ電動発電機12から出力を停止するように指令を送る。これにより、電動発電機12の出力が無くなるため、メインポンプ14の出力WPmp5がエンジン11の出力上限値WEng5より高い状態となってしまう。ここで、実施の形態2では、時刻t=t1で電動発電機12に異常が発生すると、コントローラ30のエンスト防止部32は、異常を検出し、エンジン11の機関回転数をr3に制御する。
ここで、メインポンプ14の出力上限値WPmp5も回転数の減少に伴いWPmp3まで低下する。機関回転数がr3の状態においては、メインポンプ14が実施の形態3のハイブリッド型建設機械の出力できる能力限界値で運転していても、メインポンプ14の出力上限値WPmp3はエンジン11の出力上限値WEng3より高くなる。従って、異常の発生により、電動発電機12の出力WASMは零となるが、エンジン11の出力がWEng3となり、メインポンプ14の出力WPmp3を上回るので、エンジン11の出力WEng3だけでメインポンプ14の運転を継続することができる。
なお、以上では、説明の便宜上、時刻t=t1で電動発電機12に異常が発生した場合に、エンジン11の機関回転数を最大出力が発生されるr3に制御する形態について説明したが、機関回転数はr3に限られず、r2からr4の間であればよい。機関回転数がr2からr4の間の運転領域であれば、エンジン11の出力がメインポンプ14の出力を上回る運転領域になるからである。
以上のように、実施の形態3のハイブリッド型建設機械によれば、電動発電機12又はインバータ18に異常が発生した場合には、コントローラ30によってエンジン11の出力がメインポンプ14の出力を上回る運転領域に設定されるため、電動発電機12によるアシスト力がなくなっても、エンジン11の出力上限値WEngだけでメインポンプ14を駆動することができ、運転状態を継続することができる。
また、機関回転数としてエンジン11の回転数を用いて説明したが、エンジン11と機械的に結合している電動発電機12の回転数を機関回転数として用いてもよい。
また、実施の形態2及び3では、電動発電機12に温度以上が発生した場合の処理を説明したが、電動発電系の異常検出部であるインバータ18の電流検出器や電圧検出器の検出値に基づいて、アシスト異常判定部40が電動発電系の異常を判定するように構成してもよい。
この場合、エンスト防止部32により機関回転数を正常時の回転数より増加・減少させることで、エンジン11の出力上限値がメインポンプ14の出力上限値より高い回転数領域で駆動するように処理が行われる。
さらに、バッテリ19と昇降圧コンバータ100で構成される充放電系に備えられた異常検出部からの検出値によって、充放電系に異常が発生した場合でも同様である。この場合、バッテリ19から電動発電機12へ電力供給が行われなくなるため、アシスト異常願底部40ではアシスト不能と判定し、電動発電機12の電動運転及び発電運転を停止させるアシスト異常判定処理を行う。このため、充放電系に異常が発生した場合でも、電動発電系に異常が発生したときと同様に、エンスト防止部32により、エンジン11の出力上限値がメインポンプ14の出力上限より高い回転数領域で駆動できるように、エンジン11の機関回転数を変更する。
また、実施の形態1乃至3では、バケット6を備えるハイブリッド型建設機械について説明したが、バケット6の代わりにリフティングマグネット200を備えてもよい。リフティングマグネットは、電磁吸着力によって金属物を吸引又は釈放する電動作業要素である。
以上、本発明の例示的な実施の形態のハイブリッド型建設機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。